【実施例】
【0023】
先ず、第1実施例に係る負圧波発生装置1について、
図1,
図2,
図5を用いて詳細に説明する。
【0024】
図5に示すように、トンネル100には、列車200が、入口(坑口)101から高速で突入し、その反対側となる出口(坑口)102から退出する。このように、列車200が高速でトンネル100内に突入した際には、パルス状の圧力波となるトンネル微気圧波W2が、出口102から外部に向けて放射されるときがある。そこで、本発明に係る負圧波発生装置1は、例えば、トンネル100の出口102付近に設けられており、上記トンネル微気圧波W2に対して、負圧波W3を発生させることにより、そのトンネル微気圧波W2を低減可能となっている。
【0025】
図1に示すように、負圧波発生装置1は、円筒状をなす真空容器11を有している。この真空容器11の前端部11aには、円形をなす開口部11bが開口されている。また、真空容器11内には、環状をなす弁体12が、開口部11bに対して進退可能に支持されている。即ち、弁体12は、開口部11bと同軸状に配置されており、弁体12の開閉方向は、当該弁体12の軸方向、及び、開口部11bの中心軸方向と一致している。
【0026】
なお、真空容器11には、ポンプ接続口11cが形成されており、このポンプ接続口11cには、真空ポンプ24が接続されている。これにより、真空ポンプ24を駆動させることにより、真空容器11内を所定の圧力(真空状態)に維持することができる。但し、真空状態とは、真空容器11内に気体が無い状態、あるいは、あっても極めて僅かな状態のことであって、言い換えれば、大気圧よりも低い圧力状態のことである。
【0027】
そして、弁体12の後面には、可動部材13が設けられている。この可動部材13は、左右一対のフレーム部13aと、連結部13bとから構成されている。フレーム部13aの前端は、弁体12と接続されており、フレーム部13aの後端間は、連結部13bによって連結されている。
【0028】
また、真空容器11の開口部11b内には、モータ収納部材14が、当該開口部11bの中心を貫通するように配置されている。これに対応して、前端部11aの前面には、複数の支持部材15が固定されており、これらの支持部材15の先端は、モータ収納部材14を支持している。
【0029】
モータ収納部材14は、真空容器11の内側に向けて開口しており、その内部には、サーボモータ16が収納されている。このサーボモータ16は、回転軸16aの回転数が可変となっており、その回転軸16aは、弁体12と同軸状に配置されている。
【0030】
更に、真空容器11内には、円筒状をなす固定部材17が、弁体12と同軸状に配置されており、この固定部材17は、その周囲が弁体12及び可動部材13によって囲まれるように、それらの内側に設けられている。固定部材17の径方向外側には、弁体12及びフレーム部13aが配置されており、固定部材17の軸方向後方側には、連結部13bが配置されている。即ち、弁体12及び可動部材13は、固定部材17の径方向外側に配置されている。
【0031】
固定部材17は、フランジ部17a、張出部17b、及び、収納部17cを有している。フランジ17aは、固定部材17の前端に形成されており、開口部11b及び弁体12よりも径方向内側に配置されている。張出部17bは、固定部材17の後端において、その後端から径方向外側に向けて張り出すように形成されている。収納部17cは、固定部材17の内部に形成された収納空間となっており、固定部材17の軸方向中央部において、当該固定部材17を径方向に貫通している。
【0032】
そして、フランジ部17aの前面には、モータ収納部材14及びサーボモータ16が支持されている。つまり、固定部材17は、モータ収納部材14及び支持部材15を介して、真空容器11の前端部11aに固定されており、サーボモータ16の回転軸16aと同軸状に配置されている。このとき、サーボモータ16の回転軸16aは、フランジ部17aの中心を貫通すると共に、当該フランジ部17a内において回転可能に支持されており、その回転軸16aの先端は、収納部17c内に到達している。
【0033】
これに対して、連結部13bの長手中央部には、ボールナット18が設けられており、このボールナット18内には、ボールねじ19が噛み合っている。このボールねじ19は、固定部材17の中心を貫通して、当該固体部材17における張出部17bと対向した位置において回転可能に支持されており、そのボールねじ19の先端は、収納部17c内に到達している。そして、収納部17c内には、カップリング(軸継手)20が収納されており、回転軸16aの先端とボールねじ19の先端とは、カップリング20によって機械的に連結されている。
【0034】
また、各張出部17bの先端には、案内ブロック21が設けられており、これらの案内ブロック21には、案内溝が軸方向に沿って形成されている。一方、各フレーム13aの内面には、レール22が軸方向に沿って延設されており、これらのレール22は、案内ブロック21の案内溝内を軸方向に向けて摺動可能となっている。即ち、案内ブロック21とレール22とは、リニアガイドを構成している。
【0035】
そして、上述したように、フランジ部17aが開口部11bの径方向内側に配置されることにより、開口部11bとフランジ部17aとの間には、環状をなす開口部23が形成されることになり、弁体12は、その開口部23を開閉可能となっている。即ち、開口部23は、開口部11bの内周縁とフランジ部17aの外周縁とから構成されており、真空容器11の外部からその内部に向けて、外気(大気)を吸引するための通気口(吸引口)となっている。
【0036】
言い換えれば、
図2に示すように、開口部11bの内周縁は、開口部23の外周縁23aを形成するものであって、弁体12の外周縁12aが着座可能となっている。一方、フランジ部17aの外周縁は、開口部23の内周縁23bを形成するものであって、弁体12の内周縁12bが着座可能となっている。
【0037】
このように、弁体12を環状にすることにより、当該弁体12における真空容器11の内圧及び外圧が作用する表面積を小さくすることができる。これにより、弁体12が受ける内外圧力差の影響を、円板状をなす弁体を設けた際のそれと比べて、抑制することができる。
【0038】
また、弁体12及び開口部23を環状にすることにより、弁体12と開口部23とが接触する接触長さを、弁体12における外周長と内周長との和とすることができるため、円板状をなす弁体を設けた際のそれと比べて、上記内周長の分だけ長くすることができる。これにより、弁体12の開状態における当該弁体12と開口部23との間の開口量(開口面積)を、上記接触長さが長くなった分だけ多く(広く)することができる。よって、環状をなす弁体12を開けることにより、大量の外気を開口部23を介して円滑に吸引することができるので、大きな負圧波W3を発生させることができる。
【0039】
更に、
図2に示すように、弁体12の外周縁12aにおける上流側端部(上流側角部)は、所定の曲率半径を有するR形状をなしており、その外周縁12aにおける上流側端部よりも下流側の部位は、凹凸(段差)が無い平坦をなしている。これに対して、開口部23の外周縁23aにおける上流側端部(上流側角部)は、所定の曲率半径を有するR形状をなしており、その外周縁23aにおける上流側端部よりも下流側の部位は、凹凸(段差)が無い平坦をなしている。一方、開口部23の内周縁23bにおける上流側端部(上流側角部)よりも下流側の部位は、凹凸(段差)が無い平坦をなしている。
【0040】
このような、弁形状(バルブ形状)及び通気口形状(ポート形状)を採用することにより、外気が弁体12と開口部23との間の開口を通過する際の縮流を抑えることができる。これにより、負圧波W3の圧力レベルが小さくなることを抑制することができる。
【0041】
よって、
図1の破線で示すように、サーボモータ16を正転側に回転駆動させることにより、その回転軸16aと共にボールねじ19を回転させることができる。これにより、ボールねじ19の回転に伴って、ボールナット18が、開口部23から離間する方向に向けて移動すると共に、レール22が、案内ブロック21によって、真空容器11の後端部側に向けて案内される。この結果、可動部材13を軸方向に沿って後退させることができるので、弁体12を開けることができる。
【0042】
一方、
図1の実線で示すように、サーボモータ16を逆転側に回転駆動させることにより、その回転軸16aと共にボールねじ19を回転させることができる。これにより、ボールねじ19の回転に伴って、ボールナット18が、開口部23に接近する方向に向けて移動すると共に、レール22が、案内ブロック21によって、真空容器11の前端部11a側に向けて案内される。この結果、可動部材13を軸方向に沿って前進させることができるので、弁体12を閉めることができる。
【0043】
ここで、弁体12は、サーボモータ16の駆動によって開閉することになる。つまり、弁体12は、サーボモータ16の駆動力と真空容器11の内外圧力差とを利用することによって開くことになるが、このときの弁体12の開速度は、サーボモータ16の回転数に基づいて制御されている。即ち、サーボモータ16は、弁体12を開閉させるための開閉手段となると共に、弁体12の開速度を制御するための速度制御手段となっており、回転軸16aの回転数を制御することにより、弁体12の開速度(可動部材13の移動速度)を容易に調整することができる。これにより、トンネル微気圧波W2の波形に応じて、負圧波W3の波形を設定することができる。
【0044】
詳細には、サーボモータ16の回転数を制御することにより、弁体12の開速度を低速に設定して、当該弁体12をゆっくりと開けるようにしている。これにより、全閉状態の弁体12を開け始めてから真空容器11内が外気で満たされるまでの期間を長くすることができるので、負圧波発生時間の延長化を図ることができる。よって、負圧波W3が発生する時間幅を十分に確保することができるので、トンネル微気圧波W2を十分に低減させることができる。
【0045】
以上より、
図5に示すように、列車200が高速でトンネル100の入口101に突入すると、当該トンネル100内における入口101側において、列車200の前方に圧縮波W1が発生する。この圧縮波W1は、発生後直ちに、トンネル100内を出口102に向けて音速で伝播した後、その圧縮波W1の一部が、パルス状の圧力波となるトンネル微気圧波W2として、出口102から外部に向けて放射される。
【0046】
これと同時に、負圧波発生装置1を駆動させて、パルス状の負圧波W3を発生させる。これにより、正のパルス波となるトンネル微気圧波W2に対して、負のパルス波となる負圧波W3を干渉させることができるため、当該トンネル微気圧波W2が低減される。
【0047】
具体的には、トンネル微気圧波W2が放射されると、サーボモータ16を正転側に回転駆動させる。これにより、真空容器11内は、真空ポンプ24の駆動によって予め真空状態に維持されているため、全閉状態の弁体12は、真空容器11の内外圧力差、及び、サーボモータ16の駆動力によって開き始める。
【0048】
このとき、サーボモータ16の回転数を制御しているため、弁体12はゆっくりと全開状態に移行していく。これにより、負圧波発生時間が長くなり、負圧波W3が発生する時間幅が十分に確保される。また、弁体12と開口部23との間の開口を通過する外気の流れに、縮流が生じることがないため、負圧波W3の圧力レベルが小さくなることが抑制されている。この結果、トンネル微気圧波W2が十分に低減される。
【0049】
次いで、真空容器11内が外気によって満たされ、負圧波W3の発生が終了すると、サーボモータ16を逆転側に回転駆動させて、弁体12を閉め始める。そして、弁体12が開口部23に着座して、当該弁体12が全閉状態になると、真空ポンプ24を駆動させて、真空容器11内を真空状態に維持する。これにより、負圧波発生装置1は、次回放射されるトンネル微気圧波W2に対して、待機状態となる。
【0050】
従って、本発明に係る負圧波発生装置1によれば、サーボモータ16の回転数を制御することにより、弁体12の開速度を低速に設定することができる。これにより、負圧波発生時間を長くすることができるので、トンネル微気圧波W2を十分に低減させることができる。
【0051】
また、弁体12の開閉動作を、サーボモータ16、ボールナット18、ボールねじ19、案内ブロック21、及び、レール22を用いて行うことにより、弁体12の停止時(全開時及び全閉時)において、それらの部材16,18,19,21,22が他の部材と接触することが無いため、破損の防止及び可聴音の低減を図ることができる。
【0052】
次に、第2実施例に係る負圧波発生装置2について、
図3を用いて詳細に説明する。なお、下記に記載した負圧波発生装置2を構成する部材において、上記負圧波発生装置1を構成する部材と同一部材となるものについては、その部材の符号と同じ符号を付して、その説明を省略している。
【0053】
図3に示すように、真空容器11内には、円筒状をなす弁体31が、開口部11bに対して、進退可能に支持されている。この弁体31は、開口部11bと同軸状に配置されており、当該開口部11bを開閉可能となっている。即ち、弁体31の開閉方向は、当該弁体31の軸方向、及び、開口部11bの中心軸方向と一致している。
【0054】
また、前端部11aの前面には、支持部材32が固定されている。支持部材32は、開口部11bを跨ぐように配置されており、その支持部材32の長手方向中間部には、固定台33が固定されている。固定台33は、開口部11bを貫通するように設けられており、この固定台33の上面には、可動体34が軸方向に移動可能に支持されている。そして、固定台33の上面と可動体34の下面との間には、リニアサーボモータ35が設けられている。
【0055】
リニアサーボモータ35は、固定子35aと可動子35bとから構成されている。固定子35aは、固定台33の上面における幅方向中央部において軸方向に沿って延設されている。一方、可動子35bは、可動体34の底面における幅方向中央部において軸方向に沿って延設されており、固定子35a上を軸方向に向けてスライド可能となっている。即ち、リニアサーボモータ35は、可動子35bの移動速度(可動体34の移動速度)が可変となっている。
【0056】
また、固定台33の上面における幅方向両側部には、案内レール36が軸方向に沿って延設されている。一方、可動体34の底面における幅方向両側部には、ブロック37が設けられており、これらのブロック37は、案内レール36上を軸方向に向けて摺動可能となっている。
【0057】
更に、可動体34の側面には、弁支持部材38が支持されており、これらの弁支持部材38は、可動体34の側面から外側に向けて延びるように設けられている。そして、弁支持部材38の先端は、固定台33の側面よりも外側に位置しており、弁体31の内面に接続されている。つまり、円筒状をなす弁体31の内部には、固定台33及び可動体34が配置されており、弁体31は、可動体36と共に移動する際に、固定台33の周囲を取り囲んだ状態で移動する。
【0058】
なお、固定台33の側面には、フランジ部材39が支持されており、このフランジ部材39には、弁体31の内面が、真空容器11の後端部側から当接可能となっている。つまり、弁体31は、開口部11bに着座すると共に、フランジ部材39に当接することによって、全閉状態となり、真空容器11内を真空状態に維持することができる。
【0059】
よって、
図3の破線で示すように、リニアサーボモータ35を駆動させることにより、可動子35bを、開口部11bから離間する方向に向けて、移動させることができる。これにより、可動体34を軸方向に沿って後退させることができるので、弁体31を開けることができる。
【0060】
一方、
図3の実線で示すように、リニアサーボモータ35を駆動させることにより、可動子35bを、開口部11bに接近する方向に向けて、移動させることができる。これにより、可動体34を軸方向に沿って前進させることができるので、弁体31を閉めることができる。
【0061】
ここで、弁体31は、リニアサーボモータ35の駆動のみによって開閉することになる。つまり、弁体31は、真空容器11の内外圧力差を利用することなく、リニアサーボモータ35の駆動力のみによって開くことになるが、このときの弁体31の開速度は、リニアサーボモータ35の移動速度に基づいて制御されている。即ち、リニアサーボモータ35は、弁体31を開閉させるための開閉手段となると共に、弁体31の開速度を制御するための速度制御手段となっており、可動子35bの移動速度を制御することにより、弁体31の開速度(可動体34の移動速度)を容易に調整することができる。これにより、トンネル微気圧波W2の波形に応じて、負圧波W3の波形を設定することができる。
【0062】
詳細には、リニアサーボモータ35の移動速度を制御することにより、弁体31の開速度を低速に設定して、当該弁体31をゆっくりと開けるようにしている。これにより、全閉状態の弁体31を開け始めてから真空容器11内が外気で満たされるまでの期間を長くすることができるので、負圧波発生時間の延長化を図ることができる。よって、負圧波W3が発生する時間幅を十分に確保することができるので、トンネル微気圧波W2を十分に低減させることができる。
【0063】
従って、本発明に係る負圧波発生装置2によれば、リニアサーボモータ35の移動速度を制御することにより、弁体31の開速度を低速に設定することができる。これにより、負圧波発生時間を長くすることができるので、トンネル微気圧波W2を十分に低減させることができる。
【0064】
また、弁体31の開閉動作を、リニアサーボモータ35、案内レール36、及び、ブロック37を用いて行うことにより、弁体31の停止時(全開時及び全閉時)において、それらの部材35〜37が他の部材と接触することが無いため、破損の防止及び可聴音の低減を図ることができる。
【0065】
次に、第3実施例に係る負圧波発生装置3について、
図4を用いて詳細に説明する。なお、下記に記載した負圧波発生装置3を構成する部材において、上記負圧波発生装置1を構成する部材と同一部材となるものについては、その部材の符号と同じ符号を付して、その説明を省略している。
【0066】
図4に示すように、真空容器11内には、円盤状をなす弁体51が、開口部11bに対して、進退可能に支持されている。この弁体51は、開口部11bと同軸状に配置されており、当該開口部11bを開閉可能となっている。
【0067】
弁体51の中心部には、弁軸52の前端が嵌入されており、この弁軸52の後端には、保持板53が嵌入されている。そして、真空容器11の内周面には、複数の支持フレーム59が、その中心部に向けて延びるように支持されており、それらの支持フレーム59の先端は、弁軸52を軸方向に摺動可能に支持している。即ち、弁体51の開閉方向は、弁軸52の中心軸方向、及び、開口部11bの中心軸方向と一致している。
【0068】
また、支持フレーム59の前面には、複数の油圧ダンパ54が支持されている。これらの油圧ダンパ54は、弁軸52の径方向外側で、且つ、弁軸52の周方向に所定の間隔で配置されており、それらのロッド54aの先端は、弁体51の後面に接続されている。そして、油圧ダンパ54は、ロッド54aを軸方向に伸縮可能としており、その伸縮速度が可変となっている。
【0069】
一方、支持フレーム59の後面には、環状をなす磁石収納部材55が、弁軸52を中心として支持されている。この磁石収納部材55内には、複数の電磁石56が、弁軸52の径方向外側で、且つ、弁軸52の周方向に所定の間隔で収納されている。これらの電磁石56は、保持板53と軸方向において対向しており、その内部に励磁電流が流されると、保持板53を吸着可能となっている。そして、磁石収納部材56には、保持板53が電磁石56を軸方向外側から覆うように当接可能となっている。
【0070】
更に、真空容器11の内周面には、複数の支持フレーム60が、その中心部に向けて延びるように支持されており、それらの支持フレーム60の先端間には、油圧シリンダ57が固定されている。油圧シリンダ57は、弁軸52と同軸状に配置されており、ピストンロッド57aを軸方向に伸縮可能としている。つまり、油圧シリンダ57のピストンロッド57aは、弁軸52の後端面を押圧可能となっている。
【0071】
そして、支持フレーム60の前面には、複数のショックアブソーバ(緩衝器)58設けられている。これらのショックアブソーバ58は、弁軸52の径方向外側で、且つ、弁軸52の周方向に所定の間隔で配置されており、それらのロッド58aの先端は、保持板53と軸方向において対向している。つまり、ショックアブソーバ58は、ロッド58aを軸方向に伸縮可能としており、そのロッド58aに当接した保持板53のそれ以上の後退を規制すると共に、その当接時における衝撃を吸収可能となっている。
【0072】
よって、
図4の破線で示すように、電磁石56への通電を停止することにより、当該電磁石56による保持板53への吸着力を解放することができる。即ち、弁体51の全閉状態を解除することができる。そして、油圧ダンパ54のロッド54aを短縮することにより、弁体51を開けることができる。また、弁体51の開動作に伴って、弁軸52と共に後退した保持板53は、ショックアブソーバ58のロッド58aに当接した後、そのロッド58aを押し込むことにより停止する。これにより、弁体51が全開状態となると共に、油圧ダンパ54による弁体51の開動作に伴って発生する衝撃を、ショックアブソーバ58によって吸収することができる。
【0073】
一方、
図4の実線で示すように、油圧シリンダ57のピストンロッド57aを伸長させて、弁軸52の後端面をそのピストンロッド57aによって押圧することにより、当該弁軸52を軸方向に前進させることができる。これと同時に、油圧ダンパ54のロッド54aを伸長させる。これにより、弁体51を閉めることができる。また、弁体51の閉動作に伴って、弁軸52と共に前進した保持板53は、ショックアブソーバ58のロッド58aから離脱して、磁石収納部材55に当接した後、電磁石56に吸着される。これにより、弁軸52の軸方向への移動が規制されるため、弁体51の全閉状態を保持することができる。
【0074】
ここで、弁体51は、電磁石56による保持板53への吸着力を解放した後には、真空容器11の内外圧力差のみによって開くことになるが、このときの弁体51の開速度は、油圧ダンパ54におけるロッド54aの短縮速度に基づいて制御されている。即ち、油圧ダンパ54は、あくまでも、弁体51の開速度を制御するための速度制御手段となっており、ロッド54aの短縮速度を制御することにより、弁体51の開速度を容易に調整することができる。これにより、トンネル微気圧波W2の波形に応じて、負圧波W3の波形を設定することができる。
【0075】
詳細には、油圧ダンパ54の短縮速度を制御することにより、弁体51の開速度を低速に設定して、当該弁体51をゆっくりと開けるようにしている。これにより、全閉状態の弁体51を開け始めてから真空容器11内が外気で満たされるまでの期間を長くすることができるので、負圧波発生時間の延長化を図ることができる。よって、負圧波W3が発生する時間幅を十分に確保することができるので、トンネル微気圧波W2を十分に低減させることができる。
【0076】
従って、本発明に係る負圧波発生装置3によれば、油圧ダンパ54の短縮速度を制御することにより、弁体51の開速度を低速に設定することができる。これにより、負圧波発生時間を長くすることができるので、トンネル微気圧波W2を十分に低減させることができる。
【0077】
なお、上述した実施形態においては、真空容器11の形状を円筒状としているが、この他、球状や立方体としたり、それらを2つ以上組み合わせた形状としたりしても構わない。つまり、真空容器11の形状については、負圧波W3を発生させるために弁体12の開速度を制御して外気(大気)を吸引している間に、真空容器11内の圧力が大気圧以下を維持することができるだけの十分な容積があれば、どのような形状であっても構わない。
【0078】
また、第1実施例における弁体12の弁形状及び開口部23の通気口形状を、第2,3実施例における弁体31,51の弁形状及び開口部11bの通気口形状に適用することも可能である。