(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルミニウム化合物、ケイ素化合物及びチタン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む疎水性無機微粒子を予め5倍量以上の親水性溶媒に分散させて、フッ素系共重合体、アクリル系共重合物、ウレタン系共重合物及びシリコーン系共重合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む水系分散体に配合し、前記はっ水成分に対する前記疎水性無機微粒子の割合が、5〜30質量%である、繊維製品のはっ水加工用水系分散体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(繊維製品のはっ水加工用水系分散体)
本発明の繊維製品のはっ水加工用水系分散体は、縫目滑脱防止成分とはっ水成分とを含有することを特徴とする。縫目滑脱防止成分としては、疎水性無機微粒子を用いる。本発明で用いる疎水性無機微粒子の材質としては、アルミニウム、ケイ素、チタンなどが使用できる。また、本明細書でいう疎水性無機微粒子とは、材料となる無機微粒子の表面を、シリコーンオイル、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、オクチルシランなどを用いて処理し、メチル基、オクチル基といった疎水基を粒子表面に修飾したものである。
【0011】
疎水性の度合いとしては、メタノール湿潤性(M値)を参照することができる。メタノール湿潤性は、微粒子の疎水性の程度を表す概念であり、メタノール湿潤性が高いほど親水性が低いことを示し、水・メタノール混合溶液に微粒子を均一分散させる際、必要最低量のメタノールの容量割合で表される。メタノール湿潤性は特開2014−214286号公報に記載されるような以下の方法で算出される。
【0012】
<メタノール湿潤性(M値)算出法>
測定試料(疎水性無機微粒子)0.2gを容量300mLのビーカー中の50mLの水に添加し、続いてメタノールをビュレットから測定試料の全量が懸濁するまで滴下する。この際ビーカー内の溶液をマグネティックスターラーで常時撹拌し、測定試料の全量が溶液中に均一懸濁された時点を終点とし、終点におけるビーカーの液体混合物のメタノールの容量百分率がメタノール湿潤性(M値)となる。
本発明で用いられる疎水性無機微粒子のM値は、0より大きければ良いが、好ましくは30〜80であり、より好ましくは40〜70である。
【0013】
疎水性無機微粒子は、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物のいずれかであることが好ましい。アルミニウム化合物としては、アルミナ(酸化アルミニウム)微粒子等が挙げられ、ケイ素化合物としてはシリカ微粒子等が挙げられ、チタン化合物としては、酸化チタン微粒子等が挙げられる。これらのうち、入手しやすさ、洗濯耐久性の向上の点で、疎水性シリカ微粒子がより好ましい。
【0014】
疎水性無機微粒子として市場から入手できる製品としては、WACKER HDK H15、H20、H30(旭化成ワッカーシリコーン株式会社、「WACKER HDK」は旭化成ワッカーシリコーン株式会社の登録商標)、Nipsil SS−10、15、115、70、50(東ソーシリカ株式会社、「Nipsil」は東ソーシリカ株式会社の登録商標)、AEROSIL R972、R974、R976S、RX50、RX200、RX300、RA200H、RA200HS、AEROXIDE Alu C805、TiO
2 T805、TiO
2 NKT90(日本アエロジル株式会社、「AEROSIL」、「AEROXIDE」は日本アエロジル株式会社の登録商標)などが挙げられる。
【0015】
疎水性無機微粒子の粒径は、平均一次粒子径が1〜100nmの微粒子が好ましく、より好ましいのは平均一次粒子径5〜50nmの微粒子であり、さらに好ましくは平均一次粒子径5〜30nmの微粒子である。生地表面に微細な粒子が付着することによって縫目滑脱性が向上することが一般的に知られており、より小さな粒子径を持つ粒子は生地の単位面積当たりに多く付着させることができるため、縫目滑脱の改善効果が大きくなることが期待できる。一方、平均一次粒子径が100nmを超えると単位面積当たりの粒子量が減ることにより、充分な縫目滑脱の改善効果が得られないおそれがある。
【0016】
無機微粒子の平均一次粒子径は公知の方法で測定できるが、例えば、透過型電子顕微鏡を用いた観察によって、数平均による平均一次粒子径を測定、算出可能である。
【0017】
また、疎水性無機微粒子をはっ水加工用水系分散体に配合する際は、添加後の分散性を良好にするために分散剤を併用して、予め5倍量以上、好ましくは5〜20倍量、より好ましくは6〜10倍量の親水性溶媒を用いて分散させておくことが好ましい。使用する親水性溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル・アセタール類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン・アルデヒド類、乳酸メチル等のエステル類、グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール誘導体類、プロピオン酸等のカルボン酸・無水物類、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物類、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素化合物類等が好ましく例示できるが、特に好ましくは、水性媒体中への疎水性無機微粒子の均一分散性が優れ、かつ容易に除去可能である等の点からアルコール類、中でもメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールである。
【0018】
分散剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなどの公知の非イオン界面活性剤を1種あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
【0019】
疎水性無機微粒子を親水性媒体中に分散させ、均一分散体とするための乳化分散装置としては、特に限定されるものではないが、例えばT.K.ホモミクサー(特殊機化工業社製)等の高速剪断タービン型分散機、ピストン型高圧式均質化機(ゴーリン社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)等の高圧ジェットホモジナイザー、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製)等の超音波式乳化分散機、アトライター(三井鉱山社製)等の媒体撹拌型分散機、コロイドミル(日本精機製作所製)等の強制間隙通過型分散機等の乳化分散装置を用いることにより均一分散処理することが望ましい。
【0020】
本発明の水系分散体に含まれるはっ水成分は、繊維表面にはっ水性の被膜を形成することが可能であり、このはっ水性被膜が前述の疎水性無機微粒子を繊維表面に固定するバインダーとして機能するものであれば特に制限されないが、フッ素系共重合物、アクリル系共重合物、ウレタン系共重合物及びシリコーン系共重合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0021】
フッ素系共重合物としては、例えば特開2014−172979号公報に記載のような、(A)特定の疎水性ブロックポリイソシアネートが、水又は水を主成分とする溶液中に、カチオン界面活性剤で強制乳化されてなる疎水性ブロックポリイソシアネート水分散液と、(B)炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するはっ水撥油性成分と、を含み、前記疎水性ブロックポリイソシアネートとカチオン界面活性剤の重量比率が100:0.2〜100:3であるものの反応物、および、前記カチオン界面活性剤が、炭素数8〜24のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩および炭素数8〜24のモノアルキルアミン塩よりなる群から選択されるものの反応物等が挙げられるが、特に限定されない。具体的には例えば、2−ペルフルオロヘキシルエチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート及び塩化ビニルなどからなるフッ素系共重合物や、その他、フッ素系はっ水剤として市場から入手できるものを用いることができる。
【0022】
アクリル系共重合物としては、例えば特開2006−328624号公報に記載のような、フッ素を含まない重合性単量体、炭素数12〜24のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが重合したアクリル系共重合体等が挙げられるが、特に限定されない。アクリル系共重合体では、炭素数12以上のアルキル基を有するアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをアクリル系共重合体に対して60質量%以上、好ましくは70質量%以上共重合させてあるものが好ましい。
【0023】
炭素数12以上のアルキル基は、鎖状アルキル基でも環状アルキル基であってもよく、鎖状アルキル基は直鎖でも分岐を有してもよいが、鎖状で直鎖のものがより好ましい。例えば、ラウリル基、ミリスチル基、ステアリル基、イソステアリル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
【0024】
炭素数12以上のアルキル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルと共重合する重合性単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸グリシジル、N−ビニルピロリドン等が挙げられるが、これらに限ったものではない。
【0025】
上記のようなアクリル系共重合物は通常、公知の乳化重合法によって得ることができる。例えば、所定の反応容器に上記の各種重合性単量体、界面活性剤および水等を仕込んで公知の方法で乳化した後、重合開始剤を加え、攪拌しながら窒素雰囲気下、加温することにより得られる。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩等のアゾ系化合物が挙げられる。
【0026】
ウレタン系共重合物としては、例えば特開2015−52093号公報に記載のような、活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート)(B)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂であって、前記活性水素成分(A)が炭素数8〜40の脂肪族炭化水素基を有する1価の活性水素化合物(a1)を前記(A)の質量に基づいて0.1〜20質量%含有するポリウレタン樹脂等が挙げられるが、特に限定されない。
【0027】
シリコーン系共重合物としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサンのような反応性シリコーンオイルを用いて作成したシリコーン共重合物や特開2004−59609号公報に記載のような、オルガノポリシロキサンの側鎖にアミノ基が結合したアミノ変性シリコーンオイルと分子中に2個以上のイソシアネート基をもつ多官能イソシアネートを反応させたシリコーン系共重合物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0028】
シリコーン共重合物の末端又は側鎖にアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、シラノール等の官能基やアルキル基、フェニル基、アルキレンオキシド基を持つ変性シリコーンを用いることもできる。また、2種類以上の変性シリコーンを用いてもよい。
【0029】
本発明の水系分散体は、疎水性無機微粒子を親水性溶媒に分散した分散液を、はっ水成分であるフッ素系共重合物、アクリル系共重合物、ウレタン系共重合物及びシリコーン系共重合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む水系分散体に配合することによって得ることができる。本発明の水系分散体によって、優れたはっ水性を繊維に付与することが可能で、かつ、洗濯耐久性に優れ、また、処理した繊維の滑脱抵抗値を抑えることができる。特に、フッ素を含まないはっ水剤は縫目滑脱性を悪化させる傾向が大きいため、疎水性無機微粒子を添加することによる滑脱防止作用が効果的に発揮される。
【0030】
本発明の水系分散体中の疎水性無機微粒子の量は、はっ水成分に対し0.5〜50.0質量%であり、より好ましくは1.0〜40.0質量%、さらに好ましくは5.0〜25.0質量%である。この範囲内であれば、洗濯耐久性の向上と縫目滑脱の防止に有効である。疎水性無機微粒子が0.5質量%未満であれば縫目滑脱を防止する効果が十分に得られない。疎水性無機微粒子が50.0質量%を超えると、はっ水性が低下するおそれがある。
【0031】
本発明の水系分散体には、前記のはっ水成分と滑脱防止成分、及び、それらを分散させるための分散剤以外にも、本発明の効果を損なわない限りにおいて任意の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては例えば、防しわ剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱剤等の繊維用薬剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、硬化促進剤、消臭剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
(繊維製品へのはっ水加工方法)
本発明の水系分散体を繊維製品に処理する場合には、上記の水系分散体と共に、(a)2官能以上のブロックトイソシアネートの水系分散体又は乳化体、(b)N−メチロールメラミンのような架橋剤を併用することが好ましい。
【0033】
(a)2官能以上のブロックトイソシアネートは公知の方法により、2官能以上のイソシアネートと適当なブロック剤とを反応させることで得られる。イソシアネートとしては、4,4’−ビスイソシアナトフェニルメタン、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートの3量体やトリメチロールプロパンアダクト体等が挙げられる。
【0034】
また、イソシアネートのブロック剤としては、2級又は3級アルコール類、活性メチレン化合物、フェノール類、オキシム類、置換ピラゾール類、カプロラクタム等が挙げられる。通常、これらのブロックトイソシアネートは公知の方法により、界面活性剤を用いて乳化・分散されたものが使用される。また、予め全イソシアネート基の70〜95%をブロックした後に、適当な分子量のポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールを残イソシアネート基と反応させることで、ブロックトイソシアネートは自己乳化性を示し、はっ水加工用水系分散体により処理した繊維製品の洗濯耐久性の向上のみならず、製品の安定性の向上に対し効果を示す。
【0035】
(b)N−メチロールメラミンとしては、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等が挙げられる。
【0036】
本発明のはっ水加工用水系分散体は、繊維製品に対して、優れた洗濯耐久性を有するはっ水性を付与するのに有用である。このために繊維製品は、本発明の水系分散体を含む加工液で処理される。
加工液は、前述のはっ水加工用水系分散体と、前述のブロックトイソシアネート、N−メチロールメラミン等を、水で所定濃度に希釈することで得られる。また、繊維製品の仕上げ加工分野において公知のさらなる薬剤、例えば、柔軟剤、帯電防止剤、難燃剤などを加工液中に含有してもよい。
【0037】
繊維製品のはっ水加工方法については、特に限定されず、種々の方法が採用でき、はっ水加工すべき繊維製品に所望の量(生地重量に対して0.5〜6.0%)を付着させればよく、連続法又はバッチ法等が挙げられる。
バッチ法は、被処理物を加工液に浸漬する工程と、当該工程後に被処理物に残存する水を除去する工程とからなる。該バッチ法は、被処理物が布帛状でない場合、たとえばバラ毛、トップ、糸等連続法に適さない場合に採用するのが好ましい。浸漬する工程においては、たとえば、ワタ染機、チーズ染色機、液流染色機、ビーム染色機等を用いることができる。水を除去する操作においては、チーズ乾燥機、タンブルドライヤー等の温風乾燥機、高周波乾燥機等を用いることができる。
【0038】
いずれの場合も、加工液に被処理物である繊維を浸漬した後の乾燥(熱処理)工程は、80〜180℃で行うことができ、100℃以上の温度で熱処理することが好ましい。
【0039】
はっ水処理を施される繊維は、本発明の効果を生じる限り特に制限されず、例えば、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等の合成繊維、綿、麻、絹、ウール等の天然繊維やそれらの組み合わせを用いることができる。特に、薄手の合成繊維生地、すなわち例えば、目付10〜100g/m
2、使用繊維が11〜67dtex(10〜60d)程度である、ナイロンやポリエステル生地に対しては顕著な効果を発揮する。
【実施例】
【0040】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらによって制限されるものではない。
【0041】
<実施例1>
疎水性シリカ微粒子(トリメチルシリル基で表面修飾、数平均一次粒子径 約12nm、M値58)15部をエチルアルコール90部に対して分散剤とともに投入し、ホモミキサーを用いて700rpmで10分間撹拌することにより、疎水性シリカ微粒子の均一分散液を得た。
この分散液を、はっ水成分としてステアリルアクリレート、メタクリル酸2−エチルヘキシル、ステアリルジメチルアミン塩酸塩などからなるアクリル系共重合物を含む水系分散体(はっ水成分の濃度:30質量%)に対して、20質量%(有効成分比)添加し、本発明の繊維製品のはっ水加工用水系分散体を得た。
【0042】
<実施例2>
疎水性シリカ微粒子(トリメチルシリル基で表面修飾、数平均一次粒子径 約30nm、M値62)15部をエチルアルコール90部に対して分散剤とともに投入し、ホモミキサーを用いて700rpmで10分間撹拌することにより、疎水性シリカ微粒子の均一分散液を得た。
この分散液を実施例1と同様のアクリル系共重合物を含む水系分散体に対して、20質量%添加し、本発明の繊維製品のはっ水加工用水系分散体を得た。
【0043】
<実施例3>
疎水性シリカ微粒子(トリメチルシリル基で表面修飾、数平均一次粒子径 約7nm、M値58)15部をエチルアルコール90部に対して分散剤とともに投入し、ホモミキサーを用いて700rpmで10分間撹拌することにより、疎水性シリカ微粒子の均一分散液を得た。
この分散液を実施例1と同様のアクリル系共重合物を含む水系分散体に対して、20質量%添加し、本発明の繊維製品のはっ水加工用水系分散体を得た。
【0044】
<実施例4>
実施例1と同様に疎水性シリカの水系分散体をアクリル系共重合物の水系分散体に対して、5.0質量%添加して、はっ水加工用水系分散体を作成した。
【0045】
<実施例5>
実施例1と同様に疎水性シリカの水系分散体をアクリル系共重合物の水系分散体に対して、30.0質量%添加して、はっ水加工用水系分散体を作成した。
【0046】
<実施例6>
疎水性チタニア微粒子(オクチルシリル基で表面修飾、数平均一次粒子径 約21nm、M値65)15部をエチルアルコール90部に対して分散剤とともに投入し、ホモミキサーを用いて700rpmで10分間撹拌することにより、疎水性チタニア微粒子の均一分散液を得た。
この分散液を実施例1と同様のアクリル系共重合物を含む水系分散体に対して、20質量%添加し、本発明の繊維製品のはっ水加工用水系分散体を得た。
【0047】
<実施例7>
疎水性アルミナ微粒子(オクチルシリル基で表面修飾、数平均一次粒子径 約13nm、M値60)15部をエチルアルコール90部に対して分散剤とともに投入し、ホモミキサーを用いて700rpmで10分間撹拌することにより、疎水性アルミナ微粒子の均一分散液を得た。
この分散液を実施例1と同様のアクリル系共重合物を含む水系分散体に対して、20質量%添加し、本発明の繊維製品のはっ水加工用水系分散体を得た。
【0048】
<実施例8>
疎水性シリカ微粒子(ジメチルシリル基で表面修飾、数平均一次粒子径 約7nm、M値45)5部をエチルアルコール30部に対して分散剤とともに投入し、ホモミキサーを用いて800rpmで10分間撹拌することにより、疎水性シリカ微粒子の均一分散液を得た。
この分散液を2−ペルフルオロヘキシルエチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、塩化ビニルなどからなるフッ素系共重合物を含む水系分散体に対して、10質量%添加し、本発明の繊維製品のはっ水加工用水系分散体を得た。
【0049】
<実施例9>
疎水性シリカ微粒子(ジメチルシリル基で表面修飾、数平均一次粒子径 約12nm、M値45)15部をエチルアルコール90部に対して分散剤とともに投入し、ホモミキサーを用いて900rpmで10分間撹拌することにより、疎水性シリカ微粒子の均一分散液を得た。
この分散液をグリセリンジドデシルエーテル、ポリオキシテトラメチレングリコール、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、エチレングリコールなどからなるウレタン系共重合物に対して、10質量%添加し、本発明の繊維製品のはっ水加工用水系分散体を得た。
【0050】
<実施例10>
疎水性シリカ微粒子(ジメチルシリル基で表面修飾、数平均一次粒子径 約16nm、M値48)15部をエチルアルコール90部に対して分散剤とともに投入し、ホモミキサーを用いて900rpmで10分間撹拌することにより、疎水性シリカ微粒子の均一分散液を得た。
この分散液を側鎖変性ジアミノシリコーン、ヘキサメチレンジイソシアネートなどからなるシリコーン系共重合物に対して、20質量%添加し、本発明の繊維製品のはっ水加工用水系分散体を得た。
【0051】
<比較例1>(親水性無機微粒子の使用)
実施例1の疎水性シリカ微粒子の代わりに、市販のコロイダルシリカ(スノーテックスAK(数平均一次粒子径 10−15nm、M値0)、日産化学工業社製、「スノーテックス」は同社の商標)を実施例1と同様のはっ水組成物に対して20質量%添加し、はっ水加工用水系分散体を得た。
【0052】
<比較例2>(疎水性無機微粒子無し)
実施例1と同様のアクリル系共重合物の水系分散体を使用して、疎水性シリカ微粒子を添加していないはっ水加工用水系分散体を作成した。
【0053】
<比較例3>(疎水性無機微粒子無し)
実施例9と同様のウレタン系共重合物の水系分散体を使用して、疎水性シリカ微粒子を添加していないはっ水加工用水系分散体を作成した。
【0054】
<比較例4>(疎水性無機微粒子無し)
実施例10と同様のシリコーン系共重合物の水系分散体を使用して、疎水性シリカ微粒子を添加していないはっ水加工用水系分散体を作成した。
【0055】
<比較例5>(疎水性無機微粒子無し)
パラフィンワックスなどからなるワックス系混合物の水系分散体を使用して、滑脱防止成分を添加していないはっ水加工用水系分散体を作成した。
【0056】
<比較例6>(滑脱防止効果を得られないはっ水組成物を使用)
実施例1と同様の疎水性シリカ微粒子の分散液を、比較例5と同様のワックス系混合物に対して20質量%添加し、水系分散体を得た。
【0057】
<はっ水性の評価>
実施例1〜10、比較例1〜6の水系分散体 50g/L、メイカネートFM−1(明成化学工業社製ブロックドイソシアネート):有効成分30% 10g/Lとなるよう水で希釈した加工液を調整し、ポリエステル布(目付:60g/m
2、使用糸:56dtex(50d))及びナイロン布(目付:57.5g/m
2、使用糸:44dtex(40d))にパティングし、2本のゴムローラーでニップ(ピックアップ55%)し、110℃にて2分間乾燥させた後、170℃にて1分間キュアを行って評価布を作成した。得られた評価布を用いてはっ水性をJIS L 1092(2009)のスプレー法にて評価した。評価布は、いずれの場合も洗濯後自然乾燥を行った。なお、はっ水性は、表1に示す1〜5の5段階の数値にて表記し、数字に+(−)の付いた場合、その数字の評価よりもわずかに良い(悪い)ことを示す。結果を表2、表3に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
<はっ水性の洗濯耐久性の評価>
作成した評価布を洗濯回数0回(HL−0)とし、JIS L 1092(2009)に記載の洗濯方法に準じて洗濯を10回(HL−10)、20回(HL−20)行った後、同様にはっ水性を評価した。結果を表2、表3に示す。
【0060】
<縫目滑脱性の評価>
実施例1〜10、比較例1〜6の処方でポリエステルタフタ布(目付:60g/m
2、使用糸:56dtex(50d))をはっ水加工と同様に加工し、JIS L 1096−99.8.21.1縫目滑脱法B法に準じて、荷重117.2N(12kgw)にて経糸滑脱で試験を行い、縫目滑脱性を評価した。縫目滑脱性は一般的に滑脱抵抗値が3mm以下の性能が必要とされており、本発明における縫目滑脱防止性の基準として、3mm以下の滑脱抵抗値を設定した。結果を表2、表3に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示されるとおり、実施例1〜8はいずれも、初期はっ水性、洗濯耐久性ともに優れており、かつ、滑脱抵抗値も良好であった。一方、親水性無機微粒子を用いた比較例1は、はっ水性の洗濯耐久性が得られなかった。また無機微粒子を用いない比較例2では滑脱抵抗値が大きく、滑脱が生じやすい傾向が見られた。
【0063】
【表3】
【0064】
表3に示されるとおり、実施例9、10はいずれも初期はっ水性、洗濯耐久性ともに優れていた。また、実施例9は滑脱抵抗値も良好であった。また、はっ水成分としてシリコーン系共重合物を用いると滑脱抵抗値がきわめて大きくなるところ(比較例4)、シリコーン系共重合物に疎水性無機微粒子を添加すると(実施例10)、初期はっ水性及び洗濯耐久性を維持しながら、滑脱抵抗値が大幅に改善された。また、はっ水成分としてワックス系混合物を用いると、無機微粒子の添加の効果がみられなかった(比較例5、比較例6)。