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特許6789841電動機の制御装置を制御する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789841
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】電動機の制御装置を制御する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20201116BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20201116BHJP
【FI】
   H02M7/493
   H02M7/48 F
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-27741(P2017-27741)
(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公開番号】特開2017-147933(P2017-147933A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2020年2月14日
(31)【優先権主張番号】1651320
(32)【優先日】2016年2月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502363191
【氏名又は名称】シュネーデル、トウシバ、インベーター、ヨーロッパ、ソシエテ、パル、アクション、セプリフエ
【氏名又は名称原語表記】SCHNEIDER TOSHIBA INVERTER EUROPE SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】メディ、メサウディ
(72)【発明者】
【氏名】オシヌ、ブルアル
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/145248(WO,A1)
【文献】 特開2012−222847(JP,A)
【文献】 特開2012−139083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/493
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の制御装置で作動する制御方法であって、前記制御装置は、
AC電圧を供給するために電気グリッドシステムに接続するよう設計される複数の入力位相と、
前記入力位相に接続され、少なくとも1つのインダクタンスを備えるコモン・モード・フィルタ(FMC)と、
DC電圧を供給するよう配置されるDC供給バスと、
前記DC供給バスに接続され、第1の変調信号と、基準キャリア信号として記述され、第1のチョッピング周波数で印加される第1のキャリア信号とを比較することによって得られる第1のパルス幅変調によって電動機に第1の電圧パルスエッジを印加するよう制御される第1のコンバータ(CONV1、CONV20)と、
前記DC供給バスに接続され、第2の変調信号と、第2のチョッピング周波数で印加される第2のキャリア信号とを比較することによって得られる第2のパルス幅変調によって制御される第2のコンバータ(CONV2、CONV10)とを備え、
前記第2のキャリア信号は、位相シフト角だけ前記基準キャリア信号と位相がずれるよう設計され、
前記制御方法は、前記第1のチョッピング周波数および前記第2のチョッピング周波数から最適位相シフト角を決定することを含み、前記最適位相シフト角は、前記コモン・モード・フィルタの前記インダクタンスによって受け取られる最大磁束が可能な限り小さくなる前記位相シフト角に対応することを特徴とする、制御方法。
【請求項2】
前記第1のチョッピング周波数と前記第2のチョッピング周波数との間の比率(ki)を決定するステップを備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比率(ki)に対する複数の格納値と、各比率値に対して、最大磁束に対応する理論上の最適位相シフト角(Ψi_opt_th)とを含む所定のデータテーブルからの読み出しステップを備えることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記最適位相シフト角は、前記制御装置がグラウンドに関して対称的なアーキテクチャを有する場合、前記理論上の最適位相シフト角(Ψi_opt_th)に対応することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記最適位相シフト角は、前記制御装置がグラウンドに関して非対称的なアーキテクチャを有する場合、補正値(Vcorr)を追加することで、前記理論上の最適位相シフト角(Ψi_opt_th)に対応することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記補正値(Vcorr)は、理論上の磁束(Φi_th)と、前記コモン・モード・フィルタの前記インダクタンスについて測定された実際の磁束(Φmes)との間の差に基づいて決定されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1のキャリア信号(P1)による最小値の達成を検出するためのステップと、前記第1のキャリア信号に対して前記第2のキャリア信号(P2)を同期するステップとを備え、決定された最適位相シフト角(Ψopt)を考慮することを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記最適位相シフト角は、前記制御装置内の前記第2のコンバータが能動整流器タイプである場合、180°の値を加えた場合の前記理論上の最適位相シフト角に対応することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記制御装置が、第3の変調信号と、第3のチョッピング周波数で印加される第3のキャリア信号とを比較することによって得られる第3のパルス幅変調によって制御される第3のコンバータを備える場合、前記方法は、
前記第1のキャリア信号の前記チョッピング周波数と前記第2のキャリア信号の前記チョッピング周波数との間の第1の比率を決定するステップと、
前記第1のキャリア信号の前記チョッピング周波数と前記第3のキャリア信号の前記チョッピング周波数との間の第2の比率を決定するステップと、
それにより決定される前記第1の比率および前記第2の比率によって形成される系列に関連する一連の2つの理論上の最適位相シフト角を決定するステップと、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項で定義される前記制御方法を作動させるよう設計される制御システムであって、前記システムは、少なくとも1つの制御ユニット(UC1、UC10、UC2、UC20)を備え、前記第1のチョッピング周波数および前記第2のチョッピング周波数から最適位相シフト角を決定するモジュールを備え、印加される前記最適位相シフト角が、前記コモン・モード・フィルタの前記インダクタンスによって受け取られる最大磁束が可能な限り小さくなる前記位相シフト角に対応することを特徴とする、制御システム。
【請求項11】
前記第1のチョッピング周波数と前記第2のチョッピング周波数との間の比率(ki)を決定するモジュールを備えることを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
比率(ki)に対する複数の格納値と、各比率値に対して、それにより決定される前記最大磁束に対応する理論上の最適位相シフト角(Ψi_opt_th)とを含む所定のデータテーブルからの読み出しモジュールを備えることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記最適位相シフト角は、前記制御装置がグラウンドに関して対称的なアーキテクチャを有する場合、前記理論上の最適位相シフト角(Ψi_opt_th)に対応することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記最適位相シフト角は、前記制御装置がグラウンドに関して非対称的なアーキテクチャを有する場合、補正値(Vcorr)を追加することで、前記理論上の最適位相シフト角(Ψi_opt_th)に対応することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記補正値(Vcorr)は、理論上の磁束(Φi_th)と、前記コモン・モード・フィルタの前記インダクタンスについて測定された実際の磁束(Φmes)との間の差に基づいて決定されることを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
第1のキャリア信号(P1)による最小値の達成を検出するためのモジュールと、前記第1のキャリア信号に対して前記第2のキャリア信号(P2)を同期するモジュールとを備え、そのようにして決定された前記最適位相シフト角(Ψopt)を考慮することを特徴とする、請求項12から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記最適位相シフト角は、前記制御装置内の前記第2のコンバータが能動整流器タイプである場合、180°の値を加えた場合の前記理論上の最適位相シフト角に対応することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記制御装置が、第3の変調信号と、第3のチョッピング周波数で印加される第3のキャリア信号とを比較することによって得られる第3のパルス幅変調によって制御される第3のコンバータを備える場合、前記システムは、
前記第1のキャリア信号の前記チョッピング周波数と前記第2のキャリア信号の前記チョッピング周波数との間の第1の比率を決定するモジュールと、
前記第1のキャリア信号の前記チョッピング周波数と前記第3のキャリア信号の前記チョッピング周波数との間の第2の比率を決定するモジュールと、
それにより決定される前記第1の比率および前記第2の比率によって形成される系列に関連する一連の2つの理論上の最適位相シフト角を決定するモジュールと、
を備えることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の制御装置(control installation)で作動する(deploy)制御方法、および前記方法を作動させるために前記装置で使用される制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1つまたは複数の電動機を制御するために複数のコンバータ制御装置を使用することが知られている。したがって、異なるアーキテクチャ間で、以下のように区別が行われる。
【0003】
−第1のアーキテクチャでは、上記装置は、コモンDC供給バスに並列に接続された、インバータタイプの少なくとも2つのコンバータを備え、これらのインバータのそれぞれは、別々の電動機を制御するために設計されている。
【0004】
−第2のアーキテクチャでは、上記装置は、グリッドシステムに接続された、能動整流器タイプの第1のコンバータと、電動機の制御用に設計されたインバータタイプの第2のコンバータとを備える。
【0005】
従来、各コンバータ内のトランジスタのスイッチング時間は、パルス幅変調(以下、PWM)によって判断される。交差型のPWMは、対称または非対称三角波状キャリア信号と1つまたは複数の変調信号との比較を含む。コンバータのパワートランジスタでは、キャリア信号と1つまたは複数の変調信号との間の交差部が、トランジスタの開閉のスイッチング時間を規定する。
【0006】
コンバータに印加されるチョッピング周波数が増加すると、コモンモード電流が増加することが知られている。生成されるコモンモード電流は、システムと各電動機との間のさまざまな経路を流れることができる。これらの経路は、以下で生成される容量結合によって生成される。
−各コンバータを電気負荷に接続するケーブルの導体の間、
−モータの巻線と固定子との間、および
−各コンバータのトランジスタと接地に接続された拡散器との間。
【0007】
したがって、上記装置が前述の2つのアーキテクチャのうちの1つによる2つのコンバータを備える場合、総コモンモード電圧は、各コンバータによって生成される干渉の合計である。
【0008】
慣習的に、生成される干渉を低減するためにフィルタが使用される。フィルタは、受動的な構成要素および/または能動的な構成要素から構成することができる。能動的な構成要素に基づくフィルタリングシステムでは、このシステムは、
−干渉の必要な減弱を達成するために、電磁干渉に対する標準的な所定の閾値に準拠するために、
−コモン・モード・インダクタンスが決して飽和しないことを保証するために、
ディメンション化する必要がある。
【0009】
これらのコモンモード電圧のフィルタリングのために、入力側に配置されたEMCフィルタは、これらの2つの制約を満たすためにしばしば過大寸法にされ、それにより、フィルタインダクタンスの磁心の飽和に対して最も好ましくないケースに対応する。
【0010】
上述のタイプの能動整流器アーキテクチャに従って実行される装置では、コモンモード電流を低減するためのさまざまな解決策が開発されている。これらの解決策は、例えば、整流器およびインバータの制御機能での動作の実行を含む。
【0011】
日本特許特開2003−018853号では、例えば、整流器段の3つのパワートランジスタ(高または低)の閉(または開)のためのスイッチング機能を、インバータ段の3つの対応するトランジスタ(それぞれ、高または低)の閉(または、開)のためのスイッチング機能と同期することによって、変速装置におけるコモンモード電流を低減する方法を提案する。この解決策は、コモンモード電流のフィルタリングに使用されるフィルタの寸法の縮小を可能にし、それにより、コンバータのコストを低減する。
【0012】
米国特許第6,185,115号はまた、整流器段のスイッチング機能と、インバータ段のスイッチング機能とを同期して、それにより、コモンモード電流を低減する方法を説明する。本方法は、インバータ段での単一スイッチングアームのスイッチングを、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジで、整流器段での単一スイッチングアームのスイッチングを同期させることを含み、それにより、1つのチョッピング間隔で、12の電圧パルスエッジから8つの電圧パルスエッジに、すべてのスイッチングアームで、低減することを可能にする。
【0013】
欧州特許2442436A2号はまた、整流器段とインバータ段との間でスイッチング機能を同期する方法を説明する。この方法は、整流器段のトランジスタでの各スイッチング動作と、インバータ段のスイッチング動作とを同期することを可能にし、それにより、生成される総コモンモード電流を低減することを可能にする。
【0014】
しかしながら、これらの特許出願で説明される解決策は、必ずしも充分ではなく、コモンDC供給バスに接続される少なくとも2つの並列インバータを備えるアーキテクチャを、制御装置に適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】日本特許特開2003−018853号
【特許文献2】米国特許第6,185,115号
【特許文献3】欧州特許2442436A2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、コモンモード電圧生成の最大制限を可能にする制御方法を提案することであり、したがって、少なくとも2つのコンバータに組み込まれる制御装置に適合し、異なるトポロジーに従って配置することができる、適切な定格のコモン・モード・フィルタの使用を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、電動機の制御のために装置で作動する制御方法によって達成され、前記制御装置は、
−AC電圧を供給するために電気グリッドシステムに接続するために設計された複数の入力位相と、
−入力位相に接続され、少なくとも1つのインダクタンスを備えるコモン・モード・フィルタと、
−DC電圧を供給するために配置されたDC供給バスと、
−前記DC供給バスに接続され、第1の変調信号と、基準キャリア信号として記載され、第1のチョッピング周波数で印加される第1のキャリア信号とを比較することによって得られる第1のパルス幅変調により第1の電圧パルスエッジを電動機に印加するよう制御される第1のコンバータと、
−前記DC供給バスに接続され、第2の変調信号と、第2のチョッピング周波数で印加される第2のキャリア信号とを比較することによって得られる第2のパルス幅変調により制御される第2のコンバータとを備え、
前記第2のキャリア信号は、位相シフト角だけ基準キャリア信号と位相がずれているように設計される。
【0018】
本発明による制御方法は、第1のチョッピング周波数および第2のチョッピング周波数から最適位相シフト角を決定することを含み、前記最適位相シフト角は、コモン・モード・フィルタのインダクタンスによって受け取られる最大磁束が可能な限り小さくなる位相シフト角に対応し、インダクタンスの磁気コアの何らかの飽和を避ける。
【0019】
特定の特徴によれば、本方法は、第1のチョッピング周波数と第2のチョッピング周波数との間の比率を決定するステップを含む。
【0020】
さらなる特定の特徴によれば、本方法は、所定のデータテーブルから比率値の数を読み出し、各比率値に対して、最大磁束に対応する理論上の(notional)最適位相シフト角を読み出すステップを含む。
【0021】
実施形態の第1の変形例によれば、最適位相シフト角は、制御装置がグラウンドに関して対称的な構造を有する場合、前記理論上の最適位相シフト角に対応する。
【0022】
実施形態の第2の変形例によれば、最適位相シフト角は、制御装置がグラウンドに関して非対称的な構造を有する場合、補正値を追加することで、前記理論上の最適位相シフト角に対応する。
【0023】
特定の特徴によれば、補正値は、理論上の磁束と、コモン・モード・フィルタのインダクタンスについて測定された実際の磁束との間の差に基づいて決定される。
【0024】
さらなる特定の特徴によれば、本方法は、第1のキャリア信号による最小値の達成を検出するためのステップと、第1のキャリア信号に対して第2のキャリア信号を同期するステップとを含み、決定された最適位相シフト角を考慮する。
【0025】
実施形態のさらなる変形例によれば、最適位相シフト角は、制御装置内の第2のコンバータが能動整流器タイプである場合、180°の値を加えた場合の理論上の最適位相シフト角に対応する。
【0026】
実施形態のさらなる変形例によれば、制御装置が、第3の変調信号と、第3のチョッピング周波数で印加される第3のキャリア信号との比較によって得られる第3のパルス幅変調によって制御される第3のコンバータを備える場合、本方法は、
−第1のキャリア信号のチョッピング周波数と第2のキャリア信号のチョッピング周波数との間の第1の比率の決定と、
−第1のキャリア信号のチョッピング周波数と第3のキャリア信号のチョッピング周波数との間の第2の比率の決定と、
−それにより決定される第1の比率および第2の比率によって形成される系列(series)と関連付けられる一連(series)の2つの理論上の最適位相シフト角の決定と、
を備える。
【0027】
本発明はまた、上記の制御方法の導入のために設計される制御システムに関し、前記システムは、少なくとも1つの制御ユニットを備え、第1のチョッピング周波数および第2のチョッピング周波数から最適位相シフト角を決定するためのモジュールを備え、印加される前記最適位相シフト角は、コモン・モード・フィルタのインダクタンスによって受け取られる最大磁束が可能な限り小さくなる位相シフト角に対応する。
【0028】
特定の特徴によれば、本システムは、第1のチョッピング周波数と第2のチョッピング周波数との間の比率を決定するモジュールを備える。
【0029】
さらなる特定の特徴によれば、本システムは、所定のデータテーブルから比率値の数を読み出し、各比率値に対して、決定された最大磁束に対応する理論上の最適位相シフト角を読み出すモジュールを備える。
【0030】
実施形態の第1の変形例によれば、最適位相シフト角は、制御装置がグラウンドに関して対称的な構造を有する場合、前記理論上の最適位相シフト角に対応する。
【0031】
実施形態のさらなる変形例によれば、最適位相シフト角は、制御装置がグラウンドに関して非対称的なアーキテクチャを有する場合、補正値を追加することで、前記理論上の最適位相シフト角に対応する。
【0032】
特定の特徴によれば、補正値は、理論上の磁束と、コモン・モード・フィルタのインダクタンスについて測定された実際の磁束との間の差に基づいて決定される。
【0033】
さらなる特定の特徴によれば、本システムは、第1のキャリア信号による最小値の達成を検出するモジュールと、第1のキャリア信号に対して第2のキャリア信号を同期するモジュールとを備え、決定された最適位相シフト角を考慮する。
【0034】
実施形態のさらなる変形例によれば、最適位相シフト角は、制御装置内の第2のコンバータが能動整流器タイプである場合、180°の値を加えた場合の理論上の最適位相シフト角に対応する。
【0035】
実施形態のさらなる変形例によれば、制御装置が、第3のチョッピング周波数で印加される第3のキャリア信号と第3の変調信号との比較によって得られる第3のパルス幅変調によって制御される第3のコンバータを備える場合、本システムは、
−第1のキャリア信号のチョッピング周波数と第2のキャリア信号のチョッピング周波数との間の第1の比率を決定するためのモジュールと、
−第1のキャリア信号のチョッピング周波数と第3のキャリア信号のチョッピング周波数との間の第2の比率を決定するためのモジュールと、
−それにより決定される第1の比率および第2の比率によって形成される系列と関連付けられる一連の2つの理論上の最適位相シフト角の決定するためのモジュールと、
を備える。
【0036】
さらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下に述べる詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A】2つの並列インバータがコモンDC供給バスに接続され、その各々が、別々の電動機を制御するために設計される、電動機のための制御装置のアーキテクチャを示す図である。
図1B】2つの並列インバータがコモンDC供給バスに接続され、その各々が、別々の電動機を制御するために設計される、電動機のための制御装置のアーキテクチャを示す図である。
図1C図1Aおよび図1Bで示したタイプの装置によって生成されるコモンモード電圧を示す図である。
図2】電動機に接続された能動整流器およびインバータを有する、電動機のための制御装置のアーキテクチャを示す図である。
図3A】2つのキャリア信号の間に印加される位相シフトの関数としての磁束の変化を示す図である。
図3B】2つのキャリア信号の間に印加される位相シフトの関数としての磁束の変化を示す図である。
図4】2つのキャリア信号の間に印加される位相シフト角の関数としての、コモン・モード・フィルタのインダクタンスから見た、最大磁束の変化に対する曲線を示す図である。
図5】2つのチョッピング周波数の間の比率の関数としての、2つのキャリア信号の間に印加されるべき位相シフトを示すデータテーブルの一例を示す図である。
図6】第1の動作ケースでの、本発明の原理の概略図を示す。
図7】第2の動作ケースでの、本発明の原理の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、電動機を制御するための装置の異なるアーキテクチャに適合させることができる制御方法を開示する。少なくとも2つのコンバータを組み込んだアーキテクチャに適合させることができる。
【0039】
簡略化のために、2つのコンバータを有する装置に関して本発明を以下に説明するが、本原理は2つ以上のコンバータを有する装置に適用できることを理解されたい。2つ以上のコンバータを有する装置に関連する動作の特定の特徴は、その後詳細に説明される。
【0040】
図1Aには、2つのコンバータを備えた第1の装置アーキテクチャが示されており、以下を備える。
【0041】
−三相システムに接続される場合の、電力供給システムRに接続される入力位相の数、例えば、3つの入力位相。
【0042】
−供給システムによって供給されるAC電圧をDC電圧に変換するための、例えば、ダイオードブリッジタイプの受動整流器REC。
【0043】
−正電位の第1の供給ラインL1と負電位の第2の供給ラインL2との間にDC電圧が印加されるDC供給バス。
【0044】
−第1の供給ラインL1と第2の供給ラインL2との間に接続され、バス上に一定のDC電圧を維持するよう設計された、少なくとも1つのバスコンデンサCbus。
【0045】
−DC供給バスに接続され、2つの供給ラインの間に並列に接続された複数のスイッチングアームを備える、インバータタイプの第1のコンバータCONV1。各スイッチングアームは、直列に接続された少なくとも2つのトランジスタ、例えば、IGBTタイプを組み込んでいる。
【0046】
−第1の出力位相U、V、Wであり、各第1の出力位相は、第1のコンバータの別々のスイッチングアーム内の2つのトランジスタの間の中間点に接続され、したがって、第1の電動機M1に接続される。
【0047】
−第1のコンバータCONV2と並列のDC供給バスに接続され、さらに2つの供給ラインの間に並列に接続された複数のスイッチングアームを備える、インバータタイプの第2のコンバータCONV2。各スイッチングアームは、直列に接続された少なくとも2つのトランジスタ、例えば、IGBTタイプを組み込んでいる。
【0048】
−第2の出力位相X、Y、Zであり、各第2の出力位相は、第2のコンバータの別々のスイッチングアーム内の2つのトランジスタの間の中間点に接続され、したがって、第2の電動機M2に接続される。
【0049】
図1Bでは、制御装置は、DC電圧源に直接接続され、したがって、整流器は不要である。しかしながら、図1Aに示すように、2つのコンバータを組み込んだダウン回路アーキテクチャは同一のままであり、以下に説明する本発明による解決策は、AC電圧源(図1A)およびDC電圧源(図1B)に対して有効である。
【0050】
共通の要素および同一の要素について図1Aで使用されたものと同じ参照符号を使用して、第2の装置アーキテクチャを図2に示し、以下を備える。
【0051】
−三相システムに接続される場合の、電力供給システムRに接続される、入力位相の数、例えば、3つの入力位相。
【0052】
−供給システムによって供給されるAC電圧をDC電圧に変換するための、能動整流器を備える第1のコンバータCONV10。コンバータは、複数のスイッチングアームを有し、それぞれは、例えば、IGBTタイプの、例えば、少なくとも2つのパワートランジスタを組み込んでいる。英語では、入力側に能動整流器段を備えたこのタイプのコンバータは、一般に“active front end”と呼ばれている。
【0053】
−正電位の第1の供給ラインL1と負電位の第2の供給ラインL2との間にDC電圧が印加されるDC供給バス。
【0054】
−第1の供給ラインと第2の供給ラインとの間に接続され、バス上に一定のDC電圧を維持するよう設計された、少なくとも1つのバスコンデンサCbus。
【0055】
−DC供給バスに接続され、バスの2つの供給ラインL1、L2の間に並列に接続された複数のスイッチングアームを有する、インバータの第2のコンバータCONV20。各スイッチングアームは、直列に接続された少なくとも2つのトランジスタ、例えば、IGBTタイプを組み込んでいる。
【0056】
−出力位相U1、V1、W1であって、それぞれが、インバータの別々のスイッチングアームにおける2つのトランジスタの間の中間点に接続され、電動機M3に接続されるよう設計される。
【0057】
添付図面において、示されるコンバータは、3相電源に接続され、2レベルタイプのものであり、すなわち、スイッチングアームによって制御される2つのパワートランジスタを組み込んでいる。当然ながら、本発明は、3レベル以上のコンバータを組み込んだアーキテクチャに適用することができる。
【0058】
従来の方法では、各コンバータCONV1、CONV2、CONV10、CONV20のトランジスタ上のコマンド機能は、パルス幅変調(以下、PWM)によって実行される。交差型のPWMは、対称または非対称三角波状キャリア信号と1つまたは複数の変調信号との比較を含む。インバータ段または整流器段におけるパワートランジスタに対して、キャリア信号と1つまたは複数の変調信号との間の交差部が、トランジスタの開閉のスイッチング時間を規定する。
【0059】
コンバータを制御するために、図1Aまたは図2に示される装置は、適切な制御システムを組み込んでいる。制御システムは、すべてのコンバータ用の共通制御ユニット、または各コンバータに関連付けられた別々の制御ユニットを備えることができる。本説明の残りの部分では、限定するものではないが、別々の制御ユニットが特定のコンバータの制御専用であるという解決策を検討する。したがって、図1Aに示されるアーキテクチャに従って、上記装置の第1のコンバータCONV1および第2のコンバータCONV2のそれぞれの制御のために、2つの別々の制御ユニットUC1、UC2が使用される。したがって、図2に示されるアーキテクチャに従って、上記装置の第1のコンバータCONV10および第2のコンバータCONV20のそれぞれの制御のために、2つの別々の制御ユニットUC10、UC20が使用される。
【0060】
各制御ユニットUC1、UC2、UC10、UC20は、パルス幅変調によってスイッチング時間を決定し、それに関連したコンバータのトランジスタに対応する制御コマンドを送出する。各トランジスタは、関連する制御ユニットから制御コマンドを受信する、グリッド制御デバイスと関連付けられている。各制御ユニットは、具体的には、マイクロプロセッサおよびメモリ機能を備える。
【0061】
両方のアーキテクチャでは、コモン・モード・インダクタンスを組み込んだコモン・モード・フィルタFMCが、コンバータのスイッチングによって発生する電磁干渉をフィルタリングするために、供給グリッドに接続された入力位相に配置される。このタイプのフィルタは周知であり、本出願では詳細には説明しない。既知の方法では、具体的には、その周りに3つの巻線が配置された磁気コアを有するインダクタンスを備え、それぞれが別々の入力位相に直列に接続される。
【0062】
DC供給バスに接続された2つのコンバータを有するアーキテクチャでは、フロントエンドに配置されたコモン・モード・フィルタのインダクタンスによって受け取られる磁束は、さまざまなコンバータによって生成されるコモンモード電圧の組合せの関数である。
【0063】
本発明によれば、コモン・モード・インダクタンスによって受け取られる磁束は、コモンモード電圧の積分の関数であることを実証することが可能である。
【0064】
図1Aおよび図1Bに示されるアーキテクチャの簡略化された表現を示す図1Cを参照すると、インダクタンスから考えられるこのコモンモード電圧VMC_Lは、以下の関数である。
【0065】
−システム内の2つのコンバータの各々によって生成されるコモンモード電圧VMC1、VMC2、
−浮遊容量C1、C2が電源導体と接地との間に存在する。
【0066】
しかしながら、フィルタのインダクタンスで発生する最大磁束は、時間とともに、制御されていない方法で変化し、潜在的にその磁気コアの飽和をもたらす。インダクタンスの磁気コアが飽和する確率に対抗するために、最も簡単な解決法は、最も好ましくないケースに対応するためにフィルタの過剰寸法を必要とする。
【0067】
図1Aおよび図2では、コモンモード電流IMCに続く経路が破線で示されている。
【0068】
しかしながら、以下に説明する本発明は、コモン・モード・フィルタFMCのインダクタンスによって受け取られる磁束の制御を提案することによって、フィルタの過剰寸法を制限することを可能にする。
【0069】
本発明は、図1Aに示される装置のアーキテクチャを参照してより詳細に説明される。しかしながら、解決策は、図1Bに示された変形例および図2に示された装置の第2のアーキテクチャに対して同一であり、並列に接続された2つ以上のコンバータを組み込んだ任意のアーキテクチャに対して再現可能であることを理解すべきである。
【0070】
この目的のために、本発明は、上記装置中のコンバータCONV1、CONV2の各々の制御に用いられるキャリア信号の間の位相シフト角Ψに作用する。
【0071】
第1のコンバータの各トランジスタを制御するために、第1の制御ユニットUC1によって、第1のチョッピング周波数fsw1で生成された少なくとも第1のキャリア信号と、第1の変調信号とを用いて、第1のパルス幅変調が実施される。
【0072】
第2のコンバータの各トランジスタを制御するために、第2の制御ユニットUC2によって、第2のチョッピング周波数fsw2で生成された少なくとも第2のキャリア信号と、第2の変調信号とを用いて、第2のパルス幅変調が実施される。
【0073】
図3Aおよび図3Bは、第1のコンバータCONV1が第1のチョッピング周波数fsw1で生成された第1のキャリア信号P1で制御され、第2のコンバータCONV2が第2のチョッピング周波数fsw2で生成された第2のキャリア信号P2によって制御される場合に、コモン・モード・フィルタのインダクタンスによって受け取られる最大磁束Φmaxの変化を示し、2つのキャリア信号は、図3A図3Bとで異なる位相シフト角Ψ、Ψだけ位相変位される。図3Aでは、位相シフト角はゼロではなく、図3Bでは、位相シフト角が、例えば、ゼロに選択される。これらの2つの図の間で、キャリア信号の間の位相シフト角がフィルタのインダクタンスによって受け取られる最大磁束の値に及ぼす影響を観察することができる。図3Aでは、実際に、検出される最大磁束は、図3Bの場合よりも低い。
【0074】
したがって、本発明の目的は、第1のキャリア信号と第2のキャリア信号との間に印加される最適位相軸角Ψoptを決定することであり、その結果、コモン・モード・フィルタのインダクタンスによって受け取られる最大磁束Φmaxが、可能な限り低くなり、それによって、その磁気コアのどのような飽和も防止することが可能となる。2つのキャリア信号のうちの一方は、基準キャリア信号として定義され、一方、他方は、このようにして決定された最適位相シフト角Ψoptによって他方に対して位相変位される。
【0075】
2つのキャリア信号の間に印加される最適位相シフト角Ψoptは、チョッピング周波数fsw1、fsw2の間の比率kiに基づいて決定される。この比率は、第1のチョッピング周波数の値および第2のチョッピング周波数の値に応じて、複数の異なる値となる。これは、以下の関係によって任意に定義される。
【数1】
ここで、
−iは1からnの範囲であり、nは2以上である。
【0076】
−fsw1は第1のキャリア信号のチョッピング周波数である。
【0077】
−fsw2は第2のキャリア信号のチョッピング周波数である。
【0078】
したがって、各チョッピング周波数によって仮定される値によれば、比率kiの値は変化する。2つのチョッピング周波数の間の各比率に対して、2つのキャリア信号の間に複数の位相シフト角を適用することが可能である。これらの位相シフト角の各々に対して、コモン・モード・フィルタのインダクタンスによって受け取られる最大磁束は、潜在的に異なる。したがって、理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thは、アーキテクチャの構成がグラウンドに対して対称である場合、コモン・モード・インダクタンスによって受け取られる最大磁束が理論的に最小である比率kiの各値と関連付けられる。
【0079】
理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thは、例えば、所定のデータテーブル内の各比率kiと関連して格納されることが好ましい。図5は、第1のチョッピング周波数と第2のチョッピング周波数との間の比率kiの関数として、各位相シフト角Ψi_opt_thの間の関係を確立するデータテーブルを示す。
【0080】
事前定義されたデータテーブルは、制御ユニットUC1、UC2の1つまたは両方のメモリ装置に格納されることが好ましい。データテーブルは、メモリ装置にロードされる前に、学習フェーズ中またはシミュレーションによって確立してもよい。その確立のために、2つのチョッピング周波数間の比率kiの各値に対して、このことは以下を含む。
【0081】
−位相シフト角に対するさまざまな電位値の走査。
【0082】
−各位相シフト角に対して、コモン・モード・フィルタのインダクタンスによって受け取られる磁束の、測定または計算による決定。
【0083】
−各位相シフト角に対して、コモン・モード・インダクタンスによって受け取られる最大磁束の決定。
【0084】
−最大磁束が最小値であると仮定する理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thを格納。
【0085】
これらの一般原理に基づいて、2つのケースの間に区別がある。
【0086】
−第1のケースでは、浮遊容量C1とC2とが等しい、すなわち、配置がグラウンドに対して対称である。
【0087】
−第2のケースでは、浮遊容量が異なる、すなわち、配置がグラウンドに対して非対称である。
【0088】
第1のケースでは、ケーブル、電動機、およびグラウンドへの接続は、同一とみなされる。それに応じて、コモン・モード・フィルタFMCのインダクタンスによって受け取られる磁束は、各コンバータCONV1、CONV2によって生成されるコモンモード電圧の和の関数であり、2つの前述のキャリア信号に適用される2つのチョッピング周波数fsw1、fsw2の関数として変化する。
【0089】
第1のケースでは、2つのキャリア信号の間に適用される最適位相シフト角Ψoptは、2つのチョッピング周波数の間で決定される比率kiに関連する理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thに直接対応する。
【0090】
したがって、この第1のケースでは、本発明による制御方法は、図6を参照して以下に説明するステップに従う。例えば、限定するものではないが、本方法のさまざまなステップが、第1のコンバータCONV1の制御に関連する第1の制御ユニットUC1によって作動されると考えられる。しかしながら、この作動は、第2の制御ユニットによって行われてもよいことが理解されるべきである。したがって、第1のキャリア信号は、基準キャリア信号として任意に定義される。
【0091】
−第1のコンバータCONV1に関連する第1の制御ユニットUC1は、第1のコンバータの制御のために生成された第1のキャリア信号の第1のチョッピング周波数fsw1の値を読み取って、第2のコンバータCONV2の制御のために第2の制御ユニットUC2によって印加される第2のキャリア信号の第2のチョッピング周波数fsw2の値の取得のために第2の制御ユニットUC2に要求を送出するよう設計される、ソフトウェア読み取りモジュールを備える。要求を受信すると、第2の制御ユニットUC2は、第2のチョッピング周波数fsw2の値を第1の制御ユニットUC1に送出する。
【0092】
−第1の制御ユニットUC1は、このようにして得られた2つのチョッピング周波数値の間の比率kiに対する計算モジュールM1を作動させるように設計される。
【0093】
−計算された比率kiに基づいて、第1の制御ユニットUC1は、基準キャリア信号を構成する第1のキャリア信号と第2のキャリア信号との間に印加される最適位相シフト角Ψoptを決定するモジュールM2を実行する。上述したように、最適位相シフト角Ψoptは、所定のデータテーブル(図5)からの直接読み出しによって得ることができる。
【0094】
第1の制御ユニットUC1は、2つのキャリア信号の間でこのようにして決定された最適位相シフト角Ψoptを印加するように設計される。この目的を達成するために、
−第1の制御ユニットUC1は、第1のキャリア信号P1が最小値をとる時間を検出するよう設計された検出モジュールを作動させる。
【0095】
−決定された時間に基づいて、第1の制御ユニットUC1は、印加される最適位相シフト角Ψoptに対応する時間間隔の間、カウンタ機能を開始する。この時間間隔が達成されると、第1の制御ユニットUC1は、第2の制御ユニットUC2へ送信するために同期ビットSyncを生成する同期モジュールを実行する。
【0096】
−同期ビットSyncの受信時に、第2の制御ユニットUC2は、第2のキャリア信号P2をリセットするためのモジュールを実行し、このモジュールは、第2のキャリア信号P2を最小値にするよう設計される。
【0097】
−2つのチョッピング周波数の間の比率kiが変更された場合、上述のステップを再作動する必要がある。
【0098】
図4は、キャリア信号の間に印加される最適位相シフト角Ψの関数として得られる最大磁束の変化を示す。したがって、キャリア信号の間の最適位相シフト角の1つまたは複数の値に対して最小磁束が存在すると理解することができる。
【0099】
第2の前述のアーキテクチャに従って、すなわち、能動整流器タイプの第1のコンバータCONV10と、電動機に接続されたインバータタイプの第2のコンバータCONV20とによって実行される制御装置では、上述の方法によって決定される最適位相シフト角Ψi_opt_thは、180°の値で調節されなければならない。当然、これは、第1のコンバータCONV10と第2のコンバータCONV20が同一である場合に当てはまる。
【0100】
上述の第2のケースでは、配置はもはやグラウンドに関して同一ではなく、2つのコンバータのモータおよび/またはケーブル接続が異なり、それにより、浮遊容量に対する別々の値が得られる。
【0101】
第2のケースでは、印加される最適位相シフト角Ψoptは、2つのチョッピング周波数の間の比率から直接推定される理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thとはならず、浮遊容量C1、C2が別々の値を有する。したがって、2つのチョッピング周波数の間の比率から推定される理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thに補正関数を適用しなければならない。この補正は、システムの動作中にリアルタイムで作動させることができ、またはこの動作の前にシミュレーションまたは学習フェーズの作動によって決定することができる。比率kiの各値と補正された理論上の最適位相シフト角とを関連付けるための新しいデータテーブルは、例えば、制御ユニットのメモリ機能に確立され、格納される。
【0102】
印加される補正を決定するために、第1の制御ユニットUC1は、コモン・モード・フィルタのインダクタンスに流れる実際の磁束を決定しなければならない。この実際の磁束は、以下のように決定することができる。
【0103】
−磁束センサを用いてインダクタンスを直接測定する。
【0104】
−コモン・モード・フィルタのインダクタンスの端子の電圧に基づいて間接的に測定する。三巻インダクタンスの場合、以下のようになる。
【数2】
ここで、V1、V2、およびV3は、インダクタンスにおける各巻線の端子における電圧である。
【0105】
関連する磁束は、以下の関係から推定される。
【数3】
【0106】
図7を参照すると、リアルタイムに実行される理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thの補正を考慮して、制御システムで作動する本発明による方法は、以下のステップを含む。
【0107】
−第1のコンバータCONV1に関連する第1の制御ユニットUC1は、第1のコンバータCONV1の制御のために生成された第1のキャリア信号P1の第1のチョッピング周波数fsw1の値を読み取って、第2のコンバータCONV2の制御のために第2の制御ユニットUC2によって印加される第2のキャリア信号P2の第2のチョッピング周波数fsw2の値の取得のために第2の制御ユニットUC2に要求を送出するよう設計される、ソフトウェア読み取りモジュールを備える。要求を受信すると、第2の制御ユニットUC2は、第2のチョッピング周波数の値を第1の制御ユニットに送出する。
【0108】
−第1の制御ユニットUC1は、このようにして得られた2つのチョッピング周波数値の間の比率kiに対する計算モジュールM10を作動させるように設計される。
【0109】
−計算された比率kiに基づいて、第1の制御ユニットUC1は、2つのキャリア信号の間に印加される理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thを決定するモジュールを実行する。上述したように、理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thは、所定のデータテーブル(図5)からの直接読み出しによって得ることができる。この理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thは、例えば、データテーブルに格納され、第1の制御ユニットUC1によって読み取られる、理論上の最小磁束Φi_thに対応する。
【0110】
−同時に、第1の制御ユニットは、前述の方法のうちの1つによって決定された磁束に基づいて、すなわち、例えば、1秒に等しい所定の処理間隔にわたって、直接的または間接的な測定によって、実際の最小磁束Φmesを規定し、この間隔は、さまざまなコンバータのチョッピング周波数にかかわらず有効である。
【0111】
−第1の制御ユニットは、理論上の最小磁束Φi_thと実際の最小磁束Φmesとを比較し、差分Dを決定するよう設計された比較モジュールM30を実行する。例えば、差分Dは、例えば、比例積分補正タイプの補正モジュールM40にロードされ、理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thに適用される補正Vcorrをそれから減算する。補正値は、実際の最小磁束を実現するための最適位相シフト角Ψoptに対応する補正された位相シフト角を得るために、理論上の最適位相シフト角Ψi_opt_thに加えられる。
【0112】
次いで、第1の制御ユニットUC1は、2つのキャリア信号P1、P2の間でこのようにして決定された最適位相シフト角Ψoptを印加する。この目的を達成するために、
−第1の制御ユニットUC1は、第1のキャリア信号P1が最小値をとる検出時間を決定するよう設計された検出モジュールを作動させる。
【0113】
−このようにして決定された検出時間からの効果により、第1の制御ユニットUC1は、印加される最適位相シフト角Ψoptに対応する時間間隔の間、カウンタ機能を開始する。この時間間隔が達成されると、第1の制御ユニットUC1は、第2の制御ユニットUC2へ送信するために同期ビットを生成する。
【0114】
−同期ビットの受信時に、第2の制御ユニットUC2は、第2のキャリア信号P2をリセットするためのモジュールを実行し、第2のキャリア信号を最小値にするよう設計される。
【0115】
−2つのチョッピング周波数の間の比率が変更された場合、上述のステップを再作動する必要がある。
【0116】
上記の2つの方法は、グラウンドに関して対称的または非対称的な配置の場合、装置が2つ以上のコンバータを備える場合に、同様の方法で適用可能である。2つ以上のコンバータを組み込んだアーキテクチャでは、基準キャリア信号に関連して、各コンバータ上の各キャリア信号に適用される最適位相シフト角が決定されなければならない。最適位相角の結合系列は、コモン・モード・フィルタのインダクタンスによって受け取られる最小磁束値に対応する。この系列は一連の比に関連し、その系列の各比は、特定のコンバータに関連するキャリア信号のチョッピング周波数と基準キャリア信号のチョッピング周波数とに基づいて決定される。したがって、各一連の比に対して、最小磁束の達成のために印加されるべき一連の最適位相シフト角が存在する。各一連の比率と一連の最適位相シフト角との間の関連付けは、例えば、データテーブルに格納される。上述したように、このデータテーブルは、学習フェーズ中に、またはシミュレーションによって、さまざまなパラメータを走査し、磁束が最小であるデータ系列を選択することによって、確立することができる。
【0117】
したがって、本発明は、多数の利点を有する。これにより、以下のことが可能となる。
【0118】
−コモンDC供給バスに並列に接続された複数のインバータを備える制御システムアーキテクチャにおいて、コモン・モード・フィルタのインダクタンスによって受け取られる最大磁束値の最適化。
【0119】
−1つの能動コンバータおよび1つのインバータを備える制御システムアーキテクチャにおいて、コモン・モード・フィルタのインダクタンスによって受け取られる最大磁束の最適化。
【0120】
−グラウンドに関して対称または非対称のアーキテクチャにおける、コモン・モード・フィルタのインダクタンスによって受け取られる最大磁束の最適化。
【0121】
−単発の本発明による方法の作動による、インダクタンスの飽和状態からの回復。
【0122】
−コモン・モード・フィルタの最適な寸法設定であり、これにより、コストまたはスペースの任意の問題を回避する。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7