(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための各図において同一機能を有するものは同一の符号を付し、その繰り返しの説明は適宜省略する。また、以下の実施形態の説明では、特に必要なとき以外は同一又は同様な部分の説明は繰り返さずに適宜省略する。
【0015】
図1は、第1実施形態における外部2端子の自律型同期整流MOSFETの整流器108を示す回路図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態における自律型の同期整流MOSFETの整流器108は、正極側主端子Kおよび負極側主端子Aの外部の2つの端子と、整流MOSFET101と、コンデンサ106と、制御回路107とを含んで構成されている。制御回路107は、例えば、コンパレータ102と、ゲート駆動回路103と、ダイオード104と、過電圧検知ゲート駆動保持回路105とを含んで構成される。但し、後述するように、ゲート駆動回路103は本発明の必須構成要件ではない。
【0017】
整流MOSFET101は、寄生ダイオードを内蔵し、整流を行うよう構成されている。制御回路107は、整流MOSFET101のドレインが遮断MOSFET105を介して非反転入力端子IN+(第1の入力端子)に接続され、かつ、整流MOSFET101のソースが反転入力端子IN−(第2の入力端子)に接続されたコンパレータ102を含み、例えば、ゲート駆動回路103を備えて構成される場合は、コンパレータ102の出力を受けたゲート駆動回路103が整流MOSFET101のオン・オフを制御するよう構成される。
【0018】
整流MOSFET101としては、オルタネータの発電部が発電する大電流を流すため、通例、パワーMOSFETが適用される。整流MOSFET101は、同期整流を行って整流電流を流すものである。整流MOSFET101は、ドレインが正極側主端子Kに接続され、ソースが負極側主端子Aに接続される。したがって、整流MOSFET101の内蔵ダイオードは、アノードが負極側主端子Aに接続され、カソードが正極側主端子Kに接続される。
【0019】
整流MOSFET101のドレインにはドレイン電圧Vdが印加され、ソースにはソース電圧Vsが印加され、ゲートにはゲート電圧Vgが印加される。そして、整流器108では、整流MOSFET101のソース電圧VsがGND電圧に相当する。
【0020】
コンパレータ102は、非反転入力端子IN+が整流MOSFET101のドレインに接続され、反転入力端子IN−が直接に整流MOSFET101のソースに接続される。コンパレータ102の出力端子COUTは、ゲート駆動回路103の入力端子INに接続される。コンパレータ102の出力端子COUTからは、コンパレータ102の出力信号が出力される。コンパレータ102は、非反転入力端子IN+と反転入力端子IN−の電圧を比較してその大小に応じて出力信号を切り替える回路である。コンパレータ102は、負極側主端子Aのソース電圧Vsと正極側主端子Kのドレイン電圧Vdとを比較した結果を出力する。コンパレータ102の性能は、高精度であることが望ましいが、本発明はそのことに限定されない。また、コンパレータ102は、整流MOSFET101のドレインとソースとの電位差に応じて出力を切り替えることができる構成であれば、必ずしも、いわゆるコンパレータである必要はなく、例えば、コンパレータに代えて差動増幅器のような回路を用いても構わない。
【0021】
制御回路107がゲート駆動回路103を備えて構成される場合、ゲート駆動回路103はコンパレータ102の後段に設けられ、その出力端子GOUTが整流MOSFET101のゲートに接続される。入力端子INに入力される電圧の大小で整流MOSFET101のゲートのオン・オフ駆動を行う。この場合、ゲート駆動回路103を設けることで、より高速な整流MOSFET101のゲート駆動を行うことができる。
【0022】
一方、制御回路107がゲート駆動回路103を備えずに構成される場合は、コンパレータ102もしくはそれに代わる差動増幅器等の出力端子(コンパレータ102を用いる場合は出力端子COUT)が整流MOSFET101のゲートに接続される。上述したように、ゲート駆動回路103は必ずしも必要ではなく、コンパレータ102等の出力で整流MOSFET101のゲートのオン・オフ駆動を行ってもよい。その場合、ゲート駆動回路103が省略される分、制御回路107の回路構成をより簡素化することができ、要求されるゲート駆動速度をゲート駆動回路103が無くても確保できる状況にあれば、整流器の性能を確保しつつ、より一層の製造コスト削減を図ることができる。
【0023】
ダイオード104は、正極側主端子Kからコンデンサ106の正極側端子へ向かう方向がダイオード104の順方向と一致するように、正極側主端子Kとコンデンサ106の正極側端子との間に接続される。ダイオード104に流れる電流を構成する電荷は、コンデンサ106に蓄積されて、制御回路107を駆動する電源となる。
【0024】
過電圧検知ゲート駆動保持回路105は、コンデンサ電圧入力端子VCINがコンデンサ106の正極側端子に接続され、グランド端子GNDが整流MOSFET101のソースに接続され、出力端子OUTが整流MOSFET101のゲートに接続される。
【0025】
過電圧検知ゲート駆動保持回路105が、ロードダンプ時に整流MOSFET101のドレイン電圧Vdに掛かる過電圧を検知し、整流MOSFET101のゲートを昇圧して整流MOSFET101をオン状態にし、所定の時間(例えば一定時間)、その状態を保持する。
【0026】
制御回路107は、例えば、単一のシリコン集積回路チップで構成された、ワンチップのIC(Integrated Circuit)の構成とすることができる。その場合、低コスト・底面積・高ノイズ耐性の少なくともいずれか1つのメリットが期待される。
【0027】
コンデンサ106は、制御回路107が動作するための電源を供給するものである。以下、コンデンサ106の正極側端子の電圧を、コンデンサ電圧Vcと記載する。コンデンサ106を制御回路107の電源に用いることで、整流器108の外部端子数は2個となる。これにより、オルタネータ140に用いられてきた従来の整流ダイオードとの互換性を、外部端子数の面で、整流器108に持たせることができる。これにより、従来の整流ダイオードを整流器108に置き換えて、オルタネータ140の性能を向上することが可能となる。なお、コンデンサ106に代えて、外部電源を用いることも可能である。
【0028】
以下、
図2、
図3を参照して第1実施形態における整流器108の過電圧検知ゲート駆動保持回路105の回路構成の一例と動作を説明する。
【0029】
図2は、第1実施形態の整流器108が備える過電圧検知ゲート駆動保持回路105の一例の回路図である。
【0030】
過電圧検知ゲート駆動保持回路105は、大きく分けて、過電圧検知回路109、保持回路110、過電圧ゲート駆動回路111で構成される。
【0031】
過電圧検知回路109は、過電圧検知ゲート駆動保持回路105のVCIN端子とGND端子の間にツェナーダイオードZD、ダイオードD1、抵抗R1を直列に接続して構成される。
【0032】
保持回路110は、VCIN端子を過電圧検知ゲート駆動保持回路105のVCIN端子に、GND端子を過電圧検知ゲート駆動保持回路105のGND端子に接続してある。IN端子は、過電圧検知回路109の出力部に相当するD1とR1の間に接続する。ZDとD1の間に接続しても構わない。OUT端子は、過電圧ゲート駆動回路111を構成するN型MOSFET(NMOS)1のゲートに接続する。
【0033】
過電圧ゲート駆動回路111は、VCIN端子とGND端子の間に、NMOS1とダイオードD2を直列に接続して構成される。NMOS1とD2の位置は、逆でもよい。NMOS1は、
図2ではP型MOSFET(PMOS)でも構わない。
【0034】
図3は、第1実施形態における整流器108の保持回路110の一例の回路図である。
【0035】
保持回路110は、出力を保持するラッチ回路112、入力信号を十分に昇圧する入力信号昇圧回路113、一定時間経過の後に出力を停止する出力停止判定回路114、出力停止の信号を十分に昇圧する出力停止信号昇圧回路115で構成される。
【0036】
ラッチ回路112は、一般的なラッチ回路の構成であり、PMOS51とNMOS2、PMOS52とNMOS3のペアで構成される。PMOS52とNMOS3の間の配線がラッチ回路の出力となり、過電圧ゲート駆動回路111のNMOS1のゲートに接続される。過電圧ゲート駆動回路111のNMOS1の代わりPMOSに用いる場合、PMOS51とNMOS2の間の配線をラッチ回路の出力とする。
【0037】
入力信号昇圧回路113は、定電流回路CC1とNMOS4,PMOS53とNMOS5からなる2段のインバータで構成される。過電圧検知回路109の出力が前段のインバータの入力に、後段のインバータの出力がラッチ回路のNMOS2のゲートに接続される。
【0038】
出力停止判定回路114は、2段の抵抗R2、R3とNMOS8、VCIN端子と2段の抵抗R2、R3の中点と間に直列に接続した定電流回路CC1とNMOS7で構成される。NMOS8のゲートは、ラッチ回路112のPMOS52とNMOS3の間の配線と接続される。NMOS7のゲートはVCIN端子に接続され、NMOS7のオフで出力停止を判定する。電流回路CC1とNMOS7の間の配線が、出力停止判定回路114の出力となる。
【0039】
出力停止信号昇圧回路115は、PMOS54と定電流回路CC2、PMOS55とNMOS6からなる2段のインバータで構成される。後段のインバータの出力がラッチ回路のNMOS2のゲートに接続される。出力停止判定回路114の出力が前段のインバータの入力に、後段のインバータの出力がラッチ回路112のNMOS3のゲートに接続される。
【0040】
定電流回路CC1〜CC3は、電流を制限するためのもので、例えば、ゲートをソースにショートさせたN型デプレッションMOSFETを用いる。代わりに、抵抗を用いてもよい。以降の定電流回路も同様である。
【0041】
図3では、ラッチ回路112を用いた保持回路110を示したが、ラッチ回路112の代わりに、インバータをフィードバックして状態を保持する回路を用いてもよい。ラッチ回路112を使わないことで、誤動作により状態が反転し保持される可能性を減らすことができる。
【0042】
続いて、
図1〜
図3を参照して、ロードダンプ時に過電圧が印加されたときの第1実施形態における整流器108の動作を説明する。
【0043】
整流器108の正極側主端子Kと負極側主端子Aの外部2端子間の電圧が増大すると、制御回路107のダイオード104に順方向の電流が流れてコンデンサ106が充電され、コンデンサ電圧Vcが上昇する。コンデンサ電圧Vcは、制御回路107の過電圧検知回路109を構成するツェナーダイオードZDのカソードに印加され、コンデンサ電圧VcがツェナーダイオードZDのツェナー電圧Vzを超えると、ツェナーダイオードZDに電流が流れる。ツェナーダイオードZDを流れる電流は、抵抗R1に流れて保持回路110の入力端子INの電圧を持ち上げる。それにより、保持回路110において、NMOS4がオン、PMOS53がオン、NMOS2がオンする。続いて、ラッチ回路112で、PMOS52がオン、PMOS51がオフの状態に固定される。その結果、保持回路110の出力端子OUTにコンデンサ電圧Vcの高電圧が出力される。保持回路110の出力端子OUTの高電圧は、過電圧ゲート駆動回路111のNMOS1をオンし、過電圧ゲート駆動回路111のNMOS1とダイオードD2に通って過電圧検知ゲート駆動保持回路105のVCIN端子に接続された整流MOSFET101のゲートに電流が流れ、整流MOSFET101のゲート電圧をコンデンサ電圧Vcまで昇圧する。その結果、整流MOSFET101がオン状態になる。
【0044】
コンデンサ電圧Vcは、極側主端子Kと負極側主端子Aの外部2端子間の過電圧で充電されて高電圧にあり、その高電圧がゲートに印加された整流MOSFET101は十分に低抵抗になって、整流MOSFET101のドレイン・ソース間の電圧は十分に低下する。極側主端子Kと負極側主端子Aの外部2端子間の過電圧は解消し、過電圧検知回路109のツェナーダイオードZDに電流が流れなくなるが、ラッチ回路112が過電圧検知ゲート駆動保持回路105の高電圧出力を保持し、整流MOSFET101はゲートに高電圧が印加された低抵抗のオン状態を保ち続ける。
【0045】
整流MOSFET101がオン状態を保ち続けている間、コンデンサ電圧Vcは、制御回路107を流れる電流、すなわち、コンパレータ102と過電圧検知ゲート駆動保持回路105を流れる電流によって徐々に低下する。それに伴って、整流MOSFET101のゲート電圧Vgも低下する。コンデンサ電圧Vcが下がると、出力停止判定回路114の抵抗R2の電圧降下が小さくなり、その電圧降下が出力停止判定回路114のPMOS7のVthを下回ると、PMOS7がオフになる。それにより、出力停止信号昇圧回路115のPMOS54がオフ、PMOS55がオンし、ラッチ回路112のNMOS3がオン、PMOS51がオンする。その結果、ラッチ回路の状態が反転し、保持回路110の出力端子OUTにGND端子の低電圧が出力される。今度は、過電圧ゲート駆動回路111のNMOS1がオフし、過電圧検知ゲート駆動保持回路105の出力端子OUTに接続された整流MOSFET101のゲートの電圧が下がって、整流MOSFET101がオフ状態になる。
【0046】
以上、すなわち、第1実施形態における整流器108では、外部2端子間の過電圧が印加されてコンデンサ電圧Vcが上がると整流MOSFET101はオン状態を保持し、制御回路107の電流でコンデンサ電圧Vcが下がると、整流MOSFET101はオフ状態を保持する。
【0047】
図4は、整流MOSFET101がオン状態を保持する時間tholdを説明するためのグラフである。グラフの横軸は時間を、縦軸はコンデンサ電圧Vcとドレイン電圧Vdを示している。
【0048】
整流MOSFET101がオンにするときのコンデンサ電圧をVcon、そのときの時刻をton、整流MOSFET101をオフにするコンデンサ電圧をVcoff、そのときの時刻をtoffとする。
【0049】
整流MOSFET101がオン状態を保持する時間thold、すなわち、時刻tonから時刻toffまでの時間は、コンデンサ106の容量をC、整流MOSFET101がオン状態を保持しているときの制御回路の消費電流をIicとすると、thold=(Vcon−Vcoff)×C/Iicで決まる。
【0050】
tholdを決定するパラメータのうち、Vconは、オルタネータ140の通常動作時の最大電圧よりも大きく、ロードダンプ時のオルタネータ140の出力電圧が許容電圧よりも小さくなるように決める。Vcoffは、通常の整流動作時のVcよりも大きくなるように決めることが望ましい。そうすることで、通常の整流動作時は常にラッチ回路112のNMOS3がオン状態にあり、ランチ回路の状態の反転を防ぐことができる。Cは、通常の整流動作時に制御回路102の駆動に必要な電圧を供給できる最小限の容量とすることが望ましい。Cを必要以上に大きくすると、コンデンサのサイズが大きくなり、コストも上がってしまう。Iicは、整流MOSFET101がオン状態を保持しているときにコンパレータ102と過電圧検知ゲート駆動保持回路105を流れる電流の和であり、過電圧検知ゲート駆動保持回路105を流れる電流は自由に設計することができる。よって、過電圧検知ゲート駆動保持回路105の電流でIicを決めて、所望のtholdとなるように設計するとよい。具体的には、過電圧検知ゲート駆動保持回路105を構成する定電流回路CC2やCC3の定電流値や抵抗R2やR3の抵抗値で所望のIic、tholdになるように設計する。
図2、
図3に示した回路では、Iicは、過電圧で整流MOSFET101がオン状態を保持しているときにのみ流れ、通常の整流動作時には、過電圧検知ゲート駆動保持回路105のすべての電流経路がNMOSもしくはPMOSで遮断されていて流れず、通常の整流動作には影響しない。tholdの設計値は、たとえば、ロードダンプ時のエネルギーを消費し終わってから整流MOSFET101をオフするように、ロードダンプでエネルギーを消費するまでの最大の時間よりも長くなるようにする。
【0051】
第1実施形態における整流器108では、過電圧印加時の整流MOSFET101のオンとオフをともに同じコンデンサ電圧Vcで判断しているため、tholdの設計が容易であり、tholdが大きく動作条件(過電圧のdv/dtや周囲温度等)に依存しないようにすることができる。
【0052】
図5は、自律型の整流器108を用いたオルタネータ140の概略構成を示す回路図である。
【0053】
図5に示すように、自律型の同期整流MOSFETの整流器108を用いたオルタネータ140は、回転子コイル116および固定子コイル117uv,117vw,117wuを含んで構成される発電部と、整流回路130とを備えている。
【0054】
発電部は、回転子コイル116と、Δ結線された3本の固定子コイル117uv,117vw,117wuとを含んで構成される。固定子コイル117wu,117uvが結線されたノードからU相レグ131uの中点配線が引き出される。固定子コイル117uv,117vwが結線されたノードからV相レグ131vの中点配線が引き出される。固定子コイル117vw,117wuが結線されたノードからW相レグ131wの中点配線が引き出される。なお、各固定子コイル117uv,117vw,117wuの結線は、Δ結線の代わりにY結線としてもよく、限定されない。
【0055】
整流回路130は、U相レグ131uとV相レグ131vとW相レグ131wとを含んで構成され、ノードNu,Nv,Nw間の三相交流を直流に整流してノードNp,Nn間(直流端子間)に流すものである。ノードNu,Nv,Nwのロウサイドには、それぞれ、
図1〜
図3を参照して説明した第1実施形態における整流器108ul、108vl、108wlが接続される。そして、ロウサイドの整流器108ul、108vl、108wlは、それぞれ、整流MOSFET101ul、101vl、101wlと、
図1〜
図3を参照して説明した過電圧検知ゲート駆動保持回路105を備えた制御回路107ul、107vl、107wlと、コンデンサ106ul、106vl、106wlとを含んで構成される。
【0056】
ノードNu,Nv,Nwのハイサイドには、ロウサイドの整流器108とは異なる整流器120uh,120vh,120whが接続される。そして、ハイサイドの整流器120uh、120vh、120whは、それぞれ、整流MOSFET101uh、101vh、101whと、ロウサイドの整流器108の制御回路107とは異なる制御回路119uh、119vh、119whと、コンデンサ106uh、106vh、106whとを含んで構成される。
【0057】
図6は、ハイサイドに用いる整流器119の回路図の一例である。整流器119は、
図1に示したロウサイドに用いる整流器108とは異なり、過電圧検知ゲート駆動保持回路105のない制御回路119を備える。その他、整流MOSFET101、コンデンサ106、および、制御回路を構成するコンパレータ102、ゲート駆動回路103、ダイオード104は、基本的にはロウサイドの整流器108と同じものを用いる。
【0058】
ハイサイドの整流器120uh,120vh,120whは、直流の正極側のノードNpを通してバッテリ118(エネルギ蓄積部)の正極側端子が接続される。ロウサイドの整流器108ul,108vl,108wlは、直流の負極側のノードNnを通して、バッテリ118の負極側端子が接続される。
【0059】
バッテリ118(エネルギ蓄積部)は、例えば車載用バッテリであり、その動作範囲は例えば10.8Vから14V程度である。
【0060】
以下、ロウサイドの過電圧検知ゲート駆動保持回路105を備えた制御回路107を有する整流器108uh〜108wlを特に区別しないときには、各実施形態では整流器108と記載する。ハイサイドの過電圧検知ゲート駆動保持回路105を備えていない制御回路119を有する整流器120uh〜120wlを特に区別しないときには、各実施形態では整流器120と記載する。各制御回路107ul〜107wlを特に区別しないときには、各実施形態では制御回路107と記載する。各制御回路119uh〜119whを特に区別しないときには、各実施形態では制御回路119と記載する。各整流MOSFET101uh〜101wlを特に区別しないときには、単に整流MOSFET101と記載する。各コンデンサ106uh〜106wlを特に区別しないときには、単にコンデンサ106と記載する。
【0061】
整流器の接続は、
図5とは逆に、ハイサイドに、
図1〜
図3に示した第1実施形態における過電圧検知ゲート駆動保持回路105を備えた制御回路107を有する整流器108を接続し、ロウサイドに、
図6に示した過電圧検知ゲート駆動保持回路105を備えていない制御回路119を有する整流器120を接続してもよい。
【0062】
図7〜
図9は、第1実施形態における自律型の整流器108を用いた
図5に示すオルタネータ140において、整流動作時にロードダンプが生じたときの各部波形を示すグラフである。
図7に自律型の整流器108の整流MOSFET101のゲート電圧Vgを、
図8に自律型の整流器108のコンデンサ106の正極のコンデンサ電圧Vcを、
図9に自律型の整流器108の整流MOSFET101のドレイン電流Idを示してある。
図7〜
図9の(a)〜(f)は、それぞれ、オルタネータ140ロウサイドのU相の整流器108ul、108vl、108wl、ハイサイドの整流器120uh,120vh,120whの電圧、電流を示している。
図7〜
図9の全グラフの横軸は、共通する時間を示している。
【0063】
まず、時刻t70までの期間は、通常の整流動作が行われている。
図9に示す整流MOSFET101のドレイン電流Idが整流電流としてロウサイド、ハイサイドのU相、V相、W相で周期的に流れる。整流MOSFET101のドレイン電流Idが流れている間、
図7に示す整流MOSFET101のゲート電圧Vgが自律的に上がって整流MOSFET101をオン状態にし、整流MOSFET101のドレイン電流Idが流れ終わると、整流MOSFET101のゲート電圧Vgが自律的に下がって整流MOSFET101をオフ状態にする。コンデンサ106は整流MOSFET101がオフの間に充電され、オンの間に放電されて、
図7に示すコンデンサ電圧Vcはオルタネータ140の発電電圧近辺の電圧が保たれる。
【0064】
時刻t70で、オルタネータ140の正極側端子とバッテリ118の正極側端子の配線が外れてロードダンプが生じる。このとき、オルタネータ140の発電電流は行き先を失って、U相、V相、W相の中点配線の電圧Vu,Vv,Vwおよびオルタネータ140の正極側端子の電圧が急上昇する。U相、V相、W相の中点配線の電圧Vu,Vv,Vwが増大すると、オルタネータ140ロウサイドの整流器108ul、108vl、108wlのコンデンサ106が充電されて、
図8に示すようにコンデンサ電圧Vcが上昇する。コンデンサ電圧がVconに到達すると、過電圧検知ゲート駆動保持回路105が動作して整流MOSFET101のゲート電圧が上昇し、整流MOSFET101をオン状態にする。ロードダンプ時の発電のエネルギーがある程度大きいと、ロウサイドの整流器108のすべてで整流MOSFET101をオン状態になる。ロウサイドの整流器108の正極側主端子Kと負極側主端子Aの間の電圧が低下し、U相、V相、W相の中点配線の電圧Vu,Vv,Vwが下がる。逆にハイサイドの整流器120では、正極側主端子Kと負極側主端子Aの間の電圧が大きくなり、制御回路119が自律的に整流MOSFET101のゲート電圧をオフ状態に保持する。
【0065】
ここで、ロードダンプ時にハイサイドの整流MOSFETが整流電流を流してオン状態にあった場合、ロウサイドの過電圧検知ゲート駆動保持回路105による整流MOSFET101のゲート昇圧の速度が速いと、ハイサイドの整流MOSFET101とロウサイドの整流MOSFET101がともにオン状態になって、ハイサイドとロウサイドの整流MOSFETを通って大きな貫通電流が流れてしまう。この貫通電流を防止するために、ロウサイドの過電圧検知ゲート駆動保持回路105による整流MOSFET101のゲート昇圧の速度が遅くなるようにするとよい。具体的には、過電圧ゲート駆動回路111のNMOS1の電流駆動能力を低くする。すなわち、NMOS1のゲート幅Wを小さくするか、ゲート長Lを大きくする。
【0066】
ロウサイドの整流MOSFET101をオン状態になった後、オルタネータの発電電流は、
図9に示すように、オフ状態のハイサイドの整流MOSFET101には流れず、オン状態の低抵抗のロウサイドの整流MOSFET101に流れる。ロウサイドの整流MOSFETを流れた電流は、ステータコイル117uv、117vw、117wuとロウサイドの整流MOSFET101との間を還流する。還流中に徐々にエネルギーを失い、還流電流は減少していく。整流MOSFET101よりもステータコイル117の方が抵抗が大きいので、還流電流の大部分のエネルギー消費はステータコイル117でなされる。その分、整流MOSFET101の発熱を抑えることができる。
【0067】
ロードダンプ時の発電のエネルギーが小さい場合、ロウサイドの整流器108のすべての整流MOSFET101がオン状態にならないことがある。この場合でも、ロウサイドのオン状態の整流MOSFET101と、ロウサイドのオフ状態の整流MOSFET101の内蔵ダイオードと、ステータコイル117uv、117vw、117wuとの間で電流が還流し、同様に還流中に徐々にエネルギーを失い、還流電流は減少していく。
【0068】
還流電流が流れている間、ロウサイドの整流器108のコンデンサ電圧Vcは、制御回路に流れる電流で徐々に低下していく。整流MOSFET101のゲート電圧Vgもそれに伴い低下していく。時刻t70からtholdだけ経過した時刻t71で、コンデンサ電圧VcがVcoffまで下がって、過電圧検知ゲート駆動保持回路105が動作して、整流MOSFET101のゲート電圧が下がり、ロウサイドの整流器108の整流MOSFET101をオフ状態にする。このとき、還流電流はほぼエネルギーを失っており、U相、V相、W相の中点配線の電圧Vu,Vv,Vwを大きく持ち上げることなく、このときコンデンサ電圧はVconには達しない。そして、過電圧検知ゲート駆動保持回路105が動作することなく、そのまま通常の自律的な整流動作を続け、ロードダンプのエネルギーを消費し切って動作が止まる。
【0069】
図7〜
図9は、
図5に示したロウサイドに第1実施形態における過電圧検知ゲート駆動保持回路105を備えた制御回路107を有する整流器108を接続し、ハイサイドに過電圧検知ゲート駆動保持回路105を備えていない制御回路119を有する整流器120を接続したオルタネータ140における動作波形であるが、逆に、ハイサイドに第1実施形態における過電圧検知ゲート駆動保持回路105を備えた制御回路107を有する整流器108を接続し、ロウサイドに過電圧検知ゲート駆動保持回路105を備えていない制御回路119を有する整流器120を接続した場合でも、同様に動作して電流を還流させてエネルギーを消費する動作が行われる。具体的には、ハイサイドの整流器108にて、過電圧を検知して整流MOSFET101をオンしてその状態を保持し、ハイサイドの整流MOSFET101とステータコイル117uv、117vw、117wuとの間で電流が還流し、tholdの時間経過後に整流MOSFET101をオフにする。
【0070】
図7〜
図9は、tholdをロードダンプでエネルギーを消費するまでの時間より長く設計した過電圧検知ゲート駆動保持回路105を使った場合の動作の一例だが、tholdを短く設計することも可能である。
図10〜
図12は、tholdが
図7〜
図9の場合の半分となるように設計した過電圧検知ゲート駆動保持回路105を使った場合の動作の一例である。
図10〜
図12のグラフは、
図7〜
図9のグラフに対応する。
【0071】
時刻t70までの期間は、通常の整流動作が行われ、時刻t70でロードダンプが発生すと、
図7〜
図9の場合と同様に、ロウサイドの整流器108において、過電圧検知ゲート駆動保持回路105が動作して整流MOSFET101をオン状態にする。
【0072】
ロウサイドの整流MOSFET101とステータコイル117uv、117vw、117wuとの間で還流電流が流れ、その間、ロウサイドの整流器108のコンデンサ電圧Vcは徐々に低下していく。
図10〜
図12の制御回路107では、tholdが
図7〜
図9の場合の半分となるように設計されているので、コンデンサ電圧Vcは
図7〜
図9の2倍の速度で低下していく。時刻t70からthold/2だけ経過した時刻t72で、コンデンサ電圧VcがVcoffまで下がって、過電圧検知ゲート駆動保持回路105が動作して、整流MOSFET101のゲート電圧Vgが下がり、ロウサイドの整流器108の整流MOSFET101をオフ状態にする。
【0073】
このとき、電流を還流させる時間が短く、ロードダンプで生じたエネルギーをまだ残っており、還流電流が行き先を失って、再び、U相、V相、W相の中点配線の電圧Vu,Vv,Vwおよびオルタネータ140の正極側端子の電圧を持ち上げる。各相で順次、過電圧検知ゲート駆動保持回路105が動作して整流MOSFET101をオン状態にする。ロウサイドの整流MOSFET101とステータコイル117uv、117vw、117wuとの間で還流電流が流れ、還流電流のエネルギーが消費される。時刻t72からthold/2だけ経過した時刻t73で、コンデンサ電圧VcがVcoffまで下がって、過電圧検知ゲート駆動保持回路105が動作して、整流MOSFET101のゲート電圧が下がり、ロウサイドの整流器108の整流MOSFET101をオフ状態にする。このとき、還流電流は十分にエネルギーを失っていれば、U相、V相、W相の中点配線の電圧Vu,Vv,Vwを大きく持ち上げることなく、このときコンデンサ電圧はVconには達しない。そして、過電圧検知ゲート駆動保持回路105が動作することなく、そのまま通常の自律的な整流動作を続け、ロードダンプのエネルギーを消費し切って動作が止まる。還流電流にエネルギーが残っていれば、再度ロウサイドの整流器108の整流MOSFET101がオン状態になって電流を還流させ、ロードダンプのエネルギーを消費するまで繰り返す。
【0074】
図13は、第2実施形態における整流器108Bの回路図である。
図1の実施形態におけるにおける整流器108に対し、整流MOSFET101と並列にツェナーダイオード121を接続してある。
【0075】
第1実施形態における整流器108では、ロードダンプ時にU相、V相、W相の中点配線の電圧Vu,Vv,Vwの電圧の上昇が急峻である場合、ロウサイドの整流器108で過電圧検知ゲート駆動保持回路105が動作して整流MOSFET101をオンするまでに、U相、V相、W相の中点配線の電圧Vu,Vv,Vwの電圧が上がり過ぎることがある。このとき、ロウサイドの整流器108の整流MOSFET101,制御回路107、コンデンサ106に高電圧が印加され、これらの素子が破壊することがある。ツェナーダイオード121を設けることで、整流MOSFET101のドレイン電圧、すなわち、U相、V相、W相の中点配線の電圧Vu,Vv,Vwがクランプされ、これらの素子への高電圧の印加を防止することができる。特に、上記したように、ハイサイドとロウサイドの整流MOSFETの貫通電流を防ぐために、ロウサイドの過電圧検知ゲート駆動保持回路105による整流MOSFET101のゲート昇圧の速度が遅くした場合に、ツェナーダイオード121による電圧クランプが有効である。ツェナーダイオード121は、整流MOSFET101と別チップで並列に設置してもよいし、整流MOSFET101に内蔵してもよい。
【0076】
図14は、第3実施形態における整流器108Cの回路図である。
図1の実施形態に対し、過電圧検知ゲート駆動保持回路105Cは、ドレイン電圧入力端子VDINと電源電圧出力端子VCCOUTが設けられ、ドレイン電圧入力端子VDINは整流MOSFET101のドレイン端子に接続され、電源電圧出力端子VCCOUTはコンパレータ102の電源電圧端子VCCとゲート駆動回路103の電源電圧端子VCCに接続される。
【0077】
図15は、第3実施形態における整流器108Cの過電圧検知ゲート駆動保持回路105Cの回路図の一例である。
【0078】
図15に示す過電圧検知ゲート駆動保持回路105Cは、
図2に示す過電圧検知ゲート駆動保持回路105に対し、遮断回路122が付加されている。遮断回路122は、NMOS9,10,11、PMOS56,57,58、ダイオードD3、定電流回路CC4、CC5で構成される。
【0079】
通常の整流動作時、整流MOSFET101のドレイン電圧Vdがコンデンサ電圧Vcより小さく遮断回路122のPMOS58がオンしていると、過電圧検知ゲート駆動保持回路105Cのコンデンサ入力端子VCINと電源電圧出力端子VCCOUTとの間が導通状態にあり、コンデンサ電圧Vcが、コンパレータ102の電源電圧端子VCCとゲート駆動回路103の電源電圧端子VCCに供給される。この状態にて制御回路107Cのコンパレータ102とゲート駆動回路103によって整流MOSFET101の自律的なゲート駆動がなされる。通常の整流動作時、整流MOSFET101のドレイン電圧Vdがコンデンサ電圧Vcとほぼ同等で遮断回路122のPMOS56がオフすると、過電圧検知ゲート駆動保持回路105bのVCIN端子と電源電圧出力端子VCCOUTとの間が遮断状態にあり、コンデンサ電圧Vcが、コンパレータ102の電源電圧端子VCCとゲート駆動回路103の電源電圧端子VCCに供給されなくなる。
【0080】
ここに、ロードダンプの過電圧が整流器108Cの正極側主端子Kに印加されると、過電圧検知ゲート駆動保持回路105Cが過電圧を検知し、保持回路110が出力端子OUTに高電圧を出力し、整流MOSFET101のゲートを昇圧する。このとき、遮断回路122のPMOS56とNMOS9からなるインバータが低電圧を出力し、PMOS57をオンにする。その結果、PMOS58がオフし、コンデンサ電圧Vcが、コンパレータ102の電源電圧端子VCCとゲート駆動回路103の電源電圧端子VCCに供給されなくなる。また、このとき、NMOS10がオンする。その結果、コンパレータ102の電源電圧端子VCCとゲート駆動回路103の電源電圧端子VCCが整流MOSFET101のソース電圧Vsに短絡される。
【0081】
第3実施形態における整流器108Cの第一の利点として、ロードダンプ時に過電圧検知ゲート駆動保持回路105Cが整流MOSFET101のオン状態を保持する時間tholdをより長くすることができる。これは、コンデンサ電圧Vcが、コンパレータ102の電源電圧端子VCCに供給されなくなるためである。その分、コンデンサ電圧Vcの低下を抑制することができる。コンパレータの電源端子の電流が大きいときに効果が大きい。tholdを長くするためにコンデンサ106の容量を大きくせずにすみ、実装面積を小さくすることができる。
【0082】
第3実施形態における整流器108Cの第二の利点として、ロードダンプ時に整流MOSFET101のゲート昇圧の駆動に流す電流を少なくすることができる。これは、コンデンサ電圧Vcがゲート駆動回路103の電源電圧端子VCCに供給されなくなり、ゲート駆動回路103の電源電圧端子VCCが整流MOSFET101のソース端子に短絡されるためである。この状態では、ゲート駆動回路103を構成する最終段のCMOSバッファのPMOSとNMOSのゲート・ソース間の電圧が0Vになって共にオフ状態になる。その結果、ゲート駆動回路103の出力端子OUTに接続しているゲート抵抗を大きくすることなく小さな電流で整流MOSFET101のゲートを昇圧することができる。ゲート抵抗を小さくでき、通常の整流動作でのゲート駆動の遅延を小さくすることが可能となる。ゲート駆動回路103の電源電圧端子VCCに加えて、ゲート駆動回路103を構成する最終段のCMOSバッファのPMOSとNMOSのゲート端子を整流MOSFET101のソース端子に短絡するようにすると、最終段のCMOSバッファのPMOSとNMOSのゲート容量を介してそれらのゲート電圧が上がるのを防ぐことができ、第二の利点を更に確実にすることができる。
【0083】
第一の利点と第二の利点は、独立に得ることができ、片方の利点のみ得たい場合には、そのための構成にするとよい。具体的には、第一の利点のみ得たい場合には、過電圧検知ゲート駆動保持回路105Cの電源電圧出力端子VCCOUTをコンパレータ102の電源電圧端子VCCにのみ接続し、ゲート駆動回路103の電源電圧端子VCCはコンデンサ106の正極側端子に直接接続する。また、過電圧検知ゲート駆動保持回路105CのNMOS10は不要となる。第二の利点のみ得たい場合には、過電圧検知ゲート駆動保持回路105Cの電源電圧出力端子VCCOUTをゲート駆動回路103の電源電圧端子VCCにのみ接続し、コンパレータの電源電圧端子VCCはコンデンサ106の正極側端子に直接接続する。
【0084】
図16は、第4実施形態における整流器108Dの回路図である。
図1に示した実施形態における整流器108とは異なる点として、過電圧検知ゲート駆動保持回路105Dがドレイン電圧入力端子VDINを備えている。
【0085】
図17は、第4実施形態における整流器108Dの過電圧検知ゲート駆動保持回路105Dの一例の回路図である。
【0086】
図17に示す過電圧検知ゲート駆動保持回路105Dは、
図2に示す過電圧検知ゲート駆動保持回路105とは異なる点として、ツェナーダイオードZDがドレイン電圧入力端子VDINに接続されている。保持端子の電源電圧端子VCCと過電圧ゲート駆動回路111のNMOS1は、
図2の回路と同様にコンデンサ電圧入力端子VCINに接続されている。
【0087】
ロードダンプで整流器108の正極側主端子Kに過電圧が印加されたとき、
図1と
図2に示した整流器108では、電流がダイオード104を流れてコンデンサ106を充電しコンデンサ電圧Vcが上昇してから、過電圧検知回路109のツェナーダイオードZDが駆動して整流MOSFETをオンする。コンデンサ106を充電する時間の分、整流MOSFET101のオンが遅れる。これに対し、
図15と
図16に示した整流器108Dでは、正極側主端子Kの電圧が上昇すると、そのまま整流MOSFETのドレイン端子の電圧が上昇して過電圧検知回路109のツェナーダイオードZDが駆動し、整流MOSFETをオンする。コンデンサ106を充電する時間を要さない分、早く整流MOSFET101をオンすることができる。正極側主端子Kの電圧が大きくなる前に整流MOSFET101をオンすることができ、MOSFET、制御回路、コンデンサ等の他の素子に過電圧が印加され、破壊されることを防ぐことができる。ロウサイドの整流MOSFETがオンしたときに、ハイサイドとロウサイドの整流MOSFET101に貫通電流が流れないよう、ハイサイドの整流MOSFETのオフ動作は速くする。
【0088】
図18は、
図6に示したオルタネータ140のハイサイドに用いる整流器120の別の実施形態の整流器120Bの回路図である。
図6に示したオルタネータ104のハイサイドの整流器120とは異なり、整流器120bの制御回路119Bは、過電圧検知コンデンサ接続回路123を備えている。
【0089】
過電圧検知コンデンサ接続回路123は、コンデンサ電圧入力端子VCINがコンデンサ106の正極側端子に接続され、グランド端子GNDが整流MOSFET101のソースに接続され、出力端子OUTが整流MOSFET101のドレインに接続される。
【0090】
過電圧検知コンデンサ接続回路123が、ロードダンプ時に整流MOSFET101のドレイン電圧Vdに掛かる過電圧を検知し、コンデンサ106から整流MOSFET101のドレインに電流が流れる経路を導通状態にし、一定時間その状態を保持する。
【0091】
図19は、整流器120Bの過電圧検知コンデンサ接続回路123の一例の回路図である。
【0092】
過電圧検知コンデンサ接続回路123は、
図2に示した過電圧検知ゲート駆動保持回路105と同じ回路構成の過電圧検知回路109Bと保持回路110を備え、保持回路110の出力端子OUTをコンデンサ接続回路124に接続する。コンデンサ接続回路124は、PMOS59とNMOS10からなるインバータとPMOS59とダイオードD4から成る。構成するPMOS59のゲートに接続している。コンデンサ接続回路124は、PMOS60とダイオードD4から成る。保持回路110の出力端子OUTをインバータに入力し、インバータの出力をPMOS6のゲートに接続する。保持回路110は、
図3に示した保持回路110と同じ回路を用いる。
【0093】
ロードダンプでロウサイドの整流器108がオン状態になると、ロウサイドの整流器108の正極側主端子Kと負極側主端子Aの間の電圧が下がり、ハイサイドの整流器120の正極側主端子Kと負極側主端子Aの間の電圧が増大する。ハイサイドの整流器120のコンデンサ電圧Vcが上昇し、ツェナーダイオードZD2が駆動して、保持回路110の入力端子INの電圧を持ち上げる。そして、保持回路110の出力端子OUTに高電圧が出力され、コンデンサ接続回路124のPMOS60がオンし、過電圧検知コンデンサ接続回路123のコンデンサ電圧入力端子VCINと出力端子OUTがダイオードD4を介して接続される。そして、この接続の状態は保持回路110により保持される。この結果、ハイサイドの整流器120の正極側主端子Kが下がった場合に、ハイサイドの整流器120のコンデンサ106から電流が正極側主端子Kに流れて、コンデンサ106の容量の範囲で整流器120の正極側主端子Kと負極側主端子Aの間の電圧をコンデンサ電圧Vcに保持する。
【0094】
ロウサイドの整流器108と同様に、コンデンサ電圧Vcが低下すると、過電圧検知コンデンサ接続回路123のコンデンサ電圧入力端子VCINと出力端子OUTの間は切断される。
【0095】
ロウサイドの整流器108の整流MOSFETのオンよりも、ハイサイドの整流器120Bの正極側主端子Kへのコンデンサ接続を後に実施する必要あり、過電圧検知コンデンサ接続回路123の過電圧検知回路109BのツェナーダイオードZD2のツェナー電圧は、ロウサイドの過電圧検知ゲート駆動保持回路105の過電圧検知回路109のツェナーダイオードZD1のツェナー電圧よりも大きく設計する。
【0096】
図20は、
図18に示した整流器120Bと
図6に示した整流器120をハイサイドに用いたオルタネータ140において、整流動作時にロードダンプが生じたときのオルタネータの正極側外部端子の電圧VBを示すグラフである。実線が
図18に示した整流器120Bを用いた場合、破線が
図6に示した整流器120を用いた場合である。横軸は、
図7〜
図9と共通する時間で示している。
【0097】
時刻t70で、ロウサイドの整流器108の整流MOSFETがオン状態に保持されると、ハイサイドの整流器120では、ハイサイドの整流器120の整流MOSFET101のリーク電流によってオルタネータの正極側外部端子の電圧VBが短時間で低下してしまう。その結果、ロウサイドの整流器108の整流MOSFETがオン状態にある期間、オルタネータの正極側外部端子に接続されたデバイスに電源を供給できなくなってしまう。これに対し、ハイサイドの整流器120Bでは、過電圧検知コンデンサ接続回路123が動作し、ハイサイドの整流器120Bのコンデンサ106の電圧によってオルタネータの正極側外部端子の電圧VBが高電圧に保持される。その結果、ロウサイドの整流器108の整流MOSFETがオン状態にある期間、オルタネータの正極側外部端子に接続されたデバイスに電源を供給することが可能になる。
【0098】
ハイサイドの整流器120Bのコンデンサ106の容量は、オルタネータの正極側外部端子の電圧VBを保持するために必要な容量とする。その容量が大きすぎて整流器120Bのパッケージにおさまらない場合には、
図21に示すように、オルタネータの正極側外部端子Npと負極側外部端子Nnの間に、オルタネータの正極側外部端子の電圧VBを保持するためのコンデンサ125を設けるとよい。このコンデンサは、オルタネータの正極側外部端子Npと中点Nu,Nv,Nwの間に設けることもできる。
【0099】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0100】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。