特許第6789968号(P6789968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーディー プラスの特許一覧

特許6789968熱抵抗が向上した電子チップデバイス、および関連する製造プロセス
<>
  • 特許6789968-熱抵抗が向上した電子チップデバイス、および関連する製造プロセス 図000002
  • 特許6789968-熱抵抗が向上した電子チップデバイス、および関連する製造プロセス 図000003
  • 特許6789968-熱抵抗が向上した電子チップデバイス、および関連する製造プロセス 図000004
  • 特許6789968-熱抵抗が向上した電子チップデバイス、および関連する製造プロセス 図000005
  • 特許6789968-熱抵抗が向上した電子チップデバイス、および関連する製造プロセス 図000006
  • 特許6789968-熱抵抗が向上した電子チップデバイス、および関連する製造プロセス 図000007
  • 特許6789968-熱抵抗が向上した電子チップデバイス、および関連する製造プロセス 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789968
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】熱抵抗が向上した電子チップデバイス、および関連する製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20201116BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01L23/36 A
   H01L23/12 301J
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-549680(P2017-549680)
(86)(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公表番号】特表2018-509771(P2018-509771A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】EP2016056204
(87)【国際公開番号】WO2016150934
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】1552457
(32)【優先日】2015年3月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513280061
【氏名又は名称】スリーディー プラス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バル,クリスチャン
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0267222(US,A1)
【文献】 特開2004−200316(JP,A)
【文献】 特開平11−251483(JP,A)
【文献】 特開2006−222235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱抵抗が向上した少なくとも1つの電子チップデバイスからなる積層体であって、電気相互接続リンクを有する少なくとも1つの電気接続パッドと、前記チップの面の上に配置された少なくとも1つの熱パッドと、少なくとも1つの熱交換素子と、熱パッドと熱交換素子との間の、電気的に接続されていない少なくとも1つの熱リンクと、を備える積層体において、熱交換素子の一部分であって、電子チップの、電気相互接続リンクを有する電気接続パッドに面して位置している前記一部分が、前記電気相互接続リンクとの接触を防ぐアパーチャを備える積層体。
【請求項2】
前記熱交換素子が、対応するチップの隅に面して配置されたタブを備える請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記電子チップデバイスが、前記熱交換素子の一部分であって、アパーチャを備える熱パッドに面して配置されている前記一部分を備える請求項1記載の積層体。
【請求項4】
前記電子チップデバイスの前記熱リンクが、少なくとも1つの熱伝導性ワイヤを備える請求項1記載の積層体。
【請求項5】
少なくとも1つの熱パッドを備えるチップの前記面が、前記チップの能動面である請求項1記載の積層体。
【請求項6】
熱交換素子の一部分であって、電子チップの、電気相互接続リンクを有する電気接続パッドに面して位置している前記一部分が、前記電気相互接続リンクと接触しないように高くなっている請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
少なくとも1つの熱パッドを備えるチップの前面が、前記チップの受動面である請求項1記載の積層体。
【請求項8】
前記電子チップデバイスが、基板であって、能動面の、電気相互接続リンクを有する電気接続パッドに面して位置する一部分に、前記電気相互接続リンクと接触しないようにアパーチャが設けられた基板を備える請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
電子チップデバイス、または電子チップデバイスからなる積層体を製造する方法であって、電気接続パッドのための少なくとも1つのアパーチャと、熱パッドのための少なくとも1つのアパーチャと、を備えるマスクを用いた、1つのチップまたは複数のチップの能動面でのマスク転写ステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子チップデバイス、および関連する製造方法に関する。電子チップデバイスは、電子チップそれ自体および追加的な要素を意味すると理解される。
【背景技術】
【0002】
熱伝導率が非常に高いラジエータまたは熱交換器を使用して、電子チップまたは電子チップからなる積層体によって放出された熱を排出することが知られている。
【0003】
このような銅製の熱交換器は、およそ350W/m/℃程度の熱伝導率を有し、ダイヤモンド(または「ライクカーボン」)製は、およそ1500〜1800W/m/℃程度の熱伝導率を、またカーボンナノチューブ製は、およそ1500〜1800W/m/℃程度の熱伝導率を有する。
【0004】
このようなラジエータまたは熱交換器では、それぞれの熱伝導率に比例した熱を伝達することを可能にできない。なぜなら、これらのラジエータがボンディングされていても、ソルダリングされていても、最も重要なパラメータがチップ/ラジエータ界面の熱抵抗であることに変わりがないからである。
【0005】
図1に図示されるように、電子チップ1から熱交換素子2までの、電子チップデバイスの熱連鎖の各構成要素の熱抵抗率(熱伝導率の逆)は、以下のものをすべて合計したものである。
− ラジエータをリンクする材料とチップの後面4(能動面5の反対側の面)との間の界面3の抵抗率R1。この界面は概して、ネイティブシリカ6の断熱効果を避けるようにチップ1の後面上の金属堆積によって形成されており、このネイティブシリカ6は多かれ少なかれこのシリコン面上を覆い、かつ抵抗率が高い。これらの材料は、タングステンWの合金、およびチタンTiの合金、またはニッケルNiの合金、クロムCrの合金、および金Auの合金などとすることができる。
− 熱交換素子2への機械的リンクを確保する材料7の抵抗率R2。この材料は、例えば、(熱伝導率が約5W/m/℃から20W/m/℃まで様々な)熱接着剤、または(熱伝導率が35から50W/m/℃まで様々な)多少鉛リッチな半田とすることができる。
− 熱交換素子2のリンクを確保するために熱交換素子2の上に堆積された材料8の抵抗率R3。この材料は、例えば、真空下で実行された金属堆積とすることができる。
【0006】
数社の主要コンピュータメーカーは、比較的効率が良いが、実装が非常に複雑な技術を用いることにより界面の熱抵抗に関連した困難を回避するよう試みてきた。例えばIBMは、自社のIBM3081コンピュータで、2つの表面(チップの後面、および、熱交換素子またはラジエータ)を直接接触させることにより、材料の抵抗すなわち抵抗率R1+R2+R3を回避した。これら表面は、2つの部分の擬似ボンディングが生じ、その結果事実上界面抵抗を除去するように研磨された。この非常に煩わしく、また高価なシステムは、以来ずっと断念されている(R.C Chu、U.P.Hwang and R.E.Simons、“Conduction Cooling for an LSI Package:A one dimensional Approach”,IBM J.Res.Div.,Vol26,P45−54,1982を参照)。
【0007】
Hitachiは、自社のFACOM M−780コンピュータで、圧力の下で冷却液をチップの後面上に直接噴射することにより、困難を回避した(H.Yamamoto、T.Udagawa and M.Suzuki、Cooling System for FACOM M−780,“Large Scale Computer in Cooling Technology for Electronic Equipment”,W.Aung,Ed,Hemisphere Publishing,p701−714,1984を参照)。
【0008】
AT&Tは、自社のWE32100 MICROPACコンピュータで、PCBの代わりにシリコン基板を用い、その結果、熱は、チップのシリコンを通って、有機材料(接着剤)によってラジエータにリンクされた接地平面、したがって熱伝導率が低い(5〜10℃/W前後)接地平面へと通過する(C.J.Bartlett、J.M.Segelken and N.A Teneketges、“Multichip Packaging Design for VLSI−based Systems”,IEEE Trans.Compon.Hybrids Manuf.Technol.,Vol.CHMT−12(No.4)p647−653,1987を参照)。
【0009】
図2は、基板上で支えられた、反転させたチップデバイス10、すなわち「フリップチップ」の断面を示す。電子チップ10は、概してその能動面全体または一部にわたって分布しているパッド11を備え、その上に半田のボール12が堆積されている。ボールを有するチップの、基板13への電気相互接続は、リフローによって実現される。動作中にチップ10によって生じた熱を放散するために、チップ10の後面14すなわち非能動面は、熱交換素子15またはラジエータにリンクさせてもよい。
【0010】
熱の一部分は、基板13(一般的には熱伝導率が低いPCB)の熱抵抗に応じて、電気相互接続ボール12に向けられる。ボール12がソルダリングされるパッド11は、概してアルミニウム/チタン/タングステン/ニッケル/金系の、全厚さが約1μmである複雑な冶金を有する。ボール12がリフローされると、金属間化合物合金が、金、ニッケルと、鉛系半田との間に形成される。これらの合金の熱伝導率は、概してかなり低い(20〜50W/m/℃)。
【0011】
熱の別の部分が、チップ10の後面14の方に向けられることになる。これが、熱交換素子15が概してこの後面14に配置されている理由である。
【0012】
熱は、チップ10を形成しているシリコンを通過するが、その熱伝導は140W/m/℃であり、これはボール12の熱伝導よりもはるかに高いが、一般的には銅製である熱交換素子15の熱伝導(390W/m/℃)よりもはるかに低い。
【0013】
次に熱流束は、金属堆積(約1μm)で形成された界面16を通過し、その後、熱伝導率がおよそ40W/m/℃程度である半田17自体を通過する。
【0014】
次に熱流束は熱交換素子15に入り、そこから放散される。
【0015】
チップを設計する際には、電流波節点区域(ホットスポット)がわかっており、フォトリソグラフィマスク上のこれらの場所で熱パッドを優先的に追加するために局所化される。フォトリソグラフィマスクは、電気パッドには常に必要である。
【0016】
超音波「ボールボンディング」ワイヤリングを用いることにより、一般的にはアルミニウム製である、チップのパッドにワイヤを溶接することが可能になる。超音波溶接ツールの移動によって引き起こされた摩擦は、超音波周波数でおよそ0.1μm程度であるが、この摩擦により、500℃〜600℃の温度に界面の温度を上昇させることが可能になる。概してパッドを形成しているアルミニウムの融解温度(660℃)、および概してワイヤを形成している金の融解温度(1064℃)に関するこの高温により、パッドのアルミニウム原子の自己拡散、およびワイヤの金原子の自己拡散が可能になる。言いかえれば、それは、界面なしで「固溶体」とも呼ばれる完全な冶金のリンクを形成する。およそ数μm程度の、金およびアルミニウムのそれぞれの原子の「相互浸透」が存在するからである。
【0017】
図3Aは、アルミニウム製、または酸化アルミニウムAlからなる多かれ少なかれ連続的なネイティブ層21で被覆されたアルミニウム合金製のパッド20を示す。
【0018】
図3Bは、(例えば、金製の)ワイヤのボール22の超音波溶接後の同じパッド表面を示す。そこでは、酸化アルミニウムが、超音波によって破壊されており、溶接の間の金原子、およびアルミニウム原子の自己拡散、または相互拡散23の結果、金製ボールとアルミニウム製パッドとの間にリンクが生じている。言いかえれば、界面なしで冶金のリンクが存在している。
【0019】
したがって、図2のフリップチップを参照すると、ボール12と、チップ10のパッド11との間の界面が除去されていることが認められる。しかも、ボール12の熱伝導率は、およそ30〜40W/m/℃程度であるが、これは、金製のワイヤの熱伝導率(317W/m/℃)または銀製の熱伝導率(429W/m/℃)に、すなわち、約10倍の大きさに置き換えられている。他方では、後面14を通って流れる熱流束の部分は、熱交換素子15に達する前に、シリコン(140W/m/℃)、ならびに界面16および17を通り抜けなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】R.C Chu、U.P.Hwang and R.E.Simons、“Conduction Cooling for an LSI Package:A one dimensional Approach”,IBM J.Res.Div.,Vol26,P45−54,1982
【非特許文献2】H.Yamamoto、T.Udagawa and M.Suzuki、Cooling System for FACOM M−780,“Large Scale Computer in Cooling Technology for Electronic Equipment”,W.Aung,Ed,Hemisphere Publishing,p701−714,1984
【非特許文献3】C.J.Bartlett、J.M.Segelken and N.A Teneketges、“Multichip Packaging Design for VLSI−based Systems”,IEEE Trans.Compon.Hybrids Manuf.Technol.,Vol.CHMT−12(No.4)p647−653,1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の1つの目標は、これらの問題を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の1つの態様によれば、熱抵抗が向上した少なくとも1つの電子チップデバイスからなる積層体であって、電気相互接続リンクを有する少なくとも1つの電気接続パッドと、チップの面の上に配置された少なくとも1つの熱パッドと、少なくとも1つの熱交換素子と、熱パッドと熱交換素子との間の少なくとも1つの熱リンクと、を備える積層体において、熱交換素子の一部分であって、電子チップの、電気相互接続リンクを有する電気接続パッドに面して位置している前記一部分が、前記電気相互接続リンクとの接触を防ぐアパーチャを備える積層体が提供される。
【0023】
このようなチップからなる積層体は、電子機能を高めるが、これは、単位容積当りの出力密度の増加に結びつき、したがって、積層可能なチップの数には限りがある。
【0024】
したがって、電子チップの作動によって放出された熱の排出が向上されている一方で、チップと、熱交換素子またはラジエータとの間に界面が存在しないようにしている。
【0025】
メインフレームコンピュータメーカーの状況を遡れば、1980年代には、非常に使い勝手が悪く、熱抵抗を完全に除去できない手段を用いて、チップとの界面のこの熱抵抗を低減しようとしていたのである。
【0026】
1つの実施形態によれば、前記熱交換素子は、対応するチップの隅に面して配置されたタブを備える。
【0027】
1つの実施形態では、電子チップ(31、51、72)デバイス(30、50)が、前記熱交換素子(36、59)の一部分であって、アパーチャを備える熱パッド(34、61)に面して配置されている前記一部分を備える。
【0028】
したがって、チップと熱交換素子との間に熱リンクを生成することが容易である。
【0029】
1つの実施形態によれば、電子チップデバイスの熱リンクは、少なくとも1つの熱伝導性ワイヤを備える。
【0030】
熱リンクとして熱伝導性ワイヤを使用することは、現在では実施が容易であり、それほど高価ではない。
【0031】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの熱パッドを備えるチップの面は、チップの能動面、すなわち前面である。
【0032】
したがって、チップの受動(後)面を通過せずに、チップの能動(前)面のホットスポットから直接熱の伝達がある。
【0033】
さらに、チップの能動面での一度のマスク転写ステップだけで、電気接続パッドおよび熱接続パッドを生成することが可能になる。
【0034】
例えば、熱交換素子の一部分であって、電子チップの、電気相互接続リンクを有する電気接続パッドに面して位置している前記一部分は、前記電気相互接続リンクと接触しないように高くなっている。
【0035】
したがって、電気パッドの電気リンクの問題を生じずに、熱の排出が向上される。
【0036】
一変形例として、少なくとも1つの熱パッドを備えるチップの前面は、チップの受動面、または後面である。
【0037】
チップの能動面が、その表面積に対してあまりにも多くの電気パッドを有する場合、またはチップの高い作動周波数が、ある特定の信号と電子的に結合する可能性がある熱パッドによって妨害される場合には、これは特に有用である。
【0038】
例えば、電子チップデバイスは、基板を備え、基板には、能動面の、電気相互接続リンクを有する電気接続パッドに面して位置している一部分に、前記電気相互接続リンクと接触しないようにアパーチャが設けられている。
【0039】
したがって、底部に能動面を有するチップが、基板のアパーチャによって基板上に直接ワイヤリングされる場合、この能動面に熱パッドを配置することが可能ではないので、熱パッドはこのとき、非能動(受動)面に配置され、熱ワイヤによって熱交換素子に接続されてもよい。
【0040】
本発明の1つの態様によれば、電子チップデバイス、または電子チップデバイスからなる積層体を製造する方法であって、電気接続パッドのための少なくとも1つのアパーチャと、熱パッドのための少なくとも1つのアパーチャと、を備えるマスクを用いた、1つのチップまたは複数のチップの能動面でのマスク転写ステップを含む方法もまた提供される。
【0041】
本発明は、完全に非限定的な例として説明され、添付の図面によって図示されているいくつかの実施形態を検討すれば、一層よく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】既知の先行技術による電子チップを概略的に示す。
図2】既知の先行技術による電子チップを概略的に示す。
図3A】既知の先行技術によるワイヤリングを概略的に図示する。
図3B】既知の先行技術によるワイヤリングを概略的に図示する。
図4】本発明の1つの態様による(2D)チップデバイスを図示する。
図5】本発明の1つの態様による(2D)チップデバイスを図示する。
図6】本発明の1つの態様による電子チップデバイスからなる積層体を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
すべての図において、同一の参照符号を有する要素は、類似したものである。記載されている実施形態は、完全に非限定的なものである。
【0044】
本明細書では、当業者によく知られている特徴および機能は、詳細に記載しない。
【0045】
図4は、パッケージ、および電気ワイヤ33のような電気相互接続リンクを有する電気接続パッド32の形態をした、2D電子チップ31デバイス30を示す。
【0046】
熱パッド34が、熱リンク35によって熱交換素子36にリンクされている。
【0047】
示されている例は特に有利なものであるが、この例では、熱交換素子36の一部分37であって、電子チップ31の、電気相互接続リンク33を有する電気接続パッド32の上方に位置している前記一部分が、前記電気相互接続リンク33と接触しないように高くなっている。
【0048】
熱交換素子36またはラジエータは、エラストマー型可撓性接着剤でボンディングすることができ、これは非常に重要なことである。なぜなら、「Cu/low−kデバイス」と呼ばれる低誘電率チップに関する新技術は、機械的応力に対する耐性が非常に低いからである。可撓性接着剤は、シリコーン系とすることができ、したがって変形性が高い。これらの接着剤は、熱導体としては非常に不良(1W/m/℃未満)であり、(およそ数℃/Wから数十℃/W程度の)非常に高い熱抵抗につながる。熱交換素子36上に熱リンクワイヤ35をワイヤリングすることによって、完全に機械的に分断されるようにすることで、これが完全に回避される。
【0049】
チップ31は、接着剤40によって基板39にボンディングされている。基板のパッド41は、電気ワイヤ33を用いて、チップに機械的応力をかけずに、基板39をチップ31の電気パッド32に電気的にリンクさせることができる。
【0050】
熱交換素子36は、電気リンクワイヤ33に触れないように、高くなった部分を備える。
【0051】
熱交換素子36は、対流冷却の場合にはさらに良好な冷却が可能になるフィンを形成するように、一面ないし四面でパッケージから突起させることも可能であろう。図4では、熱交換素子36は、パッケージの1つまたは複数の面と同一平面上にあり、次に冷源にリンクさせることが可能である。
【0052】
説明した実施形態では、チップを設計する際に、電流波節点区域(ホットスポット)が一まとめにされることで、電気パッドにもまた必要なフォトリソグラフィマスク上のこれらの場所で、熱パッドを優先的に追加するようにする。
【0053】
図4では、能動面すなわち前面42が上部にあり、受動面すなわち後面43が底部にある。チップ31は、樹脂44の中に配置されている。
【0054】
基板39には、基板上に、例えばプリント回路基板上に移載可能な状態にあるボール45が設けられている。
【0055】
図5は、パッケージ形態をした、2Dチップ51デバイス50の変形例を示す。メモリとして用いられる多数のチップ51デバイス50がワイヤリングされるが、図5におけるように、能動面52を下向きにして、電気接続パッド54と、基板53内のアパーチャ64を通っている電気ワイヤ55とによって、基板53上に直接ワイヤリングされている。したがって、チップ51の受動面56を使用して、熱ワイヤ57および熱交換素子58を介して熱を伝達することが可能である。
【0056】
この手法の利点は、チップ51に応力をかけないように、機械的に分断しなければならない熱交換素子59を使用することである。すなわち、使用される可撓性接着剤60は、概してエラストマー系のものであるが、熱導体としては非常に不良(1W/m/℃未満)である。
【0057】
可撓性接着剤60は、概して金、およびニッケルからなる堆積61の上に配置され、電子チップ51上の大型の熱パッドと見なされている。電子チップ51は、樹脂62の中に配置され、接着剤63によって基板53にボンディングされている。
【0058】
基板53には、基板上に、例えばプリント回路基板上に移載可能な状態にあるボール61が設けられている。
【0059】
図6は、電子チップデバイスまたはレベルが積層される場合に、少なくとも1つの電子チップデバイスからなる積層体の生成を可能にする3Dアプリケーションを示す。図6は、積層体からなるデバイスの平面図を示す。
【0060】
ラジエータまたは熱交換素子70は、例えば、電子チップ72の四隅の上方に配置された熱交換素子70の四隅に位置する4つのストラップまたはタブ71によって、熱を伝達する。
【0061】
電子チップ72を電気的にリンクさせるための電気パッド73および電気ワイヤ74の位置に応じて、ストラップまたはタブの71の他の配置を変形例として用いることができる。
【0062】
図6では、電気パッド73および電気ワイヤ74は、電子チップ72のエッジに位置しており、ラジエータまたは熱交換素子70は、電気ワイヤ74と接触しないように高くなっていてもよいし、高くなっていなくてもよい。いずれの場合も、ラジエータ70の下に、またはストラップ71の下には電気ワイヤ74は存在し得ない。なぜなら、積層後にモジュールを鋸引きすると、電気ワイヤ74の断面がラジエータ70のストラップ71の断面と一致してしまうことにより、短絡が生じてしまうからである。
【0063】
図6の特に有利な実施形態では、熱交換素子70は、電気ワイヤ74とのあらゆる接触を回避するように、適切なカットアウトを備える。
【0064】
熱リンクワイヤ75は、電子チップ72の能動面上に配置された熱パッド76上にワイヤリングされている。
【0065】
熱ワイヤ75は、熱交換素子70内に、熱パッド76に面して作られたアパーチャ77を通してワイヤリングすることにより、熱交換素子70に接続されている。
【0066】
本発明はまた、電子チップデバイス30、50、または電子チップデバイス30、50からなる積層体(3Dチップ)を製造する方法であって、電気接続パッドのための少なくとも1つのアパーチャと、熱パッドのための少なくとも1つのアパーチャと、を備えるマスクを用いた、1つのチップまたは複数のチップの能動面上でのマスク転写ステップを含む方法に関する。
【0067】
このように、本発明により、界面の熱抵抗を通過することなく、チップの極めて薄い(1μm未満)能動表面のホットスポットから前記熱が排出される箇所への熱の伝達を向上させることが可能になる。
【0068】
さらには、本発明は、いずれの追加のチップ処理ステップも必要ない。
【0069】
本発明は、熱がチップを通り抜けて受動面に達した後にではなく、熱放射源において直接熱相互接続を実施する。
【0070】
本発明は、最新世代のチップを含めた、チップの相互接続において非常に広く用いられるボールボンディング法を実施する。実際、チップは、応力に非常に敏感な、「Cu/low−kデバイス」と呼ばれる誘電体で形成されているので、そのワイヤリングには、特殊な工業機器が必要であり、特に「ソフトランディング(soft landing)」のワイヤリングでは、熱パッドのワイヤリングは、この同じ方法を用いている。
【0071】
これらの最新世代のチップは、熱力学的応力に対する耐性が非常に低い。これが、最新世代のチップを封入するためのプラスチックパッケージのメーカーが、樹脂の特性(12〜7ppm/℃に変化する膨張係数)を改変しなければならなかった理由である。言いかえれば、高さ約30〜50μmのカットワイヤ、すなわち「スタッド」を用いる技術であるが、これは次にソルダリングによって、例えば銅製のラジエータにリンクさせなければならない。ラジエータとチップとの間のリンクは事実上剛性であるので、ラジエータによってかけられた応力は、チップに伝達される。さらに、多数のスタッドをソルダリングによってリンクさせることは、膨張差応力のため、実現が困難である。
【0072】
最後に、もしチップが能動面のパッドと同様に金属化されていれば、シリコンの厚さを貫通させなければならないという欠点を有するが、チップの後面上で同じ手法の採用を禁じるものではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6