(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる情報記録媒体を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明について、複数の表現が記載されることがある。複数の表現がされた構成要素及び説明は、記載されていない他の表現がされても良い。さらに、複数の表現がされない構成要素及び説明も、記載されていない他の表現がされても良い。
【0008】
IDカードやICカードなどの情報記録媒体は、発色する温度の閾値が異なる複数の発色層が積層されて構成される。情報記録媒体における2つの主面のうちレーザーが照射される方の面を表面と呼ぶことにすると、その表面における所定の領域にレーザーが照射され加熱されることで所定の情報が記録され得る。情報記録媒体は、カラー画像で情報が印刷される場合、3色の発色層が積層される。例えばカラー画像の印刷を3原色(マゼンタ、イエロー、シアン)で実現する場合、情報記録媒体は、その内部に、表面から遠い順に、約100℃・約150℃・約200℃の温度で発色する異なる3色の発色層が積層される。約100℃・約150℃・約200℃の発色層は、順に、シアン、マゼンタ、イエローの発色層である。3色の発色層の間には、熱伝導を遅延させるために断熱性を有したスペーサ層が配される。すなわち、情報記録媒体では、表面から遠い順に、「シアンの発色層/スペーサ層/マゼンタの発色層/スペーサ層/イエローの発色層」が積層されている。情報記録媒体の表面にレーザーを照射して熱を加える際、発色させたい色毎に熱の加え方を変えることによって、発色させたい色を選択的に発色させることができる。すなわち、レーザー照射によって表面近傍で発生した熱が各層に伝導されて各層の温度が変化するのを、レーザーによる熱の与え方、つまりレーザーの照射条件によって制御することにより選択的に各発色層を発色させることができる。
【0009】
例えば、イエローの発色層を200℃以上にして発色させる場合にマゼンタの発色層が150℃まで温度上昇しないように、イエローの発色層とマゼンタの発色層との間にはスペーサ層が配される。イエローの発色層を200℃以上にして発色させる場合やマゼンタの発色層を150℃以上にして発色させる場合にシアンの発色層が100℃まで温度上昇しないように、マゼンタの発色層とシアンの発色層との間には厚いスペーサ層が配される。このとき、熱伝導率が高温に比べて低温で大きくなりやすいので、マゼンタの発色層とシアンの発色層との間のスペーサ層は、他のスペーサ層に比べて厚くする必要がある。
【0010】
発色させるための熱伝導が深さ方向だけでなく表面に沿った方向にも行われるので、3色の発色層のうち表面から最も遠いシアンの発色層を発色させる場合、厚いスペーサ層のために熱の広がりが大きくなり、高解像度の印刷が困難である。また、シアンの発色層を選択的に発色させるためには、厚いスペーサ層を通してシアンの発色層に熱を伝導させるために150℃より低い温度に長時間維持する必要があるため、印刷時間が長くなりやすい。また、シアンの発色層は、その発色温度が100℃程度の為、情報記録媒体がその使用時に100℃程度に加熱された場合に意図しない発色が起こり得るので、情報記録媒体の耐熱性が低い傾向にある。すなわち、情報記録媒体は、その特性について改善することが望まれる。
【0011】
そこで、実施形態では、情報記録媒体10において、3色の発色層のうち発色する温度が最も低い発色層(シアンの発色層)を改善して発色する温度が最も高くなるようにし、改善後の発色層の配置位置を最も表面から遠い位置から最も表面に近い位置に変更することで、情報記録媒体の特性の向上を図る。
【0012】
具体的には、情報記録媒体10は、
図1に示すように構成される。
図1は、情報記録媒体10の構成を示す断面図である。
【0013】
情報記録媒体10は、略板形状の部材であり、表面10a及び裏面10bを有する。情報記録媒体10は、発色層(第1の発色層)11、発色層(第2の発色層)12、発色層(第3の発色層)13、基材14、スペーサ層15、スペーサ層16、スペーサ層17、及び保護層18を有する。
【0014】
基材14の表面10a側には、発色層12、スペーサ層15、発色層11、スペーサ層16、発色層13、スペーサ層17、及び保護層18が順に積層されている。基材14は、発色層12、スペーサ層15、発色層11、スペーサ層16、発色層13、スペーサ層17、及び保護層18を保持する。基材14は、透明でない材料によって作られる。例えば、基材14は、紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、グリコール変性ポリエステル(PET−G)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂などで形成することができる。
【0015】
一方、基材14に保持された各層は、情報記録媒体10へ色形成(印刷)が行われる前の状態において、実質的に透明な材料で構成される。情報記録媒体10へ色形成(印刷)が行われた後において、印刷されたカラー画像は、基材14で反射された(白色等の)背景画像に対して、各発色層11〜13で反射された色画像の重ね合わせとして保護層18を通じて視認される。
【0016】
発色層11は、断面視において表面10aと基材14との間に配される。発色層11は、第1の色に発色する。第1の色は、波長(第1の波長)λ1に分光反射率の極小値を有するような色である。例えば、λ1≒400〜500nmである場合、第1の色はイエローである。
【0017】
発色層11は、閾値(第1の閾値)Tth1以上の温度で第1の色に発色する。発色層11は、例えば
図2(a)に示す構成を有する。
図2(a)は、発色する前における発色層の構成を示す図である。発色層11は、発色剤DY−1〜DY−8、顕色剤DV−1〜DV−7、及びバインダーBDを有する。発色剤DY−1〜DY−8と顕色剤DV−1〜DV−7とは、発色層11内に分散されている。バインダーBDは、発色剤DY−1〜DY−8と顕色剤DV−1〜DV−7とを隔てるように発色層11内に配されている。
【0018】
例えば
図2(b)に示すように、発色層11における領域RG1に熱が供給されると、領域RG1内のバインダーBDが溶融して発色剤DY−3〜DY−6が顕色剤DV−3〜DV−5に接触する。閾値Tth1以上の温度になると、領域RG1内の発色剤DY−3〜DY−6は、顕色剤DV−3〜DV−5と反応して発色する。このとき、発色層11における他の領域RG2,RG3には、閾値Tth1以上の温度になるのに十分な熱が供給されないため、発色剤DY−1,DY−2,DY−7,DY−8は発色しない。
図2(b)は、発色した後における発色層の構成を示す図である。
【0019】
バインダーBDは、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル、など透明性の高い樹脂類で形成されている。顕色剤DVは、例えば、感熱記録体において電子受容体として使用されている酸性物質がいずれも使用でき、例えば活性白土、酸性白土等の無機物質、無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物またはその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物等の有機系顕色剤などが挙げられ、なかでもフェノール系が好ましい。
【0020】
顕色剤DVのより具体的な例としては、ビス3−アリル−4−ヒドロキシフェニルスルホン、ポリヒドロキシスチレン、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸の亜鉛塩、3−オクチル−5−メチルサリチル酸の亜鉛塩、フェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−エチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−イソプロピルフェノール)、4,4′−スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、該フェノール系化合物の塩、サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0021】
発色剤DYは、閾値(第1の閾値)Tth1以上の温度で顕色剤DVと反応して第1の色に発色する材料で形成されている。例えば、Tth1≒200℃であり、第1の色がイエローである場合、発色剤DYは、
図3(b)の化学式で示される色素を含む。
図3(b)は、イエローの発色剤の化学構造を示す図である。
図3(b)において、R
1=H、R
2=C
6H
13、R
3=H、R
4=H、R
5=C
6H
13、R
6=H、R
7=H、R
8=H、R
9=H、R
10=H、R
11=CH
2CH
3、X
1=Cである。
【0022】
なお、発色剤DYは、閾値Tth1(例えば、200℃)以上の温度で顕色剤DVと反応して第1の色(例えば、イエロー)に発色する材料であれば他の材料で形成され得る。
【0023】
図1に戻って、発色層12は、発色層11に対して裏面10bの側に配されている。発色層12は、断面視において発色層11と基材14との間に配される。発色層12は、第2の色に発色する。第2の色は、波長(第2の波長)λ2に分光反射率の極小値を有するような色である。波長λ2は、波長λ1より長い波長である。例えば、λ2≒500〜600nmである場合、第2の色はマゼンタである。
【0024】
発色層12は、閾値(第2の閾値)Tth2以上の温度で第2の色に発色する。発色層12は、例えば
図2(a)に示す構成を有する。
図2(a)は、発色する前における発色層の構成を示す図である。発色層12は、発色剤DY−1〜DY−8、顕色剤DV−1〜DV−7、及びバインダーBDを有する。発色剤DY−1〜DY−8と顕色剤DV−1〜DV−7とは、発色層12内に分散されている。バインダーBDは、発色剤DY−1〜DY−8と顕色剤DV−1〜DV−7とを隔てるように発色層12内に配されている。
【0025】
例えば
図2(b)に示すように、発色層12における領域RG1に熱が供給されると、領域RG1内のバインダーBDが溶融して発色剤DY−3〜DY−6が顕色剤DV−3〜DV−5に接触する。閾値Tth2以上の温度になると、領域RG1内の発色剤DY−3〜DY−6は、顕色剤DV−3〜DV−5と反応して発色する。このとき、発色層12における他の領域RG2,RG3には、閾値Tth2以上の温度になるのに十分な熱が供給されないため、発色剤DY−1,DY−2,DY−7,DY−8は発色しない。
図2(b)は、発色した後における発色層の構成を示す図である。
【0026】
バインダーBD、顕色剤DVに用いられる材料については、発色層11と同様である。
【0027】
発色剤DYは、閾値(第2の閾値)Tth2以上の温度で顕色剤DVと反応して第2の色に発色する材料で形成されている。例えば、Tth2≒150℃であり、第2の色がマゼンタである場合、発色剤DYは、
図3(c)の化学式で示される色素を含む。
図3(c)は、マゼンタの発色剤の化学構造を示す図である。
図3(c)において、R
1=H、R
2=4−(2−ハイドロキシ−1−ジサイロキシ)−C
6H
4、R
3=H、R
4=H、R
5=H、R
6=H、R
7=H、R
8=Cl、R
9=Cl、R
10=Cl、R
11=Cl、R
12=H、R
13=H、R
14=H、R
15=H、R
16=H、R
17=H、R
18=H、R
19=H、X
1=Cである。
【0028】
なお、発色剤DYは、閾値Tth2(例えば、150℃)以上の温度で顕色剤DVと反応して第2の色(例えば、マゼンタ)に発色する材料であれば他の材料で形成され得る。
【0029】
図1に戻って、発色層13は、発色層11に対して表面10aの側に配されている。発色層13は、断面視において表面10aと発色層11との間に配される。発色層13は、第3の色に発色する。第3の色は、波長(第3の波長)λ3に分光反射率の極小値を有するような色である。波長λ3は、波長λ2より長い波長である。例えば、λ3≒600〜700nmである場合、第3の色はシアンである。
【0030】
発色層13は、閾値(第3の閾値)Tth3以上の温度で第3の色に発色する。発色層13は、例えば
図2(a)に示す構成を有する。
図2(a)は、発色する前における発色層の構成を示す図である。発色層13は、発色剤DY−1〜DY−8、顕色剤DV−1〜DV−7、及びバインダーBDを有する。発色剤DY−1〜DY−8と顕色剤DV−1〜DV−7とは、それぞれ発色層13内に分散されている。バインダーBDは、発色剤DY−1〜DY−8と顕色剤DV−1〜DV−7とを隔てるように発色層13内に配されている。
【0031】
例えば
図2(b)に示すように、発色層13における領域RG1に熱が供給されると、領域RG1内のバインダーBDが溶融して発色剤DY−3〜DY−6が顕色剤DV−3〜DV−5に接触する。閾値Tth3以上の温度になると、領域RG1内の発色剤DY−3〜DY−6は、顕色剤DV−3〜DV−5と反応して発色する。このとき、発色層13における他の領域RG2,RG3には、閾値Tth3以上の温度になるのに十分な熱が供給されないため、発色剤DY−1,DY−2,DY−7,DY−8は発色しない。
図2(b)は、発色した後における発色層の構成を示す図である。
【0032】
バインダーBD、顕色剤DVに用いられる材料については、発色層11,12と同様である。
【0033】
発色剤DYは、閾値(第3の閾値)Tth3以上の温度で顕色剤DVと反応して第3の色に発色する材料で形成されている(
図2(b)参照)。例えば、Tth3≒300℃であり、第3の色がシアンである場合、発色剤DYは、
図3(a)の化学式で示される色素を含む。
図3(a)は、シアンの発色剤の化学構造を示す図である。
図3(a)の化学式で示される色素は、3 ’ ,6 ’ −ビス(ジフェニルアミノ)スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9 ’ −[9H]キサンテン]−3−オンである。又は、
図3(a)の化学式で示される色素は、2‐[3,6‐ビス(ジフェニルアミノ)‐9‐ヒドロキシ‐9H‐キサンテン‐9‐イル]安息香酸ラクトンとも呼ばれる。
【0034】
なお、発色剤DYは、閾値Tth3(例えば、300℃)以上の温度で顕色剤DVと反応して第3の色(例えば、シアン)に発色する材料であれば他の材料で形成され得る。
【0035】
図1に戻って、スペーサ層15は、断面視において発色層12と発色層11との間に配されている。スペーサ層15は、発色層11から発色層12への熱伝導を遅延させるように構成されている。スペーサ層15は、発色層13を閾値Tth3(例えば、300℃)以上の温度にして発色させる場合や発色層11を閾値Tth1(例えば、200℃)以上の温度にして発色させる場合に発色層12の温度が閾値Tth2(例えば、150℃)まで上昇しないような材料及び厚さで形成される。スペーサ層15は、断熱性を有する材料で形成され、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、ポリスチレン、ポリアクリル等で形成され得る。
【0036】
スペーサ層16は、断面視において発色層11と発色層13との間に配されている。スペーサ層16は、発色層13から発色層11への熱伝導を遅延させるように構成されている。スペーサ層16は、発色層13を閾値Tth3(例えば、300℃)以上の温度にして発色させる場合に発色層11の温度が閾値Tth1(例えば、200℃)まで上昇しないような材料及び厚さで形成される。スペーサ層16は、断熱性を有する材料で形成され、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、ポリスチレン、ポリアクリル等で形成され得る。
【0037】
スペーサ層17は、断面視において発色層13と保護層18との間に配されている。スペーサ層17は、保護層18から発色層13への熱伝導を遅延させるように構成されている。スペーサ層17は、断熱性を有する材料で形成され、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、ポリスチレン、ポリアクリル等で形成され得る。
【0038】
保護層18は、情報記録媒体10における表面10a近傍に配され、情報記録媒体10における各層を保護している。
【0039】
次に、各発色層11〜13を個別に発色させるための加熱処理について
図4〜
図7を用いて説明する。
図4は、表面加熱時の情報記録媒体10の温度分布を示す図である。
図5は、第1の色(例えば、イエロー)の発色層11を発色させる加熱処理を示す図である。
図6は、第2の色(例えば、マゼンタ)の発色層12を発色させる加熱処理を示す図である。
図7は、第3の色(例えば、シアン)の発色層13を発色させる加熱処理を示す図である。
【0040】
図4に示すように、情報記録媒体10の表面10a近傍における領域RRにレーザーが照射されると、レーザーで加熱された領域RRを起点として、情報記録媒体10内に熱が伝導されていく。情報記録媒体10内の温度が等しい領域を結ぶ線を等温線と呼ぶことにすると、
図4に示すような等温線TL13,TL11,TL12を示すことができる。このとき、(領域RRの温度)=(表面10aの発熱温度)>(等温線TL13の温度)≒(第3の色の発色層13の温度)>(等温線TL11の温度)≒(第1の色の発色層11の温度)>(等温線TL12の温度)≒(第2の色の発色層12の温度)となる。等温線TL13,TL11,TL12は、
図4において模式的に領域RRを中心とする同心円状の線として示されているが、領域RRに対して同心円から歪んだ線でもよい。
【0041】
発色層11を第1の色(例えば、イエロー)に選択的に発色させる場合、等温線TL11の温度が閾値Tth1(例えば、200℃)以上の温度に達した時点で、等温線TL13の温度が閾値Tth3(例えば、300℃)未満であり且つ等温線TL12の温度が閾値Tth2(例えば、150℃)未満である必要がある。このため、
図5に示すように、情報記録媒体10の表面10aにおける領域RRの温度(表面10aの発熱温度)が閾値Tth1以上閾値Tth3未満の温度T1に期間TP1で保持される加熱処理を行う。この加熱処理は、例えば、パワー密度がPD1に調整されたレーザーを期間TP1’で情報記録媒体10の表面10aにおける領域RRに照射することで実現可能である。
【0042】
この加熱処理により、期間TP1内のタイミングt1において、第1の色(例えば、イエロー)の発色層11が閾値Tth1(例えば、200℃)に達して発色を開始する。そして、期間TP1が終了するタイミングt2において、スペーサ層17,16,15(
図1参照)による熱伝導の遅延で発色層12の温度が閾値Tth2(例えば、150℃)未満に抑制されており、発色層12は発色しない。このとき、発色層13の温度は閾値Tth3未満の温度T1まで上昇するに留まり、発色層13は発色しない。これにより、最小印刷幅LW11で解像可能な第1の色(例えば、イエロー)の画像が情報記録媒体10に印刷され得る。
【0043】
期間TP1’(=表面10aが温度T1まで昇温する時間+期間TP1)は、等温線TL11の温度が閾値Tth1以上の温度に達するのに十分であり、且つ、等温線TL12の温度が閾値Tth2(例えば、150℃)未満にとどまる時間である。言い換えると、期間TP1’は、閾値Tth1以上の温度になるのに十分な熱が発色層11に伝導されるとともに閾値Tth2未満の温度に留まるように発色層12に伝導される熱が抑制されるような時間として決められ得る。
【0044】
発色層12を第2の色(例えば、マゼンタ)に選択的に発色させる場合、
図4に示す等温線TL12の温度が閾値Tth2(例えば、150℃)以上の温度に達した時点で、等温線TL13の温度が閾値Tth3(例えば、300℃)未満であり且つ等温線TL11の温度が閾値Tth1(例えば、200℃)未満である必要がある。このため、
図6に示すように、情報記録媒体10の表面10aにおける領域RRの温度(表面10aの発熱温度)が閾値Tth2以上閾値Tth1未満の温度T2に期間TP2で保持される加熱処理を行う。この加熱処理は、例えば、パワー密度がPD2(<PD1)に調整されたレーザーを期間TP2’(>TP1’)で情報記録媒体10の表面10aにおける領域RRに照射することで実現可能である。
【0045】
この加熱処理により、期間TP2内のタイミングt3において、第2の色(例えば、マゼンタ)の発色層12が閾値Tth2(例えば、150℃)に達して発色を開始する。そして、期間TP2が終了するタイミングt4において、発色層13の温度は閾値Tth3未満の温度T2まで上昇するに留まり、発色層13は発色しない。また、発色層11の温度は閾値Tth1未満の温度T2まで上昇するに留まり、発色層11は発色しない。これにより、最小印刷幅LW12で解像可能な第2の色(例えば、マゼンタ)の画像が情報記録媒体10に印刷され得る。
【0046】
期間TP2’(=表面10aが温度T2まで昇温する時間+期間TP2)は、等温線TL12の温度が閾値Tth2以上閾値Tth1未満の温度に達するのに十分な時間である。言い換えると、期間TP2’は、閾値Tth2以上の温度になるのに十分な熱が発色層12に伝導されるような時間として決められ得る。
【0047】
発色層13を第3の色(例えば、シアン)に選択的に発色させる場合、
図4に示す等温線TL13の温度が閾値Tth3(例えば、300℃)以上の温度に達した時点で、等温線TL11の温度が閾値Tth1(例えば、200℃)未満であり且つ等温線TL12の温度が閾値Tth2(例えば、150℃)未満である必要がある。このため、
図7に示すように、情報記録媒体10の表面10aにおける領域RRの温度(表面10aの発熱温度)が閾値Tth3以上の温度T3に期間TP3で保持される加熱処理を行う。この加熱処理は、例えば、パワー密度がPD3(>PD1)に調整されたレーザーを期間TP3’(<TP1’)で情報記録媒体10の表面10aにおける領域RRに照射することで実現可能である。
【0048】
この加熱処理により、期間TP3内のタイミングt5において、第3の色(例えば、シアン)の発色層13が閾値Tth3(例えば、300℃)に達して発色を開始する。そして、期間TP3が終了するタイミングt6において、スペーサ層17,16(
図1参照)による熱伝導の遅延で発色層11の温度が閾値Tth1(例えば、200℃)未満に抑制されており、発色層11は発色しない。また、スペーサ層17,16,15(
図1参照)による熱伝導の遅延で発色層12の温度が閾値Tth2(例えば、150℃)未満に抑制されており、発色層12は発色しない。これにより、最小印刷幅LW13で解像可能な第3の色(例えば、シアン)の画像が情報記録媒体10に印刷され得る。
【0049】
期間TP3’(=表面10aが温度T3まで昇温する時間+期間TP3)は、等温線TL13の温度が閾値Tth3以上の温度に達するのに十分であり、且つ、等温線TL11の温度が閾値Tth1(例えば、200℃)未満にとどまり、且つ、等温線TL12の温度が閾値Tth2(例えば、150℃)未満に留まる時間である。言い換えると、期間TP3’は、閾値Tth3以上の温度になるのに十分な熱が発色層13に伝導されるとともに閾値Tth1未満の温度に留まるように発色層11に伝導される熱が抑制され且つ閾値Tth2未満の温度に留まるように発色層12に伝導される熱が抑制されるような時間として決められ得る。
【0050】
解像可能な最小印刷幅を比較すると、第3の色(例えば、シアン)の最小印刷幅LW13は、第1の色(例えば、イエロー)の最小印刷幅LW11より小さく、第2の色(例えば、マゼンタ)の最小印刷幅LW12より小さい。
【0051】
以上のように、実施形態では、情報記録媒体10において、第1の色(例えば、イエロー)の発色層11、第2の色(例えば、マゼンタ)の発色層12、第3の色(例えば、シアン)の発色層13のうち、発色層13の発色する温度を最も高くし、発色層13を最も表面10aに近い位置に配する。すなわち、基材14上に、表面から遠い順に、「シアンの発色層/スペーサ層/マゼンタの発色層/スペーサ層/イエローの発色層」が積層された構成と比較して、第3の色(例えば、シアン)の発色層13の発色する温度を高くするので、厚いスペーサ層の配置を不要とすることができ、高解像度の印刷を実現できる。したがって、情報記録媒体10の特性を向上できる。
【0052】
また、実施形態では、厚いスペーサ層の配置を不要とすることができるので、各発色層のトータルの印刷時間を短縮することができる。したがって、この観点からも、情報記録媒体10の特性を向上できる。
【0053】
また、実施形態では、基材14上に、表面から遠い順に、「シアンの発色層/スペーサ層/マゼンタの発色層/スペーサ層/イエローの発色層」が積層された構成と比較して、各発色層のうち発色する温度が最も低い温度(閾値Tth2(例えば、150℃))を高くすることができるので、情報記録媒体10の耐熱性を向上できる。したがって、この観点からも、情報記録媒体10の特性を向上できる。
【0054】
なお、発色する原理について、各色の発色層(発色剤DY)は、通常、結晶化状態で、無色(透明)になっているが、閾値を超える温度になると、アモルファス(非晶質)化して、各色が発色する(
図2(b)参照)。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。