(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートベルトを巻き取るスピンドルと、車両の前後方向における加速度を検出する加速度センサと、該加速度センサによって検出される加速度に応じてシートベルトの引出動作をロックするロック機構とを備え、車両に設けられるリクライニング式シートのシートバックに取り付けられるシートベルト用リトラクタであって、
前記加速度センサは、前記シートバックと一体的に傾動するセンサカバーと、前記車両の幅方向に沿った軸線を中心として前記センサカバーに対して揺動自在に支持され、前記シートバックの傾動時に前記センサカバーに対して前記車両の前後方向に揺動し、且つ、慣性体支持面を備えたセンサハウジングと、前記慣性体支持面上に支持されて前記加速度が所定値以上となった際に中立位置から変位する慣性体と、該慣性体が前記車両の前後方向に移動した際に連動して前記ロック機構をロック側へ作動させる作動部材と、を有し、
前記センサハウジングは、円弧状に並ぶ複数の歯を有する外歯部を備え、
前記リトラクタは更に、前記スピンドルの軸に摩擦接合により連結されて、前記スピンドルが前記シートベルトを引き出す方向に回転するとき、先端に設けられた係合部が前記外歯部に係合する第1の方向に旋回し、前記スピンドルが前記シートベルトを巻き取る方向に回転するとき、前記係合部が前記外歯部から離間する第2の方向に旋回するレバー部材と、を備え、
前記リクライニング式シートがリクライニングされる際、前記レバー部材の前記第1の方向への回動を阻止する回動阻止機構を備えることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
前記外歯部は、前記センサハウジングの側壁の一部が延設された外周面に形成されるかまたは、前記センサハウジングの側壁上に固定されたプレート状部材の外周面に形成されることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のようなシートベルトリトラクタでは、乗員がシートベルトを装着した状態でリクライニングすると、シートベルトが引き出されるため、加速度センサの姿勢が固定されてしまう。これにより、ロック機構が作動してシートベルトがロックされ、シートベルトが乗員を圧迫して不快感を与える虞があり、改善の余地があった。特許文献2に記載のシートベルトリトラクタでは、上記課題は存在しないものの、シートバックに取り付けられた本体部と、シート部に取り付けられた別体部が、フレキシブルシャフトアッシにより連結された複雑な構造となっているため、コスト増大の要因となっていた。
【0008】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗員がシートベルトを装着した状態でリクライニングしても、シートベルトが乗員に圧迫感を与えることがないシートベルト用リトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) シートベルトを巻き取るスピンドルと、車両の前後方向における加速度を検出する加速度センサと、該加速度センサによって検出される加速度に応じてシートベルトの引出動作をロックするロック機構とを備え、車両に設けられるリクライニング式シートのシートバックに取り付けられるシートベルト用リトラクタであって、
前記加速度センサは、前記シートバックと一体的に傾動するセンサカバーと、前記車両の幅方向に沿った軸線を中心として前記センサカバーに対して揺動自在に支持され、前記シートバックの傾動時に前記センサカバーに対して前記車両の前後方向に揺動し、且つ、慣性体支持面を備えたセンサハウジングと、前記慣性体支持面上に支持されて前記加速度が所定値以上となった際に中立位置から変位する慣性体と、該慣性体が前記車両の前後方向に移動した際に連動して前記ロック機構をロック側へ作動させる作動部材と、を有し、
前記センサハウジングは、外周面に円弧状に並ぶ複数の歯を有する外歯部を備え、
前記リトラクタは更に、前記スピンドルの軸に摩擦接合により連結されて、前記スピンドルが前記シートベルトを引き出す方向に回転するとき、先端に設けられた係合部が前記外歯部に係合する第1の方向に旋回し、前記スピンドルが前記シートベルトを巻き取る方向に回転するとき、前記係合部が前記外歯部から離間する第2の方向に旋回するレバー部材と、を備え、
前記リクライニング式シートがリクライニングされる際、前記レバー部材の前記第1の方向への回動を阻止する回動阻止機構を備えることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
(2) 前記外歯部は、前記センサハウジングの側壁の一部が延設された外周面に形成されるかまたは、前記センサハウジングの側壁上に固定されたプレート状部材の外周面に形成されることを特徴とする(1)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(3) 前記回動阻止機構は、
前記スピンドルを支持するケースに回転可能に支持され、前記レバー部材が前記第1の方向へ回動するのを阻止するように前記レバー部材と当接可能な突起腕を有する係合解除プーリと、
一端が前記係合解除プーリに接続され、前記シートバックを回動させるためのリクライニングレバーの操作と連動するコントロールケーブルと、
を備え、
前記リクライニングレバーが操作されたとき、前記コントロールケーブルを介して前記係合解除プーリを回動させて、前記レバー部材が前記突起腕に当接することで、前記レバー部材の前記第1の方向への旋回を阻止することを特徴とする、(1)または(2)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(4) 前記回動阻止機構は、
前記ケースと前記係合解除プーリとの間に配置され、前記リクライニングレバーの操作を停止したとき、前記突起腕が前記レバー部材から離間するように前記係合解除プーリを付勢するばね部材をさらに備えることを特徴とする、(3)に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシートベルト用リトラクタによれば、シートバックの傾動時に車両の前後方向に揺動し、且つ、慣性体支持面を備えた加速度センサのセンサハウジングは、円弧状に並ぶ外歯部を備える。また、リトラクタは、スピンドルの軸に摩擦接合により連結されて、スピンドルがシートベルトを引き出す方向に回転するとき、先端に設けられた係合部が外歯部に係合する第1の方向に旋回し、スピンドルがシートベルトを巻き取る方向に回転するとき、係合部が外歯部から離間する第2の方向に旋回するレバー部材と、リクライニング式シートがリクライニングされる際、レバー部材の第1の方向への旋回を阻止する回動阻止機構と、を備える。これにより、リクライニング式シートをリクライニングするとき、回動阻止機構がレバー部材の第1の方向への旋回を阻止してレバー部材の係合部とセンサハウジングの外歯部との係合を防止する。この結果、乗員がシートベルトを装着した状態でリクライニングする際、シートベルトのロックを防止してシートベルトが乗員に与える圧迫感をなくすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るシートベルト用リトラクタを図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本実施形態のシートベルト用リトラクタ10は、不図示のリクライニング式シートのシートバックに装着されて、シートバックと共に車両前後方向に傾動(リクライニング)可能である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、シートベルト用リトラクタ10は、不図示のシートベルトが巻装される金属製(例えば、アルミ合金製)のスピンドル20と、スピンドル20を回転自在に支持する金属製のコ字状のフレーム11と、フレーム11の一方の側板11aの外側に配置された、シートベルトの引き出しを機械的にロックするロック機構40、加速度センサ70を備えるセンサ機構60と、及びレバー部材90の回動を阻止する回動阻止機構100と、を備える。また、リトラクタ10は、フレーム11の他方の側板11bの外側に配置され、スピンドル20をシートベルトの巻き取り方向に回転付勢するバネ式の巻き取り装置30を備える。
【0015】
フレーム11の一対の側板11a、11bは、スピンドル20の軸方向の中央部分を挟んで互いに対向する。また、フレーム11の側板11aの円形開口の内周には、後述するロックドッグ41の爪42と噛合する多数の内歯12が形成されている。
【0016】
スピンドル20は、シートベルトが巻回される胴部21と、胴部21から軸方向外側に延出する一対の軸22、23と、を有する。スピンドル20は、一方の軸22が、後述するケースとしての樹脂製のシステムカバー99のボス101に形成された支持孔102に嵌合し、また他方の軸23が、樹脂製のスプリングケース33に形成された支持孔34に嵌合して、回転自在に支持されている。スピンドル20は、回転することでシートベルトを巻き取り、引き出し可能である。
【0017】
また、スピンドル20の一方の端面側には、略3角形状のロックドッグ収容空間24が形成され、該ロックドッグ収容空間24内にロックドッグ41が変位自在に収容されている。
【0018】
巻き取り装置30は、スプリングハウジング31と、帯板状のばね素材を渦巻状に巻いて構成され、スピンドル20を常時、巻き取り方向に付勢する巻き取りばね32と、スプリングハウジング31を軸方向及び径方向から覆うようにして、フレーム11の他方の側板11bに固定されるスプリングケース33と、によって構成される。スプリングケース33の内壁面には、スピンドル20の他端側の軸23を回転自在に支持する支持孔34が形成されている。
【0019】
ロック機構40は、ロック部材としての金属製(例えば、鉄製)のロックドッグ41と、樹脂製のステアリングホイール44と、シートベルトの急激な引き出しを感知してスピンドル20のシートベルト引き出し方向の回転を阻止するWSレバー45及びWSスプリング46と、を備え、フレーム11に固定されるベアリングプレート47によって覆われている。
【0020】
ステアリングホイール44は、スピンドル20に相対回転可能に支持され、スピンドル20に対して回転遅れを生じることによりロックドッグ41を作動する。ステアリングホイール44は、ロックドッグ41のカムピン43が係合するカム孔48と、WSレバー45を揺動自在に支持する凸軸49と、外周面に形成された複数の係止爪50と、を有している。
【0021】
ロックドッグ41は、オメガスプリング25によりスピンドル20に対して反時計回りに付勢されている。したがって、カムピン43がカム孔48に挿入されたロックドッグ41は、爪42が内歯12から離れるロック解除方向に保持される。また、ステアリングホイール44がスピンドル20に対して時計回りに相対的に回転する(実際には、スピンドル20が回転する)時には、カムピン43がカム孔48に沿って作動し、爪42を径方向外方に進出させる。そして、径方向外方に進出した爪42を、フレーム11の内歯12に噛み合わせることにより、スピンドル20をフレーム11の内歯12にロックさせ、シートベルト引き出し方向の回転を機械的にロックする。
【0022】
WSレバー45は、慣性体としての機能も併せ持つように金属製で構成されており、ベアリングプレート47の内面に形成された不図示の内歯に係合可能な爪51を備え、ステアリングホイール44の凸軸49に嵌合する。WSレバー45には、WSスプリング46が装着されて爪51を内方に退避させる方向(ベアリングプレート47の内歯から離間する方向)に回転付勢している。従って、通常時には、爪51がベアリングプレート47の内歯と係合しない非作動位置に保持される。
【0023】
これにより、乗員の急な移動によりシートベルトが引き出されると、WSレバー45が慣性力によって回動し、WSレバー45の爪51が外方に突き出されて、ベアリングプレート47の内歯に噛合する。したがって、ステアリングホイール44のシートベルト引き出し方向の回転を阻止する。
【0024】
ベアリングプレート47の下方には、センサ機構60を構成する加速度センサ70が配設されている。
図2及び
図3も参照して、加速度センサ70は、ベアリングプレート47に固定されたセンサカバー71と、センサハウジング72と、センサハウジング72に収容される慣性体であるCSボール73と、作動部材である第1センサレバー74及び第2センサレバー75と、センサハウジング72に固定されたセンサウェイト76と、を備える。
【0025】
センサハウジング72は、車両の前後方向及び幅方向の側面が側壁で囲まれ、底部にすり鉢状凹面である慣性体支持面78が設けられ(
図5(a)参照)、上方が開放された略椀型に形成されている。センサハウジング72は、車両の幅方向の側壁72a,72bからスピンドル20の軸22と平行に突出する一対のピン77(
図3では一方のピンのみ図示)を備え、センサカバー71に旋回可能に支承されている。
【0026】
また、センサハウジング72に設けられた一対の割ピン72cは、センサウェイト76の一対の孔76aに挿通されてセンサウェイト76をセンサハウジング72に固定する。これにより、センサハウジング72は、センサウェイト76に作用する重力によって、一対のピン77を中心として回動して常に垂直方向に維持される。
【0027】
センサハウジング72の底部には、CSボール73を支持するすり鉢状凹面である慣性体支持面78が設けられている(
図5(a)参照)。そして、慣性体支持面78上に載置されたCSボール73が所定以上の水平方向の加速度を受けると、CSボール73が中立位置から変位して車両、即ち、シートベルトリトラクタ10に作用する加速度を検知する。
【0028】
また、センサハウジング72から上方に突出して設けられた一対の腕部79(
図3では一方の腕部のみ図示)には、第1センサレバー74の基端部に形成された軸部74aが回動自在に嵌合する。第1センサレバー74の先端側には、CSボール73の上面に被さる椀部74bが設けられている。
【0029】
第2センサレバー75は、基端部に形成された支持孔75aと、先端部に形成された係合爪75bと、それらの中間部から横方向(車両幅方向)に突設された係止片75cとを備える。第2センサレバー75は、センサカバー71から上方に突出する腕部71aに設けられた支持ピン71bに支持孔75aが挿入されて回動自在に支持されている(
図2参照)。第2センサレバー75は、第1センサレバー74の椀部74bの上面に当接している。
【0030】
そして、加速度によってCSボール73が中立位置から変位すると、第1センサレバー74が軸部74aを中心として回動し、椀部74bに当接する第2センサレバー75を押し上げて係合爪75bがステアリングホイール44の係止爪50に係合してステアリングホイール44の回転を停止させる。
【0031】
これにより、ロックドッグ41が作動して、フレーム11の一方の側板11aに設けられた内歯12に係合してシートベルトの引き出しを阻止して乗員を保護する。即ち、第1センサレバー74、及び第2センサレバー75は、ステアリングホイール44、ロックドッグ41、及びフレーム11の内歯12で構成されるロック機構40を作動させる作動部材を構成する。
【0032】
センサハウジング72の一方の側壁72aは、外方(
図3において、左上方)に向かって扇形のフランジ状に延設され、ピン77を中心とするこの扇形部分の外周面には、円弧状に並ぶ複数の歯81を有する外歯部84が形成されている。
【0033】
一方、
図1及び
図2を参照して、ベアリングプレート47から軸方向外側に突出するスピンドル20の軸22には、センターハブ85が一体回転可能に固定されている。センターハブ85は、軸方向に並んで形成されたギヤ85aと円筒部85bを備える。センターハブ85のギヤ85aは、第1ギヤ86、第2ギヤ87、及びカムディスク88と共にギヤ列を構成する。
【0034】
カムディスク88は、該ギヤ列のギヤ比に従って軸22の回転が減速されて回転する。カムディスク88の外周面には、第2センサレバー75の係止片75cに対向してカム部88aが形成されている。
図3に示すように、カム部88aは、カムディスク88の回転中心からの半径が小さなカム面88bと、カムディスク88の回転中心からの半径が大きなカム面88cとが、連続して形成されている。
【0035】
カムディスク88の回転によりカム面88bが第2センサレバー75の係止片75cに対向して位置したとき、カム面88bと第2センサレバー75の係止片75cとの間には所定の隙間を有している。従って、第2センサレバー75は支持孔75aを中心に回動自在であり、加速度センサ70による加速度検出が可能である。
【0036】
また、カムディスク88の回転によりカム面88cが第2センサレバー75の係止片75cに対向して位置したとき、カム面88cは第2センサレバー75の係止片75cに当接して第2センサレバー75の回動を阻止する。
【0037】
カム面88bとカム面88cとの切り替え位置、即ち、カム面88cが第2センサレバー75の係止片75cに当接を開始する位置は、無着座でバックルがタング(いずれも図示せず)にラッチされた状態(空ラッチ状態)から全量のシートベルトがスピンドルに巻き取られた状態(シートベルト格納状態)となる間に切り換わるように設定されている。
【0038】
これにより、カム面88cが第2センサレバー75の係止片75cに対向して位置するとき、加速度センサ70に水平方向の加速度が作用しても第2センサレバー75は作動せず、第1センサレバー74の意図しない作動による加速度センサ70のエンドロックを防止する。
【0039】
図5も参照して、センターハブ85の円筒部85bには、レバー部材90の基部91が摺動自在に嵌合する。基部91からは径方向外方に腕部93が延設され、腕部93の先端部には係合部92が一体に成形されている。
【0040】
基部91は、側面視において、周方向の一部が切欠かれた略C形に形成されると共に、切欠きの反対側には、径方向に延びる切欠き溝91aが設けられている。これにより、基部91は、径方向に弾性変形(縮径)可能である。
【0041】
基部91の外周面に形成された不図示の円環溝には、摩擦スプリング94が装着されている。これにより、基部91が摩擦スプリング94の弾性力により縮径し、センターハブ85の円筒部85bと基部91とが摩擦力により結合される。該摩擦力の大きさは、摩擦スプリング94の弾性力に略比例する。
【0042】
スピンドル20と共にセンターハブ85が回転すると、レバー部材90は、センターハブ85の円筒部85bと基部91との摩擦力により一体回転する。より具体的には、伝達トルクが、センターハブ85の円筒部85bと基部91との摩擦力によるトルクより小さい場合には、センターハブ85と基部91とは一体回転する。また、伝達トルクが、センターハブ85の円筒部85bと基部91との摩擦力によるトルクより大きい場合には、センターハブ85と基部91とは摩擦力に抗して摺動して相対回転する。なお、ベアリングプレート47の外側面には、レバー部材90の時計方向の回転を制限するためのストッパ47aが一体成型されている。
【0043】
即ち、レバー部材90は、摩擦スプリング94の作用により、スピンドル20の軸22の回動に伴って軸22と同じ方向に回動する。具体的には、スピンドル20がシートベルトを引き出す方向に回転すると、レバー部材90は、摩擦スプリング94の摩擦作用により係合部92が外歯部84に係合する第1の方向(
図3において反時計方向)に旋回し、スピンドル20がシートベルトを巻き取る方向に回転すると、係合部92が外歯部84から離間する第2の方向(
図3において時計方向)に旋回する。
【0044】
図1及び
図5に示すように、システムカバー99の軸方向外側には、回動阻止機構100が配設されている。支持孔102を有して軸方向に突出するシステムカバー99のボス101には、係合解除プーリ110の中心に形成された支持孔111が嵌合し、係合解除プーリ110を回動自在に支持する。係合解除プーリ110は、システムカバー99に形成された略円形の壁部103で囲曉され、カバー104で塞がれた解除プーリ室105内に収容されている。また、システムカバー99には、係合解除プーリ110の後述する突起腕113を挿通させる円弧状長孔106がシステムカバー99の側壁を貫通して形成されている。
【0045】
係合解除プーリ110は、略円盤状の本体部112から径方向外方に突出し、その先端が軸方向(スピンドル20方向)に屈曲する突起腕113が形成されている。また、係合解除プーリ110は、本体部112から径方向外方に突出するばね受け腕114を備える。
【0046】
係合解除プーリ110は、突起腕113をシステムカバー99の円弧状長孔106に挿通させてシステムカバー99のボス101に回動自在に嵌合する。突起腕113は、レバー部材90の腕部93と当接可能に、円弧状長孔106内を移動可能に設けられている。突起腕113は、後述するリクライニングレバー130が操作されていない状態では、円弧状長孔106の反時計方向側に位置し、レバー部材90の係合部92が外歯部84と係合するためのレバー部材90の第1の方向(反時計方向)への旋回を許容する。一方、突起腕113は、リクライニングレバー130が操作されている状態では、円弧状長孔106の時計方向側に位置し、レバー部材90の腕部93が突起腕113に当接して、レバー部材90の第1の方向への回転が阻止される。したがって、この状態で、レバー部材90が反時計方向に回動しようとすると、レバー部材90は、腕部93と突起腕113との当接により、摩擦スプリング94の摩擦作用に抗して円筒部85bのまわりを回転する。
【0047】
また、ばね受け腕114とシステムカバー99の壁部103の段部に形成されたばね受け107との間には、ばね部材108が配設されて係合解除プーリ110を常に反時計方向(第1の方向)に付勢している。
【0048】
係合解除プーリ110には、コントロールケーブル120のインナーケーブル121を巻き付けるためのケーブル巻付溝115が外周面に設けられると共に、インナーケーブル121の一端121aに固定されたエンドブロック122が挿入されるエンドブロック挿入孔116が側面に設けられている。
【0049】
インナーケーブル121が進退自在に延出するアウターケーブル123は、、環状突部123aがシステムカバー99の溝部109に収容されることで、システムカバー99に装着固定されている。インナーケーブル121の他端121bは、シートバックをリクライニングする際に操作されるリクライニングレバー130の、レバー部131と反対側に突出する腕132に連結されている。
【0050】
そして、
図5(a)に示すように、リクライニングレバー130が操作されていない通常時には、係合解除プーリ110がばね部材108の弾性力により第1の方向(反時計方向)に回動して係合解除プーリ110の突起腕113がレバー部材90の腕部93から離間した位置にある。
【0051】
ここで、
図5(b)に示すように、リクライニングするためにリクライニングレバー130のレバー部131が上方に引かれてリクライニングレバー130が時計方向に回動操作されると、インナーケーブル121がアウターケーブル123内で引かれて係合解除プーリ110がばね部材108の弾性力に抗して第2の方向(時計方向)に回動する。これにより、係合解除プーリ110の突起腕113が、円弧状長孔106の反時計方向側に位置し、レバー部材90の腕部93が当接することで、レバー部材90の第1の方向への回動を阻止するので、レバー部材90の係合部92が外歯部84から離間する。
【0052】
また、リクライニングレバー130の回動操作が解除されると、係合解除プーリ110は、ばね部材108の弾性力により第1の方向(反時計方向)に回転して
図5(a)に示す元の状態に復帰する。
【0053】
即ち、係合解除プーリ110、ばね部材108、コントロールケーブル120、及びリクライニングレバー130は、レバー部材90の第1の方向への旋回を阻止する回動阻止機構100を構成する。
【0054】
次に、
図6〜
図9を参照して本実施形態のシートベルト用リトラクタの作用を説明する。なお、以下では、乗員がシートベルトを装着した状態で、リクライニング式シートのシートバックを後傾する場合について説明する。
【0055】
図6(a)に示すように、リクライニング式シートのシートバック、即ちシートベルト用リトラクタ10が、例えば鉛直方向に対して11°後傾した基準位置にあり、且つリクライニングレバー130が操作されていないとき、係合解除プーリ110は、ばね部材108の弾性力により第1の方向に回動して、係合解除プーリ110の突起腕113とレバー部材90の腕部93とは離間している。
【0056】
また、レバー部材90は、通常、シートベルト装着後のたるみ除去の際のスピンドル20の回転(第2の方向)により係合部92が外歯部84から離間した非係合位置にある。このとき、加速度センサ70のセンサハウジング72は、センサウェイト76に作用する重力によって、垂直方向を向いてその姿勢が維持される。
【0057】
ここで、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、リクライニングのためにリクライニングレバー130が操作されると、コントロールケーブル120のインナーケーブル121が引き込まれて係合解除プーリ110がばね部材108の弾性力に抗して第2の方向(時計方向)に回転し、係合解除プーリ110の突起腕113が円弧状長孔106の反時計方向側に位置し、レバー部材90の腕部93が当接することで、レバー部材90の第1の方向への回動を阻止する。
【0058】
そして、
図7(a)に示すように、リクライニング式シートのシートバックが後傾を開始してシートベルト用リトラクタ10が、例えば12°後傾すると、該後傾によりシートベルトが引き出されてスピンドル20が第1の方向(反時計方向)に回転する。このとき、摩擦スプリング94の作用によりスピンドル20の軸22に摩擦結合するレバー部材90も第1の方向に回転しようとするが、リクライニングレバー130が操作状態にあるため、係合解除プーリ110の突起腕113がレバー部材90の腕部93に当接してレバー部材90の第1の方向への回動を阻止し、レバー部材90の係合部92とセンサハウジング72の外歯部84との係合が解除された状態が維持される。
【0059】
従って、加速度センサ70のセンサハウジング72は、垂直方向を向いてその姿勢が維持され、慣性体支持面78に支持されていたCSボール73が移動することはない。即ち、シートベルトはロックされずにリクライニング式シートのシートバックの傾動に伴って自由に引き出し可能である。これにより、乗員がシートベルトを装着したままリクライニングしても、シートベルトにより圧迫されることがない。
【0060】
さらに、
図7(b)に示すように、シートベルト用リトラクタ10が、例えば25°後傾する場合も、
図7(a)と同様に、シートベルトが引き出されてスピンドル20が第1の方向(反時計方向)に回転するが、レバー部材90は、係合解除プーリ110の突起腕113に当接して第1の方向への回動が阻止されるので、レバー部材90の係合部92とセンサハウジング72の外歯部84との係合が解除された状態が維持され、シートベルトは自由に引き出し可能である。
【0061】
さらに
図8(a)に示すように、シートベルト用リトラクタ10が、例えば30°後傾する場合、
図8(b)に示すように、シートベルト用リトラクタ10が、例えば40°後傾する場合、
図9(a)に示すように、シートベルト用リトラクタ10が、最大角度である例えば45°後傾する場合にも、
図6(b)で説明したと同様に、レバー部材90は、係合解除プーリ110の突起腕113に当接して第1の方向への回動が阻止されて、レバー部材90の係合部92とセンサハウジング72の外歯部84との係合が解除された状態が維持され、シートベルトは自由に引き出し可能である。
【0062】
そして、
図9(b)に示すように、シートベルト用リトラクタ10が、例えば45°後傾した状態で、リクライニングレバー130が非操作位置に戻されると、
図5(a)に示すように、係合解除プーリ110はばね部材108の弾性力により第1の方向(反時計方向)に回転して元の状態に復帰し、係合解除プーリ110の突起腕113がレバー部材90の腕部93から離間する。
【0063】
このとき、スピンドル20が第1の方向に回転すると、レバー部材90も第1の方向に回転して、レバー部材90の係合部92とセンサハウジング72の外歯部84とが係合する。なお、ここでは45°後傾した状態でリクライニングレバー130が非操作位置に戻される場合について説明したが、任意の角度後傾した状態においても、上述したと同様に作動する。
【0064】
このように、リクライニングのためにリクライニングレバー130が操作されている間は、係合解除プーリ110の突起腕113によりレバー部材90の第1の方向へ回転が阻止され、レバー部材90の係合部92とセンサハウジング72の外歯部84とが係合することがないので、加速度センサ70のセンサハウジング72は垂直方向の姿勢が維持されてシートベルトがロックされない。これにより、乗員がシートベルトを装着した状態でリクライニングしてもシートベルトが乗員に圧迫感を与えることがない。
【0065】
また、リクライニング完了後は、どのリクライニング角度においてもシートベルトが引き出されるとレバー部材90が第1の方向に回転してレバー部材90の係合部92とセンサハウジング72の外歯部84とが係合し、加速度センサ70の姿勢を固定して加速度検出感度を一定に維持する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態のシートベルト用リトラクタ10によれば、加速度センサ70は、慣性体支持面78を備えてシートバックの傾動時に車両の前後方向に揺動するセンサハウジング72を備える。センサハウジング72は、円弧状に並ぶ複数の歯81を有する外歯部84を備える。また、リトラクタ10は、スピンドル20の軸22に摩擦接合により連結されて、スピンドル20がシートベルトを引き出す方向に回転するとき、先端に設けられた係合部92が外歯部84に係合する第1の方向に旋回し、スピンドル20がシートベルトを巻き取る方向に回転するとき、係合部92が外歯部84から離間する第2の方向に旋回するレバー部材90と、リクライニング式シートがリクライニングされる際、レバー部材90の第1の方向への回動を阻止する回動阻止機構100と、を備えるので、リクライニング式シートをリクライニングすると、回動阻止機構100がレバー部材90の第1の方向への回動を阻止してレバー部材90の係合部92とセンサハウジング72の外歯部84との係合が阻止される。これにより、乗員がシートベルトを装着した状態でリクライニングしても、シートベルトが引き出される際のシートベルトのロックが防止されてシートベルトが乗員に与える圧迫感をなくすことができる。
【0067】
また、外歯部84は、センサハウジング72の側壁72aの一部が、フランジ状に延設された円弧状外周面に形成されるので、部品点数を増加することなく、外歯部84を有するセンサハウジング72を安価に製作できる。
【0068】
また、回動阻止機構100は、レバー部材90と当接してレバー部材90の第1の方向への回動を阻止する突起腕113を備える係合解除プーリ110と、一端121aが係合解除プーリ110に接続され、他端121bがリクライニングレバー130に接続されてリクライニングレバー130の操作と連動するコントロールケーブル120と、を備え、リクライニングレバー130が操作されたとき、コントロールケーブル120を介して係合解除プーリ110を回動させてレバー部材90の第1の方向への旋回を阻止するので、リクライニング操作されている期間は、確実にシートベルトロックによる乗員の拘束を防止できる。
【0069】
また、回動阻止機構100は、システムカバー99と係合解除プーリ110との間に配置され、リクライニングレバー130の操作を停止したとき、突起腕113がレバー部材90から離間するように係合解除プーリ110を付勢するばね部材108をさらに備えるので、リクライニング操作されていない期間は、加速度センサ70を正常に作動させることができる。
【0070】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、外歯部は、上記実施形態の様に、側壁の一部としてセンサハウジング自体に形成されても良いが、プレート状部材をセンサハウジングの側壁上に固定してそのプレート状部材の外周部に形成されていても良い。即ち、外歯部はセンサハウジングと一体的に設けられるものであるが、それが別部材で作られてセンサハウジングに取り付けられても良いし、センサハウジングの一部(側壁)がそれを有するように構成されても良い。