特許第6789511号(P6789511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789511
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20201116BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L77/00
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-51777(P2017-51777)
(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公開番号】特開2018-154709(P2018-154709A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河田 順平
(72)【発明者】
【氏名】松下 光正
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋充
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−001362(JP,A)
【文献】 特開2013−209582(JP,A)
【文献】 特開2013−199636(JP,A)
【文献】 特開昭51−030256(JP,A)
【文献】 特開昭50−116541(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/070689(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00−101/14
C08K3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソソルビド系ポリカーボネートと、ポリアミド11、ポリアミド12及びポリアミド610からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドとを、質量比(イソソルビド系ポリカーボネート/ポリアミド)が1/9〜9/1の範囲内で含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記イソソルビド系ポリカーボネートが、下記式(1):
【化1】
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアリール基のうちのいずれか1つを表し、また、RとR、及び/又は、RとRは、互いに結合して環を形成してもよい。*は隣接する繰返し単位との結合部位を表す。)
で表される繰返し単位と、下記式(2)
【化2】
(式(2)中、Xは、芳香環又は脂環構造を含んでいてもよい炭素数6〜30の2価の炭化水素基を表し、*は隣接する繰返し単位との結合部位を表す。)
で表される繰返し単位と、を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(2)で表される繰返し単位が、下記式(3):
【化3】
(式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアリール基のうちのいずれか1つを表し、また、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。R及びRは、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基及びアリール基のうちのいずれか1つを表し、m及びnはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、*は隣接する繰返し単位との結合部位を表す。)
で表される繰返し単位であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
全繰返し単位100mol%に対して、前記式(1)で表される繰返し単位の含有率が55〜98mol%であり、前記式(2)で表される繰返し単位の含有率が2〜45mol%であることを特徴とする請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(1)で表される繰返し単位と前記式(2)で表される繰返し単位とがランダムに配置していることを特徴とする請求項2〜4のうちのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアミドがポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートとポリアミドとを含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、剛性、耐熱性、耐衝撃性に優れているが、成形性、耐候性、耐薬品性が低いことが知られている。一方、ポリアミドは、成形性、耐摩耗性、耐薬品性に優れているが、耐衝撃性が低いことが知られている。そこで、従来から、これらの樹脂の特性を利用して、互いの欠点を補うために、ポリカーボネートとポリアミドとを含有する樹脂組成物が検討されている。
【0003】
例えば、特開昭50−116541号公報(特許文献1)には、ポリカーボネートとポリアミド12とを含有する樹脂組成物が記載されており、特開昭59−68368号公報(特許文献2)には、ポリカーボネートとポリアミドとを含有する樹脂組成物が記載されており、ポリアミドとしてポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、芳香族ポリアミドが記載されている。また、特表平2−500984号公報(特許文献3)には、重合体相容化剤を含有する、ポリカーボネートとポリアミドとのポリマーブレンドが記載されており、特開平5−25382号公報(特許文献4)には、芳香族ポリカーボネートとポリアミドとを含有する樹脂組成物が記載されており、特開2011−122080号公報(特許文献5)には、ポリカーボネートとポリアミド11とを含有する樹脂組成物が記載されている。さらに、特開2015−110807号公報(特許文献6)には、イソソルビド系ポリカーボネートにポリアミドを混練してポリマーアロイとして用いてもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭50−116541号公報
【特許文献2】特開昭59−68368号公報
【特許文献3】特表平2−500984号公報
【特許文献4】特開平5−25382号公報
【特許文献5】特開2011−122080号公報
【特許文献6】特開2015−110807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のポリカーボネートとポリアミドとを含有する樹脂組成物においては、溶融混練時や成形時にポリカーボネートのカーボネート結合とポリアミドのアミド基とが反応して、分子量が低下したり、ガスが発生したり(佐藤ら、高分子論文集、1990年4月、第17巻、第4号、第287〜295頁参照)、さらには、ゲル化が起こるため、得られる成形体の成形性及び機械特性は必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、成形性、耐発泡性、耐分解性及び剛性に優れた、ポリカーボネートとポリアミドとを含有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネートとポリアミドとを含有する樹脂組成物において、ポリカーボネートとしてイソソルビド系ポリカーボネートを使用し、ポリアミドとしてポリアミド11、ポリアミド12及びポリアミド610のうちの少なくとも1種を使用することによって、分子量の低下やガスの発生、ゲル化が抑制され、成形性、耐発泡性、耐分解性及び剛性に優れた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の樹脂組成物は、イソソルビド系ポリカーボネートと、ポリアミド11、ポリアミド12及びポリアミド610からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドとを、質量比(イソソルビド系ポリカーボネート/ポリアミド)が1/9〜9/1の範囲内で含有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明に樹脂組成物においては、前記イソソルビド系ポリカーボネートが、下記式(1):
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアリール基のうちのいずれか1つを表し、また、RとR、及び/又は、RとRは、互いに結合して環を形成してもよい。*は隣接する繰返し単位との結合部位を表す。)
で表される繰返し単位と、下記式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
(式(2)中、Xは、芳香環又は脂環構造を含んでいてもよい炭素数6〜30の2価の炭化水素基を表し、*は隣接する繰返し単位との結合部位を表す。)
で表される繰返し単位と、を含有するものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の樹脂組成物においては、前記式(2)で表される繰返し単位が、下記式(3):
【0015】
【化3】
【0016】
(式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアリール基のうちのいずれか1つを表し、また、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。R及びRは、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基及びアリール基のうちのいずれか1つを表し、m及びnはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、*は隣接する繰返し単位との結合部位を表す。)
で表される繰返し単位であることがより好ましい。
【0017】
また、本発明に樹脂組成物においては、全繰返し単位100mol%に対して、前記式(1)で表される繰返し単位の含有率が55〜98mol%であり、前記式(2)で表される繰返し単位の含有率が2〜45mol%であることがより好ましく、前記式(1)で表される繰返し単位と前記式(2)で表される繰返し単位とがランダムに配置していることもより好ましい。
【0018】
さらに、本発明に樹脂組成物においては、前記ポリアミドがポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0019】
なお、本発明の樹脂組成物が成形性、耐発泡性、耐分解性及び剛性に優れている理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の樹脂組成物に含まれるイソソルビド系ポリカーボネートは、従来の樹脂組成物に含まれるビスフェノール系ポリカーボネートと分子構造が異なるため、ポリアミドとの反応性、特に、ポリアミド11、ポリアミド12及びポリアミド610との反応性が低く、ポリカーボネートとポリアミドとの反応が抑制されると推察される。その結果、分子量の低下やガスの発生、ゲル化が抑制され、優れた成形性、耐発泡性、耐分解性及び剛性が得られると推察される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、成形性、耐発泡性、耐分解性及び剛性に優れた、ポリカーボネートとポリアミドとを含有する樹脂組成物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0022】
先ず、本発明のポリカーボネートについて説明する。本発明のポリカーボネートは、イソソルビド系ポリカーボネートと、ポリアミド11、ポリアミド12及びポリアミド610からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドとを含有するものである。
【0023】
(ポリカーボネート)
本発明に用いられるポリカーボネートはイソソルビド系ポリカーボネートである。このイソソルビド系ポリカーボネートと、ポリアミド11、ポリアミド12及びポリアミド610からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドとを組み合わせて使用することによって、成形性、耐発泡性、耐分解性及び剛性に優れた樹脂組成物が得られる。
【0024】
一方、イソソルビド系ポリカーボネート以外のポリカーボネート(例えば、ビスフェノール系ポリカーボネート)と前記ポリアミドとを組み合わせて使用した場合には、得られる樹脂組成物は成形性、耐発泡性及び耐分解性に劣ったものとなる。
【0025】
本発明に用いられるイソソルビド系ポリカーボネートとしては、イソソルビド骨格を有する繰返し単位を含有するものであれば特に制限はないが、下記式(1):
【0026】
【化4】
【0027】
で表される繰返し単位と、下記式(2)
【0028】
【化5】
【0029】
で表される繰返し単位と、を含有するものが好ましい。
【0030】
前記式(1)で表される繰返し単位において、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアリール基のうちのいずれか1つを表す。前記アルキル基の炭素数は通常1〜18であり、好ましくは1〜6である。前記シクロアルキル基の炭素数は通常3〜8であり、好ましくは3〜6である。前記アルケニル基の炭素数は通常2〜12であり、好ましくは2〜6である。前記アリール基の炭素数は通常6〜18であり、好ましくは6〜12である。なお、前記式(1)中の*は隣接する繰返し単位との結合部位を表す。
【0031】
このような繰返し単位のうち、剛直な構造と剛性に優れるという観点から、後述するイソソルビド又はその誘導体と炭酸ジエステルとを反応させることによって形成される下記式(1a):
【0032】
【化6】
【0033】
で表される繰返し単位がより好ましい。なお、前記式(1a)中の*は前記式(1)中の*と同義である。
【0034】
また、前記式(1)において、「RとR」及び/又は「RとR」は互いに結合して環を形成してもよい。このような環としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基が挙げられる。これらのシクロアルキル基及びシクロアルケニル基の炭素数は通常3〜12であり、好ましくは3〜6である。
【0035】
本発明に用いられるイソソルビド系ポリカーボネートにおいて、前記式(1)又は(1a)で表される繰返し単位の含有率としては、全繰返し単位100mol%に対して、55〜98mol%が好ましく、70〜98mol%がより好ましく、80〜98mol%が特に好ましい。前記式(1)又は(1a)で表される繰返し単位の含有率が前記下限未満になると、ガラス転移温度や貯蔵弾性率が低下する傾向にあり、また、剛性が低下しすぎる傾向にある。他方、前記式(1)又は(1a)で表される繰返し単位の含有率が前記上限を超えると、十分に靭性が発現しない傾向にある。
【0036】
前記式(2)で表される繰返し単位において、Xは、芳香環又は脂環構造を含んでいてもよい炭素数6〜30の2価の炭化水素基を表す。このような2価の炭化水素基としては、例えば、2価の芳香環とアルキレン基とを含有する炭素数13〜30(好ましくは13〜28、より好ましくは13〜20)の2価の炭化水素基、2価の脂環構造とアルキレン基とを含有する炭素数8〜30(好ましくは8〜28、より好ましくは8〜20)の2価の炭化水素基、炭素数10〜30(好ましくは10〜25、より好ましくは13〜20)のアルキレン基、炭素数6〜30(好ましくは6〜28、より好ましくは6〜20)のシクロアルキレン基が挙げられる。なお、前記式(2)中の*は隣接する繰返し単位との結合部位を表す。
【0037】
前記2価の芳香環とアルキレン基とを含有する炭素数13〜30の2価の炭化水素基としては、例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕等のビスフェノール化合物に由来する基;ビス(ヒドロキシエトキシ)ビフェニル等のビス(ヒドロキシアルコキシ)ビフェニルに由来する基;ビス{(ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン等のビス{(ヒドロキシアルコキシ)フェニル}アルカンに由来する基が挙げられ、前記2価の脂環構造とアルキレン基とを含有する炭素数8〜30の2価の炭化水素基としては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、アダマンタンジメタノール等の単環又は多環のシクロアルカンジアルキルアルコールに由来する基;ビス(ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン〔水素化ビスフェノールA〕等のビス(ヒドロキシシクロアルキル)アルカンに由来する基が挙げられる。
【0038】
また、前記炭素数10〜30のアルキレン基としては、例えば、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール等のアルカンジオールに由来する基が挙げられ、前記炭素数6〜30のシクロアルキレン基としては、例えば、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオール、アダマンタンジオール等の単環又は多環のシクロアルカンジオールに由来する基が挙げられる。
【0039】
このような前記式(2)で表される繰返し単位の中でも、剛性と耐衝撃性のバランスの観点から、下記式(3):
【0040】
【化7】
【0041】
で表される繰返し単位がより好ましい。
【0042】
前記式(3)で表される繰返し単位において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアリール基のうちのいずれか1つを表す。前記アルキル基の炭素数は通常1〜18であり、好ましくは1〜6である。前記シクロアルキル基の炭素数は通常3〜8であり、好ましくは3〜6である。前記アルケニル基の炭素数は通常2〜12であり、好ましくは2〜6である。前記アリール基の炭素数は通常6〜18であり、好ましくは6〜12である。
【0043】
また、前記式(3)において、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。このような環としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基が挙げられる。これらのシクロアルキル基及びシクロアルケニル基の炭素数は通常3〜12であり、好ましくは3〜6である。
【0044】
前記式(3)中のR及びRは、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基及びアリール基のうちのいずれか1つを表す。前記アルキル基の炭素数は通常1〜18であり、好ましくは1〜12である。前記アルケニル基の炭素数は通常2〜12であり、好ましくは2〜6である。前記アリール基の炭素数は通常6〜18であり、好ましくは6〜12である。
【0045】
前記式(3)において、m及びnはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。また、前記式(3)中の*は隣接する繰返し単位との結合部位を表す。
【0046】
このような繰返し単位のうち、熱分解温度が上昇し、耐熱性が向上するという観点から、後述するビスフェノール又はその誘導体と炭酸ジエステルとを反応させることによって形成される下記式(3a)〜(3b):
【0047】
【化8】
【0048】
で表される繰返し単位が好ましい。なお、前記(3a)〜(3b)中のR〜R及び*は前記式(3)中のR〜R及び*と同義である。
【0049】
本発明に用いられるイソソルビド系ポリカーボネートにおいて、前記式(2)、(3)、(3a)又は(3b)で表される繰返し単位の含有率としては、全繰返し単位100mol%に対して、2〜45mol%が好ましく、2〜30mol%がより好ましく、2〜20mol%が特に好ましい。前記式(2)、(3)、(3a)又は(3b)で表される繰返し単位の含有率が前記下限未満になると、イソソルビド系ポリカーボネートの熱分解温度が上昇せずに耐熱性が向上しない傾向にあり、また、十分に靭性が付与されない傾向にある。他方、前記式(2)、(3)、(3a)又は(3b)で表される繰返し単位の含有率が前記上限を超えると、ガラス転移温度や貯蔵弾性率が低下する傾向にあり、また、剛性が低下しすぎる傾向にある。
【0050】
また、本発明に用いられるイソソルビド系ポリカーボネートにおいては、前記式(1)又は(1a)で表される繰返し単位と前記式(2)、(3)、(3a)又は(3a)で表される繰返し単位が、ポリマー鎖中にランダムに配置されていることが好ましい。これにより、ビスフェノール骨格又はその誘導体骨格による靱性とイソソルビド骨格又はその誘導体骨格による剛性とがバランスよく高水準で発現される。
【0051】
さらに、このようなイソソルビド系ポリカーボネートにおいては、ガラス転移温度が160℃以上であることが好ましい。また、前記イソソルビド系ポリカーボネートは耐熱性に優れたものであり、例えば、熱分解温度は300℃以上であることが好ましく、305℃以上であることがより好ましい。さらに、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量は2万以上であることが好ましく、2.5万以上であることがより好ましい。
【0052】
本発明に用いられるイソソルビド系ポリカーボネートは、例えば、特開2008−24919号公報、特開2009−102536号公報、及び特開2010−37551号公報に記載されているように、含窒素環状化合物やアルカリ金属化合物等の存在下で、イソソルビド系化合物と、ビスフェノール系化合物、炭素数10〜30の脂肪族ジオール及び脂環式ジヒドロキシ化合物のうちの少なくとも1種と、炭酸ジエステルとを所定の割合で溶融して重合させることによって製造することができる。
【0053】
(ポリアミド)
本発明に用いられるポリアミドは、ポリアミド11、ポリアミド12及びポリアミド610からなる群から選択される少なくとも1種である。これらのポリアミドのうちの少なくとも1種と前記イソソルビド系ポリカーボネートとを組み合わせて使用することによって、成形性、耐発泡性、耐分解性及び剛性に優れた樹脂組成物が得られる。これらのポリアミドの中でも、より剛性に優れた樹脂組成物が得られるという観点から、ポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0054】
一方、ポリアミド11、ポリアミド12及びポリアミド610以外のポリアミド(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド10T)とイソソルビド系ポリカーボネートとを組み合わせて使用した場合には、得られる樹脂組成物は耐分解性に劣ったものとなる。また、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド10Tの割合が多い場合には、更に靭性に劣ったものとなり、ポリアミド6、ポリアミド66の割合が多い場合には、更に耐発泡性に劣ったものとなる。
【0055】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、前記イソソルビド系ポリカーボネートと、ポリアミド11、ポリアミド12及びポリアミド610からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドとを、質量比(イソソルビド系ポリカーボネート/ポリアミド)が1/9〜9/1の範囲内で含有するものである。質量比(イソソルビド系ポリカーボネート/ポリアミド)が前記下限未満になると、得られる樹脂組成物の剛性、耐衝撃性が低下する。他方、質量比(イソソルビド系ポリカーボネート/ポリアミド)が前記上限を超えると、得られる樹脂組成物の成形性、耐薬品性が低下する。質量比(イソソルビド系ポリカーボネート/ポリアミド)としては、成形性及び剛性に優れた樹脂組成物が得られるという観点から、2/8〜8/2が好ましく、2/8〜7/3がより好ましい。
【0056】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等の公知の各種添加剤が含まれていてもよい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、他の樹脂を混合してもよい。
【0057】
本発明の樹脂組成物の製造方法、すなわち、前記イソソルビド系ポリカーボネートと、ポリアミド11、ポリアミド12及びポリアミド610からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドとの混合方法としては特に制限はなく、押出機、ミキサー、ニーダー、成形機の溶融ゾーン等を用いた溶融混練;有機溶媒に溶解して均一に混合した後、溶媒を除去する方法等、公知の方法を採用することができる。
【0058】
このような本発明の樹脂組成物は、例えば、射出成形、プレス成形、押出成形、紡糸、インサート成形、二色成形等、高分子材料を成形する際に用いられる一般的な成形方法を用いて、樹脂成形体に成形することができる。このような樹脂成形体としては、自動車用部品(インストルメントパネル、カーペット、天井用材料等の内装用部品、ランプ、レンズ、バンパ、外板等の外装部品)、飲料用容器、電化製品の筐体、カーペット、電気・電子部品用材料、スーツケース、樹脂トレー、食器類、建築材料、洋服等のための繊維、樹脂ネジ、樹脂ナット、電子基盤、各種フィルム等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いたイソソルビド系ポリカーボネートの合成方法を以下に示す。
【0060】
(合成例)
減圧装置と攪拌装置とを備えるガラス容器に、イソソルビド(Aldrich社製)60.0g(410.57mmol)、ビスフェノールA(和光純薬工業(株)製)4.69g(20.53mmol)及び炭酸ジフェニル(東京化成工業(株)製)92.54g(432.0mmol)を仕込んだ。これに、触媒として4−ジメチルアミノピリジン(融点:108〜110℃。以下、「DMAP」と略す。)7.0mgを添加した。
【0061】
窒素ガスを20ml/分でガラス容器内に供給し、攪拌しながらオイルバスを用いてガラス容器内の温度を120℃まで上昇させた後、5分間保持した。その後、ガラス容器内の温度を160℃まで上昇させた後、5分間保持した。さらに、ガラス容器内の温度を180℃まで上昇させたところ、フェノールが発生したため、ガラス容器内を0.1Torrまで減圧して前記フェノールを溜去しながら、この状態を30分間保持した。次いで、ガラス容器内の温度を200℃まで上昇させ、窒素ガスの供給を停止した後、20分間保持した。その後、ガラス容器内の温度を230℃まで徐々に上昇させた後、230℃〜240℃で5時間保持して溶融重合を実施し、ポリカーボネートを合成した。反応終了後、ガラス容器内を室温まで冷却した。
【0062】
次に、得られた粗ポリカーボネートをクロロホルムに溶解し、この溶液にメタノールを添加してポリカーボネートを沈殿させた。この溶解・沈殿処理を合計2回繰返してポリカーボネートを精製した。精製したポリカーボネートを110℃で12時間真空乾燥し、イソソルビド骨格含有繰返し単位の含有率が95mol%であり、ビスフェノールA骨格含有繰返し単位の含有率が5mol%であるイソソルビド系ポリカーボネート(isPC)を得た。
【0063】
このイソソルビド系ポリカーボネートの物性を下記の測定方法に従って測定した。
【0064】
<分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ((株)昭和通商製「Shodex GPC−101」)を用い、下記条件で前記イソソルビド系ポリカーボネートの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
カラム:昭和電工(株)製「K−805L」
溶媒:クロロホルム
流量:1.0ml/分
標準物質:標準ポリスチレン
その結果、数平均分子量(Mn)は25,000、重量平均分子量(Mw)は52,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。
【0065】
<ガラス転移温度>
前記イソソルビド系ポリカーボネート約5.0mgを秤量し、示差走査熱量計(TA Instrument社製「DSC Q1000」)を用いて温度範囲25〜250℃、昇温速度10℃/分の条件で前記イソソルビド系ポリカーボネートのガラス転移温度を測定した。その結果。ガラス転移温度(Tg)は169℃であった。
【0066】
<熱分解温度>
前記イソソルビド系ポリカーボネート約7.0mgを秤量し、熱分析装置(理学電機(株)製「Thermoplus TG8120」)を用いて温度範囲25〜500℃、昇温速度10℃/分の条件で前記イソソルビド系ポリカーボネートの熱重量変化を測定した。前記イソソルビド系ポリカーボネートの質量が5%減少した時点の温度を熱分解温度とした。その結果、熱分解温度(Td)は318℃であった。
【0067】
(実施例1)
循環混合が可能な混練機(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製「マイクロレオロジーコンパウンダー HAAKE−MiniLab」)を用いて、前記合成例で得たイソソルビド系ポリカーボネート(isPC)とポリアミド11(PA11、アルケマ株式会社製「リルサンBMNO」)とを、質量比:isPC/PA11=30/70、スクリュー回転数:200rpm、混練温度:250℃、混練時間:10分間の条件で加熱溶融混練し、樹脂組成物を得た。
【0068】
この樹脂組成物を、小型真空加熱プレス機(株式会社井元製作所製「IMC−1824型」)を用い、設定温度250℃で1分間真空プレス成形して樹脂シートを作製した。得られた樹脂シートを、トリミングカッター(WISTA社製「C−4」)を用いて切出し、物性測定用試験片を作製した。
【0069】
(実施例2)
イソソルビド系ポリカーボネートとポリアミド11との質量比をisPC/PA11=50/50に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0070】
(実施例3)
イソソルビド系ポリカーボネートとポリアミド11との質量比をisPC/PA11=70/30に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0071】
(実施例4)
ポリアミド11の代わりにポリアミド12(PA12、宇部興産株式会社製「UBESTA3024」)を用い、混練温度を230℃に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、設定温度を230℃に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0072】
(実施例5)
ポリアミド11の代わりにポリアミド610(PA610、ダイセル・エボニック株式会社製「Vestamid Terra HS16」)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0073】
(比較例1)
イソソルビド系ポリカーボネートの代わりにビスフェノール系ポリカーボネート(bpPC、三菱化学エンジニアリングプラスチック株式会社製「ユーピロンS−2000」)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0074】
(比較例2)
イソソルビド系ポリカーボネートの代わりにビスフェノール系ポリカーボネート(bpPC、三菱化学エンジニアリングプラスチック株式会社製「ユーピロンS−2000」)を用い、ポリアミド11の代わりにポリアミド6(PA6、東レ株式会社製「アミラン1017」)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0075】
(比較例3)
ビスフェノール系ポリカーボネートとポリアミド6との質量比をbpPC/PA6=50/50に変更した以外は比較例2と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0076】
(比較例4)
ビスフェノール系ポリカーボネートとポリアミド6との質量比をbpPC/PA6=70/30に変更した以外は比較例2と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0077】
(比較例5)
ポリアミド11の代わりにポリアミド6(PA6、東レ株式会社製「アミラン1017」)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0078】
(比較例6)
イソソルビド系ポリカーボネートとポリアミド6との質量比をisPC/PA6=50/50に変更した以外は比較例5と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0079】
(比較例7)
イソソルビド系ポリカーボネートとポリアミド6との質量比をisPC/PA6=70/30に変更した以外は比較例5と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0080】
(比較例8)
ポリアミド11の代わりにポリアミド66(PA66、東レ株式会社製「アミラン3007」)を用い、混練温度を280℃に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0081】
(比較例9)
イソソルビド系ポリカーボネートの代わりにビスフェノール系ポリカーボネート(bpPC、三菱化学エンジニアリングプラスチック株式会社製「ユーピロンS−2000」)を用い、ポリアミド11の代わりにポリアミド12(PA12、宇部興産株式会社製「UBESTA3024」)を用い、混練温度を230℃に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、設定温度を230℃に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0082】
(比較例10)
イソソルビド系ポリカーボネートの代わりにビスフェノール系ポリカーボネート(bpPC、三菱化学エンジニアリングプラスチック株式会社製「ユーピロンS−2000」)を用い、ポリアミド11の代わりにポリアミド610(PA610、ダイセル・エボニック株式会社製「Vestamid Terra HS16」)を用い、混練温度を230℃に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、設定温度を230℃に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0083】
(比較例11)
ポリアミド11の代わりにポリアミド10T(PA10T、ダイセル・エボニック株式会社製「Vestamid HT Plus M3000」)を用い、混練温度を320℃に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに、設定温度を320℃に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂シート及び物性測定用試験片を作製した。
【0084】
<成形性(流動性)>
実施例及び比較例において、樹脂シートを成形する際、樹脂組成物が溶融して高流動状態となり、成形しやすかったものと、流動せずに成形しにくかったものとがあった。これは、樹脂組成物を調製する際の溶融混練時に、ポリカーボネートとポリアミドとの間で架橋反応が発生したため、流動性が低下したと考えられる。
【0085】
実施例及び比較例で使用したポリカーボネート及びポリアミドは全て1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP、和光純薬工業株式会社製)に溶解するため、樹脂組成物がHFIPに完全に溶解すれば、架橋反応は発生しておらず、成形性(流動性)は良好と判断でき、樹脂組成物がHFIPに溶解しない場合には、架橋反応が発生しており、成形性(流動性)は不良と判断できる。そこで、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物をHFIPに溶解し、溶解性を下記基準で判定して成形性(流動性)を評価した。その結果を表1に示す。
A:100質量部のHFIPに対して10質量部の樹脂組成物が完全に溶解する(成形性は極めて良好)。
B:100質量部のHFIPに対して5質量部の樹脂組成物は完全に溶解するが、10質量部では溶解しない(成形性は良好)。
C:100質量部のHFIPに対して1質量部の樹脂組成物は完全に溶解するが、5質量部では溶解しない(成形性は不良)。
D:100質量部のHFIPに対して1質量部の樹脂組成物が溶解しない(成形性は極めて不良)。
【0086】
<耐発泡性>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを目視により観察し、樹脂シート中の気泡の状態を下記基準で判定して耐発泡性を評価した。その結果を表1に示す。
A:目視で確認できる1mm未満の気泡が存在しない。
B:目視で確認できる1mm未満の気泡が樹脂シート全体の2%未満である。
C:目視で確認できる2mm未満の気泡が樹脂シート全体の2%未満である。
D:目視で確認できる1mm以上の気泡が樹脂シート全体の2%以上である。
【0087】
<耐分解性>
実施例及び比較例で作製した物性測定用試験片について、JIS K7244−4に準拠して、粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製「DVA−220」)を用いて、周波数:10Hz、昇温速度:5℃/分、測定温度範囲:0〜250℃の条件で引張損失係数tanδを測定してポリカーボネートのガラス転移温度を求め、加熱プレス成形によるポリカーボネートのガラス転移温度の低下を下記基準で判定し、耐分解性を評価した。
A:ポリカーボネートのガラス転移温度の低下が1℃未満である。
B:ポリカーボネートのガラス転移温度の低下が1℃以上3℃未満である。
C:ポリカーボネートのガラス転移温度の低下が3℃以上5℃未満である。
D:ポリカーボネートのガラス転移温度の低下が5℃以上である。
【0088】
<剛性>
実施例及び比較例で作製した物性測定用試験片について、JIS K7244−4に準拠して、粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製「DVA−220」)を用いて、周波数:10Hz、昇温速度:5℃/分、測定温度範囲:0〜250℃の条件で引張貯蔵弾性率を測定し、100℃における樹脂組成物の引張貯蔵弾性率を求めて下記基準で判定し、剛性を評価した。
A:樹脂組成物の引張貯蔵弾性率がポリアミドの引張貯蔵弾性率の1.5倍以上である。
B:樹脂組成物の引張貯蔵弾性率がポリアミドの引張貯蔵弾性率の1.0倍以上1.5倍未満である。
C:樹脂組成物の引張貯蔵弾性率がポリアミドの引張貯蔵弾性率の0.9倍以上1.0倍未満である。
D:樹脂組成物の引張貯蔵弾性率がポリアミドの引張貯蔵弾性率の0.9倍未満である。
【0089】
【表1】
【0090】
表1に示した結果から明らかなように、イソソルビド系ポリカーボネートと、ポリアミド11、ポリアミド12及びポリアミド610からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドとを所定の質量比で含有する本発明の樹脂組成物(実施例1〜5)は、成形性(流動性)、耐発泡性、耐分解性及び剛性に優れたものであることが確認された。
【0091】
一方、ビスフェノール系ポリカーボネートとポリアミド11又はポリアミド12とを含有する樹脂組成物(比較例1及び9)は、成形性(流動性)、耐分解性及び剛性に劣るものであり、ビスフェノール系ポリカーボネートとポリアミド6とを含有する樹脂組成物(比較例2〜4)は、成形性(流動性)、耐発泡性、耐分解性及び剛性に劣るものであり、イソソルビド系ポリカーボネートとポリアミド6とを含有する樹脂組成物(比較例5〜7)は、耐分解性に劣る(イソソルビド系ポリカーボネートの割合が少なくなると、更に耐発泡性及び剛性にも劣る)ものであり、イソソルビド系ポリカーボネートとポリアミド66とを含有する樹脂組成物(比較例8)は、耐発泡性、耐分解性及び剛性に劣るものであり、ビスフェノール系ポリカーボネートとポリアミド610とを含有する樹脂組成物(比較例10)は、成形性(流動性)及び耐分解性に劣るものであり、イソソルビド系ポリカーボネートとポリアミド10Tとを含有する樹脂組成物(比較例11)は、耐分解性及び剛性に劣るものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明によれば、成形性、耐発泡性、耐分解性及び剛性に優れた、ポリカーボネートとポリアミドとを含有する樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0093】
したがって、本発明の樹脂組成物は、剛性に優れていることから、自動車用部品(インストルメントパネル、カーペット、天井用材料等の内装用部品、ランプ、レンズ、バンパ、外板等の外装部品)、飲料用容器、電化製品の筐体、カーペット、電気・電子部品用材料、スーツケース、樹脂トレー、食器類、建築材料、洋服等に用いられる樹脂材料として有用である。