(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の1例である角形二次電池について詳細に説明する。本明細書において「略〜」との記載は、略同一を例に挙げて説明すると、完全に同一はもとより、実質的に同一と認められるものを含む意図である。また、「端部」の用語は対象物の端及びその近傍を意味するものとする。また、以下で説明する形状、材料、個数、数値などは説明のための例示であって、角形二次電池の仕様により変更が可能である。以下では同様の構成には同一の符号を付して説明する。
【0013】
以下で説明する角形二次電池は、例えば電気自動車またはハイブリッド車の駆動電源等に利用される非水電解質二次電池である。
【0014】
以下、図面を用いて、実施形態の1例である角形二次電池について説明する。
図1は、角形二次電池10において、外装体12を断面にして示す図である。
図2は、
図1に示す角形二次電池10から外装体12を取り除いて示す図である。
図3は、
図2の上部の拡大図である。
図4は、
図1に示す角形二次電池を封口板14側から見た図である。以下では、角形二次電池10は、二次電池10と記載する。以下、
図1から
図8の説明では、便宜上、外装体12の封口板14側を上とし、封口板14と反対側を下として説明する。
【0015】
二次電池10は、ケースとしての外装体12と、外装体12の内部に配置された発電素子としての巻回電極体20とを備える。外装体12の内部には、非水電解液が収納されている。非水電解液は、例えばリチウム塩を含有する電解液であって、リチウムイオン伝導性を有する。以下、巻回電極体20は、電極体20と記載する場合がある。
【0016】
電極体20は、第1電極板としての正極板22及び第2電極板としての負極板26がセパレータ30を介して巻回された扁平状の巻回電極体である。電極体20は、例えば、長尺状の正極板22、長尺状のセパレータ30、長尺状の負極板26、長尺状のセパレータ30が積層された状態で巻回されており、最外周にセパレータ30が配置されるようにする。また、後述の
図8に示すように電極体20は、封口板14側とその反対側との上下方向両端部が断面円弧形である。
【0017】
図1に示すように、金属製の外装体12は、上端に開口を有する箱形であり、二次電池10は、この開口を閉塞する長尺な板状の金属製の封口板14を備える。外装体12及び封口板14は、アルミニウム又はアルミニウム合金製とすることができる。封口板14上には、長手方向一端部(
図1の右端部)から正極端子15が突出し、長手方向他端部(
図1の左端部)から負極端子16が突出する。正極端子15及び負極端子16は、封口板14に形成された2つの貫通孔にそれぞれ挿入された状態で、樹脂製のガスケットを介して封口板14に固定されて取り付けられる。電極体20の巻回軸は、封口板14の長手方向(
図1、
図2の左右方向)と平行である。外装体12の内側には、
図1に破線Qで示す部分を含むように、箱状に折り曲げられた絶縁シート13によって、電極体20の周囲を覆うことで電極体20と外装体12との絶縁を図っている。絶縁シート13は、封口板14と電極体20との間には配置されない。このため、後述する正極集電体40の第1ベース部41と電極体20の間、後述する負極集電体50の第2ベース部51と電極体20の間には絶縁シート13は配置されていない。
【0018】
正極板22は、例えばアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に正極活物質を含む正極活物質合剤層が形成されたものである。正極活物質として、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能なリチウム遷移金属酸化物を用いることができる。正極活物質合剤層は、正極活物質の他に、結着材及び導電材を含むことが好適である。正極板22は、巻回前の状態における幅方向の一端部に第1芯体露出部としての正極芯体露出部23を有する。
【0019】
負極板26は、例えば銅箔からなる負極芯体の両面に負極活物質を含む負極活物質合剤層が形成されたものである。負極活物質には、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能な炭素材料、ケイ素化合物などを用いることができる。負極活物質合剤層は、負極活物質の他に、結着剤を含むことが好適である。負極板26は、巻回前の状態における幅方向の一端部に第2芯体露出部としての負極芯体露出部27を有する。
【0020】
図2に示すように、電極体20において、巻回軸が伸びる方向である巻回軸方向(
図2の左右方向)の一端部(
図2の右端部)には、巻回された正極芯体露出部23が配置される。電極体20において、巻回軸方向の他端部(
図2の左端部)には、巻回された負極芯体露出部27が配置される。内側のセパレータ30は、巻回した状態で、正極板22及び負極板26の間に配置され、正極板22及び負極板26を電気的に隔てる。最外周に配置されたセパレータ30は、最外層の電極板と外部の部材との短絡を防止する。例えば、電極体20は、最外層から内側に向かって、最外周に配置された外側のセパレータ30、負極板26、内側のセパレータ30、正極板22、外側のセパレータ30、負極板26の順で並び、それが繰り返されている。一方、後述するように二次電池の落下時において正極集電体40または負極集電体50から巻回電極体20に大きい力が加わったときには、最外周に配置された外側のセパレータ30が集電体により突き破られる可能性がある。これにより、内側の電極板と外部の部材、例えば正極集電体40と負極板26とが電気的に接触して短絡する可能性がある。実施形態はこのような不都合を防止するものである。
【0021】
また、電極体20では、最外周に配置されたセパレータ30の巻き終わり側の端部が後述する封口板14側の端部である上端部に配置され、この巻き終わり側端部を電極体20の外周部に固定するように、絶縁テープ60が貼着されている。絶縁テープ60は、セパレータ30とは異なる絶縁緩衝部材である。この絶縁テープ60は、本来の電極体20の巻き留めの機能とともに、二次電池の落下時における緩衝材としての機能も有する。
図1、
図2では、絶縁テープ60を砂地で示している。絶縁テープ60は、電極体20の上端部に対し、巻き終わり側端部を覆うように厚み方向一方側(
図1、
図2の紙面の表側)から他方側(
図1、
図2の紙面の裏側)にわたって貼着される。絶縁テープ60は、電極体20の上端部のうち、巻回軸方向において、両端の正極芯体露出部23及び負極芯体露出部27の間に位置する部分のほぼすべての範囲に配置される。絶縁テープ60は、後述する正極集電体40の第1ベース部41(
図5、図6、
図10)において、封口板14の長手方向における中央側端部の電極体20側の面と電極体20との間に配置される。これにより、後述のように二次電池10のコストを抑制でき、かつ、落下時における内部短絡を抑制できる。
【0022】
巻回された正極芯体露出部23(
図2)には、正極集電体40が電気的に接続される。これにより、正極集電体40は、正極板22に電気的に接続される。正極集電体40は、電極体20の厚み方向反対側(
図2の紙面の表側)に配置された正極受け部材48とともに、正極芯体露出部23を挟んで一体的に抵抗溶接により接続されている。正極集電体40は、第1ベース部41において後述する第1絶縁部材61を上下方向に貫通した正極端子15の下端部に電気的に接続される。
【0023】
巻回された負極芯体露出部27(
図2)には、負極集電体50が電気的に接続される。これにより、負極集電体50は、負極板26に電気的に接続される。負極集電体50は、電極体20の厚み方向反対側(
図2の紙面の表側)に配置された負極受け部材58とともに、負極芯体露出部27を挟んで一体的に抵抗溶接により接続されている。負極集電体50は、第2ベース部51において第2絶縁部材62を上下方向に貫通した負極端子16の下端部に電気的に接続される。正極集電体40及び負極集電体50は、後で詳しく説明する。
【0024】
外装体12は、開口端部に封口板14が溶接されることにより、開口が閉塞されている。
図5の(a)は、
図1において、封口板14、正極端子15、及び負極端子16と、正極集電体40及び負極集電体50との結合構造を取り出して示す断面図である。
図5の(b)は、正極集電体40と電極体20を挟んで反対側の正極受け部材48及び絶縁フィルム47bを示す図である。
図5の(c)は、負極集電体50と電極体20を挟んで反対側の負極受け部材58及び絶縁フィルム57bを示す図である。
【0025】
図4、
図5に示すように、封口板14の長手方向中心部には、所定値以上の高いガス圧が加わったときに破断によって開放されるガス排出弁14aが形成される。また、封口板14において、ガス排出弁14aの近くには注液孔14bが形成される。注液孔14bは、外装体12の内部に非水電解液を入れるためのものである。
【0026】
図6は、
図5に示す封口板14の注液孔14bに蓋体であるリベット64を取り付けて示している
図5のA部拡大図である。
図7は、
図6のB部拡大図である。
図6、
図7に示すように、注液孔14bは、外装体12(
図1)の内部に非水電解液が注入された後に、リベット64が取り付けられる。
図1、
図2、
図5では、リベット64を省略して示している。リベット64は、注液孔14bの開口を閉塞する。この状態で、リベット64の内側端部である下端部は、封口板14より下側に突出する。
図7に示すように、リベット64の内部には、下端部で拡径した係止孔65が形成され、係止孔65の下端部の拡径部に押し込まれた剛性の高い形状保持部材66の下端部によってリベット64が下端部で拡径されている。これにより、リベット64の下端部の拡径した部分が封口板14の下側面に係止され、リベット64が上方に抜けることを阻止している。なお、
図7では、形状保持部材66の下端部がリベット64を拡径させた状態で、リベット64の先端寄り部分以外の部分を引きちぎることで、残りの部分だけが係止孔65に存在する。
【0027】
次に、正極集電体40及び負極集電体50を詳しく説明する。
図8の(a)は、
図2に示された電極体20等を右側から見た図であり、
図8の(b)は、
図2に示された電極体20等を左側から見た図である。
図9は、
図5の(a)において、正極集電体と第1絶縁部材との組み合わせと、受け部材とを取り出して示す斜視図である。
図10は、
図9における正極集電体及び第1絶縁部材の組み合わせの分解斜視図である。
【0028】
正極集電体40は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。負極集電体50は、銅または銅合金からなる。正極集電体40及び負極集電体50の基本形状は、略同じであるので、以下、正極集電体40を中心に説明する。
図8(a)、
図9、
図10に示すように、正極集電体40は、封口板14の付近に配置される第1ベース部41(
図10)と、第1ベース部41の端部に連結されて電極体20側である下側に向かうように配置された第1リード部42とを有する。第1ベース部41は、封口板14に沿って略平行に配置される長方形の板状である。第1ベース部41には、上下に貫通する孔41aが形成される。第1リード部42は、第1ベース部41の長手方向一方側部分(
図10の左側部分)の幅方向一端から延出されて上下方向に伸びる上下方向部43と、第1傾斜部44及び電極体接合部45とを有する。第1傾斜部44は、上下方向部43の下端から電極体20の厚み方向(
図8(a)、
図9、
図10の左右方向)に対し傾斜する。電極体接合部45は、第1傾斜部44の下端から上下方向に伸びて電極体20の厚み方向一方側面(
図8の右側面)に対面する。電極体接合部45の幅方向両端にはリブ46が連結される。2つのリブ46は、電極体接合部45に対して略垂直に伸びるように形成される。電極体接合部45は、電極体20の正極芯体露出部23の厚み方向一方側面(
図8(a)の右側面)と対面するように配置され、溶接によって正極受け部材48とともに、電気的に接続される。正極受け部材48の幅方向両端にも電極体接合部45と同様にリブ49が連結される。このとき、電極体接合部45と正極芯体露出部23との間、及び正極芯体露出部23と正極受け部材48との間には、それぞれ絶縁フィルム47a、47bが配置される。
図5(a)(b)では絶縁フィルム47a、47bを斜線部で示している。
【0029】
各絶縁フィルム47a、47bには円形の孔が形成され、電極体接合部45、正極芯体露出部23(
図8(a))及び正極受け部材48は、絶縁フィルム47a、47bの孔を通じて電気的に接続される。このとき、電極体接合部45の正極芯体露出部23と接合される部分に正極芯体露出部側に突出する突起が形成されてもよい。
【0030】
図6、
図9に示すように、正極集電体40の第1ベース部41は、第1絶縁部材61の内側に覆われる。より詳しくは、第1ベース部41の上面と側面が第1絶縁部材61によって覆われる。第1絶縁部材61によって覆われていない第1ベース部41の下面は、電極体20と略平行で、かつ、第1絶縁部材61の下端部と面一になっている。第1絶縁部材61は、封口板14と第1ベース部41との間に配置され、正極集電体40と封口板14との絶縁のために配置される。第1絶縁部材61は、下端が開口した箱形である。第1絶縁部材61の幅方向一端(
図9の紙面の表側端)に形成された切り欠き61aを通じて、第1ベース部41の端部から第1リード部42が外側に導出される。
【0031】
第1絶縁部材61の天板部には上下に貫通する孔61bが形成される。
図6に示す正極端子15の下端部は、第1絶縁部材61及び第1ベース部41の孔を通じて第1ベース部41より下側に突出し、下側に突出した部分が第1ベース部41にカシメられて電気的に接続される。なお、正極端子15のカシメられた部分と第1ベース部41が更に溶接接続されることが好ましい。また、第1ベース部41の下面には凹部が形成され、正極端子15の下端部のカシメられた部分は、当該凹部内に配置されることが好ましい。そして、正極端子15のカシメられた部分の下端が、第1ベース部41の下面よりも上方に位置することがより好ましい。
【0032】
さらに、
図3に示すように、電極体20の巻き終わり側端部に貼着された絶縁テープ60は、第1ベース部41(
図6)において、封口板14の長手方向における中央側端部(
図6の左端部)と電極体20との間を含んで、電極体20の封口板側端部に配置される。絶縁テープ60は、突き刺し強度が800gf以上であることが好ましい。突き刺し強度はJISで定められる突き刺し強度試験で行った場合の強度である。具体的には、突き刺し強度試験では、試験片を原幅試料からMD(Machine Direction)方向に幅30mmで全幅にわたり採取し、この試験片について幅方向に均等間隔で20点測定を行う。そして、試験片を先端形状R=0.5mmのニードルを用いて1.5mm/secの速度で突いたときに、試験片が破れる荷重を測定し、20点の平均荷重をもって突き刺し強度とする。
【0033】
一方、
図8の(b)に示すように、負極集電体50は、第2ベース部51と第2リード部52とを含む。第2ベース部51は、正極集電体40の第1ベース部41と同様に封口板14に沿って配置される。第2リード部52は、正極集電体40の第1リード部42と同様に第2ベース部51の端部に連結されて電極体20側に向かうように配置される。第2リード部52の電極体接合部55は、電極体20の負極芯体露出部27の厚み方向一方側面(
図8の(b)の左側面)と対面するように配置され、負極芯体露出部27に接続される。負極集電体50において、第2ベース部51と第2リード部52との接続部の位置は、封口板14の長手方向(
図2の左右方向)に関して、正極集電体40の第1ベース部41及び第1リード部42の接続部の場合と逆になる。負極集電体50において、その他の構成は正極集電体40の構成と同様である。例えば、
図8の(b)の第2リード部52は、上下方向部53と、上下方向部53の下端から電極体20の厚み方向に対し傾斜した第2傾斜部54とを有する。負極集電体50の第2ベース部51の上面および側面は第2絶縁部材62に覆われている。第2ベース部51の下面は、第2絶縁部材62によって覆われることなく露出している。また、第2ベース部51の下面もまた、電極体20と略平行で、かつ、第2絶縁部材62の下端部と面一になっている。第2絶縁部材62及び第2ベース部51を貫通した負極端子16の下端部が第2ベース部51に電気的に接続される。第2絶縁部材62は、封口板14と第2ベース部51との間に配置され、負極集電体50と封口板14との絶縁のために配置される。また、負極集電体50の電極体接合部55と負極芯体露出部27との間、及び負極芯体露出部27と負極受け部材58との間には、それぞれ絶縁フィルム57a、57bが配置される。負極集電体50の電極体接合部55、負極芯体露出部27及び負極受け部材58は、絶縁フィルム57a、57bの孔を通じて電気的に接続される。
【0034】
また、
図3に示すように、正極集電体40の第1ベース部41において、封口板14の長手方向における中央側端部(
図3の左端部)の電極体20側の面と電極体20の封口板14側端部との距離である正極側間隔をd1とする。また、負極集電体50の第2ベース部51において、封口板14の長手方向における中央側端部(
図3の右端部)の電極体20側の面と電極体20の封口板14側端部との距離である負極側間隔をd2とする。このとき、第1ベース部41の厚みが第2ベース部51の厚みより大きく、正極側間隔d1は、負極側間隔d2よりも小さくなっている(d1<d2)。これに合わせて、第1ベース部41の周囲の第1絶縁部材61の高さ(
図3の上下方向長さ)も第2ベース部51の周囲の第2絶縁部材62の高さより大きくなっている。
【0035】
正極集電体40がアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、負極集電体50が銅又は銅合金からなる場合、正極集電体40を構成する板材の厚みをより大きくすることにより、集電体の加工性を低下させることなく、あるいは二次電池10の重量を低減しながら角形二次電池の内部抵抗を低下させることができる。このような観点から、正極集電体40を構成する板材と負極集電体50を構成する板材の両方を同じように厚くするよりも、正極集電体40を構成する板材をより厚くする方が好ましい。したがって、上述の通りd1<d2という構成を有することが好ましい。
【0036】
図11では、正極端子15及び負極端子16を下にして二次電池10が落下する状態を、外装体12(
図1)を取り外して示している。また、各集電体40,50には、
二股形状のように複雑な構造を採用する必要がないので、二次電池10の重量を低減することができる。また、集電体の構造を単純化できることにより、二次電池10のコスト増大を抑制できる。また、後述するようにエネルギ密度の低下も抑制できる。
【0037】
また、電極体20と、電極体20に含まれる非水電解液との質量の和は、200g以上となるように設定される。これにより、高い電池容量を実現できる。
【0038】
実施形態では、このような高い電池容量による高性能化と、二次電池10の落下時における落下耐性、すなわち落下時に耐え得る性能の向上との両立を、コストの増大とエネルギ密度の低下とを抑制して実現できる。
【0039】
具体的には、ハイブリッド車両等の車両に搭載して使用する二次電池10では、車両の高い性能を実現するために、二次電池の大容量化が要求される。二次電池10の大容量化には、電極体20の重量の増大を伴う。従来はこの対策として、集電体を二股に分岐させて電極体20を2つの腕部で支持されていた。しかしながら、この対策は複雑な形状を要するので、二次電池20の重量が増加したり、高コスト化する問題があった。本発明ではこのような問題を解決できる。
【0040】
また、実施形態では、巻回電極体20の巻き留めテープである絶縁テープ60が絶縁緩衝部材を兼ねる。したがって、二次電池20の製造工程を複雑化させることなく、また二次電池20のエネルギー密度を低下させることなく、信頼性を向上させることができる。
しかも、正極集電体40と電極体20との間を含んで、封口板14及び電極体20の間に絶縁テープ60が配置される。これにより、正極集電体40の第1ベース部41及び負極集電体50の第2ベース部51のうち、最も巻回電極体20に近い第1ベース部41が電極体20に衝突する場合でも、絶縁テープ60がその衝撃を吸収する。これにより、落下耐性が向上し、内部短絡を抑制することができる。このため、二次電池の大容量化による高性能化と、その課題であった落下耐性の向上とを両立させた信頼性の高い二次電池10を提供できる。なお、電極体20と、電極体20に含まれる非水電解液との質量の和は、200g以上に限定するものではなく、それ以下であってもよい。その場合でも、二次電池のコスト増大及びエネルギ密度の低下を抑制でき、かつ、落下時における内部短絡を抑制できる。但し、本発明は、電極体20と、電極体20に含まれる非水電解液との質量の和は、200g以上である場合に顕著な効果が得られる。
【0041】
さらに、
図6、
図7に示すように、封口板14の注液孔14bを閉塞する蓋体であるリベット64の下面(底部の下端)は、正極集電体40における第1ベース部41の下面(底部の下端)よりも電極体20に近くすることが好ましい。このような構成では、正極端子15及び負極端子16を下にして二次電池10が落下したときに、リベット64の下面が電極体20に第1ベース部41より先に衝突しやすい。これにより、落下時に電極体20に加わる力を、正極集電体40の第1ベース部41からと、リベット64からとに分散させて第1ベース部41から加わる力を緩和できる。これにより、落下耐性をより向上させることができる。なお、リベット64の下面は平坦面な面であることがより好ましい。また、リベット64の下面が、正極及び負極のいずれの極性も有していないことが好ましい。なお、封口板14の長手方向において、注液孔14b及び蓋体であるリベット64は、ガス排出弁14aよりも正極集電体40の第1ベース部41の側に配置されることがより好ましい。
【0042】
また、第1ベース部41の下面は、第1ベース部41と封口板14の間に配置される第1絶縁部材61の下端と上下方向において一致させることが好ましい。また、第1ベース部41と封口板14の間に配置される第1絶縁部材61の下端が、第1ベース部41の下面よりも下方に位置することがより好ましい。このような構成では、正極端子15及び負極端子16を下にして二次電池10が落下したときに、電極体20に加わる力を、正極集電体40の第1ベース部41からと、第1絶縁部材61からとに分散させて第1ベース部41から加わる力を緩和できる。これにより、落下耐性をより向上させることができる。
【0043】
図12は、正極端子15及び負極端子を下にして二次電池10を落下させた落下試験後の正極集電体の第1ベース部近傍の状態を示す図である。なお、落下試験後の正極集電体の第1ベース部近傍の状態については、二次電池10をX線CT装置で撮影することにより確認した。
図12に示すように、落下によって電極体20の重みにより正極集電体40が変形し、電極体20が封口板14側に移動することで、正極集電体40の第1ベース部41の角部が電極体20の上面に破線αの部分で衝突していることを確認できた。また、落下によって正極端子15及び負極端子16が床面に衝突し、封口板14において正極端子15及び負極端子16が取り付けられた部分の近傍が変形し、正極集電体40の第1ベース部41の角部が電極体20に接し易くなることが分かった。
【0044】
また、以下で説明するように、電極体20の厚みと幅(
図2の左右方向寸法)を大きくすることによって、さらに効果的に落下の衝撃を緩和することができ、落下耐性を向上できる。
【0045】
具体的には、電極体20の厚みは、非水電解液を含んだ状態で、10mm以上であることが好ましく、14mm以上であることがより好ましい。この好ましい構成を採用した場合には、封口板14側の部材、例えば第1ベース部
41と接触する面積を大きくでき、封口板側の部材と接触するときの単位面積当たりの衝撃力を緩和できる。このため、巻回電極体20の損傷を生じにくくできる。なお、電極体20の厚みは、非水電解液を含んだ状態で、30mm以下とすることが好ましい。
【0046】
また、巻回電極体20の幅は100mm以上であることが好ましい。この好ましい構成を採用した場合には、単位幅当たりの電極体20の重量を低減できるため、封口板側の部材と接触するときの単位面積当たりの衝撃力を緩和できる。このため、巻回電極体20の損傷を生じにくくできる。なお、巻回電極体20の幅は200mm以下であることが好ましい。
【0047】
また、電極体20は、封口板側の上端部が断面円弧形であり、その円弧形の曲率半径が大きくなるほど、封口板側の部材が落下時に衝突したときの応力の分散を図れるので、電極体20の損傷を生じにくくできる。
【0048】
次に、実施例1〜3に係る二次電池と比較例1に係る二次電池とを用いて行った落下試験の結果を説明する。
【0049】
落下試験において、共通の条件は以下の通りである。
まず、二次電池の各構成は以下の通りである。
正極板は、正極芯体としてのアルミニウム箔の両面に正極活物質層が形成されている。正極活物質層は、正極活物質としてのLiNi
0.35Co
0.35Mn
0.30O
2、導電剤としての炭素材料、及び結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含有する。また、それぞれの含有割合(質量%)は、LiNi
0.35Co
0.35Mn
0.30O
2/炭素材料/PVDF=90/7/3のものを用いた。
負極板には、負極芯体としての銅箔の両面に負極活物質層が形成されている。負極活物質層は、黒鉛、カルボキシメチルセルロール(CMC)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を含有する。また、それぞれの含有割合(質量%)は、黒鉛/CMC/SBR=98/1/1のものを用いた。
セパレータ30は、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)の3層構造のものを用いた。
また、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジメチルカーボネート(DMC)=30/30/40 vol%である混合溶媒に、溶質としてのLiPF
6が1.2Mとなるように含有されているものを用いた。
また、正極集電体40はアルミニウムにより形成した。負極集電体50は銅により形成した。
【0050】
[落下試験]
試験方法として、1.4mの落下高さから、正極端子15及び負極端子16を下にして二次電池10を離して落下させた。このとき、環境温度は25℃とした。
【0052】
表1では、正極集電体40の第1ベース部41と電極体20との間に配置する絶縁緩衝
部材の種類、非水電解液を含んだ状態での電極体20の厚み、絶縁緩衝部材の突き刺し強度、が示される。
実施例1〜3の二次電池10においては、厚さ150μm、突き刺し強度800gfのPPテープである絶縁テープ60を絶縁緩衝部材として用いた。ここで、PPテープは、非多孔性のポリプロピレン製の基材の一方の面に粘着層が形成されたものである。
【0053】
実施例1〜3の二次電池10では、リベット64の下面が、正極集電体40の第1ベース部41の下面よりも下方(電極体20側)となるようにした。
【0054】
実施例1〜3の二次電池10、及び比較例1の二次電池においては、正極集電体40の第1ベース部41の厚みを、負極集電体50の第2ベース部51の厚みより大きくした。即ち、正極集電体40の第1ベース部41と電極体20の間の距離を、負極集電体50の第2ベース部51と電極体20の間の距離より小さくした。
【0055】
実施例1〜3の二次電池10、及び比較例1の二次電池では、封口板14と正極集電体40の第1ベース部41の間に配置される第1絶縁部材61の下端部と、正極集電体40の第1ベース部41の下面とを同じ高さとした。
【0056】
表1において、落下試験の結果として、短絡が生じた場合を×とし、短絡が生じなかったものを○とした。
【0057】
表1に示すように、絶縁緩衝部材としてのPPテープを配置した実施例1〜3では、正極側の第1ベース部41と負極側の第2ベース部51を非対称にし(すなわち電極体との間の距離を異ならせている)、第1ベース部41を第2ベース部51より電極体20に近づけた場合でも、落下試験によって短絡しないことが分かった。
【0058】
このとき、二次電池10を解体し、電極体20における打痕の到達を観察したところ、打痕は最外層の負極板及び正極板の間のセパレータで止まっていることが分かった。
【0059】
一方、比較例1では、正極側の第1ベース部41と負極側の第2ベース部51を非対称にし(すなわち電極体との間の距離を異ならせている)、第1ベース部41を第2ベース部51より巻回電極体20に近づけた場合、PPテープ等のセパレータとは異なる絶縁緩衝部材を配置しないため、落下試験で短絡が生じた。
【0060】
電極体20と電極体に含まれる非水電解液の質量との和が180gであった同タイプの二次電池では、セパレータとは異なる絶縁緩衝部材を配置しなくても、同様の落下試験を行っても内部短絡が発生しないことが確認できている。
したがって、二次電池の落下による短絡は、巻回電極体20と電極体に含まれる非水電解液の質量との和がある程度大きくなった場合、特に巻回電極体20と電極体に含まれる非水電解液の質量との和が200g以上の場合に生じ易いと考えられる。そして、二次電池の落下による短絡は、正極集電体40の第1ベース部41と電極体20の間の距離が、負極集電体50の第2ベース部51と電極体20の間の距離よりも小さい場合、に生じ易い課題であると考えられる。したがって、セパレータとは異なる絶縁緩衝部材を配置することによる効果は、巻回電極体20と電極体に含まれる非水電解液の質量との和が200g以上であり、正極集電体40の第1ベース部41と電極体20の間の距離が、負極集電体50の第2ベース部51と電極体20の間の距離よりも小さい場合、特に顕著になると考えられる。
【0061】
また、正極集電体40における第1ベース部41の厚みは、負極集電体50における第2ベース部51の厚みより、1.2倍以上大きいことが好ましい。この好ましい構成により、第1ベース部41と電極体20との間に絶縁テープ60を配置したことによる効果が顕著になる。
【0062】
また、絶縁テープ60は、上記の実施形態のように電極体20に貼られていてもよいが、例えば正極集電体40の第1ベース部41の下側に貼られる等により、電極体20との間に配置されてもよい。絶縁テープ60は、実施形態のように電極体20の上部の広い範囲に貼られていることが好ましい。一方、短絡は正極集電体40付近で起こりやすいので、電極体20の上部において、
図3に矢印βで示す範囲を含む部分に配置され、負極集電体50付近には配置されなくてもよい。矢印βで示す範囲は、電極体20の幅方向(
図3の左右方向)において、第1ベース部41の電極体20の巻回軸方向中央側端Rを基準として、幅方向両側に所定長さSずつ(例えば1cmずつ)離れた2つの位置の間の範囲である。
【0063】
実施例1〜3の二次電池10では、絶縁テープ60として突き刺し強度が、800gfのものを用いた。これにより、より確実に短絡を防止できる。
【0064】
また、実施例1〜3の二次電池10では、リベット64の下面が、正極集電体40の第1ベース部41の下面よりも、巻回電極体20に近い位置に配置されている。これにより、落下による衝撃力の一部をリベット64と巻回電極体20とで分散できたため、より確実に短絡を防止できる。なお、リベット64の下面を平坦な面とすることが好ましい。また、リベット64の下面には絶縁部材が配置されていることがより好ましい。例えば、リベット64の下面が絶縁性の樹脂により被覆されていることが好ましい。
【0065】
以下の表2は、実施例4〜6の二次電池10、比較例2の二次電池を用いて行った落下試験結果を示している。なお、落下試験の方法は、上述の方法と同様である。実施例4〜6の二次電池10は、絶縁緩衝部材としてPPテープに代えて非多孔性のPPフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様の構成を有する。なお、実施例4〜6の二次電池10ではそれぞれ異なるPPフィルムを用いている。比較例2の二次電池10は、絶縁緩衝部材の代わりに1枚のPP/PE/PPの3層構造のセパレータを配置したこと以外は実施例1と同様の構成を有する。
【0067】
表2に示すように、PPフィルムを用いた場合でも落下耐性を良好にできることを確認できた。なお、絶縁緩衝部材の突き刺し強度は、800gf以上であることが好ましい。
なお、表2に示すように、絶縁緩衝部材に代えて厚み20μm、突き刺し強度400gfのPP/PE/PPのセパレータを配置した場合、ある程度の効果が得られるものの、短絡を確実に防止することは出来なかった。表2では、落下試験の結果において、短絡防止についてある程度効果が得られたものを△とした。
【0068】
なお、絶縁緩衝部材の厚みは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、絶縁緩衝部材の厚みは、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。
また、絶縁緩衝部材として、粘着剤が表面についているPPフィルムを用いてもよく、その場合には、電極体20の巻き終わりを巻き留めする絶縁テープ60として用いることができるため、より好ましい。なお、粘着剤のないフィルムを用いる場合には、別にテープ等で電極体20にフィルムを固定することが考えられる。あるいは、セパレータ30に絶縁緩衝部材を熱溶着したり、接着剤で接着することが考えられる。
【0069】
正極集電体40の第1ベース部41の下面と電極体20の上端との距離が1.5mm以上であることが好ましい。距離がこれより近すぎると、落下時に正極集電体40から電極体20に加わる衝撃力が著しく増大するためである。
【0070】
図13は、実施形態の別例における二次電池において、
図3に対応する図である。
図13に示す別例では、
図1から
図10に示した構成において、絶縁テープを電極体20の幅方向両側に分けて第1絶縁テープ70及び第2絶縁テープ71としている。第1絶縁テープ70は、電極体20と正極集電体40の第1ベース部41との間に、第1の絶縁緩衝部材として配置される。第2絶縁テープ71は、電極体20と負極集電体50の第2ベース部51との間に、第2の絶縁緩衝部材として配置される。
図13の構成によっても、
図1から
図10の構成と同様に、コストを抑制でき、かつ、落下時における内部短絡を抑制できる。また、この場合には、絶縁テープが配置されていない部分から非水電解液が電極体20内に浸入し易くなるため、電極体20への注液性が向上する。
その他の構成及び作用は、
図1から
図10の構成と同様である。
【0071】
変形例として、電極体20を包む絶縁シート13の一部を絶縁緩衝部材とすることもできる。例えば、絶縁シート13の一部を、正極ベース部において封口板14の長手方向における中央側端部と、巻回電極体20の間に配置することができる。