(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
補強シートの両面に防水フィルム層を有し、屋根の野地板に設置したとき、鉛直方向の上側の防水フィルム層上面には、粘着調整剤および粒子体を含有する防滑層が積層されており、鉛直方向の下側の防水フィルム層下面には、合成ゴムおよび粘着付与剤を含有する粘着層が積層されている粘着層付屋根下葺材であって、
前記防水フィルム層は、ポリオレフィン系樹脂からなり、
前記防滑層のぬれ張力が、40mN/m以上であり、
剛軟度が、長手方向、幅方向共に70以上であり、
前記粘着層の前記野地板に対する粘着力と自背面に対する粘着力との差が、10N/25mm以下であり、
前記粘着層の厚さは、120〜480μmである粘着層付屋根下葺材。
前記粒子体が、無機系粉末および熱膨張性マイクロカプセルからなる群から選択される少なくとも1つの粒子体であり、粒子径が10〜200μmである請求項1又は2に記載の粘着層付屋根下葺材。
【背景技術】
【0002】
従来、家屋の屋根には、屋根材である瓦、スレート、板金等の下地防水シートとして、屋根下葺材が使用されている。屋根下葺材に要求される重要な性能として、雨水が屋内に進入することを防ぐための防水効果が挙げられる。
【0003】
従来使用されてきた屋根下葺材の具体例として、主にアスファルト系フェルト、ゴム改質アスファルト系フェルトがある。これらは、不織布や紙にアスファルトまたはゴム改質アスファルトを含浸させてなる屋根下葺材である。また、合成高分子系のシートを使用して屋内への水の侵入を防ぐ屋根下葺材もある。これらの屋根下葺材は、野地板に固定するため、シート全面にわたって、無数の釘打ちが必要である。このため、従来の屋根下葺材では、シートの性能、施工状況、環境次第で釘穴から漏水する問題が生じていた。
【0004】
一方、野地板に屋根下葺材を固定するため、屋根下葺材の裏面に粘着層を設けたものが提案されている。この屋根下葺材は、釘打ちを行った場合でも、釘に粘着層が絡み付くことで釘穴からの漏水を防ぐ効果がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、粘着層、不織布や紙にアスファルトを含浸させた層、アスファルト層、鉱物粉粒層で構成されている粘着層付屋根下葺材が開示されている。
しかし、アスファルトを使用しているため重く、粘着層は温度影響を受け易い。また、表面側のアスファルト層上に鉱物粉粒層があるため、表面が粗く、熱や雨で鉱物粉粒が浮上し滑り易くなる。また、防水の面から、下葺材の長手方向や幅方向の端部を重ねることがあり、さらに、棟部、谷部では二重貼りすることがあるが、下葺材が重なると、鉱物粉粒が影響し充分な密着性が得られないおそれがある。
【0006】
特許文献2には、プラスチックフィルム、不織布シート、ゴムアスファルトまたはブチルゴムからなる層、ゴム系物質含浸不織布シート、接着剤層が積層された粘着層付屋根下葺材が開示されている。
しかし、重ね貼りした際に下葺材が重なった部分において、不織布シートの凹凸が下葺材表面に影響し充分な密着性が得られないおそれがある。
【0007】
特許文献3には、防滑不織布と透湿防水層と接着層とを有する積層体からなる粘着層付屋根下葺材が開示されている。
しかし、不織布を主な構成体としているため、ハリコシが得られ難く、施工時に接着層どうしが接着して使用できなくなる等、施工が難しいという問題があった。また、不織布のみでは釘穴からの漏水を防ぎ難く、加えて、透湿性を確保するために粘着層が形成されていない部分を設けているため、釘穴から漏水し易く、かつ充分な粘着力を発揮し難い。さらに、表面側に防滑不織布を設けているため、重ね貼りの重ね部分において、充分な密着性が得られないおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、補強シートの両面に防水フィルム層を有し、屋根の野地板に設置したとき、鉛直方向の上側の防水フィルム層上面には、粘着調整剤および粒子体を含有する防滑層が積層されており、鉛直方向の下側の防水フィルム層下面には、合成ゴムおよび粘着付与剤を含有する粘着層が積層されている粘着層付屋根下葺材である。すなわち、鉛直方向の略上側の最外層が粘着調整剤及び粒子体を含有する防滑層であり、防滑層の下層にはフィルムからなる防水層を両面に有する補強シートを有し、更にその下層に粘着層を有する多層構造の粘着層付屋根下葺材である。
【0019】
本発明の粘着層付屋根下葺材の実施形態の一例について、
図1にて説明する。
図1に示されるように、本実施形態とする粘着層付屋根下葺材1は、粘着調整剤2と粒子体3とを含有する防滑層4の下に防水フィルム層5を両面に有する補強シート6が設けられ、その下に粘着層7、離型シート8が設けられている積層体である。
【0020】
粘着調整剤2としては、防滑層4に適度な粘着性を付与する剤が挙げられ、具体的には、変性ポリオレフィン系、ポリウレタン系、アクリル系、エポキシ系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、セルロース系、フェノール系、メラミン系からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂が挙げられる。例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの極性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの無極性樹脂が挙げられるが、密着性の高い変性ポリオレフィン系を主剤とした樹脂であれば、防水性を発揮し易く好ましい。
【0021】
また、粒子体3は、高分子系粉末、無機系粉末および熱膨張性マイクロカプセルからなる群から選択される少なくとも1つの粒子体である。なかでも、無機系粉末および/または熱膨張性マイクロカプセルは、粘着層付屋根下葺材の表面全体に微細な凹凸が形成され摩擦係数が高まり、防滑性が付与されるので好ましい。
【0022】
高分子系粉末としては、ポリプロピレン系、ウレタン系、ナイロン系、テフロン(登録商標)系などが挙げられる。なかでも、加工性が良いポリプロピレン系が好ましい。また粒子径が10〜200μmであれば好ましい。10μm以上であれば、表面の微細な凹凸により防滑性が向上する。また、200μm以下であると、重ね部分の密着性の低下を抑えられる。
【0023】
無機系粉末としては、楔形、円錐状、多角錐状などの三次元異形形状である無機系粉末が好ましい。具体的には、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。なかでも、分散性が良く耐薬品性もある酸化亜鉛が好ましい。また、粒子径が10〜200μmであれば好ましい。10μm以上であれば、表面の微細な凹凸により防滑性が向上する。また、200μm以下であると、重ね部分の密着性の低下を抑えられる。
【0024】
熱膨張性マイクロカプセルは、炭化水素などガスが内包したマイクロカプセルであるため、断熱効果があり、遮熱性を向上させるため好ましく使用される。粒子径は5〜20μmであれば、防滑性及び耐摩耗性の面で好ましい。また、発泡倍率は2〜10倍であることが好ましい。この範囲であれば、防滑性及び耐摩耗性を向上させことができる。また、発泡後の粒子径、すなわち、作製された粘着層付屋根下葺材の熱膨張性マイクロカプセルの粒子径が10〜200μmであることが好ましい。10μm以上であれば、表面の微細な凹凸により防滑性、耐摩耗性が向上する。また、200μm以下であると、重ね部分の密着性の低下と耐摩耗性の低下を抑えられる。
熱膨張性マイクロカプセルの内部に封入される炭化水素としては、n−ブタン、i−ブタン、ペンタン、ネオペンタンのような低沸点の炭化水素が好ましい。
熱膨張性マイクロカプセルの素材としては、熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系、酢酸ビニルアルコール系が挙げられる。
【0025】
粒子体3の添加量としては、粘着調整剤100重量部に対し2〜40重量部で添加することが好ましい。2重量部以上であれば、粒子体によって表面全体に凹凸を形成でき、防滑性が向上し、40重量部以下であれば、粒子体の脱落が抑えられる。
【0026】
防滑層4は、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色顔料等を添加することができる。また、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、銀、クロム等の放射熱反射効果のある金属粉末を防滑層4に添加すると、遮熱性を向上させることができる。
【0027】
前記防滑層4と粘着層7との粘着力、すなわち、粘着層付屋根下葺材の自背面粘着力は、9N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましい。9N/25mm以上であれば、重ね部分の密着性が良く、防水性が発揮できる。また、粘着層7と野地板との粘着力は、3N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましい。3N/25mm以上であれば、重ね部分の密着性が良く、防水性が発揮できる。さらに、粘着層7の野地板に対する粘着力と自背面粘着力との差は、10N/25mm以下であることが好ましく、4N/25mm以下であることがより好ましい。10N/25mm以下であれば、重ね部分、及び重ね部分以外の部分(合板への貼り部分)は、共に反り返りや浮き等が発生し難く、良好な密着性が維持され、長期に亘って防水性が持続する。
【0028】
前記防滑層4のぬれ張力は、40mN/m以上であることが好ましく、45mN/m以上であることがより好ましい。40mN/m以上であれば、粘着層との親和性が良く、重ね部分の密着性を良好にすることができる。
【0029】
前記防滑層4の形成は、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、リバースコーティング法などの公知の塗膜付与方法が用いられる。また、乾燥後防滑層の厚さは、30〜300μmであることが好ましい。30μm以上の場合、粒子体の脱落を抑制でき充分な密着性が得られる。また、300μm以下であれば、粒子体の埋没を抑制し、防滑性が得られる。さらに、軽量であるため、施工性も向上する。
【0030】
前記防水フィルム層5は、フィルムであるため、ハリコシを確保し易く、経済性、生産性、強度、防水性、表面平滑性に優れ、釘穴や重ね貼りにおける防水性にも優れる。
防水フィルム層5を形成する材料としては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である。なかでも、加工性、強度、経済性、疎水性の面からポリオレフィン系が好ましい。
【0031】
本発明の粘着層付屋根下葺材は、屋根の野地板に設置したとき(すなわち、略水平に配置したとき)、補強シート6の鉛直方向上側に平滑な防水フィルム層5が設けられるため、下葺材を重ねた際の粘着層7との密着性が向上し、かつ重ね部分の隙間が生じ難くなる。従って、毛細管現象による浸水を防止する効果がある。また、補強シート6の下側に防水フィルム層5が設けられるため、粘着層7の厚さが均一となって粘着力が安定し、重ね部分から水が浸入し難く、密着性が良好となる。従って、施工の際に離型シート8を剥したとき粘着層7も一緒に剥れることを防止できる。
前記防水フィルム層5の引張強度は、長手方向10MPa以上、幅方向10MPa以上であることが好ましい。これらの強度であれば、施工中に破れや裂けを軽減することができる。
防水フィルム層5の厚さは、20〜200μmの範囲内であることが好ましい。20μm以上であれば、充分な強度を得ることができる。また、200μm以下であれば、軽量感を得られ、施工性が向上する。なお、上述の長手方向、幅方向について、本明細書では、連続的に製造されるフィルムの製造流れ方向を長手方向、製造流れに対して直角方向を幅方向とする。
【0032】
なお、防水フィルム層5の製法は特に限定されず、インフレーション法、押出ラミネート法、キャスト法など公知の製造法で製膜可能である。また、補強シート6に、溶融した樹脂をシート状に成型しながら冷却し製膜する押出ラミネート法にて防水フィルム層5を形成してもよい。
上層の防水フィルム層5は、均一なフィルムを成型し易いインフレーション法、押出ラミネート法、キャスト法で製膜することが好ましい。これらの製造法で得られたフィルムは、安定的に強度、防水性、表面平滑性を発揮し易い。
また、防水フィルム層5は、防滑層4や粘着層7との密着性をより向上させるため、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ処理などの表面改質を行うことができる。
【0033】
防水フィルム層5には、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色顔料等を添加することができる。
【0034】
補強シート6は、前記防水フィルム層5を補強、支持できるものであればよく、具体的には不織布、織物、編物、フィルムなどが挙げられる。なかでも、コスト、生産性、強度の面から不織布が好ましい。
不織布は、引張強度が長手方向25N/cm以上、幅方向20N/cm以上、引裂強度が長手方向10N以上、幅方向8N以上であることが好ましい。これらの強度を満たしていれば、施工中の破れや裂けを軽減することができる。不織布の目付は、60〜300g/m
2であることが好ましい。60g/m
2以上であれば、充分な強度とハリコシを得られる。また、300g/m
2以下であれば軽量であるため、施工性が向上する。不織布の素材としては特に限定されるものではなく、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン、アラミド等のポリアミド系からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料からなる高分子素材が挙げられる。なかでも、ハリコシ、加工性、強度、寸法安定性の面からポリエステル系が好ましい。
また、前記不織布の製法は特に限定されず、スパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法など公知の製造法を使用することができる。
【0035】
補強シート6には、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色顔料等を添加することができる。
【0036】
防水フィルム層5と補強シート6との接着方法としては、両者の間に接着層を設けてもよいし、設けなくてもよい。接着層を設ける場合は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を、水や溶剤等の溶媒に分散または溶解させ、この分散液又は溶液を防水フィルム層5又は補強シート6に塗工した後、溶媒を飛ばして接着層を形成し、両者を貼り合せるドライラミネート法、又は溶媒を飛ばさずに両者を貼り合わせてから乾燥させるウェットラミネート法、樹脂を熱で溶融し、シート状や糸状に成型しながら貼り合せ、冷却して接着層とする押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法が挙げられる。
また、接着層を設けない場合は、防水フィルム層と補強シートを熱で融着させるサーマルラミネートなどの公知のラミネート方法が用いられる。
なお、接着層を設ける場合は、接着層の厚さは、5〜100μmであることが好ましい。5μm以上の場合、充分な接着力が得られる。また、100μm以下であれば軽量であるため、施工性も向上する。
【0037】
粘着層7としては、温度影響が少なく、被着体の極性に左右され難い合成ゴムが使用される。具体的には、ブチルゴム系、イソプレンゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ポリイソブチレン系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、グラフトゴム系が挙げられる。なかでも、防水性、耐候性、耐熱性、耐薬品性、金属との粘着性に優れたブチルゴム系が好ましい。これらの群から選択される少なくとも1種の合成ゴムに、粘着付与剤が添加され、粘着性を有する粘着層が形成される。
【0038】
粘着層7には、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色顔料等を添加することができる。
【0039】
また、粘着層7の形成には、カレンダーコーティング法、ドクターコーティング法、ロールコーティング法、押出成型コーティング法などの公知の塗膜付与方法が用いられる。
【0040】
また、粘着層7の厚さは、100〜500μmであることが好ましい。100μm以上であれば、充分な粘着力と釘穴の防水性を得ることができる。また、500μm以下であれば、軽量感を得られ、かつ自重で垂れ下がることによる粘着層同士の接着を抑制できるため、施工性が向上する。
【0041】
粘着層7の表面には、離型シート8を備えることができる。離型シート8としては、特に限定されないが、経済性の面から、抄造紙に離型剤を塗工したものなどが好ましく使用される。重量は、50〜150g/m
2であることが好ましい。50g/m
2以上であれば強度を維持し易いため、粘着層7から引き剥がす際も破れ難い。また、150g/m
2以下であれば、軽量であるため、施工性が向上する。
【0042】
粘着層付屋根下葺材1は、必要に応じて、防水フィルム層5を2層以上積層するなど、同じ効果を得ることを目的とした層を2層以上積層しても良い。
【0043】
粘着層付屋根下葺材1の総重量は、300〜900g/m
2であることが好ましい。300g/m
2以上であれば強度を維持し易い。また、900g/m
2以下であれば、軽量であるため、施工性が向上する。
粘着層付根下葺材1の総厚さは、400〜900μmであることが好ましい。400μm以上であれば強度を維持し易い。また、900μm以下であれば、柔軟性に富み、被着体に押さえつけ易いため、施工性が向上する。
粘着層付屋根下葺材1の引張強度は、長手方向60N/cm以上、幅方向40N/cm以上、引裂強度は、長手方向10N以上、幅方向10N以上であることが好ましい。これらの強度を満たしていれば、施工中に破れや裂けを軽減することができる。
粘着層付屋根下葺材1の剛軟度は、長手方向、幅方向共に70以上であることが好ましい。この剛軟度を満たしていれば、自重で垂れ下がり粘着層同士が接着することを防ぐことができる。
【実施例】
【0044】
以下に述べる実施例、比較例によって本発明の粘着層付屋根下葺材を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明に係る実施例1乃至実施例5の粘着層付屋根下葺材を製造し、その物性を測定した。また、比較のため、比較例1乃至比較例4の粘着層付屋根下葺材を製造し、その物性を測定した。実施例及び比較例における各物性は、以下の方法により測定し評価した。
【0045】
(1)粘着力
下記(1)−1〜(1)−3の各条件にて処理後、JIS Z0237 10.4.1方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力に準拠し、屋根の野地板を想定した針葉樹合板(林ベニヤ産業株式会社製 タイガプライ12mm厚 高耐久合板)への粘着力および自背面への粘着力を測定した。合板への粘着力については、3N/25mm以上を粘着性に優れると評価した。自背面への粘着力については、9N/25mm以上を粘着性に優れると評価した。なお、合板への粘着力と自背面への粘着力との差が、10N/25mm以下である場合、重ね部分、及び重ね部分以外の部分(合板への貼り部分)は、共に反り返りや浮き等が発生し難く、良好な密着性が維持され、重ね部分の防水性に優れると評価できる。
(1)−1 常温
気温23℃湿度50%環境にて下葺材と合板を1時間以上養生し、合板および自背面との粘着力を養生と同じ環境下にて測定した。
(1)−2 低温
気温0℃環境にて下葺材と合板を1時間以上養生し、合板および自背面との粘着力を養生と同じ環境下で測定した。
(1)−3 加熱処理後
気温80℃の加熱高温器内に24時間養生後、合板および自背面との粘着力を常温下で測定した。
(2)釘穴止水性
下記(2)−1〜(2)−3の各条件にて処理後、アスファルトルーフィング工業会規格「改質アスファルトルーフィング材 7.8釘穴シーリング性」に準じ、水頭150mmに設定し、リング釘を用いて釘穴止水性を測定した。合板は、粘着力試験で用いた合板と同種の合板(100mm×100mm)を用いた。N=10で実施し、24時間後の平均減水高さを測定した。4mm以下を止水性に優れていると評価した。
(2)−1 常温
気温23℃湿度50%環境にて、粘着層付屋根下葺材と合板を24時間以上養生し、養生と同じ環境下で釘穴止水性を測定した。
(2)−2 低温
気温0℃環境にて、粘着層付屋根下葺材と合板を24時間以上養生し、養生と同じ環境下で釘穴止水性を測定した。
(2)−3 加熱処理後
80℃の加熱高温器内にて、粘着層付屋根下葺材と合板を24時間以上養生し、常温下で釘穴止水性を測定した。
(3)重ね部分密着性
下記(3)−1〜(3)−3の各条件にて処理後、粘着力試験で用いた合板と同種の合板(200mm×200mm)を用意し、
図2のように合板上に重ね部分10が10mmとなるように長手が200mm、幅が110mmの粘着層付屋根下葺材2枚を貼りつけ、重ね部分10が中心となるようにアクリル製管(200mm高さ、内径150mm、外形160mm)を立て、アクリル製管と粘着層付屋根下葺材の表面をコーキング材で固定した。コーキング材が硬化した後に水頭150mmとなるように水を入れて、24時間放置後に、重ね部分の合板側への漏水の有無を確認した。漏水の判断として、合板が湿っている場合に漏水ありとした。
(3)−1 常温
気温23℃湿度50%環境にて24時間養生後、重ね部分の漏水を養生と同じ環境下で確認した。
(3)−2 低温
気温0℃環境にて粘着層付屋根下葺材を24時間以上養生し、重ね部分の漏水を養生と同じ環境下で確認した。
(3)−3 加熱処理後
80℃の加熱高温器内に24時間養生後、重ね部分の漏水を常温下で確認した。
(4)ハリコシ
下記(4)−1〜(4)−2の評価にて、ハリコシを確認した。
(4)−1 剛軟度
JIS L1096.8.21.4 A法(45°カンチレバー法)に準拠し、離型シートを剥した状態で長手方向および幅方向の剛軟度を測定した。70以上を合格とした。
(4)−2 自重折れ曲がり
100cm×100cmにカットした粘着層付屋根下葺材から離型シートを剥し粘着層を下向きにして、幅方向両端の中心部分を掴み垂れ下げた場合に、自重で折れ曲がり粘着層同士が接着するか確認した。接着しなかった場合を合格とした。
(5)静摩擦係数試験
静摩擦係数試験機(新東科学株式会社製 トライボギア静摩擦係数測定機TYPE:10)を用いて、粘着層付屋根下葺材表面とクラフト紙(JIS P3401クラフト紙1種)との静摩擦係数を測定した。0.50以上を合格とした。
(6)防滑評価
6寸勾配(角度30.9638°)の屋根模型を作製し、野地板面に粘着層付屋根下葺材を張り付けた後、粘着層付屋根下葺材表面を歩行し滑り具合を確認した。粘着層付屋根下葺材表面が乾燥状態と湿潤状態での評価を次の評価基準にて行った。
評価基準
○:滑り難く、安全に歩行できる
△:少し滑るが、安全に歩行できる
×:滑り易く、危険である
【0046】
[実施例1]
補強シート6を構成するポリエステル不織布(新麗企業株式会社製、目付100g/m
2スパンボンド)の一方の面に、ポリエチレンフィルム(林一二株式会社製、厚さ40μm)を、押出ラミネート法によってポリエチレン樹脂(東ソー株式会社製、ペロトセン(登録商標)212)を接着層とし厚さ20μmで形成しながら積層し、上層側(施工時鉛直方向上側)の防水フィルム層5とした。
次に、ポリエチレンフィルムを積層した面と反対面に、押出ラミネート法によってポリエチレン樹脂(東ソー株式会社製、ペロトセン(登録商標)212)を厚さ50μmで押出し、下層側(施工時鉛直方向下側)の防水フィルム層5を形成した。
次に、粘着調整剤2である変性ポリオレフィン系樹脂(坂井化学工業株式会社製、ユープライ(登録商標)P−3963)100重量部に対し、粒子体3であるアクリル系の熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製、マイクロスフェアーF−30、粒子径:14μm )を20重量部添加した樹脂組成物を、上層側の防水フィルム層5の上に、グラビアコーターにより厚さが25μmになるように塗工し、防滑層4を形成した。
次に、防水フィルム層5の防滑層4を形成した面と反対の面に、ブチルゴムに粘着付与剤を混合してなる粘着剤(古藤工業株式会社製 G207K)をカレンダーコーティング法にて200μm厚の粘着層7を形成しながら、離型シート8(王子特殊紙株式会社製、セパレート70KPS)を仮接着し、粘着層付屋根下葺材1を得た。
総重量は711g/m
2、総厚さは743μmであった。防滑層4表面のぬれ張力を、JIS K6768に準拠し測定したところ、48mN/mであった。なお、粘着層付屋根下葺材1の物性値、評価結果を表1に示す。
【0047】
[実施例2]
粘着層7を、120μm厚に変更したこと以外は、実施例1と同様に加工して、粘着層付屋根下葺材1を得た。粘着層付屋根下葺材1の物性値、評価結果を表1に示す。
【0048】
[実施例3]
粘着層7を、480μm厚に変更したこと以外は、実施例1と同様に加工して、粘着層付屋根下葺材1を得た。粘着層付屋根下葺材1の物性値、評価結果を表1に示す。
【0049】
[実施例4]
粒子体3を、酸化亜鉛のフィラー(株式会社アムテック製、パナテトラ(登録商標)WZ−0511L:粒径20μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様に加工して、粘着層付屋根下葺材1を得た。粘着層付屋根下葺材1の物性値、評価結果を表1に示す。
【0050】
[実施例5]
上層側の防水フィルム層5と補強シート6を、接着層を形成せずサーマルラミネート法によって積層したこと以外は、実施例1と同様に加工して、粘着層付屋根下葺材1を得た。粘着層付屋根下葺材1の物性値、評価結果を表1に示す。
【0051】
[比較例1]
粘着層7を、粘着付与剤を付与したブチルゴムの代わりにアクリル系粘着剤(サイデン化学株式会社製、サイビノール(登録商標)AT−D45)を用いて、ロールコーティング法で100μm厚に加工したこと以外は、実施例1と同様に加工して、粘着層付屋根下葺材を得た。粘着層付屋根下葺材の物性値、評価結果を表1に示す。
【0052】
[比較例2]
防滑層4を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様に加工して、粘着層付屋根下葺材を得た。粘着層付屋根下葺材の物性値、評価結果を表1に示す。
【0053】
[比較例3]
上層側の防水フィルム層5を形成せず、補強シート6の表面に防滑層4を形成したこと以外は、実施例1と同様に加工して、粘着層付屋根下葺材を得た。粘着層付屋根下葺材の物性値、評価結果を表1に示す。
【0054】
[比較例4]
下層側の防水フィルム層5を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様に加工して、粘着層付屋根下葺材を得た。粘着層付屋根下葺材の物性値、評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1より、本発明に係る実施例1乃至実施例5の粘着層付屋根下葺材は、粘着力、釘穴止水性、重ね部分密着性、ハリコシの各物性について、すべてがバランスよく優れるものであった。また、静摩擦係数も一定以上となっているため、人が屋根の上を歩行した場合に滑り難く、安全性が高いものであった。これに対し、比較例1乃至比較例4の粘着層付屋根下葺材は、上記各物性について個別には優れているものも見られたが、すべてのバランスに優れているものはなく、実用上問題があった。