【実施例1】
【0011】
図1は、本実施例の列車制御情報伝達システムの構成と、列車に搭載されている車上信号装置との接続を示す図である。地上側には、本システムの地上管理装置1、無線機2、地上子3が設置される。また、車上信号装置11、送受信部12、車上子13、表示器14が搭載されている列車10には、本システムの車上無線装置17、第二の表示器18、無線機19が設置される。本発明では、既存の車上信号装置を改造することなく活用して、沿線に設置される信号機や列車検知装置を不要することを目的としており、車上信号装置11、送受信部12、車上子13、表示器14は、既存の装置を使い、その既存の車上信号装置11と既存の送受信部12との間に、車上無線装置17を接続する。なお、既存の車上信号装置11については、線路上に敷設された地上子等から伝達される列車制御情報に基づいて列車を制御する装置であれば、どのような装置を前提としても構わないが、本実施例では、ATS−P形の車上信号装置を前提として説明する。
【0012】
まず、本システムの前提として、列車に搭載されている車上信号装置11、送受信部12について説明する。列車10に搭載されている車上信号装置11は、入力された停止点までの距離情報等の列車制御情報に基づいて、指示された停止点を基点とする速度照査パターンを作成し、この速度照査パターンに基づいて、運転に必要となる情報を表示器14を介して運転士に表示するとともに、列車を制御する装置である。具体的には、列車に備える速度センサから入力される速度情報を積算して列車位置を算出し、列車の走行速度が速度照査パターンに接近した場合に、表示器14を介して運転士に警報を発し、列車の走行速度が速度照査パターンを超えた場合に、列車に備える継電器部を介して列車のブレーキを動作させる。速度照査パターンとは、列車が停止点までに止まることのできる許容速度を示すものであり、その一例として、
図3に停止点6を基点とする列車10の速度照査パターン7を示す。本実施例ではATS−P形の車上信号装置を前提とするが、ATS−P形の車上信号装置は、本来、送受信部から、地上子の識別番号やその地上子から停止点までの距離情報等を含むATS−P電文を受信して、これを制御に用いる。但し、本実施例では、同様の情報を車上無線装置17からATS−P電文と同じフォーマットで受信して、これを制御に用いる。この点が既存の自動列車停止システムとは異なる。
【0013】
送受信部12は、線路上に敷設された地上子と電磁結合する車上子13を介して、地上子3からの信号を受信する機器である。本実施例ではATS−P形の送受信部を前提とするが、ATS−P形の送受信器は、本来、地上子の識別番号やその地上子から停止点までの距離情報等を含むATS−P電文を受信して、この電文をATS−P車上装置に出力するものである。但し、本実施例では、地上子3から車上子13を介して受信したATS−P電文を車上無線装置17に出力する。この点が既存の自動列車停止システムとは異なる。
【0014】
次に、本実施例の列車制御情報伝達システムについて説明する。本システムは、
図2に示すように、列車10が走行する路線4を複数の閉塞区間5a、5b、5cに区切って、1つの閉塞区間には1列車のみ進入を許可し、その列車が完全に通過し終わるまでは他の列車をその区間に進入させない列車制御情報を作成する。
【0015】
車上無線装置17は、無線機19や無線機2を介して、地上管理装置1から、各地上子を基点とした停止点までの距離情報を受信し、この情報を記憶しておき、地上子通過を検知した時、つまり、地上子3から車上子13や送受信部12を介して信号が入力された時、その情報の中から当該地上子を基点とした停止点までの距離情報を抽出し、当該地上子の識別番号と合わせて車上信号装置11に出力する。つまり、本実施例では、送受信部12からATS−P電文が入力された時、その電文から地上子の識別番号を認識し、地上管理装置1から受信した情報の中から当該地上子を基点とした停止点までの距離情報を抽出し、ATS−P電文と同じフォーマットに成型して車上信号装置11に出力する。この時、車上無線装置17は、予め地上管理装置1から伝達され、既に記憶している情報の中から通過した地上子を基点とした列車制御情報を抽出するのであり、列車が地上子を通過してから地上管理装置1と通信をして当該地上子を基点とした列車制御情報をもらうのではない。この仕組みにより、車上信号装置11は、地上子通過から時間差無く当該地上子を基点とした列車制御情報に基づく列車制御を実行することができる。
【0016】
また、その際、車上無線装置17は、無線機19や無線機2を介して、列車10の識別番号と通過した地上子の識別番号を地上管理装置1に送信し、さらに、当該地上子から停止点までの距離情報を第二の表示器18を介して運転士に表示する。例えば、「停止点は地上子××から○○メートル」という情報を表示する。
【0017】
なお、車上無線装置17は、地上管理装置1から情報を受信した時、その情報に含まれる直前に通過した地上子に関する情報、つまり直前に通過した地上子を基点とした停止点までの距離情報が、地上子通過時に車上信号装置11に出力した時の情報から変化していた場合、先行列車の位置の変化などにより停止点の位置が更新されたことが分かる。そこで、そのような情報を受信した時には、次の地上子を通過した時に停止点の位置が更新されることを第二の表示器18を介して運転士に表示する。例えば、前段落で説明した情報の下に、「停止点は地上子××から○○メートル(次地上子通過時にパターン更新)」という情報を表示する。
【0018】
また、車上無線装置17に既存の信号装置としての制御をする設定がされている場合や、地上管理装置1から受信した情報の中に通過した地上子を基点とした列車制御情報が含まれていない場合などは、地上子3から車上子13や送受信部12を介して入力された信号をそのまま車上信号装置11に出力する。この時、車上信号装置11は既存の信号装置としての制御を行うことになるため、列車が既存の自動列車停止システムが導入されている区間に入っても安全に運転することができる。このような既存の信号装置としての制御をする設定はどのような方式でもよく、地上管理装置1から無線で指示してもよいし、スイッチ等の外部インタフェースを備えて運転士、保守員等から設定できるようにしてもよい。
【0019】
地上管理装置1は、無線機2や無線機19を介して、車上無線装置17から、当該装置を搭載した列車10の通過した地上子の識別番号を受信し、この情報に基づいて、路線上の各閉塞区間における列車の在線・非在線を判断する。具体的には、路線上の地上子の位置、各閉塞区間の接続関係と区間長のデータを記憶しておき、通過した地上子から列車長分の区間を含む閉塞区間を列車在線と判定する。なお、列車長については、車上無線装置17から送信してもよいし、地上管理装置1が各列車の列車長を記憶しておき、車上無線装置17から送信された列車の識別番号を使って参照してもよいし、データを持たずに路線を走行する列車の最大長を使ってもよい。その際、列車先頭から車上子の取付け位置までの距離なども考慮しておくことが望ましい。また、列車の進行方向についても、車上無線装置17から送信してもよいし、地上管理装置1が各列車の通過した地上子を記憶しておき、その地上子との位置関係から判定してもよいし、線路の運転方向が決まっている場合にはその方向を使えばよい。
【0020】
そして、地上管理装置1は、上記の方法で判定した、路線上の各閉塞区間における列車の在線・非在線判定結果に基づいて、各地上子から進行方向に存在する列車非在線の閉塞区間全体の長さを計算し、さらにはその長さから所定の余裕距離を減算した距離を算出する。この余裕距離は、既存の自動列車停止システムの値に倣ってもよいし、列車のブレーキ性能や応答時間、天候などの外部条件を踏まえて決定してもよい。もちろん、余裕距離については、車上無線装置側で加味するようにしてもよい。全ての地上子に対してこの計算を行い、その結果を、各地上子を基点とした停止点までの距離情報として、路線上を走行する列車に搭載された車上無線装置に、無線機2を介して送信する。
【0021】
本実施例では、地上管理装置1と車上無線装置17との通信に無線を使用しているが、その方式は問わない。また、人工衛星を利用した衛星通信や、携帯電話を利用した電話回線通信等を使用してもよい。
【0022】
次に、本実施例の列車制御情報伝達システムの制御動作について説明する。
図4は、車上無線装置17により実行される処理動作を示すフローチャートである。
【0023】
ステップ101:車上無線装置17に情報もしくは信号が入力される。
【0024】
ステップ102:無線機2や無線機19を介して、地上管理装置1からの情報が入力された時は、ステップ111に進む。列車10が地上子3を通過して、地上子3からの信号が車上子13や送受信部12を介して入力された時は、ステップ121に進む。
【0025】
ステップ111:地上管理装置1からの各地上子を基点とした停止点までの距離情報を記憶し、ステップ112に進む。既に記憶している場合には更新する。
【0026】
ステップ112:列車10が既に地上子を通過していた場合、つまり、後述するステップ125で通過した地上子を基点とした停止点までの距離情報を車上信号装置11に出力していた場合には、ステップ113に進む。そうでない場合にはステップ101に戻る。
【0027】
ステップ113:ステップ111で記憶した各地上子を基点とした停止点までの距離情報から、直前に通過した地上子を基点とした停止点までの距離情報を抽出し、ステップ114に進む。
【0028】
ステップ114:ステップ113で抽出した情報と、後述するステップ125で車上信号装置11に出力した同じ地上子を基点とした停止点までの距離情報とを比較し、差分がある場合にはステップ115に進み、差分が無い場合にはステップ101に戻る。
【0029】
ステップ115:ステップ113で抽出した情報を第二の表示機18に表示する。例えば、後述するステップ126で表示した情報の下に、「停止点は地上子××から○○メートル(次地上子通過時にパターン更新)」という情報を表示し、ステップ101に戻る。
【0030】
ステップ121:地上子3からの信号を記憶し、ステップ122に進む。
【0031】
ステップ122:車上無線装置17に既存の信号装置としての制御をする設定がなされている場合はステップ124に進み、そうでなければステップ123に進む。
【0032】
ステップ123:地上子3からの信号から地上子の識別番号を認識して記憶する。ステップ111で記憶した情報を検索し、通過した地上子を基点とした停止点までの距離情報が含まれている場合にはステップ125に進み、そうでなければステップ124に進む。
【0033】
ステップ124:地上子3からの信号をそのまま車上信号装置11に出力し、ステップ101に戻る。
【0034】
ステップ125:通過した地上子の識別番号と、ステップ123で抽出した当該地上子を基点とした停止点までの距離情報とをATS−P電文と同じフォーマットで車上信号装置11に出力し、ステップ126に進む。
【0035】
ステップ126:ステップ123で抽出した当該地上子を基点とした停止点までの距離情報を第二の表示機18に表示する。例えば、「停止点は地上子××から○○メートル」という情報を表示し、ステップ127に進む。
【0036】
ステップ127:通過した地上子の識別番号を地上管理装置1に送信し、ステップ101に戻る。
【0037】
図5は、地上管理装置1により実行される処理動作を示すフローチャートである。
【0038】
ステップ201:地上管理装置1は、路線上の地上子の位置、各閉塞区間の接続関係と区間長のデータを記憶しておく。
【0039】
ステップ202:無線機2を介して、車上無線装置17からの情報が入力された時、この情報、つまり、列車の識別番号やその列車が通過した地上子の識別番号を記憶し、ステップ203に進む。なお、ステップ203へは、一定時間周期で進むとしてもよい。その場合、その間に入力された複数の情報を合わせて処理することや、処理タイマーなどを設定して装置の健全性をチェックすることなどができる。
【0040】
ステップ203:ステップ201で記憶した路線上の地上子の位置、各閉塞区間の接続関係と区間長のデータと、ステップ202で記憶した列車の識別番号と通過した地上子の識別番号に基づいて、列車が通過した地上子から当該列車の列車長分の区間を計算する。このように計算した在線区間は列車ごとに更新管理する。ステップ204に進む。
【0041】
ステップ204:ステップ203で計算され、かつ更新管理されている各列車の在線区間に基づいて、路線上の各閉塞区間の在線・非在線を判定する。ステップ205に進む。
【0042】
ステップ205:ステップ204で判定した路線上の各閉塞区間における列車の在線・非在線判定結果に基づいて、各地上子から進行方向に存在する列車非在線の閉塞区間全体の長さを計算し、ステップ206に進む。
【0043】
ステップ206:ステップ205で計算した各地上子から進行方向に存在する列車非在線の閉塞区間全体の長さから、所定の余裕距離を減算した距離を算出する。これが、各地上子を基点とした停止点までの距離である。全ての地上子に対してこの計算を行い、ステップ207に進む。
【0044】
ステップ207:ステップ206で計算した各地上子を基点とした停止点までの距離を、路線上を走行する列車に搭載された車上無線装置に、無線機を介して送信し、ステップ202に戻る。この情報は、全列車に全ての情報を送信してもよいし、列車ごとに通過すると想定される地上子に関係する情報だけを送信してもよい。
【0045】
以上に説明した制御動作が実行された場合、例えば、
図2の路線で説明すると、列車10bが、地上子3eを通過すると、列車10bの車上無線装置17bから地上管理装置1へ、通過した地上子3eの識別情報が送信され、地上管理装置1は、列車10bの列車長を考慮して、地上子3eから当該列車10bの列車長分の区間を含む閉塞区間5bを列車在線と判定する。そして、地上子3a、3b、3cから進行方向に存在する非在線の閉塞区間全体の長さを計算し、その長さから所定の余裕距離9を減算した距離8a、8b、8cを算出し、列車10の車上無線装置17に送信する。
【0046】
そして、列車10の車上無線装置17は、この情報を記憶しておき、列車10が地上子3aを通過し、地上子3aからの信号が車上子13や送受信部12を介して入力された時、記憶しておいた情報から当該地上子3aを基点とした停止点までの距離8aの情報を抽出し、地上子の識別番号3aと停止点までの距離8aとをATS−P電文と同じフォーマットで車上信号装置11に出力する。これにより、車上信号装置11は、指示された停止点を基点とする速度照査パターンを作成し、この速度照査パターンに従って列車10を制御することができる。
【0047】
本実施例では、車上信号装置がATS−P車上装置の場合を前提として説明したが、本来のATS−P形の自動列車停止システムは、各信号機が路線上の列車検知装置から閉塞区間の列車の在線・非在線を判定して進行や停止等の現示を表示し、この信号機に接続した符号処理器が、当該信号機の現示に基づいて停止点までの距離を判定し、この停止点までの距離情報と地上子の識別情報とを含むATS−P形の電文を、有電源地上子を介して車上側に送信し、そして、この電文を、ATS−P車上装置が、車上子と送受信器を介して受信し、この電文に含まれている情報に基づいて列車を制御するシステムである。
【0048】
これに対して、本実施例で説明したシステムは、地上管理装置が、各列車の車上無線装置から列車が通過した地上子の識別番号を受信し、この情報に基づいて閉塞区間の列車の在線・非在線を判定し、各地上子から進行方向に存在する列車非在線の閉塞区間全体の長さを計算、さらにはその長さから所定の余裕距離を減算した距離を算出し、この情報を各地上子を基点とした停止点までの距離として車上無線装置に送信し、そして、車上無線装置が、地上子通過を検知した時に、当該地上子の識別番号とその地上子から停止点までの距離情報をATS−P車上装置に入力するものである。
【0049】
つまり、従来は沿線に設置された列車検知装置、信号機、符号処理器によって作成され、有電源地上子を介して伝達されるATS−P形の列車制御情報を、本実施例によれば、地上管理装置が作成し、無線を介して車上無線装置に伝達することにより、既存のATS−P車上装置は、その処理動作を変えることなく列車を制御することができ、かつ沿線の列車検知装置、信号機、符号処理器、有電源地上子を不要とすることができる。
【0050】
また、従来のATS−P形の自動列車停止システムでは、列車制御に信号機や列車検知装置等の沿線装置を用いるため、列車の運転密度を制約する閉塞区間の設定はそれらの設置間隔によって制約されるが、本システムにはそのような制約は無い。地上管理装置に細かく設定した閉塞区間のデータを記憶しておき、それに合わせて無電源地上子を設置することで、列車を高密度に運転することができる。
【実施例2】
【0051】
実施例1の地上管理装置1は、各地上子を基点とした列車の停止点までの距離を、従来のATS−P形の自動列車停止システムと同様に固定的な閉塞区間に基づいて計算したが、そのような閉塞区間を設けずに、先行列車の最後尾位置を目標に計算してもよい。実施例2では、そのような地上管理装置の処理動作について説明する。実施例2のシステムの構成、地上管理装置以外の装置の処理動作は実施例1と同じであり、実施例1と対応する部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。つまり、システム構成は
図7の通りである。
【0052】
地上管理装置1’は、無線機2や無線機19を介して、車上無線装置17から、当該装置を搭載した列車10の通過した地上子の識別番号を受信し、この情報に基づいて、路線上の列車の在線区間を認識する。具体的には、路線上の地上子の位置、線路の長さと接続関係のデータを記憶しておき、通過した地上子から列車長分の区間を列車在線と判定する。なお、列車長については、実施例1と同様、車上無線装置17から送信してもよいし、地上管理装置1’が各列車の列車長を記憶しておき、車上無線装置17から送信された列車の識別番号を使って参照してもよいし、データを持たずに路線を走行する列車の最大長を使ってもよい。その際、列車先頭から車上子の取付け位置までの距離なども考慮しておくことが望ましい。また、列車の進行方向についても、車上無線装置17から送信してもよいし、地上管理装置1’が各列車の通過した地上子を記憶しておき、その地上子との位置関係から判定してもよいし、線路の運転方向が決まっている場合には、その方向を使えばよい。
【0053】
そして、地上管理装置1’は、上記の方法で判定した、路線上の列車在線区間に基づいて、各地上子から進行方向に存在する列車の非在線区間全体の長さを計算し、さらにはその長さから所定の余裕距離を減算した距離を算出する。この余裕距離は、実施例1と同様、既存の自動列車停止システムの値に倣ってもよいし、列車のブレーキ性能や応答時間、天候などの外部条件を踏まえて決定してもよい。もちろん、余裕距離については、車上無線装置側で加味するようにしてもよい。全ての地上子に対してこの計算を行い、その結果を、各地上子を基点とした停止点までの距離情報として、路線上を走行する列車に搭載された車上無線装置に、無線機2を介して送信する。
【0054】
また、地上管理装置により実行される処理動作を示すフローチャートを
図7に示す。
【0055】
ステップ201’:地上管理装置1’は、路線上の地上子の位置、線路の長さと接続関係のデータを記憶しておく。
【0056】
ステップ202’:無線機2を介して、車上無線装置17からの情報が入力された時、この情報、つまり、列車の識別番号やその列車が通過した地上子の識別番号を記憶し、ステップ203’に進む。なお、ステップ203’へは、一定時間周期で進むとしてもよい。その場合、その間に入力された複数の情報を合わせて処理することや、処理タイマーなどを設定して装置の健全性をチェックすることなどができる。
【0057】
ステップ203’:ステップ201’で記憶した路線上の地上子の位置、線路の長さと接続関係のデータと、ステップ202’で記憶した列車の識別番号と通過した地上子の識別番号に基づいて、列車が通過した地上子から当該列車の列車長分の区間を計算する。このように計算した在線区間は列車ごとに更新管理する。ステップ205’に進む。
【0058】
ステップ205’:ステップ203’で計算した路線上の各列車の在線区間に基づいて、各地上子から進行方向に存在する列車の非在線区間全体の長さを計算し、ステップ206’に進む。
【0059】
ステップ206’:ステップ205’で計算した各地上子から進行方向に存在する列車非在線区間全体の長さから、所定の余裕距離を減算した距離を算出する。これが、各地上子を基点とした停止点までの距離である。全ての地上子に対してこの計算を行い、ステップ207’に進む。
【0060】
ステップ207’:ステップ206’で計算した各地上子を基点とした停止点までの距離を、路線上を走行する列車に搭載された車上無線装置に、無線機を介して送信し、ステップ202’に戻る。この情報は、全列車に全ての情報を送信してもよいし、列車ごとに通過すると想定される地上子に関係する情報だけを送信してもよい。
【0061】
以上に説明した制御動作が実行された場合、例えば、
図8の路線で説明すると、列車10bが、地上子3eを通過すると、列車10bの車上無線装置17bから地上管理装置1’へ、通過した地上子3eの識別情報が送信され、地上管理装置1は、列車10bの列車長を考慮して、地上子3eから当該列車10bの列車長分の区間を列車在線と判定する。そして、地上子3a、3b、3cから進行方向に存在する非在線の閉塞区間全体の長さを計算し、その長さから所定の余裕距離9を減算した距離8a’、8b’、8c’を算出し、列車10の車上無線装置17に送信する。
【0062】
そして、列車10の車上無線装置17は、この情報を記憶しておき、列車10が地上子3aを通過し、地上子3aからの信号が車上子13や送受信部12を介して入力された時、記憶しておいた情報から当該地上子3aを基点とした停止点までの距離8a’の情報を抽出し、地上子の識別番号3aと停止点までの距離8a’とをATS−P電文と同じフォーマットで車上信号装置11に出力する。これにより、車上信号装置11は、指示された停止点を基点とする速度照査パターンを作成し、この速度照査パターンに従って列車10を制御することができる。
【0063】
つまり、本実施例によれば、地上管理装置が、先行列車の最後尾位置を目標に計算した列車制御情報を作成して無線を介して車上無線装置に伝達し、車上無線装置は、その列車制御情報を既存の自動列車停止システムのフォーマットで車上信号装置に出力することにより、既存のATS−P車上装置は、その処理動作を変えることなく列車を制御することができ、かつ、沿線の列車検知装置、信号機、符号処理器、有電源地上子を不要とすることができ、さらに、後続列車の停止点は、閉塞区間の境界に制約されず、先行列車の最後尾位置を目標に計算されるため、列車をより高密度に運転することができる。
【0064】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。