特許第6789910号(P6789910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6789910電池ユニットおよび電池ユニットの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789910
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】電池ユニットおよび電池ユニットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20201116BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20201116BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H02J7/00 H
   H02J7/00 S
   H01M10/48 P
   H01M10/44 P
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-201824(P2017-201824)
(22)【出願日】2017年10月18日
(65)【公開番号】特開2019-75933(P2019-75933A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】上村 秀一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 信二
【審査官】 星野 昌幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−85461(JP,A)
【文献】 特開平10−341535(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/076243(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/22
H01M 10/42 −10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルと、前記複数の電池セルの電圧を検出する検出回路と、を備えた組電池と、
前記複数の電池セルに流れる電流を検出する電流センサと、
前記組電池からの放電電流および前記組電池への充電電流が流れる経路の抵抗および電気的接続状態を切替え可能に構成されたプリチャージ制御部と、
前記経路の電気的接続状態を切替え可能であって、前記経路の電気的接続状態を切替え可能に構成された充放電制御部と、
前記電流センサで検出された電流と、前記検出回路で検出された前記複数の電池セルの電圧と、外部電圧と、を取得し、前記プリチャージ制御部、および、前記充放電制御部の動作を制御可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、起動時に、前記経路の抵抗を大きくして前記組電池の充電および放電が可能な状態とし、前記複数の電池セルの電圧と前記外部電圧とを比較し、前記複数の電池セルの電圧が前記外部電圧よりも小さいときに、前記充放電制御部により前記組電池への充電電流を遮断し、前記プリチャージ制御部により前記経路の抵抗を小さくし、前記外部電圧を下げるように外部に要求し、前記外部電圧が低下したと判断したときに、前記充放電制御部により前記組電池の充電を可能とする、電池ユニット。
【請求項2】
前記プリチャージ制御部は、前記組電池からの放電電流および前記組電池への充電電流が流れる前記経路の電気的接続状態を切替えるメイン切替器と、前記メイン切替器と並列に接続し、互いに直列に接続した抵抗器およびプリチャージ切替器と、を備え、
前記充放電制御部は、前記経路に設けられた充電制御用切替器と、前記組電池からの放電電流が流れる向きを順方向として前記充電制御用切替器と並列に接続した逆流防止素子と、前記経路に設けられた放電制御用切替器と、前記組電池への充電電流が流れる向きを順方向として前記放電制御用切替器と並列に接続した逆流防止素子と、を備える、請求項1記載の電池ユニット。
【請求項3】
前記プリチャージ制御部は、前記充放電制御部と、前記前記充放電制御部と並列に接続し、互いに直列に接続した抵抗器およびプリチャージ切替器と、を備え、
前記充放電制御部は、前記経路に設けられた充電制御用切替器と、前記組電池からの放電電流が流れる向きを順方向として前記充電制御用切替器と並列に接続した逆流防止素子と、前記経路に設けられた放電制御用切替器と、前記組電池への充電電流が流れる向きを順方向として前記放電制御用切替器と並列に接続した逆流防止素子と、前記充電制御用切替器および前記放電制御用切替器と並列に接続し、互いに直列に接続した抵抗器およびプリチャージ切替器と、を備える、請求項1記載の電池ユニット。
【請求項4】
前記制御部は、起動時に、前記複数の電池セルの電圧と前記外部電圧とを比較して、前記複数の電池セルの電圧が前記外部電圧よりも大きいときに、前記充放電制御部により前記組電池の充電および放電を可能な状態とし、前記プリチャージ制御部により前記経路の抵抗を小さくする、請求項1乃至3のいずれか1項記載の電池ユニット。
【請求項5】
複数の電池セルと、前記複数の電池セルの電圧を検出する検出回路と、を備えた組電池と、
前記複数の電池セルに流れる電流を検出する電流センサと、
前記組電池からの放電電流および前記組電池への充電電流が流れる経路の抵抗および電気的接続状態を切替え可能に構成されたプリチャージ制御部と、
前記経路の電気的接続状態を切替え可能であって、前記経路の電気的接続状態を切替え可能に構成された充放電制御部と、を備えた電池ユニットの制御方法であって、
起動時に、前記プリチャージ制御部により、前記経路の抵抗を大きくし、前記充放電制御部により前記組電池の充電および放電が可能な状態とし、
前記複数の電池セルの電圧と外部電圧とを比較し、
前記複数の電池セルの電圧が前記外部電圧よりも小さいときに、前記充放電制御部により前記組電池への充電電流を遮断し、前記プリチャージ制御部により前記経路の抵抗を小さくし、
前記外部電圧を下げるように外部に要求し、
前記外部電圧が低下したと判断したときに、前記充放電制御部により前記組電池の充電を可能とする、電池ユニットの制御方法。
【請求項6】
前記複数の電池セルに流れる電流を検出する電流センサの検出値に基づいて、前記外部電圧が低下したか否か判断する、請求項5記載の電池ユニットの制御方法。
【請求項7】
前記複数の電池セルの電圧が前記外部電圧よりも大きいときに、前記充放電制御部により前記組電池の充電および放電を可能とし、前記プリチャージ制御部により前記経路の抵抗を小さくする請求項5又は請求項6記載の電池ユニットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電池ユニットおよび電池ユニットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商用電源などから供給される交流電力を所定の直流電力に変換して負荷に供給する電源装置が普及している。例えば、商用電源などから電源装置への電力供給が停止したときに、負荷への電力供給が突然停止することを回避するために、バックアップ用の電池装置から負荷へ電力を供給することが行われている。
【0003】
電源装置に負荷が接続され、電源装置から負荷へ電力を供給している状態において、主回路に電池ユニットを接続すると、電源装置の出力電圧と電池ユニットの電圧との差に応じて、電池ユニットへ過大な電流が流れ込むことがある。例えば、電池ユニットに搭載された電池セルの抵抗が小さい場合には、電源装置側で電池ユニットの組電池の電圧を検出した後に、過大な充電電流を回避するために主回路の電圧を低減させたとしても、電源装置側での制御が間に合わずに電池ユニットが故障する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−102595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、過大な電流が電池ユニットに流れ込むことを回避するために、例えば、プリチャージ抵抗を介して充電電流を組電池に供給する方法が用いられている。しかしながら、電源装置の出力電圧と電池ユニットの電圧との差が大きい場合には、プリチャージを解除するまでの時間が長くなり、電源装置の設定に必要な時間を短縮することが困難であった。
【0006】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、電源装置に電池ユニットを取り付ける際の設定時間を短縮し、電池ユニットの設定作業に要するコストを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態による電池ユニットは、複数の電池セルと、前記複数の電池セルの電圧を検出する検出回路と、を備えた組電池と、前記複数の電池セルに流れる電流を検出する電流センサと、前記組電池からの放電電流および前記組電池への充電電流が流れる経路の抵抗および電気的接続状態を切替え可能に構成されたプリチャージ制御部と、前記経路の電気的接続状態を切替え可能であって、前記経路の電気的接続状態を切替え可能に構成された充放電制御部と、前記電流センサで検出された電流と、前記検出回路で検出された前記複数の電池セルの電圧と、外部電圧と、を取得し、前記プリチャージ制御部、および、前記充放電制御部の動作を制御可能な制御部と、を備え、前記制御部は、起動時に、前記経路の抵抗を大きくして前記組電池の充電および放電が可能な状態とし、前記複数の電池セルの電圧と前記外部電圧とを比較し、前記複数の電池セルの電圧が前記外部電圧よりも小さいときに、前記充放電制御部により前記組電池への充電電流を遮断し、前記プリチャージ制御部により前記経路の抵抗を小さくし、前記外部電圧を下げるように外部に要求し、前記外部電圧が低下したと判断したときに、前記充放電制御部により前記組電池の充電を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の電池ユニットを含む電源システムの一構成例を説明するための図である。
図2図2は、実施形態の電池ユニットを搭載した電池装置の一構成例を概略的に示す図である。
図3図3は、実施形態の電池ユニットの一構成例を概略的に示す図である。
図4図4は、実施形態の電池ユニットの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、実施形態の電池ユニットの他の構成例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の電池ユニットおよび電池ユニットの制御方法について、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の電池ユニットを含む電源システムの一構成例を説明するための図である。
【0010】
この例では、電源システムは、一例として、通信機器の基地局など、24時間365日稼動している設備へ電源を供給するものとして説明する。本実施形態の電源システムは、電源装置(SMPS:Switch Mode Power Supply)20と、電池装置BSと、を備えている。
【0011】
電源装置20には電力インタフェース10から交流電力が供給される。電力インタフェース10は、商用電源(Grid)およびディーゼル発電機(DG)と電気的に接続している。商用電源又はディーゼル発電機から供給された交流電力は、電力インタフェース10により電源装置20へ入力可能な交流電力に変換され、電源装置20に供給される。電源装置20は、電力インタフェース10から供給された交流電力を直流電力に変換して、負荷30へ供給する。本実施形態では、電源装置20は、例えば約48[V]の直流電圧を出力する。
【0012】
電源装置20は、複数の整流器22と、コントローラ24と、を備えている。
複数の整流器22のそれぞれは、高電位側の主回路配線MCPと低電位側の主回路配線MCNとの間に接続している。複数の整流器22のそれぞれは、例えばMOSFETやIGBTなどのスイッチング素子を備えている。複数の整流器22は、それぞれスイッチング素子を高速に切替えることにより交流電力を直流電力に変換し、主回路配線MCP、MCNを介して負荷30へ直流電力を供給可能である。
【0013】
コントローラ24は、複数の整流器22の動作を制御して、負荷30および電池装置BSへ供給する直流電力の電圧や電流を制御する。
なお、コントローラ24と電池装置BSとは、CAN(control area network)プロトコルやRS485規格などに基づくシリアル通信を行うことが可能に構成されていてもよい。コントローラ24は、電池装置BSから得られた情報に基づいて、負荷30および電池装置BSへ供給する電流を制御してもよい。また、コントローラ24は、電池装置BSから取得したデータやアラームを外部(NOC:network operations center)へ通知可能に構成されてもよい。
【0014】
コントローラ24は、例えば、CPU(central processing unit)やMPU(micro processing unit)などのプロセッサを少なくとも1つと、プロセッサにより実行されるプログラムが格納されたメモリと、を備えた演算回路である。
【0015】
電池装置BSは、負荷30と並列に主回路配線MCP、MCNと接続している。電池装置BSは、主回路配線MCP、MCNを介して負荷30へ放電電流を供給することができる。また、電池装置BSは、主回路配線MCP、MCNを介して供給される充電電流により、内蔵された組電池(図3に示す)を充電することができる。
【0016】
図2は、実施形態の電池ユニットを搭載した電池装置の一構成例を概略的に示す図である。
電池装置BSは、電源装置20の高電位側の主回路配線MCPと電気的に接続する端子Pと、低電位側の主回路配線MCNと電気的に接続する端子Nと、少なくとも1つの電池ユニットUNTと、を備えている。本実施形態の電池装置BSは複数の電池ユニットUNTを備えている。
【0017】
複数の電池ユニットUNTは、端子Pと電気的に接続した高電位側の充放電回路と、端子Nと電気的に接続した低電位側の充放電回路との間に接続している。
なお、複数の電池ユニットUNTは同様の構成であるため、以下では、1つの電池ユニットUNTの構成例を説明し、他の電池ユニットUNTの構成についての説明は省略する。
【0018】
図3は、実施形態の電池ユニットの一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電池ユニットUNTは、組電池BTの複数の電池セルと、電池管理回路BMUと、正極端子TPと、負極端子TNと、を備えている。電池管理回路BMUは、アドレススイッチ1と、電源スイッチ2と、表示部3と、組電池BTの検出回路と、プリチャージ制御部4と、充放電制御部5と、ヒューズFと、電流センサCSSと、制御部CTRと、を備えている。
【0019】
正極端子TPは、高電位側の充放電回路を介して、電池装置BSの端子Pと電気的に接続する。
負極端子TNは、低電位側の充放電回路を介して、電離装置BSの端子Nと電気的に接続する。
【0020】
アドレススイッチ1は、例えば電池ユニットUNTの筐体から外部に露出し、ユーザが操作可能なディップスイッチであって、例えば、制御部CTRが通信を行う際に用いるアドレスなどの識別子を設定するスイッチである。
【0021】
電源スイッチ2は、例えば電池ユニットUNTの筐体から外部に露出し、ユーザが操作可能なスイッチである。ユーザが電源スイッチ2を操作して、電池ユニットUNTを起動させると、例えば充放電回路PC、NCから制御回路CTRへ電源が供給される。
【0022】
表示部3は、例えば電池ユニットUNTの筐体から外部に露出して、ユーザに電池ユニットUNTの状態を知らせるための構成であって、制御部CTRにより動作を制御される。本実施形態では、表示部3は例えば一又は複数のLED(light emitting diode)を備え、制御部CTRの制御により、組電池BTの充電状態および放電状態や、故障等に応じて点灯し、ユーザに電池ユニットUNTの状態を知らせることができる。
【0023】
組電池BTは、複数の電池セル(図示せず)と、電池セルの電圧と組電池BTの温度とを検出する検出回路(図示せず)と、を備えている。
組電池BTの検出回路は、制御部CTRと通信可能に構成され、検出した電圧および温度に相当する値を周期的に制御部CTRへ出力する。
【0024】
複数の電池セルそれぞれは、例えば、リチウムイオン電池である。本実施形態では、組電池BTは、例えば、2個の電池セルを並列に接続したものを21個直列に接続した、42個の電池セルを備えている。
【0025】
組電池BTの正極端子は、充放電制御部5(放電制御用切替器DSと充電制御用切替器CSと)を介して正極端子Pと電気的に接続可能である。組電池BTの負極端子は、プリチャージ制御部4(メイン切替器MS又はプリチャージ切替器PS)と、ヒューズFとを介して負極端子Nと電気的に接続可能である。
【0026】
電流センサCSSは、組電池BTの出力電流を検出する。電流センサCSSで検出された電流に相当する値は、制御部CTRに供給される。
【0027】
プリチャージ制御部4は、高電位側の充放電回路PC又は低電位側の充放電回路NCに設けられ、組電池BTからの放電電流および組電池BTへの充電電流が流れる経路の抵抗および電気的接続状態を切替え可能に構成されている。プリチャージ制御部4は、メイン切替器MSと、プリチャージ切替器PSと、抵抗器Rと、を備えている。
【0028】
メイン切替器MSは、例えば電界効果トランジスタ(FET:field effect transistor)である。メイン切替器MSは、高電位側の充放電回路PC又は低電位側の充放電回路NCに設けられ、組電池BTからの放電電流および組電池BTへの充電電流が流れる経路の電気的接続状態を切替える。図3に示す例では、メイン切替器MSは、組電池BTの負極端子と電池ユニットUNTの負極端子Nとを接続する配線に設けられ、組電池BTの負極端子と電池ユニットUNTの負極端子Nとの電気的接続状態を切替える。メイン切替器MSは、制御部CTRにより動作を制御される。
【0029】
プリチャージ切替器PSは、例えば電界効果トランジスタであって、抵抗器Rと直列に接続している。プリチャージ切替器PSと抵抗器Rとは、メイン切替器MSと並列に接続している。プリチャージ切替器PSは、制御部CTRにより動作を制御される。
【0030】
充放電制御部5は、放電制御用切替器DSと、充電制御用切替器CSと、逆流防止素子D1、D2と、を備えている。充放電制御部5は、高電位側の充放電回路PC又は低電位側の充放電回路NCに設けられ、組電池BTへの充電電流が流れる経路の電気的接続状態を切替え可能であって、組電池BTからの放電電流が流れる経路の電気的接続状態を切替え可能に構成されている。
【0031】
充電制御用切替器CSは、例えば電界効果トランジスタである。充電制御用切替器CSは、高電位側の充放電回路PC又は低電位側の充放電回路NCに設けられ、組電池BTへの充電電流が流れる経路の電気的接続状態を切替え可能に構成されている。図3に示す例では、充電制御用切替器CSは、組電池BTの正極端子と、電池ユニットUNTの正極端子TPとを接続する充放電回路PCに設けられている。充電制御用切替器CSには、組電池BTからの放電電流が流れる方向を順方向とした逆流防止素子D2が並列に接続している。逆流防止素子D2はダイオードである。充電制御用切替器CSは、制御部CTRにより動作を制御される。
【0032】
放電制御用切替器DSは、例えば電界効果トランジスタである。放電制御用切替器DSは、高電位側の充放電回路PC又は低電位側の充放電回路NCに設けられ、組電池BTからの放電電流が流れる経路の電気的接続状態を切替え可能に構成されている。図3に示す例では、放電制御用切替器DSは、組電池BTの正極端子と、電池ユニットUNTの正極端子TPとを接続する充放電回路PCにおいて、充電制御用切替器CSと直列に配置されている。放電制御用切替器DSには、組電池BTへの充電電流が流れる方向を順方向とした逆流防止素子D1が並列に接続している。逆流防止素子D1はダイオードである。放電制御用切替器DSは、制御部CTRにより動作を制御される。
【0033】
制御部CTRは、組電池BTの検出回路と、コントローラ24と通信可能に構成されている。制御部CTRは、組電池BTの検出回路、電流センサCSS、および、充放電回路PC、NCから得られる情報に基づいて、メイン切替器MS、プリチャージ切替器PS、放電制御用切替器DS、および、充電制御用切替器CSの動作を制御することができる。
【0034】
制御部CTRは、例えば、CPUやMPUなどのプロセッサを少なくとも1つと、プロセッサにより実行されるプログラムが格納されたメモリと、を備えた演算回路である。
【0035】
以下に、上述の電池ユニットUNTの動作の一例について説明する。
本実施形態の電池ユニットUNTを含む電源システムは、例えば、通常運転時には、商用電源から供給された電力を所定の直流電力に変換し、負荷30へ電源を供給している。このとき、組電池BTの負極端子はメイン切替器MSを介して電源装置20の主回路MCNと電気的に接続し、組電池BTの正極端子は放電制御用切替器DSおよび充電制御用切替器CSを介して主回路MCPと電気的に接続されている状態である。
【0036】
例えば、商用電源の停電等により、商用電源から電源装置20への電力入力が停止したときには、主回路MCP、MCNの電圧が下がり電池装置BSから負荷30へ電源が供給される。
【0037】
その後、商用電源が停電から復帰すると、電源装置20は商用電源から供給された交流電力を直流電力に変換して負荷30へ電源を供給するとともに、電池装置BSの組電池BTの充電を行う。
【0038】
例えば、電池装置BSが接続されていない電源装置20から負荷30へ電源を供給している状態において、電池装置BSを主回路MCP、MCNに接続する場合、電池ユニットUNTの組電池BTの電圧が主回路MCP、MCNの間の電圧よりも低いときには組電池BTへ過大な電流が流れ込む可能性がある。
【0039】
また、電池ユニットUNTの組電池BTは、出荷された時点において満充電ではなく例えば50%程度の充電状態であることがある。このとき、例えば電池装置BSの複数の電池ユニットの1つを新しい電池ユニットUNTに交換するときに、新しく取り付けた電池ユニットUNTの組電池BTの電圧が、主回路MCP、MCNの間の電圧よりも低くなり、組電池BTへ過大な電流が流れ込む可能性があった。
【0040】
これに対し、本実施形態の電池ユニットUNTは、以下のように動作することにより、組電池BTへ過大な電流が流れ込むことを回避することができる。
【0041】
図4は、実施形態の電池ユニットの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
電池ユニットUNTが起動すると、制御部CTRは、プリチャージ切替器PSと、放電制御用切替器DSと、充電制御用切替器CSと、を閉じた状態とし、メイン切替器MSを開いた状態として、組電池BTをプリチャージ状態とする(ステップS1)。プリチャージ状態では、組電池BTの負極端子は抵抗器Rを介して負極端子TNと電気的に接続し、組電池BTに過大な電流が流れることを回避することができる。
【0042】
続いて、制御部CTRは、組電池BTの電圧(複数の電池セルの電圧)と、外部電圧とを比較する(ステップS2)。本実施形態において、外部電圧は、例えば、高電位側の充放電回路PC(若しくは端子P、正極端子TP)と低電位側の充放電回路NC(若しくは端子N、負極端子TN)との間の電圧である。なお、外部電圧は、電流センサCSSで検出された電流の値、組電池BTの電圧の値、抵抗器Rの抵抗値などを用いて演算された値であってもよい。
【0043】
制御部CTRは、組電池BTの電圧と上記外部電圧とを比較し、組電池BTの電圧が外部電圧よりも大きい、もしくは、これらの差が所定の閾値よりも小さい時に、組電池BTの充電および放電が可能な状態でプリチャージ状態を解除し、電池ユニットUNTを通常運転が可能な状態とする(ステップS3)。すなわち、制御部CTRは、充電制御用切替器CSを閉じた状態とし、放電制御用切替器DSを閉じた状態とし、メイン切替器MSを閉じた状態とする。このとき、制御部CTRは、プリチャージ切替器PSを開いた状態としてもよく、閉じた状態としてもよい。
【0044】
制御部CTRは、組電池BTの電圧と上記外部電圧とを比較し、組電池BTの電圧が外部電圧よりも小さく、かつ、組電池BTの電圧と外部電圧との差が所定の閾値以上であるとき、組電池BTの放電のみが可能な状態でプリチャージ状態を解除する(ステップS4)。すなわち、制御部CTRは、充電制御用切替器CSを開いた状態とし、放電制御用切替器DSを閉じた状態とし、メイン切替器MSを閉じた状態とし、プリチャージ切替器PSを開いた状態とする。この状態では、組電池BTの負極端子はメイン切替器MSを介して負極端子TNと電気的に接続し、組電池BTの正極端子は逆流防止素子D2および放電制御用切替器DSを介して正極端子TPと電気的に接続するため、組電池BTへの充電電流が遮断される。
【0045】
組電池BTの放電のみを可能とした状態で、例えば電源装置20の動作を停止し(若しくは商用電源などからの電力供給を停止し)て、外部電圧を低下させるように外部に要求する(ステップS5)。
【0046】
例えば電源装置20が動作を停止すると、電池ユニットUNTの外部電圧が低下し、自動的に、組電池BTからの放電が行われる。このとき、制御部CTRは表示部3を制御して、電源装置20の動作を停止した後に再起動するよう要求を表示してもよい。また、電源装置20と制御部CTRとが通信可能に構成されている場合には、電源装置20へ動作を一時的に停止するように要求する信号を送信してもよい。
【0047】
制御部CTRは、例えば電流センサCSSで検出された電流の値により、外部電圧が低下しているか否か判断することができる。また、制御部CTRは、例えば組電池BTの電圧と外部電圧を監視することにより、外部電圧が低下したか否か判断することができる。制御部CTRは、外部電圧が低下し、組電池BTの放電が開始されたことを検出すると(ステップS6)、充電制御用切替器CSを閉じた状態として、組電池BTの充電が可能な状態とする(ステップS7)。
【0048】
制御部CTRは、この段階において、表示部3により電源装置20の再起動の要求を表示してもよい。また、電源装置20と制御部CTRとが通信可能に構成されている場合には、制御部CTRは、電源装置20へ再起動を要求する信号を通知してもよい。
【0049】
また、制御部CTRは、表示部3を制御して、組電池BTが通常動作が可能な状態となったことを表示してもよい。また、電源装置20と制御部CTRとが通信可能に構成されている場合には、制御部CTRは、組電池BTが通常動作が可能な状態となったことを通知する信号を電源装置20へ送信してもよい。
【0050】
この状態で、電源装置20を再起動する(若しくは、商用電源から電源装置20への電力供給を再開する)と、電源装置20は商用電源から供給された交流電力を直流電力へ変換し、主回路MCP、MCNを介して負荷30および電池装置BSへ直流電力を供給する。
【0051】
電池ユニットUNTの組電池BTは、電源装置BSから供給される直流電力により充電され、組電池BTの電圧と外部電圧との均衡がとれる状態で充電が完了する。
【0052】
上記のように、本実施形態の電池ユニットUNTによれば、電源装置20と電池ユニットUNTとを接続する際の過大な充電電流を制限し、これによる機器故障を回避することができる。
【0053】
また、電池ユニットUNTを放電のみ可能な状態で電源装置20を停止ししたのち、再起動することにより、電池ユニットUNTを電源装置20に接続して通常運転可能な状態とすることができる。
【0054】
上記のように、電池ユニットUNTを取り付けたときの設定時間は、殆ど電源装置20の停止および再起動に要する時間となり、設定に要する時間を短くすることができる。これにより、電池ユニットUNTが通常運転可能となるまでの時間を短くすることができ、作業時間の短縮(つまり作業コスト削減)をはかることができる。
【0055】
次に、電池ユニットUNTの他の構成例について図面を参照して説明する。
図5は、実施形態の電池ユニットの他の構成例を概略的に示す図である。
この例では、電池ユニットUNTは、プリチャージ制御部4および充放電制御部5に替えて、充放電プリチャージ制御部6を備えている。充放電プリチャージ制御部6は、図3に示した電池ユニットUNTのプリチャージ制御部4と充放電制御部5との機能を合わせ持つ構成である。
【0056】
充放電プリチャージ制御部6は、高電位側の充放電回路PC又は低電位側の充放電回路NCに設けられている。充放電プリチャージ制御部6は、組電池BTからの放電電流および組電池BTへの充電電流が流れる経路の抵抗および電気的接続状態を切替え可能であって、かつ、組電池BTへの充電電流が流れる経路の電気的接続状態および組電池BTからの放電電流が流れる経路の電気的接続状態を切替え可能に構成されている。
【0057】
充放電プリチャージ制御部6は、プリチャージ切替器PSと、抵抗器Rと、放電制御用切替器DSと、充電制御用切替器CSと、を備えている。
【0058】
充電制御用切替器CSは、例えば電界効果トランジスタである。充電制御用切替器CSは、組電池BTの正極端子と、電池ユニットUNTの正極端子TPとを接続する充放電回路PCに設けられている。充電制御用切替器CSには、組電池BTからの放電電流が流れる方向を順方向とした逆流防止素子D2が並列に接続している。逆流防止素子D2はダイオードである。充電制御用切替器CSは、制御部CTRにより動作を制御される。
【0059】
放電制御用切替器DSは、例えば電界効果トランジスタである。放電制御用切替器DSは、組電池BTの正極端子と、電池ユニットUNTの正極端子TPとを接続する充放電回路PCにおいて、充電制御用切替器CSと直列に配置されている。放電制御用切替器DSには、組電池BTへの充電電流が流れる方向を順方向とした逆流防止素子D1が並列に接続している。逆流防止素子D1はダイオードである。放電制御用切替器DSは、制御部CTRにより動作を制御される。
【0060】
プリチャージ切替器PSは、例えば電界効果トランジスタであって、抵抗器Rと直列に接続している。プリチャージ切替器PSと抵抗器Rとは、充電制御用切替器CSおよび放電制御用切替器DSと並列に接続している。プリチャージ切替器PSは、制御部CTRにより動作を制御される。
【0061】
この例では、放電制御用切替器DSおよび充電制御用切替器CSの両方を開く又は閉じることにより、図3に示す電池ユニットUNTのメイン切替器MSを開く又は閉じることと同じ機能として使用している。すなわち、充放電プリチャージ制御部6は、メイン切替器MSの代わりに充放電制御部5を含む、プリチャージ制御部4を備えている。
【0062】
例えば、この例では、図4に示すステップS1にて、制御部CTRは、メイン切替器MSを開いた状態とすることに替えて、放電制御用切替器DSおよび充電制御用切替器CSの両方を開いた状態とする。
【0063】
また、例えば、図4に示すステップS3にて、制御部CTRは、メイン切替器MSを閉じた状態とすることに替えて、放電制御用切替器DSおよび充電制御用切替器CSの両方を閉じた状態とする。
【0064】
上記のように放電制御用切替器DSおよび充電制御用切替器CSの動作を制御することにより、図3に示す電池ユニットUNTと同様の効果を得ることができる。
すなわち、電池ユニットUNTが通常運転可能となるまでの時間を短くすることができ、作業時間の短縮(つまり作業コスト削減)をはかることができる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0066】
なお上述の実施形態において、複数の電池ユニットUNTそれぞれは、図示しない通信端子を備えていてもよい。電池ユニットUNTは、通信端子に電気的に接続した通信バス配線(例えばCANバス配線)を介してコントローラ24と通信可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
BS…電池装置、BT…組電池、MS…メイン切替器、PS…プリチャージ切替器、CS…充電制御用切替器、DS…放電制御用切替器、D1…逆流防止素子、D2…逆流防止素子、CTR…制御部、CSS…電流センサ。
図1
図2
図3
図4
図5