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特許6789904ダイナミックレンジ圧縮装置及び画像処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789904
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ダイナミックレンジ圧縮装置及び画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 5/00 20060101AFI20201116BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20201116BHJP
   H04N 9/04 20060101ALI20201116BHJP
   H04N 9/73 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   G06T5/00 730
   H04N1/407
   H04N9/04 B
   H04N9/73 H
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-180520(P2017-180520)
(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公開番号】特開2019-57080(P2019-57080A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細田 宗一郎
【審査官】 千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−130157(JP,A)
【文献】 特開2009−218961(JP,A)
【文献】 特開2009−135895(JP,A)
【文献】 特開平9−331539(JP,A)
【文献】 河村尚登, 外1名,“1.1 カラーマネジメント技術概論”,画像電子学会誌,日本,画像電子学会,2006年 7月25日,第35巻, 第4号,p.353-361
【文献】 Christopher C. Yang, 外1名,"Gamut clipping in color image processing",Proceedings 2000 International Conference on Image Processing,米国,2000年 9月13日,p.824-827
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 5/00
H04N 1/407
H04N 9/04
H04N 9/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の輝度ダイナミックレンジに対応する色データから第2の輝度ダイナミックレンジに対応する色データに変換されたフレーム画像中の各画素の色データの値が所定の飽和値を超えたか否かにより画素毎の前記各色データの飽和を検出する飽和検出回路と、
前記飽和が検出された画素が飽和していない状態の輝度値を保つために必要なデータ量を計算して、前記飽和が検出された画素において前記飽和が検出された飽和色データ以外の飽和していない他の非飽和色データに、配分して出力するデータ配分回路と、
を有するダイナミックレンジ圧縮装置。
【請求項2】
前記データ配分回路は、前記他の非飽和色データの前記所定の飽和値までの差に応じたデータから前記データ量を計算して、前記他の非飽和色データに配分する、請求項1に記載のダイナミックレンジ圧縮装置。
【請求項3】
前記フレーム画像は、RGBの3つの色データを含み、
前記データ配分回路は、前記3つの色データの中の1又は2つの色データの値が前記所定の飽和値を超えたとき、前記3つの色データの中の前記1又は2つの色データ以外の他の色データについての前記差に応じたデータから前記データ量を計算して、前記他の非飽和色データである前記他の色データに配分する、請求項2に記載のダイナミックレンジ圧縮装置。
【請求項4】
前記第2の輝度ダイナミックレンジの前記各画素の色データと、前記データ配分回路において計算された前記データ量が配分された前記非飽和色の色データとを、設定されたブレンドパラメータに基づいて前記各画素の色毎にブレンドするブレンド回路を有する、請求項1に記載のダイナミックレンジ圧縮装置。
【請求項5】
第1の輝度ダイナミックレンジに対応する色データから第2の輝度ダイナミックレンジに対応する色データに変換されたフレーム画像中の各画素の色データの値が所定の飽和値を超えたか否かにより画素毎の前記各色データの飽和を検出する飽和検出回路と、
前記飽和が検出された画素において前記飽和が検出された飽和色データ以外の飽和していない他の非飽和色データに、前記飽和色データの一部を加算するように配分して出力するデータ配分回路と、
を有するダイナミックレンジ圧縮装置。
【請求項6】
前記データ配分回路は、前記他の非飽和色データに、前記飽和が検出された前記飽和色データの前記所定の飽和値をオーバーしている分だけ加算する、請求項5に記載のダイナミックレンジ圧縮装置。
【請求項7】
前記フレーム画像は、RGBの3つの色データを含み、
前記データ配分回路は、前記3つの色データの中の1つの色データの値が前記所定の飽和値を超えたとき、前記1つの色データの値が前記所定の飽和値からオーバーしている分に応じたデータを、前記飽和色データの一部として前記他の非飽和色データの1つ又は2つに加算する、請求項6に記載のダイナミックレンジ圧縮装置。
【請求項8】
前記第2の輝度ダイナミックレンジの前記各画素の色データと、前記データ配分回路において前記飽和が検出された画素の色データの一部が加算された前記非飽和色の色データとを、設定されたブレンドパラメータに基づいて前記各画素の色毎にブレンドするブレンド回路を有する、請求項5に記載のダイナミックレンジ圧縮装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載のダイナミックレンジ圧縮装置を有する画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ダイナミックレンジ圧縮装置及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイダイナミックレンジ(HDR)画像が注目され、実用化されている。HDR画像は、露光時間などが異なる複数フレームの画像を合成して生成されることにより、高いダイナミックレンジを有する。
【0003】
このHDR画像に対してHDR圧縮処理を行うHDR圧縮装置がある。HDR圧縮装置は、HDR画像を、ローダイナミックレンジの装置(例えば表示装置)での表示等のために用いられる。HDR圧縮装置では、例えば24ビットの画像データが8ビットの画像データに圧縮される。HDR圧縮装置では、フレーム画像の輝度値の情報を用いてダイナミックレンジを縮小することにより、データ圧縮が行われる。
【0004】
フレーム画像が色データ、例えばRGBデータを有する場合、フレーム画像中にRGBの色の極端な偏りがなければ、RGBデータ間の画素値間の比率が保たれながら、各画素の輝度値Yを輝度値Y1に変換することにより画像データの圧縮は行われる。
【0005】
しかし、元のフレーム画像中にRGBの色に極端な偏りがあると、変換後の輝度値Y1に基づいて各画素のRGBの各色の画素値が再計算されたときに、RGBデータ間の画素値間の比率が保たれず、圧縮後の輝度値が大きく低下してしまうという問題がある。
【0006】
例えば、元の画像において特定の1つの色の輝度値(例えば24ビットデータ)のみが大きく、他の色の画素値が低い画素を含む場合、データ圧縮後の輝度値Y1に対応する各色の画素値が再計算されたとき、他の色の画素値が低いため、特定の1つの色の色データだけが大きくなって内部レジスタにおいてオーバーフローし、結果として、その画素の輝度値が極端に低下して、その画素が黒点のようになってしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2015−529890号公報
【特許文献2】特表2014−510339号公報
【特許文献3】特表2012−520619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、実施形態は、フレーム画像中の色に極端な偏りがあっても、データ圧縮後の輝度値の低下が生じないダイナミックレンジ圧縮装置及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、第1の輝度ダイナミックレンジに対応する色データから第2の輝度ダイナミックレンジに対応する色データに変換されたフレーム画像中の各画素の色データの値が所定の飽和値を超えたか否かにより画素毎の前記各色データの飽和を検出する飽和検出回路と、前記飽和が検出された画素が飽和していない状態の輝度値を保つために必要なデータ量を計算して、前記飽和が検出された画素において前記飽和が検出された飽和色データ以外の飽和していない他の非飽和色データに、配分して出力するデータ配分回路と、を有するダイナミックレンジ圧縮装置が提供される。
実施形態によれば、第1の輝度ダイナミックレンジに対応する色データから第2の輝度ダイナミックレンジに対応する色データに変換されたフレーム画像中の各画素の色データの値が所定の飽和値を超えたか否かにより画素毎の前記各色データの飽和を検出する飽和検出回路と、前記飽和が検出された画素において前記飽和が検出された飽和色データ以外の飽和していない他の非飽和色データに、前記飽和色データの一部を加算するように配分して出力するデータ配分回路と、を有するダイナミックレンジ圧縮装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係わる画像処理システム1のブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係わるISP4の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係わるHDR圧縮回路14の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係わる、ローカルトーンパラメータLTPに基づく2つのトーンカーブのブレンドを説明するための図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係わる、RGB信号の画素値の配分を説明するための図である。
図6】ローカルトーンマッピング処理回路24において輝度補正を行わないときの表示画像の例を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係わる、RGB信号の画素値の配分を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
図1は、本実施形態に係わる画像処理システム1のブロック図である。
【0012】
画像処理システム1は、CMOSイメージセンサ等の撮像素子2aを有するカメラ2と、カメラ2からの撮像信号を受信して、所定の画像処理を行う画像処理装置3とを含む。画像処理システム1は、例えば、カメラ2の画像から対象認識を行う装置である。
【0013】
画像処理装置3は、半導体装置として、各種機器に搭載され、カメラで得られた画像に対して画像認識処理を行い、認識結果情報を出力する。
カメラ2は、撮像素子2aを駆動して、静止画及び動画の撮像信号を出力することができると共に、露光時間が互いに異なる複数のフレームの撮像信号を出力することもできる。
【0014】
画像処理装置3は、画像信号プロセッサ(以下、ISPという)4と、中央処理装置(以下、CPUという)5と、主メモリとしてのDRAM6とを含む半導体装置すなわち半導体チップである。画像処理装置3は、図示しないインターフェース回路を介してカメラ2からの撮像信号を受信する。カメラ2と画像処理装置3は、例えばMIPIプロトコルによる通信を行い、画像処理装置3は、カメラ2から撮像信号を受信する。ISP4とCPU5とDRAM6は、バス7を介して接続され、データの送受信が可能となっている。
【0015】
ISP4は、カメラ2からの撮像信号を受信してHDR合成処理を行うと共にHDR圧縮処理を行い、圧縮された画像データを、バス7を介してDRAM6に出力する。
CPU5は、DRAM6に格納された画像データに対して所定の画像処理を行い、画像処理の結果をDRAM6に格納する。例えば、CPU5は、DRAM6に格納された画像データを読み出して画像認識処理を行い、認識された対象についての情報をDRAM6の所定の領域に書き込む。対象についての情報は、図示しない装置によりバス7を介して読み出されて、物体認識、文字認識などの各種認識処理のために利用される。
【0016】
図2は、ISP4の構成を示すブロック図である。
ISP4は、HDR合成回路(以下、HDRSという)11と、セレクタ12と、デモザイク回路13と、HDR圧縮回路(以下、HDRCという)14を含む。
【0017】
HDRS11は、互いに露光時間の異なる複数(ここでは3つ)のフレームの画像信号P1、P2、P3をカメラ2から受信して、HDR合成処理を行い、セレクタ12に出力する。画像信号P1、P2、P3は、例えば、カメラ2の撮像素子2aのベイヤーフィルタの各画素値の16ビットの画像信号である。HDRS11は、HDR合成を行い、24ビットの画像信号を出力する。
【0018】
セレクタ12は、HDRS11からの画像信号を選択してデモザイク回路13に出力する。
なお、ここでは、セレクタ12は、カメラ2からの画像信号PPと、HDRS11の画像信号のいずれかを選択して、デモザイク回路13に出力することができるようになっている。これは、カメラ2自体がHDR合成処理回路を有している場合に、カメラ2の出力する画像信号PPに対応できるようにするためである。
【0019】
デモザイク回路13は、HDRS11の画像信号に対してデモザイク処理を行い、各画素について24ビットのRGBの画像信号を生成して、HDRC14に出力する。
HDRC14は、RGBの画像信号に対してローカルトーンマッピングによりHDR圧縮処理を行い、圧縮された画像信号を出力する。例えば、24ビットのRGBの画像信号が、16ビットのRGBの画像信号に圧縮されて変換される。
【0020】
HDRC14において生成された画像信号は、DRAM6に格納されて、画像信号に対してCPU5により各種処理が行われる。
図3は、HDRC14の構成を示すブロック図である。
【0021】
HDRC14は、輝度計算回路21と、ローカルトーンパラメータ計算回路22と、メモリ23と、ローカルトーンマッピング処理回路24を含む。
HDRC14は、デモザイク回路13から出力された例えば24ビットのRGBの画像信号に対して、HDR圧縮処理を行い、圧縮された画像信号(例えば16ビット)を出力する。
【0022】
輝度計算回路21は、フレーム画像の各画素の輝度値を計算する。具体的には、輝度計算回路21は、RGBの3色の画像信号から、各画素の輝度値を計算する回路である。輝度値Yは、次の式(1)から算出される。
Y=Cr*R+Cg*G+Cb*B ・・・(1)
Cr,Cg,Cbは、係数であり、Cr+Cg+Cb=1の関係を有する。
【0023】
輝度計算回路21は、各フレームの各画素の輝度値を出力する。結果として、輝度計算回路21は、各画素の輝度値からなる輝度画像を出力する輝度画像生成回路である。
ローカルトーンパラメータ計算回路22は、フレーム画像のローカルトーンパラメータLTPを計算する回路である。具体的には、ローカルトーンパラメータ計算回路22は、フレーム画像中の明るさ分布あるいは照明分布に基づいて、ローカルトーンマッピング用のトーンカーブの補正パラメータとしてのローカルトーンパラメータLTPを算出して、ローカルトーンマッピング処理回路24へ出力する回路である。
【0024】
例えば、ローカルトーンパラメータ計算回路22は、フレーム画像を所定の複数の領域に分割し、フレーム画像内の明るさ分布を求める。そして、ローカルトーンパラメータ計算回路22は、各画素の周辺の明るさ分布の情報に基づいて、各画素のローカルトーンパラメータを抽出する。
【0025】
メモリ23は、ローカルトーンパラメータ計算回路22において用いられるフレーム画像の明るさ分布情報として、前のフレーム画像の明るさ分布情報を一時的に格納するためのメモリである。よって、ローカルトーンパラメータ計算回路22は、各画素のローカルトーンパラメータを計算するときに、前のフレーム画像の明るさ分布情報が必要なときにメモリ23に格納された情報を参照する。
【0026】
ローカルトーンパラメータ計算回路22は、各画素のローカルトーンパラメータを抽出するときに、現在のフレーム画像の明るさ分布情報が得られない領域については、メモリ23に格納された前のフレーム画像の明るさ分布情報を用いる。
【0027】
ローカルトーンマッピング処理回路24は、ローカルトーンマッピング回路25と、RGB再計算回路26と、輝度補正回路27を有する。
ローカルトーンマッピング回路25は、所定のトーンカーブ情報を用いて、ローカルトーンパラメータ計算回路22からのローカルトーンパラメータLTPに基づいて、フレーム画像の各画素の元の輝度値(例えば24ビット)を、トーンマッピングによりローダイナミックレンジの輝度値に変換する。
【0028】
ここでは、トーンカーブを2つ用意しておき、ローカルトーンパラメータLTPに基づいて、2つのトーンカーブをブレンドしたトーンカーブに基づいて、各画素の輝度値を変換する。
【0029】
図4は、ローカルトーンパラメータLTPに基づく2つのトーンカーブのブレンドを説明するための図である。横軸は、圧縮前の画素の輝度値Yを示し、縦軸は、圧縮後の画素の輝度値Y1を示す。
【0030】
ローカルトーンマッピング回路25は、2つのトーンカーブLTC,HTCの情報を有している。図4において、一点鎖線で示すトーンカーブLTCは、低輝度領域用のトーンカーブであり、点線で示すトーンカーブHTCは、高輝度領域用のトーンカーブである。トーンカーブLTCは、低輝度領域の輝度値を高くし、トーンカーブHTCは、高輝度領域の輝度値を低くするように設定されている。
【0031】
ローカルトーンパラメータLTPは、各画素の周辺領域の明るさ分布に関する情報であり、周辺領域の明るさ分布に応じて、低輝度領域用のトーンカーブLTCと高輝度領域用のトーンカーブHTCのブレンド比率を示す。図4において、二点鎖線で示すトーンカーブは、ブレンドされたトーンカーブである。画素の周辺の領域が全体に明るければ、トーンカーブHTCに近いトーンカーブとなり、画素の周辺の領域が全体に暗ければ、トーンカーブLTCに近いトーンカーブとなり、画素の周辺の領域が明るい領域と暗い領域が混在するときは、トーンカーブLTCとトーンカーブHTCの中間のトーンカーブとなるように、ローカルトーンパラメータLTPは決定される。
【0032】
ローカルトーンマッピング回路25は、ローカルトーンパラメータLTPに基づいて、低輝度領域用のトーンカーブLTCと高輝度領域用のトーンカーブHTCをブレンドしたトーンカーブを決定し、決定されたトーンカーブに基づいて各画素の輝度値を圧縮する。
【0033】
RGB再計算回路26は、ローカルトーンマッピング回路25により変換された輝度値から、ローダイナミックレンジに対応する各画素のRGBの各色の画素値を再計算する。
すなわち、RGB再計算回路26により、ローカルトーンマッピング回路25により圧縮された輝度値に応じたRGBの各色の画素値が逆算される。
【0034】
従来は、このRGB再計算回路26により得られたRGBのフレーム画像信号が、HDR圧縮画像信号として、表示装置などに出力されている。
しかし、本実施形態のローカルトーンマッピング処理回路24は、輝度補正回路27を含み、RGB再計算回路26により得られたRGBのフレーム画像信号に対して輝度補正が行われる。
【0035】
以下、RGB再計算回路26から出力されるRGB信号を、R1信号、G1信号及びB1信号という。
輝度補正回路27は、飽和検出回路31と、データ配分回路32と、ブレンド回路33を含む。
【0036】
飽和検出回路31は、RGB再計算回路26から出力されるR1、G1、B1の各色信号の画素値が飽和値(最大値)を超えているか否かを判定する回路である。
すなわち、飽和検出回路31は、第1の輝度ダイナミックレンジ(例えば24ビット)に対応する色データから第2の輝度ダイナミックレンジ(例えば16ビット)に対応する色データに変換されたフレーム画像中の各画素の色データの値が所定の飽和値(後述する飽和値sat_val)を超えたか否かにより画素毎の各色データの飽和を検出する。
【0037】
データ配分回路32は、飽和検出回路31により飽和した色信号が検出されたとき、飽和していない色信号の画素値へ、飽和した色信号の画素値を配分し、飽和した色信号の飽和値と、飽和していない色信号の配分後の色信号の画素値を出力する。
【0038】
すなわち、データ配分回路32は、前記飽和が検出された画素が飽和していない状態の輝度値を保つために必用なデータ量を計算して、飽和が検出された画素において飽和が検出された飽和色データ以外の飽和していない他の非飽和色データに、配分して出力する。
【0039】
以下、データ配分回路32から出力されるR信号、G信号及びB信号を、それぞれR2信号、G2信号及びB2信号という。
ブレンド回路33は、RGB再計算回路26から出力されたR1、G1、B1信号と、データ配分回路32から出力されたR2、G2、B2信号のブレンドを行う。
【0040】
ローカルトーンマッピング処理回路24は、ブレンド回路33においてブレンドされたRGBの画像信号を出力する。
次に、データ配分回路32の処理について具体的に説明する。
【0041】
図5は、RGB信号の画素値の配分を説明するための図である。ここでは、R1(赤色)の信号が飽和値sat_valをオーバーしている例である。図5の縦軸は、R,G,Bの画素値、あるいはその画素の輝度値を示す。
【0042】
図5において、飽和値sat_valは、ローカルトーンマッピング回路25において算出された当該画素の圧縮後の画素値(例えば16ビット)の最大値すなわち飽和値である。輝度値tgtYは、ローカルトーンマッピング回路25において圧縮された当該画素の輝度値Y1である。
tgtY_restは、HDR圧縮後の輝度値tgtY(=Y1)と飽和値sat_valとの差を示す。
【0043】
hdrG_restは、圧縮後のG1信号の画素値と飽和値sat_valとの差、言い換えればG1信号の飽和値sat_valまでの余裕値を示す。同様に、hdrB_restは、圧縮後のB1信号の画素値と飽和値sat_valとの差、言い換えればB1信号の飽和値sat_valまでの余裕値を示す。
【0044】
まず、データ配分回路32では、次の式(2)を用いて、hdrY_restが算出される。
hdrY_rest=((Cg*hdrG_rest)+(Cb*hdrB_rest)) ・・・(2)
hdrY_restは、HDR信号の輝度値において、飽和していない色信号(ここでは、G1信号とB1信号)を、係数(ここでは、Cg,Cb)を用いて輝度値Y1を上げることができるデータ量、すなわち非飽和の色信号の嵩上げ最大可能量である。
【0045】
さらに、データ配分回路32は、このhdrY_restと、tgtY_restとを用いて、次の式(3)を用いて調整ゲインadj_gainを算出する。
adj_gain=(tgtY_rest/hdrY_rest) ・・・(3)
データ配分回路32では、この調整ゲインadj_gainから、次の式(4)と(5)を用いて、飽和していない2つの色信号(ここではG1信号、B1信号)の画素値補正量が算出される。調整ゲインadj_gainは、1よりも小さい値である。
【0046】
adjG_rest=(hdrG_rest*adj_gain) ・・・(4)
adjB_rest=(hdrB_rest*adj_gain) ・・・(5)
データ配分回路32では、次の式(6)と(7)を用いて、飽和していない2つの色信号(ここではG1信号、B1信号)の補正画素値G2、B2が算出される。
【0047】
G2=(sat_val−adjG_rest) ・・・(6)
B2=(sat_val−adjB_rest) ・・・(7)
式(6)と(7)により算出されたG2、B2の各信号と、飽和値のR2信号がデータ配分回路32から出力される。
【0048】
よって、上述したR1信号が飽和している場合、G1信号とB1信号は、調整ゲインadj_gainを用いて、増加するように補正されて、G2信号とB2信号となる。言い換えれば、式(2)から(7)より、非飽和色のG2とB2の各データは、飽和色のR1が飽和しても輝度値は低下しないようにする為に調整された値ということができる。
【0049】
以上のように、データ配分回路32は、他の非飽和色データの所定の飽和値sat_valまでの差に応じたデータから、飽和が検出された画素が飽和していない状態の輝度値を保つために必要なデータ量を計算して、他の非飽和色データに配分する。上記の例では、フレーム画像は、RGBの3つの色データを含み、データ配分回路32は、3つの色データの中の1つの色データの値が所定の飽和値sat_valを超えたとき、3つの色データの中の1つの色データ以外の他の2つの色データについての飽和値sat_valまでの差に応じたデータから、飽和が検出された画素が飽和していない状態の輝度値を保つために必要なデータ量を計算して、他の非飽和色データである他の2つの色データに配分する。
なお、データ配分回路32は、3つの色データの中の2つの色データの値が所定の飽和値sat_valを超えたとき、3つの色データの中の2つの色データ以外の他の1つの色データについての飽和値sat_valまでの差に応じたデータから、飽和が検出された画素が飽和していない状態の輝度値を保つために必要なデータ量を計算して、他の非飽和色データである他の1つの色データに配分する。
【0050】
データ配分回路32は、飽和値(sat_val)のR2信号と、式(6)と(7)により算出されたG2信号とB2信号をブレンド回路33に出力する。
ブレンド回路33は、RGB再計算回路26からのR1信号、G1信号、B1信号(輝度補正前の画像信号)と、データ配分回路32からのR2信号、G2信号、B2信号(輝度補正後の画像信号)を受信し、設定されたブレンド係数OrgYbldに基づいて輝度補正前の画像信号と輝度補正後の画像信号をブレンドする。
【0051】
ここでは、ブレンド係数OrgYbldは、0から1024の間のいずれかの数値であり、RGB再計算回路26からのR1信号、G1信号、B1信号の各色の画素値をブレンドする量を示す。
【0052】
ブレンド回路33は、次の式(8)〜(10)に基づいて、輝度補正前の画像信号と輝度補正後の画像信号をブレンドした画像信号として、R3信号、G3信号、B3信号を出力する。
【0053】
R3=((OrgYbld*R1)+((1024−OrgYbld)*R2))>>10 ・・(8)
G3=((OrgYbld*G1)+((1024−OrgYbld)*G2))>>10 ・・(9)
B3=((OrgYbld*B1)+((1024−OrgYbld)*B2))>>10 ・・(10)
ここで、「>>10」は、データの右シフトを示し、ブレンド係数として「1024」を用いているので、10桁だけ右シフトをすることにより、各画素値を1024で除算することを示している。
【0054】
ブレンド係数OrgYbldの値を高くすると、R3信号、G3信号及びB3信号を含む画像は、元々の画像の有する色に近い画像にすることができる。ブレンド係数OrgYbldの値が低くなると、R3信号、G3信号及びB3信号を含む画像の輝度は、高くなる。
【0055】
以上のように、ブレンド回路33は、第2の輝度ダイナミックレンジ(16ビット)の各画素の色データR1、G1、B1と、データ配分回路32において計算されたデータ量が配分された非飽和色の色データR2、G2、B2とを、設定されたブレンドパラメータに基づいて各画素の色毎にブレンドする。
【0056】
このブレンド係数OrgYbldの値を調整することにより、輝度補正前の画像信号の影響度を調整することができる。
以上のように、本実施形態では、輝度補正回路27において非飽和色の画素値を増加させることにより、圧縮後の輝度値Y1を維持することができる。
【0057】
図6は、ローカルトーンマッピング処理回路24において輝度補正を行わないときの表示画像の例を示す図である。図6は、表示装置に表示された道路上に設置された信号機の画像DIMの例を示す。信号機SIGは、3つの色、すなわち緑色、黄色及び赤色の3つのランプGL、BL、RLを有する。
【0058】
画像DIMは、赤色の信号RLのみ色のみが強く、他の色が極めて弱いような、色に極端な偏りがある画像であるとき、輝度補正回路27を有さない従来装置の場合、図5に示すように、再計算された画素の輝度値が大きく低下して、黒点BPが画像DIM中に現れる場合がある。
【0059】
しかし、上述した本実施形態によれば、ローカルトーンマッピング処理回路24において、非飽和画素の画素値を増加する輝度補正を行い、RGBの色信号を出力するようにしているので、図6に示すような黒点BPの発生が抑制される。
【0060】
以上の例では、RGBの3つの色のうちR信号が飽和しているときに、G信号とB信号に対して輝度補正を行っている場合を説明しているが、RGBの3つの色のうちR信号以外のG信号(あるいはB信号)が飽和しているときに、G信号(あるいはB信号)以外の2つの色信号(R信号とB信号、あるいはR信号とG信号)に対して輝度補正が行われる。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、フレーム画像中の色に極端な偏りがあっても、データ圧縮後の輝度値の低下が生じないダイナミックレンジ圧縮装置及び画像処理装置を提供することができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、飽和していない非飽和画素の画素値の飽和値までの余裕値と、HDR圧縮後の輝度値の比率を用いて非飽和画素の画素値の調整が行われているが、本実施形態では、所定の飽和値をオーバーしている分を、飽和していない所定の色の画素の画素値に加算するように調整が行われる。
【0062】
図7は、RGB信号の画素値の配分を説明するための図である。ここでは、R1(赤色)の信号が飽和値sat_valをオーバーしている例である。
データ配分回路32は、R1信号の飽和値sat_valをオーバーしている分(点線で示す量)を、飽和していない所定の色(ここでは、R1が飽和値sat_valをオーバーしているときは、G1)の画素値に、加算している。
【0063】
すなわち、本実施形態では、データ配分回路32は、他の非飽和色データに、飽和色データの一部として、飽和が検出された飽和色データの所定の飽和値sat_valをオーバーしている分だけ加算する。
なお、R1信号の飽和値sat_valをオーバーしている分(点線で示す量)を、飽和していない所定の色(ここではG1)の画素値に加算した結果、その所定の色(ここではG1)も飽和値sat_valをオーバーしたときは、G1信号の飽和値sat_valをオーバーした分は、B1信号に加算される。
【0064】
以上のように、フレーム画像は、RGBの3つの色データを含み、データ配分回路32は、3つの色データの中の1つの色データの値が所定の飽和値sat_valを超えたとき、1つの色データの値が所定の飽和値からオーバーしている分に応じたデータを、飽和色データの一部として他の非飽和色データの1つ又は2つに加算する。
【0065】
さらになお、非飽和の画素が2色の場合、飽和値をオーバーしている分を、所定の割合で、その非飽和の2色の色データに配分するようにしてもよい。
その他の処理は、第1の実施形態と同様であり、本実施形態も、第1の実施形態と同様の効果を有する。
【0066】
なお、以上の2つの実施形態では、RGBの3つの色のうち1つの色データが飽和しているときに、他の2つの色データに対して輝度補正を行っている場合を説明しているが、RGBの3つの色のうち2つの色データが飽和しているときには、残りの1つの色データに対して輝度補正が行われる。
【0067】
以上のように、上述した2つ実施形態によれば、フレーム画像中の色に極端な偏りがあっても、データ圧縮後の輝度値の低下が生じないダイナミックレンジ圧縮装置及び画像処理装置を提供することができる。
結果として、上述したダイナミックレンジ圧縮装置及び画像処理装置を有する画像処理システムは、物体認識、文字認識などの各種認識処理を精度良く行うことができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として例示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 画像処理システム、2 カメラ、2a 撮像素子、3 画像処理装置、4 ISP、5 CPU、6 DRAM、7 バス、12 セレクタ、13 デモザイク回路、21 輝度計算回路、22 ローカルトーンパラメータ計算回路、23 メモリ、24 ローカルトーンマッピング処理回路、25 ローカルトーンマッピング回路、26 RGB再計算回路、27 輝度補正回路、31 飽和検出回路、32 データ配分回路、33 ブレンド回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7