特許第6789892号(P6789892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789892
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20201116BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   B62D1/06
   H05B3/20 364
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-128428(P2017-128428)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-10945(P2019-10945A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山見 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】木内 陽平
(72)【発明者】
【氏名】大木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】水戸部 貴志
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−229471(JP,A)
【文献】 特開2001−163227(JP,A)
【文献】 特開2014−151799(JP,A)
【文献】 特開2011−073545(JP,A)
【文献】 特開2011−073544(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0228028(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
B62D 1/06
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持操作用の把持部を備えたハンドルであって、
前記把持部に対応する把持部芯金を有する芯金と、
この芯金の前記把持部芯金を覆って取り付けられる土台部品とを具備し、
前記土台部品は、前記芯金の前記把持部芯金を挟んで正面側と背面側とに、互いに係合されて固定されることで前記把持部芯金を覆う一の土台部と他の土台部とを備え、
前記一の土台部と前記他の土台部とは、互いに異なる位置でそれぞれ複数ずつの一の土台部材と他の土台部材とに分割されている
ことを特徴とするハンドル。
【請求項2】
把持部芯金とともに土台部品を覆って設けられ把持部の少なくとも一部を構成する樹脂層を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のハンドル。
【請求項3】
土台部品に取り付けられる電子部品を備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持操作用の把持部を備えたハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境を保全し温室効果ガスの発生を抑制する取り組みの一環として、ガソリンエンジン車に代わる環境負荷の少ない、電気自動車(EV)の普及が進んできている。このような電気自動車の場合、蓄電池とモータとの組み合わせにより構成されており、基本的に外部充電器からエネルギーを補充しなければならないことから、蓄電力の消費を抑制する施策が必須であり、その中でも消費電力が大きい暖房(エアコン)用の電力消費を抑制することが最も有効な手段である。
【0003】
そこで、乗員(運転手)が直接触れるステアリングホイールによって直接暖かさを伝える手段をとることが進められてきており、その一つとして、ステアリングホイールに発熱体としてのヒータ線を埋め込む構成が知られている。
【0004】
すなわち、ステアリングホイールにヒータ装置を組み込み、始動から間もない、まだ各種機関が充分に温まらないときでもステアリングホイールを温めることで、例えば冬季の屋外に駐車していた車両である自動車を始動して運転するとき、ハンドルすなわちステアリングホイールが冷たいことに起因する操作のしづらさや不快感を軽減しつつ、暖房の使用を抑制して電力の消費を抑制可能な構成が知られている。
【0005】
このような構成として、例えば芯金のリム芯金部を覆う筒状の土台部品であるスペーサを設け、このスペーサの外部にヒータ線をジグザグ状などに引っ掛けて保持した状態で成形型のキャビティにセットし、ウレタンなどの合成樹脂原料を成形型のキャビティ内で反応させて樹脂層を成形することにより、ヒータ線を埋設したステアリングホイールのリム部を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−139203号公報 (第4−6頁、図1−5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のスペーサは、リム芯金部の乗員側であるアッパ側部分とその反対側であるロワ側部分とに略半分ずつに分割され、これらアッパ側部分とロワ側部分とが爪などにより係合されてリム芯金部を挟んで取り付けられる。また、アッパ側部分とロワ側部分とは、それぞれリム芯金部の周方向に複数に分割されている。このとき、アッパ側部分とロワ側部分のそれぞれの分割位置がリム芯金部の周方向に一致していると、成形精度によってアッパ側部分とロワ側部分との位置ずれやがたつきが発生しやすくなるため、このような位置ずれやがたつきを抑制することが望まれる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、一の土台部と他の土台部との取り付け状態での位置ずれやがたつきを抑制できるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のハンドルは、把持操作用の把持部を備えたハンドルであって、前記把持部に対応する把持部芯金を有する芯金と、この芯金の前記把持部芯金を覆って取り付けられる土台部品とを具備し、前記土台部品は、前記芯金の前記把持部芯金を挟んで正面側と背面側とに、互いに係合されて固定されることで前記把持部芯金を覆う一の土台部と他の土台部とを備え、前記一の土台部と前記他の土台部とは、互いに異なる位置でそれぞれ複数ずつの一の土台部材と他の土台部材とに分割されているものである。
【0010】
請求項2記載のハンドルは、請求項1記載のハンドルにおいて、把持部芯金とともに土台部品を覆って設けられ把持部の少なくとも一部を構成する樹脂層を備えたものである。
【0011】
請求項3記載のハンドルは、請求項1または2記載のハンドルにおいて、土台部品に取り付けられる電子部品を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のハンドルによれば、芯金の把持部芯金を覆って取り付ける土台部品の把持部芯金の正面側と背面側とに位置する一の土台部と他の土台部とを、互いに異なる位置でそれぞれ複数ずつの一の土台部材と他の土台部材とに分割することで、一の土台部材の位置と他の土台部材の位置とを、それぞれ他の土台部材の位置と一の土台部材の位置とで規制でき、一の土台部と他の土台部との取り付け状態での位置ずれやがたつきを抑制できる。
【0013】
請求項2記載のハンドルによれば、請求項1記載のハンドルの効果に加えて、把持部芯金とともに土台部品を覆って把持部の少なくとも一部を構成する樹脂層を設けることで、この樹脂層を成形する際の成形型内での土台部品の一の土台部と他の土台部との位置ずれやがたつきを抑制できるとともに、成形後の樹脂層の厚みを一定にすることが可能となる。
【0014】
請求項3記載のハンドルによれば、請求項1または2記載のハンドルの効果に加えて、土台部品に電子部品を取り付けることで、電子部品を把持部に容易に配置できるとともに、電子部品を精度よく位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明の一実施の形態のハンドルの一部を正面側から示す分解図、(b)は同上ハンドルの一部を背面側から示す分解図である。
図2図3のX矢視図である。
図3】同上ハンドルの一部を示す正面図である。
図4】(a)は同上ハンドルの把持部の断面図、(b)は同上ハンドルの把持部の斜視断面図である。
図5】同上ハンドルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態の構成を、図1ないし図5を参照して説明する。
【0017】
図5において、10は例えば車両としての自動車の(ステアリング)ハンドルであるステアリングホイールである。このステアリングホイール10は、ハンドル本体であるステアリングホイール本体11、このステアリングホイール本体11の乗員側に装着されるパッド体としてのセンタパッドであるエアバッグ装置(エアバッグモジュール)12などを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、エアバッグ装置12の乗員側すなわち正面側を上側(矢印U方向)、ステアリングシャフト側すなわち背面側を下側(矢印D方向)、車両の前側すなわち前側上方のフロントガラス側を前側あるいは背面側、車両の後側すなわち後側下方を後側、手前側あるいは正面側として説明する。
【0018】
そして、ステアリングホイール本体11は、少なくとも一部が円周に沿って形成された、本実施の形態では円弧状(円環状(ドーナツ状))をなす把持部としてのリム部(グリップ部)15と、このリム部15の内側に位置するボス部16と、これらリム部15とボス部16とを連結する複数の、本実施の形態では3本のスポーク部17とから構成されている。また、このステアリングホイール本体11は、金属製の芯金18を備えている。さらに、このステアリングホイール本体11は、土台部品としてのスペーサ19を備えている。また、このステアリングホイール本体11は、電子部品20を備えている。さらに、このステアリングホイール本体11は、樹脂層23を備えている。そして、このステアリングホイール本体11は、図示しないが、被覆部材としてのカバー体を備えている。なお、このステアリングホイール本体11は、樹脂層23を覆う表皮部を備えていてもよい。
【0019】
芯金18は、例えばマグネシウムアルミニウム(MgAl)合金や鉄などにより形成され、ボス部16の車体側となる下部に、ステアリングシャフトと歯合するセレーション構造を備えた略円筒状のボス25を備えているとともに、このボス25に、芯体を構成するボスプレート26が一体的に固着されている。そして、ボスプレート26から、スポーク部17に対応するスポーク芯金部27が一体に延設され、あるいは溶接などして固着されている。さらに、このスポーク部17のスポーク芯金部27に、リム部15に対応する把持部芯金としてのリム芯金部28が溶接などして固着されている。
【0020】
スポーク芯金部27は、放射状に設けられている。このスポーク芯金部27は、必ずしもすべてのスポーク部17に対応していなくてもよく、一部のスポーク部17は、スポーク芯金部27を備えずにフィニッシャ29などにより構成されていてもよい。このフィニッシャ29は、必須の構成ではない。
【0021】
リム芯金部28は、リム部15の一部を構成するものであり、円弧に沿って形成されている。本実施の形態において、このリム芯金部28は、例えば円環状に形成されている。
【0022】
図1ないし図4に示すスペーサ19は、シェルなどとも呼ばれ、リム芯金部28の周囲に電子部品20を配置するとともに、電子部品20をリム部15(図5)の表面からの距離を一定に保つように保持するためのものである。すなわち、このスペーサ19は、リム芯金部28と電子部品20との間に介在されている。このスペーサ19は、例えばポリカーボネート、あるいはABSなどの合成樹脂により形成されている。また、このスペーサ19は、リム芯金部28全周を覆うように円弧状(円環状)に形成されている。さらに、このスペーサ19は、筒状(円筒状)に形成されている。したがって、このスペーサ19は、中空なドーナツ状に設けられている。このスペーサ19には、連通孔31が設けられている。そして、このスペーサ19は、正面側である乗員側と背面側である反乗員側とに、一の土台部としての表側土台部(アッパ側土台部)32と、他の土台部としての裏側土台部(ロワ側土台部)33とが設定され、これら表側土台部32と裏側土台部33とにリム芯金部28を正面側及び背面側から挟んでリム芯金部28の周囲を覆ってこのリム芯金部28に組み付けられている。すなわち、このリム芯金部28の周囲に組み付けられた状態で、スペーサ19の内方にリム芯金部28が位置している。このスペーサ19は、リム芯金部28に対して離れた位置でこのリム芯金部28を覆うように配置されている。すなわち、このスペーサ19とリム芯金部28との間には、空間部が形成されている。
【0023】
連通孔31は、樹脂層23の成形時に、反応してポリウレタンとなる反応混合液としての液状の樹脂原料である合成樹脂原料が通過する部分である。この連通孔31は、スペーサ19の外周面を貫通して設けられている。この連通孔31は、複数設けられている。例えば、この連通孔31は、周方向に複数設けられている。
【0024】
表側土台部32は、スペーサ19の乗員側の例えば半分を構成している。この表側土台部32には、上記連通孔31が設けられている。そして、この表側土台部32は、複数に分割されている。すなわち、この表側土台部32は、リム部15(図5)の周方向、すなわちリム芯金部28の周方向に複数の一の土台部材である表側部材42を備えている(図1(a))。これら表側部材42は、本実施の形態において、例えば3つ設定されている。すなわち、本実施の形態では、表側部材42には、第1表側部材42a、第2表側部材42b、第3表側部材42cが設定されている。
【0025】
第1ないし第3表側部材42a〜42cは、本実施の形態において、例えば周方向に互いに等しい(略等しいも含む)長さに設定されているが、互いに異なる長さでもよい。例えば、本実施の形態において、第1表側部材42aは、例えばスペーサ19の正面側の右上部分(正面から見てアナログ時計の12時ないし4時半に亘る部分)を構成し、第2表側部材42bは、スペーサ19の正面側の下部分(正面から見てアナログ時計の4時半ないし7時半に亘る部分)を構成し、第3表側部材42cは、スペーサ19の正面側の左上部分(正面から見てアナログ時計の7時半ないし12時に亘る部分)を構成している(図1(a))。したがって、第1及び第3表側部材42a,42cは、リム芯金部28において、それぞれスポーク芯金部27,27よりも上側からスポーク芯金部27,27よりも下側に亘る部分を覆い、第2表側部材42bは、リム芯金部28において、スポーク芯金部27,27よりも下側の部分を覆っている。また、第1ないし第3表側部材42a〜42cは、左右対称(略左右対称も含む)に配置されている。
【0026】
裏側土台部33は、スペーサ19の表側土台部32を除く残りの部分、すなわち反乗員側の例えば半分を構成している。この裏側土台部33には、上記連通孔31が設けられている。なお、表側土台部32と裏側土台部33とのそれぞれの連通孔31の形状は一致していてもよいし異なっていてもよい。そして、この裏側土台部33は、複数に分割されている。すなわち、この裏側土台部33は、リム部15(図5)の周方向、すなわちリム芯金部28の周方向に複数の他の土台部材である裏側部材43を備えている(図1(b))。これら裏側部材43は、本実施の形態において、例えば3つ設定されている。すなわち、本実施の形態において、裏側土台部33は、表側土台部32と同数に分割されているが、同数でなくてもよい。本実施の形態では、裏側部材43には、第1裏側部材43a、第2裏側部材43b、第3裏側部材43cが設定されている。
【0027】
第1ないし第3裏側部材43a〜43cは、本実施の形態において、例えば周方向に互いに等しい(略等しいも含む)長さに設定されているが、互いに異なる長さでもよい。例えば、本実施の形態において、第1裏側部材43aは、例えばスペーサ19の背面側の上部分(正面から見てアナログ時計の10時半ないし1時半に亘る部分)を構成し、第2裏側部材43bは、スペーサ19の背面側の右下部分(正面から見てアナログ時計の1時半ないし6時に亘る部分)を構成し、第3裏側部材43cは、スペーサ19の背面側の左下部分(正面から見てアナログ時計の6時ないし10時半に亘る部分)を構成している。したがって、第1裏側部材43aは、リム芯金部28において、スポーク芯金部27,27よりも上側の部分を覆い、第2及び第3裏側部材43b,43cは、リム芯金部28において、それぞれスポーク芯金部27,27よりも下側からスポーク芯金部27,27よりも上側に亘る部分を覆っている。また、第1ないし第3裏側部材43a〜43cは、左右対称(略左右対称も含む)に配置されている。
【0028】
このように、表側土台部32と裏側土台部33とは、互いに異なる位置でそれぞれ複数ずつに分割されている。換言すれば、第1ないし第3表側部材42a〜42cのそれぞれの端部と、第1ないし第3裏側部材43a〜43cのそれぞれの端部とは、互いに異なる位置となっている。本実施の形態において、第1及び第3表側部材42a,42cの分割位置は、第1裏側部材43aの長手方向の両端部間、例えば第1裏側部材43aの中央部(略中央部も含む)に位置している。また、第1及び第2表側部材42a,42bの分割位置は、第2裏側部材43bの両端部間、例えば第2裏側部材43bの中央部(略中央部も含む)に位置している。さらに、第2及び第3表側部材42b,42cの分割位置は、第3裏側部材43cの両端部間、例えば第3裏側部材43cの中央部(略中央部も含む)に位置している。すなわち、表側土台部32の複数の表側部材42のそれぞれの両端部と、裏側土台部33の複数の裏側部材43のそれぞれの両端部との位置がリム芯金部28の周方向にずれている。換言すれば、本実施の形態において、表側土台部32の複数の表側部材42の分割位置と裏側土台部33の複数の裏側部材43の分割位置とは、リム芯金部28の周方向に60°毎に交互に配置されるようになっている。
【0029】
そして、表側土台部32(表側部材42)と裏側土台部33(裏側部材43)とは、少なくとも一方(例えば本実施の形態では裏側土台部33(裏側部材43))に設けられた係合部としての係合爪45と、他方(例えば本実施の形態では表側土台部32(表側部材42))に設けられた係合受部としての受け部46とにより、リム芯金部28を正面背面方向に挟んで互いに係合されて固定される(図2)。係合爪45は、表側土台部32(表側部材42)と裏側土台部33(裏側部材43)との少なくとも一方にて、例えば表側土台部32(表側部材42)と裏側土台部33(裏側部材43)との他方に対向するスペーサ19の内周側と外周側との少なくともいずれかに設けられ、受け部46は、これら係合爪45に対応する位置に設けられている。例えば係合爪45及び受け部46は、表側部材42毎、あるいは裏側部材43毎に複数ずつ設けられている。
【0030】
また、電子部品20は、例えばリム部15の温度を調整するためのものである。具体的に、この電子部品20は、本実施の形態において例えば通電により発熱する電熱線が設けられたシート部材、通電により発熱するヒータ線、あるいはリム部15の温度を検出するセンサ部材などが用いられるが、リム部15を乗員が把持していることを確認するためのセンサ(圧力センサや静電容量センサなど)でもよい。この電子部品20は、例えばシート状に形成され、多孔質材となっている。例えば、上記のシート部材を、不職布やメッシュなどとすることができる。したがって、この電子部品20には、孔部20aが多数設けられている(図4(b))。そして、この電子部品20は、図示しない制御回路と接続され、この制御回路により通電されることでリム部15の温度を検出し、この温度に応じて発熱するように構成されている。また、この電子部品20は、スペーサ19の外部、すなわち外周面に例えば巻き付けられ、スペーサ19の全体を覆って配置されている。
【0031】
樹脂層23は、リム芯金部28全体、及びスポーク芯金部27の一部を覆って設けられている。したがって、この樹脂層23は、断面略円形状で、正面から見て円環状(円弧状)に形成されている。より詳細に、この樹脂層23は、リム部15の位置で、リム芯金部28、スペーサ19、及び電子部品20を一体的に覆って設けられ、スポーク部17の位置で、スポーク芯金部27のリム芯金部28と連続する端部から所定距離の領域を覆って設けられている。すなわち、リム芯金部28とスペーサ19との間の空間部、及びスペーサ19と電子部品20との間の空間部は、それぞれ樹脂層23により充填されている。換言すれば、樹脂層23の内部に、リム芯金部28、スペーサ19、及び電子部品20の少なくとも一部が埋設されている(図4(a))。さらに、この樹脂層23は、本実施の形態において、例えば軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させたものを使用する。そして、この樹脂層23は、図示しない成形型(金型)を用いて成形されている。
【0032】
ここで、成形型は、概略として、一の半型と、他の半型とを備え、これら一の半型と他の半型との間に形成されるキャビティに合成樹脂原料が充填されるようになっている。
【0033】
また、カバー体は、裏カバー、下部カバーあるいはボディカバーとも呼ばれ、合成樹脂などにより形成され、ボス部16の下側部を覆っている。
【0034】
図5に示すエアバッグ装置12は、袋状のエアバッグ、折り畳んだエアバッグを覆う樹脂製のカバー体、ガスを噴射するインフレータなどを備えており、自動車が衝突した際などに、インフレータからエアバッグの内部にガスを急速に噴射し、折り畳んで収納したエアバッグを急激に膨張させ、カバー体を開裂させて、エアバッグを乗員の前側に膨張展開させて、乗員を保護するようになっている。なお、このエアバッグ装置12は、スイッチ装置としてのホーンスイッチ機構などを一体的に組み込んでもよい。
【0035】
そして、ステアリングホイール10を製造する際には、まず、予めボスプレート26などと一体化された芯金18のリム芯金部28の外周をスペーサ19で覆う(図3)。このスペーサ19は、表側部材42(第1ないし第3表側部材42a〜42c)と裏側部材43(第1ないし第3裏側部材43a〜43c)とによりリム芯金部28を正面側と背面側とから挟み込み、係合爪45を受け部46に係合させて固定する。このとき、表側部材42(第1ないし第3表側部材42a〜42c)のそれぞれの両端部は、裏側部材43(第1ないし第3裏側部材43a〜43c)の両端部間の位置に係合され、裏側部材43(第1ないし第3裏側部材43a〜43c)のそれぞれの両端部は、表側部材42(第1ないし第3表側部材42a〜42c)のそれぞれの両端部間の位置に係合されることで、表側部材42により構成される表側土台部32と裏側部材43により構成される裏側土台部33との位置が規制され、これらの位置ずれやがたつきが抑制される。
【0036】
次いで、この第1中間体を成形型にセットした後、一の半型と他の半型とを型合わせ(型閉)して形成したキャビティに対して、合成樹脂原料を攪拌混合して成形型のキャビティ内に射出する。この結果、合成樹脂原料が電子部品20の孔部20aに含浸されさらにスペーサ19の連通孔31を通過してスペーサ19の外方から内方に入り込んで、発泡を伴いながら反応してポリウレタンとなりつつ流動末端に向かって流れていく。
【0037】
この後、キャビティ内で樹脂層23がリム芯金部28、スペーサ19、及び電子部品20を一体的に覆って形成された第2中間体を、一の半型と他の半型とを型開きして成形型から脱型し、ばりなどをカットしてステアリングホイール本体11が完成する。
【0038】
このステアリングホイール本体11は、電子部品20を制御回路と電気的に接続し、図5に示すようにエアバッグ装置12やフィニッシャ29などを取り付けて、ステアリングホイール10が完成する。すなわち、本実施の形態では、リム部15の表面に表皮体を巻き付けることなく、また、複数回の成形工程を要することなく、ステアリングホイール10を形成できる。
【0039】
上述したように、上記一実施の形態によれば、芯金18のリム芯金部28を覆って取り付けるスペーサ19のリム芯金部28の正面側と背面側とに位置する表側土台部32と裏側土台部33とを、互いに異なる位置でそれぞれ複数ずつの表側部材42と裏側部材43とに分割することで、表側部材42の位置と裏側部材43の位置とを、それぞれ裏側部材43の位置と表側部材42の位置とで規制でき、表側土台部32と裏側土台部33との取り付け状態での位置ずれやがたつきを抑制できる。
【0040】
また、リム芯金部28とともにスペーサ19を覆ってリム部15の少なくとも一部を構成する樹脂層23を設けることで、この樹脂層23を成形する際の成形型内でのスペーサ19の表側土台部32と裏側土台部33との位置ずれやがたつきを抑制できるとともに、成形後の樹脂層23の厚みを一定にすることが可能となる。
【0041】
さらに、スペーサ19に電子部品20を取り付けることで、電子部品20をリム部15に容易に配置できるとともに、電子部品20を精度よく位置決めできる。
【0042】
なお、上記一実施の形態において、表側土台部32及び裏側土台部33は、2つ、あるいは4つ以上の表側部材42及び裏側部材43に分割されていてもよい。
【0043】
さらに、リム部15(リム芯金部28)は、円弧に沿って形成されていれば、円環状でなくてもよい。
【0044】
また、ステアリングホイール10は、3本のスポーク部17を備えた構成に限られず、2本、あるいは4本以上のスポーク部17を備えた構成などとすることもできる。
【0045】
さらに、ステアリングホイール10は、自動車などの車両だけでなく、任意の乗物のステアリング用のハンドルとして用いることができる。
【0046】
そして、エアバッグ装置12に代えて、例えば衝撃吸収体を収納したパッド体などを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば電気自動車などの自動車のステアリングホイールとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 ハンドルであるステアリングホイール
15 把持部としてのリム部
18 芯金
19 土台部品としてのスペーサ
20 電子部品
23 樹脂層
28 把持部芯金としてのリム芯金部
32 一の土台部としての表側土台部
33 他の土台部としての裏側土台部
42 一の土台部材としての表側部材
43 他の土台部材としての裏側部材
図1
図2
図3
図4
図5