(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軌条輪の回転速度が、前記軌条輪の左右方向加振を伴わない単純回転試験における蛇行動発生下限速度以上である場合には、前記軌条輪の回転速度を前記蛇行動発生下限速度未満まで減速した後に前記加振を行うこと
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の蛇行動収束方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、車両試験台を用いた台車の高速回転試験において、フランジ接触が発生するような大振幅の蛇行動(発散状態)が発生した場合、蛇行動が収束するまで軌条輪の回転速度を減速させることで対応している。
しかし、蛇行動は上述したように自励振動の一種であるため、通常の強制加振振動とは異なり、発散状態から収束までに比較的長時間を要することが多い。
大振幅で輪軸が揺動する発散状態では、フランジ接触などにより車輪に作用する横方向の力(横圧)が大きいため、軌条輪等の試験設備や供試車両に損傷が発生することが懸念される。
したがって、試験中に蛇行動が発生した場合には、安全上できるだけ速やかに収束させる必要がある。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、軌条輪上での輪軸の蛇行動を迅速に収束させることが可能な蛇行動収束方法、及び、台上試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、軌条輪に載置された状態で回転する輪軸の蛇行動を収束させる蛇行動収束方法であって、前記蛇行動による前記輪軸の左右方向変位と実質的に同期させて前記軌条輪を前記左右方向変位と同じ方向へ加振することを特徴とする蛇行動収束方法である。
これによれば、軌条輪を輪軸の左右方向変位と同じ方向へ加振することによって、一時的に輪軸の軌条輪に対する左右方向変位を小さくし、蛇行動の発散が発生し得る不安定な領域から蛇行動が収束する安定な領域へ推移させ、軌条輪を減速することなく、あるいは、最低限の減速によって、蛇行動を短時間で収束させることができる。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記輪軸は、回転速度が所定の範囲内であるときに、前記軌条輪に対する相対振幅が所定の初期振幅値以上となった際に前記蛇行動が発生する特性を有し、前記加振時の振幅を、前記軌条輪に対する前記輪軸の相対振幅が前記初期振幅値未満となるよう設定することを特徴とする請求項1に記載の蛇行動収束方法である。
これによれば、輪軸の振動を確実に安定な領域へ推移させて上述した効果を得ることができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記加振は、ωを前記蛇行動の角速度、tを時間、kを所定の定数としたときに、実質的に(1−cosωt)kにより表現される波形の1波により行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蛇行動収束方法である。
これによれば、立ち上がり時の波形の傾きを抑制して台上試験装置や車両に加わる機械的負担を抑制しつつ、適切に上述した蛇行動収束効果を得ることができる。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記加振により蛇行動が収束しない場合に、前記軌条輪の回転速度を低下させて再度前記加振を行うことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の蛇行動収束方法である。
請求項5に係る発明は、前記軌条輪の回転速度が、前記軌条輪の左右方向加振を伴わない単純回転試験における蛇行動発生下限速度以上である場合には、前記軌条輪の回転速度を前記蛇行動発生下限速度未満まで減速した後に前記加振を行うことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の蛇行動収束方法である。
これらの各発明によれば、軌条輪の回転速度が高速であり、安定領域が存在しないか、存在しても範囲が狭い場合に、減速後加振を行うことによって適切な蛇行動の収束効果を得ることができる。
【0010】
請求項6に係る発明は、輪軸が載置される軌条輪と、前記軌条輪を回転駆動する回転駆動手段と、前記軌条輪を左右方向に変位させるアクチュエータと、前記輪軸の左右方向変位を検出する変位検出手段とを備える鉄道車両の台上試験装置であって、前記輪軸の蛇行動を検出する蛇行動検出手段と、前記蛇行動の検出に応じて、前記アクチュエータに前記蛇行動による前記輪軸の左右方向変位と実質的に同期させて前記軌条輪を前記左右方向変位と同じ方向へ加振させるアクチュエータ制御手段とを備えることを特徴とする鉄道車両の台上試験装置である。
請求項7に係る発明は、前記輪軸は、回転速度が所定の範囲内であるときに、前記軌条輪に対する相対振幅が所定の初期振幅以上となった際に前記蛇行動が発生する特性を有し、前記アクチュエータ制御手段は、前記加振時の振幅を、前記軌条輪に対する前記輪軸の相対振幅が前記初期振幅値未満となるよう設定することを特徴する請求項6に記載の鉄道車両の台上試験装置である。
請求項8に係る発明は、前記アクチュエータ制御手段は、ωを前記蛇行動の角速度、tを時間、kを所定の定数としたときに、実質的に(1−cosωt)kにより表現される波形の1波により前記加振を行うことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の鉄道車両の台上試験装置である。
請求項9に係る発明は、前記加振により蛇行動が収束しない場合に、前記軌条輪の回転速度を低下させる軌条輪速度制御手段を備え、前記アクチュエータ制御手段は、前記回転速度の低下後に再度前記加振を行うことを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載の鉄道車両の台上試験装置である。
請求項10に係る発明は、前記軌条輪の回転速度を検出する軌条輪回転速度検出手段と、前記軌条輪の回転速度を制御する軌条輪速度制御手段とを備え、前記アクチュエータ制御手段は、前記軌条輪の回転速度が、前記軌条輪の左右方向加振を伴わない単純回転試験における蛇行動発生下限速度以上である場合には、前記軌条輪速度制御手段が前記軌条輪の回転速度を前記蛇行動発生下限速度未満まで減速した後に前記加振を行うことを特徴とする請求項6から請求項9までのいずれか1項に記載の鉄道車両の台上試験装置である。
これらの各発明によれば、上述した蛇行動収束方法の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、軌条輪上での輪軸の蛇行動を迅速に収束させることが可能な蛇行動収束方法、及び、台上試験装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した蛇行動収束方法、及び、台上試験装置の実施形態について説明する。
図1は、実施形態の台上試験装置の構成を示す模式図である。
図1は、供試車両を前後方向から見た状態を示している。
実施形態の台上試験装置1は、軌条輪10、回転軸20、支持台30、回転駆動装置40、フライホイル装置50、左右加振装置60等を有する車両試験台に、軸箱変位検出センサ70、制御装置80を付加したものである。
なお、軌条輪10等からなる軌条輪装置は、供試車両が複数の輪軸を有する場合には、輪軸毎に設けられる。
例えば、前後一対の2軸ボギー台車を有する車両用の試験装置には、車両前後方向に沿って4組の軌条輪10等が配列される。
【0014】
図1に示す状態において、台上試験装置1には、供試車両である車両100が設置されている。
車両100は、一例として、車体前後に一対の2軸ボギー台車を有する高速鉄道用電車車両である。
車両100は、車体110、台車枠120、輪軸130、軸箱140、軸ばね150、まくらばね160等を有する。
【0015】
車体110は、下面部を構成する台枠及び床板、側面部を構成する側構、前後面部を構成する妻構、上面部を構成する屋根構等を有し、実質的に六面体状に形成されている。
車体110は、図示しない拘束装置によって、前後方向への移動が拘束されている。
【0016】
台車枠120は、車体110の下部にボギー角(鉛直軸回りの回転角)付与可能に取り付けられた枠状の構造部材である。
台車枠120は、図示しないけん引装置及びまくらばね160等を介して、車体110に対して上下方向に相対変位可能に取り付けられる。
台車枠120には、図示しない軸箱支持装置を介して輪軸130が取り付けられる。
【0017】
輪軸130は、左右一対の車輪131を、車軸132の両端部に圧入したものである。
車輪131は、左右方向外側が窄まった所定形状の踏面勾配(テーパ)及びフランジを有する。
フランジは、車輪131の左右方向内側の端部から外径側につば状に張り出している。
【0018】
軸箱140は、車軸132の両端部に形成されたジャーナル部を回転可能に支持するものである。
軸箱140は、軸受及びその潤滑装置等を有して構成されている。
軸箱140は、図示しない軸箱支持装置を介して、台車枠120に対して上下方向、左右方向、及び、ステア方向(輪軸130をヨーイングさせる方向)に相対変位可能に取り付けられている。
なお、輪軸130と軸箱140とは、左右方向における位置関係が実質的に拘束されており、輪軸130の左右方向変位と軸箱140の左右方向変位とは実質的に等しくなっている。
【0019】
軸ばね150は、台車枠120と軸箱140との間に設けられたばね要素である。
軸ばね150は、台車枠120に対する軸箱140の上下方向相対変位に応じた反力を発生する。
【0020】
まくらばね160は、車体110の下部と台車枠120の上部との間に設けられたばね要素である。
まくらばね160は、例えば、ゴム等の可撓性を有する材料により形成されたベローズの内部に、主空気溜めから供給される圧縮空気を注入した空気ばねである。
まくらばね160の内部において、伸縮時に空気が通流する流路にはオリフィスが設けられ、伸縮速度に応じた減衰力を発生するようになっている。
まくらばね160は、左右方向(車幅方向)に離間して、例えば台車1台あたり2つが設けられる。
【0021】
以下、台上試験装置1の構成についてより詳細に説明する。
軌条輪10は、実質的に水平に配置された中心軸回りに回転可能に支持された円盤状の部材である。
軌条輪10の外周縁部は、レール頭頂面を模した形状に形成されている。
軌条輪10の外周縁部には、車両100の車輪131が載置される。
軌条輪10は、左右の車輪131に対応して、車両100の各輪軸130あたり2枚が設けられる。
【0022】
回転軸20は、軌条輪10の中心部に挿入された状態で固定され、回転駆動装置40からの駆動力や、左右加振装置60からの加振力を、軌条輪10に伝達する円柱状、軸状の部材である。
【0023】
支持台30は、回転軸20をその中心軸回りに回動可能に支持する構造体である。
回転軸20は、支持台30に対して、中心軸方向(車両100の左右方向)に変位可能に支持されている。
【0024】
回転駆動装置40は、例えば直流他励電動機等の電動モータを有し、回転軸20を介して軌条輪10を回転駆動するものである。
回転駆動装置40は、回転軸20の一方側の端部に設けられている。
【0025】
フライホイル装置50は、車両100側から軌条輪10を駆動する場合の走行抵抗を模擬するものである。
フライホイル装置50は、回転軸20とともに回転する回転質量体を有し、車両100の重量に応じて等価質量を段階的に切り換え可能となっている。
フライホイル装置50は、回転駆動装置40と支持台30との間に設けられている。
【0026】
左右加振装置60は、軌条輪10を、回転軸20を介して油圧アクチュエータにより左右方向(中心軸方向)に駆動するものである。
左右加振装置60は、回転軸20の回転駆動装置40側とは反対側の端部に設けられている。
なお、台上試験装置1には、回転軸20を上下方向に駆動して変位させる図示しない上下加振装置が設けられ、例えば高低不整、通り付勢等の車両100が営業線を走行する際の軌道不整等を再現可能となっている。
【0027】
軸箱変位検出センサ70は、車両100の軸箱140の左右方向変位を検出するセンサである。
軸箱140の左右方向変位は、輪軸130の左右方向変位と実質的に等しい。
軸箱変位検出センサ70は、例えば、車両100の軸箱140に取り付けられ、左右方向の加速度を検出する加速度センサである。
軸箱左右方向の加速度を2回積分することによって、軸箱140の左右方向変位を算出することが可能である。
【0028】
制御装置80は、台上試験装置1を統括的に制御するものである。
制御装置80は、試験中に輪軸130の蛇行動が発生した場合に、軌条輪10を左右方向に加振し変位させることにより、蛇行動を収束させる蛇行動収束制御を実行する機能を有する。
蛇行動収束制御については、後に詳しく説明する。
制御装置80は、CPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス及びこれらを接続するバス等を有して構成されている。
【0029】
制御装置80は、軸箱変位演算手段81、軸箱変位推定手段82、加振波形生成手段83、加振装置制御手段84、軌条輪速度制御手段85等を有して構成されている。
軸箱変位演算手段81は、軸箱変位検出センサ70の出力を処理し、軸箱140の左右方向変位を演算するものである。
軸箱140が所定の振幅以上の大振幅で振動している場合は、蛇行動が発生(発散)しているものと判定される。
軸箱変位推定手段82は、軸箱変位演算手段81が演算する軸箱140の左右方向変位の履歴に基づいて、軸箱140(輪軸130)の左右方向変位(蛇行動を含む)の周波数f及び振幅ωを算出し、今後の(未来の)軸箱140の左右方向変位を推定(予測)するものである。
【0030】
加振波形生成手段83は、蛇行動が発生している場合に、軌条輪10を左右方向に加振して蛇行動を収束させる際の加振波形を生成するものである。
加振波形は、例えば、軸箱140(輪軸130)の左右振動と同位相の一波(中立位置から左右いずれか一方向のみ)であって、以下の式1によって表現されるものとすることができる。
加振振幅=(1−cosωt)k ・・・(式1)
ω:蛇行動の角速度
t:時間
k:定数
加振装置制御手段84は、加振波形生成手段83が生成する加振波形に応じて、軌条輪10の左右方向変位が実質的に同様の波形を示すよう左右加振装置60を制御するアクチュエータ制御手段である。
【0031】
軌条輪速度制御手段85は、回転駆動装置40に制御指令を与え、軌条輪10の回転速度を制御するものである。
軌条輪速度制御手段85は、軌条輪10の回転速度を検出する軌条輪回転速度検出手段としての機能も備えており、軌条輪10の実際の回転速度が試験目的に応じて設定される目標回転速度と一致するように回転駆動装置40を制御する。
【0032】
図2は、実施形態の台上試験装置における軌条輪回転速度と輪軸左右振幅との相関を示す図である。
図2において、横軸は軌条輪の回転速度を示しており、これは車両1の模擬的な走行速度に相当する。
縦軸は輪軸(軸箱)の左右方向変位の振幅を示している。
【0033】
系の非線形まで考慮して蛇行動安定性を評価するとき、平衡点の安定性のみを考慮するだけでは不十分で、広域的な安定性を考慮する必要があることが実験的に確かめられた。
具体的には、
図2に示すような曲線で示される特性があることを確認した。
【0034】
蛇行動試験には、一般に単純回転試験と、外乱を与える加振試験との2種類がある。
単純回転試験の場合、軌条輪10を加振することなく徐々に加速し、蛇行動が発生する(発散する)速度を調べる。
一般に、ある速度を超えると突如発散し、その速度は
図2のVcに相当する。
発散すると、フランジ接触を伴う大振幅が発生し、
図2に太線実線で示す大振幅値での定常振動が継続する。
このような状況となった場合、従来は軌条輪の回転速度を減速させることによって収束を図っていた。
例えば、
図2において、太線実線を右側から左側へたどるように減速させると、速度V0を下回った直後に突如収束する。
【0035】
一方、加振試験の場合、軌条輪10を徐々に加速しつつ、所定速度(例えば10km/h)ごとに加速を中断し、一定速度条件で軌条輪10を左右に加振してトリガー(外乱となる初期加振)を与え、蛇行動発生(発散)の有無を調べる。
加振後に左右動が収束し、蛇行動が発生しない場合には再度加速し、次の速度段(例えば+10km/h)で同様の加振を繰り返す。
このようにして、最終的に蛇行動が発生する速度を調べる。
【0036】
単純回転試験と加振試験とでは、蛇行動限界速度(発散する速度)が異なり、単純回転試験で限界速度がVcであった場合、加振試験では限界速度はVcよりも低くなる。
これは
図2に太線破線で示すように、安定な領域がVcに近づくにつれて狭くなるからである。
要するに、Vcよりも低い速度であっても、加振することによって、太線実線を超えるようなトリガーを与えた場合、発散して太線実線で示す振幅の蛇行動が発生する。
【0037】
図2から、ある速度域においては、蛇行動に関して、安定な領域と不安定な領域とを分ける初期振幅値があることがわかる。
本実施形態は、このような特性を利用して、大振幅の蛇行動が発生中に、軌条輪10を左右方向(まくらぎ方向)に加振し、加振後の初期変位を安定な領域内に推移させることによって蛇行動を収束させるものである。
つまり、加速試験によって蛇行動が発生したとしても、安定な領域が存在するのであれば、軌条輪10の加振により安定領域に推移させることで、軌条輪10の減速を行わないか、あるいは最低限の減速により、蛇行動を収束させることができる。
この方法によれば、軌条輪10の回転速度を減速しなくても、比較的短時間で蛇行動の発散状態を収束させることができる。
具体的には、軸箱140(輪軸130)の左右方向変位をモニタリングしながら、大振幅の台車蛇行動が発生した場合に、輪軸130の左右方向変位と同位相の加振波形を生成し、軌条輪10を加振して、大振幅振動を収束させる。
以下、このような蛇行動収束制御について、より詳細に説明する。
【0038】
図3は、実施形態の台上試験装置における蛇行動収束制御を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0039】
<ステップS01:軸箱左右方向変位モニタリング>
制御装置80は、軸箱変位検出センサ70の出力に基づいた軸箱変位演算手段81の演算結果に基づいて、軸箱140の左右方向変位(輪軸130の左右方向変位と実質的に等しい)をモニタリングする。
その後、ステップS02に進む。
【0040】
<ステップS02:蛇行動発生有無判断>
制御装置80は、ステップS01において軸箱140の左右方向変位をモニタリングした結果、所定以上の振幅の振動が発生している場合に、蛇行動が発生していると判別してステップS03に進む。
その他の場合はステップS01に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0041】
<ステップS03:蛇行動角速度ω算出>
制御装置80の軸箱変位推定手段82は、ステップS01において軸箱140の左右方向変位をモニタリングした結果に基づいて、蛇行動の周波数fを算出し、蛇行動の角速度ωを算出する。
その後、ステップS04に進む。
【0042】
<ステップS04:軸箱左右方向変位推定>
制御装置80の軸箱変位推定手段82は、ステップS03において算出した蛇行動の角速度ω、及び、軸箱変位演算手段81の出力に基づいて得られた蛇行動の現在の位相に基づいて、将来の(例えば、直後数秒間の)軸箱140の左右方向変位の推移を推定する。
その後、ステップS05に進む。
【0043】
<ステップS05:軌条輪加振>
制御装置80の加振波形生成手段83は、ステップS04において推定した軸箱140の左右方向変位の推移に基づいて、上述した式1によって表現されかつ軸箱140の推定左右方向変位と同位相の一波からなる加振波形を生成する。
その後、加振装置制御手段84は、加振波形生成手段83が生成する加振波形に応じて、左右加振装置60を制御し、回転軸20を左右へ駆動させることによって、軌条輪10の加振を行う。
その後、ステップS06に進む。
【0044】
<ステップS06:蛇行動収束判断>
制御装置80は、軸箱140の左右方向変位をモニタリングし、蛇行動が収束したか否かを判別する。
蛇行動が収束した場合は、一連の処理を終了する。
蛇行動が収束していない場合は、ステップS07に進む。
【0045】
<ステップS07:軌条輪回転速度減速>
制御装置80の軌条輪速度制御手段85は、回転駆動装置40に制御指令を与え、軌条輪10の回転速度を、例えば周速で10km/h減速する。
その後ステップS03に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0046】
図4は、実施形態の台上試験装置において蛇行動を収束させる際の軸箱左右方向変位及び軌条輪左右方向変位の推移の一例を示すグラフである。
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は軸箱140及び軌条輪10の左右方向変位を示している。
軸箱140の左右方向変位を実線で示し、軌条輪10の左右方向変位を太線破線で示している。
図4に示すように、軸箱140の大振幅振動(蛇行動の発散)が生じているときに、軌条輪10に対して、軸箱140の振動と同位相(同方向)の一波の加振を、軸箱140の振動と実質的に同期させて行うことによって、軸箱140の蛇行動を直ちに収束させることができる。
例えば、
図2における点Pにおいて蛇行動が発生している場合、軌条輪10を輪軸130及び軸箱140と同位相で加振し、軌条輪10に対する輪軸130の相対振幅が、蛇行動が発散する初期振幅(
図2における太線破線)未満となるようにすることによって、蛇行動は直ちに収束する。
【0047】
このように、加振により
図2に示す安定領域に確実に推移させるため、輪軸130が、回転速度が所定の範囲内(
図2におけるV0乃至Vc)であるときに、軌条輪に対する相対振幅が所定の初期振幅値(
図2における太線破線)以上となった際に蛇行動が発生する特性を有する場合に、加振時の軌条輪10の振幅を、軌条輪10に対する輪軸130の相対振幅(相対変位)が初期振幅値未満となるよう、加振振幅を設定することが好ましい。
【0048】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)台上試験装置1による試験中に蛇行動が発生した際に、軌条輪10を輪軸130(軸箱140)の左右方向変位と同じ方向へ加振することによって、一時的に輪軸130の軌条輪10に対する左右方向変位を小さくし、蛇行動の発散が発生し得る不安定領域から蛇行動が収束する安定領域へ推移させ、軌条輪10を減速することなく、あるいは、最低限の減速によって、蛇行動を短時間で収束させることができる。
(2)軌条輪10を加振する際の振幅を、輪軸130の軌条輪10に対する相対振幅が、蛇行動の発散が生じる初期振幅(
図2における太線破線)以下となるように設定することによって、確実に安定領域へ推移させて蛇行動の収束効果を得ることができる。
(3)(1−cosωt)kにより表現される波形の1波により加振を行うことによって、立ち上がり時の波形の傾きを抑制して台上試験装置1や車両100に加わる機械的負担を抑制しつつ、適切に上述した蛇行動収束効果を得ることができる。
(4)加振により蛇行動が収束しない場合に、軌条輪10の回転速度を低下させて再度加振を行うことによって、軌条輪の回転速度が高速であり、安定領域が存在しないか、存在しても範囲が狭い場合に、減速後加振を行うことによって適切な蛇行動の収束効果を得ることができる。
【0049】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)台上試験装置及び供試鉄道車両の構成は、上述した実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
例えば、実施形態においては、鉄道車両一両を台上試験装置(試験台)に設置しているが、これに限らず、車両の一部(例えば、前半部又は後半部)や、複数車両からなる編成を設置して行う試験にも本発明は適用することができる。
また、本発明は、車体を用いない台車単体の試験にも適用することができる。
(2)輪軸(軸箱)の左右方向変位を検出する手法は、実施形態に限定されず適宜変更することができる。例えば、光学式や接触式のセンサを用いて輪軸又は軸箱の変位を検出するようにしてもよい。
(3)軌条輪を加振する際の波形は、1−cosωtによって表現されるものに限らず、適宜変更することができる。
(4)実施形態においては、加振を行った後に蛇行動が収束しない場合に軌条輪の回転速度の減速を行っているが、軌条輪の回転速度がVc以上である場合には、加振を行ったとしても蛇行動の収束は不可能であるから、先ず軌条輪の回転速度をVc以下まで減速してから加振を行うようにするとよい。