(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を用いた表示装置の一例としては、自動車等のシフトレバーの頭部に配置されるシフトノブにELディスプレイからなる表示部を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記特許文献1に記載された表示部は、透明基板の表面上に透明電極層、発光層を含む有機層、及び反射電極層を積層して形成された有機EL素子を構成している。
【0004】
有機EL素子は、シフトレバーにより設定される現在のシフトポジションを表す文字や図形を発光させて表示するようになっている。それ故、有機EL素子により発光表示される文字や図形は、透明基板の裏面を通して観察されることになる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の表示装置に係る実施の形態について、以下に添付図面を参照して説明する。なお、実施の形態に係る図は、構成を説明し易くするため、縦横比等を誇張して表示している。
【0014】
(表示装置の全体構成)
図1において、符号1は、車両用変速機の変速操作を行うためのシフトレバーである。シフトレバー1は、シフトノブ2と、シフトノブ2を覆うノブカバー3とにより構成される。ノブカバー3は、シフトレバー1の位置情報や装飾意匠等を視認するための透過性の表示窓3aを有している。
【0015】
シフトノブ2とノブカバー3との間に形成される空間には、本実施の形態における特徴部である表示装置10が内蔵される。この表示装置10は、各色に発光可能な透明有機EL素子11と、透明有機EL素子11の裏面に対向して配置されるベース部材13とを備えている。ベース部材13の裏面がシフトノブ2の頭頂部に設けられる。
【0016】
透明有機EL素子11は、情報や模様等を発光表示する第1表示部として構成されている。ベース部材13は、室内、室外や透明有機EL素子11から入射した光を反射する反射体として構成されている。ベース部材13は、表面側に向けて膨出する湾曲形状に形成されている。
【0017】
(透明有機EL素子の構成)
表示装置10の第1表示部である透明有機EL素子11は、第1透明電極である透明陽極と、第2透明電極である透明陰極と、透明陽極及び透明陰極の間に配置された透明有機発光層とを有している。
【0018】
透明有機EL素子11は、透明有機発光層において発生する光を透明陽極及び透明陰極の両側から外部へ取り出すことができるフレキシブルな両面発光型の透明有機EL素子として構成されている。透明有機EL素子11は、消灯時(非発光時)に透明であり、透明有機発光層に発光色の異なる発光材料を用いることで、点灯時(発光時)に異なる発光色が発光されるように構成されている。
【0019】
透明有機EL素子11には、透明陽極及び透明陰極を介して透明有機発光層に電源を供給するフレキシブル基板12が設けられている。フレキシブル基板12を介して透明陽極及び透明陰極の間に直流電源を印加することで、透明有機発光層には、ホールが透明陽極から注入されるとともに、電子が透明陰極から注入される。
【0020】
透明陽極から注入したホール及び透明陰極から注入した電子が透明有機発光層内で再結合する際のエネルギーによって、透明有機発光層中の有機発光材料が励起される。励起した有機発光材料が基底状態に戻る際に、透明有機発光層が発光する。
【0021】
透明有機EL素子11の消灯時には、透明有機発光層は発光しないので、透明有機EL素子11によって発光表示される情報や模様等は出現しない。透明有機EL素子11が点灯状態になったとき、透明有機発光層において発生する光は、透明陽極及び透明陰極の両側から出射される。
【0022】
透明有機EL素子11のノブカバー対向面に配置された透明陰極側から出射する光は、透明有機EL素子11によって形成される情報や模様等を表す形状で、ノブカバー3の表示窓3aを通して視認される。
【0023】
図1及び
図3に示すように、透明有機EL素子11は、文字、数字、図形や記号等の情報が発光表示される情報表示部11aと、模様が発光表示される模様表示部11bとを有している。
【0024】
図示例による情報表示部11aは、シフトレバー1のシフト位置が表示される位置表示部として形成されている。一方の模様表示部11bは、複数の水玉模様が線状や帯状等に配列した状態で散在する図形表示部として形成されている。
【0025】
透明有機EL素子11によって発光表示される情報表示部11aは、シフトレバー1のシフト位置を表すドライブ(D)、ニュートラル(N)、リバース(R)、ホーム、回生ブレーキ(B)の情報を表す形状で発光表示されるようになっている。これらのシフト位置を表す情報は、透明有機EL素子11の点灯時において白色、緑色、赤色等の任意の発光色を発光する。模様表示部11bの水玉模様は、透明有機EL素子11の点灯時において白色を発光する。
【0026】
一方、透明有機EL素子11のシフトノブ対向面に配置された透明陽極側から出射する光は、透明有機EL素子11の裏面と対向して配置されるベース部材13の表面を照明する。この照明光がノブカバー3の表示窓3aを通して視認される。
【0027】
なお、透明有機EL素子11については、任意の公知の構造や材料等を特に制限なく用いることができる。
【0028】
(ベース部材の構成)
上記のような表示装置10の構成によれば、透明有機EL素子11によって発光表示される情報や模様等に高い視認性が得られる。しかしながら、情報や模様等の視認性が高いだけでは、立体感や奥行き感を出すことは困難であり、意匠性や高級感を演出することも困難となる。
【0029】
図1、
図2(a)、及び
図2(b)に示すように、本実施の形態に係る表示装置10は、透明有機EL素子11が情報や模様等を発光表示する第1表示部の構成に加えて、室内、室外や透明有機EL素子11から入射した光を反射するベース部材13の反射面13aを装飾意匠面として用いることにより、その装飾意匠面に形成された装飾意匠13bが表示される第2表示部の構成を備えている。
【0030】
第2表示部であるベース部材13における装飾意匠面としての反射面13aには、三つの三角斜面を有する三角錐凹状に彫り込んだ装飾意匠13bが多面体として形成されている。この装飾意匠13bは、透明有機EL素子11の裏面と対向する反射面13aに二次元アレイ状に配列されている。
【0031】
透明有機EL素子11によって照明される第2表示部は、透明有機EL素子11の消灯時において室内や室外から入射した外光がベース部材13の三角錐凹状の装飾意匠13bに反射して光り輝くようになっている。ノブカバー3の表示窓3aを通して、三角錐凹状の装飾意匠13bが反射した反射光を視認することができるため、この反射光は演出効果を得るための演出光として用いられる。
【0032】
図1及び
図3に示すように、ベース部材13は、透明有機EL素子11の位置の下方に配設される構成となっている。この構成により、透明有機EL素子11の点灯時には、透明有機EL素子11の透明陰極側から出射する光によって表示される情報や模様等がノブカバー3の表示窓3aを通して見られる。
【0033】
一方、透明有機EL素子11の透明陽極側から出射する光は、ベース部材13の装飾意匠面である反射面13aに形成された三角錐凹状の装飾意匠13bに反射して光り輝く。この三角錐凹状の装飾意匠13bは、透明有機EL素子11に表示される情報及び模様等の位置の下方に立体的に鮮明な状態に表示される。
【0034】
ノブカバー3の表示窓3aを通して、ベース部材13における多数の三角錐凹状の装飾意匠13bが宙に浮いた状態に見られることによって立体的に視認される。その故、立体感や奥行き感を演出することが可能となり、高級感を高めることができる。
【0035】
(ベース部材の他の構成)
上記のように構成されたベース部材13の反射面13aは、三角錐凹状に形成された立体構造体であるが、各種の立体構造体を特に制限なく用いることができる。光輝性等を阻害しない構成であれば、装飾意匠13bの形状や大きさ等を適宜変更することができる。
【0036】
図4(a)及び
図6(a)に示すように、反射面13aの立体構造体としては、四角錐の凹状に形成された多面体や四角台錐の凹状に形成された多面体に形成することもできる。
【0037】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、ベース部材13における装飾意匠面としての反射面13aには、四つの三角斜面を有する四角錐凹状に彫り込んだ装飾意匠13cが形成されている。この装飾意匠13cは、透明有機EL素子11の裏面と対向する反射面13aに二次元アレイ状に配列されている。
【0038】
透明有機EL素子11の発光時や消灯時には、室内、室外や透明有機EL素子11から入射した光がベース部材13の四角錐凹状の装飾意匠13cに反射して光り輝く。この光り輝く効果により、四角錐凹状の装飾意匠13cが反射した反射光を演出光として用いることができる。
【0039】
図5に示すように、四角錐凹状の装飾意匠13cは、透明有機EL素子11により発光表示される情報及び模様等の位置の下方に立体的に鮮明な状態に表示される。ノブカバー3の表示窓3aを通して、四角錐凹状の装飾意匠13cが反射した反射光を視認することができるため、立体感や奥行き感を演出することができる。
【0040】
図6(a)及び
図6(b)に示すように、ベース部材13における装飾意匠面としての反射面13aには、四角の底面を形成する四つの台形斜面を有する四角台錐凹状に彫り込んだ装飾意匠13dが形成されている。この装飾意匠13dは、透明有機EL素子11の裏面と対向する反射面13aに二次元アレイ状に配列されている。
【0041】
透明有機EL素子11の発光時や消灯時には、室内、室外や透明有機EL素子11から入射した光がベース部材13の四角台錐凹状の装飾意匠13dに反射して光り輝く。この光り輝く効果により、四角台錐凹状の装飾意匠13dが反射した反射光を演出光として用いることができる。
【0042】
図7に示すように、四角台錐凹状の装飾意匠13dは、透明有機EL素子11によって発光表示される情報及び模様等の位置の下方に立体的に鮮明な状態に表示される。ノブカバー3の表示窓3aを通して、四角台錐凹状の装飾意匠13dが反射した反射光を視認することができるため、立体感や奥行き感を演出することができる。
【0043】
なお、ベース部材13については、任意の公知の構造や材料等を特に制限なく用いることができる。また、ベース部材13の表面処理として、透明有機EL素子11の裏面と対向する反射面13aに反射性を有する金属層を蒸着して光反射層として設けることができる。また更に、反射面13aにシルバー塗装等を行うこともできる。
【0044】
ベース部材13の表面処理により、ベース部材13の装飾意匠13b、13c、13dによって反射が繰り返されるなどの装飾意匠効果を得ることができる。透明有機EL素子11から発生した光色の変化により、装飾意匠効果を得ることもできる。平らな面を有するノブカバー3の表示窓3aを通して斬新な装飾意匠効果を得ることもできる。
【0045】
(実施の形態の効果)
以上のように構成された表示装置10は、装飾意匠13b、13c、13dを表示する第2表示部であるベース部材13の位置が情報や模様等を表示する第1表示部である透明有機EL素子11の位置の下方に配設された構成となっている。その結果、ベース部材13の凹状の装飾意匠13b、13c、13dを、透明有機EL素子11に表示される情報及び模様等の位置の下方に立体的に鮮明な状態で表示することができる。このような効果に加えて、次の効果が得られる。
【0046】
ベース部材13の反射面13aに立体的な彫り込みを入れて、反射面13aを装飾意匠面として用いることで、両面発光型の透明有機EL素子11の特性を有効利用することができる。
【0047】
透明有機EL素子11の発光時や消灯時における透明さを損なうことなく、発光時の情報表示効果及び意匠効果と、消灯時の意匠効果との双方を実現することができる。
【0048】
ベース部材13による彫り込み表示と、透明有機EL素子11によるグラフィック表示とにより、立体的に表示可能な表現を増加させることができる。
【0049】
発光時や消灯時における見栄えを損なうことなく、透明感のある立体的な表示形態を表現することができる。
【0050】
情報表示効果及び意匠効果を有するだけでなく、照明として機能させることができる。
【0051】
なお、上記のように構成された表示装置10は、車載用、携帯用又は家庭用の各種機器の表示装置に適用することができる。
【0052】
以上の説明からも明らかなように、本発明に係る代表的な実施の形態、変形例、及び図示例を例示したが、上記実施の形態、変形例、及び図示例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。従って、上記実施の形態、変形例、及び図示例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。