(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(B)脂肪酸が、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸およびベヘニン酸から選択される一種または二種以上の直鎖脂肪酸である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧料。
【背景技術】
【0002】
紫外線の害から皮膚を守ることはスキンケア、ボディケアにおける重要な課題の一つであり、紫外線が皮膚に与える悪影響を最小限に抑えるために種々のUVケア化粧料が開発されている。UVケア化粧料の1種である日焼け止め化粧料(サンスクリーン化粧料)は、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を配合することによりUVAおよびUVBの皮膚への到達を遮り、紫外線の害から皮膚を守る(非特許文献1)。最近では夏のプールや海での水浴や冬のスキーなどの野外活動における過酷な紫外線条件に限らず、日常生活においても紫外線から皮膚を守ることが重要であると考えられており、通常のスキンケア化粧品でも紫外線防御効果を有するものが望まれている。
【0003】
日焼け止め化粧料の剤型としては乳化形態の製剤が多く用いられており、乳化の不安定性が紫外線防御能の低下を招くことがあった。特許文献1では、炭素数14〜24の遊離脂肪酸を配合することにより保存安定性を改善し、長期保存による紫外線防御能の低下を抑制したことが記載されている。
しかし、たとえ使用直前まで紫外線防御能が維持されていたとしても、皮膚に塗布した日焼け止め化粧料が水や汗と接触すると、塗布した化粧料から紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が流出し、紫外線防御効果が低下することが避けられない。そこで、紫外線防御剤の流出を阻止するために、日焼け止め化粧料の耐水性や被膜強度を改善する等の様々な試みがなされてきた。
【0004】
例えば、特許文献2には、水膨潤性粘土鉱物、第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、水相、および一般式R
nSiO
(4−n)/2で表される有機シリコーン樹脂を含有する油中水型乳化組成物が開示されており、有機シリコーン樹脂を配合することにより、耐水性、撥水性を改善し、紫外線吸収剤を皮膚上に長時間保持することが提案されている。
また、特許文献3には、紫外線防止剤、有機変性粘土鉱物、揮発性成分、球状樹脂粉末および被膜剤を含有する油中水型乳化化粧料が開示されており、被膜剤を配合することにより、粉末のこすれ落ちや、衣服への二次付着を防止することが提案されている。
【0005】
また、水中油型乳化物は、みずみずしい使用感触が得られることから日焼け止め化粧料としても広く用いられている。しかしながら、水中油型乳化化粧料は油中水型に比較して耐水性に劣ることが多く、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の流出による紫外線防御能の低下が起こりやすい。そこで、やはり皮膜剤を配合することによって耐水性を向上させる(特許文献4)、紫外線吸収剤を高配合することによって紫外線防御効果を高める(特許文献5)といった試みがなされていた。
【0006】
しかし、皮膚に塗布した化粧料は、皮膚から分泌される汗や海水といった外部環境からの水分など、塗膜の内外から種々の水分に曝されるため、耐水性を付与するための樹脂や被膜剤を高配合しても、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の流出を完全に阻止することは難しかった。また、紫外線吸収剤等の流出を完全に阻止できた場合であっても、得られる紫外線防御効果は塗布直後を上回ることはないと考えられていた。
【0007】
さらに、シリコーン樹脂や被膜剤等を高配合すると、塗布した化粧料の被膜感が強くなり、使用性が損なわれるほか、適用時の伸びが悪く、通常の洗浄料や石鹸で簡単に落とすことができず、専用クレンジング剤を用いなければならないといった紫外線防御効果とは別の問題が生じる場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の日焼け止め化粧料が、水分と接触することにより紫外線防御効果が向上するという特異な性質を発揮する作用機序は、現時点で必ずしも解明されているわけではないが、以下のように考えることができる。
【0017】
まず、上記の構成を有する本発明の日焼け止め化粧料を肌に塗布した直後は、紫外線防御剤を含む塗膜に不均一性が存在すると考えられる。しかし、この塗膜が水道水、海水、汗等の水分と接触すると、これら水分に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオン等のミネラルが脂肪酸成分と相互作用を起こすことで、塗膜の撥水性が高まり、塗布直後の状態と比べて塗膜の均一性が向上する。日焼け止め化粧料の塗膜の均一性が紫外線防御効果に重要であることは知られており、かくして、塗布直後よりも高い紫外線防御効果が実現されると同時に、紫外線防御剤の流出による紫外線防御能の劣化が阻止される。
【0018】
実際に、電子顕微鏡等による観察により、本発明の日焼け止め化粧料の塗布直後と比較して水分に接触させた後の方が、塗膜の均一性(表面の緻密さ及び膜自体の均質性)が向上していることが確認された。逆に従来の日焼け止め化粧料では、水分に接触すると膜の均一性が低下する。本発明者等が確認したところによると、同一の組成の日焼け止め化粧料から形成された塗膜であっても、全体が均一な塗膜の方が、不均一な塗膜に比較して紫外線防御能が格段に優れている。これは、紫外線防御能が膜厚の増加に伴って相加的に向上するのではなく、膜厚に比例して相乗的に向上することによると考えられる。
【0019】
次に、本発明の日焼け止め化粧料を構成する各成分について詳述する。
<(A)紫外線防御剤>
本発明に係る水中油型乳化日焼け止め化粧料に配合される(A)紫外線防御剤(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を意味し、日焼け止め化粧料に通常配合されるものを使用することができる。
【0020】
本発明で用いられる紫外線吸収剤は、特に限定されるものではないが、具体例としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、ポリシリコン−15、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オキシベンゾン−3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル等の有機紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0021】
本発明で用いられる紫外線散乱剤は、特に限定されるものではないが、具体例としては、微粒子状の金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0022】
紫外線散乱剤は、表面処理していないものでも各種表面処理したものでもよく、表面処理剤としては、化粧料分野で汎用されているもの、例えば、オクチルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、パルミチン酸デキストリンなどのデキストリン脂肪酸エステル、ステアリン酸などの脂肪酸を用いることができる。
【0023】
(A)成分の配合量は、水中油型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは6〜20質量%である。(A)成分の配合量が5質量%未満では十分な紫外線防御効果が得られにくく、40質量%を超えて配合しても配合量に見合った紫外線防御効果の増加を期待できず、安定性や使用性が悪くなる傾向が見られる。
なお、本発明の紫外線防御剤((A)成分)は、紫外線吸収剤のみからなる態様、紫外線散乱剤のみからなる態様、及び紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の両方を含む態様を包含する。
【0024】
<(B)脂肪酸>
本発明で用いられる(B)脂肪酸(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、化粧料等に使用できるものであれば特に限定されるものではなく、直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和の炭化水素基を有する脂肪酸から選択できる。
特に、常温で固体であり、かつ、炭素数8〜22の直鎖状の高級脂肪酸、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸(ベヘン酸)、オレイン酸等が挙げられる。中でも、ステアリン酸、パルミチン酸およびベヘニン酸から選択される一種または二種以上を用いるのが特に好ましい。
【0025】
また、本発明で用いられる脂肪酸は、対イオン(カチオン)によって部分的に中和(中和率が51%以下)されている。
本明細書における「(脂肪酸の)中和率」とは、水中油型乳化化粧料に配合される脂肪酸の合計当量数を「Ea’」、化粧料中の酸性物質から脂肪酸を除いた物質の合計当量数を「Ea”」、化粧料に配合される塩基性物質の合計当量数を「Eb」としたとき、以下の式(A)で表される数値と定義する。
[(Eb−Ea”)/(Ea’)]×100(%) (A)
【0026】
本発明の化粧料において、前記脂肪酸((B)成分)の中和剤として用いられる塩基性物質は、脂肪酸アニオンを中和する対イオン(カチオン)を供給できる物質であって、化粧品等に配合可能な無機塩基、有機塩基、カチオンポリマー等であればよく、特に限定されるものではない。
【0027】
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化アンモニウム等が代表例として挙げられる。
有機塩基としては、アミン類、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパンジオール、2−アミノ−2−メチルプロパノール(AMP)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、トリス[(2−ヒドロキシ)−1−プロピル]アミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)及び2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、N−メチルグルカミン等、塩基性アミノ酸、例えばアルギニンおよびリジンを挙げることができる。
【0028】
カチオンポリマーは、化粧料や皮膚外用剤で使用しうるカチオンポリマーであればよく特に限定されない。具体例としては、カチオン化セルロース誘導体〔例えば、第4級窒素含有セルロースエーテル(「ポリマーJR−400」、「ポリマーJR−125」、「ポリマーJR−300M」(いずれも米国ユニオンカーバイド社製)など)〕、カチオン化グアガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化タラガム、ジアリル四級アンモニウム塩のホモポリマー、ジアリル四級アンモニウム塩・アクリルアミド共重合体〔例えば、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体(「マーコート2200」、ナルコ(株)製)など〕、四級化ポリビニルピロリドン誘導体、ポリグリコールポリアミン縮合物、ビニルイミダゾリウムトリクロライド・ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体、ビニルピロリドン・四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン・アルキルアミノアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン・アルキルアミノアクリレート・ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン・メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体、アルキルアクリルアミド・アクリレート・アルキルアミノアルキルアクリルアミド・ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、アジピン酸・ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体、ビニルピロリドン・メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル・アクリル酸ステアリル・ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体(「CGポリマー(D)」、大阪有機工業株式会社製)など〕等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0029】
本発明においては、脂肪酸の中和率を51%以下とすることにより、水分に接することにより紫外線防御効果が向上するという従来にない特性を得ることができる。「中和率が51%以下の脂肪酸」とは、中和されていない脂肪酸及び上記式(A)に従って算出される中和率が51%以下で中和されている脂肪酸を含む。数値範囲で表すと、本発明における脂肪酸の中和率は0〜51%であり、この範囲に含まれる全ての数値、例えば、0.001、0.01、0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50%等の任意の値、あるいはこれらの値を下限値又は上限値とする全ての数値範囲を採ることができる。
【0030】
本発明の化粧料における(B)成分の配合量は、共に配合される紫外線防御剤の配合量に基づいて下記の配合量比率の要件を満たせばよく、通常は1質量%〜40質量%程度の範囲で配合される。好ましくは5質量%より多く、かつ40質量%以下の配合量とする。この配合量範囲は、前記範囲内の全ての値をとることができることは言うまでもない。ここで、「5質量%より多い」とは、配合量の下限値として5質量%は含まないが、それより多くの配合量、例えば5.1質量%以上、5.5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上又は10質量%以上等とすることができることを意味する。一方、配合量の上限値は、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、28質量%以下、25質量%以下、22質量%以下又は20質量%以下等に設定することが可能である。
【0031】
一方、脂肪酸を中和するために配合される塩基性物質(中和剤)の量は、前記脂肪酸の配合量および配合される他の酸性物質の配合量から、脂肪酸の中和率が51%以下となるように、上記式(A)に基づいて算出することができる。
【0032】
本発明の化粧料において所期の効果を確実に発揮するためには、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤(成分(A))と成分(B)との配合量比率((A)/(B))を0.1以上10.0未満とすることが必要である。この比率が10.0以上になると、水分と接触した際に紫外線防御効果が向上するという本発明特有の効果が得られない場合がある。言うまでもないが、10.0未満とは10.0は含まないがそれより小さな全ての値を含む概念である。この配合量比率は、0.1以上10.0未満に含まれる全ての数値及び全ての数値範囲(例えば0.1〜9.0、0.2〜8.0又は0.3〜7.0等)を採りうる。即ち、配合量比率の上限値は9.9、9.8、9.7、9.6、9.5、9.0、8.0、7.0、又は6.0等に設定することができ、下限値は0.1、0.15、0.2、0.3、又は0.4等に設定することができる。
【0033】
<(C)IOBが0.5以上の油分>
本発明の水中油型乳化日焼け止め化粧料では、上記必須成分に加え、(C)IOBが0.5以上の油分をさらに配合することにより、水分と接する前の紫外線防御能(以下、初期の紫外線防御能)を高め、なおかつ水浴前後の紫外線防御能の向上幅及び向上速度を更に高めることができる。
【0034】
IOB値とは有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比(Inorganic Organic Balance)であり、「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。有機概念図とは、すべての有機化合物の根源をメタン(CH
4)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値、無機性値を求め、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである(「有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生著、三共出版、1984)参照)。
【0035】
本発明で用いられる(C)IOBが0.5以上の油分(以下において、単に「(C)成分」と称する場合がある)としては、コハク酸ジエトキシエチル、ジネオペンタン酸アルキレンポリグリコール等のエステル油、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)及びポリブチレングリコール(PBG)等のポリアルキレングリコールを含むアルキレンオキシド誘導体等の従来から化粧料に使用されているものでよい。
【0036】
本発明においては、特にアルキレンオキシド誘導体、中でも以下の式(I)で表されるランダム型アルキレンオキシド誘導体を用いるのが好ましい。
R
1O−[(AO)
m(EO)
n]−R
2 (I)
(式中、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、mおよびnはそれぞれ前記オキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合が、20〜80質量%である。炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。R
1およびR
2は同一もしくは異なっていてもよい炭素数1〜4の炭化水素基または水素原子であり、R
1およびR
2の炭化水素基数に対する水素原子数の割合が0.15以下である。)
【0037】
式(I)のアルキレンオキシド誘導体において、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。EOはオキシエチレン基である。mは炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1≦m≦70、好ましくは2≦m≦50である。nはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、1≦n≦70、好ましくは5≦n≦55である。
【0038】
また、炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、20〜80質量%であることが好ましい。エチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドの付加する順序は特に指定はない。またオキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。好ましくはランダム状に付加されているものが挙げられる。
【0039】
R
1およびR
2は炭素数1〜4の炭化水素基もしくは水素原子で、炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基である。炭素数5以上の炭化水素基では本発明の効果が低下する傾向がある。R
1、R
2は、同一であっても異なっていても良い。
【0040】
R
1およびR
2はそれぞれ1種のみを用いても、炭素数1〜4の炭化水素基と水素原子とが混在しても、炭素数1〜4の炭化水素基が混在しても良い。但し、R
1およびR
2の炭化水素基のうち、炭化水素基と水素原子の存在割合は、炭化水素基の数(X)に対する水素原子の数(Y)の割合Y/Xが0.15以下、好ましくは0.06以下である。
【0041】
式(I)のアルキレンオキシド誘導体は公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下でエーテル反応させることによって得られる。
【0042】
式(I)のアルキレンオキシド誘導体の具体例としては、POE(9)POP(2)ジメチルエーテル、POE(14)POP(7)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジメチルエーテル、POE(6)POP(14)ジメチルエーテル、POE(15)POP(5)ジメチルエーテル、POE(25)POP(25)ジメチルエーテル、POE(7)POP(12)ジメチルエーテル、POE(22)POP(40)ジメチルエーテル、POE(35)POP(40)ジメチルエーテル、POE(50)POP(40)ジメチルエーテル、POE(55)POP(30)ジメチルエーテル、POE(30)POP(34)ジメチルエーテル、POE(25)POP(30)ジメチルエーテル、POE(27)POP(14)ジメチルエーテル、POE(55)POP(28)ジメチルエーテル、POE(36)POP(41)ジメチルエーテル、POE(7)POP(12)ジメチルエーテル、POE(17)POP(4)ジメチルエーテル、POE(9)POB(2)ジメチルエーテル、POE(14)POB(7)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジエチルエーテル、POE(10)POP(10)ジプロピルエーテル、POE(10)POP(10)ジブチルエーテル等が挙げられる。本発明においては、ポリオキシエチレン(POE)/ポリオキシプロピレン(POP)ジメチルエーテルが好ましく使用されるが、これらに限定されない。
なお、上記POE、POP、POBは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンの略である。
【0043】
本発明におけるアルキレンオキシド誘導体は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)及びポリブチレングリコール(PBG)等のポリアルキレングリコールを包含する。
【0044】
本発明におけるポリアルキレングリコールは、ポリオキシブチレン(9)ポリオキシプロピレン(1)グリコール等のポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等を含み、化粧料等の皮膚外用剤に使用可能なものから適宜選択されるが、分子量300以上のものが好ましく、分子量1000以上のものが更に好ましい。分子量の上限値は特に限定されないが、例えば、分子量20000以下、5000以下、又は2500以下のものが好適に用いられる。
【0045】
本発明におけるアルキレンオキシド誘導体は、一種または二種以上を任意に選択して用いることができるが、式(I)のアルキレンオキシド誘導体であるポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンジメチルエーテル、中でも、ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテルを含めるのが特に好ましい。
【0046】
本発明の化粧料における(C)成分のIOB値の上限値は、特に限定されないが、例えばIOB=3.0以下程度の油分が好ましく用いられる。
(C)成分を配合する場合の配合量は、特に限定されないが、例えば、0.005〜20質量%、0.5〜10質量%、又は0.1〜5質量%の範囲で配合することにより、水分と接触してから紫外線防御能向上効果を発揮するまでの時間が短縮される。
【0047】
本発明の水中油型乳化日焼け止め化粧料は、上記必須成分以外に、化粧料に通常用いられる成分、例えば、保湿剤、増粘剤、粉末、アルコール、天然高分子、合成高分子、糖類、酸化防止剤、緩衝剤、各種抽出液、安定化剤、防腐剤、色素、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
ただし、界面活性剤を5.0質量%を超えて配合すると水に接触した場合に塗布膜自体が流れてしまう場合があるため、界面活性剤の配合量は5.0質量%以下とするのが好ましく、本発明は界面活性剤を含まない態様も包含する。
【0048】
本発明の水中油型乳化日焼け止め化粧料の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、油相を構成する成分と水相を構成する成分とを別々に混合し、水相に油相を加えて攪拌乳化することにより調製することができる。
【0049】
本発明の組成物は、水中油型乳化物が元来有するみずみずしい使用感触および優れた洗浄性を持ち、なおかつ水に接触して紫外線防御能が向上するという特異な効果を発揮するため、新規なタイプの水中油型乳化日焼け止め化粧料としての用途に特に適したものである。
【0050】
本発明の水中油型乳化日焼け止め化粧料は、例えば日焼け止めクリーム、日焼け止め乳液、日焼け止めローションとして提供できるのみならず、日焼け止め効果を付与したファンデーション、化粧下地、メーキャップ化粧料、毛髪化粧料等としても使用できる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は全量に対する質量%を表す。
【0052】
(実施例および比較例)
実施例および比較例に示す水中油型乳化日焼け止め化粧料は、水性成分を必要に応じて加温して溶解した水相に、別途油性成分を適宜加温して溶解した油相を添加し、攪拌処理にて乳化することにより調製した。
【0053】
紫外線防御効果の測定
測定プレート(Sプレート)(5×5cmのV溝PMMA板、SPFMASTER−PA01)に各例の化粧料(サンプル)を2mg/cm
2の量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥した後、その吸光度を株式会社日立製作所製U−3500型自記録分光光度計にて測定した。紫外線吸収のないグリセリンをコントロールとし、吸光度(Abs)を以下の式で算出した。
Abs=−log(T/To)
T:サンプルの透過率、To:グリセリンの透過率
測定したプレートを硬度50〜500の水に十分に浸し、30分間そのまま水中で撹拌した(3−1モーターで300rpm)。その後、表面の水滴がなくなるまで15〜30分程度乾燥させ、再び吸光度を測定し、水浴前後の吸光度(Abs)積算値からAbs変化率(以下の式)を紫外線防御能向上効果として算出した。
紫外線防御能向上効果:
Abs変化率(%)=(水浴後のAbs積算値)/(水浴前のAbs積算値)×100
【0054】
本発明においては、前記Abs変化率が100(%)を超えた場合に、紫外線防御効果が向上したものと定義する。
【0055】
(実施例1、2および比較例1〜5)
下記の表1に掲げた組成を有する化粧料を調整し、水浴前後のAbs積算値およびその変化率を求めた。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示されるように、(A)紫外線防御剤及び(B)脂肪酸の配合量が同一であっても、(B)脂肪酸の中和率が51%を超える場合(比較例1〜5)には、水浴後の紫外線防御効果が低下した。これに対し、(B)脂肪酸の中和率が51%以下の場合(実施例1〜2)には、水浴後の紫外線防御効果が水浴前と比較して約24%も増加した。
【0058】
(実施例3、4)
下記の表2に掲げた組成を有する化粧料を調整し、水浴前後のAbs積算値およびその変化率を求めた。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示されるように、(A)成分および(B)成分のみを含む場合(実施例1)と比較して、(C)IOBが0.5以上の油分をさらに含む場合(実施例3〜4)には、水浴前の紫外線防御効果が有意に向上すると共に、水浴前後での紫外線防御効果の向上幅(Abs変化率)も有意に増大した。
【0061】
(実施例5〜15、比較例6)
下記の表3および表4に掲げた組成を有する化粧料を調整し、水浴前後のAbs積算値およびその変化率を求めた。
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
表3および表4に示すように、脂肪酸の種類および配合量あるいは他の配合成分の組み合わせ等を変更しても、請求項1に記載した要件を満たしている限り、いずれの化粧料も水浴前と比較して水浴後に紫外線防御効果が向上するという本発明特有の効果が得られた。しかしながら、「紫外線防御剤」と「脂肪酸」との配合量比率が10.0となる比較例6では、水浴後に紫外線防御効果が向上するという本発明特有の効果が得られなかった。
【0065】
(実施例16〜23)
下記の表5に掲げた組成を有する化粧料を調整し、水浴時間を30秒間、1分間、5分間とした場合の、水浴前後の吸光度変化率を求めた。結果を表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
表5に示した結果から明らかなように、IOBが0.5以上の油分を含まない実施例16では、5分間水浴させた後に変化率が100%を超えたのに対し、IOBが0.5以上の油分を0.1質量%含む実施例17では1分間の水浴で変化率が100%を超えた。さらに、IOBが0.5以上の油分の配合量を1質量%及び5質量%とした実施例18〜23では、僅か30秒間の水浴で変化率が100%を超えた。即ち、IOBが0.5以上の油分を添加することによって、水浴による紫外線防御能向上効果の発現速度が上昇することが確認された。
【0068】
(実施例24、25)
下記の表6に掲げた組成を有する化粧料を調製し、水浴時間を30分間とした場合の、水浴前後の吸光度変化率を求めた。結果を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
表6に示すように、紫外線防御剤(成分(A))の種類又は配合量を変更しても、本発明の要件を満たしている限り、いずれの化粧料も水浴前と比較して水浴後に紫外線防御効果が向上するという本発明特有の効果が得られた。
【0071】
実施例19の化粧料を疑似皮膚基板(凹凸のあるPMMA基板)に塗布した直後及び30分間水浴後の化粧料塗膜の断面の顕微鏡写真を
図1に示す。皮丘に塗布した直後((a)及び(b))及び皮溝に塗布した直後((c))の塗膜断面は膜の凹凸が大きく塗膜の厚みが不均一であるが、30分間の水浴後(皮丘:(d)及び(e);皮溝:(f))では塗膜が緻密かつ均一になったことが確認できる。
【0072】
以下に本発明の化粧料の他の処方例(実施例26〜28)を示す。以下の処方例に記載した化粧料においても、水浴前と比較して水浴後に紫外線防御効果が向上するという本発明特有の効果が観察された。
【0073】
実施例26:日焼け止めクリーム
【表7】
【0074】
実施例27:日焼け止め乳液
【表8】
【0075】
実施例28:日焼け止め乳液
【表9】