特許第6790008号(P6790008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790008
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】検出素子および検出器
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/08 20060101AFI20201116BHJP
   H01L 51/42 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01L31/00 A
   H01L31/08 T
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-46594(P2018-46594)
(22)【出願日】2018年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-161043(P2019-161043A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】相賀 史彦
(72)【発明者】
【氏名】河田 剛
(72)【発明者】
【氏名】高須 勲
(72)【発明者】
【氏名】野村 裕子
(72)【発明者】
【氏名】田口 怜美
(72)【発明者】
【氏名】丁 香美
(72)【発明者】
【氏名】和田 淳
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 励
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2017−0029363(KR,A)
【文献】 特開2009−032983(JP,A)
【文献】 特開平01−126583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/08−31/119,51/42−51/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、放射線のエネルギーを電荷に変換する有機変換層と、
前記有機変換層内に設けられ、バイアスが印加される第3電極と、を備え、
前記第1電極および前記第2電極は、接地されている、
出素子。
【請求項2】
前記第1電極および前記第2電極の電位は、前記第3電極との間に電位差を有する、
請求項1に記載の検出素子。
【請求項3】
前記第1電極、前記第2電極、および前記第3電極の少なくとも一つは、前記有機変換層の厚み方向に貫通する貫通孔を有する、
請求項1または2に記載の検出素子。
【請求項4】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、放射線のエネルギーを電荷に変換する有機変換層と、
前記有機変換層内に設けられ、バイアスが印加される第3電極と、を備え、
前記第1電極、前記第2電極、および前記第3電極の少なくとも一つは、導電性炭素材料からなる、
出素子。
【請求項5】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、放射線のエネルギーを電荷に変換する有機変換層と、
前記有機変換層内に設けられ、バイアスが印加される第3電極と、
前記有機変換層における、前記第1電極および前記第2電極の対向方向に対して交差する方向の少なくとも一端部側に配置され、前記第3電極より電位の低い第4電極
を備える検出素子。
【請求項6】
前記第4電極は、前記対向方向に延伸され、前記対向方向の端部が、前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方に接続されてなる、
請求項5に記載の検出素子。
【請求項7】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、放射線のエネルギーを電荷に変換する有機変換層と、
前記有機変換層内に設けられ、バイアスが印加される第3電極と、を備え、
前記第1電極および前記第2電極は、前記有機変換層を該有機変換層の厚み方向に挟むように配置され、
前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方は、前記厚み方向の位置の異なる複数の電極層から構成され、
複数の前記電極層は、前記第3電極から離れるほど電位差が大きい、
出素子。
【請求項8】
前記放射線は、β線である、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の検出素子。
【請求項9】
前記第3電極より電位の低い2つの第4電極をさらに備え、
前記2つの第4電極の一方は、前記有機変換層における、前記第1電極および前記第2電極の対向方向に対して交差する方向の一方の端部側に配置され、
前記2つの第4電極の他方は、前記有機変換層における、前記対向方向に対して交差する方向の他方の端部側に配置され、
前記2つの第4電極それぞれの前記対向方向の端部の一方は、前記第1電極に接続され、
前記2つの第4電極それぞれの前記対向方向の端部の他方は、前記第2電極に接続される、
請求項1に記載の検出素子。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の検出素子と、
前記第3電極にバイアスを印加する電圧印加部と、
前記第3電極から出力される出力信号を検出する検出部と、
を備える、検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検出素子および検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を電荷に変換する半導体層として、有機材料の有機変換層を用いた検出素子が知られている。検出素子では、有機変換層内に入射した放射線により発生した電子−正孔対に応じた出力信号を検出することで、放射線を検出する。このような検出素子において、ガンマ線以外の放射線の検出感度の改善のために、有機半導体層の厚みを厚くする構成が知られている。
【0003】
しかし、有機変換層の厚みが厚くなるほど、有機半導体層により高い電圧を印加し、より大きい電場を形成する必要が生じる。すると、検出素子の外部のアースと高電圧を印加された電極との電位差が大きくなり、該電極とアースとの間に蓄えられる電磁エネルギーの変化が雑音として検出される場合があった。このため、従来技術では、検出感度が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−15434号公報
【特許文献2】特開2013−89685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、放射線の検出感度の向上を図ることができる、検出素子および検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の検出素子は、第1電極と、第2電極と、有機変換層と、第3電極と、を備える。有機変換層は、第1電極と第2電極との間に配置され、放射線のエネルギーを電荷に変換する。第3電極は、有機変換層内に設けられ、バイアスが印加される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】検出器の一例を示す模式図。
図2】雑音スペクトル測定結果を示す図。
図3】比較検出器の模式図。
図4】検出器の一例を示す模式図。
図5】検出器の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本実施の形態の詳細を説明する。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態の検出器30の一例を示す模式図である。
【0010】
検出器30は、検出素子10と、電圧印加部22と、検出部24と、を備える。検出素子10と、電圧印加部22と、検出部24と、は電気的に接続されている。
【0011】
まず、検出素子10について説明する。検出素子10は、基板18と、第1電極12と、第2電極14と、有機変換層16と、第3電極20と、を備える。
【0012】
本実施の形態では、検出素子10は、基板18上に、第1電極12、有機変換層16、および第2電極14をこの順に積層した積層体である。すなわち、有機変換層16は、第1電極12と第2電極14との間に配置されている。第3電極20は、有機変換層16内に配置されている(詳細後述)。
【0013】
基板18は、検出素子10における基板18以外の構成部を支持可能な部材であればよい。基板18は、例えば、ガラス基板であるが、これに限定されない。
【0014】
第1電極12は、有機変換層16と基板18との間に配置されている。本実施の形態では、第1電極12は、接地されている。
【0015】
本実施の形態では、第1電極12は、有機変換層16に対して、放射線Lの入射方向下流側に配置されている。本実施の形態では、第1電極12は、有機変換層16より放射線Lの入射方向下流側に、有機変換層16に接して配置されている。本実施の形態では、放射線Lは、検出素子10における第2電極14側から第1電極12側に向かう方向に入射する。なお、第1電極12と有機変換層16との間に、第1電極12と第2電極14との間の電場に影響を与えない層(例えば、接着層)が配置されていてもよい。
【0016】
第1電極12は、例えば、有機変換層16における、放射線Lの入射面Sに沿ったシート状の電極である。入射面Sに沿った方向は、有機変換層16の厚み方向(矢印Z方向)に直交する方向(矢印X方向)に一致する。
【0017】
なお、厚み方向(矢印Z方向)を、以下では、厚み方向Zと称して説明する場合がある。また、厚み方向Zに直交する方向(矢印X方向)を、以下では、面方向Xと称して説明する場合がある。
【0018】
第1電極12の、有機変換層16の面方向Xにおける位置および範囲は限定されない。第1電極12は、有機変換層16の出射面S’側の面の全領域に渡って配置された、シート状であることが好ましい。有機変換層16の出射面S’とは、有機変換層16における、測定対象の放射線Lが出射する側の端面を示す。なお、第1電極12は、有機変換層16の出射面S’側の面の一部の領域を占めるシート状であってもよい。また、第1電極12は、有機変換層16の厚み方向Zにおける位置が同じであり、且つ、有機変換層16の出射面S’側の面における位置の異なる、複数領域からなる構成であってもよい。
【0019】
また、第1電極12は、厚み方向Zに貫通する、1または複数の貫通孔Qを備えた構成であってもよい。
【0020】
第2電極14は、有機変換層16に対して、放射線Lの入射方向上流側に配置されている。本実施の形態では、第2電極14は、接地されている。
【0021】
本実施の形態では、第2電極14は、有機変換層16より放射線Lの入射方向上流側に、有機変換層16に接して配置されている。なお、第2電極14と有機変換層16との間に、第1電極12と第2電極14との間の電場に影響を与えず、且つ、検出対象の放射線Lの透過を阻害しない層(例えば、接着層)が配置されていてもよい。
【0022】
第2電極14の、有機変換層16の面方向Xにおける位置および範囲は限定されない。第2電極14は、有機変換層16における放射線Lの入射面S側の面の全領域に渡って配置された、シート状であることが好ましい。有機変換層16の入射面Sとは、有機変換層16における、測定対象の放射線Lが入射する側の端面を示す。なお、第2電極14は、有機変換層16の入射面S側の面の一部の領域を占めるシート状であってもよい。また、第2電極14は、有機変換層16の厚み方向Zにおける位置が同じであり、且つ、有機変換層16の入射面S側の面における位置の異なる、複数領域からなる構成であってもよい。
【0023】
また、第2電極14は、厚み方向Zに貫通する、1または複数の貫通孔Qを備えた構成であってもよい。
【0024】
有機変換層16は、放射線Lのエネルギーを電荷に変換する、有機半導体層である。有機変換層16は、第1電極12と第2電極14との間に配置されている。すなわち、第1電極12および第2電極14は、有機変換層16を、該有機変換層16の厚み方向Zに挟むように配置されている。
【0025】
有機変換層16が電荷に変換する放射線Lの種類は、例えば、β線、重粒子線、α線、中性子線、および、γ線の少なくとも一種である。本実施の形態では、有機変換層16は、β線、α線、および中性子線の少なくとも1種のエネルギーを電荷に変換する構成であることが好ましく、少なくともβ線のエネルギーを電荷に変換する構成であることが特に好ましい。すなわち、本実施の形態の検出素子10で検出する対象の放射線Lは、β線であることが好ましい。
【0026】
有機変換層16は、公知の有機半導体に用いられる有機材料を主成分とした材料構成であればよい。主成分とする、とは、70%以上の含有率であること示す。
【0027】
例えば、有機変換層16に用いる有機材料は、ポリフェニレンビニレン(PPV)の誘導体、ポリチオフェン系高分子材料、の少なくとも1種から選択される。
【0028】
ポリフェニレンビニレンの誘導体は、例えば、ポリ[2−メトキシ,5−(2’−エチル−ヘキシロキシ)−p−フェニレン−ビニレン](MEH−PPV)である。ポリチオフェン系高分子材料は、例えば、ポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)などのポリ(3−アルキルチオフェン),ジオクチルフルオレンエン−ビチオフェン共重合体(F8T2)である。特に好ましくは、有機変換層16には、P3HT、F8T2、を用いればよい。
【0029】
なお、有機変換層16は、有機材料と、無機材料と、の混合物であってもよい。この場合例えば、有機変換層16は、上記有機材料と、フラーレン、フラーレン誘導体、半導体性を有するカーボンナノチューブ(CNT)、CNT化合物、などと、の混合物としてもよい。
【0030】
フラーレン誘導体は、例えば、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチル(PCBM)、フラーレンの二量体、アルカリ金属またはアルカリ土類金属等を導入したフラーレン化合物、などである。CNTは、例えば、フラーレンまたは金属内包フラーレンを内包したカーボンナノチューブである。また、CNTは、例えば、CNTの側壁や先端に、種々の分子を付加したCNT化合物である。
【0031】
有機変換層16の厚みは限定されない。なお、有機変換層16の厚み方向(矢印Z方向)は、第1電極12と第2電極14とが向かい合う方向(対向方向)に一致する。
【0032】
ここで、本実施の形態の検出素子10は、γ線の検出を抑制し、γ線以外の放射線L(β線、α線、中性子線など)を検出することが好ましい。このため、有機変換層16の厚みは、γ線を選択的に透過させ、γ線以外の放射線L(例えば、β線、α線、中性子線など)のエネルギーを選択的に電荷に変換可能な、十分な厚みであることが好ましい。
【0033】
十分な厚みとは、第1電極12または第2電極14の厚みに対して、1000倍以上の厚みを示すことが好ましい。具体的には、十分な厚みとは、有機変換層16の厚みが50μm以上を示すことが好ましく、300μm以上を示すことが更に好ましい。
【0034】
有機変換層16の厚みを上記の十分な厚みとすることで、γ線以外の放射線(例えば、β線、α線、中性子線)により発生する電子−正孔対の数を増加させることができる。このため、上記の十分な厚みとすることで、有機変換層16を、γ線以外の放射線L(例えば、β線、α線、中性子線など)のエネルギーを選択的に電荷に変換可能な構成とすることができる。
【0035】
次に、第3電極20について説明する。第3電極20は、有機変換層16内に設けられている。第3電極20は、バイアスが印加される電極である。
【0036】
第3電極20は、電圧印加部22および検出部24に電気的に接続されている。電圧印加部22は、第3電極20にバイアスを印加する。検出部24は、第3電極20から出力される出力信号を検出する。
【0037】
すなわち、第3電極20は、バイアスを印加される電極であると共に、出力信号の検出に用いる電極である。
【0038】
なお、第3電極20の電位は、第1電極12および第2電極14の電位より高い。言い換えると、第1電極12および第2電極14の電位は、第3電極20との間に電位差を有する。図1には、第1電極12および第2電極14が接地されている場合を示した。このため、第1電極12および第2電極14の電位は、第3電極20の電位より低い。
【0039】
なお、第1電極12および第2電極14の電位は、第3電極20との間に電位差を有すればよく、第1電極12および第2電極14の双方が接地された形態に限定されない。すなわち、第1電極12および第2電極14の少なくとも一方は、第3電極20より電位が低くなりように、抵抗を介して、電圧印加部22に接続されていてもよい。
【0040】
第3電極20の、有機変換層16の厚み方向Zにおける位置は、限定されない。
【0041】
但し、第3電極20は、有機変換層16の厚み方向Zの中央に配置されていることが好ましい。すなわち、第1電極12と第3電極20との第1距離L1は、第2電極14と第3電極20との第2距離L2と、略同じであることが好ましい。
【0042】
第3電極20の、有機変換層16の面方向Xにおける位置および範囲は限定されない。第3電極20は、有機変換層16内における面方向Xの全領域に渡って配置された、シート状であることが好ましい。なお、第3電極20は、有機変換層16における面方向Xの一部の領域を占めるシート状であってもよい。また、第3電極20は、有機変換層16の厚み方向Zにおける位置が同じであり且つ面方向Xにおける位置の異なる、複数領域からなる構成であってもよい。
【0043】
第3電極20は、有機変換層16の厚み方向Zに貫通する、1または複数の貫通孔Qを有することが好ましい。
【0044】
第3電極20が貫通孔Qを有すると、有機変換層16でγ線のエネルギーを電荷に変換することを抑制することができる。このため、有機変換層16が、γ線以外の他の放射線L(β線、α線、中性子線など)のエネルギーを選択的に電荷に変換することができる。これは、有機変換層16内に入射した放射線Lに含まれるγ線が、第3電極20にあたって有機変換層16を非透過となり、有機変換層16で電荷に変換されることを抑制することができるためと考えられる。
【0045】
また、第1電極12および第2電極14の少なくとも一方が貫通孔Qを有する場合についても、同様の効果が得られる。
【0046】
なお、第1電極12、第2電極14、および第3電極20の少なくとも1つが複数の貫通孔Qを有する場合、複数の貫通孔Qは、互いに同じ大きさで、且つ同じ間隔を隔てて面方向Xに沿って均一に配列されていることが好ましい。すなわち、第1電極12、第2電極14、および第3電極20の少なくとも1つは、複数の貫通孔Qによって、網目状のシートとして構成されていることが好ましい。なお、貫通孔Qの形状は限定されない。例えば、貫通孔Qの形状は、円形状、矩形状、の何れであってもよい。
【0047】
第1電極12、第2電極14、および第3電極20の構成材料は、導電性を有する材料であればよく、限定されない。第1電極12は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ、Indium Tin Oxide)、グラフェン、ZnO、アルミニウム、金などである。
【0048】
但し、第2電極14は、導電性を有し、且つ、有機変換層16に入射する放射線Lを透過する材料である必要がある。
【0049】
なお、第1電極12、第2電極14、および第3電極20の少なくとも1つは、導電性炭素材料から構成することが好ましい。第1電極12、第2電極14、および第3電極20の少なくとも1つを導電性炭素材料から構成することで、有機変換層16がγ線のエネルギーを電荷に変換することを抑制することができる。
【0050】
例えば、第1電極12、第2電極14、および第3電極20の少なくとも1つは、炭素繊維、カーボンペーパー、多孔質炭素シート、活性炭シート、およびグラフェンの少なくとも1種以上から構成すればよい。
【0051】
次に、電圧印加部22について説明する。電圧印加部22は、第3電極20にバイアスを印加する。なお、電圧印加部22は、検出部24のアンプを介して、第3電極20にバイアスを印加してもよい。
【0052】
検出部24は、第3電極20から出力される出力信号を検出する。出力信号は、有機変換層16で変換された電荷量を示す信号である。言い換えると、出力信号は、有機変換層16で検出された、放射線Lの検出エネルギーである。検出部24は、有機変換層16で検出された電荷の電荷量を、チャージアンプなどで計測可能な信号に変換することで、出力信号とする。なお、本実施の形態では、説明を簡略化するために、検出部24では、第1電極12から出力信号を受付けるものとして説明する。
【0053】
検出部24は、第3電極20から受付けた出力信号に基づいて、放射線Lの検出エネルギーを導出する。検出エネルギーの導出には、公知の方法を用いればよい。
【0054】
検出器30の作製方法
次に、検出器30の作製方法を説明する。検出器30の作製方法は限定されない。例えば、検出器30は、以下の手順で作製する。
【0055】
まず、検出素子10を作製する。基板18上に第1電極12を積層し、第1電極12上に、有機変換層16A、第3電極20、有機変換層16B、第2電極14、をこの順に積層する。なお、有機変換層16Aおよび有機変換層16Bは、有機変換層16の一部である。有機変換層16Aは、有機変換層16における、第1電極12と第3電極20との間の層を示す。また、有機変換層16Bは、有機変換層16における、第3電極20と第2電極14との間の層を示す。
【0056】
第1電極12、有機変換層16(有機変換層16A、有機変換層16B)、第3電極20、第2電極14、の積層方法には、公知の成膜方法や公知の作製方法を用いればよい。
【0057】
そして、第1電極12および第2電極14を接地する。また、第3電極20を、電圧印加部22および検出部24に電気的に接続する。これらの手順により、検出器30を作製する。
【0058】
次に、検出素子10の作用について説明する。
【0059】
検出素子10に放射線Lが入射し、有機変換層16へ到る。有機変換層16に到った放射線Lによって、有機変換層16内に電子と正孔の電子−正孔対が発生する。詳細には、有機変換層16内における、有機変換層16の厚み方向Zおよび面方向Xの様々な位置で、電子−正孔対が発生する。発生した電子−正孔対における正孔は、第1電極12および第2電極14側へ移動し、電子eは、第3電極20側へ移動する。
【0060】
ここで、本実施の形態の検出素子10は、有機変換層16内に、バイアスを印加される第3電極20が設けられている。また、有機変換層16は、第1電極12と第2電極14との間に配置されている。
【0061】
このため、電圧印加部22が第3電極20に対して、より高い電圧印加することで、有機変換層16により大きい電場が形成された場合であっても、有機変換層16の外側に配置されている第1電極12および第2電極14と、検出素子10の外部のアースE(具体的には、地面や建造物、人など)との間の電位差を、本実施の構成としない場合に比べて小さくすることができる。すなわち、本実施の形態の検出素子10では、第3電極20から出力される出力信号に対する、第1電極12および第2電極14とアースEとの間に蓄えられる電磁エネルギーの変化による影響を抑制することができる。
【0062】
図2は、本実施の形態の検出素子10の検出部24で検出された出力信号に含まれる雑音スペクトル測定結果80と、比較検出素子の検出部24で検出された出力信号に含まれる雑音スペクトル測定結果800と、を示す図である。
【0063】
なお、比較検出素子には、図3に示す比較検出器300に含まれる比較検出素子100を用いた。図3は、比較検出器300の模式図である。比較検出器300は、従来の検出器である。
【0064】
比較検出器300は、比較検出素子100と、電圧印加部22と、検出部24と、を備える。電圧印加部22および検出部24の機能は、本実施の形態の検出器30と同様である。
【0065】
比較検出素子100は、従来の検出素子である。比較検出素子100は、基板18と、第1電極120と、有機変換層16と、第2電極140と、を備える。有機変換層16は、第1電極120と第2電極140との間に配置されている。また、比較検出素子100の有機変換層16内には、電極が設けられていない。第1電極120は、バイアスを印加される電極である。第1電極120は、電圧印加部22および検出部24に接続されている。一方、第2電極140は、接地されている。
【0066】
図2に戻り説明を続ける。そして、検出素子10の第3電極20に+200Vの電圧を印加し、第3電極20から出力される出力信号に含まれる雑音スペクトル測定結果80を得た。同様に、比較検出素子100の第1電極120に+200Vの電圧を印加し、第1電極120から出力される出力信号に含まれる雑音スペクトル測定結果800を得た。
【0067】
その結果、図2に示すように、本実施の形態の検出素子10の検出部24で検出された出力信号に含まれる雑音スペクトル測定結果80は、比較検出素子100の検出部24で検出された出力信号に含まれる雑音スペクトル測定結果800に比べて、含まれる雑音の低減が図られていた。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態の検出素子10は、第1電極12と、第2電極14と、有機変換層16と、第3電極20と、を備える。有機変換層16は、第1電極12と第2電極14との間に配置され、放射線Lのエネルギーを電荷に変換する。第3電極20は、有機変換層16内に設けられ、バイアスが印加される。
【0069】
このため、本実施の形態の検出素子10では、第3電極20に対して高電圧が印加されて有機変換層16により大きい電場が形成された場合であっても、有機変換層16の外側に配置されている第1電極12および第2電極14と、検出素子10の外部のアースEとの間の電位差を、本実施の構成としない場合に比べて小さくすることができる。すなわち、本実施の形態の検出素子10では、第3電極20から出力される出力信号に対する、第1電極12および第2電極14とアースEとの間に蓄えられる電磁エネルギーの変化による影響を抑制することができる。すなわち、本実施の形態の検出素子10は、第3電極20から出力される出力信号に、雑音が含まれることを抑制することができる。
【0070】
従って、本実施の形態の検出素子10は、検出感度の低下を抑制することができる。
【0071】
(変形例1)
なお、上記実施の形態では、第3電極20は、有機変換層16内における面方向Xの全領域に渡って配置された、シート状である形態を一例として説明した。
【0072】
しかし、第3電極20は、有機変換層16の厚み方向Zにおける位置が同じであり且つ面方向Xにおける位置の異なる、複数領域からなる構成であってもよい。
【0073】
図4は、本変形例における検出器50の一例を示す模式図である。
【0074】
検出器50は、検出素子60と、電圧印加部22と、検出部24と、を備える。検出素子60と、電圧印加部22と、検出部24と、は電気的に接続されている。なお、図4には、電圧印加部22が、検出部24を介して検出素子60に電圧を印加する構成を一例として示した。
【0075】
検出器50は、検出素子10に代えて検出素子60を備えた点以外は、上記実施の形態の検出素子10と同様の構成である。検出素子60は、第3電極20の配置が異なる点以外は、上記実施の形態の検出素子10と同様である。
【0076】
本変形例では、第3電極20は、有機変換層16の厚み方向Zにおける位置が同じであり且つ面方向Xにおける位置の異なる、複数領域20〜20から構成されている。
【0077】
なお、第3電極20は、2つの領域から構成されていてもよいし、4つ以上の領域から構成されていてもよい。
【0078】
このように、第3電極20は、有機変換層16の厚み方向Zにおける位置が同じであり且つ面方向Xにおける位置の異なる、複数領域から構成されていてもよい。
【0079】
(変形例2)
なお、本実施の形態では、第1電極12および第2電極14が、1層のシート状である場合を一例として説明した。しかし、第1電極12および第2電極14の少なくとも一方は、有機変換層16の厚み方向における位置が互いに異なる、複数の電極層から構成されていてもよい。
【0080】
この場合、第1電極12および第2電極14の少なくとも一方を構成する複数の電極層は、第3電極20から離れるほど電位差が大きいことが好ましい。
【0081】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、上記実施の形態の検出素子10が、更に第4電極を備えた構成を説明する。
【0082】
図5は、本実施の形態の検出器31の一例を示す模式図である。
【0083】
検出器31は、検出素子11と、電圧印加部22と、検出部24と、を備える。検出素子11と、電圧印加部22と、検出部24と、は電気的に接続されている。電圧印加部22および検出部24は、第1の実施の形態の検出器30と同様である。
【0084】
検出素子11は、基板18と、第1電極12と、第2電極14と、有機変換層16と、第3電極20と、第4電極15と、を備える。基板18、第1電極12、第2電極14、有機変換層16、および基板18は、第1の実施の形態の検出素子10と同様である。
【0085】
第4電極15は、有機変換層16における、第1電極12および第2電極14の対向方向(厚み方向Z)に対して交差する方向(面方向X)の少なくとも一端部側に配置されている。また、第4電極15の電位は、第3電極20より低い。
【0086】
本実施の形態では、第4電極15は、有機変換層16における、面方向Xの一端部と他端部の各々に配置された形態を一例として示した(第4電極15A、第4電極15B)。なお、すなわち、本実施の形態では、第4電極15は、第4電極15Aおよび第4電極15Bを含む。なお、第4電極15Aおよび第4電極15Bを総称して説明する場合には、単に、第4電極15と称して説明する。
【0087】
第4電極15は、第1電極12と第2電極14の対向方向(すなわち、有機変換層16の厚み方向Z)に延伸されていることが好ましい。また、第4電極15は、この対向方向(厚み方向Z)の端部が、第1電極12および第2電極14の少なくとも一方に接続されていることが好ましい。
【0088】
図5には、第4電極15Aおよび第4電極15Bの双方が、これらの第4電極15の延伸方向(矢印Z方向)の一端部を第2電極14に接続され、他端部を第1電極12に接続された形態を、一例として示した。
【0089】
このため、本実施の形態では、第3電極20は、第1電極12、第2電極14、および第4電極15によって、外周の少なくとも一部を囲まれるように、有機変換層16内に配置されている。
【0090】
なお、第4電極15は、第3電極20より低い電位であればよい。好ましくは、第4電極15は、第3電極20より低電位であり、且つ、第1電極12および第2電極14と同じ電位であることが好ましい。また、第4電極15は、接地されていることが特に好ましい。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態では、検出素子11が、第1の実施の形態で説明した検出素子10の構成に加えて、更に、第4電極15を備える。第4電極15は、有機変換層16における、第1電極12および第2電極14の対向方向(厚み方向Z)に対して交差する方向(面方向X)の少なくとも一端部側に配置され、第3電極20より電位の低い電極である。
【0092】
このため、本実施の形態では、検出素子11の有機変換層16内に配置された第3電極20が、第3電極20より低電位の電極によって、より囲まれて配置された構成となる。
【0093】
従って、本実施の形態の検出素子11は、第1の実施の形態の検出素子10に比べて、更に、検出感度の低下を抑制することができる。
【0094】
なお、上記実施の形態では、第3電極20にプラスバイアスを印加した場合を説明した。同様に、第3電極20にマイナスバイアスを印加し、その他の電極が、第3電極20より高い電位の場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0095】
なお、上記実施の形態で説明した検出素子10、検出素子11、および検出素子60の適用範囲は、限定されない。例えば、検出素子10、検出素子11、」および検出素子60は、放射線Lを検出する各種の装置に適用可能である。具体的には、検出素子10、検出素子11、および検出素子60は、サーベイメータなどに適用できる。
【0096】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
10、11、60 検出素子
12 第1電極
14 第2電極
16 有機変換層
20 第3電極
Q 貫通孔
15、15A、15B 第4電極
22 電圧印加部
24 検出部
30、31、50 検出器
図1
図2
図3
図4
図5