【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、コンパクトな構造で実施することができ、融通性に富んだ使用が可能であるにもかかわらず他の検査技法、例えばSPIM技術、共焦点観察技術や多光子技術などとの同時使用の可能性を制限しない、光学的投影トモグラフィを用いた試料の検査方法を提供することである。
【0005】
前記課題は本発明により、冒頭に述べたような形式の方法において、照明光束および透過光束を、同じ対物レンズを通って逆の伝播方向に偏向させることを特徴とする方法によって解決される。
【0006】
また本発明の課題は、コンパクトな構造で実施することができ、融通性に富んだ使用が可能であるにもかかわらず例えばSPIM技術、共焦点観察技術や多光子技術などの他の検査技法との同時使用の可能性を制限しない、光学的投影トモグラフィを用いた試料の検査装置を提供することである。
【0007】
この課題は本発明により、照明光束および透過光束が、同じ対物レンズを通って逆の伝播方向に進行することを特徴とする装置によって解決される。
【0008】
本発明は、光学的投影トモグラフィを用いた試料の検査に対して唯一つの対物レンズを用いるだけで十分である利点があり、それによって、試料に対して制約が少なくアクセスも容易な実験スペースが得られる。
【0009】
その他にも本発明は、試料の移動を強いることなしに手間なく簡単に逆方向から試料を照明することができる利点も有している。この利点は、照明および検出が、試料面の異なる側で行われなかった結果であり、そのため、例えば偏向角度に関して設定調整が可能なビーム偏向装置を用いた簡単な切り替えによって、光路の反転が可能となる。このことはさらに以下でも詳細に正確に説明する。
【0010】
その上さらに本発明は、古典的な顕微鏡構造の、特に古典的な直立若しくは倒立型顕微鏡スタンドを使用した顕微鏡および/または走査型顕微鏡および/または共焦点走査型顕微鏡において使用することができるという利点を有している。このことは、本発明による装置の製造の際の手間やコストに有益となり、あるいは本発明による装置で利用できる検査方法の多様性ないし汎用性にプラスに作用する。試料を通って透過された照明光束の光を含んでいる透過光束は、特に蛍光を一般的に含み、これは試料内に含まれる蛍光分子に由来し、それが照明光束によって励起されたものである。
【0011】
好ましくは、照明光束は対物レンズによって試料に集束され、透過光束は対物レンズによってコリメートされる。ここでは照明光束のビーム径は、試料の立体的な広がりに比べて小さくてもよい。その場合には、照明光束と試料を互いに相対的に移動させ(ビーム走査および/または試料走査)、それによって試料が走査されるようにしてもよい。
【0012】
対物レンズから到来する透過光束を、対物レンズへ伝播される照明光束から空間的に分離させ、透過光検出器へ導く光路にもたらすために、例えばビームスプリッタ、特にビームスプリッタプレートが使用できる。
【0013】
特に好ましい実施形態によれば、照明光束を、対物レンズの通過後に、照明光偏向手段を用いて、当該照明光束が偏向後に前記対物レンズの光軸に対して0°とは異なる角度で伝播するように偏向させる。特に好ましくは、前記照明光束を、前記対物レンズの通過後に、照明光偏向手段を用いて、検査すべき前記試料に対して偏向させてもよい。特に好ましくは、照明光束が、対物レンズの通過後に、照明光偏向手段を用いて、前記対物レンズの光軸に対して90°(直角)の角度で試料に向けて偏向される。そのような実施形態は、試料から当該試料を通って進行する照明光束の伝播方向に対して直角方向に出射する光が、例えばSPIM撮影のために、対物レンズの光軸に対して平行に進行し、それによって、対物レンズに入射する照明光束に対して直線方向で、さらなる対物レンズによってコリメートされ、引き続き検出され得ることを特徴とする。そのような対物レンズの配置構成は、古典的な顕微鏡構造に非常に近いので、簡素で堅牢な構成が、特に既存の顕微鏡、とりわけ走査型顕微鏡の改造によって実現可能である。
【0014】
特に対物レンズから到来する照明光束が、照明光偏向手段によって試料の方へ偏向される実施形態では、試料から到来する透過光束を、透過光偏向手段によって試料の方へ偏向させることが可能である。それ故、特に試料から到来する透過光束を、透過光偏向手段を用いて、それが偏向後は対物レンズの光軸に対して平行に伝播するように偏向させてもよい。
【0015】
試料の三次元投影トモグラフィの達成のための多くの測定値を得るために、試料は、時間的に相前後して異なる試料位置でおよび/または照明光束の異なる伝搬方向で照明される。好ましくは、試料位置毎におよび照明光束の伝播方向毎に、それぞれ透過光検出器によって透過光束の光出力値が測定される。
【0016】
特に好ましい実施形態によれば、試料はこの場合位置固定されたままであるが、それに対して照明光束のそれぞれの位置および/または伝播方向は、試料に対して相対的に変更される。試料が移動されないにもかかわらず、三次元投影トモグラフィを再構成するための試料に関する十分に多くの透過情報が得られる。その理由は本発明の態様により、試料が実質的に少なくとも3つの主方向から照明可能、すなわち、対物レンズの光軸に沿った方向並びに対物レンズの光軸に対して横向きの逆方向から照明可能になるからである。このことは以下でもさらに詳細に説明する。
【0017】
しかしながら代替的に、試料を、時間的に相前後して異なる試料位置でおよび/または照明光束の異なる伝搬方向で照明するために、試料を装置に対して相対的にかつ照明光束に対して相対的に移動させることも可能である。
【0018】
特定の実施形態によれば、照明光束の位置および/または伝播方向が、対物レンズの上流側に接続され偏向角度に関する設定調整が可能なビーム偏向装置によって設定調整される。そのようなビーム偏向装置は、例えばその角度位置が例えばガルバノメータで設定可能なジンバルマウントされたミラーを含んでいてもよい。例えばこのビーム偏向装置は、相互に垂直な回転軸線を有する2つのガルバノメータミラーを含んでいてもよい。またこのビーム偏向装置は、音響光学的ビーム偏向装置として構成されていてもよい。特に独立した発明思想によれば、走査型顕微鏡のスキャナは、照明光束の位置及び/又は伝播方向を変更させるための設定調整が可能なビーム偏向装置として使用される。
【0019】
好ましい実施形態によれば、照明光束が、設定調整が可能なビーム偏向装置によって最初に次のように位置決めされ配向される。すなわち照明光束が対物レンズの通過後に、照明光偏向手段に入射し、そこから試料に向かって偏向され、この試料から出射した透過光束が透過光偏向手段によって対物レンズの方に偏向されるように位置決めされ配向される。引き続き照明光束は、設定調整が可能なビーム偏向装置によって光路が逆方向に反転して延在するように位置決めされ配向される。すなわち照明光束が、対物レンズの通過後に透過光偏向手段に入射してそこから試料に向けて偏向し、それに対して透過光束は、照明光偏向手段によって対物レンズ7の方へ偏向されるように位置決めされ配向される。要するに、この手順においては、光路反転のために、偏向手段がその機能を入れ替えることを意味する。このようにして、試料の移動を強いることなく、逆方向からの照明を可能にしている。
【0020】
試料をできるだけ多くの方向から照明できるようにするために、照明光偏向手段および/または透過光偏向手段として機能し得る多くの異なる偏向手段若しくは異なって配向された偏向手段が含まれていてもよい。特に複数の偏向手段を試料の周囲に分散させることも可能である。また代替的若しくは付加的に、偏向装置は、例えばファセットミラーとして、複数の偏向手段を有していてもよい。また円錐型の偏向手段、例えば対物レンズの光軸周りに同軸に配置されている円錐ミラーが使用されてもよい。それにより、試料への照明光束の入射方向が、偏向角度に関して設定調整が可能なビーム偏向装置を用いて、光軸に対して同じように配置された試料の周りで360度回転させることができるようになる。このことのために例えば照明光束がビーム偏向装置によって、円錐ミラー表面の入射点が円を描くように案内されてもよい。
【0021】
偏向手段の各々は、例えば平面状のミラーや曲面状のミラーを含んでいてもよい。ここでは特に照明光偏向手段および透過光偏向手段が、同じ偏向装置の構成要素、例えばファセットミラーであってもよい。
【0022】
また照明光束の位置および/または伝播方向を変更する偏向角度に関する設定調整が可能なビーム偏向装置の使用に対して代替的若しくは付加的に、照明光束の位置および/または伝搬方向が、照明光偏向手段の移動、特にシフトおよび/または傾斜によって設定調整されてもよい。
【0023】
好ましくは照明光束の断面は円形に構成されている。しかしながら、照明光束は、その他の断面形状を有していてもよい。例えば照明光束は、シリンドリカルレンズによって、SPIM画像の照明のための光シートが形成されてもよい。これに対してはさらに代替的若しくは付加的に、以下でも詳細に説明するように、断面が円形の照明光束の迅速な往復揺動によって、SPIM画像のための擬似光シートが形成されてもよい。
【0024】
照明光束の成形のためにシリンドリカルレンズが使用される場合には、透過光検出器は、好ましくは、全体として末広がりの透過光束を同時に検出可能にするために、面検出器若しくは線検出器として構成されてもよい。
【0025】
本発明の特に有利な実施形態によれば、断層撮影検査に対して同時に若しくは逐次的に、試料の少なくとも1つの横断面の少なくとも1つのSPIM(選択的平面照明顕微鏡)画像が生成される。このことは、完全に異なる検査方法によって、特に試料に関する複数の情報が同時に得られるようになる利点につながる。このようにして試料の内部構造や性質に関する詳しい情報が正確に得られるようになる。特に検査方法の1つにおいて生じ得るエラーやアーティファクトがそれぞれ別の検査方法を用いて得られた情報によって識別され、修正されるようになる。
【0026】
投影トモグラフィ検査の他に別の検査方法も適用可能になる可能性は、本発明の態様により、試料の領域において、制約が少なくアクセスも容易な実験空間が結果的に得られることに基づき、特に対物レンズに対して同軸若しくは平行にさらなる対物レンズがわけなく配置可能である。
【0027】
SPIM(SPIM:選択的平面照明顕微鏡法)画像のための検出光をコリメートするために、1つの対物レンズに対してさらなる対物レンズが同軸若しくは平行に配置される実施形態によれば、特にコンパクトな構造にさせることができかつその古典的な顕微鏡構造に類似させることができる特定の利点が得られ、このことは、従来の顕微鏡スタンドの使用を可能にし、あるいは既存の顕微鏡システムの容易な改変を可能にさせる。
【0028】
SPIM画像の生成のために、試料は、薄いライトシートによって照明され、一方照明された試料層の観察は、照明するライトシートの平面に対して垂直方向で、蛍光および/または散乱光の検出によって行われる。様々な試料層の画像からは、特に相互に平行な試料層の画像スタックからは、試料の三次元画像を生成することができる。SPIM画像の撮影のための検出器は、例えばカメラとしておよび/またはCCDカメラとしておよび/またはSCMOS検出器としておよび/または面検出器として構成可能である。
【0029】
既に述べたように、SPIM照明のためのライトシートは、例えばシリンドリカルレンズを用いて照明光ビームから形成されてもよい。
【0030】
しかしながらそれに代えて、SPIM照明のために、ライトシート平面内で照明光束の往復揺動により、擬似ライトシートを作成することも可能である。例えば最初に、断面が十分に円形の照明光束を生成し、それをビーム偏向装置(これは特に走査型顕微鏡のスキャナであってもよい)が迅速に往復揺動して、擬似ライトシートが形成されるようにしてもよい。その際には特に例えばシリンドリカル光学系によって生成されたライトシートによる照明の場合と十分に同じくらいの検出信号が生成されるように、および/または使用されるSPIM検出器のための擬似ライトシートが、例えばシリンドリカル光学系によって生成されたライトシートと区別がつかなくなるくらいに、照明光束が迅速に往復揺動されてもよい。
【0031】
既に述べたように、本発明によれば、好ましくは試料の投影トモグラフィとSPIM検査とが同時に行える。そのかぎりでは、特に、ライトシート平面内での照明光束の往復揺動により、SPIM画像の照明のための擬似ライトシートが生成され、その際には照明光束の異なる照明位置毎および/または異なる伝搬方向毎に、各透過光束が断層撮影検査のために同時に検出される。
【0032】
十分に円形な照明光束から形成された擬似ライトシートの使用は、付加的な光学系の省略を可能にさせ、かつ十分に任意の形状の、特に湾曲形状の擬似ライトシートの形成を可能にさせる特定の利点を提供する。その他にも十分に円形な照明光束から形成された擬似ライトシートの使用は、同時の断層撮影検査に対しても有益となる。なぜならそれぞれ測定された透過光値が、それに対応する照明光束の照明位置と伝播方向とに容易に対応付けられるからである。
【0033】
但し特にSPIM検査に対しては、断層撮影検査に対して同時に若しくは逐次的に試料の別の検査を実施するために、試料に入射する照明光ビームの伝播方向に対して0°とは異なる角度で、特に試料に入射する照明光ビームの伝播方向に対して90°の角度で、試料から出射する光が、さらなる対物レンズを通過し、透過光検出器とは異なる検出器によって検出されることが一般的に行われてもよい。ここでの前記光は、例えば蛍光および/または散乱光であってもよい。
【0034】
既に述べたように、さらなる対物レンズは、好ましくは次のように配向してもよい。すなわちさらなる対物レンズの光軸が、試料に入射した照明光ビームの伝播方向に対して90°の角度で配向されるように、および/またはさらなる対物レンズの光軸が、対物レンズの光軸に対して平行若しくは同軸に配向されるように配向してもよい。しかしながら基本的には、さらなる対物レンズの光軸が、試料に入射する照明光ビームの伝播方向に対して0°とは異なる角度で配向されることも可能である。
【0035】
既に述べたように、試料は、本発明のおかげで、実質的に少なくとも3つの主方向から、すなわち、対物レンズの光軸に沿った方向並びに対物レンズの光軸に対して横向きの逆方向から照明可能である。対物レンズの光軸に対して横向きの逆方向からの照明に対する手順は既に上述されている。対物レンズの光軸に沿った照明は、照明光偏向手段と透過光偏向手段の利用なしで透過光装置において行われる。この照明光束は、この場合、対物レンズの通過後、偏向なしで試料に入射し、透過光束が直線方向でさらなる対物レンズ(これもコンデンサ光学系として構成されていてもよい)に到達するように配向される。
【0036】
透過光装置における投影トモグラフィ検査中の上述のSPIM検査は不可能である。それどころかむしろ、SPIM検査のために使用されるべきさらなる対物レンズは、透過光束をコリメートするために使用することができ、これに対して、収束位置の場合によっては必要な適合化から見て、その位置に保持される。特に好ましい実施形態によれば、SPIM検出器はこの場合透過光検出器として使用される。
【0037】
照明光偏向手段および/または透過光偏向手段は、好ましくは対物レンズまたは他の対物レンズに配置されてもよい。このことは、大きな付加的スタンド部品を必要としない利点をもたらす。これは外部から試料領域に突出し、それ自体スペースを奪うものであろう。その他にも、1つの対物レンズまたはその他の対物レンズにおける配置構成の高い安定性を保証する。なぜなら、これらの対物レンズ自体が既に安定して維持される必要があるからである。
【0038】
特定の実施形態によれば、照明光偏向手段および/または透過光偏向手段は、可動に、特にシフト可能および/または傾斜可能に、1つの対物レンズまたはその他の対物レンズ上に配置可能である。そのような実施形態は、照明光偏向手段の別の位置または別の配向方向への移動によって、照明光束の照明位置および/または配向が変更可能になる特別な利点を有する。同じように、透過光偏向手段の別の位置または別の配向方向への移動によって、透過光束の位置および/または配向も変更可能である。
【0039】
既に述べたように、本発明による方法は、好ましくは走査型顕微鏡または共焦点走査型顕微鏡を用いて実施することが可能である。この場合、特に場合によっては既存のNDD検出器(non descanned detector)が透過光検出器として、および/または、特にNDD検出器が面検出器として構成されている場合には、SPIM検出器として使用され得る。特に本発明による装置は、少なくとも部分的に走査型顕微鏡若しくは共焦点走査型顕微鏡で形成されていてもよい。
【0040】
図面には本発明の態様が概略的に示されており、この態様は以下においてこれらの図面に基づいて詳細に説明する。なお同じ要素若しくは同じ機能の要素には同じ参照符号が付される。