【実施例】
【0012】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0013】
図1を参照して、実施例の超音波流量計200は、センサヘッド2とコントローラ4とで構成されている、センサヘッド2とコントローラ4は別体構造であり、センサヘッド2とコントローラ4はケーブル6によって接続されている。センサヘッド2は硬質の配管10の周面に脱着可能に後付けされる。また、コントローラ4のケーブル6が接続される面の反対側の面には、例えばPLCなどの外部機器(図示略)に繋がるケーブルが接続される。コントローラ4は、このケーブルを通じて、PLCなどの外部機器に対し、配管を流れる流体の流量に関するオン・オフ信号を出力する。なお、以下の実施例では、
図1に示すヘッド・アンプ分離型の超音波流量計200を中心に説明するが、ヘッドとアンプが一体になった、ヘッド・アンプ一体型の超音波流量計にも本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【0014】
図2は、実施例の超音波流量計200の機能ブロック図である。コントローラ4は、制御部12を有し、また、記憶部14、送信増幅部16、受信増幅部18を有する。送信増幅部16、受信増幅部18は送信・受信切替回路20に接続されている。
【0015】
制御部12に含まれる送信信号発生部22で生成したアナログ信号は、送信増幅部16を経由して送信・受信切替回路20を通じて第1、第2の超音波素子24、26に供給され、第1、第2の超音波素子24、26から超音波が発生される。
【0016】
第1超音波素子24から発生された超音波は、配管10(
図1)の中を通る流体に入射される。流体内を伝播する超音波は、第2超音波素子26によって受信され、第2超音波素子26は、受信した超音波に基づくアナログ信号を出力する。第2超音波素子26から出力されたアナログ信号は送信・受信切替回路20を通じて受信増幅部18に供給される。
【0017】
受信増幅部18では、送信・受信切替回路20から受け取ったアナログ信号を増幅すると共にA/D変換回路によりデジタル信号に変換される。このデジタル信号は制御部12に供給される。
【0018】
他方、第2超音波素子26が発生した超音波は、配管10(
図1)の中を通る流体に入射される。流体内を伝播する超音波は、第1超音波素子24によって受信され、第1超音波素子24は、受信した超音波に基づくアナログ信号を出力する。第1超音波素子24から出力されたアナログ信号は送信・受信切替回路20を通じて受信増幅部18に供給される。
【0019】
受信増幅部18では、送信・受信切替回路20から受け取ったアナログ信号を増幅すると共にA/D変換回路によりデジタル信号に変換される。このデジタル信号は制御部12に供給される。
【0020】
制御部12は、記憶部14に記憶されているプログラムを実行することにより、信号演算部30、流量演算部32、比較・判定部34の機能が実現される。信号演算部30では、受信増幅部18から与えられるデジタル信号に基づいて時間差Δtを測定する。この時間差Δtは、第1超音波素子24が出力した超音波が第2超音波素子26によって受信されるまでの時間t1と、第2超音波素子26が出力した超音波が第1超音波素子24によって受信されるまでの時間t2との差である。流量演算部32は、信号演算部30により測定された時間差Δtに基づいて、配管10の中を流れる流体の速度を所定の式に基づいて算出すると共に、当該流体の流量を別の所定の式に基づいて算出する。
【0021】
コントローラ4は、ユーザが操作するボタンなどの操作部36(
図1)や7セグメントLEDや薄型表示器で構成される表示部38(
図1)等を有し、また、外部機器とのインターフェースを構成するコネクタなどの出力部40(
図2)を有する。なお、
図2においては、ヘッド・アンプ一体型の超音波流量計では、センサヘッド2(の機能)がコントローラ4内に組み込まれることになる。一方、ヘッド・アンプ分離型の超音波流量計200において、ヘッドとアンプの切り分けをどこで行うかは自由である。例えば、受信増幅部18、送信増幅部16、及び送信・受信切替回路20を、センサヘッド2側に組み込んでもよい。
【0022】
上記の第1、第2の超音波素子24、26はV配置(
図3)又はZ配置(
図4)される。
図3、
図4において、参照符号42は音響結合媒体つまりカプラントを示す。
【0023】
カプラント材は、高分子ゴム(シリコーンゴム、エピクロヒドリンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴムなど)、ゲル状物質(シリコーンゲル、ウレタンゲルなど)のような弾性のカプラント材であるのがよい。このカプラント材は適度な圧縮力の下で効果的に音響結合効果を発揮する。この圧縮力は付勢部材(典型的にはバネ力)によって提供される。
【0024】
表示部38の表示や出力部40を通じた外部機器には、予め設定したしきい値(設定値)に基づく制御出力が出力される。また、積算流量毎にパルス出力される。また、例えば通信を使って流量計測値をデジタル出力される。
【0025】
以下、本発明を適用した超音波流量計の実施例を説明するが、上述した要素と同じ要素には同じ参照符号を付す。
【0026】
第1実施例(図5〜図9):
図5〜
図7は、第1実施例の超音波流量計に含まれるセンサヘッド50を示す。センサヘッド50は第1、第2の超音波素子24、26がV配置である。ケース52は、ケース本体54と、平板状の蓋56とで構成され、蓋56はヒンジ58(
図6)によってケース本体54に対して片開きすることができる。また、ヒンジ58と反対側にフック60が設けられ、フック60はその長手方向中間部分がケース本体54に軸支されている。この揺動フック60の支持軸を参照符号60aで示す。
【0027】
ケース本体54は、その両端壁に夫々開口62(
図6)を有している。この実施例では、平板状の蓋56によって開口62は正面視矩形に形作られている。
【0028】
開口62を通じて配管10がケース52に挿通される。開口62は例えば直径1インチの配管を受け入れることができる大きさに設定されている。勿論、開口62の大きさは任意に設定可能であるが、センサヘッド50を取り付け可能な配管10の最大直径の値に対応した大きさに開口62を設定するのが好ましい。
【0029】
ケース本体54には、配管10の長手方向に間隔を隔てて第1センサ部材64、第2センサ部材66が配置されている。第1センサ部材64は第1超音波素子24、第1くさび部材68を含む。第2センサ部材66は第2超音波素子26、第2くさび部材70を含む。
【0030】
第1センサ部材64は第1付勢部材72によって蓋56の方向に付勢されている。第2センサ部材66は第2付勢部材74によって蓋56の方向に付勢されている。第1、第2の付勢部材72、74は具体的には圧縮バネで構成される。第1、第2の付勢部材72、74の付勢方向をより詳しく説明すると、第1センサ部材64は第1の付勢部材72によって配管10の直径方向且つ蓋56の方向に付勢され、同様に、第2センサ部材66は第2の付勢部材74によって配管10の直径方向且つ蓋56の方向に付勢される。
【0031】
第1センサ部材64は、
図5を参照して、ケース本体54の一方の垂直壁54aと中間壁77の互いに対抗する2つの垂直面によって、その移動方向が案内される。ここに垂直とは、配管10の軸線に対する概念であり、別の表現で言えば配管10の直径方向である。中間壁77は、第1、第2のセンサ部材64、66の間に位置している。第2センサ部材66は、中間壁77と、ケース本体54の他方の垂直壁54bとの互いに対抗する2つの垂直面によって、その移動方向が案内される。つまり、第1センサ部材64、第2センサ部材66は配管10の直径方向且つ蓋56の方向に案内される。
【0032】
なお、
図5では、中間壁77と垂直壁54a,垂直壁54bにガイドされて、第1センサ部材64および第2センサ部材66の各々が配管に向けて付勢される構成になっているが、例えば、第1センサ部材64と第2センサ部材66が一体となって移動するような構成も可能である。この場合、第1センサ部材64および第2センサ部材66ならびに中間壁77は、垂直壁54a,垂直壁54bにガイドされながら、一体となって移動することになる。
【0033】
図6は、1インチ以下の配管10にセンサヘッド50を取り付けた状態を示す。図示の矢印Aは、第1、第2の付勢部材72、74による付勢の方向を示す。
図6の矢印Aから、第1、第2のセンサ部材64、66は蓋56の方向に付勢されていることが分かるであろう。ケース本体54にヒンジ58によって連結された蓋56をフック60で固定することで、配管10の所望の位置にセンサヘッド50を取り付けることができる。
【0034】
そして、配管10にセンサヘッド50が取り付けられると、第1、第2の付勢部材72、74によって蓋56の方向に押し付けられている第1センサ部材64、第2センサ部材66を介して、配管10は開口62の中で蓋56に押し付けられる。すなわち、配管10は、蓋56によって係止された状態になる。
図5を参照して、勿論、第1、第2の付勢部材72、74によって押し上げられている第1センサ部材64、第2センサ部材66は垂直壁54a、54bと中間壁77のガイド機能によって配管10の直径方向且つ蓋56の方向に変位し、第1、第2のセンサ部材64、66は、常時、カプラント42を介して配管10と圧接した状態が維持される。
【0035】
ここで、カプラント42は、配管に押し付けられていない状態では、第1くさび部材68および第2くさび部材70の底面から所定量だけ突出している。言い換えると、第1くさび部材68および第2くさび部材70は、それぞれ配管と当接する当接面を有し、カプラント42は、これら当接面から所定量だけ突出するように構成されている。ケース本体54が配管に押し付けられたとき、カプラント42は、当接面から突出しなくなるまで圧縮される。このときのカプラント42のつぶし量は、15%〜45%の間であることが好ましい。これにより、超音波の高い伝達効率を維持することができる。
【0036】
このように、本実施例では、カプラント42のつぶし量(配管の径方向における圧縮量)を規定するために、第1くさび部材68および第2くさび部材70の底面つまり配管10との接触面に凹所を形成するとともに、その凹所にカプラント42を収容するようにしている。この凹所の深さと、カプラント42の厚みは、ケース本体54が配管に押し付けられたときに超音波の伝達効率が高くなるように最適な寸法に設計される。
【0037】
図7は、実施例に含まれるフック60の作用を説明するための図である。フック60は、上下方向に延びる細長い形状を有し、その中間部分に支持軸60aが設けられている。支持軸60aはケース本体54に固定されている。揺動フック60の下端部には、ケース本体54との間に圧縮バネ80が介装されている。他方、揺動フック60の上端部には爪82が形成されている。爪82は、蓋56を閉めたときに、蓋56の溝56aによって形成された段部84と係合することができる。すなわち、蓋56を閉めると、ケース本体54のフック60が自動的に蓋56の段部84に係止され、これにより蓋56はケース本体54に固定される。上記の第1、第2の付勢部材72、74の付勢力は、爪82と段部84との係合を確実にする。したがって、上記の第1、第2の付勢部材72、74によって蓋56の下端面がケース本体54の上端面に実質的に着座した状態が維持される。また、上述した圧縮バネ80は、爪82が溝56aの中に入り込む方向に付勢する。つまり、圧縮バネ80の付勢力により揺動フック60の係止状態が確実化されると共にこの係止状態が蓋56を閉める操作に伴って自動的に形成される。すなわち、バネ付勢されたフック60はスナップ係止によって蓋56とケース本体54を固定する。そして、圧縮バネ80の付勢力によってケース本体54を蓋56で閉じた状態が保持される。
【0038】
図6、
図7に図示の例では、ヒンジ止めした蓋56を揺動フック60を使ってケース本体54に固定した
、この固定方法の変形例を、
図8を参照して説明する。
図8から直ちに分かるように、変形例の蓋90は、ケース本体54から完全に分離可能である。蓋90は、複数の脚90aを有し、この脚90aの先端に爪92を有する。他方、ケース本体54は、爪92を受け入れる段部94を有し、ケース本体54を蓋90で閉じると、爪92が段部94に係止されて蓋90がロックされる。
【0039】
図9は、開口62の形状の変形例を説明するための図である。
図9を参照して、蓋56は例えば山形に屈折した形状を備えることで、開口62は蓋56によって規定される上縁が上方に凸の五角形に形作られている。このように開口62を五角形の形状に形作ることにより、この開口62による配管10の位置決め機能を更に向上できる。すなわち、五角形の開口62は、直径の異なる配管10の軸位置を鉛直方向に整合させることのできる位置決めが可能になる。
【0040】
第2実施例(図10〜図16):
図10〜
図16は、第2実施例の超音波流量計に含まれるセンサヘッド100を示す。
図11を参照してセンサヘッド100は第1、第2の超音波素子24、26がZ配置である。このセンサヘッド100の説明において、上述した第1実施例に関連したセンサヘッド50で説明した要素と同じ要素には同じ参照符号を付す。
【0041】
図11を参照して、Z配置のセンサヘッド100は、そのケース102が、第1ハーフ104と第2ハーフ106とで構成されている。そして、第1、第2のハーフ104、106はヒンジ58によって連結されており、また、揺動フック60によって相互に固定される(
図12)。勿論、Z配置のセンサヘッド100にあっても、第1ハーフ104と第2ハーフ106の固定方法として、前述の
図8を参照して説明したように第1ハーフ104と第2ハーフ106とが完全に分離可能であってもよく、
図8に図示の脚90a、爪92、段部94からなる構造の固定方法を採用してもよい。
【0042】
上流側に位置する第1センサ部材64及びこれを付勢する第1付勢部材72、下流側に位置する第2センサ部材66及びこれを付勢する第2付勢部材74は配管10の軸線方向に離間して且つ配管10を挟んで配置されている。上流側に位置する第1センサ部材64は、配管10の直径方向に対して斜めに配置され、この傾斜方向は、第1センサ部材64を受け入れる第1筒部110の内面によって規定されている。すなわち、第1筒部110の内面は、第1センサ部材64の傾斜方向を規定すると共に、第1センサ部材64の変位方向を規定する第1ガイド面を構成している。
【0043】
なお、
図11に示す第2実施例では、第1センサ部材64が配管の軸方向に対して斜め方向に摺動するようになっているが、本発明はこれに限られず、例えば、配管の径方向(配管の軸方向に対して垂直な方向)に第1センサ部材64を摺動させるようにしてもよい。但し、第1センサ部材64を斜め方向に摺動させることにより、径方向に摺動させる場合と比べて、対応可能な配管径のレンジが広がるメリットがある。第2センサ部材66についても同様である。また、第1筒部110の断面は、円又は楕円であってもよいし、矩形その他の多角形であっても構わない。
【0044】
同様に、下流側に位置する第2センサ部材66は、配管10の直径方向に対して斜めに配置され、この傾斜方向は、第2センサ部材66を受け入れる第2筒部112の内面によって規定されている。すなわち、第2筒部112の内面は、第2センサ部材66の傾斜方向を規定すると共に、第2センサ部材66の変位方向を規定する第2ガイド面を構成している。
【0045】
Z配置のセンサヘッド100は、これを取り付ける対象の配管10が例えば1インチ以下の直径の配管に規制される。したがって、この範囲の直径の配管においてZ配置したときに超音波を相互に受信可能な位置関係となるように、上述した第1、第2の筒部110、112の傾斜角度が設定される。超音波の軌跡を
図11に参照符号114で示す。この軌跡114に整合するように第1、第2の筒部110、112の配管10の軸線方向の相対位置及び配管10の直径方向に対する傾斜角度が設定される。
【0046】
説明の都合上、
図12を参照して、ケース102の端面の開口62の形状を先ず説明する。開口62は、第1ハーフ104の鋭角に交わる2つの傾斜縁104a、104bで正面視五角形の形状を有している。この五角形は、水平方向に延びる底辺106a、その両端から垂直方向に延び且つ互いに平行な縦縁106b、106cを有し、これらの要素は第2ハーフ106で形成されている。なお、
図12では、2つの傾斜縁104a、104bは、鋭角に交わるように構成されているが、例えば鈍角に交わるように構成されていてもよい。
【0047】
この五角形の開口62において、配管10を第2ハーフ106側から第1ハーフ104側に相対的に強く付勢することで、配管10は第1ハーフ104の2つの傾斜縁104a、104bに案内されて、配管10の位置決めが行われることになる。これを実現するために、
図11を参照して、第2ハーフ106には追加の第1の付勢部材120が配設されている。追加の第1の付勢部材120は第1ハーフ104の方向に付勢力を発揮する。追加の第1の付勢部材120は、第2の筒部112とは配管10の軸線方向に反対側つまり第1の筒部110に対応する位置に配置するのが好ましい。
【0048】
変形例として、第1ハーフ104にも追加の第2の付勢部材(図示せず)を例えば第2の筒部112に対応する位置に配置してもよい。追加の第2の付勢部材は第2ハーフ106の方向に付勢力を発揮する。勿論、この追加の第2の付勢部材は追加の第1の付勢部材120よりも付勢力は小さい(追加の第1付勢部材120の付勢力>追加の第2付勢部材の付勢力)。
【0049】
以上、配管10は第1ハーフ104の2つの傾斜縁104a、104bに案内されて、配管10の位置決めが行われることを説明したが、第1ハーフ104に代えて、このような傾斜縁104a、104bを第2ハーフ106に設けるようにしてもよい。この場合には、
図12に図示の例とは反対に、第2ハーフ106の傾斜する2つの縁に配管10を圧接させるように構成すればよいのは勿論である。
【0050】
適用する配管10が直径1インチ以下であることを前提として、大きな直径の大口径の配管10(L)と、小さな直径の小口径の配管10(S)とを対比して、第1、第2センサ部材64、66の位置が自動調整されることを
図13及び
図14を参照して説明する。
【0051】
図13の(I)は小口径の配管10(S)にセンサヘッド100を取り付けた例を示す。
図13の(II)は大口径の配管10(L)にセンサヘッド100を取り付けた例を示す。小口径、大口径のいずれであっても、第1、第2のセンサ部材64、66は、夫々、第1、第2の付勢部材72、74によって配管10に向けて付勢され、そして、各第1、第2のセンサ部材64、66は、
図11と同様に第1、第2の筒部の内面で案内されて、配管10と圧接した状態にある。
【0052】
前述した通り、第1、第2の筒部110、112は、超音波の軌跡114(
図11)に整合して配管10の直径方向に対して傾斜している。このことから、
図14にも示すように、小口径の配管10(S)での第1、第2のセンサ部材64、66間の離間距離つまり配管10の軸線方向の距離D1は、大口径の配管10(L)での第1、第2のセンサ部材64、66間の離間距離D2に比べて小さい(D1<D2)。
図14において、P(S)は、小口径の配管10(S)のときの第2のセンサ部材66位置を示し、P(L)は、大口径の配管10(L)のときの第2のセンサ部材66位置を示す。
【0053】
図15は、センサヘッド100を小口径の配管10(S)に取り付ける途中の状態を示す。そして、この小口径の配管10(S)がケース102に収容され、センサヘッド100が配管10(S)に取り付け終わった状態を示す。第1、第2のセンサ部材64、66が夫々第1、第2の付勢部材72、74によって圧接する方向に付勢され且つ変位していることが理解できるであろう。
【0054】
前述したように、第2ハーフ106には追加の第1付勢部材120が設けられているため、配管10(S)は、第1ハーフ104で規定される開口62の互いに傾斜した2つの縁104a、104bに押し付けられた状態になり、これにより配管10(S)が位置決めされるのは前述した通りである。大口径の配管10(L)についても同様である。
【0055】
図16は、センサヘッド100を小口径の配管10(S)に取り付けたときの状態を示す。この状態は揺動フック60で第1ハーフ104をロックすることにより形成される。そして、この状態では、第1、第2のハーフ104、106は、その互いに対向する面が互いに実質的に当接した状態になる。そして、第1、第2のセンサ部材64、66が夫々第1、第2の付勢部材72、74によって配管10と圧接した状態であり且つ変位していることが理解できるであろう。
【0056】
第3実施例(図17、図18):
この第3実施例の流量計150は、上述した第2実施例の流量計に含まれるセンサヘッド100の変形例であることから、センサヘッド100の説明において使用した参照符号を付すことにより、その説明を省略して、第3実施例の流量計150の特徴部分を説明する。
【0057】
第3実施例の流量計150は、第2のハーフ106の中に送信増幅部16及び送信・受信切替回路20(
図2)を構成する電子部品152が収容されている。そして、この電子部品152から内部配線154、156を通じて第1、第2の超音波素子24、26に信号が供給される。この第3実施例は、配管10に組み付けるヘッド・アンプ一体型の超音波流量計の具体例を説明するものであり、透過型超音波流量計に限らず、反射型超音波流量計に付いても同様である。なお、第1、第2のハーフ104、106を跨いで、超音波素子と電子部品152を接続するケーブルは、ヒンジ58の近傍に配置された可撓性部材(ジャバラ部材)の中を挿通される。また、他の図においても
図17や
図18を参考にして、適切な配線レイアウトを設計することができる。
【0058】
以上のとおり、第1実施例乃至第3実施例により、本発明はV配置式つまり反射型流量計であってもZ配置式つまり透過型流量計であっても効果的に適用可能であることを説明した。また、Z配置式つまり透過型流量計を示す
図12及び
図13から明らかなように、蓋56がケース本体54に固定された状態では、2つの傾斜縁104a、104bと、第2センサ部材66と、の3点が配管に当接することで、開口62内において配管を所望の位置に位置決めできるようになっている。より具体的に説明すると、2つの傾斜縁104a、104bは、配管の軸方向に沿って延在する形状を有するため、蓋56がケース本体54に固定されると、センサヘッド100の長手方向と配管の軸方向とが略平行になるように位置決めされる。
【0059】
加えて、2つの傾斜縁104a、104bは、第1センサ部材64から両側に離反するように延びているとともに、第1、第2の超音波素子24、26及び配管の中心軸を通る平面に対して同じ傾斜角を有している(
図12でいえば、左右対称である)。したがって、蓋56がケース本体54に固定された状態にて、第1、第2の超音波素子24、26及び配管の中心軸が同一平面上に位置するように、配管を位置決めすることができ、ひいては超音波の受信感度の低下を防ぐことができる。このことは、
図12に示すZ配置の流量計に限らず、
図9に示すV配置式つまり反射型流量計であっても同様である。
【0060】
なお、第1実施例および第2実施例では、2つの傾斜縁104a、104bを用いることで、第1、第2の超音波素子24、26及び配管の中心軸が同一平面上に位置するように配管を位置決めしたが、具体的な構造としては、2つの傾斜縁104a、104b以外を用いることも可能である。例えば、第1、第2の超音波素子24、26及び配管の中心軸を通る平面に対して対称となる位置に、センサヘッド100の長手方向に延びる2本の丸棒を用いる等である。
【0061】
また、従来技術について補足すると、例えばボルトを使った締結方法は、どの程度締め付けるべきかを把握することは容易でない。仮にボルトの締め付けが不十分だと、超音波素子が配管に十分押圧されず、超音波の受信感度の低下を招く虞がある。また、配管軸方向において超音波素子の離間距離をスライドさせる取付装置については、相対距離をどれくらい調節すれば超音波の受信感度を最適にすることができるかを把握することは容易でない。これに対し、第1実施例および第2実施例による超音波流量計によれば、配管の径が異なる場合であっても、配管の周面に簡易かつ容易に後付けすることができるので、使い勝手が良くユーザビリティに優れている。
【0062】
また、本願発明の技術思想について、別の側面から説明すると、配管内を流れる流体への超音波の送信および配管内を流れる流体からの超音波の受信のうち少なくとも一方を行う第1超音波素子と、配管内を流れる流体への超音波の送信および配管内を流れる流体からの超音波の受信のうち少なくとも一方を行う第2超音波素子と、第1超音波素子および第2超音波素子のうち少なくとも一方の出力信号に基づいて配管内の流体の流量を算出する算出部と、算出部により算出された流量と予め定められた流量閾値に基づいて、配管を流れる流体の流量に関するオン・オフ信号を出力する超音波流量センサであって、第1超音波素子と第2超音波素子のうち少なくとも一方を内蔵するセンサ部と、配管が配置される通路を有する第1筐体と、第1筐体に係合するための係合部および該係合部により第1筐体に係合されたときに第1筐体に当接する当接部を有し、第1筐体に設けられた通路に配置された配管を保持する第2筐体と、第2筐体の係合部により第2筐体の当接部が第1筐体に係合された状態で、第2筐体の当接部が第1筐体に当接する当接方向に沿って、センサ部を通路に向けて第1筐体又は第2筐体に弾性支持される。これにより、ユーザは、第2筐体を第1筐体に係合させる、という簡易な動作を行うだけで、配管の径が異なる場合であっても、配管の周面に簡易かつ容易に後付けすることができる。
【0063】
以上、本発明を説明したが、本発明は次の特徴の少なくとも一つを有し、各特徴は任意の組み合わせが可能である。
(1)超音波素子及びくさび部材を含むセンサ部材を配管の外側周面に向けて付勢する付勢部材を有する。付勢部材の典型例は圧縮バネである。
【0064】
(2)センサ部材と配管との間に従来と同様に音響結合媒体つまりカプラント材が介装される。カプラント材は、高分子ゴム(シリコーンゴム、エピクロヒドリンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴムなど)、ゲル状物質(シリコーンゲル、ウレタンゲルなど)のような弾性のカプラント材であってもよく、また、金属箔のようなカプラント材であってもよい。
【0065】
(3)ケースを第1、第2のハーフ又はケース本体と蓋とで構成したときに、この第1、第2のハーフ又はケース本体と蓋を固定具でロックしたときに、第1、第2のハーフ又はケース本体と蓋の相対位置が固定される。例えば、第1、第2のハーフ又はケース本体と蓋が互いに当接する座面を備えているときには、設計の範囲内の直径の配管であれば、これにケースを取り付けたときに、第1、第2のハーフ又はケース本体と蓋の互いに座面を当接した状態でこれら第1、第2のハーフ又はケース本体と蓋がワンタッチ式の固定具でロックされる。特に限定するものではないが、適用する配管の好ましい直径は数ミリ乃至1インチ(約25mm)である。また、本発明は硬質な配管に好適に適用される。
【0066】
(4)ケースを第1、第2のハーフ又はケース本体と蓋で構成した場合、ケースは配管の一部と当接する位置決め面を一つ又は複数(例えば2つ)有する。この位置決め面は、典型的には、第1、第2のハーフの端壁の開口又はケース本体の端壁と蓋の端とで形成される開口の一部を構成する。この開口は、適用対象の最大の配管の直径に対応した寸法を有する。具体的に例示すると最大の直径として1インチ(約25mm)を設定したときには、1インチ以下の配管が本発明が提案する超音波流量計の適用対象となる。そして、規定値以下の直径の配管に本発明の超音波流量計を取り付けたときには、上記の第1、第2のハーフを閉じたときには、配管を挿通した状態のケースは所定の形状になる。同様に、ケース本体を蓋で閉じたときには、配管を挿通した状態のケースは所定の形状のケースとなる。そして、配管は、ケース本体の上記の開口との係合によって位置決めされた状態になる。
【0067】
(5)センサ部材は、第1ハーフ又は第2のハーフあるいはケース本体に形成されたガイド面によって、その移動方向が規定されている。これにより直径の異なる配管に対してセンサ部材の配置を適正に維持できる。
【0068】
(6)2つのセンサ部材をV配置する流量計つまり反射型流量計だけでなく、Z配置する流量計つまり透過型流量計にも好適に本発明を適用できる。Z配置形式の流量計ではセンサ部材が典型的にはバネ付勢されているために、また、上記のガイド面を備えることで、配管の直径の相違に伴う第1、第2の超音波素子間の離間間隔つまり配管の径方向及び長手方向の離間距離が自動的に調整される。
【0069】
(7)ケースを配管に固定するのに、好ましくは、ユーザが操作する部材としてワンタッチ式の固定具が採用される。ワンタッチ式とはユーザの一つの操作で固定できる、という意味である。ワンタッチ式固定具は、具体的には、係止爪を備えた揺動フック、バネ材で作られたクリップ、バネ材で作られたフックを典型例として挙げることができる。また、係止片を備えた揺動フックと、このフックを係止方向に付勢する付勢部材との組み合わせによるスナップ係止式の固定具をワンタッチ式固定具の典型例として挙げることができる。