(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも2つの刺激間隔が、4Hz〜50Hzの閃光周波数を有し、1、2、4、8、10、16及び32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを有する閃光を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
前記少なくとも2つの刺激間隔が、平均網膜照度が10Td〜200Tdである少なくとも1つの刺激間隔と、平均網膜照度が400Td〜2000Tdである少なくとも1つの刺激間隔と、を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
前記少なくとも2つの刺激間隔が、平均網膜照度が10Td〜200Tdである第1の刺激間隔と、平均網膜照度が400Td〜2000Tdである第2の刺激間隔と、を含み、前記第1の刺激間隔が前記第2の刺激間隔よりも前に起こることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここに開示の実施形態は、眼の病気を検出するための改良された装置及び方法である。これらの装置及び方法は、患者の視覚系機能の指標を提供するために使用することができる。眼に向けられる光刺激を制御する電気回路及び眼の瞳孔を監視するカメラを備えることができる。光刺激は、瞳孔測定に基づいて変調することができ、例えば、瞳孔の寸法が変化すると網膜刺激の変動を減少する。
【0023】
本願発明の実施形態は、刺激をより一定にし、収集されるデータの量又は種類を改善することにより、既存の装置及び方法に比べて測定を改善することができる。眼への刺激は、閃光又は他の変調された光波形であることができる。眼への刺激は、単一の閃光であることができる。眼への刺激は、知覚的に一定であるか徐々にのみ変化する背景照明であることができる。変化する刺激条件に対する視覚系機能を評価するために、複数の刺激を使用することができる。
【0024】
瞳孔寸法を測定するためにカメラを使用することができ、それにより、瞳孔寸法の非定数関数として光刺激輝度を調節することができる。例えば、光刺激は、効果的な網膜刺激への瞳孔寸法の影響を減少するために調節することができる。例となる非定数関数は、眼の瞳孔面積の逆数に線形に関連付けして光刺激輝度を調節する、又は、非線形凹関数(non-linear, concave function)を介して眼の瞳孔面積の逆数に関連付けして光刺激輝度を調節することを含んでいる。
【0025】
光放射は、例えば、光出力を継続的に変調することにより、又は、パルス幅変調(PWM)方式の閃光を実現することにより、大体正弦、三角形、又は四角形である網膜照度を実現するように構成されることができる。代替的に、網膜照度は、刺激期間毎に1度の短い閃光から成ることができ、又は、知覚的に一定の背景照明を伴う短い閃光から成ることができる。
【0026】
装置の測定は瞳孔反応又は電気反応を含む。瞳孔の大きさ、タイミング、及び速度は、視覚的刺激により変化し、その全ては眼の病気の兆候である可能性がある。視覚的刺激に対する眼の電気反応も記録され、解析されることができる。網膜電図検査の国際標準には、網膜電図検査は人工的に拡張された患者の眼に実施されるべきであると定められているが、電気反応の測定は人工的に拡張されていない眼に実施することができる。例として、閃光と眼の電気反応のピーク時間との間の時間間隔は、患者の網膜虚血の程度のような眼の病気の兆候である可能性がある。もう1つの例としては、眼からのピーク間の電気反応は眼の病気の兆候である可能性がある。
【0027】
上記記載の組み合わせも考えられる。それらの使用の方法及び構成が考えられる。ここに記載の発明の詳細な説明により明らかになる他の方法で、実施形態は既存の装置を改善することができる。
【0028】
定義
ここに記載の実施形態をより明確に理解するために、以下に特定の用語を定義する。他の用語は、本開示の他の部分において定義されている。
【0029】
「光エミッタ」との用語は、紫外線、可視光線及び赤外線領域の電磁放射線を放射するあらゆるものを意味している。例となる光エミッタは、LED、表示装置、及びキセノン閃光電球及び蛍光灯のようなガス放電装置を含む。ここに記載のいくつかの場合において、「赤外線」との用語はIRとして省略されている。
【0030】
「LED」との用語は、発光ダイオードを意味している。LEDには、半導体、有機及び量子ドットを有するものが含まれる。用語LEDには、集積型蛍光体を有するものが含まれる。
【0031】
「患者」との用語は、生理学的信号が測定される人又は他のほ乳類を意味している。患者の視覚系の刺激を可能にし、刺激に対する生理学的反応の測定を可能にするために患者に近接して装置を配置することが考えられる。
【0032】
「拡散」との用語は、照明を参照にすると、大部分は空間的構造のない照明を意味している。例となる拡散照明は、積分球、乳白拡散ガラス、又はそのほとんどの画素においてほぼ同じ出力を生成するように構成されたディスプレイにより達成することができる。
【0033】
「網膜照度」との用語は、輝度及び瞳孔面積の積を意味している。網膜照度の測定単位はトロランド(Troland)(略語Td)であり、ここで輝度の単位はcd/m
2であり、瞳孔面積の単位はmm
2である。
【0034】
閃光と記載した時、典型的に閃光が十分に短い時(約6ms未満)、眼の反応は閃光の全エネルギーによりよく特徴付けられる。したがって、閃光はTd・sの単位の「網膜照度エネルギー」を有すると特徴付けることができ、又は、cd・s/m
2の単位の「輝度エネルギー」を有すると特徴付けることができる。
【0035】
「眼の病気」との用語は、例えば網膜症のような光受容体又はニューロンの変性を含む弱視又は網膜変性を引き起こす、もたらす、又は、関連する全ての病気、障害又は疾患を意味している。網膜症はどのような網膜症でもよく、一次的網膜症又は二次的網膜症を含み、そして、例えば網膜神経細胞の変性、神経障害、緑内障、網膜色素変性、中心静脈閉塞症、静脈分岐閉塞症、黄斑浮腫、及び糖尿病性網膜症を含む。網膜症は、網膜グリオーシス、網膜変性又はパーキンソン病及びアルツハイマー病を含む神経変性疾患に関連する網膜症、網膜分離症、加齢に伴う黄斑変性症及び緑内障を含む眼に起因する一次的網膜症、及び糖尿病性網膜症、肝性網膜症、腎性網膜症、高血圧症、血管疾患、先天性心疾患、関節リウマチを含む自己免疫疾患、多発性硬化症、神経線維腫症、ライム神経ボレリア症、ダウン症、自閉症、鎌状赤血球貧血、HIV感染及びサイトメガロウイルス感染、甲状腺疾患、又は肝障害を含む全身性疾患に起因する二次的網膜症を含む。
【0036】
「又は」との用語は、その組の少なくとも1つの要素が当てはまることを意味している。例えば、A又はBは、Aが当てはまる、Bが当てはまる、又はA及びBの両方が当てはまることを意味している。
【0037】
説明
様々な実施形態、同様に追加目的、特徴、及びその利点は、以下の説明からより完全に理解されるだろう。
【0038】
図1には、患者の視覚系機能の指標を提供するために使用される例となる装置100が図示されている。アイカップ107は、眼の周りの骨領域に接触し、患者に対して前記装置を保持することができる。光エミッタ106は、光学アセンブリ104内に光を当て、該光学アセンブリ104が患者の眼に光を向けさせる。
【0039】
この実施例においては、光学アセンブリ104が積分球の機能を果たし、光エミッタ106から放射された光を患者の眼に拡散した方法で届ける。拡散光源が、網膜の大部分の問合せを可能にし、患者の固定の重要性を低くすることができる。他の例となる光学アセンブリは、光エミッタ106から放射される光が患者の眼に達する前に反射される必要が無く、例えば、光は屈折され、拡散され、分散されることができ、又は、光エミッタと患者の眼の間に直接経路を有することもできる。いくつかの実施形態において、レンズ、すりガラス、又は半透明プラスチックのような光学素子を、光エミッタ106及び患者の眼の間の照明経路内に使用することができる。照明システムは、眼の網膜の少なくとも30%に対して、実質的に均等な照明(即ち、単純な解剖学的光学模型により計算されるような同じ照明の2倍以内で照射される)を提供することができる。いくつかの実施形態において、網膜の30%以上が照射され、例えば35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、80%以上の網膜が実質的に均等に照射される。
【0040】
光エミッタ106は、例えばRGB LED、例えば、CREE CLV6Aa、Avago ASMT−MT000−0001、又はOsram LRTD−C9TPであることができる。光エミッタ106は、例えば、CREE XLamp XM−Lのような赤、緑、青、白LEDであることができる。個別のLED又は他の光源を使用することができる。光エミッタ106内の2つのコンポーネントは前記装置100の断面内に見ることができ、もう1つの半分内にさらに2つのコンポーネントがあり、全部で4つのコンポーネントがある。光エミッタ106内のコンポーネントの数は4である必要はなく、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上であることが考えられる。光エミッタ106が有するコンポーネントの数が多いことで、積分球内の光均一性を改善し、そして、より明るい光出力を可能にするが、コンポーネントの数が多いと製造の困難性及び費用の面から不便である。
【0041】
図1に図示されているように、カメラ101は、アイカップ107及び光学アセンブリ104内の孔を通して患者の眼を撮像することができる。アイカップ107は、患者の眼の周りの領域上に配置されるように設計され、それにより、眼に達する前記装置100の外部に起因する光の量を減少する。代替的に、アイカップ107は、患者に接触しないように設計されることもできる。随意的な固定光102は、検査工程の間に患者が眼を固定するための目標を提供することができる。赤外光エミッタ103を使用した場合、そのエネルギーの少なくとも50%は、710nmよりも長い波長で放射される。赤外光エミッタ103は、カメラ101にさらされる時間の間、患者の眼を照射するために使用することができる。いくつかの実施形態において、前記装置100は、赤外光エミッタ103を有していない。
【0042】
電気測定を実施する実施形態において、患者に一組の電気接続を実施するために患者コネクタ108を使用することができ、それにより、患者から電気信号を受信することが可能になる。電気信号は、ケーブルにより前記装置100に動作的に接続されているあらゆる数の電極(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)を使用して患者から集めることができる。反応を測定するための例となる位置には、眼の表面(例えば、Burian Allen電極(Hansen Labs, コーラルビル アイオワ州、米国)、DTL電極(LKC Technologies, ゲーザーズバーグ、メリーランド州)、金箔電極(CH Electronics, ブロムリー、英国)、及び網膜電図ジェット電極(LKC Technologies, ゲーザーズバーグ、メリーランド州)のような電極により)、上皮の下(例えば、針電極により)、眼に近接した皮膚上(例えば、国際公開WO2014/039525に記載のLKCセンサストリップ電極(LKC Sensor Strip electrodes)により)、後頭部又は頭頂部上(例えば、ゴールドカップ電極(例えば、Natus Neurology Inc., - ガラス製品、ウォリック、ロードアイランド州、米国)を使用して)が含まれる。
【0043】
図2には、以前にUS7540613において示されていたように、
図1の前記装置100内に含まれるコンポーネントの概略図である。
図2においては、光エミッタ106が眼144に光刺激を提供する。電流高輝度LEDは、効果的な拡散器と共に本発明を実施するために十分な輝度を有するが、特定の応用においては、光エミッタ106に複数のLEDを使用することができる。
【0044】
光エミッタ106は、前記装置100全体の制御を提供するコントローラ110により制御される。コントローラは、プロセッサ、メモリ、及び前記装置100の他のコンポーネントへの他の接続を有するマイクロコントローラ又はマイクロコンピュータ装置であることができる。コントローラ110は、事前にプログラムされたコンピュータであることができ、ここに記載の制御及び機能を実施するようにプログラムされる。代替的に、コントローラ110は、(例えば、追加機能又は更新のための)遠隔プログラミングを可能にする無線接続又は有線接続を含むことができる。当業者には、コントローラ110をどのようにプログラミングし、動作させるか理解できるであろう。光エミッタ106の制御はコントローラ110により実施され、コントローラ110は、後述するように、光源及びカメラ光源の点灯のタイミング、並びにこれらの強度、周波数及び同期を制御することができる。例として、コントローラ110は、LED等の光エミッタ106の動作を変調して、所定の時間幅の一連の短い閃光を提供することができるが、後述するように、他の刺激波形又は刺激周波数を使用してもよい。
【0045】
光エミッタ106は、球状散光反射体142の内部に光を放射するように配置され、これによって、光源からの光は、あらゆる方向から眼144に向かって一様に方向付けられる。図示されている実施形態において、球状散光反射体142は、反射率を高めるために白色の内表面を有するように構成された球状体である。白色の表面は、コーティングであってもよく(例えば、塗料)、又は、例えば、白色プラスチックによって球状散光反射体142を形成してもよい。球状散光反射体142を使用することによって、眼144の網膜の大部分に均等な照明を行うことができる。球状散光反射体142は、光学アセンブリ104の一例である。
【0046】
図2を再度参照にして、上述したように、光エミッタ106による光刺激によって、瞳孔反応及び眼144からの電気信号を発生させることができる。瞳孔反応はカメラ101により感知することができる。電気信号は、例えば、眼144に近接する患者の皮膚に接触する電極132,134によって感知することができ、更にこの電気信号は、ワイヤ148を介して、ブロック150として示す増幅器及びアナログ/デジタル(A/D)変換器に伝達される。(例えば、
図1の電子回路基板109上に配設されている)A/D変換器は、電極上の電気信号を測定し、コントローラ110に情報を提供することができる。コントローラ110は、瞳孔反応及び/又は電気信号を解析することができ、それにより、眼の病気の指標を提供することができる。
【0047】
上述したように、電極132,134によって感知される電気信号からのデータの解析は、コントローラ110によって実行される。特に、患者の網膜虚血を評価するためのいくつかのアルゴリズムが既に発表されている。例えば、このようなアルゴリズムは、Severns他(1991年)、Severns及びJohnson(1991年)、Kjeka他(2013年)等に開示されている。他の病気に関しては、背景技術の部分で紹介した引用文献にいくつかのアルゴリズムが記載されている。
【0048】
前記装置100(
図1)の更なるコンポーネントとして、各検査を開始し、そして設定をカスタマイズするために使用される操作子120を備えることができる。更に、装置100は、各検査の結果をユーザに視覚的に表示するディスプレイ118を備えることができ、すなわち、ディスプレイ118は、眼の網膜虚血の量に関連する情報をユーザに視覚的に表示する。
【0049】
随意的な増幅器及びA/D変換器150は、16ビット(又はこれ以上)のA/D変換器を用いる生体増幅器(biomedical amplifier)であってもよく、これによって、従来の増幅器の利得調整及び飽和からの回復の遅延を排除することができる。前記装置100は、(32倍を超えない)低利得差動増幅器と、高分解能(通常、18ビット以上)の差動A/D変換器とを用いて、皮膚電極132,134を介して、眼144から信号を取得することができる。したがって、増幅器は、入力波形を非常に忠実に再生しながら、雑音及びオフセットに対する許容度が高い。いくつかの実施形態において、増幅器及びA/D変換器は、同じ装置に組み込むことができる(例えば、テキサスインスツルメンツ社(Texas Instruments)から入手できるADS1220,ADS1248,ADS1292,ADS1294,ADS1298又はADS1299、又はアナログデバイス社(Analog Devices)から入手できるAD7195,AD7194,AD7193,AD7799,AD7738)。いくつかの実施形態においては、増幅器を使用しない。システムの入力インピーダンスは、非常に高く(>10MΩ)、このため、皮膚に接触する電極132,134の比較的高いインピーダンスは、結果に大きく影響しない。ブロック150内のA/D変換器の出力はコントローラ110に接続され、コントローラ110がデータを解析する。
【0050】
1つの眼のために用いられる全ての電極は、国際公開WO2014/039525に記載されているような自己接着型電極アレイ(self-adhering electrode array)内に好適に設けることができ、この開示は、引用によって本願に援用されるものとする。
【0051】
随意的に、赤外光エミッタ103を用いて、赤外線スペクトルで眼を撮像してもよい。赤外線照射によって、瞳孔と虹彩との間のコントラストが向上する。コントローラ110は、赤外光エミッタ103からの光放射を変調し、赤外閃光を生成する。赤外閃光の継続時間は、一定であってもよく、又は、動作中に動的に変更してカメラ101への露光を変化させてもよい。いくつかの実施形態における典型的な露光時間は、2.6msである。しかしながら、コントローラ110は、例えば、センサからのフィードバックに基づいて、露光時間を変更することができる。
【0052】
通常、露光時間が短い方が、画像のモーションブラーが少なくなり、外部光の影響も少なくなるという点で好ましいが、露光時間を短くすると、前記装置100のピーク電力要求が高まり、カメラ101に供給される光が少なくなるという問題もある。
【0053】
電子回路基板109はコントローラ110を有することができ、コントローラ110は、光エミッタからの光放射を変調して、20Hz〜40Hzを含む4Hz〜50Hzの刺激周波数を有する光刺激を生成することができる。これらの周波数は、光の変化の電気反応を瞳孔反射の融合周波数よりも高い瞳孔測定と同時に測定することを可能にする。知覚的に一定の光を提供するために50Hzよりも高い周波数を使用することができる。動的瞳孔又は電気反応を測定するために4Hzよりも低い周波数を使用することができる。
【0054】
いくつかの場合、例えば、光刺激によって生成される照明と赤外閃光との相互作用が一貫性を有するように、刺激周波数と赤外閃光周波数との間のタイミングを制御することが有利である。2つの周波数間のタイミングを制御する他の潜在的利点は、ピークパワーの低減、より少ない色収差によるコントラストの向上、可視光及び赤外光に敏感なカメラを用いる実施形態における照明レベルの変化の抑制等がある。時間同期がない場合、可視光と赤外光に敏感なカメラを用いる実施形態の照明レベルは、可視光と赤外光の周波数との間のうなり周波数で変化する。
【0055】
光エミッタ106は、患者の視覚系を刺激できる可視光を生成する。幾つかの実施形態では、光エミッタ106は、26.94、27.13、27.32、27.51、27.70、27.90、28.10、28.31、28.51、28.72、28.94、29.15、29.37、29.59、29.82、30.05、30.28、30.52、30.76、31.00、31.25、31.50、31.76、32.02、32.28、32.55、32.83、33.10、33.67Hz又はその整数倍の周波数の中の1つの0.01Hz以内の刺激周波数を有する周期的な光刺激を生成する。他の周波数を用いてもよい。異なる刺激間隔で、同じ又は異なる刺激周波数を用いることもできる。
【0056】
いくつかの実施形態において、光エミッタ106は、28.31、28.72、32.55Hz又はこれらの整数倍の周波数の0.1Hz以内の刺激周波数を有する光刺激を生成する。他の実施形態において、光エミッタ106は、約50Hz以上の周波数で閃光を生成することができ、付加的な光を40Hzより低い周波数で生成することができ、これによって、一定の背景光上で光が点滅するように見せてもよい。例えば、前記装置100は、28.31Hzの0.01Hz以内の周波数で点滅する光と、283.06Hzの0.1Hz以内の周波数で知覚的に一定の背景光とを生成することができる。いくつかの実施形態において、光エミッタ106は、刺激周波数が7Hzより高い光刺激を生成する。
【0057】
いくつか又は全ての間隔において、ゼロ以外の網膜背景照度を用いることもでき、又は、ゼロ以外の網膜背景照度を用いないこともできる。例えば、ISCEV ERG標準(Marmor他(2009年))は、特定の検査において、ロッドの影響を減少するためにゼロ以外の網膜背景照度を推薦している。閃光周波数は、測定反応上のロッドの影響を減少するもう1つの方法である。なぜなら、ロッドの臨海融合周波数は、円錐の臨海融合周波数よりも低いからである。
【0058】
閃光及び(存在する場合)背景色は、白色又は非白色となるように考えられる。白色閃光及び背景は、赤、緑、及び青の光エミッタから合成することができ、又は、例えば白色LEDから白色閃光及び背景を放射することができる。有色刺激は、特定の光受容体を他の光受容体よりも刺激する場合に有用である。
【0059】
実施形態において、光刺激は、瞳孔面積の非定数関数であることができ、即ち、前記装置により放射された輝度刺激は、測定瞳孔面積に基づいて変化するものである。
【0060】
図3は、視覚刺激の輝度と瞳孔面積との間の例示的な関係を示しており、
図3Aは、前記装置100から放射される光と、瞳孔面積の間の関係を示しており、
図3Bは、網膜照度と瞳孔面積との間の関係を示している。曲線201は、瞳孔面積から独立した閃光の輝度を示している。この場合、曲線211に示すように、眼に入る光の総量は、瞳孔面積に対して直線的に変化する。幾つかの実施形態では、光刺激は、眼の瞳孔面積の逆数に線形に関連付けることができる。例えば、瞳孔サイズの如何にかかわらず眼に入るエネルギーが一定になるように光刺激を設定することができる。曲線203、213は、眼に入る光量が一定である関係を示している。
【0061】
他の実施形態では、光刺激は、非線形凹関数を介して眼の瞳孔面積の逆数に関連付けることができる。非線形凹関数を用いることによって、瞳孔の中心から外れた位置に入射する光に対する眼の感度の低下を補償することができる(例えば、スタイルス−クロフォード(Stiles-Crawford)効果)。これらの場合、面積増加に伴って減少する光の量が瞳孔面積の増加の量より小さい。曲線202、212は、この関係を示しており、瞳孔の中心に入らない光のために網膜を刺激する効果が低下することにより、瞳孔面積が増加するにつれて、眼に入る光量が緩やかに増加している。
【0062】
電子回路基板109内のコントローラ110は、どのような既知の技術でもよい。コントローラ110は、単一のマイクロプロセッサでもよく、例えば、Analog Devices, Atmel, Intel, Microchip, Texas Instruments等により販売されているものであることができる。代替的に、コントローラ110は前記装置100内の1つ以上のプリント回路基板上の多数の集積回路内に分布させることができる。コントローラ110は、光エミッタの光出力を変調し、そして、患者から電気信号を受信して解析するように構成されることができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、コントローラ110は、カメラと通信して、カメラにより撮影された画像内の瞳孔サイズを測定することができる。いくつかの実施形態において、コントローラ110は、第2の光エミッタ、第3の光エミッタ又は赤外光エミッタのような付加的な光エミッタからの光出力を変調することができる。コントローラ110は、ディスプレイを用いて、又は、コンピュータ又は他の電子機器に情報を通信する手段を用いて、人の眼の病気の指標をオペレータに提供することができる。
【0064】
実施形態は、既存の視覚電気生理学装置を改善することができる。照明システムは、閃光周波数、閃光色、背景網膜照度、背景色、及び網膜照度エネルギーから選択される特性の少なくとも1つが異なる閃光の2つの間隔を提供することができる。刺激の複数の間隔を用いることの利点は、複数の間隔は内部制御をもたらすことである。電極配置及び特定の刺激エラーのような変数は、異なる視覚刺激を有する複数の間隔を解析することにより部分的に補償することができる。
【0065】
Satoh他(1994年)は、3つの異なる閃光輝度エネルギー(3.28cd・s/m
2、1.04cd・s/m
2、及び0.328cd・s/m
2)を検査した。これらのデータは、閃光及び眼の電気反応の間の陰的時間の(個々にわたる)平均において違いを示したが、個々のタイミングについては違いを示さず、1つ以上の強度を用いることが有用であるとは示していない。Satoh他は、国際標準(Marmor他、2009年)により推薦されているように、対象の眼を完全に拡張させたが、この実施は、瞳孔反応の測定を妨げるものである。
【0066】
ここに記載の装置及び方法は、視力を脅かす糖尿病性網膜症を検出するために使用することができる。Bresnick及びPalta(1987年)、Han及びOhn(2000年)、及びSatoh他(1994年)に示されているように、30Hzフリッカー網膜電図検査の陰的時間は、糖尿病性網膜症と相関する。これらの研究者は全て、患者の網膜電図を測定する前に患者の眼を人工的に拡張させていた。米国眼科学会(The American Academy of Ophthalmology) (AAO、2003年)は、深刻な非増殖性糖尿病網膜症又はより悪い増殖性糖尿病網膜症等(視力を脅かす糖尿病性網膜症)の治療を推奨している。上述のように、視覚刺激の少なくとも2つの間隔を用いることで、視力を脅かす糖尿病性網膜症を検出するための改善された性能を有することができる。
【0067】
前記装置内のコントローラは、検査されている患者の視覚系からの瞳孔反応又は電気反応を測定することができ、視覚系機能の指標を提供することができる。閃光周波数は、4〜50Hzであることができる。両方の間隔の網膜照度エネルギーは、1、2、4、8、16及び32Td・sの1つの1.2倍以内である。1Td・sより低い網膜照度エネルギーは、非常に小さな電気反応しか生成しないので、正確に測定するのが困難なものである。32Td・sより大きな網膜照度エネルギーは、一部の患者にとって煩わしいほどに明るいものである。
【0068】
いくつかの実施形態において、両方の間隔は、4、8、16又は32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを使用する。いくつかの実施形態において、両方の間隔は、4又は8Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを使用する。いくつかの実施形態において、両方の間隔は、4又は16Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを使用する。いくつかの実施形態において、両方の間隔は、4又は32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを使用する。いくつかの実施形態において、両方の間隔は、8又は16Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを使用する。いくつかの実施形態において、両方の間隔は、8又は32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを使用する。いくつかの実施形態において、両方の間隔は、16又は32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを使用する。
【0069】
いくつかの実施形態において、照明システムは、閃光の3つの間隔を提供し、それぞれの間隔が、1、2、4、8、16及び32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを有する。いくつかの実施形態において、3つの間隔のそれぞれが、4、8、16又は32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを有する。いくつかの実施形態において、3つの間隔のそれぞれが、4、8又は16Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを有する。いくつかの実施形態において、3つの間隔のそれぞれが、4、8又は32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを有する。いくつかの実施形態において、3つの間隔のそれぞれが、4、16又は32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを有する。いくつかの実施形態において、3つの間隔のそれぞれが、8、16又は32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを有する。
【0070】
いくつかの実施形態において、照明システムは、閃光の4つの間隔を提供し、それぞれの間隔が、1、2、4、8、16及び32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを有する。いくつかの実施形態において、4つの間隔のそれぞれが、4、8、16又は32Td・sの1つの1.2倍以内の網膜照度エネルギーを有する。
【0071】
いくつかの実施形態において、コントローラ110は、カメラ101から受信した画像を使用して眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の非定数関数として光エミッタ106から放射される光の輝度を調節し、それにより、複数の刺激間隔を生成する。少なくとも2つのこれらの刺激間隔は、異なる刺激に対する瞳孔反応を測定するために、これらの平均網膜照度が異なることができる。瞳孔反応のいくつかの潜在的測定基準は、2つ以上の刺激間隔の一部における瞳孔の面積又は直径(最大、最小、平均、割合、部分変化等)、薄暗い網膜照度からより明るい網膜照度への変化に伴う瞳孔の収縮速度、より明るい網膜照度から薄暗い網膜照度への変化に伴う瞳孔の拡張速度、乱れの大きさ、瞳孔乱れの曲線下の面積、瞳孔乱れの期間、瞳孔対光反射の待ち時間、又は瞳孔反応の融合周波数を含む。これらの測定基準のいくつかの詳細な説明は、例えば、Straub(1994年)を参照。
【0072】
いくつかの実施形態において、少なくとも2つの刺激間隔は、平均網膜照度が10Td〜200Tdである第1の刺激間隔、及び、平均網膜照度が400Td〜2000Tdである第2の刺激間隔を含む。例えば、第1の刺激間隔は、40Td〜200Tdの平均網膜照度を有している。閃光(例えば点滅光)において、平均網膜照度は、網膜照度エネルギー及び閃光周波数の積と等しくなる。例えば、28.3Hzの点滅光の閃光の網膜照度エネルギーが32Td・sである場合、平均網膜照度は905.6Tdである。少なくとも2つの刺激間隔は、両方とも1秒〜120秒の継続時間を有することができ、例えば、1秒〜30秒、又は2秒〜20秒、又は5秒〜15秒の継続時間を有することができる。いくつかの実施形態において、間隔の長さは、電気反応の解析に基づいて変化することができる。電気反応における不確定要素が少ない場合、電気反応おける不確定要素が多い場合に比べて、より短い継続時間が用いられる。
【0073】
いくつかの実施形態において、2つの刺激間隔は、改善された正確性及び誤差推定のための反復測定を可能にするために、2回以上繰り返される。いくつかの実施形態において、反復数は誤差推定に基づいて変化する。
【0074】
いくつかの実施形態は、患者の眼の病気の指標を提供するために測定基準の組み合わせを使用する。測定基準が病気又は他の測定基準と相関することが単独で知られていても、組み合わせを用いることによる結果の改善の先験的保証はない。例えば、Straub(1994年)は、瞳孔反応の多数の測定基準が糖尿病患者及び通常の個人の間で相違することを発見した。しかしながら、そのほとんどは互いに相関しており、したがって、付加的な診断情報を提供するものではない。Severns及びJohnson(1993年)は、30Hzのフリッカー網膜電図の陰的時間が網膜中心静脈閉塞症(CRVO)と相関しており、そして、陰的時間は年齢にも依存していることを発見したが、年齢及び陰的時間の組み合わせは、網膜中心静脈閉塞症を検出する診断性能を統計的に大いに改善するものではなかった。以下の例に示されているように、ここに記載の新規の刺激により、瞳孔及び電気測定並びに患者の年齢の多数の組み合わせは、部分的組み合わせに比べて改善された性能を示すものである。
【0075】
例となる眼の病気は、網膜炎、視神経炎、黄斑変性症、糖尿病性網膜症、増殖性糖尿病網膜症、非増殖性糖尿病網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、進行性網膜萎縮症、進行性網膜変性症、突発性後天性網膜変性症、免疫介在性網膜症、網膜形成異常、脈絡網膜炎、網膜虚血、網膜出血、高血圧性網膜症、網膜炎症、網膜浮腫、網膜芽細胞腫、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分岐閉塞症、又は、網膜色素変性症を含む。例えば、眼の病気は糖尿病性網膜症又は糖尿病性黄斑浮腫であることができる。
【0076】
上記記載は構成を重視しているが、これらの使用方法も考えられる。眼の病気の指標を提供するために、前記方法は、異なるゼロ以外の平均網膜照度を有する少なくとも2つの刺激間隔を有する拡散光刺激により患者の眼を照射することを含む。前記方法は、眼の瞳孔面積を測定し、そして、眼の瞳孔面積の非定数関数として光の輝度を調節することを含む。前記方法は、瞳孔測定に基づいて、眼の病気の指標を提供することをも含む。視覚系から測定された電気反応及び患者の年齢も、眼の病気の指標を提供するための解析に使用することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、非定数関数は瞳孔面積の逆数に線形に関連付けられる。他の実施形態において、非定数関数は瞳孔面積の逆数の非線形凹関数である。
【0078】
眼の病気の指標を提供する方法は、4Hz〜50Hz、例えば20Hz〜40Hzのフリッカー周波数を有する点滅光から成る少なくとも2つの刺激間隔を含むことができる。少なくとも2つの刺激間隔の両方は、1秒〜30秒、例えば2秒〜20秒の継続時間を有することができる。少なくとも2つの刺激間隔は、平均網膜照度が10Td〜200Tdである第1の刺激間隔、及び、平均網膜照度が400Td〜2000Tdである第2の刺激間隔を含む。例えば、第1の刺激間隔は、40Td〜200Tdの平均網膜照度を有することができる。
【0079】
前記方法はさらに、患者の視覚系から電気信号を受信して解析することを含み、指標は電気信号及び瞳孔測定の解析に基づくものである。有利なことに、いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの刺激間隔の瞳孔測定及び電気信号の両方が眼の病気の指標のための解析に使用され、それにより、例えば検査時間を減少することができる。
【0080】
実施例1:人における陰的時間の測定
IRB(治験審査委員会)認可プロトコルを使用し、36人の人が、1、3.2、10及び32Td−sを含む30Hzの点滅光を有する4つの照明レベルにより検査された。
図4は、3.2Td−sデータ及び10Td−sデータの結果の散布図を示し、陰的時間が描かれている。陰的時間とは、閃光及び電気反応の間の時間遅延である。ここで、我々は時間遅延を反応の基本のピークまで解析し(Severns他、1991年)、他の人々は時間遅延を波形のピークまで使用した(Marmor他、2009年)。これらのデータから、視覚機能の指標を得ることができる。対象の眼は人工的に拡張されていない。
【0081】
実施例2:糖尿病性網膜症の検出
実施例1において検査された人々は、臨床的評価を通して彼らの糖尿病性網膜症のレベルの観点から分類される。36人の内、2人が視力を脅かす糖尿病性網膜症(深刻な非増殖性糖尿病網膜症)を有していた。深刻な非増殖性糖尿病網膜症(NPDR)は、視力を脅かす糖尿病性網膜症(VTDR)の最軽症型である。目標は、視力を脅かす糖尿病性網膜症(即ち、深刻な非増殖性糖尿病網膜症又はより悪い増殖性糖尿病網膜症等)を中程度の非増殖性糖尿病網膜症、軽度の非増殖性糖尿病網膜症、及び網膜症のない(正常な)糖尿病から区別することである。Bresnick及びPalta(1987年)、Han及びOhn(2000年)及びSatoh他(1994年)のような先行技術の方法は、1つの刺激条件、拡張された瞳孔、及び、瞳孔サイズ測定により調節されていない照明を使用することにより、病気と健康の間の切り分けを形成した。
図4の破線及び点線は、1つの刺激条件のみを使用するものである。10Td−s閃光を使用した場合、全ての視力を脅かす糖尿病性網膜症の患者は一方の側に存在し、他方の側に全ての健康な患者が存在する切り分け点は存在せず、検査は100%の感度及び特異性を有していないものである。図示されている例において、5人の健康な人が病気であると分類され、病気な人の1人が健康であると分類され、67%の感度及び30/35=86%の特異性をもたらしている。3.2Td−s閃光を使用した場合、感度は100%であり、特異性は29/35=83%である。両方の陰的時間を使用した場合、実線で示されているように、100%の感度を提供し、31/35=89%の特異性を提供する。
【0082】
実施例3:装置及び装置検査プロトコル
第2のIRB認可臨床試験のために、
図1及び
図2に記載の前記装置は構成されている。前記装置は、商品名RETeval(LKC Technologies, ゲーザーズバーグ, メリーランド州)を有している。この装置を使用して、患者の眼は視覚的に刺激をされることができる。瞳孔及び電気反応は、ランダムな順序で提供された4組の点滅白色光刺激について同時に記録された。4組全ては、4Td・s、8Td・s、16Td・s及び32Td・sの閃光網膜照度エネルギーを含む約28.3Hzのフリッカー周波数を有する。したがって、平均網膜照度は、113Td、226Td、453Td及び906Tdである。結果は、患者の右目、左目、両目、最も良い眼、又は最も悪い眼について提示することができる。以下の実施例においては、最も悪い目が使用された。最も悪い眼は、より長い陰的時間、より小さい電気振幅、そしてより小さい瞳孔比率として定義される。電気反応からの陰的時間は、閃光の中心から電気反応のピークまで測定される。市販のRETeval装置は、眼の病気を検出するために瞳孔反応を解析するものではない。対象の眼は人工的に拡張されない。
【0083】
実施例4〜7は、優先権主張出願US61/953,409の出願時に利用可能な臨床試験データを利用したものである。実施例8は、調査における全ての臨床試験データを利用したものである。
【0084】
実施例4:網膜症のない糖尿病患者に対する結果
現場外の医者ではない専門家の複数の評価者(裁定により2度読み)によって7フィールドステレオ眼底撮影を用いて、75人の糖尿病患者が両目に網膜症を患っていないこと(ETDRSの点数が10)が確認された。
【0085】
(最も薄暗いものから最も明るいものまで)4つの網膜照明に対する瞳孔直径の二乗の平均は、10.3mm
2、7.96mm
2、5.94mm
2、及び4.58mm
2である。最も薄暗い網膜照明から最も明るい網膜照明に対する瞳孔直径の二乗の平均比は、2.23であり、標準偏差は0.56である。
【0086】
(最も薄暗いものから最も明るいものまで)4つの網膜照明に対する電気反応からの平均陰的時間は、35.4ms、33.2ms、31.7ms、及び30.1msである。最も明るい網膜照明からの陰的時間は、2.9msの標準偏差を有する。
【0087】
(最も薄暗いものから最も明るいものまで)4つの網膜照明に対する電気反応の平均ピーク間振幅は、9.7μV、17.3μV、21.9μV、及び24.5μVである。最も明るい網膜照明に対する標準偏差は9.1μVである。
【0088】
実施例5:網膜中心静脈閉塞症を患う患者の結果
実施例1に記載の検査が実施された日と同じ日に、1人の患者は網膜中心静脈閉塞症(CRVO)を有すると特定された。
【0089】
(最も薄暗いものから最も明るいものまで)4つの網膜照明に対する瞳孔直径の二乗は、10.8mm
2、10.8mm
2、8.98mm
2、及び9.28mm
2である。最も薄暗い網膜照明から最も明るい網膜照明に対する瞳孔直径の二乗の平均比は、1.16である。重要度の符号付き順位検定を用いると、この瞳孔比率は、健康な人で構成される集団(p=10
−13)より統計的にかなり小さい。事実、この瞳孔比率は、網膜症を患っていない75人の患者から得られた最小値よりも小さいものである。
【0090】
(最も薄暗いものから最も明るいものまで)4つの網膜照明に対する電気反応からの陰的時間は、36.1ms、33.5ms、32.2ms、及び30.6msである。重要度の符号検定(ロバスト平均検定)を用いると、これらの陰的時間は、健康な人で構成される集団(最も薄暗いものから最も明るいものまでそれぞれ、p<10
−7、p<10
−18、p<10
−17、p<10
−8)より統計的にかなり大きい。
【0091】
(最も薄暗いものから最も明るいものまで)4つの網膜照明に対する電気反応のピーク間振幅は、36.7ms、35.6ms、34.3ms、及び32.5msである。
重要度のT検定を用いると、最も明るい2つの網膜照明からの振幅は、健康な人で構成される集団(最も薄暗いものから最も明るいものまでそれぞれ、p<10
−5及びp<10
−4)より統計的にかなり小さい。
【0092】
実施例6:深刻な非増殖性糖尿病網膜症又は増殖性糖尿病網膜症を患う糖尿病患者の結果
上記の眼底撮影により判定された深刻な非増殖性糖尿病網膜症又は増殖性糖尿病網膜症を患う45人の糖尿病患者が、実施例1に記載の検査を用いて同日に検査された。
【0093】
受信者動作特性(ROC)曲線下の面積(AUROC)が、実施例2のように網膜症を患っていない糖尿病患者から網膜症を患っている糖尿病患者を区別するための異なる解析方法の性能を測定するために使用された。1つ以上の測定パラメータを使用する解析について、ロジスティック回帰が用いられた。偶然は0.5のAUROCを有する。
【0094】
113Td、226Td、453Td、及び906Tdの平均刺激輝度から瞳孔直径をそれぞれP1、P2、P3、及びP4と規定する。例として、下記の計算をすることができる。P1/P4、(P1/P4)
2、又は(P1−P4)/P4を用いると、AUROCは0.80である。(P2−P4)/P4、(P2/P4)
2、又はP2/P4を用いると、AUROCは0.72である。(P3−P4)/P4、(P3/P4)
2、又はP3/P4を用いると、AUROCは0.66である。全てが偶然(AUROC=0.5)よりも良いものである。病気の人と健康な人が独立した通常の変量を有すると仮定した場合、Faraggi及びReiser(2002年)の式(6)を用いてAUROC0.66に変換されることができる、Straub他(1992年)により測定される瞳孔反応の9つの測定基準の中の最高の測定基準と比較して、これらの検査の結果の多くは、驚くべきことに良いものであった。Straub他(1992年)は、この明細書に初めて開示された新規な刺激法を使用しないものである。
【0095】
対象の年齢及び瞳孔情報を用いることで結果が改善する。例えば、P1/P4、(P1/P4)
2、又は(P1−P4)/P4及び年齢を用いる場合、両方のパラメータは統計的に重要であり(p<0.05)、そしてAUROCは0.80から0.83に増加した。年齢だけを用いた場合、AUROCは0.61であった。全てが偶然(AUROC=0.5)よりも良いものである。
【0096】
113Td、226Td、453Td、及び906Tdの平均刺激輝度に対する電気反応から陰的時間をそれぞれ、T1、T2、T3、及びT4と規定する。T1、T2、T3、及びT4のAUROCはそれぞれ、0.65、0.74、0.75、及び0.78である。いくつかの組み合わせについては、瞳孔情報を追加することで結果が改善された。例えば、T4及び(P1/P4)
2は、0.86のAUROCを有し、また、T4及び(P2−P4)/P4は0.83のAUROCを有する。もう1つの例となる組み合わせは、T3及び(P1−P3)/P3であり、0.79のAUROCを有する。T4、(P1/P4)
2、及び年齢の組み合わせは、0.90のAUROCを有する。全てが偶然よりも良いものであり、上記の全ての組み合わせは統計的に重要なパラメータである。
【0097】
113Td、226Td、453Td、及び906Tdの平均刺激輝度に対する電気反応からピーク間振幅をそれぞれ、A1、A2、A3、及びA4と規定する。パラメータA1は、統計的に重要ではない(p>0.05)。A2、A3、及びA4のAUROCはそれぞれ、0.69、0.71、及び0.67である。A4及び(P1/P4)
2の組み合わせは、0.82のAUROCを有する。A4、(P1/P4)
2、及び年齢の組み合わせは、0.85のAUROCを有する。全てが偶然よりも良いものであり、(A1を除く)上記の全ての組み合わせは統計的に重要なパラメータである。
【0098】
実施例7:深刻な非増殖性糖尿病網膜症又は増殖性糖尿病網膜症又は臨床的に重要な黄斑浮腫を患う糖尿病患者の結果
上記の眼底撮影により判定された臨床的に重要な黄斑浮腫、深刻な非増殖性糖尿病網膜症又は増殖性糖尿病網膜症の少なくとも1つを患う80人の糖尿病患者が、実施例1に記載の検査を用いて同日に検査された。
【0099】
受信者動作特性(ROC)曲線下の面積(AUROC)が、実施例2のように網膜症を患っていない糖尿病患者から網膜症を患っている糖尿病患者を区別するための異なる解析方法の性能を測定するために使用された。1つ以上の測定パラメータを使用する解析について、ロジスティック回帰が用いられた。偶然は0.5のAUROCを有する。
【0100】
113Td、226Td、453Td、及び906Tdの平均刺激輝度から瞳孔直径をそれぞれP1、P2、P3、及びP4と規定する。例として、下記の計算をすることができる。P1/P4、(P1/P4)
2、又は(P1−P4)/P4を用いると、AUROCは0.79である。(P2−P4)/P4、(P2/P4)
2、又はP2/P4を用いると、AUROCは0.71である。(P3−P4)/P4、(P3/P4)
2、又はP3/P4を用いると、AUROCは0.63である。全てが偶然(AUROC=0.5)よりも良いものである。
【0101】
対象の年齢及び瞳孔情報を用いることで結果が改善する。例えば、P1/P4、(P1/P4)
2、又は(P1−P4)/P4及び年齢を用いる場合、両方のパラメータは統計的に重要であり(p<0.05)、そしてAUROCは0.79から0.81に増加した。年齢だけを用いた場合、AUROCは0.62であった。全てが偶然(AUROC=0.5)よりも良いものである。
【0102】
113Td、226Td、453Td、及び906Tdの平均刺激輝度に対する電気反応から陰的時間をそれぞれ、T1、T2、T3、及びT4と規定する。T1、T2、T3、及びT4のAUROCはそれぞれ、0.64、0.72、0.71、及び0.75である。いくつかの組み合わせについては、瞳孔情報を追加することで結果が改善された。例えば、T4及び(P1/P4)
2は、0.83のAUROCを有し、また、T4及び(P2−P4)/P4は0.83のAUROCを有する。もう1つの例となる組み合わせは、T3及び(P1−P3)/P3であり、0.80のAUROCを有する。T4、(P1/P4)
2、及び年齢の組み合わせは、0.86のAUROCを有する。全てが偶然よりも良いものであり、上記の全ての組み合わせは統計的に重要なパラメータである。
【0103】
113Td、226Td、453Td、及び906Tdの平均刺激輝度に対する電気反応からピーク間振幅をそれぞれ、A1、A2、A3、及びA4と規定する。パラメータA1は、統計的に重要ではない(p>0.05)。A2、A3、及びA4のAUROCはそれぞれ、0.67、0.70、及び0.67である。A4及び(P1/P4)
2の組み合わせは、0.82のAUROCを有する。A4、(P1/P4)
2、及び年齢の組み合わせは、0.84のAUROCを有する。全てが偶然よりも良いものであり、(A1を除く)上記の全ての組み合わせは統計的に重要なパラメータである。
【0104】
実施例8:様々なレベルの糖尿病性網膜症を患う糖尿病患者の結果
全部で467人の糖尿病患者が検査を完了した。現場外の医者ではない専門家の複数の評価者(裁定により2度読み)によって7フィールドステレオ眼底撮影を用いて、代表的な判断基準として、対象は、彼らの最も悪い眼の糖尿病性網膜症の程度により分類される。下記の表は、それぞれのカテゴリーにおける対象の数を示している。
【0106】
図5Aは、非増殖性糖尿病網膜症を患っていない対象により決定される年齢への依存度を修正した後に、糖尿病性網膜症が、(実施例7に規定されているように)測定瞳孔反応(P1/P4)
2にどのように影響するかを示している。糖尿病性網膜症は、中程度の非増殖性糖尿病網膜症の対象から深刻な非増殖性糖尿病網膜症又は増殖性糖尿病網膜症の対象を分離する標準誤差2.9を有する瞳孔反応に統計的に大きな影響を与える。
【0107】
図5Bは、非増殖性糖尿病網膜症を患っていない対象により決定される年齢への依存度を修正した後に、糖尿病性網膜症が、32Td・s、28.3Hzフリッカー刺激(平均網膜照度906Td)に対する電気反応からの測定陰的時間(閃光から電気反応のピークまでの時間)にどのように影響するかを示している。糖尿病性網膜症は、中程度の非増殖性糖尿病網膜症の対象から深刻な非増殖性糖尿病網膜症又は増殖性糖尿病網膜症の対象を分離する標準誤差4.1を有する陰的時間に統計的に大きな影響を与える。
【0108】
図5Cは、非増殖性糖尿病網膜症を患っていない対象により決定される年齢への依存度を修正した後に、糖尿病性網膜症が、16Td・s、28.3Hzフリッカー刺激(平均網膜照度453Td)に対する電気反応のピーク間振幅にどのように影響するかを示している。糖尿病性網膜症は、中程度の非増殖性糖尿病網膜症の対象から深刻な非増殖性糖尿病網膜症又は増殖性糖尿病網膜症の対象を分離する標準誤差4.6を有するピーク間振幅に統計的に大きな影響を与える。
【0109】
図5Dは、糖尿病性網膜症が、(年齢により修正された)瞳孔反応(P1/P4)
2と、32Td・s、28.3Hzフリッカー刺激に対する電気反応からの陰的時間と、16Td・s、28.3Hzフリッカー刺激に対する電気反応のピーク間振幅と、のロジスティック回帰適合の対数オッズにどのように影響するかを示している。対数オッズは、
図5A〜
図5Cに描かれている条件の和に等しい。糖尿病性網膜症は、中程度の非増殖性糖尿病網膜症の対象から深刻な非増殖性糖尿病網膜症又は増殖性糖尿病網膜症の対象を分離する標準誤差5.6を有するロジスティック回帰の対数オッズに統計的に大きな影響を与える。視力を脅かす糖尿病性網膜症が深刻な非増殖性糖尿病網膜症又は増殖性糖尿病網膜症であると規定された場合、対数オッズは0.88のAUROCを有する。視力を脅かす糖尿病性網膜症が深刻な非増殖性糖尿病網膜症、増殖性糖尿病網膜症、又は臨床的に重要な黄斑浮腫の少なくとも1つを含むと規定された場合、対数オッズは0.86のAUROCを有する。
【0110】
ここに引用されている全ての引用文献は、参照によりその全体が援用されるものである。参照により援用される公報及び特許又は特許出願が、この明細書に含まれる開示と矛盾する点については、どんな矛盾点に対しても本願明細書が優先されることを意図している。
【0111】
明細書及び特許請求の範囲内で用いられている数量を表す全ての数字は、“約”との単語により全ての場合において変更することができると理解される。したがって、反対のことが記載されていない限り、明細書及び特許請求の範囲に明記されている数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性により変更することができる近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限することなく、それぞれの数値パラメータは、有効数字及び通常の丸め方法を考慮して解釈されるべきである。
【0112】
上記装置の記載は、多数の新規であり有利な特徴を含んでいる。特徴の組み合わせも考えられる。開示されている検出装置、コンポーネント、及び方法について、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な改良及び変形を実施することができることは当業者には明らかである。本発明の他の実施形態は、ここに開示されている発明の実施、及び説明を考慮することにより、当業者には明らかになるであろう。本発明の実際の範囲は以下の特許請求の範囲及びその均等物により示されており、説明及び実施例は単なる例として考慮されることを意図している。
【0113】
ここで用いられている単語及び記載は、単なる例示として明記されており、限定を意味しているものではない。明示されていない限り全ての単語はその最も広い意味として理解される、以下の特許請求の範囲に規定される発明及びその均等物の主旨及び範囲内で多数の変更が可能であると当業者には認識されるものである。
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