(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に基づいて構成された実施形態に係る内燃機関について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1には、本実施形態に係る内燃機関1、および内燃機関1の制御装置であるECU100を含む制御系の構成の概略が示されている。内燃機関1は、例えば、定置式の発電機に適用されるものであり、燃料改質部2、および出力気筒3を備えている。この内燃機関1は、前記した燃料改質部2、出力気筒3に対する吸気系4、改質燃料供給系5、排気系6、およびEGR系7によって配管系が構成されている。
【0023】
燃料改質部2は、燃料改質気筒2A、および燃料改質触媒2Bと、燃料改質気筒2Aから排出される第一改質ガスを燃料改質触媒2Bに導入する第一改質ガス通路51とを備えている。燃料改質気筒2Aは、第一燃料改質器を構成する。燃料改質触媒2Bは、第二燃料改質器に含まれる。
【0024】
燃料改質気筒2Aは、図示しないシリンダブロックに形成されたシリンダ21内でピストン22が往復動するレシプロ型機構を含む。燃料改質気筒2Aでは、シリンダボア21、ピストン22、図示しないシリンダヘッドによって燃料改質室23が形成されている。
【0025】
燃料改質気筒2Aには、燃料改質室23に高級炭化水素を多く含む燃料、例えば軽油を供給するインジェクタ25が配設されている。この燃料改質室23では、インジェクタ25から燃料が供給され、ピストン22によって高温高圧の環境下で断熱圧縮される。これにより燃料が改質され、水素、一酸化炭素、メタン等を含むアンチノック性の高い改質燃料(第一改質ガス)が生成される。この燃料改質室23に供給される燃料は、炭化水素を含む他の液体燃料(ガソリン、重油等)であってもよい。なお、インジェクタ25は、上記のように燃料改質室23に直接燃料を供給する形態に限定されず、例えば、燃料改質気筒2Aに空気を導入する燃料改質気筒吸気通路42に配設されて燃料を供給するものであってもよい。
【0026】
燃料形質触媒2Bは、周知の燃料改質触媒を採用することができる。例えば、Pt/CeO
2等の材料を用いたものを使用することができる。このような触媒を採用する場合は、吸入されるガスの温度や、当量比等を変化させることで、各ガスの成分濃度を調整することが可能である。燃料改質触媒2Bでは、燃料改質気筒2Aで改質され排出された第一改質ガスが導入される。燃料改質触媒2Bでは、燃料改質気筒2Aで改質しきれずに残った高級炭化水素を含む第一改質ガスを改質する。この作用については、追って詳述する。
【0027】
出力気筒3は、燃料改質気筒2Aと同様にレシプロ型で構成されている。具体的には、出力気筒3は図示しないシリンダブロックに形成されたシリンダボア31内にピストン32が往復動自在に収容されて構成されている。出力気筒3には、シリンダボア31、ピストン32、図示しないシリンダヘッドによって燃焼室33が形成されている。
【0028】
本実施形態に係る内燃機関1は、例えば、シリンダブロックに4つの気筒が備えられ、そのうちの1つの気筒が燃料改質気筒2Aとして構成されており、他の3つの気筒が出力気筒3として構成されている(図では1気筒のみ示している。)。そして、燃料改質気筒2Aで生成された第一改質ガスが、第一改質ガス通路51を介して燃料改質触媒2Bに導入され、この燃料改質触媒2Bにてさらに改質反応が生起されて第二改質ガスが生成される。そして、第二改質ガスが空気と共に各出力気筒3それぞれに供給される構成となっている。燃料改質気筒2A、出力気筒3の気筒数は必ずしもこれに限定されず、例えば、シリンダブロックに6つの気筒が備えられている場合は、2つの気筒を燃料改質気筒2とし、他の4つの気筒を出力気筒3として構成されていてもよい。燃料改質気筒2Aの数は、出力気筒3の数よりも少ないことが好ましい。
【0029】
燃料改質気筒2Aのピストン22、および出力気筒3のピストン32は、それぞれコネクティングロッド24、34を介して図中一点鎖線で示すクランクシャフト11に連結されている。クランクシャフト11は、図示しないクラッチ機構等を介して図示しない発電機に連結されている。
【0030】
出力気筒3には、上記したように、燃焼室33が形成されており、燃焼室33内に着火用燃料(例えば軽油等)を供給するインジェクタ35が配設されている。この燃焼室33では、前記燃料改質気筒2で生成された第一改質ガスが空気、後述するEGRガスと共に供給されて均一希薄予混合気を形成し、ピストン32によって圧縮される。そして、圧縮上死点近傍でインジェクタ35から微量の着火用燃料が噴射され、該着火用燃料を点火源とした伝播火炎燃焼が行われる。これにより、ピストン32の往復動がクランクシャフト11の回転運動に変換され、機関出力が得られる。
【0031】
吸気系4は、燃料改質部2、および出力気筒3それぞれに空気(外気)を導入する。この吸気系4は、メイン吸気通路41と、メイン吸気通路41から分岐して燃料改質気筒2Aに空気を導入する燃料改質気筒吸気通路42と、メイン吸気通路41から出力気筒3に空気を導入する出力気筒吸気通路43と、燃料改質触媒2Bに外気を導入する燃料改質触媒吸気通路46とを備えている。メイン吸気通路41には、ターボチャージャ12のコンプレッサホイール12aが備えられている。燃料改質気筒吸気通路42は、燃料改質気筒2Aの吸気ポートに接続されている。この吸気ポートと燃料改質気筒2の燃料改質室23との間には吸気バルブ26が開閉可能に配設されている。また、この燃料改質気筒吸気通路42には、開度調整可能な吸気量調整弁45が備えられている。出力気筒吸気通路43は、出力気筒3の吸気ポートに接続されている。この吸気ポートと出力気筒3の燃焼室33との間には、吸気バルブ36が開閉可能に配設されている。また、出力気筒吸気通路43には、吸気冷却器(インタークーラ)44が備えられている。
【0032】
改質燃料供給系5は、燃料改質部2に備えられる燃料改質気筒2A、および燃料改質触媒2Bを含み、燃料改質部2で生成された改質燃料を出力気筒3の燃焼室33に向けて供給するものである。
【0033】
改質燃料供給系5は、さらに、第一改質ガス通路51、および第二改質ガス通路52を含んでいる。この第一改質ガス通路51は、燃料改質気筒2Aから排出される第一改質ガスを含むガスを燃料改質触媒2Bに導入するものである。第一改質ガス通路51の上流端は燃料改質気筒2Aの排気ポートに接続されており、第一改質ガス通路51の下流端は、燃料改質触媒2Bの入り口に接続されている。第二改質ガス通路52は、燃料改質触媒2Bの出口から排出される第二改質ガスを含むガスを出力気筒吸気通路43に導入するものである。第二改質ガス通路52における燃料改質触媒2Bの下流側には、改質燃料冷却器53が備えられている。この第二改質ガス通路52と出力気筒吸気通路43との接続部には図示しないミキサが設けられている。このため、燃料改質部2で生成された改質ガスは、このミキサにおいて出力気筒吸気通路43を流れる空気と混合されて出力気筒3の燃焼室33に供給されることになる。
【0034】
排気系6は、前記出力気筒3で燃料が燃焼することにより発生した排気ガスを内燃機関1の外部に排出する排気通路61を備えている。排気通路6には、ターボチャージャ12のタービン12bが備えられている。排気通路61は出力気筒3の排気ポートに接続されている。この排気ポートと出力気筒3の燃焼室33との間には排気バルブ37が設けられている。
【0035】
EGR系7は、出力気筒3か排出される排気ガスを燃料改質部2、出力気筒3に導入する配管路であり、燃料改質部EGR系7Aと、出力気筒EGR系7Bとにより構成されている。
【0036】
燃料改質部EGR系7Aは、燃料改質部2に排気ガスを供給する燃料改質部EGR通路71を備えている。燃料改質気筒EGR通路71の上流端は、排気通路61に接続されている。燃料改質気筒EGR通路71は、燃料改質気筒2A側に排気ガスを導入する燃料改質気筒EGR通路72と、燃料改質触媒2B側に排気ガスを導入する燃料改質触媒EGR通路73とに分岐している。
【0037】
燃料改質気筒EGR通路72には、燃料改質気筒EGRガス量調整弁74が備えられている。さらに、燃料改質触媒EGR通路73には、燃料改質触媒EGRガス量調整弁75が備えられている。なお、図示は省略するが、燃料改質気筒部EGR系7Aのいずれかに、適宜EGRガスクーラが配設されていても良い。
【0038】
出力気筒EGR系7Bは、排気通路61を流れる排気ガスの一部を出力気筒3の燃焼室33に還流させる出力気筒EGR通路76を備えている。出力気筒EGR通路76の上流端は排気通路61に接続されている。出力気筒EGR通路76の下流端は、出力気筒吸気通路43に配設された前記ミキサの下流側に接続されている。出力気筒EGR通路76にはEGRガスクーラ77が配設されている。出力気筒EGR通路76のEGRガスクーラ77の下流側(出力気筒3側)には出力気筒EGRガス量調整弁78が配設されている。
【0039】
上記したように、吸気系4には、メイン吸気通路41と、燃料改質触媒EGR通路73とを接続し、外気を燃料改質触媒EGR通路73に導入する燃料改質触媒吸気通路46が設けられている。具体的には、燃料改質触媒吸気通路46の上流端は、メイン吸気通路41におけるコンプレッサホイール12aの下流側であって、燃料改質気筒吸気通路42に分岐する分岐部よりも上流側に接続される。燃料改質触媒吸気通路46の下流端は、燃料改質触媒EGR通路73における燃料改質触媒EGRガス量調整弁75の下流側に接続される。また、燃料改質触媒吸気通路46上には、燃料改質触媒吸気通路46を介して燃料改質触媒EGR通路73に導入する外気導入量を調整するための外気導入量調整弁47が配設されている。
【0040】
本実施形態の上記した吸気冷却器44、改質燃料冷却器53、EGRガスクーラ77は、内燃機関1の冷却水によって冷却される。なお、吸気冷却器44、改質燃料冷却器53、EGRガスクーラ77は内燃機関1の冷却水によって冷却されることに限定されず、空冷式や他の冷熱源を用いて冷却するように構成してもよい。
【0041】
図1を参照しながら、内燃機関1の制御系についてさらに説明する。内燃機関1の制御系の概略構成は、図中に点線を用いて示している。内燃機関1には、ECU(Electronic Control Unit)100が備えられている。このECU100は、内燃機関1に備えられた各種アクチュエータを制御する制御装置に相当する。ECU100は、コンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム、および各種の制御マップ等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、および出力インターフェース等を備えている(詳細についての図示は省略する。)。
【0042】
ECU100には、前記インジェクタ25、35、前記各調整弁45、47、74、75、78等が電気的に接続されている。また、燃料改質気筒2の吸気バルブ26、排気バルブ27それぞれには、可変動弁装置28、29が備えられており、吸気バルブ26、排気バルブ27の開閉タイミングを自在に変更することが可能に構成されている。ECU100は、この可変動弁装置28、29に電気的に接続されている。
【0043】
内燃機関1には、吸気流量センサ、吸入ガス圧力センサ、吸入ガス温度センサ、吸入ガスO2センサ、排気圧力センサ、内燃機関1の水温センサ、内燃機関1の回転速度センサ、およびアクセルレバー開度センサ等(図示は省略する。)を備えている。各センサは、内燃機関1の運転状態を検出する運転状態検出部として機能する。各センサはECU100に接続されており、所定時間間隔で出力信号をECU100に送信する。
【0044】
ECU100は、前記した各センサの出力信号に基づいて、前記各インジェクタ25、35の噴射開始時期、および終了時期を調整する燃料噴射制御、各調整弁45、47、74、75、78等の開閉制御、ならびに可変動弁装置28、29による吸気バルブ26、および排気バルブ27の開閉タイミング制御等を行う。
【0045】
図1を参照しながら、本実施形態における内燃機関1の動作について、以下に説明する。
【0046】
メイン吸気通路41に導入される空気は、ターボチャージャ12のコンプレッサホイール12aによって加圧される。そして、この空気は、燃料改質気筒吸気通路42、出力気筒吸気通路43、燃料改質触媒吸気通路46等に分流される。この際、燃料改質気筒吸気通路42を流れる吸気の流量は吸気量調整弁45によって、燃料改質触媒吸気通路46に流れる外気の流量は外気導入量調整弁47によって調整される。また、燃料改質気筒吸気通路42には、燃料改質気筒EGR系7Aを流れたEGRガスが導入される。この際、燃料改質気筒吸気通路42に導入されるEGRガス量はEGRガス量調整弁74によって調整される。これにより、燃料改質気筒2Aの燃料改質室23には、空気およびEGRガスが導入されることになる。この際、吸気量調整弁45の開度によって調整される吸気の流量、EGRガス量調整弁74の開度によって調整されるEGRガスの流量は、燃料改質室23での当量比を調整しつつ、燃料改質室23において燃料の改質が良好に行われるように調整される。具体的には、吸気量調整弁45、EGRガス量調整弁74の開度は、インジェクタ25から燃料改質室23に燃料が供給された際における燃料改質室23での当量比が所定の値(例えば2.5以上、好ましくは4.0以上)になるように制御される。当該制御は、例えば、予め実験やシミュレーション等に基づいて作成された開度設定マップに基づき行うことができる。なお、燃料改質部EGR通路71上にEGRガスクーラを配設し、温度制御を可能に構成している場合は、燃料改質室23のガス温度が改質反応可能温度の下限値以上の値となるよう、このEGRガスクーラのEGRガス流通量を制御してもよい。
【0047】
上記したように、燃料改質気筒2Aの燃料改質室23に、空気およびEGRガスが導入された状態で、インジェクタ25から燃料改質室23に燃料が供給される。このインジェクタ25からの燃料供給量は、内燃機関1運転状態に基づいて演算される機関の要求出力に応じて設定される。具体的には、インジェクタ25に供給される燃料の圧力に応じ、目標とする燃料供給量が得られるように、インジェクタ25の開弁期間が設定される。また、この際のインジェクタ25の開弁期間は、燃料改質気筒2Aの吸気行程が終了するまでの間に前記目標とする燃料供給量に応じた噴射が完了するように設定される。なお、インジェクタ25の開弁期間はこれに限定されず、ピストン22が圧縮上死点に達するまでに、燃料改質室23において均質な混合気が形成される期間であればよい。また、インジェクタ25が燃料改質気筒吸気通路42に配設されている場合は、インジェクタ25から噴射された燃料が燃料改質気筒2の吸気バルブ26の開弁期間内に燃料改質室23に導入されるように、インジェクタ25の開弁期間が設定される。
【0048】
ピストン22が圧縮上死点に向かって移動する間に、燃料改質室23の圧力、および温度が上昇し、この燃料改質室23では、上記した混合気が断熱圧縮される。これにより、高温高圧の環境下で、燃料の脱水素反応、部分酸化反応、水蒸気改質反応、熱解離反応等が行われて、燃料が改質され、水素(H
2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)等を含むアンチノック性の高い改質燃料が生成される。なお、本実施形態においては、液体燃料が改質された改質燃料はガス状であることから、以下においては、改質燃料を「改質ガス」と称することがある。
【0049】
燃料改質室23で生成された第一改質ガスは、燃料改質気筒2Aの排気弁27を介して排出され、第一改質ガス通路51を介して燃料改質触媒2Bに導入される。燃料改質触媒2Bは、燃料改質気筒2Aで改質しきれなかった高級炭化水素を低級炭化水素へと改質し、あるいは、燃料改質気筒2Aにおいて改質された第一改質ガス中の生成物を、さらに出力気筒3において望まれるガス成分に調整するように改質して第二改質ガスを生成する。
【0050】
燃料改質触媒2Bから排出された第二改質ガスは、第二改質ガス通路52を流れ、改質燃料冷却器53によって冷却される。この冷却により、改質ガスの密度を上げると共に出力気筒吸気通路43や燃焼室33における第二改質ガスの過早着火が抑制される。そして、この冷却された第二改質ガスは、出力気筒吸気通路43を流れる空気と混合され、出力気筒EGR通路76を経て導入されるEGRガスと共に出力気筒3の燃焼室33に導入される。
【0051】
このようにして、出力気筒3の燃焼室33には、空気、第二改質ガス、およびEGRガスが導入され、燃焼室33内の当量比が所望の値になるように調整される。
【0052】
出力気筒3では、圧縮行程において希薄予混合気の断熱圧縮が行われ、ピストン32が圧縮上死点に達した時点で、インジェクタ35から着火性の高い微量の燃料噴射が行われる。これにより、燃焼室33内で圧縮された予混合気が着火し、希薄予混合燃焼が行われる。なお、インジェクタ35からの微量な燃料の噴射を行わなくても、燃焼室33の予混合気が所望のタイミングで着火し得る場合は、インジェクタ35からの燃料の噴射は必ずしも行わなくても良い。
【0053】
前記燃焼によって、ピストン32が往復動し、クランクシャフト11が回転することで機関出力を得ることができる。この機関出力は、前記発電機等に伝達されると共に、その一部は前記燃料改質気筒2Aにおけるピストン22の往復動の駆動源として使用される。
【0054】
この内燃機関1によれば、出力気筒3内において均一希薄予混合燃焼が行われるため、NOx排出量、スート排出量の低減を図ることができる。これにより、排気ガスを浄化するための後処理装置(パティキュレートフィルタ、NOx触媒等)を不要、または、その容量を大幅に縮小することが可能になる。そして、アンチノック性の高い燃料の燃焼が行われるため、ノッキングが抑制されると共に、前述したような軽油等を噴射するディーゼルパイロット着火により最適な時期での燃焼を実現することができることから燃焼効率の向上も図ることができる。
【0055】
燃料改質部2は、燃料改質気筒2Aから排出される第一改質ガスが、第一改質ガス通路51を介して燃料改質触媒2Bに導入されるように構成されている。これにより、燃料改質気筒2Aにおいて高い当量比の混合気を形成して燃料を改質させた場合であって、投入された燃料の全てが熱分解しきれずに、一部が高級炭化水素燃料として第一改質ガスと共に燃料改質気筒2Aから排出される場合であっても、後段の燃料改質触媒2Bによってさらに改質される。すなわち、燃料改質触媒2Bにより、前段の燃料改質気筒2Aにおいて改質しきれなかった高級炭化水素を改質することが可能である。上述したように、燃料改質触媒2Bは、一般的に改質反応を生起するために所定の温度に高める必要がある。この点、本実施形態に係る内燃機関1は、燃料改質気筒2Aと、燃料改質触媒2Bとを第一改質ガス通路51で連通して協働させる構成を取っている。これにより、燃料改質気筒2Aから排出される高温状態の第一改質ガスが燃料改質触媒2Bに供給され、燃料改質触媒2Bが速やかに昇温される。よって、内燃機関1の運転を開始した後、速やかに燃料改質触媒2Bにおける改質反応を生起させることができる。
【0056】
本実施形態の内燃機関1は、さらに、第一改質ガス通路51に対して、補助空気を導入する構成を備える。燃料改質気筒2Aでは、当量比が高い状態の混合気、すなわち、燃料過濃予混合気を反応させて第一改質ガスを生成する。このような反応により第一改質ガスを生成した場合、第一改質ガス中には殆ど酸素が存在しない状態となる。そのような第一改質ガスがそのまま燃料改質触媒2Bに投入されると、燃料改質触媒2B内における反応が吸熱反応である場合が多いため、反応場の温度を低下させる可能性がある。反応場の温度が低下した場合、燃料改質触媒2Bにおける改質反応が限定的になる。ここで、本実施形態では、反応場の温度を上げながら、発熱反応である部分酸化反応を促進すべく、第一改質ガス通路51を流れる第一改質ガスに補助空気を導入する。補助空気を導入することで生起される部分酸化反応の例を以下の式(1)に示す。
【0058】
上記式(1)から理解されるように、第一改質ガスに補助空気を導入し酸素を付加することで、第一改質ガスに含まれるメタン(CH
4)から、一酸化炭素(CO)、水素(H
2)を生成することができる。このような反応を促進することで、出力気筒3の燃料改質気筒室33に投入される改質ガスのガス成分の濃度割合を調整することが可能になる。
【0059】
補助空気の導入を実現する一つの手段として、
図1に示す燃料改質触媒吸気通路46を利用することが挙げられる。上記した燃料改質触媒吸気通路46を利用することにより、第一改質ガス通路51に対し、ターボチャージャ12のコンプレッサホイール12aによって加圧された外気(補助空気)を効率よく導入することが可能である。外気の具体的な導入量は、外気導入量調整弁47の開度を制御することで調整される。外気導入量調整弁47の開度は、実験、シミュレーション等により作成される運転状態に応じた開度を設定したマップに基づき制御される。
【0060】
また、補助空気の導入を実現する他の手段として、上述した燃料改質触媒EGR通路73を利用することができる。特に、出力気筒3において、混合気に酸素が過剰に含まれる均一希薄予混合燃焼(リーンバーン燃焼)を実施している場合は、出力気筒3から排出される排気ガスに酸素が多く含まれている。その排気ガスの一部を、排気通路61、燃料改質気筒EGR通路71、および燃料改質触媒EGR通路73により、EGRガスとして第一改質ガス通路51に導入し、補助空気とすることができる。このEGRガスの導入量は、燃料改質触媒EGRガス量調量弁75の開度を制御することで調整される。外気導入量調整弁47の開度は、実験、シミュレーション等により作成される運転状態に応じた開度を設定したマップに基づき制御される。
【0061】
なお、上記した燃料改質触媒吸気通路46を利用する手段、燃料改質触媒EGR通路73を利用する手段のいずれかのみを利用することに限定されず、両方を組み合わせて補助空気の導入を実現してもよい。その場合、燃料改質触媒吸気通路46を利用する手段では、外気が導入されるため、比較的温度が低い補助空気となり、燃料改質触媒EGR通路73を利用する手段では、出力気筒3にて燃焼された後の排気ガスを利用するため、比較的温度が高い補助空気となる。したがって、燃料改質触媒2Bの温度状態に応じて、両者からの供給割合を修正することで、燃料改質触媒2Bの温度状態を良好に制御することが可能になる。
【0062】
本発明は、上記した実施形態に限定されず、本発明の技術的範囲に含まれる限り、種々の変形例を想定することができる。以下に各変形例について説明する。
【0063】
上記した実施形態の燃料改質触媒2Bで改質反応を良好に維持するためには、燃料改質触媒2Bに担持された触媒の温度を、所定の温度範囲に維持することが好ましい。そこで、
図2に示すように、燃料改質触媒2Bに導入される導入ガスの温度を検出する導入ガス温度検出装置101と、この導入ガスの温度を調整する導入ガス温度調整機構とを設ける。ECU100は、導入ガス温度検出装置101によって検出される導入ガス温度に基づき導入ガス温度調整機構を制御する。
【0064】
上記した導入ガス温度調整機構は、例えば、
図2に示すように、燃料改質部EGR通路711と、EGRガスクーラ71Aと、燃料改質触媒EGRガス量調量弁75’とを備える。燃料改質部EGR通路711の上流端は、排気通路61に接続される。燃料改質部EGR通路711の下流端は、第一改質ガス通路51に接続される。EGRガスクーラ71Aと、燃料改質触媒EGRガス量調量弁75’は、燃料改質部EGR通路711上に配設される。
【0065】
出力気筒3から排出される排気ガスは、運転状態に応じて400K〜800K程度の高温であることから、燃料改質部EGR通路711を介して第一改質ガス通路51に排気ガスを導入することで燃料改質触媒2Bの入口温度を上げることができる。ECU100は、導入ガス温度検出装置101によって検出された温度に基づいて、燃料改質触媒2Bに導入される導入ガスの温度が運転状態に応じて設定される所定の目標温度になるように、燃料改質触媒EGRガス量調量弁75’の開度をフィードバック制御する。上記したEGRガスクーラ71Aは必須の構成ではない。ただし、第一改質ガス通路51に導入されるEGRガスの温度は高ければ高いほど良いというわけではなく、好ましい温度範囲があるため、EGRガス温度を適切な温度範囲に調整するために、EGRガスクーラ71Aが燃料改質部EGR通路711に配設されていることが好ましい。燃料改質部EGR通路711、および燃料改質触媒EGRガス量調量弁75’は、必ずしも新たに設定する必要はなく、
図1に示した燃料改質部EGR通路71、燃料改質触媒EGRガス量調量弁75を、それぞれ燃料改質部EGR通路、および燃料改質触媒EGRガス量調量弁として利用することもできる。
【0066】
導入ガス温度調整機構は、燃料改質気筒2Aから排出される第一改質ガスの温度を調整する第一改質ガス温度調整機構を備えることができる。第一改質ガス温度調整機構の具体的な実施形態について以下に説明する。
【0067】
第一改質ガス温度調整機構の第一の実施形態は、
図1に示す燃料改質気筒EGR通路72を含む。燃料改質気筒EGR通路72により、燃料改質気筒2Aの入口に導入されるガスの温度(入口温度)を高くすることができる。具体的には、燃料改質気筒2Aの入口温度を高くするために、燃料改質気筒EGR通路72とともに、燃料改質気筒EGRガス量調整弁74を使用する。上記したように、出力気筒3から排出される排気ガスは、運転状態に応じて400K〜800K程度と高温であることから、燃料改質気筒2Aに導入されるガスに燃料改質気筒EGR通路72を介してEGRガスを導入することで、燃料改質気筒2Aの入口温度が昇温される。その結果として、燃料改質気筒2Aから排出される第一改質ガスの温度を昇温することができる。第一改質ガスの昇温の程度は、EGRガス調量弁74を制御することによって調整することができる。すなわち、EGRガス量調整弁74の制御によってEGRガス量を調整すれば、燃料改質気筒2Aの入口温度が調整され、その結果、第一改質ガスの温度が調整される。
【0068】
第一改質ガス温度調整機構の第二の実施形態は、可変動弁装置28を含む。可変動弁装置28により、燃料改質気筒2Aの有効圧縮比を調整することができる。燃料改質気筒2Aの有効圧縮比は、燃料改質気筒2Aにおける吸気バルブ26が閉弁した時点での燃料改質室23の容積と、ピストン22が圧縮上死点に達した時点での燃料改質室23の容積の比として算出される。
【0069】
上記有効圧縮比を変更することで、燃料改質気筒2Aの圧縮端ガス温度を調整することができる。「圧縮端ガス温度」とは、インジェクタ25から噴射された燃料によって形成された混合気が、ピストン22によって改質気筒内の容積が最も小さくなった状態における混合気の温度である。
【0070】
具体的には、上記可変動弁装置28によって吸気バルブ26の開閉タイミングを調整することで有効圧縮比が調整される。有効圧縮比が高くなるように調整することで圧縮端ガス温度を高くすることができ、有効圧縮比を低くすることで圧縮端ガス温度を低くすることができる。圧縮端ガス温度を高くすることで改質反応を促進し、結果として第一改質ガス温度を上昇させることができ、圧縮端ガス温度を低くすることで第一改質ガス温度を低下させることができる。なお、可変動弁装置28は、従来から知られているカムの位相を変更する方式のもの、カムリフトを変更する方式のもの、或いは電磁駆動式のバルブ装置等を採用することができ、可変動弁装置の形式に限定されない。
【0071】
第一改質ガス温度調整機構の第三の実施形態は、可変動弁装置29を含む。可変動弁装置29により、燃料改質気筒2Aの膨張比を調整することができる。具体的には、可変動弁装置29によって排気バルブ27の開閉タイミングを調整することで、膨張比を調整することができる。燃料改質気筒2Aの膨張比は、燃料改質気筒2Aにおける膨張行程において排気バルブ27が開弁した時点での容積と、燃料改質室23のピストン22が圧縮上死点に達した時点での燃料改質室23の容積との比として算出される。したがって、膨張行程における排気バルブ27の開弁時期を早めることで膨張比を低く、排気バルブ27の開弁時期を膨張行程における下死点に近づけることで膨張比を高くすることができる。そして、膨張比を低くすることで、燃料改質気筒2Aから排出される第一改質ガスの温度を高めることができ、膨張比を高くすることで、第一改質ガスの温度を低下させることができる。
【0072】
上記した第一改質ガス温度調整機構は、導入ガス温度検出装置101によって検出される導入ガス温度に基づいてフィードバック制御されることが好ましい。フィードバック制御される際のフィードバックゲイン等のパラメータは、実験、シミュレーション等により適宜設定される。
【0073】
上記した導入ガス温度調整機構の他の実施態様を、
図3を参照しながら説明する。この実施態様に係る導入ガス温度調整機構は、第一改質ガス通路51に配設される第一熱交換器200と、第一熱交換器200に出力気筒3から排出される排気ガスを流通させる燃料改質部EGR通路71と、前記燃料改質部EGR通路71を流通する排気ガスの流通量を調整する排気ガス流通量調整弁71Bと、燃料改質触媒2Bに導入される導入ガスの温度を検出する導入ガス温度検出装置101とを備える。
図1に示すように、燃料改質部EGR通路71は、燃料改質気筒EGR通路72、および燃料改質触媒EGR通路73に接続されている。
【0074】
図3に示すように、第一熱交換器200には、排気通路61から燃料改質部EGR通路71を介して高温の排気ガスが導入される。第一熱交換器200は、第一改質ガス通路51を通過する第一改質ガスに排気ガスの熱を伝えて、第一改質ガスを昇温する。排気ガス流通量調整弁71Bの開度を大きくすることで、第一熱交換器200を流通する排気ガスを増加させることができる。第一熱交換器200を流通する排気ガスを増加させることで、第一改質ガス通路51を通過する第一改質ガスの温度をより高くすることができる。上記した排気ガス流通量調整弁71Bの開度は、導入ガス温度検出装置101によって検出される導入ガス温度に基づいてフィードバック制御されることが好ましい。フィードバック制御される際のフィードバックゲイン等のパラメータは、実験、シミュレーション等により適宜設定される。この構成によれば、燃料改質気筒2Aから排出される第一改質ガスのガス成分になんら影響を与えることなく、第一改質ガスの温度を調整することができる。なお、本実施形態における燃料改質部EGR通路71は、「排気ガス連通路」に相当する。
【0075】
本発明は、上記した変形例に限定されず、さらに種々の変形例を含むことができる。以下に、その他の変形例について説明する。
【0076】
図4に示す変形例では、燃料改質部2は、第一改質ガス通路51に燃料を供給して燃料改質触媒2Bに導入されるガスの当量比を調整する当量比調整機構を備える。当量比調整機構は、追加燃料噴射インジェクタ110を含む。追加燃料噴射インジェクタ110は、第一改質ガス通路51に設けられている。追加燃料噴射インジェクタ110から供給される燃料量は、ECU100の制御信号に基づき制御される。
【0077】
例えば、機関の高負荷時において、出力気筒3に供給されるべき燃料ガスの全てを燃料改質気筒2Aのみでは生成できない場合がある。この場合、追加燃料噴射インジェクタ110によって燃料改質触媒2Bに燃料を追加供給することで、出力気筒3に供給されるべき燃料ガスの不足分を補うことができる。
【0078】
また、上述したように、燃料改質気筒2Aに当量比が高い過濃混合気を導入して改質反応を生起しても、燃料改質気筒2Aにおいて改質しきれずに第一改質ガスに高級炭化水素を含む燃料が残存してしまう場合がある。これは、出力気筒3に多くの燃料量を供給する必要がある高負荷運転時に顕著になる。そこで、機関の運転状態に応じて算出される燃料改質部2に供給されるべき燃料のうち、燃料改質気筒2Aのインジェクタ25から燃料改質室23内に供給される燃料量を、燃料改質気筒2Aにおいて燃料が良好に改質し得る燃料量にとどめる。そして、燃料改質部2に供給されるべき燃料量から燃料改質室23内に供給される燃料量を引いた残りの燃料を、追加燃料噴射インジェクタ110から噴射する。追加燃料噴射インジェクタ110によって追加された燃料、および燃料改質気筒2Aで改質しきれなかった高級炭化水素を含む第一改質ガスは、燃料改質触媒2Bによって改質される。これにより、良質かつ十分な量の燃料ガスを出力気筒3に供給することができる。
【0079】
このように、追加燃料噴射インジェクタ110は、第一改質ガス通路51に燃料を追加して供給することで、燃料改質触媒2Bに導入されるガスの当量比を調整する。
【0080】
図4を参照しながら、更に別の変形例について説明する。燃料改質触媒2Bでは、以下の式(2)で示されるように、炭素数の異なる種々の炭化水素をH
2、COに変換する水蒸気改質反応が生起される。
【0082】
また、燃料改質触媒2Bの改質反応によりCOとH
2との比率を変化させる反応として、以下の式(3)で示す水性ガスシフト反応がある。
【0084】
上記した式(2)、(3)で示す改質反応を適宜組み合わせることで、燃料改質触媒2Bによって排出される第二改質ガス中の主要改質ガス成分であるH
2、CO、低級炭化水素(メタン等)の比率を任意に調整することができる。
【0085】
上記した式(2)、(3)で示す改質反応を実現する手段として、第一改質ガス通路51の燃料改質触媒2Bの入口部に水噴射インジェクタ120から構成される水供給機構を設置する。そして、運転状態に応じて要求される改質ガス成分割合に基づいて、水噴射インジェクタ120から、所定の水を燃料改質触媒2Bに対して供給する。
【0086】
上記した水噴射インジェクタ120から水を噴射する場合、内燃機関1に図示しない水タンクを付加して定期的に水を補給することとしても良いが、排気通路61の経路上に排気ガス冷却装置を配設することにより、排気ガス中に含まれる水蒸気を取り出す凝縮水収集機構を配設することが好ましい。この凝縮水を水タンクに貯留するようにすれば水を補給する必要をなくすことができる。
【0087】
図5を参照しながら、さらに別の変形例について説明する。
図5に示す変形例では、燃料改質部2は、燃料改質気筒2Aに導入される導入ガスと、燃料改質触媒2Bから排出される第二改質ガスとが流通する第二熱交換器300を備える。第二熱交換器300は、導入ガスと第二改質ガスとの熱交換により、第二改質ガスを冷却しつつ燃料改質気筒2Aに導入されるガスの昇温を行う。
【0088】
上記したように、燃料改質触媒2Bにおける反応は高温下(600K以上)で行われることから、
図1に示す実施形態では、燃料改質触媒2Bから排出される第二改質ガスを改質ガス冷却器53によって冷却している。本変形例は、第二改質ガスが有する熱エネルギーを用いて、燃料改質気筒2Aに導入されるガスを昇温しつつ、第二改質ガスを冷却するようにしたものである。
【0089】
上記第二熱交換器300によれば、第二改質ガスの熱を燃料改質気筒2Aに導入されるガスに供給して昇温することで、燃料改質気筒2Aの圧縮端ガス温度を上昇させることができ、高い当量比であっても高い改質効率を得ることができる。さらに、燃料改質触媒2Bの反応熱を熱回収していることにもなり、内燃機関1のシステム全体の効率向上に貢献する。
【0090】
上述した実施形態では、各変形例を個別に説明したが、それぞれが独立して内燃機関1に備えられることに限定されず、各変形例が同時に備えられるように構成してもよい。
【0091】
例えば、第一改質ガス温度調整機構の例として、燃料改質気筒2Aの入口温度を調整する機構、燃料改質気筒2Aの有効圧縮比を調整する機構、および燃料改質気筒2Aの膨張比を調整する機構、を、それぞれ個別に説明したが、これらを適宜組み合わせて、第一改質ガスの温度を調整することができる。
【0092】
また、上記した第一改質ガス通路51に対して追加燃料噴射インジェクタ110を配設して燃料改質触媒2Bに追加燃料を供給する構成、第一改質ガス通路51に対して水噴射インジェクタ120を配設して燃料改質触媒2Bに水を供給する構成をそれぞれ説明したが、これらを同時に配設することももちろん可能である。
【0093】
さらに、上記した第一熱交換器200、第二熱交換器300についても同時に構成することが可能であり、個別に備えることに限定されない。
【0094】
上記した実施形態の内燃機関1は、定置式の発電機に適用される内燃機関として説明したが、本発明はこれに限定されず、舶用、車両用等、他の用途に適用されることを含む。