特許第6789891号(P6789891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789891
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/08 20060101AFI20201116BHJP
   H05B 3/20 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   B62D1/08
   !H05B3/20 364
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-128427(P2017-128427)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-10944(P2019-10944A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 勇太
(72)【発明者】
【氏名】木内 陽平
(72)【発明者】
【氏名】山見 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】大木 拓也
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−073546(JP,A)
【文献】 特開2015−131537(JP,A)
【文献】 特開2011−073545(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0228028(US,A1)
【文献】 実開昭50−054594(JP,U)
【文献】 特開平08−164804(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102015111012(DE,A1)
【文献】 特開2010−241276(JP,A)
【文献】 実開昭59−069063(JP,U)
【文献】 特開2003−317905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、
この芯金の一部を覆って成形された樹脂層と、
この樹脂層に前記芯金の一部と一体的に覆われる基部と、この基部と連続し前記樹脂層から延出する延出部とを備える配線と、
この配線の少なくとも一部を変形自在に被覆する被覆部材と、
前記芯金に設けられ、前記被覆部材とともに前記配線の一部が収容される収容部と
を具備したことを特徴とするハンドル。
【請求項2】
収容部は、芯金に突設された対をなすリブにより区画されている
ことを特徴とする請求項1記載のハンドル。
【請求項3】
収容部は、芯金に凹設されている
ことを特徴とする請求項1記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯金の一部を覆って成形された樹脂層に一部が芯金と一体的に覆われるハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境を保全し温室効果ガスの発生を抑制する取り組みの一環として、ガソリンエンジン車に代わる環境負荷の少ない、電気自動車(EV)の普及が進んできている。このような電気自動車の場合、蓄電池とモータとの組み合わせにより構成されており、基本的に外部充電器からエネルギーを補充しなければならないことから、蓄電力の消費を抑制する施策が必須であり、その中でも消費電力が大きい暖房(エアコン)用の電力消費を抑制することが最も有効な手段である。
【0003】
そこで、乗員(運転手)が直接触れるステアリングホイールによって直接暖かさを伝える手段をとることが進められてきており、その一つとして、ステアリングホイールに発熱体としてのヒータ線を埋め込む構成が知られている。
【0004】
すなわち、ステアリングホイールにヒータ装置を組み込み、始動から間もない、まだ各種機関が充分に温まらないときでもステアリングホイールを温めることで、例えば冬季の屋外に駐車していた車両である自動車を始動して運転するとき、ハンドルすなわちステアリングホイールが冷たいことに起因する操作のしづらさや不快感を軽減しつつ、暖房の使用を抑制して電力の消費を抑制可能な構成が知られている。
【0005】
このような構成として、例えば芯金のリム芯金部を覆う筒状のスペーサを設け、このスペーサの外部にヒータ線をジグザグ状などに引っ掛けて保持した状態で成形型のキャビティにセットし、ウレタンなどの合成樹脂原料を成形型のキャビティ内で反応させて樹脂層を成形することにより、ヒータ線を埋設したステアリングホイールのリム部を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、シート状の基材に保持したヒータ線をリム芯金部に直接巻き付けて樹脂層により覆ったものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−139203号公報 (第4−6頁、図1−5)
【特許文献2】特開2015−189294号公報 (第5−8頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ヒータ線は、例えばステアリングホイールのスポーク部の位置で樹脂層から一部がステアリングホイールの中央部側に延出され、車両側と電気的に接続される。このため、ヒータ線は、樹脂層の端面を通過させなければならないので、樹脂層の成形時には、ヒータ線の一部を成形型のキャビティ外へと延出することとなる。したがって、成形型による食い切りの位置でヒータ線を噛み込んで断線させないようにすることが望まれる。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、配線の断線を抑制できるとともに、安定的に製造できるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載のハンドルは、芯金と、この芯金の一部を覆って成形された樹脂層と、この樹脂層に前記芯金の一部と一体的に覆われる基部と、この基部と連続し前記樹脂層から延出する延出部とを備える配線と、この配線の少なくとも一部を変形自在に被覆する被覆部材と、前記芯金に設けられ、前記被覆部材とともに前記配線の一部が収容される収容部とを具備したものである。
【0011】
請求項2記載のハンドルは、請求項1記載のハンドルにおいて、収容部は、芯金に突設された対をなすリブにより区画されているものである。
【0012】
請求項3記載のハンドルは、請求項1記載のハンドルにおいて、収容部は、芯金に凹設されているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のハンドルによれば、樹脂層に芯金と一体的に覆われる基部と、この基部と連続し樹脂層から延出する延出部とを備える配線の少なくとも一部を被覆部材によって変形自在に被覆し、かつ、この被覆部材とともに配線の一部を芯金に形成した収容部に収容することで、樹脂層を成形する際の成形型が型合わせ時に配線を噛み込みにくく、配線の断線を抑制できるとともに、配線と収容部との間の空間部が被覆部材により埋められ、樹脂層を成形する際の原料が収容部から成形型外へと漏れ出しにくく、安定的に製造できる。
【0014】
請求項2記載のハンドルによれば、請求項1記載のハンドルの効果に加えて、収容部を芯金に突設した対をなすリブにより区画することで、芯金の成形の際にリブを形成することにより収容部を容易に形成できるとともに、収容部によって芯金の強度を低下させることがない。
【0015】
請求項3記載のハンドルによれば、請求項1記載のハンドルの効果に加えて、収容部を芯金に凹設することで、芯金の成形の際に収容部を形成することにより収容部を容易に形成できるとともに、収容部によって芯金を軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態のハンドルの一部を示す斜視図、(b)はその断面図である。
図2】(a)は同上ハンドルの把持部の断面図、(b)は把持部の斜視断面図である。
図3】同上ハンドルの一部を示す正面図である。
図4】(a)は同上ハンドルの成形型を開いた状態を模式的に示す正面図、(b)は同上ハンドルの製造方法のセット工程を模式的に示す正面図、(c)は同上ハンドルの製造方法の射出工程を模式的に示す正面図である。
図5】(a)は同上ハンドルの製造方法の脱型工程を模式的に示す正面図、(b)は同上ハンドルの製造方法の仕上げ工程を模式的に示す正面図である。
図6】同上ハンドルを示す正面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態のハンドルの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を、図1ないし図6を参照して説明する。
【0018】
図6において、10は例えば車両としての自動車の(ステアリング)ハンドルであるステアリングホイールである。このステアリングホイール10は、ハンドル本体であるステアリングホイール本体11、このステアリングホイール本体11の乗員側に装着されるパッド体としてのセンタパッドであるエアバッグ装置(エアバッグモジュール)12などを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、エアバッグ装置12の乗員側すなわち正面側を上側(矢印U方向)、ステアリングシャフト側すなわち背面側を下側(矢印D方向)、車両の前側すなわち前側上方のフロントガラス側を前側、車両の後側すなわち後側下方を後側あるいは手前側として説明する。
【0019】
そして、ステアリングホイール本体11は、少なくとも一部が円周に沿って形成された、本実施の形態では円弧状(円環状(ドーナツ状))をなす把持部としてのリム部(グリップ部)15と、このリム部15の内側に位置するボス部16と、これらリム部15とボス部16とを連結する複数の、本実施の形態では3本のスポーク部17とから構成されている。また、このステアリングホイール本体11は、図2(a)、図2(b)、図3図4(a)、図4(b)、図5(a)及び図5(b)に示すように、金属製の芯金18を備えている。さらに、このステアリングホイール本体11は、スペーサ19を備えていてもよい。また、このステアリングホイール本体11は、電子部品20を備えている。さらに、このステアリングホイール本体11は、被覆部材21を備えている。また、このステアリングホイール本体11は、収容部22を備えている。さらに、このステアリングホイール本体11は、樹脂層23を備えている。そして、このステアリングホイール本体11は、図示しないが、被覆部材としてのカバー体を備えている。なお、このステアリングホイール本体11は、樹脂層23を覆う表皮部を備えていてもよい。
【0020】
芯金18は、例えばマグネシウムアルミニウム(MgAl)合金や鉄などにより形成され、ボス部16の車体側となる下部に、ステアリングシャフトと歯合するセレーション構造を備えた略円筒状のボス25を備えているとともに、このボス25に、芯体を構成するボスプレート26が一体的に固着されている。そして、ボスプレート26から、スポーク部17に対応するスポーク芯金部27が一体に延設され、あるいは溶接などして固着されている。さらに、このスポーク部17のスポーク芯金部27に、リム部15に対応する把持部芯金としてのリム芯金部28が溶接などして固着されている。
【0021】
スポーク芯金部27は、放射状に設けられている。このスポーク芯金部27は、必ずしもすべてのスポーク部17に対応していなくてもよく、一部のスポーク部17は、スポーク芯金部27を備えずにフィニッシャ29(図6)などにより構成されていてもよい。このフィニッシャ29は、必須の構成ではない。
【0022】
リム芯金部28は、本実施の形態において、円弧状(円環状)に形成されている。
【0023】
図3に示すスペーサ19は、シェルなどとも呼ばれ、リム芯金部28の周囲に電子部品20を配置するとともに、電子部品20をリム部15(図6)の表面からの距離を一定に保つように保持するためのものである。すなわち、このスペーサ19は、リム芯金部28と電子部品20との間に介在されている。このスペーサ19は、例えばポリカーボネート、あるいはABSなどの合成樹脂により形成されている。また、このスペーサ19は、リム芯金部28全周を覆うように円弧状(円環状)に形成されている。さらに、このスペーサ19は、筒状(円筒状)に形成されている。したがって、このスペーサ19は、中空なドーナツ状に設けられている。このスペーサ19には、連通孔31が設けられている。そして、このスペーサ19は、例えば複数の部材に分割され、リム芯金部28の周囲に組み付けられている。すなわち、このリム芯金部28の周囲に組み付けられた状態で、スペーサ19の内方にリム芯金部28が位置している。このスペーサ19は、リム芯金部28に対して離れた位置でこのリム芯金部28を覆うように配置されている。すなわち、このスペーサ19とリム芯金部28との間には、空間部が形成されている。
【0024】
連通孔31は、後述する樹脂層23の成形時に、反応してポリウレタンとなる反応混合液としての液状の樹脂原料である合成樹脂原料が通過する部分である。この連通孔31は、スペーサ19の外周面を貫通して設けられている。この連通孔31は、複数設けられている。例えば、この連通孔31は、周方向に複数設けられている。
【0025】
電子部品20は、例えばリム部15の温度を調整するためのものである。具体的に、この電子部品20は、本実施の形態において例えば通電により発熱する電熱線が設けられた電子部品本体としてのシート部材33と、このシート部材33の電熱線に対して電気的に接続される配線34とを備える、温度調整用の電子部品であるが、例えば通電により発熱するヒータ線、リム部15の温度を検出するセンサ部材、リム部15を乗員が把持していることを確認するためのセンサ(圧力センサや静電容量センサなど)などを用いることもできる。
【0026】
シート部材33は、例えば多孔質材によりシート状に形成されている。このシート部材33は、例えば不職布やメッシュなどとしてもよいし、電熱線をメッシュ状に形成することもできる。すなわち、シート部材33には、孔部33aが多数設けられている。また、このシート部材33は、リム芯金部28の位置に配置されている。本実施の形態において、このシート部材33は、スペーサ19の外部、すなわち外周面に例えば巻き付けられ、スペーサ19の全体を覆って配置されている。
【0027】
配線34は、シート部材33から導出されている。この配線34は、例えば一対設けられている。また、この配線34は、例えばシート部材33が位置するリム芯金部28からスポーク芯金部27の位置に沿って導出されている。さらに、この配線34は、シート部材33側が樹脂層23に埋め込まれ、先端部側が樹脂層23から導出されている。すなわち、この配線34は、樹脂層23の内部と外部とに亘って配置されている。換言すれば、この配線34は、芯金18の一部(スポーク芯金部27の一部及びリム芯金部28)と一体的に樹脂層23に埋め込まれている基部34aと、この基部34aと連続し樹脂層23の外部へと延出する延出部34bとを備えている。また、この配線34の延出部34bにはコネクタ35が設けられている。このコネクタ35は、図示しない制御回路と接続されている。すなわち、配線34(電子部品20)は、制御回路と電気的に接続されている。そして、電子部品20は、特にシート部材33(電熱線)が、この制御回路により通電されることで発熱するように構成されている。また、この配線34は、絶縁体としてのシース36(図1(b))により被覆されている。さらに、この配線34の一部は、被覆部材21により被覆された状態で保持されている。
【0028】
図1(a)及び図1(b)に示すシース36は、絶縁性を有する皮膜である。このシース36は、所定の厚み及び柔軟性を有して変形自在となっており、配線34が露出しないように被覆して配線34と芯金18などとの短絡を防止している。
【0029】
被覆部材21は、例えば樹脂層23を構成する合成樹脂原料などと同一の合成樹脂により形成されている。この被覆部材21は、例えば軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させた、いわゆるウレタンフォームなどである。この被覆部材21は、変形自在に形成されており、配線34,34を纏めて充填している。この被覆部材21は、配線34の基部34aと延出部34bとが連続する位置を含む部分の所定長さを包持している。したがって、この被覆部材21は、樹脂層23の内部と外部とに亘って配置されている。また、この被覆部材21は、例えば断面が四角形状に形成されている。そして、この被覆部材21は、収容部22に収容されているとともに、固定部材37により収容部22に対して固定(仮固定)されている。本実施の形態において、この被覆部材21は、長手方向の一端部(配線34の延出部34bを被覆している部分)が収容部22からエアバッグ装置12(図6)側である芯金18の中央側に向かって延出している。すなわち、この被覆部材21は、本実施の形態において、一部が収容部22に収容され、残りの他部が収容部22から延出している。なお、本実施の形態において、この被覆部材21は、配線34を連続的に覆って形成されているが、例えば配線34の複数箇所を断続的に覆うように形成されていてもよい。また、この被覆部材21は、本実施の形態において、シース36と別体として形成されているが、シース36と一体でもよい。すなわち、シース36そのものを被覆部材として用いることもできる。
【0030】
固定部材37は、本実施の形態において、例えば固定テープが用いられる。この固定部材37は、例えば帯状に形成されており、被覆部材21(配線34)に対して交差(直交)する方向に沿って配置されて、被覆部材21を収容部22(スポーク芯金部27(芯金18))に対して固定している。
【0031】
収容部22は、被覆部材21とともに配線34の一部、例えば少なくとも基部34aと延出部34bとが連続する位置が収容される部分である。本実施の形態において、この収容部22には、被覆部材21とともに配線34の少なくとも基部34aと延出部34bとが連続する位置を含む所定長さの領域が収容される。この収容部22は、芯金18、本実施の形態では一のスポーク芯金部27(例えばアナログ時計の3時方向のスポーク芯金部27)に設けられている。この収容部22は、例えばスポーク芯金部27の長手方向に沿って長手状に設けられている。さらに、本実施の形態において、この収容部22は、対をなす(一対の)リブ22a,22a間に区画されている。すなわち、この収容部22は、芯金18(スポーク芯金部27)に対して面一(略面一も含む)に形成され、両側がリブ22a,22aにより区画されている。また、この収容部22には、被覆部材21が嵌合して収容される。すなわち、この収容部22は、被覆部材21と等しい(略等しいも含む)幅寸法を有している。このため、この収容部22に対して、被覆部材21は略隙間なく配置される。
【0032】
リブ22a,22aは、芯金18に突設されている。本実施の形態において、これらリブ22a,22aは、スポーク芯金部27の後側(乗員側)の面にそれぞれ突設されている。これらリブ22a,22aは、互いに平行(略平行も含む)に配置されて離間されている。これらリブ22a,22aは、スポーク芯金部27の後側の面から、例えば配線34の直径寸法と等しい(略等しいも含む)寸法、あるいは、配線34の直径寸法より大きい寸法、後方に向けて立ち上げられている。本実施の形態において、これらリブ22a,22aは、スポーク芯金部27の後側の面から、被覆部材21の厚みと等しい(略等しいも含む)突出寸法分、後方に向けて立ち上げられている。これらリブ22a,22aは、芯金18の成形時に同時に形成される。また、これらリブ22a,22aは、収容部22に収容された被覆部材21に対して先端部が面一(略面一も含む)となるように形成されている(図1(b))。
【0033】
図1図2(a)、図2(b)、図5(a)、図5(b)及び図6に示すように、樹脂層23は、リム芯金部28全体、及びスポーク芯金部27の一部を覆って設けられている。したがって、この樹脂層23は、断面略円形状で、正面から見て円環状(円弧状)に形成されている。より詳細に、この樹脂層23は、リム部15の位置で、リム芯金部28、スペーサ19、及び電子部品20を一体的に覆って設けられ、スポーク部17の位置で、スポーク芯金部27のリム芯金部28と連続する端部から所定距離の領域を覆って設けられている。すなわち、リム芯金部28とスペーサ19との間の空間部、及びスペーサ19と電子部品20との間の空間部は、それぞれ樹脂層23により充填されている。換言すれば、樹脂層23の内部に、リム芯金部28、スペーサ19、及び電子部品20のシート部材33及び配線34の基部34aが埋設されている。また、この樹脂層23は、芯金18のスポーク芯金部27の両端間の位置に、エアバッグ装置12との境界面となる端部(端面)である食切面23aが形成されている。この食切面23aは、収容部22(リブ22a,22a)に掛かる位置に配置されている。したがって、この食切面23aの位置から、配線34の延出部34bが被覆部材21の一部とともに樹脂層23に対して延出されている。また、この食切面23aは、収容部22(リブ22a,22a)の長手方向と交差する方向、すなわちスポーク芯金部27の長手方向に対して交差する方向、本実施の形態では上下方向に沿って形成されている。さらに、この樹脂層23は、本実施の形態において、例えば軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させたものを使用する。そして、この樹脂層23は、図4(a)ないし図4(c)などに示す成形型(金型)41を用いて成形されている。
【0034】
ここで、成形型41は、概略として、一の半型と、他の半型とを備え、これら一の半型と他の半型との間に、キャビティ43及びゲート44などが形成される。そして、本実施の形態において、この成形型41は、ゲート44を下部(正面から見てアナログ時計の6時方向)として使用される。しがって、樹脂層23は、ステアリングホイール10(図6)の使用状態と略等しい位置のまま成形される。
【0035】
キャビティ43は、例えばリム部15(樹脂層23)の形状に対応した、断面円形状で正面視円環状の(第1の)空間である。このキャビティ43には、ゲート44から注入された合成樹脂原料Rが充填されるようになっている。
【0036】
ゲート44は、合成樹脂原料Rがキャビティ43へと注入される部分である。このゲート44は、例えばファンゲートなどとも呼ばれるもので、キャビティ43と連通し、このキャビティ43に向かって徐々に拡開するように形成されている。このゲート44には、合成樹脂原料Rを混合攪拌し吐出するための図示しないミキサ部が接続されている。
【0037】
また、カバー体は、裏カバー、下部カバーあるいはボディカバーとも呼ばれ、合成樹脂などにより形成され、ボス部16の下側部を覆っている。
【0038】
図6に示すエアバッグ装置12は、袋状のエアバッグ、折り畳んだエアバッグを覆う樹脂製のカバー体、ガスを噴射するインフレータなどを備えており、自動車が衝突した際などに、インフレータからエアバッグの内部にガスを急速に噴射し、折り畳んで収納したエアバッグを急激に膨張させ、カバー体を開裂させて、エアバッグを乗員の前側に膨張展開させて、乗員を保護するようになっている。なお、このエアバッグ装置12は、スイッチ装置としてのホーンスイッチ機構などを一体的に組み込んでもよい。
【0039】
そして、ステアリングホイール10を製造する際には、まず、予めボスプレート26などと一体化された芯金18のリム芯金部28の外周をスペーサ19で覆うとともに、このスペーサ19の外面に電子部品20を巻き付けて、図4(b)に示す中間体である第1中間体51を予め形成し、この第1中間体51を一及び他の半型を開いた成形型41にセットした後、一の半型と他の半型とを型合わせ(型閉)してキャビティ43を形成する(セット工程)。この状態で、キャビティ43内にリム芯金部28、及びスポーク芯金部27の一部が位置する。また、成形型41の一の半型または他の半型と第1中間体51との合わせ位置となる食切部41aが、収容部22を横切る位置となる。このとき、図1(b)に示すように、成形型41を閉じた状態で食切部41aがリブ22a,22aに当接することで、配線34を一の半型と他の半型との間に噛み込むことを防止する。換言すれば、このセット工程において、成形型41は、樹脂層23の端部(端面)である食切面23aを形成する食切部41aを、収容部22の両側(本実施の形態ではリブ22a,22a)にて芯金18(スポーク芯金部27)に当接させるように型合わせする。
【0040】
次いで、図4(c)に示すように、合成樹脂原料Rをミキサ部により攪拌混合して成形型41のゲート44からキャビティ43内に射出する(射出工程)。このとき、合成樹脂原料Rは、ゲート44からキャビティ43内の左右両側に略均等に分流し、電子部品20のシート部材33の孔部33aに含浸されさらにスペーサ19の連通孔31を通過してスペーサ19の外方から内方に入り込んで、発泡を伴いながら反応してポリウレタンとなりつつ流動末端に向かって流れていく。また、食切部41aの位置では、被覆部材21が収容部22に嵌合されていることにより、被覆部材21と収容部22(芯金18(スポーク芯金部27))との間の隙間が閉塞されているので、合成樹脂原料Rが収容部22から漏れ出すことがない。
【0041】
この後、キャビティ43内で樹脂層23がリム芯金部28、スペーサ19、及び電子部品20を一体的に覆って形成された、図5(a)に示す第2中間体52を、一の半型と他の半型とを型開きして成形型41から脱型する(脱型工程)。そして、この第2中間体52から、成形型41のゲート44の位置に残留して形成されたばり53を、図5(b)に示すようにカットなどにより除去する(仕上げ工程)ことで、ステアリングホイール本体11が完成する。
【0042】
このステアリングホイール本体11は、樹脂層23から導出されている配線34の先端のコネクタ35(図1(a))を制御回路と電気的に接続し、図6に示すようにエアバッグ装置12やフィニッシャ29などを取り付けて、ステアリングホイール10が完成する。すなわち、本実施の形態では、リム部15の表面に表皮体を巻き付けることなく、また、複数回の成形工程を要することなく、ステアリングホイール10を形成できる。
【0043】
上述したように、上記第1の実施の形態では、樹脂層23に芯金18と一体的に覆われる基部34aと、この基部34aと連続し樹脂層23から延出する延出部34bとを備える配線34の少なくとも一部を被覆部材21によって変形自在に被覆し、かつ、この被覆部材21とともに配線34の一部(例えば基部34aと延出部34bとが連続する位置を含む領域)を芯金18に形成した収容部22に収容する。
【0044】
すなわち、配線34の基部34aと、この基部34aと連続する延出部34bとを備える配線34の少なくとも一部を被覆部材21によって変形自在に被覆し、この被覆部材21とともに配線34の一部を芯金18に形成した収容部22に収容した状態で、樹脂層23を成形するための成形型41にセットし、樹脂層23の食切面23aを形成する食切部41aを、収容部22(リブ22a,22a)と当接させるように成形型41を型合わせした状態で、合成樹脂原料Rを成形型41内に供給して樹脂層23を成形する。
【0045】
このため、樹脂層23を成形する際の成形型41の位置が収容部22によって規制されて成形型41が型合わせ時に配線34を噛み込みにくく、配線34の断線を抑制できる。さらに、配線34と収容部22との間の空間部が被覆部材21により埋められるので、樹脂層23を成形する際の合成樹脂原料Rが収容部22から成形型41外へと漏れ出しにくく、ステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)を安定的に製造できる。
【0046】
また、収容部22を芯金18(スポーク芯金部27)に突設した対をなすリブ22a,22aにより区画することで、芯金18の成形の際にリブ22a,22aを形成することにより収容部22を容易に形成できるとともに、リブ22a,22aによって芯金18(スポーク芯金部27)が補強され、収容部22によって芯金18(スポーク芯金部27)の強度を低下させることがない。
【0047】
なお、上記第1の実施の形態において、図7に示す第2の実施の形態のように、収容部22を芯金18(スポーク芯金部27)に凹設することもできる。すなわち、芯金18(スポーク芯金部27)に収容部22を溝状に設けることもできる。このとき、収容部22は、配線34の直径寸法と等しい(略等しいも含む)寸法、あるいは、配線34の直径寸法より大きい寸法の深さに形成される。本実施の形態において、収容部22は、スポーク芯金部27の後側の面から、被覆部材21の厚みと等しい(略等しいも含む)深さ寸法分、前方に凹設される。また、被覆部材21は、例えば収容部22の内部に配置された粘着材などの固定部材55により動きを規制して収容部22に固定(仮固定)することもできる。
【0048】
この場合には、上記セット工程において、芯金18(スポーク芯金部27)の後側の面である収容部22の両側部22b,22bが、成形型41を型合わせした状態で食切部41aと当接することで、換言すれば、樹脂層23の端部(端面)である食切面23aを形成する食切部41aを、収容部22の両側部22b,22bにて芯金18(スポーク芯金部27)に当接させるように成形型41を型合わせすることで、配線34を一の半型と他の半型との間に噛み込むことを防止できるなど、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
また、収容部22を芯金18(スポーク芯金部27)に凹設することで、芯金18の成形の際に収容部22を形成することにより収容部22を容易に形成できるとともに、収容部22が肉抜きとなり、収容部22によって芯金18を軽量化できる。
【0050】
さらに、上記第2の実施の形態のように芯金18に凹設した収容部22に対して被覆部材21を配線34とともに上記第1の実施の形態の固定部材37により固定してもよいし、上記第1の実施の形態のようにリブ22a,22a間に形成した収容部22に対して被覆部材21を配線34とともに上記第2の実施の形態の固定部材55により固定してもよい。
【0051】
なお、上記各実施の形態において、スペーサ19は、必須の構成ではなく、例えば芯金18(リム芯金部28)に対して電子部品20(シート部材33)を直接巻き付けて配置してもよい。
【0052】
さらに、ステアリングホイール10は、3本のスポーク部17を備えた構成に限られず、2本、あるいは4本以上のスポーク部17を備えた構成などとすることもできる。
【0053】
また、ステアリングホイール10は、自動車などの車両だけでなく、任意の乗物のステアリング用のハンドルとして用いることができる。
【0054】
そして、エアバッグ装置12に代えて、例えば衝撃吸収体を収納したパッド体などを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えば電気自動車などの自動車のステアリングホイールとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 ハンドルであるステアリングホイール
18 芯金
21 被覆部材
22 収容部
22a リブ
23 樹脂層
34 配線
34a 基部
34b 延出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7