特許第6789975号(P6789975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6789975管楽器と組み合わせ可能な、電子音を発生させるための電子システムおよびこのようなシステムを含む楽器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789975
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】管楽器と組み合わせ可能な、電子音を発生させるための電子システムおよびこのようなシステムを含む楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20201116BHJP
   G10D 7/026 20200101ALI20201116BHJP
   G10D 7/06 20200101ALI20201116BHJP
【FI】
   G10H1/00 A
   G10D7/026
   G10D7/06
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-555497(P2017-555497)
(86)(22)【出願日】2016年4月18日
(65)【公表番号】特表2018-518698(P2018-518698A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】EP2016058568
(87)【国際公開番号】WO2016173879
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2019年4月11日
(31)【優先権主張番号】1553857
(32)【優先日】2015年4月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スーベストル,フロラン
【審査官】 山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−146678(JP,A)
【文献】 特開平3−20793(JP,A)
【文献】 特開平11−65558(JP,A)
【文献】 特開2009−193023(JP,A)
【文献】 特開2010−66640(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1380022(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00−7/12
G10D 7/00−7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横穴(600、1800)を有し、内側に気柱を画定する管状本体を含む管楽器と組み合わせることのできる電子システムにおいて、前記楽器の本体内に弾性機械波動を発生させるための少なくとも1つの装置(E1、EN)と、弾性機械波動を受け取るための少なくとも1つの装置(R1、RN)であって、前記少なくとも1つの発生装置(E1、EN)により発せられた前記波動を、前記楽器の前記本体の素材内を伝播した後に受け取るように位置付けられ、かつ受け取った前記波動の少なくとも1つの受信信号特性を提供するように設計された少なくとも1つの装置(R1、RN)と、前記楽器の少なくとも1つの横穴を閉じる動作により誘導された擾乱を検出し、位置特定するための装置(424)であって、前記少なくとも1つの受信信号の分析から前記楽器の前記横穴の閉鎖状態を検出し、特定するように構成された装置(424)と、を含み、前記検出および位置特定装置は、前記楽器の前記気柱の内部に取り外し可能に位置付けられる電子システム。
【請求項2】
1つの受信装置(R1、RN)を含む、請求項1に記載の電子システム。
【請求項3】
2つの受信装置(R1、RN)を含む、請求項1に記載の電子システム。
【請求項4】
前記検出および位置特定装置(424)は、前記楽器の半音階タブ譜から、検出された前記楽器の前記横穴の前記閉鎖状態に関連付けられる音を判断するように構成される、請求項1〜3の何れか1項に記載の電子システム。
【請求項5】
前記検出および位置特定装置(424)は、
− 前記楽器の前記横穴の前記閉鎖状態の配列を、すべての可能な配列の中で変化させることを含む第一の、学習段階を実行し、各配列について、前記少なくとも1つの受信信号の少なくとも1つの参照特性を記録し、
− 使用者が前記楽器を演奏中に、前記使用者が演奏する各音について、前記少なくとも1つの受信信号の、前記参照特性と同等の少なくとも1つの現在の特性を記録し、前記現在の特性を前記記録された参照特性のすべてと比較して、そこから前記使用者が動かした前記楽器の前記穴の前記閉鎖状態を推定することを含む第二の、モニタ段階を実行する
ように構成される、請求項1〜4の何れか1項に記載の電子システム。
【請求項6】
弾性機械波動を発生させるための各装置(E1、EN)と弾性機械波動を受け取るための各装置(R1、RN)について、前記装置を前記管楽器の前記本体に取り外し可能に固定する手段を含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の電子システム。
【請求項7】
前記取り外し可能な固定手段は以下の手段、すなわち接着剤、クランプ、クリップ、磁石、リングから選択される、請求項6に記載の電子システム。
【請求項8】
弾性機械波動を発生させるための前記少なくとも1つの装置(E1、EN)と弾性機械波動を受け取るための前記少なくとも1つの装置(R1、RN)は、前記管楽器の取り外し可能な部分(500、1805、1911、1912)に位置付けられる、請求項1〜5の何れか1項に記載の電子システム。
【請求項9】
前記検出および位置特定装置(424)を前記管楽器の前記気柱の内部に取り外し可能に固定する手段を含む、請求項1〜8の何れか1項に記載の電子システム。
【請求項10】
前記検出および位置特定装置(424)は、前記管楽器の取り外し可能な部分に位置付けられ、その内部は一部が中空で気柱を画定しており、前記検出および位置特定装置は前記気柱の中に位置付けられる、請求項1〜8の何れか1項に記載の電子システム。
【請求項11】
前記楽器の前記取り外し可能な部分は、前記楽器の以下の取り外し可能な部分、すなわちネック、ベル、バレル、スモールバレル、マウスピースから選択される、請求項8または10記載の電子システム。
【請求項12】
弾性機械波動を発生させるための装置(E1、EN)は圧電アクチュエータであり、弾性機械波動を、その伝播後に受け取る装置(R1、RN)は圧電受信器である、請求項1〜11の何れか1項に記載の電子システム。
【請求項13】
前記検出および位置特定装置(424)に接続された、前記楽器の前記穴の前記検出された閉鎖状態に関連付けられる音を、前記楽器の半音階タブ譜に応じて使用者に向けて再生するための音声合成装置(1913、1914)も含む、請求項1〜12の何れか1項に記載の電子システム。
【請求項14】
アコースティック音およびデジタル音を選択的に生成するように意図された、横穴(600、1800)を有する管楽器において、請求項1〜13の何れか1項に記載の電子システムと組み合わされた、横穴を有する管楽器を含む、管楽器。
【請求項15】
前記楽器はサクソフォンまたはクラリネットまたはフルートまたはオーボエまたはバスーンである、請求項14に記載の横穴を有する管楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド管楽器、すなわち、第一の、アコースティックモードと、第二の、デジタルモードにより交互に動作可能な管楽器の技術分野に関する。本発明は、横穴を有するあらゆる種類の管楽器に適用され、これにはクラリネット、サクソフォン、フルート、オーボエ、イングリッシュホルン、またはバスーンが含まれるが、これらがすべてではない。
【背景技術】
【0002】
アコースティック動作モードは、管楽器の本来の動作モードである。このモードでは、音は楽器の気柱の、奏者の吹奏によりトリガされる振動によって生成される。
【0003】
デジタル動作モードは、管楽器に電子コンポーネントを取り付けることにあり、それによって、そのコンポーネントから生成される1つまたは複数の電気信号に音声合成技術を応用することにより得られるデジタル音の生成が可能となる。
【0004】
管楽器のデジタル動作モードによって、特に、ヘッドセットを通じて奏者にデジタル化された音が再生されるようにすることにより楽器を無音にすることが可能である。実際、アコースティックでの音楽の練習は、騒音による迷惑の根源になりかねず、ミュージシャンは特定の時間帯にしか演奏できないように制約されるか、さらにはこの楽器を練習しようとする気持ちをそいでしまう可能性がある。
【0005】
デジタル動作の他の利点は、音声合成技術によって音調の幅が広がることである。
【0006】
これに関して解決すべき1つの課題は、アコースティックの管楽器と組み合わせることができ、使用者がデジタル動作モードからアコースティック動作モードへと切り換えることができるように容易に逆転可能な電子システムをどのように設計するか、である。
【0007】
解決すべき別の課題は、ミュージシャンと楽器との相互作用から音声合成を実行することを可能にするシステムをどのように設計するか、である。
【0008】
楽器を無音にする第一の方法は、楽器により生成される音を減衰させることによる。そのためには、発泡材等の吸収材の使用に基づく方法または包むことによる減衰に基づく方法が知られている。これらの方法は非干渉的で安価であるが、考慮される音響スペクトル全体にわたり十分に有効であるとは言えない。一般に、横穴を有する管楽器により生成される音は、その他の楽器、例えば真鍮類による楽器により生成される音より減衰させにくい。
【0009】
騒音による迷惑を制限するための別の方法は、楽器のアコースティック動作に代わる装置、換言すれば完全なデジタル楽器を使用することによる。この種の楽器では、吹奏パラメータ(強さおよび唇での挟み方)のほか、楽器上の指の位置を測定することが同時に可能となる。キーは静的とすることも、機械的とすることもできる。この種の楽器は、シンセサイザに連結され、幅広い音調を持つことが可能となり、使いやすいことがわかっている。その必要最低限の技術的設計により、それは費用の点で比較的近付きやすい製品となる。その反面、このような器具の制御はクラリネットやサクソフォンとは異なり、これはその構成とキーおよびマウスピースの機械的挙動による。したがって、この楽器には補足的な、共通でない学習が必要となり、これは、ミュージシャンが自分のアコースティック楽器の技能を高めたい場合に不満となる。
【0010】
特許文献1、2および3には、アコースティックまたはデジタル動作を交互に可能にするハイブリッド管楽器が記載されている。これらの特許において検討されているデジタル化技術は、ホール効果センサまたは赤外線検出器に基づいており、これらを楽器の各キーの上に永久的に別々に位置付けなければならない。したがって、これらの技術では多数のセンサを必要とし、これは不可逆的であり、アコースティックモードでの楽器の動作の障害となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1585107号明細書
【特許文献2】欧州特許第2017823号明細書
【特許文献3】米国特許第7501570号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、横穴を有する管楽器と組み合わせることができ、楽器の穴の閉鎖状態を超音波音響信号、より一般的には弾性機械波動の発生器と受信器を通じて検出することに基づく電子システムを提案する。
【0013】
本発明によるシステムは、取り外してアコースティックモードでの動作を可能にするという利点を提供し、横穴を有するあらゆる種類の管楽器に適応させることができる。
【0014】
さらに、本発明が必要とする手段は、先行技術により提案されているものより非干渉的で、より小型である。特に、本発明は、楽器の何れかの地点に位置付けられる1つの発生器と1つの受信器で動作でき、したがって楽器の横穴と同じ数のセンサを必要としない。センサを楽器の上で正確に位置付けることについての制約がないことから、使用者にとってできるだけ不快とならないシステムを構想できる。
【0015】
本発明の主題は、横穴を有し、内側に気柱を画定する管状本体を含む管楽器と組み合わせることのできる電子システムであり、前記システムは、楽器の本体内に弾性機械波動を発生させるための少なくとも1つの装置と、弾性機械波動を受け取るための少なくとも1つの装置であって、発せられた波動を、楽器の本体の素材内を伝播した後に受け取るように位置付けられ、かつ受け取った弾性機械波動の少なくとも1つの受信信号特性を提供するように設計された少なくとも1つの装置と、楽器の少なくとも1つの横穴を閉じる動作により誘導された擾乱を検出し、位置特定するための装置であって、前記少なくとも1つの受信信号の分析から楽器の横穴の閉鎖の配列を検出し、特定するように構成された装置と、を含み、前記検出および位置特定装置は、楽器の気柱の内部に取り外し可能に位置付けられる。
【0016】
本発明の特定の態様によれば、本発明による電子システムは、1つの受信装置または2つの受信装置を含む。
【0017】
本発明の特定の態様によれば、検出および位置特定装置は、楽器の半音階タブ譜から、検出された楽器の横穴の閉鎖状態に関連付けられる音を判断するように構成される。
【0018】
本発明の特定の態様によれば、検出および位置特定装置は、
− 楽器の横穴の閉鎖状態の配列を、すべての可能な配列の中で変化させることを含む第一の、学習段階を実行し、各配列について、前記少なくとも1つの受信信号の少なくとも1つの参照特性を記録し、
− 使用者が前記楽器を演奏中に、使用者が演奏する各音について、前記少なくとも1つの受信信号の、前記参照特性と同等の少なくとも1つの現在の特性を記録し、現在の特性を記録された参照特性のすべてと比較して、そこから演奏者が動かした楽器の穴の閉鎖配列を推定することを含む第二の、モニタ段階を実行する
ように構成される。
【0019】
特定の変形型によれば、本発明による電子システムは、弾性機械波動を発生させるための各装置と弾性機械波動を受け取るための各装置について、装置を管楽器の本体に取り外し可能に固定する手段を含む。
【0020】
本発明の特定の態様によれば、取り外し可能な固定手段は以下の手段、すなわち接着剤、クランプ、クリップ、磁石、リングから選択される。
【0021】
本発明の特定の態様によれば、弾性機械波動を発生させるための前記少なくとも1つの装置と弾性機械波動を受け取るための前記少なくとも1つの装置は、管楽器の取り外し可能な部分に位置付けられる。
【0022】
特定の変形型によれば、本発明による電子システムは、前記検出および位置特定装置を管楽器の気柱の内部に取り外し可能に固定する手段を含む。
【0023】
本発明の特定の態様によれば、前記検出および位置特定装置は、管楽器の取り外し可能な部分に位置付けられ、その内部は一部が中空で気柱を画定しており、前記検出および位置特定装置は気柱の中に位置付けられる。
【0024】
本発明の特定の態様によれば、楽器の取り外し可能な部分は、楽器の以下の取り外し可能な部分、すなわちネック、ベル、バレル、スモールバレル、マウスピースから選択される。
【0025】
本発明の特定の態様によれば、弾性機械波動を発生させるための装置は圧電アクチュエータであり、弾性機械波動を、その伝播後に受け取る装置は圧電受信器である。
【0026】
特定の変形型によれば、本発明による電子システムはまた、検出および位置特定装置に接続された、楽器の穴の検出された閉鎖配列に関連付けられる音を、その楽器の半音階タブ譜に応じて使用者に向けて再生するための音声合成装置も含む。
【0027】
本発明の他の主題は、横穴を有し、アコースティック音およびデジタル音を選択的に生成するように意図された管楽器であり、本発明による電子システムと組み合わされた、横穴を有する管楽器を含む。
【0028】
本発明の特定の態様によれば、前記楽器はサクソフォンまたはクラリネットまたはフルートまたはオーボエまたはバスーンである。
【0029】
本発明のその他の特徴と利点は下記のような添付の図面に関連する以下の説明を読むことによって、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】先行技術の原理による、2つの弾性波発生器と1つの弾性波受信器を取り入れた触覚表面である。
図2】電子装置に接続された、図1のシステムの発生器と受信器を示す略図である。
図3図1のガラスプレートの正面図であり、その上に参照接触点が示されている。
図4】先行技術による学習方法のブロック図である。
図5】先行技術によるモニタ方法のブロック図である。
図6】モダンクラリネットの側面図である。
図7】クラリネットの横穴の各種の閉鎖配列である。
図8】クラリネットの横穴の各種の閉鎖配列である。
図9】クラリネットの横穴の各種の閉鎖配列である。
図10】クラリネットの横穴の各種の閉鎖配列である。
図11】クラリネットの横穴の各種の閉鎖配列である。
図12】クラリネットの横穴の各種の閉鎖配列である。
図13】クラリネットの横穴の各種の閉鎖配列である。
図14】クラリネットの半音階タブ譜の一例である。
図15】クラリネットの取り外し可能なベルの一例である。
図16】クラリネットの取り外し可能なベルの一例である。
図17】サクソフォンの側面図である。
図18】サクソフォン上での本発明によるシステムの可能な位置付けの一例の略図である。
図19】クラリネットに関する本発明によるシステムの可能な構成の一例の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、電子装置に接続された少なくとも1つの弾性波発生器と少なくとも1つの弾性波受信器から構成されるシステムを通じて媒質の擾乱を検出し、位置特定することを可能にする方法の、発明性のある新規な応用に基づいており、電子装置は、弾性波受信器により生成される信号を受け取り、分析して、そこから擾乱の位置を推定する。
【0032】
説明文において、以下、弾性機械波動という表現は、本発明によるシステムに適合する、弾性波がその一部を形成する波をより広く指定するために使用されている。
【0033】
弾性機械波動の発生器と受信器からの媒質の擾乱を位置特定する方法の一例は、仏国特許第2967788号として公開された本出願人の仏国特許と、それに対応する、第2013233080号として公開された米国特許出願に記載されている。これらの文献では、表面、例えばガラスまたはその他の材料からなる表面を、この表面の上に少なくとも1つの弾性波発生器と少なくとも1つの弾性波受信器を設置することにより、タッチセンサ式にするシステムと方法が記載されている。表面により形成される媒質内を伝播した波は受信器により受信され、これが受信された波の信号特性を生成する。受けった信号を分析することによって、この表面と指の接触による表面の変形によって生じる媒質の擾乱を検出することができる。それゆえ、この方法によって、タッチセンサ式とされた表面上の接触の位置特定が可能となる。
【0034】
本発明は、この原理を利用し、それを適応して、横穴を有する管楽器の穴の閉鎖状態を特定する。
【0035】
仏国特許第2967788号明細書および米国特許出願公開第2013233080号明細書に詳しく記載されている媒質の擾乱の位置を特定する方法をまず簡単に思い出す。当業者は、本発明を理解し、実施するために、これらの文献を参照できる。
【0036】
図1は、タッチ表面システムを示しており、これはガラスプレート102と、プレート102内に振動弾性波を発生させるための2つの装置304、306と、振動弾性波を受け取るための装置308と、を含む。3つの装置は、ガラスプレート102の下部204に、例えば接着剤またはその他の固定手段によって固定される。
【0037】
好ましくは、発生され、受け取られる弾性波は、ガラスプレート102の厚さと比較して大きい波長を示す屈曲波である。これらは、体積波である。これらの波からの音場のエネルギーは、ガラスプレート102の厚さ全体にわたって分散される。
【0038】
ガラスプレート102が均質で等方性である場合、システムは好ましくは、プレート102の2つの接触面上の接触を、発生装置304、306と受信装置308が固定されている接触面に関係なく見検出するように設計される。
【0039】
図2を参照すると、第一の発生装置304は圧電ディスク402(すなわち、圧電材料で製作される)を含み、その底面は、それによって第一の発生装置304がガラスプレート102に対して押し付けられる下側電極404により覆われている。誘電ディスク402はまた、上面も有し、これは4つの上側電極406A、406B、および408A、408Bにより覆われており、各々が上面のそれぞれ4分の1を覆う。説明されている例において、圧電ディスク402はその表面全体にわたって均一に分極される。第二の発生装置306は第一の発生装置と同じであり、同じように、その上面上の4つの上側電極412A、412B、および414A、414Bとその下面上の下側電極416が設けられた圧電ディスク410を含む。受信装置308は圧電ディスク418を含み、これはガラスプレート102に押し付けられる下側電極420により覆われた下面を有する。これはまた、上側電極422により覆われた上面も含む。タッチ表面システム100はまた、発生装置304、306および受信措置308の電極に接続されたコンピューティングデバイス424も含む。より詳しくは、2つの発生装置304、306および受信装置308の下側電極404、416、420は、コンピューティングデバイス424のアースに接続される。さらに、コンピューティングデバイス424は、以下のコマンド信号、すなわち、2つの対向する電極406A、406B間のe(t)ともう一方の2つの対向する電極408A、408B間のe(t)を第一の発生装置に供給するように設計される。説明されている例において、2つの対向する電極はそれぞれ、相互に反対の2つの電位間、すなわち、−e(t)/2と+e(t)/2間で分極され、もう一方の2つの対向する電極はそれぞれ、相互に反対の2つの電位、すなわち、−e(t)/2と+e(t)/2間で分極する。
【0040】
受信装置308の上側電極422は、コンピューティングデバイス424に接続されて、受信装置308により受け取られた弾性波から受信信号r(t)をそこに供給する。
【0041】
コンピューティングデバイス424は、第一の発生装置304と同じ方法で第二の発生装置306にコマンド信号を供給するように設計されているため、以下では詳しく説明しない。
【0042】
コンピューティングデバイス424は、接触面104A、104Bのうちの一方の接触を、受け取った振動弾性波、すなわち第一および第二の発生装置304、306により発せられ、ガラスプレート102の中を伝播した振動弾性波に対応する受信信号r(t)から検出し、位置特定するように設計される。
【0043】
このために、コンピューティングデバイス424は、以下に詳しく説明する動作を実行するように設計される。
【0044】
例えば、コンピューティングデバイス424は、これらの動作を実行するためのコンピュータプログラム(図示せず)の命令を実行するための処理ユニット(図示せず)を含む。
【0045】
変形型として、コンピューティングデバイス424は、同じ動作を実行するための電子回路(コンピュータプログラムを持たない)のみで構成される電子装置に置き換えることもできる。
【0046】
表面102上の接触を検出し、位置特定するために使用される方法を、引き続き仏国特許第2967788号明細書および米国特許出願公開第2013233080号明細書を参照しながら説明するが、読者はさらに詳しい点を知るにはこれを読むことができる。
【0047】
この方法は、学習方法とモニタ方法に分けられる。
【0048】
図3を参照すると、これらの方法は参照接触点C(i,j)を使用するが、ガラスプレート102の接触面104B上のその位置はコンピューティングデバイス424により把握されている。これらの参照接触点C(i,j)は、例えば、軸A1およびA2による格子状に分散され、その中で数字(i,j)は格子内のそれらの位置を示す。
【0049】
これらの方法はまた、近傍関数V(C(i,j))を使って、ある参照接触点C(i,j)の近傍の参照接触点を判断できるようにする。例えば、図3に示されるように、参照接触点が長方形の格子にわたり分散されている場合、近傍の参照接触点は、その格子上で考慮されている参照接触点を取り囲む8つの接触点である(「第一のリング」)。
【0050】
さらに、これらの方法において、他の発生装置306を導入してもプレート内の音場全体の全体的表現が変わらないことを前提として、第一の発生装置304だけが検討される。一般に、使用される発生器と受信器の数はこれと異なっていてもよく、この方法は1つの発生器と1つの受信器でも動作できる。
【0051】
図4を参照すると、学習方法1600はまず、ステップ1602を含み、ここではガラスプレート102に接触しない状態で、タッチ表面システムが無音環境に置かれる。
【0052】
この状態で、ステップ1604において、コンピューティングデバイス424は図3に示されているようなコマンド信号e(t)およびe(t)を第一の発生装置304に供給し、後者はガラスプレート102内に弾性波を発生させる。
【0053】
それと同時に、ステップ1606で、受信装置308は弾性波を、それがガラスプレート102内を伝播した後に受け取り、受け取った弾性波に対応する、r(t)で示される無負荷信号をコンピューティングデバイス424に供給する。
【0054】
ステップ1608で、コンピューティングデバイス424は、無負荷受信信号r(t)のフーリエ変換の振幅を計算し、これは無負荷スペクトル振幅R(f)=|fft(r(t))|と呼ばれる。
【0055】
ステップ1610で、参照接触点C(i,j)が、依然として無音環境でガラスプレート102の接触面に適用される。
【0056】
ステップ1612で、参照接触点C(i,j)を適用した状態で、コンピューティングデバイス424はコマンド信号e(t)およびe(t)を第一の放出装置304に供給する。
【0057】
ステップ1614で、第一の発生装置304はガラスプレート102 内にコマンド信号e(t)およびe(t)に対応する弾性波を発生させ、その一方で受信装置308は、ステップ1616で、音響信号をそれがガラスプレート102内を伝播した後に受信し、参照受信信号ri,j(t)と呼ばれる、それに対応する受信信号をコンピューティングデバイス424に供給する。
【0058】
ステップ1618で、コンピューティングデバイスは、参照受信信号ri,j(t)のフーリエ変換の振幅を計算し、これは参照スペクトル振幅Ri,j(f)=|fft(ri,j(t))|と呼ばれる。
【0059】
ステップ1620で、コンピューティングデバイス424は、無負荷振幅と参照振幅との間の距離を計算し、これは参照スペクトル振幅距離DNR(i,j)と呼ばれる。例えば、参照スペクトル振幅距離DNR(i,j)は相対的正規化距離であり、例えば、無負荷スペクトル振幅R(f)=|fft(r(t))|と参照スペクトル振幅Ri,j(f)=|fft(ri,j(t))|の変化率のノルム1と等しい:
【数1】
【0060】
方法1600はその後、別の参照接触点C(i,j)についてステップ1610に戻り、すべての参照接触点が走査されるまで続ける。
【0061】
わかるように、学習方法1600はガラスプレートの2つの接触面の一方のみで行えばよく、それは、ガラスプレート102のそれぞれの側にある2つの対向する接触点がガラスプレート102の中を伝播する弾性波に及ぼす影響は同じであるからである。
【0062】
図5を参照すると、タッチ表面システムを使ったモニタ方法1700はまず、初期化ステップ1702〜1712を含む。
【0063】
ステップ1702で、タッチ表面システムは、どこにも接触することなく、使用環境内に置かれ、その中には、ガラスプレート102を振動させ、したがって受信装置306により供給される受信信号の中にスブリアス信号を生成する残留ノイズが含まれ得る。残留ノイズはまた、処理用電子部品から、特に量子化ノイズから発せられることもありうる。
【0064】
ステップ1704で、コンピューティングデバイス424はコマンド信号e(t)およびe(t)を第一の発生装置304に供給し、発生装置304は対応する弾性波をカラスプレート102の中に発生させる。
【0065】
それと同時に、ステップ1706で、受信装置308は音響信号を、それがガラスプレート102を伝播した後に受信し、受け取った弾性波に対応する、残留ノイズrBR(t)を有する受信信号と呼ばれる受信信号をコンピューティングデバイス424に供給する。
【0066】
ステップ1708で、コンピューティングデバイス424は、残留ノイズを有する受信信号rBR(t)のフーリエ変換振幅を計算し、これは残留ノイズを有するスペクトル振幅RBR(f)=|fftBR(r(t))|と呼ばれる。
【0067】
ステップ1710で、コンピューティングデバイス424は、残留ノイズを有するスペクトル振幅RBR(f)および無負荷スペクトル振幅R(f)から開始残留ノイズBRDを計算する。例えば、開始残留ノイズBRDは、残留ノイズを有するスペクトル振幅RBR(f)と無負荷スペクトル振幅R(f)の変化率のノルム1である:
【数2】
【0068】
ステップ1712で、コンピューティングデバイス424は、現在の残留ノイズを表すデータBRを開始残留ノイズの値で初期化する。さらに、コンピューティングデバイス424は、反復カウンタnを値1で初期化する。
【0069】
モニタ方法1700は、次に、モニタステップ1714〜1750のモニタステッループを含み、このステップループの現在の反復処理番号は反復nである。
【0070】
ステップ1714で、コンピューティングデバイス424は、コマンド信号e(t)およびe(t)を第一の発生装置304に供給し、発生装置304は、それに対応する弾性波をガラスプレート102内に発生させる。
【0071】
それと同時に、ステップ1716で、受信装置308は連続する弾性波をそれがガラスプレート102の中生を伝播した後に受け取り、受け取った弾性波に対応する受信信号をコンピューティングデバイス424に供給し、これは現在の受信信号r(t)と呼ばれる。
【0072】
ステップ1718で、コンピューティングデバイス424は、現在の受信信号r(t)のフーリエ変換の振幅を計算し、これは現在のスペクトル振幅R(f)=|fft(r(t))|と呼ばれる。
【0073】
ステップ1720で、コンピューティングデバイス424は、残留ノイズを有するスペクトル振幅RBR(f)と現在のスペクトル振幅R(f)から現在のスペクトル振幅距離DNR,,を計算する。例えば、現在のスペクトル振幅距離DNR,,は相対正規化距離であり、例えば、残留ノイズを有するスペクトル振幅RBR(f)と現在のスペクトル振幅R(f)の変化率のノルム1である:
【数3】
【0074】
ステップ1722で、コンピューティングデバイス424は、現在のスペクトル振幅距離DNR,,から、および残留ノイズBRから現在の擾乱PCを計算する。例えば、現在の擾乱PCnは、現在のスペクトル振幅距離DNRと残留ノイズBRとの間の変化率である:
【数4】
【0075】
ステップ1724で、コンピューティングデバイス424は、現在の擾乱PCが前回の反復処理実行時に関してわずかにドリフトしているか否かを判断し、これは残留ノイズの変化を示しており、接触を示しておらず、それは、後者によれば、現在の擾乱PCの変化がもっと大きくなるからである。この小さいドリフトは例えば、
【数5】
の場合にあると判定される。
【0076】
小さい現在の擾乱ドリフトPC,,があると判定されると、ステップ1726〜1730が実行される。
【0077】
ステップ1726で、コンピューティングデバイス424は、残留ノイズを有するスペクトル振幅RBR(f)を現在のスペクトル振幅R(f)に更新する。
【0078】
ステップ1728で、コンピューティングデバイス424は、更新後の残留ノイズを有するスペクトル振幅RBR(f)から新しい残留ノイズBRを計算し、すなわち:
【数6】
である。
【0079】
ステップ1730で、コンピューティングデバイス424はnを1ユニットだけ進め、方法はステップ1714および1716に戻る。
【0080】
小さい現在の擾乱ドリフトPCがないと判定されると、ステップ1732で、コンピューティングデバイス424は、現在の擾乱PCが、例えば所定の閾値より高いか否かを判定し、これは接触の発生を示す。例えば、接触Cは、PCが100%より大きいか、これと等しい場合に検出される。
【0081】
接触Cかが検出されると、ステップ1734で、コンピューティングデバイス424は、参照スペクトル振幅距離DNR(i,j)と現在のスペクトル振幅距離DNR,,との偏差を計算する。説明されている例では、これらの偏差は、例えば残留ノイズのパーセンテージとして表現される相対正規化偏差である。引き続き、説明されている例では、これらの偏差はマトリクスENRD(i,j)に入れられ、このマトリクスの各要素(i,j)は参照接触点C(i,j)に関する偏差に対応する:
【数7】
【0082】
ステップ1736で、コンピューティングデバイス424は、検出された接触Cに最も近い参照接触点C(i,j)を判断する。これは、マトリクスENRD(i,j)の最小要素(すなわち、現在のスペクトル振幅距離DNRに関する最小偏差を示す要素)に関連付けられる参照接触点である。この最小要素は、ES=ENRD(i,j)で示され、(i,j)はマトリクスENRD(i,j)の中の、また参照接触点の格子の中のその位置である。
【0083】
コンピューティングデバイス424は、検出された接触Cの位置として、最も近い参照接触点(i,j)の位置を供給し、その後、方法1700はステップ1750に進む。
【0084】
上述の技術は、管楽器の横穴の閉鎖状態の判断に応用されるように変更される。ここで、本発明の実施を可能にするのに必要なこの技術に対する適応について説明する。
【0085】
本発明の全体的原理は、弾性機械波動の発生器と受信器を、平面上ではなく、管楽器に設置することを含む。管楽器は、弾性機械波動について共鳴する中実物体である。弾性機械波動は楽器の本体の素材内を伝播し、ミュージシャンの、特定の横穴を閉じる動作が行われると、この動作により波動が伝播する媒質の擾乱が生じる。異なる音に関連付けられる横穴の各閉鎖状態によって、受信器が、それが受け取る波から生成する信号に異なる調記号が生成される。本発明は、この物理的効果を利用して、楽器の穴の異なる閉鎖状態を検出し、特定する。
【0086】
弾性機械波動の発生器と受信器は、圧電トランスデューサ、圧電パッド、または圧電セラミックから製作されるトランスデユーサの形態をとることができる。
【0087】
本発明は、1つの発生器、2つの発生器、または3つ以上の発生器で動作できる。
【0088】
同様に、本発明は、1つの受信器、2つの受信器、または3つ以上の受信器で動作できる。
【0089】
図4とそれに関する説明を参照すると、上述の学習方法が以下のように変更される。タッチ表面システムの代わりに管楽器が使用され、その上に少なくとも1つの発生器304、306と少なくとも1つの受信器308が固定され、これらはコンピュータデバイス424に連結される。学習方法のステップ1602、1604、1606、および1608は、発生器と受信器が設けられた楽器に適用される。
【0090】
学習方法のステップ1610〜1620はすると、参照接触点C(i,j)を楽器の横穴の閉鎖状態E(i)に置き換え、この状態を標的の楽器およびその半音階タブ譜に依存するすべてのありうる状態にわたって変化させることによって実行される。様々なありうる閉鎖状態は説明文中の後段および図14で説明する。より具体的には、ステップ1610で、閉鎖状態E(i)は、楽器の横穴に適用され、すなわち、出しうるすべての音の中から1つの音が発せられる。その後、ステップ1612、1614、1618、および1620は、図4に関して上述したものと同じ方法で実行される。
【0091】
図5とそれに関連する段落において説明されているモニタ方法もまた、以下のように適応される。
【0092】
ステップ1702〜1730は、タッチ表面を、発生器と受容器が設けられた楽器に置き換えることによって上述の方法で実行される。
【0093】
ステップ1732は、ここでは、目的がもはや、ある表面上の接触Cを検出することではなくなり、楽器の状態がその非動作状態に関して変化したか否か、換言すれば、ミュージシャンの動作の後に少なくとも1つの横穴が閉じたか否かを検出するように適応される。
【0094】
ステップ1734は、学習方法により計算された、楽器の穴の様々な閉鎖配置に対応するスペクトル振幅距離DNR(i)と現在のスペクトル振幅距離との偏差が計算されるように適応される。
【0095】
ステップ1736で、ステップ1732で検出された状態に最も近い穴の閉鎖状態が最終的に判定される。
【0096】
穴の閉鎖状態が特定されると、それはその楽器の半音階タブ譜により1つの音に対応させられる。すると、この音が音声合成方法によってデジタル式に再生される。
【0097】
本発明の範囲から逸脱することなく、楽器の穴の閉鎖状態を、弾性機械波動の少なくとも1つの受信器により生成される信号から判断できるようにする方法を、以下の特許公報または特許出願、すなわち欧州特許第2150882号明細書、仏国特許第2948471号明細書、仏国特許第2948787号明細書に記載されているものと同じ原理に基づくその他の方法に置き換えることができる。
【0098】
当業者は、これらの異なる文献を参照することにより、弾性機械波動の1つまたは複数の受信器により生成される信号を処理する方法の、そこに記載されている変化型を実行できるであろう。
【0099】
要約すれば、欧州特許第2150882号明細書の文献には、タッチ表面上の接触を検出し、位置特定するための別の方法が記載されており、これもまた、表面上の異なる参照接触点に関連する調記号が記録される第一の、学習段階と、接触が、学習段階で記録された調記号と計算された調記号を比較することによって位置特定される第二の、モニタ段階に基づいている。この原理は、管楽器の穴の閉鎖状態の特定にも同様に応用可能である。
【0100】
同様に、仏国特許第2948471号明細書および仏国特許第2948787号明細書の文献もまた、2つの連続する段階での処理に関する。先行技術文献に記載されている3つの方法の各々は同じ原理に基づいているが、異なるメトリクスを計算して受信器(複数の場合もある)により生成される信号を解析し、学習段階で記録された調記号とモニタ段階中に計算された調記号の比較を行うことを提案している。
【0101】
一般に、本発明は管楽器の横穴の閉鎖状態を検出し、特定する方法を実行するものであり、
− 楽器の穴のある閉鎖状態が考えうるあらゆる状態からアクティベートされ、弾性機械波動が楽器の中で、楽器上にある少なくとも1つの発生点から伝播させられ、弾性機械波動が楽器に帰属する少なくとも1つの受信点において抽出され、抽出された信号の特定の特性がライブラリに保存される第一の、学習段階であって、その半音階タブ譜に対応する楽器の穴の閉鎖状態のすべてについて反復されるような第一の段階と、
− 演奏者が楽器の穴の閉鎖状態をアクティベートして、対応する音を生成させ、少なくとも1つの発生点と少なくとも1つの受信点との間で伝達される弾性機械波動が再び抽出され、抽出された信号の特定の特性がライブラリ内の対応する特性と比較されて、そこからアクティベートされた穴の閉鎖状態を推定し、その後、そこから対応する音が推定される第二の、検出段階と、
を含む。
【0102】
選択した方法に応じて、使用される信号の特性は、抽出された受信信号に対する離散フーリエ変換の計算より得られる参照スペクトル振幅もしくは周波数ベクトル、またはさらには信号の振幅と位相に依存するメトリック、例えば吸収ベクトル、またはさらには楽器本体の表面の振動の基本モードの周波数とすることができる。
【0103】
ここで、本発明の応用を、2つの楽器の例、すなわちクラリネットとサクソフォンについて説明する。これらの例は一切限定するものではなく、当業者であれば、ここでそれらに応用されると説明されている原理は横穴を有する他の管楽器にも容易に拡張できるであろう。特に、本発明による電子システムの考えうる各種の配置が説明されており、これは弾性機械波動を発生させるための少なくとも1つの装置と、弾性機械波動を受け取るための少なくとも1つの装置と、受信装置(複数の場合もある)から供給された信号から上述の各種の方法のうちの1つを実行するように構成されたコンピューティングデバイスと、から構成される。
【0104】
図6は、モダンクラリネット600を側面図で示しており、これは、横穴が設けられた管状本体601と、マウスピース610と、バレル611と、ベル614と、で構成される。本体上に、キー612、613の集合が位置付けられ、これらは片側では左手で、反対側では右手で操作できる。キーという用語はここでは、パッドに連結されたリング上でのミュージシャンの動作を通じて穴を閉じることができるようにする機械的要素を指すために使用されている。相互に連結されたキーの集合は、連結キーセットを構成する。図6は、左手用の連結キーセット612と右手用の連結キーセット613を示している。
【0105】
横穴は、指で直接、またはキーの一部を形成するパッドによって閉じることができる。パッドは、他の穴の上に位置付けられるリングに連結される。それゆえ、リング上での指の動作によって、そのリングに関連付けられたパッドを通じて他の穴を閉じることができる。
【0106】
図7は、クラリネットのうち、キー701により操作されるパッド700により穴が閉じられている部分を示している。
【0107】
図8は、開いているキーの位置を示し、図9は、閉じている同じキーの位置を示す。パッド800が穴801の上に位置付けられて、それを閉じる。
【0108】
図10および11は、指で穴1000を閉じる例を示している。
【0109】
最後に、図12および13は、リング1201上での指の動作によって穴1200を閉じる例を示しており、それによって他の穴が閉じられる。
【0110】
図14は、クラリネットの半音階タブ譜の一例を示す。1つまたは複数の穴の閉鎖の各組合せが1つの音に対応する。
【0111】
本発明によるシステムは、楽器がアコースティックモードとデジタルモードで交互に動作できるように、取り外し可能に設計しなければならない。
【0112】
そのために、本発明によるシステムの発生器(複数の場合もある)と受信器(複数の場合もある)は、楽器の何れの部分にも、例えば本体601、マウスピース610、バレル611、またはベル614に固定でき、取り外し可能な固定手段により固定され、これは接着剤、クランプ、クリップ、磁石、リング、楽器の気柱内への圧入、または発生器と受信器を容易に位置付け、取り外すことのできるその他のあらゆる装置とすることができる。
【0113】
本発明の別の実施形態によれば、発生器と受信器は、楽器の取り外し可能な部分に位置付けることができる。この変形型は、発生器と受信器が固定される取り外し可能な部分を取り外して、それを、楽器をアコースティックモードで動作させることのできる、変更されていない、それに対応する部分に取り換えることが可能であるという利点を提供する。
【0114】
例えば、クラリネットの場合、取り外し可能な部分はマウスピース、バレル、またはベルとすることができる。図15および16は、取り外し可能なベル500の一例を示しており、そこに弾性機械波動の受信器501が固定される。同様に、弾性機械波動の発生器(図示せず)もその取り外し可能なベルに固定できる。図15は、取り外された位置にあるベルを示している。図16は、楽器本体に部分的に嵌め込まれた位置にあるベルを示す。
【0115】
図17は、本発明によるシステムと適合する別の管楽器の例であるサクソフォンを側面図で示す。
【0116】
サクソフォン1800は、以下の要素、すなわちリード1801と、マウスピース1802と、リガチャ1803と、オクターブキー1804と、ネック1805と、ネック締め付けねじ1806と、左手用連結キーセット1807と、右手用連結キーセット1808と、ベル1809と、ベルブレース1810と、キーガード1811と、ブリーチ1812と、から構成される。サクソフォンは、一方の端でネック1805に接続され、他方の端でベル1809に接続された管状本体1820を含む。
【0117】
クラリネットの場合に関して、本発明によるシステムの発生器と受信器は、前述の取り外し可能な固定手段を通じてサクソフォンの何れの部分にも位置付けることができる。
【0118】
図18は、いくつかの発生器E、E、Eの、およびいくつかの受信器R、Rの位置付けの例を示している。この例において、発生器と受信器は好ましくは、ネック1805の表面またはベル1809の中に位置付けられるが、これらは楽器本体に直接固定することもできる。楽器上の発生器と受信器の数と位置は、できるだけ非干渉的に、使用者にとってなるべく煩わしくないように選択される。サクソフォンのネックとベルはそれゆえ、これらの部分がミュージシャンの指と相互作用しないため、好ましい。
【0119】
本発明の別の実施形態によれば、本発明によるシステムの発信器と受信器はまた、サクソフォンの取り外し可能な部分に固定することもできる。この取り外し可能な部分は、サクソフォン上で一般に本来取り外し可能なネック1805またはマウスピース1802とすることができる。
【0120】
本発明によるシステムはまた、図2の説明で述べたように、弾性機械波動の発生器と受信器の電極に接続され、図4において説明した学習方法と図5において説明したモニタ方法を、これらの方法を楽器の穴の閉鎖状態の検出に適応させるために上述の変更を加えたうえで実行するように構成されたコンピューティングデバイスも含む。
【0121】
コンピューティングデバイスは、楽器をアコースティックモードで動作できるようにするために、取り外し可能でなければならない。このために、コンピューティングデバイスは、取り外し可能な固定手段、例えば接着剤、クランプ、クリップ、磁石、リング、楽器の気柱内への圧入、またはその他のあらゆる取り外し可能な機械的連結手段を通じて楽器に固定できる。楽器の外観を変えないように、コンピューティングデバイスは、楽器の気柱の内側に、例えば楽器本体の内側または、ベル、マウスピース、ネック、またはスモールバレル等、楽器の別の部分の内側に固定することもできる。
【0122】
楽器がサクソフォンの場合、コンピューティングデバイスは、ベル1809の内側に埋め込むことのできる筐体を介して固定できる。
【0123】
別の実施形態において、コンピューティングデバイスはまた、発生器と受信器の位置決めに関して既に説明したように、楽器の取り外し可能な部分に固定できる。何れの場合においても、コンピューティングデバイスをその部分の内側に、それが楽器の気柱の中にあることになるような位置に選択される。取り外し可能な部分は、以下の部分、すなわち楽器のネック、ベル、バレル、スモールバレル、またはマウスピースのうちの1つとすることができる。
【0124】
図19は、クラリネットの場合の、本発明による電子システムの1つの考えられる実施例を示している。
【0125】
図19の左側部分は、アコースティック演奏用の構成のクラリネット1900、すなわちオリジナルのクラリネットを示す。
【0126】
図19の右側部分には、楽器の2つの取り外し可能に部分、すなわちマウスピース1901とベル1902が特定されている。これら2つの部分は、楽器をデジタルモードで構成するために取り外すことができる。そのために、当初のマウスピース1901を本発明による変更したマウスピース1911に取り換えることができる。変更したマウスピース1911は、上で説明したように、超音波機械波動の発生器と受信器のいくつかを含むことができる。同様に、当初のベル1902を本発明による変更されたベル1912に取り換えることができ。変更されたベル1912も、弾性機械波動の1つまたは複数の発生器および/またはそれに関連する1つまたは複数の受信器を内蔵できる。変更されたベル1912は、発信器と受信器に連結されて、楽器の穴の閉鎖状態を検出し、特定する方法を実行する、気柱内に固定されたコンピューティングデバイスまたは電子機器を含む。
【0127】
変更されたマウスピース1911は、変更されたベル1912に組み込まれたコンピューティングデバイスに連結でき、演奏者の吹奏を検出するための装置を含む。このようにして、音のデジタル再生を演奏者の吹奏に同期させることが可能である。
【0128】
本発明によるコンピューティングデバイスは、検出された穴の閉鎖状態に関連付けられる音をコンピュータに供給する。このコンピュータは音声合成方法を実行して、ヘッドセット1915によって使用者に対して音をデジタル式に再生するする。コンピュータは、他のコンピュータ1913もしくはスマートフォン1914、またはこれらと同等の他の何れの電子機器に埋め込むこともできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19