特許第6789878号(P6789878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789878
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 17/16 20060101AFI20201116BHJP
   H02K 3/24 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H02K17/16 Z
   H02K3/24 J
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-96458(P2017-96458)
(22)【出願日】2017年5月15日
(65)【公開番号】特開2018-196200(P2018-196200A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 明
(72)【発明者】
【氏名】坪井 雄一
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−275474(JP,A)
【文献】 実開昭56−027886(JP,U)
【文献】 実開昭57−165052(JP,U)
【文献】 実開昭57−165053(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 17/16
H02K 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状を成し、その軸方向に沿う複数本のロータバーが、互いに間隔を保って環状に配置され、これらロータバーの端部は導電性の短絡環により相互に短絡されている回転子を有する回転電機であって、
前記短絡環は、前記各ロータバーと接続する環状の本体部、及びこの本体部の内周寄りの部分を前記回転子の軸端方向に延出させた筒状部を有し、
この筒状部の外周には保持環が嵌合取付けされており、
前記筒状部には、前記保持環の、前記短絡環の本体部寄りの部分に通じる通風路が形成されており、
前記短絡環の前記本体部の端面と、この本体部の端面と対向する前記保持環の端面とは、これら短絡環と保持環との電位差によるアーク発生を防止できる間隔で対峙し、
前記通風路は、前記筒状部の内周から前記間隔を有する間隙に通じる貫通孔であることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数本のロータバーが互いに間隔を保って環状に配置され、これらロータバーの端部が導電性の短絡環により相互に短絡されている回転子を有する回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の一種である誘導機の回転子は、円柱状の鉄心に、その軸方向に沿って複数本のロータバーを、互いに間隔を保って環状に配置し、これらロータバーの端部を導電性の短絡環により相互に短絡している。この短絡環が運転時の遠心力により膨張するのを防ぐため、短絡環には保持環が一体的に嵌合取付けされている。
【0003】
このような誘導機の回転子における保持環は、その構造上、冷却表面積(放熱面積)が小さく、誘導機運転時に加熱され易い。加熱した保持環は0.2%耐力が低下するため、それを防ぐには熱容量を増大させるために大形に形成するか、あるい耐熱性の高い素材を使わざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開閉6−153471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、誘導機の保持環は運転時に加熱され易く、温度上昇により強度が低下する問題があった。
【0006】
本発明は、保持環に対する通風路を確保してその温度上昇を抑えることにより強度低下を防止した回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態に係る回転電機は、円柱状を成し、その軸方向に沿う複数本のロータバーが、互いに間隔を保って環状に配置され、これらロータバーの端部は導電性の短絡環により相互に短絡されている回転子を有する回転電機であって、前記短絡環は、前記各ロータバーと接続する環状の本体部、及びこの本体部の内周寄りの部分を前記回転子の軸端方向に延出させた筒状部を有し、この筒状部の外周には保持環が嵌合取付けされており、前記筒状部には、前記保持環の、前記短絡環の本体部寄りの部分に通じる通風路が形成されており、前記短絡環の前記本体部の端面と、この本体部の端面と対向する前記保持環の端面とは、これら短絡環と保持環との電位差によるアーク発生を防止できる間隔で対峙し、前記通風路は、前記筒状部の内周から前記間隔を有する間隙に通じる貫通孔であることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、保持環への通風路が確保されるので、保持環を効果的に冷却でき、高温による強度低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る回転電機の全体構成図である。
図2図1で示した回転子の軸端部分を示す斜視図である。
図3図2で示した部分の要部構成を示す断面図である。
図4】本発明の他の実施の形態における要部構成を示す断面図である。
図5】本発明のさらに他の実施の形態における要部構成を示す断面図である。
図6図5の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1はこの実施の形態に係る回転電機の全体構成を示している。この回転電機11は、回転子12及び固定子13を有する本体部を、フレーム15内に収容している。このフレーム15の上部には冷却用の空気室16が一体的に構成されている。空気室16内には熱交換用の通気パイプ17が多数設けられており、これら通気パイプ17には、空気室16の図示左右に連結する通気カバー18,19を通じて外気が流通する。
【0012】
すなわち、図示左方の吸気側の通気カバー18内には回転子12の回転軸121と同軸の外部ファン21が設けられており吸気用のカバー22に設けられた吸気口から外気を吸気し、通気カバー18を通じて空気室16内の多数の通気パイプ17に送風する。通気パイプ17を通った空気は図示右側の通気カバー19を通って、この通気カバー19に設けられた排気口から外部に排気される、所謂全閉外扇形の冷却構造を示している。
【0013】
ただし、本発明の実施形態における特徴部分は、以下に述べるように、回転子12部分の構造にあり、本発明は上述した全閉外扇形の冷却構造を採用した回転電機に限られることなく、全閉外扇形以外の冷却構造を用いた回転電機にも、もちろん適用可能である。
【0014】
回転子12は、円柱状を成し回転軸121と一体的に構成された回転子鉄心122を有し、その軸方向に沿う複数本のロータバー25が、所定間隔で環状に配置されている。なお、図1ではロータバー25の端部のみが図示されている。固定子13は、円筒状を成す固定子鉄心131及び固定子巻線26を有する。この固定子鉄心131の内周面は、回転子鉄心122の外周面と間隔を保って対峙している。なお、図1では固定子巻線26の端部のみが図示されている。
【0015】
回転子12の回転軸121の、フレーム15内における左右の部分には内部ファン28がそれぞれ設けられており、フレーム15内の空気を、回転子12の軸方向に沿って設けられた図示しない通風路を通してその中央に向って送風する。この中央に向って送風された空気は、回転子鉄心122及び固定子鉄心131の軸方向数か所に、それらの半径方向に沿って形成された図示しない通風ダクトを通って空気室16内に流れる。この空気室16内には導風板161が設けられており、固定子鉄心131から空気室16内に流れた空気を矢印で示すように左右に振り分け、空気室16の図示左右壁内面に沿って下降させ、フレーム15内に戻す循環経路を形成する。
【0016】
このように、フレーム15内の空気を、回転子12及び固定子13を通じて空気室16内に流し、空気室16内において多数の通気パイプ17の外面に接触させて熱交換し、再びフレーム15内に戻すことにより、運転時に、回転子12及び固定子13から発生する熱を効果的に通風冷却する。
【0017】
回転子12は、前述したように円柱状を成す回転子鉄心122を有し、その軸方向に沿う複数本のロータバー25が、所定間隔で環状に配置されており、それらの端部は図1で示したように回転子鉄心122の端面から突出している。これら複数のロータバー25の端部は環状に配置されており、導電性の短絡環により相互に短絡されている。以下、この短絡環の構造を図2及び図3を用いて説明する。
【0018】
図2は複数のロータバー25の端部短絡構造を示し、図3はその要部であるロータバー25が1本分、接続された部分の断面構造を示している。図2で示すように複数のロータバー25は所定間隔を保って環状に配置されており、これらロータバー25の各端部は、導電性材料による短絡環31にそれぞれ接続され、相互に短絡されている。
【0019】
短絡環31は、図3で示すように、各ロータバー25と接続する環状の本体部311、及びこの本体部311の内周(図示下面)寄りの部分を図示左方(図1で示した回転子12の軸端方向)に延出させた筒状部312を有する。また、この筒状部312の外周には保持環32が嵌合取付けされている。この保持環32としては、機械的強度の高い、例えばステンレス材などを用いる。
【0020】
前述した短絡環31の本体部311の端面311aと、この本体部311の端面311aと対向する保持環32の端面32aとは、所定の間隔gを保って対峙するように構成する。この所定の間隔gとは、運転時における短絡環31と保持環32との電位差によるアーク発生を防止できる間隔(数ミリ程度)とする。また、短絡環31の筒状部312には、その内周から外周面に貫通し、間隔gを有する間隙に通じる貫通孔35を設ける。この貫通孔35は、保持環32の、短絡環31の本体部311寄りの部分(間隔gを有する間隙)に通じる通風路として機能する。
【0021】
上記構成において、回転電機の運転時、回転子12や固定子13には通電に伴い、熱が発生する。特に、起動時においては大電流が流れるため、発生熱も大きい。この発生熱に対し、回転軸121に直結する外部ファン21及び内部ファン28の回転により、外気を空気室16内の通気パイプ17に流し、かつフレーム15内の空気を空気室16内との間で循環させることにより、回転子12や固定子13を冷却している。
【0022】
ロータバー25の端部においても、図1で示した内部ファン28からの風が、回転子の軸端方向から送風されるので、図3の図示左方から右方へ空気が流れ、短絡環31の内周部分の空気の一部は、遠心力により貫通孔35を通り、本体部311の端面311aと保持環32の端面32aとの間隔gを有する間隙に流れる。このため、保持環32は、図示左面及び図示上面に加えて、短絡環31の本体部311と対向する端面32aにも空気が流れることにより放熱面積を従来に比べて大きく確保でき、その温度上昇を抑止できる。
【0023】
すなわち、従来の構造では、短絡環31の本体部311と保持環32の端面32aとの間隔gが無いため、保持環32は充分な放熱面積を確保できず、また、この間隔gに通じる貫通孔35もなかったため、通風による冷却効果も期待できなかった。また、上述した間隔gがないため、短絡環31と保持環32とは微小間隙で対向することとなるため、この間の電位差により部分的にアークが生じ、損傷することがあった。また、アークによる発熱も加わることになり、保持環32が著しく加熱されることとなっていた。
【0024】
これに対し、この実施の形態では、前述のように、短絡環31の本体部311の端面311aと、保持環32の端面32aとが、この間の電位差によるアーク発生を防止できる間隔g(数ミリ程度)を有する間隙を保って対峙しているので、この間にアークが発生することはなく、アークによる損傷を防止でき、かつアーク発生に伴うや加熱を防止できる。また、短絡環31の筒状部312に、間隔gを有する間隙に通じる貫通孔35を通風路として設けたので、保持環32の端面32aを効果的に通風冷却することができ、放熱面積の増大と併せて、保持環32の加熱を抑止することができる。
【0025】
このように、保持環32が効果的に冷却されることにより、温度上昇による強度低下を防ぐことができる。また、保持環32と短絡環31の間に間隔gを有する間隙を作ることによって、短絡環31から保持環32に流入する熱や電流を低減することも可能となる。
【0026】
なお、通風路として機能する貫通孔35の個数は、多いほど通風効果は増大するが、機械的強度との関係で、円周角度360度に対し10度毎に1個、或いはロータバーが118本の場合、ロータバー3本に1個程度の割合で設ければよい
図4は、短絡環31の筒状部312の軸方向の長さが大きい場合の実施形態を示す。この場合、この筒状部312の外周に嵌合する保持環32も、その軸方向長さが大きい形状となる。そこで保持環32には、その短絡環31の本体部311寄りの部分に、半径方向に貫通する通気孔37が設ける。これに対し、短絡環31の筒状部312には、その本体部311寄りの内周面から外周面まで貫通し、通気孔37に通じる貫通孔35を設ける。すなわち、短絡環31の筒状部312には、保持環32の、短絡環31の本体部311寄りの部分(通気孔37)に通じる貫通孔35が形成され、これが通風路として機能する。
【0027】
このように構成しても、保持環32の、短絡環31の本体部311寄りの部分に設けた通気孔37に、短絡環31の筒状部312内周側からの空気が貫通孔35を通って流れるために効果的に通風冷却することができ、保持環32の温度上昇による強度低下を防止できる。
【0028】
図5及び図6の実施形態は、保持環32の、短絡環31の本体部311寄りの部分(端面32a)に通じる通風路として、短絡環31の筒状部312の外周面に、その軸方向に沿って形成された通風溝38を設ける。この通風溝38は、短絡環31の本体部311の端面311aと保持環32の端面32aとの間隔gを有する間隙に通じるものであり、この間を効果的に通風冷却する。
【0029】
また、この通風溝38と対向する保持環32の内周面に、その軸方向に沿って形成された通風溝39を設けてもよい。この通風溝39も、短絡環31の本体部311の端面311aと保持環32の端面32aとの間隔gを有する間隙に通じるものであり、この間を効果的に通風冷却する。
【0030】
さらに、これら通風溝38,39は、いずれか一方のみを設けてもよく、いずれにしても筒状部312及び保持環32の図示左方から、図1で示した内部ファン28により送風される空気を、短絡環31の本体部311の端面311aと保持環32の端面32aとの間隔gを有する間隙に流すことによりこの間を効果的に通風冷却でき、保持環32の温度上昇による強度低下を防止できる。
【0031】
このように、本発明の各実施形態では、保持環32と短絡環31の筒状部312の少なくとも一方に、保持環32の、短絡環31の本体部311寄りの部分に通じる通風路(貫通孔35,通風溝38,39)が形成されているので、保持環32を効果的に通風冷却でき、運転時における保持環の温度上昇を抑止して、加熱による強度低下を防止できる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
11…回転電機
12…回転子
13…固定子
15…フレーム
16…空気室
25…ロータバー
31…短絡環
311…本体部
312…筒状部
32…保持環
35,38,39…通風路
g…所定の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6