【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1にかかる自動運転車監視制御システムの構成を示す説明図である。
【0011】
自動運転車監視制御システムは、自動運転車101、道路102、無線基地局103、広域網104、監視制御サーバ105、及び監視制御者106から構成される。
図1は、あくまで一例を示しており、図中の各要素がそれぞれ複数存在してもよい。例えば、ある自動運転車監視制御システムの中に、複数の自動運転車101が存在してもよい。例えば、ある自動運転車監視制御システムの中に、複数の監視制御サーバ105が存在してもよい。自動運転車101は、道路102上を走行する自動車である。自動運転車101は、自動運転、または、遠隔操縦によって、道路102上を走行する。自動運転車101は、無線基地局103及び広域網104を介して監視制御サーバ105と接続する。広域網104は無線基地局103と監視制御サーバ105とを接続する。監視制御サーバ105は、自動運転車101から受信した情報を表示する。監視制御サーバ105は、監視制御者106が入力した情報を自動運転車101に送信する。
【0012】
<自動運転車101の構成>
図2は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0013】
自動運転車101は、センサ部201、カメラ202、ミリ波レーダー203、GPS(Global Positioning System)204、情報処理装置205、揮発性記憶装置206、不揮発性記憶装置207、演算処理装置208、目的地入力I/F209、無線通信装置210、及び走行制御装置211から構成される。
【0014】
センサ部201は、自動運転車101の周辺の情報を取得するために利用される。センサ部201は、カメラ202及びミリ波レーダー203から構成される。センサ部201はLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)など、上記以外のセンサから構成されてもよい。センサ部は取得したセンサ情報を情報処理装置205に入力する。カメラ202は自動運転車101周辺の画像情報を取得する。ミリ波レーダー203は、自動運転車101周辺の物体の位置を検出する。GPS204は、自動運転車101の現在位置情報を取得するために使用される。
【0015】
情報処理装置205は、揮発性記憶装置206、不揮発性記憶装置207、及び演算処理装置208から構成される。揮発性記憶装置206は、演算処理装置208が実行するプログラムなどを一時的に格納するために使用される。不揮発性記憶装置207は、情報を定常的に格納されるために使用されるものであり、例えば、ハードディスクなどが該当する。演算処理装置208は、データ処理に関する様々な演算を行う装置である。
【0016】
目的地入力I/F(209)は、自動運転車101の目的地等を入力するために使用される。無線通信装置210は、無線基地局103と通信を行うために使用される。走行制御装置211は、加速、減速、旋回など、走行に関する動作の制御を実行する。
【0017】
図3は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101を構成する各ハードウェア同士でやりとりされるデータの流れ、及び、情報処理装置205で実行されるプログラムの構成を示すブロック図である。
【0018】
地
図DB301は、自動運転車101が道路を走行する上で必要な地図情報を格納する。地
図DB301は、エリア情報テーブル302、道路DB303及びランドマークDB306から構成される。エリア情報テーブル302は、位置情報と、地
図DB301に格納された当該位置情報に対応する地図との対応関係を記録する。道路DB303は、自動運転車101が走行する道路に関連する情報を格納する。道路DB303は、ノード情報テーブル304とリンク情報テーブル305から構成される。ノード情報テーブル304は、道路同士の接続点(交差点)の位置情報、及び、接続点に接続する道路(リンク)の情報を格納する。ノード情報テーブル304は、エリア情報テーブル302で定義されているエリア毎に用意されるテーブルである。リンク情報テーブル305は、道路の端点の位置情報、及び幅などの情報を格納する。リンク情報テーブル305はエリア情報テーブル302で定義されているエリア毎に用意されるテーブルである。
【0019】
ランドマークDB306は、自動運転車101が走行中に監視制御すべきランドマーク306に関連する情報を格納する。ランドマークDB306は、ランドマーク位置情報テーブル307、ランドマーク監視制御情報テーブル308、及びリンクコスト情報テーブル309から構成される。ランドマーク位置情報テーブル307は、ランドマークが設置されている位置に関する情報を格納する。ランドマーク監視制御情報テーブル308は、ランドマークの種別、当該ランドマークに関連して監視制御を行うべき範囲、及び監視制御に要するコストを格納する。リンクコスト情報テーブル309は、各リンクと、監視制御に要するコストとを対応付けるテーブルである。リンクコスト情報テーブル309は、エリア情報テーブル302で定義されているエリア毎に用意される。
【0020】
走行経路計算ソフト310は、目的地入力I/F209及びGPS204から入力された位置情報に基づいて地
図DB301を参照し、目的地までの走行経路を計算する。地図情報処理部311は、目的地入力I/F209から入力された目的地情報とGPS204から入力された位置情報とにもとづいて、地
図DB301に格納された情報の読出しを実施する。経路計算部312は、地図情報処理部311が読出した情報に基づいて、走行経路の計算を実施する。
【0021】
監視制御クライアントソフト313は、監視制御サーバ105が車両を監視制御するための処理を実行するプログラムである。監視制御クライアントソフト313は、経路情報保持部314、監視制御エリア判定部315、走行状況情報送信部316、及び遠隔制御命令実行部317から構成される。経路情報保持部314は、経路計算部312が計算した走行経路上の道路情報、及びランドマーク情報を保持する。監視制御エリア判定部315は、経路情報保持部314が保持する情報と、GPS204から入力された位置情報とに基づいて、自動運転車101の現在位置が監視制御エリア内に入っているかを判定し、判定結果を走行状況情報送信部316に入力する。走行状況情報送信部316は、自動運転車101が監視制御エリア内に入っている場合に、センサ部201から入力されたセンサ情報を、無線通信装置210を介して監視制御サーバ105へ送信する。遠隔制御命令実行部317は、無線通信装置210から入力された制御情報を自動運転制御ソフト318、または、走行制御装置211に入力する。
【0022】
自動運転制御ソフト318は、監視制御クライアントソフト313が保持する走行経路情報に基づいて、操舵、加速、減速などの制御信号を生成して、走行制御装置211へ入力することによって、自動運転車101の自動運転を制御する。走行制御装置211は、自動運転が行われているときは自動運転制御ソフト318から入力された制御信号に従って操舵、加速、減速などを実行し、自動運転が行われていないときは遠隔制御命令実行部317等から入力された制御信号に従って操舵、加速、減速などを実行する。すなわち、自動運転が実行されているときは、自動運転制御ソフト318及び走行制御装置211が自動運転車101の走行制御部を構成するということもできる。
【0023】
以下、自動運転車101内で上記のソフトウェアに従って実行される処理を、便宜上、上記のソフトウェア(又はそれらに含まれる処理部等)が実行する処理として記載する場合がある。しかし、実際にはそれらの処理は、情報処理装置205の演算処理装置208が、揮発性記憶装置206等に格納されている上記のソフトウェアに記述された命令に従って、必要に応じて自動運転車101内の各部を制御して実行する。
【0024】
<監視制御サーバ105の構成>
図4は、本発明の実施例1にかかる監視制御サーバ105のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0025】
通信装置401は、広域網104と接続し、無線基地局103を介して自動運転車101と通信を行う。情報処理装置402は、揮発性記憶装置403、不揮発性記憶装置404、及び演算処理装置405から構成される。揮発性記憶装置403は、演算処理装置405が実行するプログラムなどを一時的に格納するために使用される。不揮発性記憶装置404は、情報を定常的に格納されるために使用されるものであり、例えば、ハードディスクなどが該当する。演算処理装置405は、データ処理に関する様々な演算を行う装置である。
【0026】
監視制御用入出力装置406は、自動運転車101から受信した情報を表示し、監視制御者が情報を入力するための装置である。監視制御用入出力装置406は、表示装置407、ステアリング408、アクセルペダル、409、ブレーキペダル410などから構成される。表示装置407は、自動運転車101から受信した走行状況情報を表示するための装置である。ステアリング408は、監視制御者106が自動運転車101の操舵を実行するための装置である。アクセルペダル409は、監視制御者106が自動運転車101の加速を行うための装置である。ブレーキペダル410は、監視制御者106が自動運転車101の減速を行うための装置である。
【0027】
図5は、本発明の実施例1にかかる監視制御サーバ105を構成する各ハードウェア同士でやりとりされるデータの流れ、及び、情報処理装置402で実行されるプログラムの構成を示すブロック図である。
【0028】
監視制御サーバソフト501は、情報処理装置402において実行されるプログラムである。監視制御サーバソフト501は、自動運転車101の監視制御に関連する処理を演算処理装置405に実行させるためのプログラムである。監視制御サーバソフト501は、走行状況情報表示機能502、及び制御・認識情報送信機能503から構成される。走行状況情報表示機能502は、通信装置401から受信した自動運転車101の走行状況情報を受信して、表示装置407へ表示する機能である。制御・認識情報送信機能503は、監視制御用入出力装置406から入力された自動運転車101を制御するための情報、及び、自動運転車101の認識・判断を支援するための情報を、通信装置401を介して自動運転車101へ送信する機能である。
【0029】
以下、監視制御サーバ105内で上記のソフトウェアに従って実行される処理を、便宜上、上記のソフトウェア(又はそれらに含まれる処理部等)が実行する処理として記載する場合がある。しかし、実際にはそれらの処理は、情報処理装置402の演算処理装置405が、揮発性記憶装置403等に格納されている上記のソフトウェアに記述された命令に従って、必要に応じて監視制御サーバ105内の各部を制御して実行する。
【0030】
<地
図DB301>
以下では、自動運転車101の地
図DB301の詳細について説明する。
【0031】
図6は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101が保持するエリア情報テーブル302の一例を示す説明図である。
【0032】
エリア情報テーブル302は、エリア名601、GPS座標範囲602、及び基準点603から構成される。エリア情報テーブル302は、位置情報と、読みだすべき地図情報とを対応づけるテーブルである。例えば、位置情報が北緯35.001、東経135.001の場合には、エリアAの地図が読み出される。エリアAの地図の基準点は、北緯35.000、東経135.000となる。
【0033】
図7は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101が保持するエリアAの地図の一部分の構成例を示す説明図である。
【0034】
地図は、道路に相当するリンク、道路同士の接続点(交差点)に相当するノード、及びランドマークから構成される。例えば、ノードID:1のノードからノードID:2のノードへはリンクID:1のリンクによって接続される。ノードID:2のノードからノードID:1のノードへはリンクID:2のリンクによって接続される。
【0035】
図8は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101が保持するエリアAのノード情報テーブル304を示す説明図である。
【0036】
ノード情報テーブル304は、ノードID801、基準点からの相対位置802、及び接続リンクID803から構成される。ノードID801は、ノードの識別子(ID)を表す。基準点からの相対位置802は、当該エリアの基準点を基準とした場合の、当該ノードの相対位置を示す。
図6のエリア情報テーブル302から、エリアAの基準点は北緯35.000、東経135.000であるため、例えば、ノードID:1のノードは、北緯35.000、東経135.000を基準点とした場合に、その基準点から東に3m、北に3mの地点にある。また、ノードID:1のノードには、リンクID:1、2、3、4のリンク群が接続する。
【0037】
図9は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101が保持するエリアAのリンク情報テーブル305を示す説明図である。
【0038】
リンク情報テーブル305は、リンクID901、始点ノードID902、始点ノードからの相対位置(南北)903、始点ノードからの相対位置(東西)904、終点ノードID905、終点ノードからの相対位置(南北)906、終点ノードからの相対位置(東西)907、及び関連ランドマークID908から構成される。
【0039】
リンクID901は、リンクの識別子を表す。始点ノードID902は、リンクが接続する始点ノードのIDを表す。始点ノードからの相対位置(南北)903は、リンクが接続する始点ノードの位置を基準とした場合の、リンクの始点座標の南北方向の相対位置関係を表す。始点ノードからの相対位置(東西)904は、リンクが接続する始点ノードの位置を基準とした場合の、リンクの始点座標の東西方向の相対位置関係を表す。
【0040】
終点ノードID905は、リンクが接続する終点ノードのIDを表す。終点ノードからの相対位置
(南北)906は、リンクが接続する終点ノードの位置を基準とした場合の、リンクの終点座標の南北方向の相対位置関係を表す。終点ノードからの相対位置(東西)907は、リンクが接続する終点ノードの位置を基準とした場合の、リンクの終点座標の東西方向の位置関係を表す。関連ランドマークID908は、リンク上にある(すなわちリンクに関連付けられた)ランドマークのIDを表す。
【0041】
例えば、リンクID:3のリンクの始点が接続するノードのノードIDは1である。リンクID:3の始点の座標はノードID:1のノード対して、南北に0m、西に1.5mの位置にある。リンクID:3のリンクの終点が接続するノードのノードIDは3である。リンクID:3の終点の座標はノードID:3のノードに対して、南北に0m、西に1.5mの位置にある。リンクID:3のリンク上にあるランドマークは、ランドマークID:1、3の2個である。
【0042】
図10は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101が保持するエリアAのランドマーク位置情報テーブル307を示す説明図である。
【0043】
ランドマーク位置情報テーブル307はランドマークID1001、関連リンクID1002、ランドマーク種別1003、及びランドマーク位置1004から構成される。ランドマークID1001はランドマークの識別子を示す。ランドマーク種別1003は、当該ランドマークの種別を表す。関連リンクID1002は、当該ランドマークが設置されている(すなわち当該ランドマークが関連付けられている)リンクのリンクIDを表す。ランドマーク位置1004は、当該ランドマークが位置する場所を、当該ランドマークが置かれているリンクの始点からの距離で表わしたものである。
【0044】
本実施例におけるランドマークとは、自動運転車101の周囲を遠隔監視する必要を生じさせる要因及び自動運転車101の遠隔制御の必要を生じさせる要因となり得る目標物(地物等)であり、例えば信号及び道路標識のように物理的に設置されているものであってもよいし、例えば事故多発地点のように仮想的に設置されたものであってもよい。例えば、ランドマークID:1のランドマークは、リンクID:3のリンク上に設置されている。ランドマークID:1のランドマークのランドマーク種別は、徐行である。ランドマークID:1のランドマークは、リンクID
:3のリンクの始点から40mの位置に設置されている。ランドマークDB306によって、そのようなランドマークと、リンクと、当該リンクにおいて当該ランドマークを要因として監視制御の実行が求められる範囲と、監視制御コストと、が対応付けられる。
【0045】
図11は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101が保持するランドマーク監視制御情報テーブル308の第1の例の構成を示す説明図である。
【0046】
ランドマーク監視制御情報テーブル308は、ランドマーク種別1101、監視制御開始位置1102、監視制御終了位置1103、監視制御標準時間1104、及び監視制御コスト1105から構成される。ランドマーク種別1101は、ランドマークの種別を表す。監視制御開始位置1102は、ランドマークに関連して監視制御を開始する位置を、ランドマークが設置されている位置に対して、相対位置で表わしたものである。監視制御終了位置1103は、ランドマークに関連した監視制御を終了する位置を、ランドマークが設置されている位置に対して、相対位置で表わしたものである。監視制御標準時間1104は、当該ランドマークに関連する監視制御に要する標準的な時間を表す。監視制御コスト1105は、当該ランドマークに関連する監視制御に要するコストを表す。
図11の例では、当該ランドマークの監視制御標準時間1104の値が、当該ランドマークの監視制御コスト1105として使用される。
【0047】
例えば、ランドマーク種別1101が徐行の場合、当該ランドマークの設置されている位置を基準として、リンクの始点から終点の方向に0m進んだ位置(すなわち、当該ランドマークの設置されている位置と同じ位置)で監視制御が開始される。そして、当該ランドマークの設置されている位置を基準として、リンクの始点から終点の方向に+30m進んだ位置で監視制御を終了する。この場合の監視制御標準時間は10[s]となり、監視制御コストは10となる。
【0048】
なお、例えばランドマーク種別1101が信号機の場合、当該ランドマークの設置されている位置を基準として、リンクの始点から終点の方向に−15m進んだ位置(すなわち、当該ランドマークの設置されている位置から15m手前の位置)で監視制御が開始される。このようにランドマークの種別に応じて監視制御エリアの範囲を決定することによって、そのランドマークの性質に応じた適切な範囲で監視制御を行うことができる。
【0049】
図12及び
図13を参照して、
図11とは異なるランドマーク監視制御情報テーブル308の例を説明する。
【0050】
図12は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101が保持するランドマーク監視制御情報テーブル308の第2の例の構成を示す説明図である。
【0051】
図12のランドマーク監視制御情報テーブル308では、ランドマーク種別1101、監視制御開始位置1102及び監視制御終了位置1103は
図11と同様であるが、制御実施確率1201及び監視制御コスト1202が
図11と異なる。制御実施確率1201は、当該ランドマーク周辺の自動運転車101を監視制御する場合に、遠隔から何らかの制御が実施される確率を表す。監視制御コスト1202は、当該ランドマーク周辺の自動運転車101を監視制御するために要するコストを表す。
図12の例では、当該ランドマークの制御実施確率1201の値が、当該ランドマークの監視制御コスト1202として使用される。
【0052】
図13は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101が保持するランドマーク監視制御情報テーブル308の第3の例の構成を示す説明図である。
【0053】
図13のランドマーク監視制御情報テーブル308では、ランドマーク種別1101、監視制御開始位置1102、監視制御終了位置1103及び監視制御標準時間1104は
図11と同様であり、制御実施確率1201は
図12と同様であるが、監視制御コスト1301が
図11及び
図12と異なる。
図13の監視制御コスト1301は、監視制御標準時間1104の値と制御実施確率1201の値とに基づいて計算された値(例えば、監視制御標準時間1104の値に制御実施確率1201の値を乗じた値)である。
【0054】
監視制御コストは監視制御に要するコスト(例えば、監視制御のために割かれる監視制御者106の労力の大きさ)に関連する情報であれば、いずれの値に基づいて算出された値であってもよい。また、監視制御コストは、例えば、天候、時間帯により変更されてもよい。
【0055】
なお、それぞれの種別のランドマークに対応する監視制御コストは、上記のように、その種別のランドマークに関して自動運転車101の走行を監視制御するために要するコストの大きさを表す指標である。このような監視制御コストは、自動運転の継続可否を判断する必要性の高さを示す指標の一例である。あるランドマークに関する監視制御コストが高いほど、そのランドマークの周辺で自動運転を継続するか否かを判断することの必要性が高いと言える。上記の例では監視制御コストとして監視制御する時間の長さ(
図11)、監視の結果として実際に遠隔制御が行われる確率の高さ(
図12)、又はそれらを互いに乗じた値(
図13)が使用されるが、それ以外の自動運転の継続可否を判断する必要性の高さを示す指標が用いられてもよい。例えば、自動運転車101と監視制御サーバ105との間の通信コスト等が用いられてもよい。上記のような指標を用いることによって、適切に監視制御コストの小さい経路を選択することができる。
【0056】
図14は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101が保持するエリアAのリンクコスト情報テーブル309の例を示す説明図である。
【0057】
リンクコスト情報テーブル309は、リンクID1401及びリンクコスト1402から構成される。リンクID1401はリンクの識別子を表す。リンクコスト1402は、当該リンク上を自動運転車101が走行する場合の、監視制御コストを表す。例えば、
図11に示す監視制御コスト1105が適用される場合、リンクID:3のリンクのリンクコストは30である。
図9及び
図10から、リンクID:3のリンクには、ランドマークID:1及び3の計2つのランドマークがあることがわかる。
図11からランドマークID:1のランドマーク種別1101の「徐行」の監視制御コスト1105は10であることがわかる。
図11から、ランドマークID:3のランドマーク種別1101「事故多発地点」の監視制御コスト1105は20である。以上から、リンクID:3のリンクコストは、ランドマークID:1の監視制御コスト10と、ランドマークID:3の監視制御コスト20の和を計算した結果である30になっている。
【0058】
図15は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101が保持する情報に基づいて作成される地図の例を示す説明図である。
【0059】
具体的には、
図15は、
図6、
図8、
図9、
図10及び
図11に例示した情報を基に作成された地
図Aの一部を表す。エリアA地図の基準点1501は、
図6から、北緯35°、東経135°の地点となる。ノードID:1の位置1502は、
図8から、基準点から東に3m、北に3m離れた位置となる。ノードID:3の位置1503は、
図8から、基準点から東に3m、北に103m離れた位置となる。リンクID:3の始点位置1504は、
図9から、始点ノードID:1に対して、南北に0m、西に1.5m
離れた位置である。リンクID:3の終点位置1505は、
図9から、終点ノードであるノードID:3に対して、南北に0m、西に1.5m離れた位置である。リンクID:4の始点位置1506は、
図9から、始点ノードであるノードID:4に対して、南北に0m、東に1.5m離れた位置である。リンクID:4の終点位置1507は、
図9から、終点ノードであるノードID:1に対して、南北に0m、東に1.5m離れた位置である。ランドマークID:1の位置1508は、
図10から、リンクID:3のリンクの始点位置から終点位置の方向に40m進んだ位置である。また、ランドマークID:1の位置1508はランドマークID:1の監視制御開始位置でもある。すなわち、ランドマークID:1の監視制御開始位置1508は、
図11から、ランドマークの位置からリンクの終点位置の方向に0m進んだ地点である。ランドマークID:1の監視制御終了位置1509は、
図11から、ランドマークの位置からリンクの終点位置の方向に30m進んだ地点である。監視制御エリア1510は、ランドマークID:1のランドマークに関連する監視制御エリアの範囲を表す。これは、ランドマークID:1のランドマークに関連して監視制御者106が監視を行うことが求められる範囲であり、ランドマーク位置情報テーブル307及びランドマーク監視制御情報テーブル308の情報に基づいて特定される。
【0060】
<走行経路計算ソフト310の動作フロー>
図16は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101の走行経路計算ソフト310による経路計算を示すフローチャートである。
【0061】
走行経路計算ソフト310が起動されると(1601)、始点及び終点が入力される(1602)。始点及び終点はどのように入力されてもよい。例えば、GPS204が計測した自動運転車101の現在位置が始点として、自動運転車101の乗員が目的地入力I/F209を介して入力した目的地の位置が終点として、それぞれ入力されてもよい。次に、走行経路計算ソフト310は、入力された始点及び終点を含むエリアの道路DB303を読み出す(1603)。次に、走行経路計算ソフト310は、上記のエリア内のノード情報テーブル304及びリンク情報テーブル305を読み出し、ノードとリンクの接続関係を算出する(1604)。次に、走行経路計算ソフト310は、ランドマークDB306内の、当該エリアのリンクコスト情報テーブル309に記載されている各リンクのリンクコストを読み出す(1605)。
【0062】
次に、走行経路計算ソフト310は、読みだしたノードとリンクとの接続関係、及びリンクコストの値を用いて、入力された始点から終点に至る、それぞれが1以上のリンクを含む1または複数の経路と、各経路の合計リンクコストを計算する(1606)。次に、走行経路計算ソフト310は、始点から終点までのリンクコストが小さい経路を走行経路として選択する(1607)。次に、走行経路計算ソフト310は、上記で計算した経路上の道路情報とランドマーク情報を読み出して記録する(1608)。上記の処理が終了すると、自動運転車101は自動運転を開始する(1609)。
【0063】
例えば、始点として
図7中のノードID:1、終点としてノードID:6が指定された場合の例を用いて、計算手順を説明する。ステップ1602において、ノードID:1の座標として北緯35.00002704度、東経135.00003286度、ノードID:6の座標として北緯0.001830度、東経135.001128度が入力される。
図6のエリア情報テーブル302を参照すると、ノードID:1の座標と、ノードID:6の座標はともにエリアAの範囲内なので、走行経路計算ソフト310は、エリアAの道路DBを読み出す。具体的には、走行経路計算ソフト310は、エリアAのノード情報テーブル304として
図8のテーブルを、エリアAのリンク情報テーブル305として
図9のテーブルを読み出し、ノードとリンクの接続関係を算出する(1604)。
【0064】
次に、走行経路計算ソフト310は、ランドマークDB306を参照し、エリアAのリンクコスト情報テーブル309として、
図14のテーブルを読み出し、リンクコスト1402を算出する(1605)。次に、走行経路計算ソフト310は、ステップ1604で算出したリンクとノードとの接続関係、及び、ステップ1605で読み出したリンクコストを用いて、1または複数の走行経路と、各走行経路の合計リンクコストを計算する。
【0065】
図17は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101による走行経路の計算結果の一例を示す説明図である。
【0066】
図17に示す走行経路の計算結果は、走行経路1701及び経路上合計リンクコスト1702から構成される。走行経路1701は、計算された各走行経路を構成するリンクIDの集合である。経路上合計リンクコスト1702は、各走行経路上の、各リンクIDに対応するリンクコストの合計値である。
【0067】
図17の例では、4つの経路が計算されている。最初の走行経路は、ノードID:1から、リンクID:1、5、11を順に経由してノードID:6に至る。この走行経路を構成するリンクID:5に、種別が「信号機」であるランドマークが対応付けられている。監視制御コスト1105を適用すると、当該走行経路の経路上合計リンクコスト1702は「30」となる。
【0068】
図17の例の2番目の走行経路は、ノードID:1から、リンクID:1、5、8、9、13を順に経由してノードID:6に至る。この走行経路を構成するリンクID:5には種別が「信号機」であるランドマークが、リンクID:8には種別が「事故多発地点」であるランドマークが、リンクID:9には種別が「周辺に学校等あり」であるランドマークが、それぞれ対応付けられている。監視制御コスト1105を適用すると、当該走行経路の経路上合計リンクコスト1702は上記のランドマークの監視制御コスト1105の合計である「65」となる。
【0069】
他の走行経路についても同様の方法で経路上合計リンクコスト1702が計算される。
【0070】
次に、ステップ1607では、走行経路計算ソフト310は、始点から終点までのリンクコストが小さい経路として、リンクID:1、5、11を通る走行経路を選択する。本例では、リンクコストが最小となる経路を選択したが、必ずしも最小でなくてもよい。例えば、走行経路計算ソフト310は、リンクコストが所定の基準値より小さい複数の経路から、別の基準を満たす一つの経路(例えば推定所要時間が最短となる経路等)を選択してもよい。これによって、制御監視コストを最小化することが最優先される場合にはリンクコストが最小の経路を選択し、他の基準も考慮すべき場合にはそれも考慮して適切な経路を選択することができる。
【0071】
ステップ1608では、走行経路計算ソフト310は、ステップ1607で選択した走行経路の地図情報として、
図8のエリアAのノード情報テーブル、
図9のエリアAのリンク情報テーブル、
図10のエリアAのランドマーク位置情報テーブル307、及び
図11のランドマーク監視制御情報テーブル308を読み出して記録しておく。ステップ1609では、計算した走行経路に基づいて自動運転が開始される。
【0072】
<監視制御クライアントソフト313の動作フロー>
図18は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101の経路計算終了後の、監視制御クライアントソフト313による処理を示すフローチャートである。
【0073】
自動運転車101が自動運転を開始すると(1801)、監視制御クライアントソフト313は、走行経路上の地図情報を読み出す(1802)。次に、監視制御クライアントソフト313は、GPS204を用いて現在の自動運転車の位置情報を取得する(1803)。次に、監視制御クライアントソフト313は、目的地の位置情報と、上記で取得した現在の位置情報とを比較し、自動運転車101が目的地から一定の範囲内に到達しているかを確認する(1804)。ステップ1804の結果がYESの場合には、自動運転車101が目的地に到達したと判定され、自動運転を終了する(1805)。
【0074】
ステップ1804の結果がNOの場合には、監視制御クライアントソフト313は、GPS204の位置情報に基づいて、現在、どのリンク上を走行しているのかを特定する(1806)。次に、監視制御クライアントソフト313は、走行中のリンクに関連するランドマーク位置情報テーブル307及びランドマーク監視制御情報テーブル308を参照して、走行中のリンクに対応する監視制御エリアを特定する(1807)。次に、監視制御クライアントソフト313は、現在の位置情報と、ランドマーク監視制御情報テーブル308の監視制御開始位置及び監視制御終了位置を比較し、現在地が監視制御エリアに入っているか否かを確認する(1808)。現在地が監視制御エリアに入っていない場合には、自動運転車101が監視制御を必要とする範囲までランドマークに接近していないため、監視制御クライアントソフト313はステップ1803に戻り、再びGPS位置情報を取得する。
【0075】
現在地が監視制御エリアに入っている場合には、自動運転車101が監視制御を必要とする範囲までランドマークに接近したため、監視制御クライアントソフト313は、監視制御サーバ105へ走行状況情報を送信する(1809)。次に、監視制御クライアントソフト313は、監視制御サーバ105から制御信号を受信しているかを確認する(1810)。監視制御サーバ105から制御信号を受信している場合には、監視制御クライアントソフト313は、受信した制御信号を走行制御装置211に入力し、遠隔制御を実行する(1811)。
【0076】
ここで、制御信号とは、自動運転車101の走行を遠隔制御するための信号であり、具体的には例えば操舵、加速及び減速等の少なくともいずれかを指示する信号を含む。本実施例では、制御信号は、監視制御者106がステアリング408、アクセルペダル409及びブレーキペダル410を操作することで生成される。監視制御クライアントソフト313は、監視制御サーバ105から制御信号を含む応答を受信した場合、自動運転制御ソフト318に自動運転の中断を指示し、遠隔制御命令実行部317が走行制御装置211に受信した制御信号を入力してその制御信号に基づく走行制御を走行制御に実行させる。走行制御装置211は、入力された制御信号に従って自動運転車101の操舵、加速及び減速等を行う。すなわち、ステップ1809において送信される走行状況情報は、監視制御サーバ105への自動運転の継続可否の問合せの意味を持ち、自動運転車101が監視制御サーバ105から制御信号を含む応答を受信したことは、自動運転を継続しないという判断が行われたことを意味する。
【0077】
監視制御クライアントソフト313は、監視制御サーバ105から制御信号を受信していない場合には、監視制御サーバ105から認識情報を受信しているかを確認する(1812)。監視制御サーバ105から認識情報を受信している場合には、監視制御クライアントソフト313は、受信した認識情報を自動運転制御ソフト318に入力する(1803)。自動運転制御ソフト318は、入力された情報を使用して自動運転を継続する。ステップ1812において監視制御サーバ105から判断情報を受信していない場合には、自動運転制御ソフト318は選択された走行経路上の自動運転を継続し、監視制御クライアントソフト313はステップ1803に戻り、再びGPS位置情報を取得する。
【0078】
ここで、認識情報とは、自動運転車101の周囲の状況を認識した結果を示す情報であり、自動運転車101による自動運転に利用される。例えば、認識情報は、自動運転車101の前方の信号機の状態、又は周囲の歩行者の状態等を認識した結果を示す情報である。自動運転制御ソフト318は、センサ部201から取得された情報に基づいて自動運転車101の周囲の状況を認識し、その結果に従って生成した制御信号を走行制御装置に入力することで自動運転を行うことができる。しかし、例えば認識に誤りが生じやすいなど、正確な認識が困難な場合、又は認識の誤りが重大な結果につながりやすい場合等に、監視制御者106が走行状況情報に従って認識を行い、その結果を自動運転制御ソフト318が利用して自動運転を継続することもできる。これによって、自動運転車101による認識を人間が補い、自動運転車101の走行の安全性を高めることができる。この認識情報に基づいて自動運転車101の走行をどのように制御するかは自動運転制御ソフト318の処理に委ねられる。
【0079】
<監視制御クライアントソフト313の動作フローに関する具体例>
図19は、本発明の実施例1にかかる自動運転車101の監視制御クライアントソフト313による処理の一例を示す説明図である。
【0080】
図19を参照して、
図18の監視制御クライアントソフト313の動作フローの実例を説明する。走行経路計算ソフトが
図16のステップ1608で記録しておいた道路情報及びランドマーク情報が、ステップ1802において読み出される。ステップ1803において取得した現在位置を示す位置情報が座標A1901(北緯35.00076617、東経135.00111856)であるとする。ステップ1806において、監視制御クライアントソフト313は、現在位置がどのリンク上にあるかを特定する。ここで、北緯35度地点の1m当たりの緯度は9.013784×10
−6、北緯35度地点の1m当たりの経度は1.095424×10
−5度である。上記の位置情報と、1m当たりの緯度・経度に関する値から、現在位置は、エリアAの基準点から北に(35.00076617−35)÷(9.013784×10
−6)=85m、東に(135.0011186−135)÷(1.095424×10
−6)=101.5mの地点であることがわかる。
図8のノード情報テーブルと
図9のリンク情報テーブルとから、座標Aの地点はリンクID:5上の地点であることがわかる(1806)。
【0081】
リンクID:5に関連するランドマークについて、
図10のランドマーク位置情報テーブルから、リンクID:5に関連するランドマークであるランドマークID:6の信号機は、リンクID:5のリンク上の、リンクID:5の位置から100m離れた距離にあることがわかる。また、
図11のランドマーク監視制御情報テーブル308の信号機に関する情報から、当該信号機ランドマークの位置から手前15mの位置から、信号機ランドマーク位置(0m)までの間が監視制御エリア1902になることがわかる。
【0082】
次に、現在位置である座標A1901がエリアAの基準点から北に85m、東に101.5m離れた位置であることと、監視制御エリア1902の範囲がエリアA地図の基準点から東に101.5m、北に88m〜103m離れた範囲であることから、現在座標A1901は監視制御エリアに入っていないことがわかる。
【0083】
次に、現在の座標が
図19中の座標B(北緯35.00079321、東経135.0011186)である場合のステップ1810の処理について説明する。座標BはエリアAの基準点に対して、北に(35.00079321−35)÷(9.013784×10
−6)=88m、東に(135.0011186−135)÷(1.095424×10
−6)=101.5m離れた地点であることがわかる。座標Bは、監視制御エリアの範囲がエリアA地図の基準点から東に101.5m、北に88m〜103m離れた範囲に入っていると判定され(1808)、ステップ1809が実行される。ステップ1809では、監視制御クライアントソフト313は、監視制御サーバ105へ走行状況情報として、例えば、自動運転車101の識別子である自動運転車ID、カメラ202が撮影した画像、ミリ波レーダー203によって検出された周囲の物体の位置、GPS204が取得した位置情報、及び周辺のランドマーク情報等を監視制御サーバ105へ送信する。監視制御クライアントソフト313は、自動運転車101の走行状況に関連する情報であればいずれの情報を送信してもよい。監視制御者106は、このような情報を参照することによって、ランドマーク周辺の自動運転車101の走行を適切に監視し、必要に応じて遠隔制御をすることができる。
【0084】
次に、ステップ1810において、監視制御クライアントソフト313は、監視制御サーバ105から制御信号を受信したかを確認し、YESの場合にはステップ1811に進み、制御信号を走行制御装置211に入力し、遠隔制御を実行する。ここでの制御信号として、例えば、加速命令、減速命令、操舵命令などが挙げられる。例えば、最大値の減速命令が入力された場合、自動運転車101は緊急停止をすることができる。
【0085】
ステップ1802において、監視制御サーバ105から認識情報を受信した場合には、監視制御クライアントソフト313は、認識情報を自動運転プログラムに入力する(1813)。ここで、認識情報として、例えば、自動運転を継続してよい、継続してはいけないなどの情報、現在の信号機の色は青、赤、黄色のいずれであるかを特定する情報、などの情報が挙げられる。認識情報は、自動運転制御ソフト318が実行する判断・認識に関連する情報であれば、上記の例に限定されず、いずれの情報であってもよい。
【0086】
<監視制御サーバソフトの動作フロー>
図20は、本発明の実施例1にかかる監視制御サーバ105の監視制御サーバソフト501による処理を示すフローチャートである。
【0087】
監視制御サーバソフト501が起動されると(2001)、自動運転車101から走行状況情報を受信したかを確認する(2002)。自動運転車101から走行状況情報を受信していない場合には、ステップ2004へ進む。自動運転車101から走行状況情報を受信している場合には、監視制御サーバソフト501は、監視制御用入出力装置406に走行状況情報を表示する(2003)。次に、監視制御サーバソフト501は、監視制御用入出力装置406からの制御信号又は認識情報の入力があるかを確認する(2004)。
【0088】
例えば、カメラ202が自動運転車101の前方を撮影した画像が走行状況情報として表示装置407によって表示され、その画像に赤信号が映っており、それに従って監視制御者106がブレーキペダル410を操作した場合、ブレーキペダル410を操作したことを示す情報が制御信号として入力される。同様に、監視制御者106が走行状況情報を参照してステアリング408又はアクセルペダル409を操作した場合、それらを操作したことを示す情報が制御信号として入力される。このような制御信号を入力することは、監視制御者106が、当該自動運転車101の自動運転を継続せず、少なくとも一時的に中断するという判断をしたことを意味する。
【0089】
あるいは、例えば、表示装置407によって表示された画像を参照した監視制御者106が、当該画像に赤信号が映っていることを認識した場合、監視制御用入出力装置406を操作して、その認識結果を認識情報として入力してもよい。同様に、監視制御者106は、自動運転車101の前方を歩行者が横断している、又は、前方に障害物がある、といった認識結果を認識情報として入力してもよい。
【0090】
監視制御用入出力装置406から、制御信号又は認識情報の入力がない場合には、ステップ2002へ進む。監視制御用入出力装置406からの制御信号又は認識情報の入力がある場合には、監視制御サーバソフト501は、入力された情報を自動運転車101へ送信し(2005)、ステップ2002へ進む。
【0091】
以上の本実施例によれば、自動運転車を遠隔から監視・制御する自動運転システムにおいて、安全性を確保した上で遠隔監視・制御に要するコスト(通信コスト及び遠隔監視者の人件費)を小さくすることができる。
【実施例2】
【0092】
本発明に係る実施例2を、
図21〜
図24を用いて説明する。以下に説明する相違点を除き、実施例2のシステムの各部は、
図1〜
図20に示された実施例1の同一の符号を付された各部と同一の機能を有するため、それらの説明は省略する。
【0093】
本実施では、実施例1の構成に対して、自動運転車101と、監視制御サーバ105の構成が異なる。
【0094】
図21は、本発明の実施例2にかかる自動運転車101の構成を示すブロック図である。
【0095】
図21の構成要素の内、
図3と同じ部分には、
図3と同一の番号を付与し、説明を省略する。
図21の自動運転車101は、監視制御クライアントソフト2101を有する。監視制御クライアントソフト2101は、経路情報保持部314、監視制御エリア判定部315、走行状況情報送信部316、及び遠隔制御命令実行部317に加え、新たに監視制御接続管理部2102を有する。監視制御接続管理部2102は、自動運転車101が監視制御エリアに入った場合に、監視制御サーバ105に対して、監視制御サーバ105が当該自動運転車101に対する監視制御を実行可能かを確認するための監視制御要求を送信する。監視制御接続管理部2102は、送信した監視制御要求に対する監視制御サーバ105からの応答が、監視制御可能だった場合には自車走行状況情報の送信を開始し、監視制御不可能だった場合には自車走行状況情報の送信を開始しないよう制御する。
【0096】
図22は、本発明の実施例2にかかる監視制御サーバ105の構成を示すブロック図である。
【0097】
図22の構成要素の内、
図4と同じ部分には
図4と同一の番号を付与し、説明を省略する。
図22の監視制御サーバ105は、監視制御受付制御ソフト2201を有する。監視制御受付制御ソフト2201は、自動運転車101が監視制御エリアに入った場合に送信される監視制御要求に対して、監視制御最大容量、現在の監視制御容量、及び、要求を送信してきた自動運転車両の制御監視コストに基づいて、監視制御の可否を決定して自動運転車101に可否を示す情報を送信する。
【0098】
<監視制御クライアントソフト2101の動作フロー>
図23は、本発明の実施例2にかかる自動運転車101の監視制御クライアントソフト2101による処理を示すフローチャートである。
【0099】
図23において、実施例1の監視制御クライアントソフトの動作フロー図である
図18と同じ動作の部分には
図18と同一の番号を付与し、説明を省略する。
【0100】
監視制御クライアントソフト2101は、ステップ1808においてランドマーク情報と現在位置とを比較し、自動運転車101が監視制御エリア内に入っているかを確認し、YESの場合には、ステップ2301に進む。ステップ2301において、監視制御クライアントソフト2101は、監視制御サーバ105から監視制御可能の応答を受信済みか否かを確認する。監視制御サーバ105から監視制御可能である旨の応答を受信済みである場合には、ステップ1809に進む。監視制御サーバ105から監視制御可能の応答を受信していない場合には、ステップ2302へ進む。
【0101】
ステップ2302では、監視制御クライアントソフト2101は、監視制御サーバ105へ監視制御要求を送信する。本実施例では、監視制御要求パケットの内容として、自動運転車101の識別子、及び、自動運転車101の周辺の(すなわち当該自動運転車101がその監視制御エリアに入った)ランドマークに関連する監視制御コストを送信することとする。しかし、監視制御サーバ105が当該自動運転車101を識別し、かつ、現在の周辺のランドマークに対応する監視制御コストを認識できる情報であれば、監視制御クライアントソフト2101は、監視制御要求パケットの内容としていずれの情報を送信してもよい。
【0102】
次に、監視制御クライアントソフト2101は、監視制御サーバ105からの応答を確認する(2303)。監視制御サーバ105からの応答が、「監視制御可能」である場合には、ステップ1809に進む。ステップ1809で送信する監視制御サーバ105からの応答が、「監視制御不可能」である場合には、ステップ1803へ進む。
【0103】
<監視制御受付制御ソフト2201の動作フロー>
図24は、本発明の実施例2にかかる監視制御サーバ105の監視制御受付制御ソフト2201による処理を示すフローチャートである。
【0104】
監視制御受付制御ソフト2201が起動されると、監視制御最大容量Tを設定する(2202)。次に、監視制御受付制御ソフト2201は、現在の監視制御容量cを0に設定(すなわちクリア)する(2203)。次に、監視制御受付制御ソフト2201は、自動運転車101からの監視制御要求を受信したかを確認する(2404)。自動運転車101からの監視制御要求を受信していない場合には、ステップ2405に進む。自動運転車101からの監視制御要求を受信し
た場合には、ステップ2406に進む。
【0105】
ステップ2406では、監視制御受付制御ソフト2201は、監視制御要求を送信している自動運転車周辺のランドマークの監視制御コストxを算出し、ステップ2407に進む。ステップ2407において、監視制御受付制御ソフト2201は、c+xを計算し、c+x≦Tが満たされるか否かを確認する。c+x≦Tが満たされない場合には、監視制御受付制御ソフト2201は、監視制御要求を送信した自動運転車101からの監視制御要求を受け付けない(2408)。c+x ≦Tが満たされる場合には、監視制御受付制御ソフト2201は、監視制御要求を送信した自動運転車101からの監視制御要求を受け付ける(2409)。
【0106】
次に、監視制御受付制御ソフト2201は、cの値をc+xで更新し、(2411)、ステップ2405へ進む。ステップ2405では、監視制御受付制御ソフト2201は、監視制御を行っていたいずれかの自動運転車101に対する監視制御が終了したか否かを確認する。ここで、監視制御終了の検出方法の一例として、監視制御サーバ105が既に監視制御をしている自動運転車101から一定時間以上、走行状況情報を受信しなかった場合に、当該自動運転車101の監視制御が終了したと判定する方法がある。
【0107】
ステップ2405の判定の結果、NO(すなわちいずれの自動運転車101に対する監視制御もまだ終了していない)の場合、ステップ2404に進む。ステップ2405の判定の結果、YES(すなわちいずれかの自動運転車101に対する監視制御が終了した)の場合、監視制御受付制御ソフト2201は、監視制御終了となった自動運転車101の監視制御コストyを読み出し、ステップ2413へ進む。ステップ2413では、監視制御受付制御ソフト2201は、cをc=c−yで更新し、ステップ2404へ進む。
【0108】
次に、
図12のランドマーク監視制御情報テーブル308(監視制御コスト)を用いた場合の、自動運転車101と監視制御サーバ105の具
体的な処理について、具体例を用いて説明する。ここで、監視制御サーバの監視制御最大容量T=0.05とする。
【0109】
現在の監視制御容量c=0の状態で、監視制御受付制御ソフト2201が、自動運転車ID:1、監視制御コスト=0.05の監視制御要求を受信した場合(2404)、当該自動運転車101の監視制御コストxは0.05となる(2406)。ステップ2407において、c+x=0+0.05=0.05となる。ここで、T=0.05なのでc+x≦Tを満たすため、監視制御受付制御ソフト2201は、当該自動運転車101からの監視制御要求を受け付ける(2409)。
【0110】
次に、監視制御受付制御ソフト2201は、ステップ2411において、cの値を0.05に更新する。この自動運転車ID:1の自動運転車101の監視制御を実施している状態(c=0.05の状態)で、監視制御受付制御ソフト2201が自動運転車ID:2、監視制御コスト=0.02の監視制御要求を受信した場合(2404)、当該自動運転車の監視制御コストxは0.02となる(2406)。ステップ2407において、c+x=0.05+0.02=0.07となる。ここで、T=0.05なのでc+x≦Tが満たされないため、監視制御受付制御ソフト2201は、当該自動運転車101からの監視制御要求を受け付けず、当該自動運転車に対して監視制御不可である旨を送信する(2408)。この状態(c=0.05の状態)で、監視制御中であった自動運転車ID:1の監視制御が終了となった場合、ステップ2405でYESとなり、ステップ2412に進む。自動運転車ID:1の監視制御コストy=0.05である(2412)。ステップ2413において、監視制御受付制御ソフト2201は、cをc−y=0.05−0.05=0に更新する。この状態で、監視制御受付制御ソフト2201が、自動運転車ID:3、監視制御コスト=0.02の監視制御要求、自動運転車ID:4、監視制御コスト=0.02の監視制御要求、自動運転車ID:5、監視制御コスト=0.01の3つの監視制御要求を順に受信した場合、いずれの場合もステップ2407においてc+x≦Tを満たすと判定される。このため、監視制御受付制御ソフト2201は、監視制御
要求を受け付け、監視制御可能である旨を自動運転車101に送信する(2409)。
【0111】
例えば、監視制御サーバの監視制御最大容量Tを、監視制御サーバ105の性能、監視制御者106の人数及び能力等に応じて対応可能な監視制御コストの値に設定することで、監視制御サーバ105及びそれを操作する監視制御者106が対応可能な範囲で(すなわち上記の例ではc+x≦Tが満たされる範囲で)複数の自動運転車101の監視制御を行うことが可能になる。すなわち、本実施例によれば、遠隔から監視・制御する自動運転システムにおいて、安全性を確保した上で監視・制御に要するコストを小さくし、さらに、監視制御サーバが複数の車両の監視制御をすることができる。
【実施例3】
【0112】
本発明に係る実施例3を、
図25〜
図31を用いて説明する。以下に説明する相違点を除き、実施例3のシステムの各部は、
図1〜
図24に示された実施例1及び2の同一の符号を付された各部と同一の機能を有するため、それらの説明は省略する。
【0113】
本実施では、実施例1の構成に対して、自動運転車101の構成が異なる。
【0114】
図25は、本発明の実施例3にかかる自動運転車101の構成を示すブロック図である。
【0115】
図25の構成要素の内、
図3と同じ部分には、
図3と同一の番号を付与し、説明を省略する。
図25の自動運転車101は、監視制御クライアントソフト2501を有する。監視制御クライアントソフト2501は経路情報保持部314、監視制御エリア判定部315、及び遠隔制御命令実行部317に加え、新たに走行状況情報送信方法テーブル2502及び走行状況情報送信部2503を有する。走行状況情報送信方法テーブル2502は、ランドマーク種別と、状況情報送信方法との対応付けを記録したテーブルである。走行状況情報送信部2503は、走行状況情報を送信する際、走行状況情報送信方法テーブル2502を参照し、周辺のランドマーク種別に対応する走行状況情報送信方法を選択し、当該走行状況情報送信方法によって、走行状況情報を送信する。
【0116】
図26は、本発明の実施例3にかかる自動運転車101が保持する走行状況情報送信方法テーブル2502の一例を示す説明図である。
【0117】
走行状況情報送信方法テーブル2502は、ランドマーク種別2601及び走行状況情報送信方法2602から構成される。この例は、ランドマーク種別2601が信号機である場合には、走行状況情報送信方法2602として前方上部画像を送信すること、すなわち、走行状況情報として、カメラ202が撮影した画像のうち、前方を撮影した画像の、画面の上部を送信することを表す。また、この例は、ランドマーク種別2601が徐行である場合には、走行状況情報送信方法2602として前方下部画像を送信すること、すなわち、走行状況情報として、カメラ202が撮影した画像のうち、前方を撮影した画像の、画面の下部を送信することを表す。
【0118】
上記は画像の例を示したが、画像に限らず、走行状況情報送信方法テーブル2502は、ランドマーク種別2601と、その種別のランドマークに接近した自動運転車101のセンサ部201が取得した情報のうち、走行状況情報として監視制御サーバ105に送信されるべき部分とを対応付ける情報を含む。
【0119】
<監視制御クライアントソフト2501の動作フロー>
図27は、本発明の実施例3にかかる自動運転車101の監視制御クライアントソフト2501による処理を示すフローチャートである。
【0120】
図27において、
図18と同じ部分には、
図18と同一の番号を付与し、説明を省略する。ステップ1808でYesと判定された場合、監視制御クライアントソフト2501は、ステップ2701において、走行状況情報送信方法テーブル2502を参照し、走行状況送信方法を決定する。その後、監視制御クライアントソフト2501は、ステップ1809を実行する。
【0121】
次に、走行状況送信方法について、具体例を用いて説明する。
【0122】
図28は、本発明の実施例3にかかる自動運転車101のカメラ202がランドマーク種別:信号機の監視制御エリア内において取得した画像(映像)の例を示す説明図である。
【0123】
自動運転車101が信号機の監視制御エリア内を走行している自動運転車101においてステップ2701が実行されると、ランドマーク種別2601に対応する走行状況情報送信方法2602は前方上部画像となる。従って、自動運転車101が本エリア内を走行している場合、ステップ1809において、監視制御クライアントソフト2501は、
図29に示す前方上部画像のみを監視制御サーバ105へ送信する。
【0124】
図29は、本発明の実施例3にかかる自動運転車101の監視制御クライアントソフト2501がランドマーク種別:信号機の監視制御エリア内から送信する画像(映像)の例を示す説明図である。
【0125】
信号機周辺で監視制御サーバ105が監視すべき内容は、自動運転車101の前方上部にある信号機なので、その信号機が撮影された前方上部画像を送信し、それ以外の画像を送信しないことによって、安全性を確保した上でデータ送信量の削減が可能となり、通信コストを削減することができる。
【0126】
図30は、本発明の実施例3にかかる自動運転車101のカメラ202がランドマーク種別:徐行の監視制御エリア内において取得した画像(映像)の例を示す説明図である。
【0127】
徐行の監視制御エリア内を走行している自動運転車101においてステップ2701が実行されると、ランドマーク種別2601に対応する走行状況情報送信方法2602は前方下部画像となる。従って、自動運転車101が本エリア内を走行している場合、ステップ1809において、監視制御クライアントソフト2501は、
図31に示す前方下部画像のみを監視制御サーバ105へ送信する。
【0128】
図31は、本発明の実施例3にかかる自動運転車101の監視制御クライアントソフト2501がランドマーク種別:徐行の監視制御エリア内から送信する画像(映像)の例を示す説明図である。
【0129】
徐行エリア周辺で監視制御サーバ105が監視すべき内容は、自動運転車101の前方下部に相当する自動運転車の前方近傍の歩行者等の飛び出しなので、前方下部画像を送信し、それ以外の画像を送信しないことによって、安全性を確保した上でデータ送信量の削減が可能となり、通信コストを削減することができる。
【0130】
上記のとおり、本実施例では、走行状況情報送信方法テーブル2502に従って、ランドマークの種別に応じて、監視制御のために不要な情報が自動運転車101から送信されないため、自動運転車101と監視制御サーバ105との間の通信データ量が削減される。このため、本実施例によれば、遠隔から監視・制御する自動運転システムにおいて、安全性を確保した上で監視・制御に要するコストの内、通信コストを小さくすることができる。
【0131】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0132】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
【0133】
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。