(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
排熱再生器、高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる排熱利用型の吸収式冷凍機において、
定期的に検出されるガス使用量を取得し、1ヶ月間の平均ガス使用量が、想定ガス使用量から所定以上増加していると判断した場合、メンテナンス指示の予報発報を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、あらかじめ作成された排熱なしの想定ガス使用量曲線に基づいて、冷房負荷に応じた排熱なしの想定ガス使用量を算出するとともに、排熱ありの想定ガス使用量曲線に基づいて、冷房負荷に応じた排熱ありの想定ガス使用量を算出し、
これら想定ガス使用量に基づいて想定ガス削減率を算出するとともに、実測のガス使用量に基づいて実測ガス削減率を算出し、
前記想定ガス削減率に対する前記実測ガス削減率の比率を算出し、この比率が80%以下になった場合に、メンテナンスを指示する予報発報を行い、
前記制御装置は、排熱回収量が定格排熱回収量×80%以下の場合に、排熱回収量低下要因の確認を促す発報を行うことを特徴とする吸収式冷凍機。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、排熱再生器、高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる排熱利用型の吸収式冷凍機において、定期的に検出されるガス使用量を取得し、1ヶ月間の平均ガス使用量が、想定ガス使用量から所定以上増加していると判断した場合、メンテナンス指示の予報発報を行う制御装置を備えていることを特徴とする。
これによれば、制御装置により、平均ガス使用量が、想定ガス使用量から所定以上増加していると判断した場合、メンテナンス指示の予報発報を行うので、予報発報により適切な対応を行うことで、COPを一定水準以上に保持することができる。
【0011】
第2の発明は、前記制御装置は、冷房負荷を算出し、この算出された冷房負荷に基づいて前記想定ガス使用量を算出することを特徴とする。
これによれば、冷房負荷に応じた想定ガス使用量を算出するので、冷房負荷に応じた予報発報を行うことができる。
【0012】
第3の発明は、前記制御装置は、あらかじめ作成された排熱なしの想定ガス使用量曲線に基づいて、冷房負荷に応じた排熱なしの想定ガス使用量を算出するとともに、排熱ありの想定ガス使用量曲線に基づいて、冷房負荷に応じた排熱ありの想定ガス使用量を算出し、これら想定ガス使用量に基づいて想定ガス削減率を算出するとともに、実測のガス使用量に基づいて実測ガス削減率を算出し、前記想定ガス削減率に対する前記実測ガス削減率の比率を算出し、この比率が80%以下になった場合に、メンテナンスを指示する予報発報を行うように制御することを特徴とする。
これによれば、制御装置により、想定ガス削減率に対する実測ガス削減率の比率が低くなった場合に、予報発報を行うので、予報発報により適切な対応を行うことで、COPを一定水準以上に保持することができる。
【0013】
第4の発明は、前記制御装置は、冷房負荷が40%以上の場合に、予報発報の制御を行うことを特徴とする。
これによれば、冷房負荷が40%以上の場合に、予報発報の制御を行い、冷房負荷が40%未満の場合には予報発報の制御は行わない。冷房負荷が40%未満の場合は、ガスバーナのON、OFF制御を行うので、この制御による誤差が生じ、ガス使用量の増加傾向を安定して判断することができない。
【0014】
第5の発明は、前記制御装置は、排熱回収量が定格排熱回収量×80%以下の場合に、排熱回収量低下要因の確認を促す発報を行うことを特徴とする。
これによれば、ガス使用量が増加している要因を提示するので、予報発報により、メンテナンス作業者が適切に対応することができる。
【0015】
第6の発明は、真空度低下していることを検出する真空度検出手段を備え、前記制御装置は、前記真空度検出手段により真空度が低下していると判断した場合に、真空度の確認を促す発報を行うことを特徴とする。
これによれば、ガス使用量が増加している要因を提示するので、予報発報により、メンテナンス作業者が適切に対応することができる。
【0016】
第7の発明は、前記制御装置は、排熱回収量の低下および真空度の低下と判断している場合以外には、機器の運転状態の確認を促す発報を行うことを特徴とする。
これによれば、ガス使用量が増加している要因を提示するので、予報発報により、メンテナンス作業者が適切に対応することができる。
【0017】
第8の発明は、前記制御装置と通信可能な遠隔監視システムを備え、前記制御装置から送られる情報に基づいて、前記遠隔監視システムにより、予報発報を行うことを特徴とする。
これによれば、遠隔監視システムにより予報発報を行うことで、メンテナンス作業者にガス使用量の増加を知らせることができる。
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係る吸収式冷凍機の概略構成図である。吸収式冷凍機100は、冷媒に水を、吸収液に臭化リチウム(LiBr)水溶液を使用し、この吸収液を、熱源発生装置(例えば太陽熱温水器やコージェネレーション装置)で生成された比較的低温(例えば約80℃程度)の温水で加熱する排熱再生器を備える排熱回収型(いわゆるジェネリンク)の吸収冷温水機である。
【0019】
吸収式冷凍機100は、
図1に示すように、蒸発器1と、この蒸発器1に並設された吸収器2と、これら蒸発器1および吸収器2を収納した蒸発器吸収器胴3と、ガスバーナ(加熱手段)4を備えた高温再生器5と、低温再生器6と、この低温再生器6に並設された凝縮器7と、これら低温再生器6および凝縮器7を収納した低温再生器凝縮器胴8と、他の設備から供給される温水などを熱源とする排熱再生器9と、この排熱再生器9を収納した排熱再生器胴11とを備えている。
【0020】
本実施形態では、低温再生器凝縮器胴8と排熱再生器胴11とは一体に連結して形成され、排熱再生器9および低温再生器6間で気体(蒸気)が連通可能となっている。
また、吸収式冷凍機100は、低温熱交換器12と、高温熱交換器13と、冷媒ドレン熱回収器17と、稀吸収液ポンプ45と、中間吸収液ポンプ46と、濃吸収液ポンプ47と、冷媒ポンプ48とを備え、これらの各機器が吸収液管21〜25および冷媒管31〜35などを介して配管接続されて循環経路が構成されている。
【0021】
蒸発器1には、蒸発器1内で冷媒と熱交換したブラインを、図示しない熱負荷(例えば、空気調和装置)に循環供給するための冷水管14が設けられており、この冷水管14の一部に形成された伝熱管14Aが蒸発器1内に配置されている。
また、冷水管14の伝熱管14Aの上流側には、当該冷水管14内を流通するブラインの入口側の温度を測定する冷水入口温度センサ70が設けられており、冷水管14の伝熱管14Aの下流側には、当該冷水管14内を流通するブラインの出口側の温度を測定する冷水出口温度センサ71が設けられている。冷水管14には、冷水管14の入口側と出口側の圧力差を検出する冷水差圧センサ72が設けられている。
吸収器2および凝縮器7には、吸収器2および凝縮器7に順次冷却水を流通させるための冷却水管15が設けられており、この冷却水管15の一部に形成された各伝熱管15A、15Bがそれぞれ吸収器2および凝縮器7内に配置されている。
【0022】
また、排熱再生器9には、図示しない熱源発生装置(例えば、太陽熱温水器やコージェネレーション装置)で生成された比較的低温(例えば、約80℃程度)の温水を、排熱再生器9に循環供給するための排温水供給管16が設けられている。この排温水供給管16は、排熱再生器9内に配置される伝熱管16Aと、この伝熱管16Aに並列に接続されるバイパス管16Bと、伝熱管16Aに供給する温水の流量を調整するために切り替えられる三方弁28とを備えている。
排温水供給管16の排温水の入口側には、排温水入口温度センサ73が設けられており、排温水供給管16の排温水の出口側には、排温水出口温度センサ74が設けられている。排温水供給管16には、排温水供給管16の入口側と出口側の圧力差を検出する排温水差圧センサ75が設けられている。
【0023】
吸収器2は、蒸発器1で蒸発した冷媒蒸気を吸収液に吸収させ、蒸発器吸収器胴3内の圧力を高真空状態に保つ機能を有する。この吸収器2の下部には、冷媒蒸気を吸収して稀釈された稀吸収液が溜る稀吸収液溜り2Aが形成され、この稀吸収液溜り2Aには、稀吸収液ポンプ45を有する稀吸収液管21の一端が接続されている。稀吸収液管21は、稀吸収液ポンプ45の下流側で分岐する分岐稀吸収液管21Aを備える。
この分岐稀吸収液管21Aは冷媒ドレン熱回収器17を経由した後に、稀吸収液管21の低温熱交換器12下流側で再び稀吸収液管21に合流する。この稀吸収液管21の他端には、排熱再生器9内に設けられる散布器9Aに接続される。
【0024】
排熱再生器9内には、排温水供給管16の一部に形成された伝熱管16Aが配置されており、この排温水供給管16に温水を流通させることにより、散布器9Aを通じて散布された吸収液を加熱再生、すなわち、吸収液中の冷媒を蒸発させてこの吸収液を濃縮することができる。
また、排熱再生器9の下部には、散布器9Aを通じて散布された吸収液が溜る吸収液溜りが形成され、この吸収液溜りには、中間吸収液ポンプ46を有する第1中間吸収液管22の一端が接続される。この第1中間吸収液管22の他端は、高温熱交換器13を経由した後、高温再生器5内に形成された熱交換部5Aの上方に位置する気層部5Bに開口している。
また、第1中間吸収液管22は、中間吸収液ポンプ46の下流側で第1分岐管22Aおよび第2分岐管22Bに分岐され、第1分岐管22Aは、高温熱交換器13を経由しないで、排気経路40に設けられた排ガス熱交換器41を経由した後、高温再生器5内の気層部5B内に開口している。第2分岐管22Bは低温再生器6内に開口している。
【0025】
高温再生器5は、シェル60内にガスバーナ4を収容して構成され、このガスバーナ4の上方に当該ガスバーナ4の火炎を熱源として吸収液を加熱再生する熱交換部5Aが形成されている。この熱交換部5Aには、ガスバーナ4で燃焼された排気ガスが流通する排気経路40が接続され、この排気経路40には、排ガス熱交換器41が設けられている。また、ガスバーナ4には、燃料ガスが供給されるガス管61と、ブロワ62からの空気が供給される吸気管63とが接続され、これらガス管61および吸気管63には、燃料ガスおよび空気の量を制御する制御弁64が設けられている。
また、ガス管61には、燃料ガスの流量を検出するガス流量計65が設けられている。
【0026】
熱交換部5Aの側方には、この熱交換部5Aで加熱再生された後に当該熱交換部5Aから流出した中間吸収液が溜る中間吸収液溜り5Cが形成されている。この中間吸収液溜り5Cの下端には第2中間吸収液管23の一端が接続され、この第2中間吸収液管23には高温熱交換器13が設けられている。この高温熱交換器13は、中間吸収液溜り5Cから流出した高温の中間吸収液の温熱で第1中間吸収液管22を流れる吸収液を加熱するものであり、高温再生器5におけるガスバーナ4の燃料消費量の低減を図っている。
第2中間吸収液管23の他端は、低温再生器6と吸収器2とを繋ぐ濃吸収液管25に接続されている。また、第2中間吸収液管23の高温熱交換器13上流側と吸収器2とは開閉弁V1が介在する吸収液管24により接続されている。
【0027】
低温再生器6は、高温再生器5で分離された冷媒蒸気を熱源として、低温再生器6内に形成された吸収液溜り6Aに溜った吸収液を加熱再生するものであり、吸収液溜り6Aには、高温再生器5の上端部から低温再生器6の底部に延びる冷媒管31の一部に形成される伝熱管31Aが配置されている。この冷媒管31に冷媒蒸気を流通させることにより、上記伝熱管31Aを介して、冷媒蒸気の温熱が吸収液溜り6Aに溜った吸収液に伝達され、この吸収液が更に濃縮される。
低温再生器6の吸収液溜り6Aには、濃吸収液管25の一端が接続され、この濃吸収液管25の他端は、吸収器2の気層部2B上部に設けられる濃液散布器2Cに接続されている。濃吸収液管25には濃吸収液ポンプ47および低温熱交換器12が設けられている。この低温熱交換器12は、低温再生器6の吸収液溜り6Bから流出した濃吸収液の温熱で第2稀吸収液管21Cを流れる稀吸収液を加熱するものである。
【0028】
また、濃吸収液管25の濃吸収液ポンプ47上流側と、第1中間吸収液管22の中間吸収液ポンプ46上流側とは、高温再生器5をバイパスする第1バイパス管26により接続されており、濃吸収液管25には、濃吸収液ポンプ47および低温熱交換器12をバイパスする第2バイパス管27が設けられている。
中間吸収液ポンプ46の運転が停止している場合には、排熱再生器9の吸収液溜りから流出した吸収液は、第1中間吸収液管22、第1バイパス管26、濃吸収液ポンプ47、低温熱交換器12および濃吸収液管25を通じて、吸収器2内に供給される。さらに、濃吸収液ポンプ47の運転が停止した場合には、排熱再生器9の吸収液溜りから流出した吸収液は、第1中間吸収液管22、第1バイパス管26、第2バイパス管27および濃吸収液管25を通じて吸収器2内に供給される。
【0029】
前述のように、高温再生器5の気層部5Bと凝縮器7の底部に形成された冷媒液溜り7Aとは冷媒管31により接続される。この冷媒管31は、低温再生器6の吸収液溜り6Aに配管された伝熱管31Aおよび冷媒ドレン熱回収器17を備え、この冷媒管31の伝熱管31A上流側と吸収器2の気層部2Bとは開閉弁V2が介在する冷媒管32により接続されている。
また、凝縮器7の冷媒液溜り7Aには、この冷媒液溜り7Aから流出した冷媒が流れる冷媒管34の一端が接続され、この冷媒管34の他端は、下方に湾曲したUシール部34Aを介して蒸発器1の気層部1Aに接続されている。
蒸発器1の下方には、液化した冷媒が溜る冷媒液溜り1Bが形成され、この冷媒液溜り1Bと蒸発器1の気層部1A上部に配置される散布器1Cとは冷媒ポンプ48が介在するに冷媒管35により接続されている。
【0030】
次に、本実施形態の制御構成について説明する。
図2は、本実施形態の制御構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の吸収式冷凍機100は、コントローラ50を備えており、コントローラ50は、制御装置51を備えている。制御装置51は、吸収式冷凍機100の各部を中枢的に制御するものであり、演算実行部としてのCPU、このCPUによって実行可能な基本制御プログラムや所定のデータ等を不揮発的に記憶するROM、RAM、その他の周辺回路などを備えている。
また、制御装置51には、冷水入口温度センサ70、冷水出口温度センサ71、冷水差圧センサ72、排温水入口温度センサ73、排温水出口温度センサ74は、排温水差圧センサ75およびガス流量計65の検出信号がそれぞれ入力されるように構成されている。
また、コントローラ50は、メモリ52と、タイマ53と、操作部54と、運転表示部55とをそれぞれ備えている。
【0031】
コントローラ50の制御装置51は、吸収式冷凍機100のガスバーナ4の燃料制御弁64を制御することで、ガスバーナ4による燃焼制御を行うとともに、稀吸収液ポンプ45、中間吸収液ポンプ46、濃吸収液ポンプ47および冷媒ポンプ48の駆動制御を行うように構成されている。さらに、コントローラ50の制御装置51は、稀吸収液ポンプ45、中間吸収液ポンプ46、濃吸収液ポンプ47および冷媒ポンプ48のインバータ制御を行うことで、稀吸収液ポンプ45、中間吸収液ポンプ46、濃吸収液ポンプ47および冷媒ポンプ48による流量制御を行うように構成されている。また、制御装置51は、各弁28,V1,V2の開閉制御を行うように構成されている。
【0032】
また、コントローラ50は、例えば、無線または有線の通信手段を介して遠隔監視システム80と通信可能に構成されており、コントローラ50により取得された情報を遠隔監視システム80に送信するように構成されている。
【0033】
本実施形態においては、制御装置51は、冷房運転が開始された場合、排温水入口温度センサにより、排温水の入口温度を検出し、排温水入口温度が70℃以上の場合、制御装置51は、排熱があると判断する。
排熱があると判断した場合は、制御装置51は、現在のガスバーナ4によるガス使用量を検出するとともに、冷房負荷を算出する。ガス使用量は、ガス流量計65により検出される。
冷房負荷は、以下の式に基づいて算出する。
冷房負荷=(冷水出入口温度差÷定格冷水出入口温度差)×(冷水差圧値÷定格冷水差圧値)0.5×100(%)
すなわち、冷水入口温度センサ70および冷水出口温度センサ71により、冷水の入口側温度と出口側温度の差を算出する。続いて、冷水差圧値と冷水の流量とは、一定の関係があるので、定格冷水差圧値に対する冷水差圧値の0.5乗を算出することで、冷水の流量を求めることができる。
【0034】
次に、制御装置51は、冷房負荷が40%以上であるか否かを判断し、冷房負荷が40%以上の場合は、想定ガス使用量を算出する。冷房負荷が40%未満の場合は、本実施形態の制御は行わない。
ここで、冷房負荷が40%以上の場合にのみ制御を行うようにしているのは、冷房負荷が40%未満の場合、システムの設定として、冷房負荷に対応するための制御が、ガスバーナ4による燃焼のON、OFF制御となるため、後述する判定値の誤差が生じるおそれがあるためである。そのため、必ずしも、冷房負荷が40%以上であるか否かで判断する必要はなく、ガスバーナ4による燃焼のON、OFF制御に切り替えられる冷房負荷に応じて設定するようにすればよい。
【0035】
次に、制御装置51は、想定ガス使用量を算出する。
想定ガス使用量は、以下の式に基づいて算出する。
想定ガス使用量=(A×冷房負荷)−B
ここで、AおよびBは、システム仕様毎の定数である。
【0036】
制御装置51は、想定ガス使用量を算出した後、ガス使用量の判定値を求める。判定値は以下の式で算出される。
判定値=(ガス使用量÷想定ガス使用量)−1
判定値の算出は、例えば、1日1回、所定の時間に行われ、制御装置51は、算出された判定値の平均値を求める。
制御装置51は、例えば、月末など1ヶ月に1回、平均の判定値が所定値以上か否かを判断する。
【0037】
本実施形態においては、判定値が0.1以上の場合、すなわち、ガス使用量が10%以上となった場合に、制御装置51は、ガス使用量が増加していると判断するように構成されている。
制御装置51は、判定値が0.1以上であると判断した場合には、メンテナンスを指示する予報発報を行うように制御する。メンテナンス指示の予報発報は、例えば、運転表示部55にメンテナンス指示を表示させることにより行う。
なお、制御装置51により、判定値が0.1以上であると判断した場合、コントローラ50から遠隔監視システム80にその情報を送信し、遠隔監視システム80によりメンテナンス指示の予報発報を行うようにしてもよい。
【0038】
ガス使用量が増加していると考えられる要因としては、例えば、排熱回収量が低下していることが考えられる。
そのため、制御装置51は、排熱回収量≦定格排熱回収量×80(%)の場合には、排熱回収量が低下していると判断し、排熱回収量が低下している要因の確認を促すように、メンテナンス指示を行う。
【0039】
また、その他の要因としては、例えば、通常、吸収式冷凍機100の内部は、大気以下の圧力で運転されているが、吸収式冷凍機100の内部圧力が高くなり、真空度が低下している場合に、ガス使用量が増加すると考えられる。真空度が低下しているか否かを判断する場合は、例えば、図示しないが、吸収器2には、抽気装置が取り付けられており、吸収式冷凍機100の内部圧力が高くなると、抽気装置の内部における抽気圧力が増大する。そのため、真空度検出手段により抽気装置の抽気圧力が増大したと判断した場合に、真空度が低下していると判断することができる。
この場合には、制御装置51は、吸収式冷凍機100の内部の真空度が低下していると判断した場合に、真空度が低下している要因の確認を促すようにメンテナンス指示を行う。
なお、吸収式冷凍機100において、真空度低下の予報発報を行う制御が行われている場合には、ガス使用量の増加による予報発報と、真空度低下の予報発報とが同時に発報されている場合に、真空度低下の確認を促す予報発報を行うようにしてもよい。
【0040】
さらに、排熱回収量の低下および真空度の低下が確認されない場合には、制御装置51は、吸収式冷凍機100における各機器の運転状態の確認を促すようにメンテナンス指示を行う。
【0041】
メンテナンス指示の予報発報が行われた場合には、吸収式冷凍機100のメンテナンス作業者が、メンテナンス指示に従って、吸収式冷凍機100のメンテナンスを実施する。
このメンテナンスの実施により、ガス使用量が想定ガス使用量以下となった場合には、制御装置51は、ガス使用量が低下したと判断して、遠隔監視システム80にメンテナンスの処置内容と結果を送信し、遠隔監視システム80により、遠隔監視レポートとして処置内容と結果をユーザに連絡する。
なお、前記実施形態においては、ガス使用量が10%以上となった場合に、ガス使用量が増加していると判断するようにしているので、ガス使用量が10%未満となった場合に、ガス使用量が適正と判断するようにしてもよい。
【0042】
次に、本実施形態の動作について説明する。
冷房運転時においては、冷水管14を介して図示しない熱負荷にブライン(例えば、冷水)が循環供給される。制御装置51は、ブラインの蒸発器1の出口側温度(冷水出口温度センサ71にて検出される温度)が所定の設定温度、例えば7℃になるように吸収式冷凍機100に投入される熱量が制御される。
具体的には、制御装置51は、例えば、熱負荷が大きく、かつ、排温水供給管16を介して排熱再生器9に供給する温水の温度が所定温度(例えば、85℃)に達している時には、排温水供給管16から排熱再生器9に温水を定格量供給すると共に、全てのポンプ45〜48を起動し、かつ、ガスバーナ4においてガスを燃焼させ、冷水出口温度センサ71が計測するブラインの温度が所定の7℃となるようにガスバーナ4の火力を制御する。
【0043】
この場合、吸収器2から稀吸収液管21を介して稀吸収液ポンプ45により排熱再生器9に搬送された稀吸収液は、この排熱再生器9内の吸収液溜りにおいて、排温水供給管16から供給される温水により伝熱管16Aの管壁を介して加熱されることにより、稀吸収液中の冷媒が蒸発分離される。
【0044】
冷媒を蒸発分離して吸収液濃度が高くなった中間吸収液の一部は、第1中間吸収液管22の中間吸収液ポンプ46により高温熱交換器13または排ガス熱交換器41を経由して加熱され高温再生器5に送られる。また、中間吸収液の残りは、第2分岐管22Bを通じて、低温再生器6に送られる。
高温再生器5に送られた中間吸収液は、この高温再生器5でガスバーナ4による火炎および高温の燃焼ガスにより加熱されるため、この中間吸収液中の冷媒が蒸発分離する。高温再生器5で冷媒を蒸発分離して濃度が上昇した中間吸収液は、高温熱交換器13を経由して濃吸収液管25に送られ、低温再生器6を経由した吸収液と合流する。
【0045】
一方、低温再生器6に送られた中間吸収液は、高温再生器5から冷媒管31を介して供給されて伝熱管31Aに流入する高温の冷媒蒸気により加熱され、さらに冷媒が分離して濃度が一段と高くなり、この濃吸収液が高温再生器5を経由した上記吸収液と合流し、濃吸収液ポンプ47により低温熱交換器12を経由して吸収器2に送られ、濃液散布器2Cから散布される。
【0046】
低温再生器6で分離生成した冷媒は、凝縮器7に入って凝縮して冷媒液溜り7Aに溜る。そして、冷媒液溜り7Aに冷媒液が多く溜まると、この冷媒液は冷媒液溜り7Aから流出し、冷媒管34を経由して蒸発器1に入り、冷媒ポンプ48の運転により揚液されて散布器1Cから冷水管14の伝熱管14Aの上に散布される。
伝熱管14Aの上に散布された冷媒液は、伝熱管14Aの内部を通るブラインから気化熱を奪って蒸発するため、伝熱管14Aの内部を通るブラインは冷却され、こうして温度を下げたブラインが冷水管14から熱負荷に供給されて冷房などの冷却運転が行われる。
そして、蒸発器1で蒸発した冷媒は吸収器2に入り、低温再生器6より供給されて上方から散布される濃吸収液に吸収されて、吸収器2の稀吸収液溜り2Aに溜り、稀吸収液ポンプ45によって排熱再生器9に搬送される循環を繰り返す。
【0047】
このとき、冷水出口温度センサ71が計測する温度が所定の7℃になるように、ガスバーナ4による加熱量、具体的にはガスバーナ4に供給する燃料ガス量が制御装置51により制御される。
【0048】
また、ガスバーナ4による燃焼を行わない運転においては、吸収液は、排温水供給管16から供給される温水により排熱再生器9において加熱されて冷媒を蒸発分離する。そして、吸収液濃度が高くなった吸収液は、第1バイパス管26、濃吸収液ポンプ47および低温熱交換器12を経由して吸収器2に戻される。
一方、排熱再生器9で分離生成した冷媒蒸気は、低温再生器6を経由して凝縮器7の冷媒液溜り7Aに入り、冷媒管34を経由して蒸発器1に流入する。
蒸発器1内に流入した冷媒液は、冷媒ポンプ48の運転により散布器1Cから冷水管14の伝熱管14Aの上に散布され、伝熱管14A内を通るブラインから熱を奪って蒸発し、吸収器2に入って上方から散布される吸収液に吸収される循環が行われる。なお、吸収液が冷媒を吸収する際に発生する熱は、吸収器2内に配置される冷却水管15の伝熱管15Aにより冷却される。
【0049】
このとき、冷水出口温度センサ71が計測する温度が所定の7℃になるように、排熱再生器9における加熱量、具体的には排温水供給管16から伝熱管16Aに取り込む温水の量、すなわち三方弁28の開度が制御装置51により制御される。
【0050】
次に、本実施形態による制御動作について、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
本実施形態においては、制御装置51は、冷房運転が開始された場合(ST1)、排温水入口温度センサにより、排温水の入口温度を検出し、排温水入口温度が70℃以上であるか否かを判断する(ST2)。排温水入口温度が70℃以上である場合(ST2:YES)、制御装置51は、排熱があると判断する。
排熱があると判断した場合は、制御装置51は、1日のうちの所定時間(この場合には、所定時間が13時の例を示している)になったか否かを判断し(ST3)、所定時間になった場合には(ST3:YES)、制御装置51は、現在のガスバーナ4によるガス使用量を検出するとともに、冷房負荷を算出する(ST4)。
【0051】
次に、制御装置51は、冷房負荷が40%以上であるか否かを判断し(ST5)、冷房負荷が40%以上の場合は(ST5:YES)、想定ガス使用量を算出する(ST6)。
制御装置51は、想定ガス使用量を算出した後、ガス使用量の判定値を求め(ST7)、算出された判定値の平均値を求める(ST8)。
制御装置51は、月末になったら(ST9:YES)、平均の判定値が0.1以上か否かを判断する(ST10)。
そして、判定値が0.1以上の場合(ST10:YES)、制御装置51は、ガス使用量が増加していると判断し、メンテナンスを指示する予報発報を行う(ST11)。
【0052】
メンテナンス指示の予報発報が行われた場合には、吸収式冷凍機100のメンテナンス作業者が、メンテナンス指示に従って、吸収式冷凍機100のメンテナンスを実施する(ST12)。
このメンテナンスの実施後(ST12:YES)、制御装置51は、ガス使用量が想定ガス使用量以下になったか否かを判断する(ST13)。ガス使用量が想定ガス使用量以下となった場合には(ST13:YES)、制御装置51は、ガス使用量が低下したと判断して、遠隔監視システム80にメンテナンスの処置内容と結果を送信し、遠隔監視システム80により、遠隔監視レポートとして処置内容と結果をユーザに連絡する(ST14)。
【0053】
以上説明したように、本実施形態においては、定期的に検出されるガス使用量を取得し、1ヶ月間の平均ガス使用量が、想定ガス使用量から所定以上増加していると判断した場合、メンテナンス指示の予報発報を行う制御装置51を備えている。
これによれば、制御装置51により、平均ガス使用量が、想定ガス使用量から所定以上増加していると判断した場合、メンテナンス指示の予報発報を行うので、予報発報により適切な対応を行うことで、COPを一定水準以上に保持することができる。
【0054】
また、本実施形態においては、制御装置51は、冷房負荷を算出し、この算出された冷房負荷に基づいて想定ガス使用量を算出する。
これによれば、冷房負荷に応じた想定ガス使用量を算出するので、冷房負荷に応じた予報発報を行うことができる。
【0055】
また、本実施形態においては、制御装置51は、冷房負荷が40%以上の場合に、予報発報の制御を行う。
これによれば、冷房負荷が40%以上の場合に、予報発報の制御を行うので、冷房負荷が40%未満の場合の制御による誤差が発生することがなく、ガス使用量の増加傾向を安定して判断することができる。
【0056】
また、本実施形態においては、制御装置51は、排熱回収量が定格排熱回収量×80%以下の場合に、排熱回収量低下要因の確認を促す発報を行う。
これによれば、ガス使用量が増加している要因を提示するので、予報発報により、メンテナンス作業者が適切に対応することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、真空度低下していることを検出する真空度検出手段を備え、制御装置51は、真空度検出手段により真空度が低下していると判断した場合に、真空度の確認を促す発報を行う。
これによれば、ガス使用量が増加している要因を提示するので、予報発報により、メンテナンス作業者が適切に対応することができる。
【0058】
また、本実施形態においては、制御装置51は、排熱回収量の低下および真空度の低下と判断している場合以外には、機器の運転状態の確認を促す発報を行う。
これによれば、ガス使用量が増加している要因を提示するので、予報発報により、メンテナンス作業者が適切に対応することができる。
【0059】
また、本実施形態においては、制御装置51と通信可能な遠隔監視システム80を備え、制御装置51から送られる情報に基づいて、遠隔監視システム80により、予報発報を行う。
これによれば、遠隔監視システム80により予報発報を行うことで、メンテナンス作業者にガス使用量の増加を知らせることができる。
【0060】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態における吸収式冷凍機100の構成および制御構成については、第1実施形態と同様であるため、第2実施形態の説明においても、
図1および
図2を参照して説明する。
本実施形態においては、制御装置51は、第1実施形態と同様に、冷房負荷に対する想定ガス使用量を算出する。
この想定ガス使用量は、排熱がある場合の想定ガス使用量と、排熱がない場合の想定ガス使用量とをそれぞれ算出するものであり、排熱がある場合の想定ガス使用量に基づく想定ガス使用量曲線と、排熱がない場合の想定ガス使用量に基づく想定ガス使用量曲線とをあらかじめ作成する。
【0061】
図4は冷房負荷に対する想定ガス使用量の関係を示すグラフである。
図4において、実線は排熱ありの場合の想定ガス使用量曲線を示し、破線は、排熱なしの場合の想定ガス使用量曲線を示している。
このように作成された想定ガス使用量曲線は、メモリ52に記憶させておく。
【0062】
そして、本実施形態においては、制御装置51は、冷房負荷に基づいて排熱なしの想定ガス使用量曲線から想定ガス使用量Aを算出する。また、制御装置51は、冷房負荷に基づいて、排熱ありの想定ガス使用量曲線から想定ガス使用量Bを算出する。
その後、制御装置51は、以下の式に基づいて、想定ガス削減率Cを算出する。
C=(A−B)÷A×100(%)
また、制御装置51は、実測のガス使用量Dを検出し、以下の式に基づいて、実測ガス削減率Eを算出する。
E=(A−D)÷A×100(%)
【0063】
以上の算出を行った後、制御装置51は、以下の式に基づいて、想定ガス削減率Cに対する実測ガス削減率Eの比率を算出し、この比率が80%以下になった場合に、メンテナンスを指示する予報発報を行うように制御するように構成されている。
(E÷C)×100(%)≦80(%)
なお、本実施形態においては、想定ガス削減率Cに対する実測ガス削減率Eの比率が80%以下の場合に、予報発報を行うようにしているが、この比率は、吸収式冷凍機100のシステムに応じて適宜変更することが可能である。
【0064】
次に、
図4を用いて、冷房負荷が70%の場合を例に、具体的に説明する。
排熱なしの場合の想定ガス使用量曲線によれば、冷房負荷が70%の場合の想定ガス使用量Aは、530kWとなっている。排熱ありの場合の想定ガス使用量曲線によれば、冷房負荷が70%の場合の想定ガス使用量Bは、400kWとなっている。
これにより、想定ガス削減率Cは、以下の通りとなる。
C=(530−400)÷530×100=24.5%
【0065】
また、実測のガス使用量Dが350kWの場合、実測ガス削減率Eは、以下の通りとなる。
E=(530−350)÷530×100=34.0%
この場合における想定ガス削減率Cに対する実測ガス削減率Eの比率は、以下の通りとなる。
(E÷C)×100=(34.0÷24.5)×100=138%
したがって、この比率が80%より大きいので予報発報は、行わない。
【0066】
次に、本実施形態による制御動作について、
図5に示すフローチャートを参照して説明する。
本実施形態においては、制御装置51は、冷房運転が開始された場合(ST21)、第1実施形態と同様に、1日のうちの所定時間(この場合には、所定時間が13時の例を示している)になったか否かを判断し(ST22)、所定時間になった場合には(ST22:YES)、制御装置51は、現在のガスバーナ4によるガス使用量を検出するとともに、冷房負荷を算出する(ST23)。
【0067】
そして、制御装置51は、冷房負荷に基づいて排熱なしの想定ガス使用量曲線から想定ガス使用量Aを算出する(ST24)。また、制御装置51は、冷房負荷に基づいて、排熱ありの想定ガス使用量曲線から想定ガス使用量Bを算出する(ST25)。
その後、制御装置51は、想定ガス削減率Cを算出する(ST26)。
また、制御装置51は、実測のガス使用量Dに基づいて、実測ガス削減率Eを算出する(ST27)。
【0068】
以上の算出を行った後、制御装置51は、想定ガス削減率Cに対する実測ガス削減率Eの比率を算出し(ST28)、この比率が80%以下になったか否かを判断する(ST29)。
そして、想定ガス削減率Cに対する実測ガス削減率Eの比率が80%以下になったと判断した場合は(ST29:YES)、メンテナンスを指示する予報発報を行うように制御する(ST30)。
【0069】
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、制御装置51により、冷房負荷が40%以上であるか否かを判断し、冷房負荷が40%以上の場合にのみ、想定ガス使用量を算出するようにしてもよい。
また、メンテナンス指示の予報発報が行われた場合に、吸収式冷凍機100のメンテナンス作業者が、メンテナンス指示に従って、吸収式冷凍機100のメンテナンスを実施した後、制御装置51は、ガス使用量が想定ガス使用量以下になったか否かを判断して、ガス使用量が低下したと判断した場合に、遠隔監視システム80にメンテナンスの処置内容と結果を送信し、遠隔監視システム80により、遠隔監視レポートとして処置内容と結果をユーザに連絡するようにしてもよい。
【0070】
以上述べたように、本実施形態においては、制御装置51は、あらかじめ作成された排熱なしの想定ガス使用量曲線に基づいて、冷房負荷に応じた排熱なしの想定ガス使用量を算出するとともに、排熱ありの想定ガス使用量曲線に基づいて、冷房負荷に応じた排熱ありの想定ガス使用量を算出し、これら想定ガス使用量に基づいて想定ガス削減率を算出するとともに、実測のガス使用量に基づいて実測ガス削減率を算出し、想定ガス削減率に対する実測ガス削減率の比率を算出し、この比率が80%以下になった場合に、メンテナンスを指示する予報発報を行うように制御する。
これによれば、制御装置51により、想定ガス削減率に対する実測ガス削減率の比率が低くなった場合に、予報発報を行うので、予報発報により適切な対応を行うことで、COPを一定水準以上に保持することができる。
【0071】
なお、本実施形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は前記実施形態に限定されない。
例えば、前記実施形態においては、温水の排熱(温排水)を熱源として用いる排熱利用型の吸収式冷凍機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、蒸気の排熱を熱源として用いる排熱利用型の吸収式冷凍機にも適用することができる。