特許第6789828号(P6789828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789828
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   H02M3/155 H
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-43(P2017-43)
(22)【出願日】2017年1月4日
(65)【公開番号】特開2018-110482(P2018-110482A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三添 公義
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−242742(JP,A)
【文献】 特開2012−010574(JP,A)
【文献】 特開平07−079162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングトランジスタのON期間で入力直流電圧によって流れる電流によりインダクタにエネルギーを蓄積し、前記スイッチングトランジスタのOFF期間で前記インダクタから放出されるエネルギーの電圧を整流平滑することにより、前記入力直流電圧を昇圧し又は降圧した直流電圧を負荷に出力し、前記スイッチングトランジスタの前記ON期間及び/又は前記OFF期間が、前記負荷の状態に応じて制御されるスイッチング電源装置において、
負荷電力を演算して前記スイッチングトランジスタの前記ON期間及び/又は前記OFF期間を制御する制御信号を生成する演算回路を備え、
該演算回路は、前記スイッチングトランジスタの前記ON期間の二乗に比例した二乗信号を生成する二乗回路と、前記スイッチングトランジスタの今回のON開始点から次回のON開始点までの期間又は今回のOFF開始点から次回のOFF開始点までの期間を示す周期に比例した周期信号を生成する周期カウンタと、前記二乗回路で生成した前記二乗信号と前記周期カウンタで生成した前記周期信号の除算を行って前記負荷電力を示す前記制御信号を生成する除算回路とを有することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記二乗回路は、前記スイッチングトランジスタのON期間ごとに更新して前記スイッチングトランジスタに流れる電流に応じて充電される第1キャパシタを備え、該第1キャパシタに、前記スイッチングトランジスタの前記ON期間の二乗に比例した二乗電圧が前記二乗信号に対応するものとして生成されることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記周期カウンタは、前記スイッチングトランジスタの今回のON開始点から次回のON開始点までの期間ごとに更新して、又は今回のOFF開始点から次回のOFF開始点までの期間ごとに更新して定電流で充電される第2キャパシタを備え、該第2キャパシタに、前記周期に比例した周期電圧が前記周期信号に対応するものとして生成されることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項2に記載のスイッチング電源装置において、
前記二乗回路は、前記第1キャパシタに充電された前記二乗電圧を前記スイッチングトランジスタがOFFするごとにサンプルホールドする第1サンプルホールド回路と、該第1サンプルホールド回路でホールドされた電圧を電流に変換する第1電圧/電流変換回路とを備え、該第1電圧/電流変換回路から前記スイッチングトランジスタがOFFするごとに決まる前記二乗信号が出力することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項3に記載のスイッチング電源装置において、
前記周期カウンタは、前記第2キャパシタに充電された前記周期電圧を前記スイッチングトランジスタがOFFするごとにサンプルホールドする第2サンプルホールド回路と、該第2サンプルホールド回路でホールドされた電圧を電流に変換する第2電圧/電流変換回路とを備え、該第2電圧/電流変換回路から前記スイッチングトランジスタがOFFするごとに決まる前記周期信号が出力することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項6】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記除算回路は、請求項4に記載の第1電圧/電流変換回路から出力する前記二乗信号と、請求項5に記載の第2電圧/電流変換回路から出力する前記周期信号とを入力して、前記二乗信号を前記周期信号で除算し、又は前記周期信号を前記二乗信号で除算して、前記制御信号を生成することを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置にかかり、特に、インダクタの励磁エネルギーを演算することで負荷電力を検出してスイッチングトランジスタの制御に利用できるようにしたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置の電力異常の検出を目的として、入力電力および出力電力の計算方法について記載された特許文献1がある。ここでは、入力電力と出力電力をA/D変換したデータを取り込んで、スイッチング電源装置のインダクタの励磁エネルギーを演算し、その演算で得られた入力電力と出力電力を比較することにより、異常電力の発生の有無を判定して、スイッチングトランジスタの制御にフィードバックしている。これによれば、比較結果に基づいてプログラムによってスイッチング状態を調整することにより、通常の制御をはじめ保護動作に適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−78443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、入力電力や出力電力をA/D変換でデジタル化して演算する方法は、メイン演算を行うプロセッサ、メモリ、プロセッサを動作させる基準のタイミング信号の生成器などのデジタル処理を実行する回路が必要となり、回路規模が大きくなる問題がある。また、演算処理の速度も高速となって消費電流が多くなる問題もある。さらに、プロセッサを使うためスイッチング電源装置のコストが高くなるといった問題もある。
【0005】
本発明の目的は、小さい回路規模、少ない消費電流、低いコストで、負荷電力を示す制御信号を生成できるようにした演算回路を備えたスイッチング電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、スイッチングトランジスタのON期間で入力直流電圧によって流れる電流によりインダクタにエネルギーを蓄積し、前記スイッチングトランジスタのOFF期間で前記インダクタから放出されるエネルギーの電圧を整流平滑することにより、前記入力直流電圧を昇圧し又は降圧した直流電圧を負荷に出力し、前記スイッチングトランジスタの前記ON期間及び/又は前記OFF期間が、前記負荷の状態に応じて制御されるスイッチング電源装置において、負荷電力を演算して前記スイッチングトランジスタの前記ON期間及び/又は前記OFF期間を制御する制御信号を生成する演算回路を備え、該演算回路は、前記スイッチングトランジスタの前記ON期間の二乗に比例した二乗信号を生成する二乗回路と、前記スイッチングトランジスタの今回のON開始点から次回のON開始点までの期間又は今回のOFF開始点から次回のOFF開始点までの期間を示す周期に比例した周期信号を生成する周期カウンタと、前記二乗回路で生成した前記二乗信号と前記周期カウンタで生成した前記周期信号の除算を行って前記負荷電力を示す前記制御信号を生成する除算回路とを有することを特徴とする。
【0007】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のスイッチング電源装置において、前記二乗回路は、前記スイッチングトランジスタのON期間ごとに更新して前記スイッチングトランジスタに流れる電流に応じて充電される第1キャパシタを備え、該第1キャパシタに、前記スイッチングトランジスタの前記ON期間の二乗に比例した二乗電圧が前記二乗信号に対応するものとして生成されることを特徴とする。
【0008】
請求項3にかかる発明は、請求項1に記載のスイッチング電源装置において、前記周期カウンタは、前記スイッチングトランジスタの今回のON開始点から次回のON開始点までの期間ごとに更新して、又は今回のOFF開始点から次回のOFF開始点までの期間ごとに更新して定電流で充電される第2キャパシタを備え、該第2キャパシタに、前記周期に比例した周期電圧が前記周期信号に対応するものとして生成されることを特徴とする。
【0009】
請求項4にかかる発明は、請求項2に記載のスイッチング電源装置において、前記二乗回路は、前記第1キャパシタに充電された前記二乗電圧を前記スイッチングトランジスタがOFFするごとにサンプルホールドする第1サンプルホールド回路と、該第1サンプルホールド回路でホールドされた電圧を電流に変換する第1電圧/電流変換回路とを備え、該第1電圧/電流変換回路から前記スイッチングトランジスタがOFFするごとに決まる前記二乗信号が出力することを特徴とする。
【0010】
請求項5にかかる発明は、請求項3に記載のスイッチング電源装置において、前記周期カウンタは、前記第2キャパシタに充電された前記周期電圧を前記スイッチングトランジスタがOFFするごとにサンプルホールドする第2サンプルホールド回路と、該第2サンプルホールド回路でホールドされた電圧を電流に変換する第2電圧/電流変換回路とを備え、該第2電圧/電流変換回路から前記スイッチングトランジスタがOFFするごとに決まる前記周期信号が出力することを特徴とする。
【0011】
請求項6にかかる発明は、請求項1に記載のスイッチング電源装置において、前記除算回路は、請求項4に記載の第1電圧/電流変換回路から出力する前記二乗信号と、請求項5に記載の第2電圧/電流変換回路から出力する前記周期信号とを入力して、前記二乗信号を前記周期信号で除算し、又は前記周期信号を前記二乗信号で除算して、前記制御信号を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スイッチングトランジスタのON/OFFの周期の検出やスイッチングトランジスタのON期間の検出に基づいて、インダクタの励磁エネルギーを計算し負荷電力を検出するので、スイッチング電源装置を制御する集積回路にプロセッサを用いないアナログの演算回路を使用できるため、スイッチング電源装置の回路規模の小型化、消費電流削減を実現できる。このとき、従来のスイッチング電源装置に新たに追加する回路は少なくて済み、コスト低減も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施例の昇圧型スイッチング電源装置の構成ブロック図である。
図2図1の演算回路の構成ブロック図である。
図3図2の二乗回路の構成ブロック図である。
図4図3の二乗回路の具体的な回路図である。
図5図2の周期カウンタの構成ブロック図である。
図6図5の周期カウンタの具体的な回路図である。
図7図2の除算回路の具体的な回路図である。
図8図4の二乗回路の動作波形図である。
図9図6の周期カウンタの動作波形図である。
図10図7の除算回路の動作波形図である。
図11】第2実施例の降圧型スイッチング電源装置の構成ブロック図である。
図12図11の演算回路の構成ブロック図である。
図13図12の演算回路の二乗回路の構成ブロック図である。
図14図13の二乗回路の具体的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施例>
図1にDC/DC変換をPWM/PFM混合方式の制御で行う昇圧型のスイッチング電源装置を示す。Cinは入力キャパシタ、MN1はNMOSのスイッチングトランジスタ、L1はインダクタ、Rs1はスイッチングトランジスタMN1のドレイン電流を検出するセンス抵抗、D1は整流ダイオード、Coutは出力キャパシタである。
【0015】
10はスイッチングトランジスタMN1をON/OFF駆動する駆動回路であり、制御回路11と演算回路12とを備える。制御回路11は、演算回路12が出力する負荷電力を示す制御電流Ioとスイッチング電源装置の出力電圧Voutをフィードバック信号として取り込んで、スイッチングトランジスタMN1のONタイミングとOFFタイミング、つまりON継続時間とオフ継続時間をPWMとPFMの方式により制御し、またそのOFFタイミングごとに一定のパルス幅のタイミング信号CK1を出力する。演算回路12は、そのタイミング信号CK1とスイッチングトランジスタMN1のソースに接続されたセンス抵抗Rs1に発生するセンス電圧Vs1とを入力してインダクタL1の励磁エネルギーを演算し、上記した制御電流Ioを出力する。
【0016】
このスイッチング電源装置では、スイッチングトランジスタMN1のON期間でインダクタL1に蓄積されたエネルギーの電圧が、スイッチングトランジスタMN1のOFF期間で入力電圧Vinに加算されてダイオードD1で整流され、出力キャパシタCoutで平滑されて、出力電圧Voutとして出力する。
【0017】
図2に演算回路12の構成ブロック図を示す。13はT−FF回路であり、制御回路11から出力するタイミング信号CK1を入力し、それを1/2分周したタイミング信号CK2を出力する。14は2相信号発生器であり、T−FF回路13から出力するタイミング信号CK2からデットタイムを有する2相信号φ1,φ2を生成する。15は二乗回路であり、センス電圧Vc1を取り込んでセンス抵抗Rs1に流れる電流の時間の二乗に比例した二乗信号である電流Isqを出力する。この二乗回路15はタイミング信号CK1に同期したクリア信号CLRでリセットされる。16は周期カウンタであり、タイミング信号φ1、φ2を取り込むことで、タイミング信号CK1の周期を示す周期信号である電流Itを出力する。17は除算回路であり、二乗回路15から出力する電流Isq(第1電流)を周期カウンタ16から出力する電流It(第2電流)によって除算して、前記の制御信号Io(=Isq/It)を生成する。
【0018】
図3図2の演算回路12における二乗回路15の構成ブロック図を示す。151は電圧/電流変換回路であり、センス電圧Vs1を電流Icpに変換する。Cpは電流Icpで充電されるキャパシタ(第1キャパシタ)、SW1はキャパシタCpに充電された電圧Vcpをクリア信号CLRによって放電するためのスイッチ、152はキャパシタCpの電圧Vcpをタイミング信号φ1,φ2で交互にサンプリングホールドするサンプルホールド回路(第1サンプルホールド回路)、153はサンプルホールド回路152の出力電圧Vshを電流Isqに変換する電圧/電流変換回路(第1電圧/電流変換回路)である。図4にこの二乗回路の具体的回路を示す。
【0019】
図4において、電圧/電流変換回路151は、センス電圧Vs1を入力するオペアンプOP1と、NMOSトランジスタMN2と、抵抗R1と、トランジスタMN2のドレイン電流を入力するようカレントミラー接続されたPMOSトランジスタMP2、MP3とにより構成されている。スイッチSW1はNMOSトランジスタMN3で構成されている。
【0020】
そして、抵抗R1に発生する電圧がセンス電圧Vs1に一致するようにオペアンプOP1がトランジスタMN2を制御することで、カレントミラー接続のトランジスタMP2,MP3のドレインにセンス電圧Vs1に比例した電流Icpが流れる。この電流IcpがキャパシタCpに充電されると、そのキャパシタCpの電圧がVcpになる。この電圧Vcpは後記するように電流Icpの流れている時間の二乗に比例した二乗電圧である。
【0021】
サンプルホールド回路152は、バッファBF1と、スイッチSW2,SW3,SW4,SW5と、キャパシタCs1,Cs2とにより構成されている。タイミング信号φ1が“H”、タイミング信号φ2が“L”のとき、スイッチSW2,SW3がONしスイッチSW4,SW5がOFFして、入力する電圧VcpがキャパシタCs1に充電されその電圧がVsh1になるとともに、キャパシタCs2に充電されていた電圧Vsh2がホールド電圧Vshとして出力する。
【0022】
また、タイミング信号φ1が“L”、タイミング信号φ2が“H”のとき、スイッチSW2,SW3がOFFしスイッチSW4,SW5がONして、入力する電圧VcpがキャパシタCs2に充電されその電圧がVsh2になるとともに、キャパシタCs1に充電されていた電圧Vsh1がホールド電圧Vshとして出力する。このようにして、電圧Vsh1,Vsh2が交互にホールド電圧Vshとして取り出される。
【0023】
電圧/電流変換回路153は、サンプルホールド回路152の出力電圧Vshを入力するオペアンプOP2と、NMOSトランジスタMN4と、抵抗R2と、トランジスタMN4のドレイン電流を入力するようカレントミラー接続されたPMOSトランジスタMP4、MP5とにより構成されている。
【0024】
そして、抵抗R2に発生する電圧がホールド電圧Vshに一致するようにオペアンプOP2がトランジスタMN4を制御することで、カレントミラー接続のトランジスタMP4,MP5のドレインにホールド電圧Vshに比例した電流Isqが流れる。
【0025】
図5図2の演算回路12における周期カウンタ16の具体的回路を示す。Iaは基準電流Iaを出力する電流源である。161、162は時間カウンタであり、タイミング信号φ1、φ2の“H”の時間幅に応じて基準電流Iaの時間積分を交互に行う。163は時間カウンタ161、162の出力電圧Vctのサンプルホールドを行うサンプルホールド回路(第2サンプルホールド回路)である。164はサンプルホールド回路163から出力するホールド電圧Vtsを電流Itに変換する電圧/電流変換回路(第2電圧/電流変換回路)である。図6に周期カウンタ16の具体的回路を示す。
【0026】
図6において、時間カウンタ161は、スイッチSW6,SW7,SW8と、キャパシタCt1とで構成される。時間カウンタ162は、スイッチSW9,SW10,SW11と、キャパシタCt2とで構成される。
【0027】
そして、時間カウンタ161では、タイミング信号φ1が“H”、タイミング信号φ2が“L”のとき、スイッチSW6,SW7がONしてキャパシタCt1が基準電流Iaで充電され、その充電電圧Vct1が電圧Vctとして出力する。タイミング信号φ1が“L”、タイミング信号φ2が“H”のとき、スイッチSW8がオンしてその電圧Vct1を放電する。
【0028】
一方、時間カウンタ162では、タイミング信号φ1が“L”、タイミング信号φ2が“H”のとき、スイッチSW9,SW10がオンしてキャパシタCt2が基準電流Iaで充電され、その充電電圧Vct2が電圧Vctとして出力する。タイミング信号φ1が“H”、タイミング信号φ2が“L”とき、スイッチSW11がONしてその電圧Vct2を放電する。
【0029】
この結果、キャパシタCt1の電圧Vct1はタイミング信号φ1の“H”期間に対応する電圧となり、キャパシタCt2の電圧Vct2はタイミング信号φ2の“H”期間に対応する電圧となり、これらが交互にタイミング信号CK1の周期を示す電圧Vctとして取り出される。
【0030】
サンプルホールド回路163は、バッファBF2と、スイッチSW12,SW13,SW14,SW15と、キャパシタCts1,Cts2とにより構成されている。タイミング信号φ1が“H”、タイミング信号φ2が“L”のとき、スイッチSW12,SW13がONしスイッチSW14,SW15がOFFして、入力する電圧VctがキャパシタCts1に充電されその電圧がVts1になるとともに、キャパシタCts2に充電されていた電圧Vts2がホールド電圧Vtsとして出力する。
【0031】
タイミング信号φ1が“L”、タイミング信号φ2が“H”のとき、スイッチSW12,SW13がOFFしスイッチSW14,SW15がONして、入力する電圧VctがキャパシタCts2に充電されその電圧がVts2になるとともに、キャパシタCts1に充電されていた電圧Vts1がホールド電圧Vtsとして出力する。このように、電圧Vts1,Vts2が交互に電圧Vtsとして出力する。
【0032】
電圧/電流変換回路164は、サンプルホールド回路163の出力電圧Vtsを入力するオペアンプOP3と、NMOSトランジスタMN5と、抵抗R3と、トランジスタMN5のドレイン電流を入力するカレントミラー接続のPMOSトランジスタMP6、MP7とにより構成されている。
【0033】
そして、抵抗R3に発生する電圧がホールド電圧Vtsに一致するようにオペアンプOP3がトランジスタMN5を制御することで、カレントミラー接続のトランジスタMP6,MP7のドレインにサンプルホールド電圧Vtsに比例した電流Itが流れる。
【0034】
図7に除算回路17の具体的回路を示す。この除算回路17は、基準電流Ibの電流源Ibと、二乗回路15の出力電流Isqが入力するカレントミラー接続のNPNトランジスタQ1,Q2と、周期カウンタ16の出力電流Itが入力するカレントミラー接続のNPNトランジスタQ3,Q4と、トランジスタQ4のコレクタにベースが接続されたNPNトランジスタQ5と、トランジスタQ5のコレクタ電流をミラーして出力電流Ioとするカレントミラー接続のPNPトランジスタQ6,Q7と、トランジスタQ2のコレクタ電流で制御されるNPNトランジスタQ8,Q9と、そのトランジスタQ9で制御されて、トランジスタQ5を制御するNPNトランジスタQ10とを備える。
【0035】
そして、トランジスタQ10のエミッタ電流とトランジスタQ4のコレクタ電流の差分がIsq/Itに対応する電流としてトランジスタQ5のベースに入力し、トランジスタQ6,Q7のコレクタにIsq/Itに対応する電流が流れる。
【0036】
次に、演算回路12の動作について説明する。まず、図3及び図4に示した二乗回路15の動作を表すタイミングチャートを図8に示す。センス電圧Vs1は、図1におけるスイッチングトランジスタMN1がONしているときに流れる過度的なドレイン電流Idがセンス抵抗Rs1で電圧に変換されたもので、この電圧Vs1に対応する電流が電圧/電流変換回路151から出力して、キャパシタCpに充電される。このときの充電電流Icpは以下の式で表される。Vinはスイッチング電源装置の入力電圧、L1はインダクタL1のインダクタンス、tは充電時間である。
【0037】
タイミング信号φ1が“H”になっている期間、サンプルホールド回路152のスイッチSW2がONして、キャパシタCs1の電圧Vsh1はキャパシタCpの電圧Vcpと同じとなる。
【0038】
スイッチングトランジスタMN1がオンしてキャパシタCpが充電しているときの電圧Vcpは、充電時間tの二乗に比例して以下の式のようになり、同時に電圧Vsh1となる。
【0039】
スイッチングトランジスタMN1がOFFするタイミングでタイミング信号CK1は“H”になり、タイミング信号φ1は“L”になって、スイッチングトランジスタMN1がOFFする直前のキャパシタCpの充電電圧Vsh1で保持され、この電圧Vsh1がサンプルホールド回路152の出力電圧Vshとなる。スイッチングトランジスタMN1がオンになっている時間をtonとすると、電圧Vsh1は以下のようになる。
【0040】
一方、クリア信号CLRはタイミング信号CK1と同期するので、クリア信号CLRが“H”になるとスイッチSW1であるトランジスタMN3がオンし、キャパシタCpの電荷を放電して電圧Vcpをグランドレベルに落とす。また、タイミング信号φ2が“H”になるので、サンプルホールド回路152のキャパシタCs2の電圧Vsh2が、キャパシタCpの今回の電圧Vcpになる。
【0041】
タイミング信号φ2が“H”になっている期間でスイッチングトランジスタMN1がONになってキャパシタCpが充電される動作は、タイミング信号φ1が“H”になっている場合と同じになる。そして、タイミング信号CK1が“H”になるとタイミング信号φ2が“L”になって、電圧Vsh2はスイッチングトランジスタMN1がOFFする直前のキャパシタCpの充電電圧Vcpで保持され、タイミング信号φ1が“H”になるとサンプルホールド回路152の出力電圧Vshは電圧Vsh2となる。
【0042】
再度、タイミング信号φ1が“H”になるので、キャパシタCpの電圧と電圧Vsh1の電圧は等しくなる。以下、スイッチングトランジスタMN1がONする毎に同様の動作が繰り返されるので、電圧/電流変換回路153からは、その度に決まるサンプルホールド回路152の出力電圧Vshを電流に変換した電流Isqが出力する。
【0043】
次に、周期カウンタ16の動作を表すタイミングチャートを図9に示す。タイミング信号CK1,CK2とタイミング信号φ1,タイミング信号φ2の“H”/“L”の関係は図8と同じである。タイミング信号CK1はスイッチングトランジスタMN1がONからOFFに切り替わるときに“H”に立ち上がるので、タイミング信号CK1が“H”に立ち上がる間隔の時間Tswをカウントすることによりタイミング信号CK1の周期を得ることができる。
【0044】
周期カウンタ2の具体的な回路を示す図6において、サンプルホールド回路163は前記した二乗回路15のサンプルホールド回路152と同様に動作する。
【0045】
図6において、まず、タイミング信号φ1が“H”になっているときは、時間カウンタ161のキャパシタCtlの電圧Vct1は、電流源Iaの電流Iaにより定電流充電される。
【0046】
このキャパシタCtlの電圧Vct1は、サンプルホールド回路163の入力電圧Vctとなり、サンプルホールド回路163のキャパシタCts1の電圧Vts1はキャパシタCt1の電圧Vctlと等しくなる。
【0047】
タイミング信号CK1が再び“H”になるとタイミング信号φ1は“L”になり、タイミング信号φ2は“H”になる。これにより、サンプルホールド回路163では電圧Vts1はタイミング信号CK1が“H”になる直前の電圧、つまり、1周期Tswの経過時点の電圧が保持される。この電圧Vts1がサンプルホールド回路163の出力電圧Vtsとなる。
【0048】
一方、タイミング信号φ2が“H”になることで、キャパシタCtlの電荷が放電されるとともに、キャパシタCt2が電流Iaにより定電流充電される。このときの電圧Vctは時間カウンタ162のキャパシタCt2の電圧Vct2であり、この電圧Vct2がサンプルホールド回路163のキャパシタCts2の電圧Vts2となる。さらに再びタイミング信号CK1が“H”になると、タイミング信号φ1は“H”にタイミング信号φ2は“L”になるので、1周期Tswの経過時点の電圧Vct2が保持されて電圧Vts2となり、サンプルホールド回路163の出力電圧Vtsとなる。
【0049】
以下、スイッチングトランジスタMN1がOFFするごとに同様の動作が繰り返され、電圧/電流変換回路164からは、その度に決まるサンプルホールド回路163の出力電圧Vtsを電流に変換した電流Itが出力する。
【0050】
以上のようにして、二乗回路15や周期カウンタ16のサンプルホールド回路152、163の電圧Vsh、Vtsを電流変換した電流Isq,Itは、次のようになる。Ct=Ct1=Ct2である。
【0051】
除算回路17では、電流Isqと電流Itの割算が行われて、演算回路12からは最終的に電流Ioが出力される。
【0052】
次に、スイッチングトランジスタMN1がオンしたときにインダクタL1に生じる励磁エネルギーPWと演算回路12から出力する電流Ioとの関係を説明する。
【0053】
スイッチングトランジスタMN1がオンしているときのインダクタL1のピーク電流をIpkとすると、励磁エネルギーPWは次のように表される。
【0054】
一方、tonとIpkの関係が、
となるので、演算回路12の出力電流Ioは、式(8)から、
となる。ただし、
である。
【0055】
つまり、式(11)と式(12)をみると、αは定数であるので、演算回路12の出力電流IoはインダクタL1に生じる式(9)の励磁エネルギーPWを等価的に示していることとなる。この結果、図1に示したスイッチング電源装置のように、演算回路12の出力電流Ioを制御回路11に入力することで、インダクタL1の励磁エネルギーをスイッチング電源装置の負荷に供給されている負荷電力を示す信号として、スイッチングトランジスタMN1の制御のためにフィードバックすることができる。これによって、スイッチング電源装置の入力電力を出力電力に応じてバランスよくコントロールでき、その変換効率向上に役立てることができる。
【0056】
<第2実施例>
図11にDC/DC変換をPWM/PFM混合方式で制御する降圧型のスイッチング電源装置を示す。図1で説明した昇圧型のスイッチング電源装置と同じものには同じ符号をつけた。MP1はPMOSのスイッチングトランジスタ、L2はインダクタ、Rs2はスイッチングトランジスタMP1のドレイン電流を検出するセンス抵抗、D2は整流ダイオードである。
【0057】
20はスイッチングトランジスタMP1をON/OFF駆動する駆動回路であり、制御回路21と演算回路22を備える。制御回路21は、演算回路22が出力する負荷電力を示す制御電流Ioとスイッチング電源装置の出力電圧Voutをフィードバック信号として取り込んで、スイッチングトランジスタMP1のON継続時間とオフ継続時間をPWMとPFMの方式により制御し、またそのOFFタイミングごとに一定のパルス幅のタイミング信号CK1を出力する。演算回路22は、そのタイミング信号CK1とスイッチングトランジスタMN1のソースに接続されたセンス抵抗Rs2に発生するセンス電圧Vs2とを入力してインダクタL2の励磁エネルギーを演算し、制御電流Ioを出力する。
【0058】
このスイッチング電源装置では、スイッチングトランジスタMP1のON期間でインダクタL2に蓄積されたエネルギーの電圧が、スイッチングトランジスタMP1のOFF期間でダイオードD2で整流され、出力キャパシタCoutで平滑されて、入力電圧Vinが降圧された出力電圧Voutとして出力する。
【0059】
図12に演算回路22の構成ブロック図を示す。図2で説明した演算回路12における要素と同じものには同じ符号をつけて重複説明は省略する。25は二乗回路であり、センス電圧Vs2を入力して、二乗回路15と同様にスイッチングトランジスタMP1のON期間の二乗に対応した電流Isqを出力する。
【0060】
図13図12の演算回路22における二乗回路25の構成ブロック図を示す。図3で説明した二乗回路15における要素と同じものは同じ符号をつけて重複説明は省略する。図14に二乗回路25の具体回路を示す。251は電圧/電流変換回路であり、センス電圧Vs2を電流に変換する。この電圧/電流変換回路251は、センス電圧Vs2を入力するオペアンプOP4と、PMOSトランジスタMP8と、抵抗R4とにより構成されている。
【0061】
そして、抵抗R4に発生する電圧がセンス電圧Vs2に一致するようにオペアンプOP4がトランジスタMP8を制御することで、そのトランジスタMP8のドレインにセンス電圧Vs2に比例した電流が流れ、キャパシタCpに二乗電圧Vcpとして充電される。
【0062】
このように、第2実施例のスイッチング電源装置は、第1実施例のスイッチング電源装置とは演算回路22の二乗回路25の構成が異なるのみであり、第1実施例のスイッチング電源装置と同様に動作して、インダクタL2の励磁エネルギーPWを示す電流Ioを負荷電力を示す制御信号として、スイッチングトランジスタMP1の制御状態にフィードバックすることができる。これによって、スイッチング電源装置の入力電力を出力電力に応じてバランスよくコントロールでき、その変換効率向上に役立てることができる。
【0063】
<その他の実施例>
なお、上記実施例では、演算回路12,22を、スイッチングトランジスタのON期間とOFF期間の両者が制御可能なPWM/PFM混合方式のスイッチング電源装置に適用した場合について説明したが、PWM方式のみで制御するスイッチング電源装置、あるいはPFM方式のみで制御するスイッチング電源装置、非絶縁コンバータ、絶縁コンバータにも同様に適用することができる。PWM方式のみで制御するスイッチング電源装置では電流Itは一定値となり、PFM方式のみで制御するスイッチング電源装置では電流Isqは一定値となる。また、周期カウンタ16は、上記した実施例ではスイッチングトランジスタMN1,MP1の今回のOFF開始点から次回のOFF開始点までの期間を更新して検出するようにしたが、これに限られず、スイッチングトランジスタMN1,MP1の今回のON開始点から次回のON開始点までの期間を更新して検出するようにしてもよい。また、除算回路17は、上記した実施例ではIsq/Itの演算を行ったが、これに限られず、It/Isqの演算を行ってもよい。この場合は、図7において入力する信号IsqとItを入れ替えて、制御回路11、21においてその逆数で制御を行えばよい。
【符号の説明】
【0064】
10:駆動回路、11:制御回路、12:演算回路、13:T−FF回路、14:2相信号発生器、15:二乗回路、16:周期カウンタ、17:除算回路、20:駆動回路、21:制御回路、22:演算回路、25:二乗回路
151:電圧/電流変換回路、152:サンプルホールド回路、153:電圧/電流変換回路
161,162:時間カウンタ、163:サンプルホールド回路、164:電圧/電流変換回路、251:電圧/電流変換回路
図1
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