特許第6789360号(P6789360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789360
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】高分散性ゲルおよびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/14 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   C01F7/14 C
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-181423(P2019-181423)
(22)【出願日】2019年10月1日
(62)【分割の表示】特願2016-572481(P2016-572481)の分割
【原出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2020-73429(P2020-73429A)
(43)【公開日】2020年5月14日
【審査請求日】2019年10月2日
(31)【優先権主張番号】1455421
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】ブアレグ マリカ
(72)【発明者】
【氏名】ブヴリ セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ウザン パトリック
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07790652(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0101480(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02123804(GB,A)
【文献】 特表2003−501341(JP,A)
【文献】 特開2011−241121(JP,A)
【文献】 特開昭53−119800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/02、7/14、7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナゲルを調製する方法であって、上記アルミナゲルは、分散性指数が70%超であり、結晶子サイズが1〜35nmであり、硫黄含有率が0.001〜2重量%であり、ナトリウム含有率が0.001〜2重量%であり、前記重量%はアルミナゲルの全質量に対して表され、前記方法は、少なくとも以下の工程:
a) 水性反応媒体中で、アルミン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩基性前駆体および硫酸アルミニウムおよび硫酸から選択される少なくとも1種の酸性前駆体を、アルミナ沈殿させる少なくとも1回の第1の沈殿工程であって、塩基性および酸性の前駆体の少なくとも一方がアルミニウムを含み、酸性および塩基性の前駆体の相対的な流量は、反応媒体のpH:8.5〜10.5を得るように選ばれ、アルミニウムを含有する酸性および塩基性の前駆体(単数種または複数種)の流量は、前記第1の沈殿工程の進行率:45〜90%を得るように調節され、前記進行率は、沈殿工程(単数回または複数回)の終わりに形成されたアルミナの全量に対する、前記第1の沈殿工程の間に形成されたAlとしてのアルミナの割合として定義され、前記第1の沈殿工程は、20〜40℃の温度で、2〜30分の期間にわたって行い、
第1の沈殿工程a)の終わりに得られる懸濁液の加熱工程を、第1の沈殿工程a)と第2の沈殿工程a’)との間で、20〜90℃の温度で、7〜45分の期間にわたって行い、加熱工程の終わりに得られた懸濁液を沈殿させる第2の沈殿工程a’)であって、前記工程a’)は、前記懸濁液に、アルミン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩基性前駆体および硫酸アルミニウムおよび硫酸から選択される少なくとも1種の酸性前駆体を加えることによって行われ、塩基性または酸性の前駆体の少なくとも一方がアルミニウムを含み、酸性および塩基性の前駆体の相対的な流量は、反応媒体のpH:8.5〜10.5を得るように選ばれ、アルミニウムを含有する酸性および塩基性の前駆体(単数種または複数種)の流量は、第2の工程の進行率:10〜55%を得るように調節され、前記進行率は、工程a’)の終わりに形成されたアルミナの全量に対する、前記第2の沈殿工程a’)の間に形成されたAl2O3としてのアルミナの割合として定義され、前記第2の工程a’)は、40〜90℃の温度で、2〜50分の期間にわたって行われ、第2の沈殿工程の終わりに得られる懸濁物の第2の加熱工程は50〜95℃の温度で行われ、
b) 第2の加熱工程により得られた懸濁液を、50〜200℃の温度で、30分〜5時間の期間にわたって熱処理する工程、
c) 熱処理工程b)の終わりに得られた懸濁液をろ過する工程と、これに続く、得られたゲルを洗浄する少なくとも1回の工程、
を含む、方法。
【請求項2】
塩基性前駆体はアルミン酸ナトリウムである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
酸性前駆体は硫酸アルミニウムである、請求項1または2に記載の調製方法。
【請求項4】
工程a)および/または工程a’)において前記酸性前駆体に対する前記塩基性前駆体の質量比は1.6〜2.05である、請求項1〜3のいずれかに記載の調製方法。
【請求項5】
第2の沈殿工程a’)において前記酸性前駆体に対する前記塩基性前駆体の質量比は1.6〜2.05であり、塩基性および酸性の前駆体は、それぞれ、アルミン酸ナトリウムおよび硫酸アルミニウムである、請求項1〜4のいずれかに記載の調製方法。
【請求項6】
第2の沈殿工程a’)は、45〜70℃の温度で行われる、請求項1〜5のいずれかに記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナゲルの調製に関する。特に、本発明は、高分散性を呈する新規なアルミナゲルおよび沈殿によるその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において知られている複数の操作手順により、分散性アルミナゲルがもたらされる。複数の特許には、特に、「ゾル−ゲル」と呼ばれる調製方法が記載されている。
【0003】
特許文献1には、水分散性アルミナを製造する方法であって、水性アルミナスラリーを形成する工程、5〜9のpHを有する酸性化スラリーを生じさせるための酸性化工程、アルミナをコロイダルゲルに転化させるための十分な期間にわたる70℃超の昇温状態での熟成工程、および、こうして得られた前記コロイダルゲルを乾燥させる工程を含む、方法が記載されている。
【0004】
特許文献2にも、アルファアルミナを製造する方法であって、70%未満の分散性を有するアルミニウム水和物を分散させる工程と、得られたスラリーを3.5未満のpHに酸性化させて、アルミニウム水和物を少なくとも部分的に溶解させる工程と、得られた酸性化スラリーを、150〜200℃の温度、5〜20atmの圧力で0.15〜4時間の継続期間にわたって水熱処理して、90%より高い分散性を有するコロイダルベーマイトを得る工程とを含む方法が記載されている。
【0005】
沈殿によるアルミナゲルの調製も従来技術において周知である。
【0006】
特に、特許文献3には、アルミナ担体材料の沈殿による調製であって、このアルミナ担体材料は、特定の細孔分布を有し、重質炭化水素供給原料の水素化転化の方法における触媒担体として用いられ得る、アルミナ担体材料の沈殿による調製が記載されている。
【0007】
アルミナ担体材料は、第1のアルカリ性水溶液および第1の酸性水溶液を、制御された様式で混合することによりアルミナスラリーを形成する第1工程を含む方法であって、前
記酸性および塩基性の溶液の少なくとも一方または両方がアルミニウム化合物を含む、方法によって調製される。酸性および塩基性の溶液は、生じたスラリーのpHが8〜11になるような割合で混合される。酸性および塩基性の溶液はまた、所望量のアルミナを含有するスラリーを得ることを可能にする量で混合され、特に、第1の工程により、2回の沈殿工程の終わりに形成されたアルミナの全量に対して25〜35重量%のアルミナを得ることが可能となる。第1の工程は、20〜40℃の温度で行われる。所望量のアルミナが形成される場合、懸濁液の温度は、45〜70℃の温度に上昇させられ、次いで、加熱された懸濁液は、前記懸濁液を第2のアルカリ性水溶液および第2の酸性水溶液と接触させることにより第2の沈殿工程に付され、2種の溶液の少なくとも一方または両方は、アルミニウム化合物を含む。同様に、pHは、加えられる酸性および塩基性の溶液の組合せによって8〜10.5に調節され、第2の工程において形成されるべきアルミナの残量は、加えられる第2の酸性および塩基性の溶液の量によって寄与される。第2の工程は、20〜40℃の温度で行われる。このようにして形成されたアルミナゲルは、最低95%のベーマイトを含む。このようにして得られたアルミナゲルの分散性は言及されていない。アルミナゲルは、その後、当業者に知られた方法によって、ろ過され、洗浄され、場合によっては、乾燥させられ、予備的な成熟工程はなされず、アルミナ粉末が生じさせられ、このアルミナ粉末は、次いで、当業者に知られた方法によって成形され、次いで、焼成されて、最終的なアルミナ担体が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4676928号明細書
【特許文献2】米国特許第5178849号明細書
【特許文献3】米国特許第7790652号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3の調製方法の第1の沈殿工程が、25〜35重量%の低製造アルミナに制限されるのは、第1工程の終わりにおける高いアルミナ製造が、得られたゲルの最適なろ過を許容しないからである。さらに、特許文献3の第1の工程においてアルミナの製造を増量させることは、このようにして得られたゲルの形成を許容しないだろう。
【0010】
本発明は、特許文献3による調製方法の欠点を克服すること提案する。
【0011】
本出願人は、それ故に、沈殿によりアルミナゲルを調製するための新規な方法であって、単一回の調製工程の終わりに前記アルミナゲルを得ることを可能にし、この単一回の調製工程は、低い温度で行われ、第2の調製工程は、任意である、方法を発見した。特に、本発明によりアルミナゲルを調製する新規な方法は、前記ゲル調製方法の終わりに形成されたアルミナの全量に対してAl相当で最低40重量%のアルミナを得ることを第1の調製工程において可能にし、第1の調製工程の終わりに形成されるアルミナの量が100%にすら達し得る可能性があり、この場合、第2の沈殿工程は必要ではない。さらに、本発明による新しい調製方法は、最終の熱処理工程、および特に最終の成熟工程の存在によって特徴付けられ、この最終の工程により、改善されたろ過性を有するアルミナゲルを得ることが可能となり、これにより、本発明による方法のより高い生産性が提供され、この方法を工業レベルにスケールアップさせることがより容易になる。本発明による前記方法により、従来技術のアルミナゲルと比較してより良好な分散性指数を有するアルミナゲルを得ることが可能となり、これにより、当業者に知られる技術によってその成形が容易になる。
【0012】
本発明の一つの目的は、したがって、高められた分散性指数、特に、70%より高く、
100%に達することのできる分散性指数を有するアルミナゲルを提供することにある。
【0013】
本発明のさらなる目的は、水性反応媒体中で、少なくとも1種の塩基性前駆体および少なくとも1種の酸性前駆体を沈殿させることによって前記アルミナゲルを調製するための新規な方法であって、塩基性または酸性の前駆体の少なくとも一方または両方は、アルミニウムを相対的な割合でかつ特定の量で含み、この相対的な割合および特定の量は、前記工程の操作条件を規定し、かつ、高められた分散性指数を有するアルミナゲルを得ることを可能にし、特に、分散性指数は70%超、好ましくは70〜100%、好ましくは80〜100%、より好ましくは85〜100%、一層より好ましくは90〜100%である、方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の概要および興味)
本発明の対象は、高められた分散性指数、特に、70%より高い分散性指数を有するアルミナゲルであって、結晶子サイズが1〜35nmであり、硫黄含有率が0.001〜2重量%であり、ナトリウム含有率が0.001〜2重量%であり、重量百分率は、アルミナゲルの全質量に対して表示される、ものである。
【0015】
本発明の一つの利点は、従来技術のアルミナゲルと比較して非常に高い分散性を有する新規なアルミナゲルをそれが提供することにある。
【0016】
高められた分散性指数によって特徴付けられるアルミナゲルは、当業者に知られる成形技術の全てによって、例えば、混合−押出、ペレット化または油滴技術によって、低い分散性指数を有するゲルより容易に成形されることになる。
【0017】
本発明のさらなる対象は、前記アルミナゲルを調製するための方法であって、少なくとも以下の工程;
a) 水性反応媒体中に、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アンモニア、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも1種の塩基性前駆体および硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸、塩酸および硝酸から選択される少なくとも1種の酸性前駆体を、アルミナ沈殿させる少なくとも1回の工程であって、塩基性または酸性の前駆体の少なくとも一方は、アルミニウムを含み、酸性および塩基性の前駆体の相対的な供給量は、8.5〜10.5の反応媒体のpHを得るように選ばれ、アルミニウムを含有する酸性および塩基性の前駆体(単数または複数)の供給量は、第1の工程の進行率:40〜100%を得るように調節され、進行率は、沈殿工程(単数または複数)の終わりに形成されたアルミナの全量に対する、前記第1の沈殿工程の間にAl相当で形成されたアルミナの割合として定義され、前記工程(単数回または複数回)は、10〜50℃の温度で、2〜30分の継続期間にわたって行われる、工程、
b) 工程a)の終わりに得られた懸濁液を、50〜200℃の温度で、30分〜5時間の継続期間にわたって熱処理する工程、
c) 熱処理工程b)の終わりに得られた懸濁液をろ過する工程、その後の、得られたゲルを洗浄する少なくとも1回の工程
を含む方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一つの利点は、沈殿によってアルミナゲルを調製する新規な方法であって、第1の沈殿工程において、沈殿工程(単数または複数)の終わりに形成されたアルミナの全量に対してAl相当でアルミナの最低40重量%を得ることを可能にし、第1の沈殿工程の終わりに形成されたアルミナの量が100%にさえ達し得る可能性があり、その
場合第2の沈殿工程は必要ではない、方法をそれが提供することにある。さらに、高められた量のアルミナを生じさせるこのアルミナ沈殿工程と得られた懸濁液を加熱処理する最終工程との組み合わせによって特徴付けられる本発明による方法により、改善されたろ過性を有するアルミナゲルを得ることが可能となり、本発明による方法のより高い生産性を提供し、方法を工業レベルにスケールアップさせることがより容易になる。
【0019】
本発明の別の利点は、単一回の沈殿工程を含むことができる沈殿によってアルミナゲルを調製する新規な方法であって、従来技術の従来のアルミナ調製方法、例えば、ゾル−ゲルタイプの調製方法と比較して相対的に安価である、方法をそれが提供することにある。
【0020】
本発明のさらなる利点は、従来技術のゲルと比較して高められた分散性指数を有するアルミナゲルの、沈殿による新規な調製方法をそれが提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の説明)
本発明の目的は、70%より高い分散性指数を有するアルミナゲルであって、結晶子サイズが1〜35nmであり、蛍光X線により測定される硫黄含有率が0.001〜2重量%であり、ICPすなわちinductively coupled plasma(誘導結合プラズマ)分光法により測定されるナトリウム含有率が0.001〜2重量%であり、重量百分率は、アルミナゲルの全質量に対して表示される、ものにある。
【0022】
本明細書の残り全体を通じて、分散性指数は、3600Gでの10分間にわたるポリプロピレンチューブ中の遠心分離によって分散させられ得るコロイド分散アルミナゲルの重量百分率として定義される。
【0023】
分散性は、ベーマイトの質量に対して10%の硝酸も含有する水の懸濁液中にベーマイトまたはアルミナゲルの10%を分散させることによって測定される。懸濁液は、次いで、3600Gのrpmでの10分間にわたる遠心分離にかけられる。集められたセジメントは、100℃で終夜乾燥させられ、その後、計量される。
【0024】
分散性指数(dispersibility index)は、DIで表記され、このものは、以下の計算式によって得られる:
DI(%)=100%−乾燥済みセジメントの質量(%)
【0025】
好ましくは、本発明によるアルミナゲルの分散性指数は、70〜100%、好ましくは80〜100%、より好ましくは85〜100%、一層より好ましくは90〜100%である。
【0026】
好ましくは、本発明によるアルミナゲルの結晶子サイズは、2〜35nmである。
【0027】
特に、本発明によるアルミナゲルまたは粉末形態のベーマイトは、X線回折のシェラーの式によって得られる結晶学的方位(020)および(120)におけるサイズがそれぞれ、2〜20nmおよび2〜35nmである結晶子からなる。
【0028】
好ましくは、本発明によるアルミナゲルの結晶学的方位(020)における結晶子サイズは、2〜15nmであり、結晶学的方位(120)における結晶子サイズは、2〜35nmである。
【0029】
X線回折は、アルミナゲルまたはベーマイトについて、回折計を用いる従来の粉末法を用いて行われた。
【0030】
シェラーの式は、粉末または多結晶サンプルについてのX線回折において用いられる式であり、結晶子のサイズに対する回折ピークの中間高さの幅に関連する。それは、文献:Appl. Cryst. (1978). 11, 102-113 Scherrer after sixty years: A survey and some new results in the determination of crystallite size, J. I. Langford and A. J. C. Wilsonにおいて詳細に記載されている。
【0031】
本発明によると、本発明により調製されるアルミナゲルの不純物含有率、特に、蛍光X線によって測定される硫黄含有率は0.001〜2重量%であり、ICPすなわち、inductively coupled plasma(誘導結合プラズマ)分光法によって測定されるナトリウム含有率は0.001〜2重量%であり、重量百分率は、アルミナゲルの全質量に対して表される。
【0032】
好ましくは、本発明により調製されるアルミナゲルの硫黄含有率は、0.001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.40重量%、より好ましくは0.003〜0.33重量%、一層より好ましくは0.005〜0.25重量%である。
【0033】
好ましくは、本発明により調製されるアルミナゲルのナトリウム含有率は、0.001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.15重量%、より好ましくは0.0015〜0.10重量%、一層より好ましくは0.002〜0.040重量%である。
【0034】
(調製方法)
本発明のさらなる対象は、前記アルミナゲルを調製する方法である。
【0035】
本発明によると、前記調製方法は、水性反応媒体中に、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アンモニア、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも1種の塩基性前駆体および硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アンモニウム、硫酸、塩酸、および硝酸から選択される少なくとも1種の酸性前駆体をアルミナ沈殿させる少なくとも1回の工程a)を含み、当該工程a)において、塩基性または酸性の前駆体の少なくとも一方はアルミニウムを含み、酸性および塩基性の前駆体の相対的な供給量は、8.5〜10.5の反応媒体のpHを得るように選ばれ、アルミニウムを含有する酸性および塩基性の前駆体(単数種または複数種)の供給量は、第1工程の進行率:40〜100%を得るように調節され、進行率は、沈殿工程(単数または複数)の終わりに、より一般的には本発明による調製方法の終わりに形成されたアルミナの全量に対する、前記第1の沈殿工程a)の間に形成されたAl相当のアルミナの割合として定義され、前記工程a)は、10〜50℃の温度で、2〜30分間の継続期間にわたって行われる。
【0036】
一般的には、n回目の沈殿工程の「進行率(progression rate)」は、全沈殿工程の終わりに、より一般的にはアルミナゲルを調製する工程の終わりに形成されたアルミナの全量に対する、前記n回目の工程で形成されたAl相当でのアルミナの百分率を意味するとして理解される。
【0037】
前記沈殿工程a)の進行率が100%である場合、前記沈殿工程a)により、一般的には20〜100g/L、好ましくは20〜80g/L、より好ましくは20〜50g/LのAl濃度を有するアルミナ懸濁液を得ることが可能になる。
【0038】
(沈殿工程a))
水性反応媒体中の少なくとも1種の塩基性前駆体および少なくとも1種の酸性前駆体を混合することは、塩基性前駆体または酸性前駆体の少なくともいずれかがアルミニウムを含むこと、または、塩基性および酸性の前駆体の両方がアルミニウムを含むことを必要と
する。
【0039】
アルミニウムを含む塩基性前駆体は、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムである。好ましい塩基性前駆体は、アルミン酸ナトリウムである。
【0040】
アルミニウムを含む酸性前駆体は、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよび硝酸アルミニウムである。好ましい酸性前駆体は、硫酸アルミニウムである。
【0041】
好ましくは、塩基性または酸性の前駆体(単数種または複数種)は、前記第1の沈殿工程a)において水溶液で加えられる。
【0042】
好ましくは、水性反応媒体は水である。
【0043】
好ましくは、前記工程a)は、撹拌しながら行われる。
【0044】
好ましくは、前記工程a)は、有機添加剤が存在しない中で行われる。
【0045】
酸性および塩基性の前駆体は、それらがアルミニウムを含有するかどうかに拘わらず、好ましくは溶液で、水性反応媒体中に、生じる懸濁液のpHが8.5〜10.5になるような割合で混合される。
【0046】
本発明によると、8.5〜10.5の反応媒体pHを得るように選ばれるのは、アルミニウムを含有するかどうかに拘わらず、酸性および塩基性の前駆体の相対的な供給量である。
【0047】
塩基性および酸性の前駆体がそれぞれアルミン酸ナトリウムおよび硫酸アルミニウムである好ましい場合において、前記塩基性前駆体対前記酸性前駆体の質量比は有利には1.6〜2.05である。
【0048】
他の塩基性および酸性の前駆体について、それらがアルミニウムを含有するか否かに拘わらず、塩基/酸の質量比は、酸による塩基の中和曲線によって確立される。このような曲線は、当業者によって容易に得られる。
【0049】
好ましくは、前記沈殿工程a)が行われる際のpHは、8.5〜10、より好ましくは8.7〜9.9である。
【0050】
酸性および塩基性の前駆体はまた、達成されるべき最終アルミナ濃度に関連して所望量のアルミナを含有する懸濁液を得ることを可能にする量で混合される。特に、前記工程a)は、沈殿工程a)の終わりに形成されたアルミナの全量に対してAl相当で40〜100重量%のアルミナを得ることを可能にする。本発明によると、第1工程の進行率40〜100%を得るように調節されるのは、酸性および塩基性の前駆体(単数種または複数種)の供給量である。
【0051】
好ましくは、前記沈殿工程a)の進行率は、40〜99%、好ましくは45〜90%、より好ましくは50〜85%である。沈殿工程a)の終わりに得られた進行率が100%未満である場合、形成されるアルミナの量を増加させるために第2の沈殿工程が必要である。この場合、進行率は、本発明による調製方法の2回の沈殿工程の終わりに形成されたアルミナの全量に対する、前記沈殿工程a)で形成されたAl相当でのアルミナの割合として定義される。
【0052】
それ故に、沈殿工程(単数回または複数回)の終わりにおける目標アルミナ濃度、好ましくは20〜100g/Lに応じて、酸性および/または塩基性の前駆体によって寄与されるべきアルミニウムの量が計算され、前駆体の供給量は、前記の加えられる前駆体のアルミニウム濃度、反応媒体に加えられる水の量、および沈殿工程(単数回または複数回)に要求される進行率に関連して調節される。
【0053】
アルミニウムを含有する酸性および/または塩基性の前駆体(単数種または複数種)の供給量は、用いられる反応容器のサイズ次第であり、それ故に、反応媒体に加えられる水の量次第である。
【0054】
好ましくは、前記沈殿工程a)が行われる際の温度は、10〜45℃、好ましくは15〜45℃、より好ましくは20〜45℃、一層より好ましくは20〜40℃である。
【0055】
前記沈殿工程a)は、低温で行われることが重要である。本発明による前記調製方法が2回の沈殿工程を含む場合、沈殿工程a)は、有利には、第2の沈殿工程の温度未満の温度で行われる。
【0056】
好ましくは、前記沈殿工程a)は、5〜20分、好ましくは5〜15分の継続期間にわたって行われる。
【0057】
(熱処理工程b))
本発明によると、前記調製方法は、沈殿工程a)の終わりに得られた懸濁液を、60〜200℃の温度で、30分〜5時間の継続期間にわたって熱処理して、アルミナゲルを得る工程b)を含む。
【0058】
好ましくは、前記熱処理工程b)は、成熟工程である。
【0059】
好ましくは、前記熱処理工程b)が行われる際の温度は、65〜150℃、好ましくは65〜130℃、より好ましくは70〜110℃、一層より好ましくは70〜95℃である。
【0060】
好ましくは、前記熱処理工程b)は、40分〜5時間、好ましくは40分〜3時間、より好ましくは45分〜2時間の継続期間にわたって行われる。
【0061】
(任意の第2の沈殿工程)
好ましい実施形態によると、沈殿工程a)の終わりに得られた進行率が100%未満である場合に、前記調製方法は、好ましくは、第1の沈殿工程の後に第2の沈殿工程a’)を含む。
【0062】
前記第2の沈殿工程により、生じるアルミナの割合を高くすることが可能となる。
【0063】
前記第2の沈殿工程a’)は、有利には、前記第1の沈殿工程a)と熱処理工程b)との間に実施される。
【0064】
第2の沈殿工程が実施される場合、沈殿工程a)の終わりに得られた懸濁液を加熱する工程が、有利には、2回の沈殿工程a)とa’)との間に実行される。
【0065】
好ましくは、前記工程a)と第2の沈殿工程a’)との間に実施される、工程a)の終わりに得られた懸濁液を加熱する前記工程が行われる際の温度は、20〜90℃、好ましくは30〜80℃、より好ましくは30〜70℃、一層より好ましくは40〜65℃であ
る。
【0066】
好ましくは、前記加熱工程は、7〜45分、好ましくは7〜35分の継続期間にわたって行われる。
【0067】
前記加熱工程は、有利には、当業者に知られる全ての加熱方法により実行される。
【0068】
好ましい実施形態によると、前記調製方法は、加熱工程の終わりに得られた懸濁液を沈殿させる第2の工程を含み、前記第2の工程は、前記懸濁液に、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アンモニア、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも1種の塩基性前駆体および硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸、塩酸、および硝酸から選択される少なくとも1種の酸性前駆体を加えることによって行われ、塩基性または酸性の前駆体の少なくとも一方はアルミニウムを含み、酸性および塩基性の前駆体の相対的な供給量は、反応媒体のpH:8.5〜10.5を得るように選ばれ、アルミニウムを含有する酸性および塩基性の前駆体(単数種または複数種)の供給量は、第2の工程の進行率:0〜60%を得るように調節され、進行率は、2回の沈殿工程の終わりに、好ましくは本発明による調製方法の工程a’)の終わりに形成されたアルミナの全量に対する、前記第2の沈殿工程の間に形成されたAl相当でのアルミナの割合として定義され、前記工程は、40〜90℃の温度で、2〜50分の継続期間にわたって行われる。
【0069】
第1の沈殿工程a)におけるのと同様に、少なくとも1種の塩基性前駆体および少なくとも1種の酸性前駆体の加熱された懸濁液への添加は、塩基性前駆体または酸性前駆体のいずれかがアルミニウムを含むか、または、塩基性および酸性前駆体の両方がアルミニウムを含むかのいずれかであることを必要とする。
【0070】
アルミニウムを含む塩基性前駆体は、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムである。好ましい塩基性前駆体はアルミン酸ナトリウムである。
【0071】
アルミニウムを含む酸性前駆体は、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよび硝酸アルミニウムである。好ましい酸性前駆体は硫酸アルミニウムである。
【0072】
好ましくは、前記第2の沈殿工程は、撹拌しながら行われる。
【0073】
好ましくは、前記第2の工程は、有機添加剤が存在しない中で行われる。
【0074】
酸性および塩基性の前駆体は、それらがアルミニウムを含有するかどうかに拘わらず、好ましくは溶液で、水性反応媒体中に、生じる懸濁液のpHが8.5〜10.5になるような割合で混合される。
【0075】
沈殿工程a)におけるのと同様に、反応媒体のpH:8.5〜10.5を得るように選ばれるのは、アルミニウムを含有するか否かにかかわらず、酸性および塩基性の前駆体の相対的な供給量である。
【0076】
塩基性および酸性の前駆体がそれぞれアルミン酸ナトリウムおよび硫酸アルミニウムである好ましい場合において、前記塩基性前駆体対前記酸性前駆体の質量比は、有利には、1.6〜2.05である。
【0077】
他の塩基性および酸性の前駆体について、それらがアルミニウムを含有するかしないかに拘わらず、塩基/酸の質量比は、酸による塩基の中和の曲線によって確立される。この
ような曲線は、当業者によって容易に得られる。
【0078】
好ましくは、前記第2の沈殿工程が行われる際のpHは、8.5〜10、好ましくは8.7〜9.9である。
【0079】
酸性および塩基性の前駆体はまた、達成されるべき最終のアルミナ濃度に関連して、所望量のアルミナを含有する懸濁液を得ることを可能にする量で混合される。特に、前記第2の沈殿工程は、2回の沈殿工程の終わりに、好ましくは工程a’)の終わりに形成されたアルミナの全量に対してAl相当で0〜60重量%のアルミナを得ることを可能にする。
【0080】
沈殿工程a)におけるのと同様に、第2の工程の進行率:0〜60%を得るために調節されるのはアルミナを含有する酸性および塩基性の前駆体(単数種または複数種)の供給量であり、進行率は、本発明による方法の2回の沈殿工程の終わりに、好ましくは工程a’)の終わりに形成されたアルミナの全量に対する、前記第2の沈殿工程において形成されたアルミナの割合として定義される。
【0081】
好ましくは、前記第2の沈殿工程a’)の進行率は、1〜60%、好ましくは10〜55%、より好ましくは15〜55%である。
【0082】
それ故に、沈殿工程(単数回または複数回)の終わりにおける目標アルミナ濃度、好ましくは20〜100g/Lに応じて、酸性および/または塩基性の前駆体によって寄与されるべきアルミナの量が計算され、前駆体の供給量は、前記加えられる前駆体のアルミニウム濃度、反応媒体に加えられる水の量、および沈殿工程のそれぞれに対して要求される進行率に関連して調節される。
【0083】
沈殿工程a)におけるのと同様に、アルミニウムを含有する酸性および/または塩基性の前駆体(単数種または複数種)の供給量は、用いられる反応容器のサイズ次第であり、それ故に、反応媒体に加えられる水の量次第である。
【0084】
例として、3リットルの反応容器が用いられ、かつ、最終のAl濃度50g/Lを有する1リットルのアルミナ懸濁液を得ることが提案されるならば、目標進行率は、第1の沈殿工程についてAl相当で50%である。それ故に、全アルミナの50%が、沈殿工程a)において加えられなければならない。アルミナ前駆体は、Al相当で155g/Lの濃度のアルミン酸ナトリウムおよびAl相当で102g/Lの濃度の硫酸アルミニウムである。第1工程の沈殿のpHは9.5に、第2工程の沈殿のpHは9に固定される。反応容器に加えられる水の量は622mLである。
【0085】
30℃で8分にわたって行われる第1の沈殿工程a)について、硫酸アルミニウムの供給量は、10.5mL/分でなければならず、アルミン酸ナトリウムの供給量は13.2mL/分である。アルミン酸ナトリウム対硫酸アルミニウムの質量比は、したがって、1.91である。
【0086】
70℃で30分にわたって行われる第2の沈殿工程について、硫酸アルミニウムの供給量は、2.9mL/分でなければならず、アルミン酸ナトリウムの供給量は、3.5mL/分である。アルミン酸ナトリウム対硫酸アルミニウムの質量比は、したがって、1.84である。
【0087】
好ましくは、前記第2の沈殿工程が行われる際の温度は、40〜80℃、好ましくは45〜70℃、一層より好ましくは50〜70℃である。
【0088】
好ましくは、第2の沈殿工程は、5〜45分、好ましくは7〜40分の継続期間にわたって行われる。
【0089】
第2の沈殿工程により、一般的には、20〜100g/L、好ましくは20〜80g/L、好ましくは20〜50g/LのAl濃度を有するアルミナ懸濁液を得ることが可能となる。
【0090】
前記第2の沈殿工程が実施される場合、前記沈殿方法はまた、有利には、前記第2の沈殿工程の終わりに得られた懸濁液を、50〜95℃、好ましくは60〜90℃の温度で加熱する第2の工程を含む。
【0091】
好ましくは、前記第2の加熱工程は、7〜45分の継続期間にわたって行われる。
【0092】
前記第2の加熱工程は、有利には、当業者に知られる全ての加熱方法により実行される。
【0093】
前記第2の加熱工程により、得られた懸濁液を熱処理工程b)に付す前に反応媒体の温度を上昇させることが可能となる。
【0094】
(ろ過工程c))
本発明によると、本発明によるアルミナゲルを調製する方法は、加熱処理工程b)の終わりに得られた懸濁液をろ過する工程c)と、その後の、得られたゲルを洗浄する少なくとも1回の工程とを含む。前記ろ過工程は、有利には、当業者に知られている全ての方法により実施される。沈殿工程a)の終わりまたは2回の沈殿工程の終わりに得られた懸濁液のろ過性は、得られた懸濁液の前記最終加熱工程b)の存在によって改善され、前記加熱工程は、本発明による方法の生産性、および方法の工業レベルへのスケールアップに寄与する。前記ろ過の後、有利には、水により洗浄する少なくとも1回の工程、好ましくは、1〜3回の洗浄工程が行われ、水の量は、ろ過された沈殿物の量に等しい。
【0095】
本発明による調製方法は、少なくとも1回のアルミナ沈殿工程(このアルミナ沈殿工程により、本方法の終わりに形成されたAl相当でのアルミナの全量に対して最低40重量%のアルミナを得ることが可能となる)と、得られた懸濁液の加熱処理の少なくとも1回の最終工程とを含み、それ故に、70%より高い分散性指数および2〜35nmの結晶子サイズを有する本発明によるアルミナゲルが提供される。
【0096】
本発明はまた、本発明による調製方法によって得られ得るアルミナゲルに関する。
【0097】
本発明は、以下の実施例によって例証されるが、これらの実施例は、決して、限定的なものではない。
【0098】
(実施例)
(実施例1:比較例)
アルミナゲルの市販の粉末Pural SB3は、アルミニウムアルコキシドの加水分解−重縮合によるゾル−ゲルルートを介して調製される。
【0099】
Pural SB3ベーマイトゲルの特徴は、表1に要約される。
【0100】
【表1】
【0101】
蛍光X線法によって測定される硫黄含有率、およびICPすなわちinductively coupled plasma(誘導結合プラズマ)分光法によって測定されるナトリウム含有率は、これらの測定方法の測定限界未満である。
【0102】
(実施例2:比較例)
アルミナゲルは、沈殿工程が高温、すなわち、60℃の温度で行われる点で本発明に合致しない調製方法によって合成される。350rpmでの撹拌が合成を通じて維持される。
【0103】
合成は、5リットルの反応容器において、沈殿工程と得られた懸濁液の成熟の工程との2工程で行われる。
【0104】
目標の最終アルミナ濃度は、50g/Lである。
【0105】
硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOを沈殿させる工程は、60℃およびpH=10.2で20分の継続期間にわたって行われる。用いられたアルミニウム前駆体の濃度は以下の通りである:Al(SO)=102g/L(Al相当)およびNaAlOO=155g/L(Al相当)。
【0106】
硫酸アルミニウムAl(SO)の溶液が、30分にわたって25.9mL/分の速度で連続的に、アルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に、10.2の値にpHを調節するように塩基/酸の質量比=2.0で加えられる。前駆体の全体は、60℃の温度で接触して置かれる。
【0107】
アルミナ前駆体を含有する懸濁液が得られる。
【0108】
目標の最終アルミナ濃度は50g/Lであれば、第1の沈殿工程に導入されるアルミニウム含有前駆体である硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの供給量は、それぞれ、25.9mL/分および34.1mL/分である。
【0109】
アルミニウムを含有する酸性および塩基性の前駆体のこれらの供給量により、第1の沈殿工程の終わりに進行率:100%を得ることが可能になる。
【0110】
得られた懸濁液は、次いで、60℃から90℃への昇温に付される。
【0111】
懸濁液は、次いで、成熟工程を経る。この成熟工程において、懸濁液は、30分にわたって90℃に維持される。
【0112】
得られた懸濁液は、次いで、焼結ディスクのブフナー漏斗中に水を通すことによってろ過され、得られたアルミナゲルは、70℃で3.5リットルの蒸留水により3回洗浄される。ろ過および洗浄の時間は3時間である。
【0113】
このようにして得られたアルミナゲルの特徴は、表2に要約される。
【0114】
【表2】
【0115】
本発明に合致しない実施例2により、沈殿工程の間、特に、第1の沈殿工程の間に低温で作動させることの重要性が指し示される。それ故に、特許請求の範囲外である70℃の温度で行われる沈殿工程により、分散性ゲルを得ることは可能とはならない。しかしながら、アルミナの質量に対して10%の硝酸も含有する水懸濁液中のこのようにして得られたアルミナゲルの10%の分散は、10分にわたる3600Gでの懸濁液の遠心分離の後に、セジメントの収率100%を生じさせる。
【0116】
(実施例3:比較例)
アルミナゲルは、実施例3におけるゲルを調製する方法が熱処理工程を含まない点および第1の沈殿工程a)が、第2の沈殿工程の終わりに形成されたアルミナの全量に対して40%より高い量のアルミナを生じさせない点で本発明に合致しない調製方法によって合成される。実施例3は、米国特許7790562に記載された調製方法により行われる。
【0117】
合成は、7リットルの反応容器において、5リットルの最終懸濁液により、2回の沈殿工程で行われる。反応容器に加えられる水の量は3868mLである。
【0118】
目標の最終アルミナ濃度は30g/Lである。
【0119】
硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOを沈殿させる第1の工程は、30℃およびpH=9.3で、8分の継続期間にわたって行われる。用いられるアルミニウム前駆体の濃度は以下の通りである:Al(SO)=102g/L(Al相当)およびNaAlOO=155g/L(Al相当)。350rpmでの撹拌が、合成を通じて維持される。
【0120】
硫酸アルミニウムAl(SO)の溶液が、8分にわたって、19.6mL/分の速度で連続的に、アルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に、9.3の値にpHを調節するように塩基/酸の質量比=1.80で加えられる。反応媒体の温度は、30℃に維持される。
【0121】
アルミナ沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0122】
目標の最終アルミナ濃度が30g/Lであれば、第1の沈殿工程に導入されるアルミニウム含有前駆体である硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの供給量は、それぞれ、19.6mL/分および23.3mL/分である。
【0123】
アルミニウムを含有する酸性および塩基性の前駆体のこれらの供給量により、第1の沈殿工程の終わりに進行率:30%を得ることが可能になる。
【0124】
得られた懸濁液は、次いで、30℃から57℃への昇温に付される。
【0125】
得られた懸濁液の共沈殿の第2の工程が、次いで、102g/L(Al相当)の濃度の硫酸アルミニウムAl(SO)および155g/L(Al相当)の濃度のアルミン酸ナトリウムNaAlOOを加えることによって行われる。硫酸アルミニウムAl(SO)の溶液は、したがって、第1の沈殿工程の終わりに得られた加熱された懸濁液に連続的に、30分にわたって、12.8mL/分の速度で、アルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に、8.7の値にpHを調節するように塩基/酸の質量比=1.68で加えられる。第2の工程における反応媒体の温度は、57℃に維持される。
【0126】
アルミナ沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0127】
目標の最終アルミナ濃度が30g/Lであれば、第2の沈殿工程に導入されるアルミニウム含有前駆体である硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの供給量は、それぞれ、12.8mL/分および14.1mL/分である。
【0128】
アルミニウムを含有する酸性および塩基性の前駆体のこれらの供給量は、第2の沈殿工程の終わりに進行率:70%を得ることを可能にする。
【0129】
このようにして得られた懸濁液は、成熟工程に付されない。
【0130】
得られた懸濁液は、次いで、焼結ディスクのブフナー漏斗中に水を通すことによってろ過され、得られたアルミナゲルは、70℃の5リットルの蒸留水により3回洗浄される。ろ過および洗浄の時間は4時間である。
【0131】
このようにして得られたアルミナゲルの特徴は、表3に要約される。
【0132】
【表3】
【0133】
(実施例4:本発明に合致する)
アルミナゲルは、本発明による調製方法に従い、7リットルの反応容器において、5リットルの最終懸濁液により、3工程(2回の沈殿工程と、これに続く成熟工程)で合成さ
れる。
【0134】
目標の最終アルミナ濃度は45g/Lである。反応容器に加えられる水の量は3267mLである。350rpmでの撹拌が合成を通して維持される。
【0135】
硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの水中共沈殿の第1の工程が、30℃およびpH=9.5で8分の継続期間にわたって行われる。用いられるアルミニウム前駆体の濃度は以下の通りである:Al(SO)=102g/L(Al相当)およびNaAlOO=155g/L(Al相当)。
【0136】
硫酸アルミニウムAl(SO)の溶液が8分にわたって、69.6mL/分の速度で、84.5mL/分の速度のアルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に、9.5の値にpHを調節するように塩基/酸の質量比=1.84で連続的に加えられる。反応媒体の温度は、30℃に維持される。
【0137】
アルミナ沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0138】
目標の最終アルミナ濃度が45g/Lであれば、第1の沈殿工程に導入されるアルミニウム含有前駆体である硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの供給量は、それぞれ、69.6mL/分および84.5mL/分である。
【0139】
アルミニウムを含有する酸性および塩基性の前駆体のこれらの供給量により、第1の沈殿工程の終わりに進行率:72%を得ることが可能になる。
【0140】
得られた懸濁液は、次いで、30℃から68℃への昇温に付される。
【0141】
得られた懸濁液の共沈殿の第2の工程が、次いで、Al相当で102g/Lの濃度の硫酸アルミニウムAl(SO)およびAl相当で155g/Lの濃度のアルミン酸ナトリウムNaAlOOを加えることによって行われる。硫酸アルミニウムの溶液Al(SO)が、したがって、第1の沈殿工程の終わりに得られた加熱された懸濁液に、30分にわたって、7.2mL/分の速度で、アルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に、9の値にpHを調節するように塩基/酸の質量比=1.86で連続的に加えられる。第2の工程における反応媒体の温度は68℃に維持される。
【0142】
アルミナ沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0143】
目標の最終アルミナ濃度は45g/Lであれば、第2の沈殿工程に導入されるアルミニウム含有前駆体である硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの供給量は、それぞれ、7.2mL/分および8.8mL/分である。
【0144】
アルミニウムを含有する酸性および塩基性の前駆体のこれらの供給量により、第2の沈殿工程の終わりに進行率:28%を得ることが可能になる。
【0145】
得られた懸濁液は、次いで、68℃から90℃への昇温に付される。
【0146】
懸濁液は、次いで、熱処理工程を経る。この工程において、懸濁液は、60分にわたって90℃に維持される。
【0147】
得られた懸濁液は、次いで、焼結ディスクのブフナー漏斗中に水を通過させることによってろ過され、得られたアルミナゲルは、5リットルの蒸留水により3回洗浄される。ろ
過および洗浄の時間は3時間である。
【0148】
このようにして得られたアルミナゲルの特徴は、表4に要約される。
【0149】
【表4】
【0150】
分散性指数:100%を有するゲルがこのようにして得られる。さらに、最終の熱処理工程の存在によって特徴付けられる本発明による方法によって得られるゲルにより、良好なろ過性を有する、すなわち、ろ過時間が工業レベルへの方法のスケールアップに適合する、アルミナゲルを得ることが可能となり、これにより、前記方法の改善された生産性が促進させられる。
【0151】
本発明による調製方法によって得られたアルミナゲルは、容易に成形可能であることも留意されることになる。
【0152】
100%の分散性ゲルをもたらす本発明による調製方法はまた、従来技術の従来のアルミナ調製方法、例えば、実施例1におけるPural SB3を調製するゾル−ゲルタイプの方法より高価ではない。
【0153】
(実施例5:比較例)
本発明に合致しない実施例5は、実施例3と同一の方法で同一の操作条件下に行われるが、第2の沈殿工程の終わりに得られた懸濁液が成熟工程を経ない点で相違している。
【0154】
第2の沈殿工程の終わりに得られた懸濁液は、次いで、焼結ディスクのブフナー漏斗中に水を通過させることによってろ過され、得られたアルミナゲルは、3.5リットルの蒸留水により3回洗浄される。
【0155】
ろ過および洗浄の時間は24時間である。
【0156】
このようにして得られたアルミナゲルの特徴は、表5に要約される。
【0157】
【表5】