特許第6790107号(P6790107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6790107微細パターン形成用組成物およびそれを用いた微細パターン形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790107
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】微細パターン形成用組成物およびそれを用いた微細パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/40 20060101AFI20201116BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20201116BHJP
   C08L 39/04 20060101ALI20201116BHJP
   C08K 5/3465 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   G03F7/40 511
   H01L21/30 570
   C08L39/04
   C08K5/3465
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-545446(P2018-545446)
(86)(22)【出願日】2017年2月27日
(65)【公表番号】特表2019-514037(P2019-514037A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2017000267
(87)【国際公開番号】WO2017157506
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-51545(P2016-51545)
(32)【優先日】2016年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506427679
【氏名又は名称】メルク、パテント、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】宮本 義大
(72)【発明者】
【氏名】片山 朋英
(72)【発明者】
【氏名】佐尾 高歩
【審査官】 川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−275995(JP,A)
【文献】 特開2015−187633(JP,A)
【文献】 特開2011−221494(JP,A)
【文献】 特開平03−164742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/40
C08K 5/3465
C08L 39/04
H01L 21/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル樹脂と、
以下の式(I)で表されるアミン化合物と、
【化1】
(式中、
、LおよびLは、それぞれ独立に、−CR−(Rは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜6のアルキルである)である結合単位が2個または3個結合した二価基である)
溶剤と
を含んでなる半導体製造プロセスにおいて、レジストパターン間の分離サイズまたはパターン開口サイズを縮小させることができる微細パターン形成用組成物であって、
前記ビニル樹脂の含有量が、前記微細パターン形成用組成物100質量部当たり、10〜40質量部である、微細パターン形成用組成物。
【請求項2】
、LおよびLがそれぞれ結合単位が2個結合した二価基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ビニル樹脂が水溶性ビニル樹脂である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビニル樹脂が、ビニルピロリドンモノマーおよびビニルイミダゾールモノマーから誘導されるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ビニル樹脂が以下の式(II)で表される重合体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【化2】
(式中、
、RおよびRは、それぞれ独立に、水素またはメチルであり、Rは、アルキルオキシカルボニル、ヒドロキシアルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはヒドロキシアルキルカルボニルオキシ(ここでアルキルは炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状アルキルである)であり、
x、yおよびzは、それぞれ5〜1000の整数であり、かつ
それぞれの繰り返し単位は、ランダムに結合していても、規則的に結合していても、ブロックで結合していてもよい)
【請求項6】
前記組成物において、前記アミン化合物の質量の、前記ビニル樹脂の質量に対する比が、0.1以上0.4以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物において、前記アミン化合物の質量の、前記ビニル樹脂の質量に対する比が、0.2以上0.3以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物において、前記ビニル樹脂の重量平均分子量が5,000〜500,000である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ビニル樹脂の含有量が前記組成物100質量部当たり10〜20質量部である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記溶剤が水を含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、さらに界面活性剤を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
基板上にレジストパターンを形成させる工程、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を前記レジストパターン上に塗布し、組成物層を形成させる工程、
前記レジストパターンおよび前記組成物層をミキシングベークし、前記組成物層中に不溶化層を形成させる工程、および
前記不溶化層以外の前記組成物層を除去する工程
を含んでなる微細パターンの製造方法。
【請求項13】
前記レジストパターンの膜厚が1μm以上10μm以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基板上にレジストパターンを形成させる工程、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を前記レジストパターン上に塗布し、組成物層を形成させる工程、
前記レジストパターンおよび前記組成物層をミキシングベークし、前記組成物層中に不溶化層を形成させる工程、
前記不溶化層以外の前記組成物層を除去し、微細パターンを形成させる工程、
前記微細パターンをマスクとして、基板にイオン注入する工程、
前記イオン注入後に、前記微細パターンを除去する工程、
を含んでなるデバイスの製造方法。
【請求項15】
前記組成物層に、水、水に可溶性の有機溶剤と水との混合液、またはアルカリ水溶液と、接触させることによって、前記不溶化層以外の前記組成物層を除去する、請求項14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセスにおいて、レジストパターンを形成させる際、既に形成されたレジストパターン間の分離サイズまたはパターン開口サイズを縮小することにより、より微細なパターンを形成させることができる微細パターン形成用組成物、およびこの微細パターン形成用組成物を用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの分野においては、製品の小型化、薄型化、および軽量化が望まれている。これに対応して、半導体デバイスの高集積化や高精細化が検討されている。半導体デバイスの製造においては、一般にフォトリソグラフィー技術により微細パターンを形成し、形成されたレジストパターンをマスクとして、下地となる各種基板のエッチング、イオンドーピング、電解めっき法を用いた金属配線の形成が行われている。このため、半導体デバイスに適用される配線などを微細化するには、レジストパターン形成に用いられるフォトリソグラフィー技術を向上させることが非常に有効である。
【0003】
ここでフォトリソグラフィー技術は、一般には、レジスト塗布、マスキング、露光、および現像の各工程の組み合わせで構成される。一般に微細なパターンを得るためには、短波長光で露光することが望ましい。しかしそのような短波長光の光源は非常に高価であり、製造コストの観点からは望ましくない。さらには従来の露光方法を利用したフォトリソグラフィー技術では、露光波長の波長限界を超えた微細レジストパターンを形成するのは困難であった。
【0004】
このため、このような高価な装置を用いることなく、また従来公知のポジ型あるいはネガ型感光性樹脂組成物を用い、従来公知のパターン形成装置を用いてレジストパターンを形成し、この形成されたレジストパターンを実効的に微細化する方法が鋭意研究されてきた。そして、レジストパターンを実効的に微細化する方法の一つとして、公知の感光性樹脂組成物、例えば化学増幅型フォトレジストを用い、従来法によりパターン形成を行った後、形成されたレジストパターン上に水溶性樹脂を含む微細パターン形成用組成物からなる被覆層を施し、レジストを加熱等することにより、被覆層とレジストパターンの間にミキシング層を形成させ、その後被覆層の一部を除去することによりレジストパターンを太らせ、結果としてレジストパターン間の幅を狭くし、レジストパターンの分離サイズあるいはホール開口サイズを縮小してレジストパターンの微細化を図り、実効的に解像限界以下の微細レジストパターンを形成する方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1は、ビニル樹脂とアミン化合物を含む組成物を用いるレジストパターンの微細化方法について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−275995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レジストパターンの微細化が求められる一方、高エネルギーのイオン注入等に対応するため、より厚く、アスペクト比が高い、レジストパターンが求められてきている。厚膜のレジストパターンの場合、レジストパターンの溶解が起こったり、均一に微細化することが困難であったりする等、薄膜のレジストパターンとは異なる課題が存在することを、本発明者らは見出した。このため、厚膜レジストに適用でき、適用後のパターン形状が良好であり、寸法縮小率が高く、欠陥数が少ない、微細パターン形成用組成物の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、厚膜レジストに適用しても、適用後のパターン形状が良好であり、寸法縮小率が高く、欠陥数が少ない、微細パターン形成用組成物、さらにはそれを用いた微細パターン形成方法を提供するものである。
さらには、本発明によれば、その微細パターン形成方法により形成された微細なパターンを含む、優れた特性を有する素子が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による組成物は、
ビニル樹脂と、
以下の式(I)で表されるアミン化合物と、
【化1】
(式中、
、LおよびLは、それぞれ独立に、−CR−(Rは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜6のアルキルである)、−(C=O)−、または−O−からなる群から選択される、同一または異なる結合単位が2個または3個結合した二価基であり、L、LおよびLは、それぞれ少なくとも1つの−CR−を含んでなる)
溶剤と
を含んでなることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明による微細パターンの形成方法は、
基板上にレジストパターンを形成させる工程、
本発明による組成物を前記レジストパターン上に塗布し、組成物層を形成させる工程、
前記レジストパターンおよび前記組成物層をミキシングベークし、前記組成物層中に不溶化層を形成させる工程、
前記不溶化層以外の前記組成物層を除去する工程
を含んでなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レジストパターンに対して、スペース部またはコンタクトホール部への埋め込み性に優れた微細パターン形成用組成物が提供される。この組成物によればレジストパターンを精度よく微細化することができ、またこの組成物を用いて形成されたレジストパターンは、スペース部の寸法縮小率が高く、欠陥数が少なく、波長限界を超えるパターンを良好かつ経済的に形成させることができる。またこのようにして形成された微細レジストパターンをマスクとして用いることにより、基板上に縮小されたパターンを形成することができ、微細パターンを有する素子等を簡単に、かつ歩留まりよく製造することができる。
【0012】
本発明による微細パターンの形成方法によれば、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、イオン注入法、金属めっき法などにおいて、アスペクト比の高いパターンを露光波長の限界解像以下にまで微細化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の組成物を用いて、微細化されたパターンを形成する方法を説明する説明図(左側)および分子の動きを示すイメージ図(右側)である。
図2図2は、レジストパターンのみ、実施例1および比較例2の組成物で被覆されたレジストパターンの、断面SEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
組成物
本発明による組成物は、ビニル樹脂と特定のアミン化合物と溶剤とを含んでなる。さらには、必要に応じてその他の成分を含んでなる。これらの各成分について以下に説明する。
【0015】
(1)ビニル樹脂
本発明の微細パターン形成用組成物において用いられるビニル樹脂は、共重合体モノマー成分の一つとしてビニルイミダゾールを用いたビニル共重合樹脂である。ビニル樹脂は、水溶性であることが好ましい。本発明において、水溶性ビニル樹脂とは、25℃の水100gに対して2g以上、好ましくは5g以上、さらに好ましくは10g以上、の樹脂が溶解可能である場合をいう。
【0016】
本発明において、好ましいビニル樹脂の例を挙げると、ビニルイミダゾールと窒素原子を含有するビニルモノマーの1種以上からなる共重合体、またはビニルイミダゾールまたはビニルイミダゾールと窒素原子を含有するビニルモノマーの少なくとも1種と窒素原子を含有しないビニルモノマーの少なくとも1種からなる共重合体が挙げられる。窒素原子を含有するビニルモノマーとしては、アリルアミン、アクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。
【0017】
前記共重合体において窒素原子含有モノマー以外のモノマーが用いられる理由は、共重合体中のモノマー成分のブロック化を防ぐためであり、これによりビニルイミダゾールモノマーのブロック化による化学反応の局在化を防止して、親水性・疎水性のバランスの崩れを改善することができる。したがって、前記他のモノマーは、この目的を達成し得るものであればいずれのものであってもよいが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルアルキレート、ビニルヒドロキシアルキレートなどを好ましいモノマーとして挙げることができる。なお、本発明においては、「(メタ)アクリル」とは、「アルリル」と「メタクリル」とを総称するために用いられている。
【0018】
また、本発明においては、共重合体モノマー成分の一つとしてビニルイミダゾールを用いることが好ましいが、その理由は、共重合体モノマー成分としてビニルイミダゾールが用いられていると、共重合体樹脂の中のビニルイミダゾールモノマー部分のN複素環が、レジストの中のカルボン酸、アセタール等のエステル化合物、およびフェノールなどの極性が高い官能基と塩形成や分子間結合の形成などの反応を起こし、不溶化層を形成し易いためである。また、ビニルイミダゾールモノマー部位は疎水性が高いため、ビニルイミダゾールモノマー部位以外のモノマー部位に親水性基を導入することによって、比較的容易に親水性、疎水性のバランス調整が可能であり、レジストとのミキシング性向上に有利であることによる。ビニルイミダゾールモノマーを用いた共重合体の好ましい例を挙げると、ビニルイミダゾール以外の窒素原子含有ビニルモノマー(a−1)とビニルイミダゾール(a−2)との共重合体、例えば、アリルアミン、アクリルアミド、ビニルピロリドンまたはビニルカプロラクタムからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーとビニルイミダゾールとの共重合体、ビニルイミダゾール以外の窒素原子含有ビニルモノマー(a−1)とビニルイミダゾール(a−2)とこれら以外のその他のモノマー(b)とからなる3元共重合体、例えば、アリルアミン、アクリルアミド、ビニルピロリドンまたはビニルカプロラクタムからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーとビニルイミダゾールとこれら以外のモノマーとの3元共重合体が好ましいものとして挙げられる。
【0019】
前記共重合体において、ビニルイミダゾール以外の窒素原子含有ビニルモノマー(a−1)、ビニルイミダゾール(a−2)およびその他のモノマー(b)の割合は、任意でよく、特に限定されるものではないが、通常、(a−1):(a−2)はモル比で0.1:99.9〜99.9:0.1であり、(a−1)+(a−2)の合計量:bはモル比で、70:30〜99.9:0.1であることが好ましい。
【0020】
上記好ましい重合体の中でも、特に好ましいものとして、ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの共重合体、および下記一般式(II)で示されるビニルピロリドンと、ビニルイミダゾールと、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルアルキレートおよびビニルヒドロキシアルキレートの少なくとも1種との共重合体が挙げられる。
【0021】
【化2】
式中、R、RおよびRは、各々独立して、水素原子またはメチルを表し、Rは、アルキルオキシカルボニル、ヒドロキシアルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはヒドロキシアルキルカルボニルオキシ(ここでアルキルは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状アルキルを示す。)を表し、x、yおよびzは、5〜1,000の整数を表す。それぞれの繰り返し単位は、ランダムに結合していても、規則的に結合していても、ブロックで結合していてもよい。
【0022】
前記アルキルオキシカルボニル、ヒドロキシアルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはヒドロキシアルキルカルボニルオキシとして好ましい基としては、−COOCH、−COO−(CH−CH−OH、−OCOCH、−OCO−(CH−CH−OH(式中、sおよびtは1〜5の整数である)が挙げられる。
【0023】
本発明のビニル樹脂の分子量については特に制限はないが、塗布性とろ過性などの点から、重量平均分子量で5,000〜500,000が好ましく、10,000〜50,000がより好ましい。分子量が、5,000未満では、塗布性が劣り均質な塗布膜が得られ難くなると共に塗布膜の経時安定性が低下する。一方、分子量が500,000を越えると、塗布時に糸引き現象が起きたり、レジスト表面への広がりが悪く、少量の滴下量で均一な塗布膜を得ることができなくなる。更には、フィルターの透過性が劣悪な場合が多い。
【0024】
ビニル樹脂の含有量は、任意に選択することができるが、被膜を厚く塗るためには固形分濃度を高くすることが必要である。具体的には、ビニル樹脂の含有量は、本発明による組成物100質量部当たり好ましくは10〜40質量部、好ましくは10〜20質量部である。ボイド形成を防止するという観点から微細パターン形成用組成物100質量部当たり20質量部以下であることが好ましく、また埋め込み率を高く維持するために微細パターン形成用組成物100質量部当たり10質量部以上であることが好ましい。
【0025】
(2)アミン化合物
本発明による組成物は、下記一般式(I)で表される特定のアミン化合物を含んでなる。
【化3】
式中、
、LおよびLは、それぞれ独立に、−CR−(Rは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜6のアルキルである)、−(C=O)−、または−O−からなる群から選択される、同一または異なる結合単位が2個または3個結合した二価基であり、
、LおよびLは、それぞれ少なくとも1つの−CR−を含んでなる。
【0026】
本発明の微細パターン形成用組成物の作用は、以下に記載のものと推測されるが、なんら本願発明を限定するものではない。従来知られていた微細パターン形成用組成物は、レジストパターン上に塗布して、パターンの微細化処理をする際に、含まれる樹脂やアミン化合物がレジストパターンに過度に浸透してしまい、レジストパターンを溶解してしまうなどの現象により、レジストパターンの形状を劣化させてしまうことがあった。パターニング後の厚膜レジストパターンは薄膜の場合と比較して液体含有量(Liquid content)が高く、従来の微細パターン形成用組成物ではレジストパターンへの浸透が生じやすいと考えられた。これに対して、本発明者らの検討によれば、上記一般式(I)で表される特定のアミン化合物を含む組成物を用いることにより、レジストパターンの形状劣化を抑制しながらパターンの微細化をすることが可能であることが分かった。すなわち、式(I)で表されるアミン化合物は、後述するミキシングベークの際に組成物からレジストパターン内部に浸透してレジストを膨張させ、組成物に含まれるビニル樹脂を浸透し易くさせ、界面近傍におけるレジストパターンと組成物成分とのインターミキシングをより円滑に行わせるものであると考えられる。このアミン化合物は、式(I)で表されるように、母骨格自体がかご型の立体構造を有する。このような嵩高い構造を有することにより、アミン化合物そのものがレジストパターン内部へ浸透しすぎてレジストパターンを溶解することを抑えつつ、ビニル樹脂を浸透させ、パターンの微細化を達成するものと考えられる。
【0027】
上記一般式(I)中、Rとしては、例えば、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。Rとしては、水素、メチル、エチルが好ましい。Rとしては、水素がさらに好ましい。
【0028】
は−CR−を2つ以上含むことが好ましい。LおよびLは、それぞれ−CR−を2つ以上含むことが好ましい。L、LおよびLは、それぞれ−CR−を2つ以上含むことがさらに好ましい。
【0029】
は、上述の結合単位が2個結合した二価基であることが好ましい。LおよびLは、それぞれ上述の結合単位が2個結合した二価基であることが好ましい。L、LおよびLは、それぞれ上述の結合単位が2個結合した二価基であることがさらに好ましい。
【0030】
上記一般式(I)で表される化合物を具体的に示すと、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン、1,4−ジアザ−2−オキサビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン、1,5−ジアザビシクロ[3.3.2]デカン、1,5−ジアザビシクロ[3.3.3]ウンデカンなどが代表的なものとして挙げられる。また、これらのアミン化合物の、塩酸、フッ酸などの酸との塩を用いることもできる。上記一般式(I)で表される化合物の構造式を具体的に示すと、例えば以下の構造式が挙げられる。
【化4】
【0031】
本発明によるアミン化合物の含有量は、本発明による効果を損なわない限り限定されないが、好ましくは、本発明によるビニル樹脂の質量に対し、本発明によるアミン化合物の質量が0.1以上0.4以下であり、より好ましくは0.2以上0.3以下である。
【0032】
(3)溶剤
本発明による微細パターン形成用組成物に用いられる溶剤は、前記のビニル樹脂、アミン化合物および必要に応じて用いられるその他の添加剤を溶解するためのものである。このような溶媒は、レジストパターンを溶解させないことが必要である。好ましくは、水または水を含有する溶剤が挙げられる。溶媒として用いられる水は、特に制限されるものではないが、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理等により有機不純物、金属イオンを除去したもの、例えば純水が好ましい。
【0033】
また、水に水溶性有機溶媒を混合して用いることもできる。このような水溶性有機溶媒としては、水に対し0.1重量%以上溶解する溶媒であれば特に制限はなく、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができ、好ましいものとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のC〜Cの低級アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。これら溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これら溶媒は、微細パターン形成用組成物とした際にその組成物が塗布されるレジストパターンを溶解しない範囲で用いられる。
【0034】
本発明による組成物は、前記した(1)〜(3)を必須とするものであるが、必要に応じて更なる化合物を組み合わせることができる。これらの組み合わせることができる材料について説明すると以下の通りである。なお、組成物全体にしめる(1)〜(3)以外の成分は、全体の質量に対して、2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。
【0035】
(4)界面活性剤
また、本発明の微細パターン形成用組成物には、塗布性を向上させるために、界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては任意のものを用いることができる。本発明に用いることができる界面活性剤の例としては、
(A)陰イオン界面活性剤、(B)陽イオン界面活性剤、または(C)非イオン界面活性剤を挙げることができ、より具体的には(A)アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸、およびアルキルベンゼンスルホネート、(B)ラウリルピリジニウムクロライド、およびラウリルメチルアンモニウムクロライド、ならびに(C)ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、およびポリオキシエチレンアセチレニックグリコールエーテルが好ましい。これらの界面活性剤は、例えば、非イオン界面活性剤の例としては、日本乳化剤社製の非イオンアルキルエーテル系界面活性剤等が市販されている。
【0036】
(5)その他の添加剤
本発明による微細パターン形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意の添加剤を用いることができる。そのような添加剤のひとつとしては、可塑剤、例えばエチレングリコール、グリセリン、トリエチルグリコールなど、が挙げられる。また、レベリング剤などを用いることもできる。
【0037】
微細パターン形成方法
以下、本発明による微細パターン形成方法を、図を参照しつつ、説明する。
図1(a)左図は、基板1上にレジストパターン2が形成された状態を示す。用いられる基板は、特に限定されないが、例えば半導体基板(例えば、シリコンウエハなど)、LCD、PDPなどのガラス基板などが挙げられる。基板には、導電膜、配線、半導体などが形成されていてもよい。また、レジストパターンの形成は、例えば、基板上に、フォトレジストをスピンコートなど従来公知の方法により塗布し、プリベーク(例えば、ベーク温度:70〜140℃で1分程度)後、g線、i線などの紫外線、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ光などの遠紫外線、X線、電子線などで露光し、必要に応じポストエクスポージャーベーク(PEB)(例えば、ベーク温度:50〜140℃)を行った後、現像し、必要であれば現像後ベークを行う(例えば、ベーク温度:60〜120℃)ことにより形成される。本発明による組成物を適用するレジストパターンは、KrFエキシマレーザ用のレジストであって、プリベーク後の膜厚が1μm以上10μm以下であるものが好ましく、膜厚が1μm以上5μm以下、であるものがより好ましい。
【0038】
図1(b)左図は、形成されたレジストパターン上に、本発明による組成物を塗布し、組成物層3が形成された状態を示す。図1(b)右図は、その状態の分子を模式的に示したもので、レジスト中の分子6と本発明による組成物の分子7とが存在している。本発明による組成物の塗布は、従来知られた何れの方法、例えばスピンコート法、スプレー法、浸漬法、ローラーコート法など任意の方法によって行われればよい。このとき、組成物の塗布量は、任意の量でよいが、例えば1μm以上5μm以下(乾燥膜厚)程度が好ましい。塗布後、必要に応じプリベークし(例えば、60〜90℃、15〜90秒)、組成物層を形成させる。
【0039】
図1(c)左図は、形成された組成物層とレジストパターンとを加熱処理(ミキシングベーク)した後に、不溶化層が形成された状態を示す。ミキシングベークにより、レジスト膜中へのアミン化合物の浸透が促進され、これによりレジスト膜の膨潤が促進され、ビニル樹脂が浸透しやすくなり、インターミキシングがより円滑に作用できることとなって、微細パターンのスペース部の縮小が促進される。インターミキシングされた状態を模式的に示すのが、図1((c)右図である。ミキシングベークにより、窒素原子含有水溶性ビニル樹脂とレジスト樹脂の中のカルボン酸、アセタール等のエステル官能基や極性が高いフェノール基等との反応も促進される。ミキシングベークの温度およびベーク時間は、使用されるレジスト、本発明による組成物で使用される材料、ターゲットとする微細パターンの線幅などにより適宜決定される。ミキシングベークの温度およびベーク時間は、通常100〜180℃程度の温度で、30〜90秒程度行えばよいが、本発明はこれに限定されない。ベーク温度が高くなると、ミキシングがより活発に起き、組成物中の不溶化層が大きくなる。
【0040】
図1(d)左図は、不溶化層が形成された後、組成物層が水に接触することによって、組成物層中の不溶化層以外の部分を除去され、シュリンク層5が形成された状態を示す。
なお、不溶化層以外の部分の除去には、水に限らず、水と水に可溶性の有機溶剤との混合液、あるいはTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)などのアルカリ水溶液等の液体を用いることもできる。なお、除去の条件によって、不溶化層の厚さが変化することがある。例えば、液体との接触時間を長くすることで、不溶化層の厚さは薄くなることがある。以上の処理により、トレンチパターンやドットパターンが実効的に微細化され、微細パターンを得ることができる。
【0041】
形成された微細パターンは、基板加工に利用される。具体的には、微細パターンをマスクとして、下地となる各種基板を、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、イオン注入法、金属めっき法などを用いて、加工することができる。本発明による微細パターンは、膜厚を厚く、アスペクト比を高くし得るので、イオン注入法を用いた基板加工に用いられることが好ましい。つまり、微細パターンをマスクとして、イオン注入による不純物ドーピングを行うと、下地基板のうち、微細パターンで覆われていない部分のみに不純物ドーピングがされるのである。このように所望の領域のみに不純物ドーピングを行うことにより、より小さな半導体素子構造などを基板上に形成させることが可能になる。この他、ドライエッチングやウェットエッチングによって基板を蝕刻加工して凹部を形成させ、その凹部に導電性材料を充填して回路構造を形成させたり、金属メッキ法によって微細パターンで覆われていない部分に金属層を形成させて回路構造を形成させたりすることもできる。
【0042】
微細パターンをマスクとして、所望による加工を行った後、微細パターンは除去される。その後、必要に応じて、基板にさらに加工がされ、素子が形成される。これらのさらなる加工は、従来知られている任意の方法を適用することができる。素子形成後、必要に応じて、基板をチップに切断し、リードフレームに接続され、樹脂でパッケージングされる。本発明では、このパッケージングされたものをデバイスということとする。
【0043】
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれら例のみに限定されるものではない。
【0044】
レジストパターン形成例
8インチシリコンウエハに、スピンコーター(東京エレクトロン社製MK−VIII)にて、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理し、さらにポジ型フォトレジストAZ TX1311(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製、以下、メルク社と略記する)を同一のスピンコーターにて塗布し、150℃、130秒間ホットプレートにてプリベークを行い、厚さ約3.0μmのレジスト膜を形成させた。次いで露光装置(キャノン社製FPA−3000 EX5、NA=0.55、σ=0.55、Focus Offset=−1.4μm)を用いてKrFレーザー(248nm)で露光し、ホットプレートにて110℃、160秒間のポストエクスポージャーベークを行った。これをTMAH2.38%現像液を用い、23℃の条件下で1分間スプレーパドルで現像した。得られたレジストパターンは、ドットパターンで、パターン幅1μm、スペース幅0.3μm、アスペクト比が10.0であった。
【0045】
実施例1
1リットルのガラス容器を用い、ビニル樹脂としてビニルピロリドンモノマーとビニルイミダゾールモノマーとの共重合体16.5g(モル比1:1)とを、純水78.5gに溶解させ、水溶液を得た。これに、アミン化合物として1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン4.9gおよび非イオンアルキルエーテル系界面活性剤(日本乳化剤社製、商標名ニューコールTA−420)0.1gを添加し、1時間程度攪拌した後に、0.05ミクロンのフィルターを通してろ過して、実施例1の組成物を得た。
【0046】
実施例2〜4、比較例1〜8
実施例1のアミン化合物1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン4.9gに代え、以下の表1に示される量のアミン化合物を用いた他は、実施例1と同様にして、実施例2〜4および比較例1〜8の組成物を得た。
表中、ビニル樹脂に対する添加比は、添加されたアミン化合物の質量をビニルピロリドンモノマーとビニルイミダゾールモノマーとの共重合体の質量(16.5g)で割った値を示す。
【表1】
表中、*1は、株式会社日本触媒製のエポミン(登録商標)品番SP−006である。
【0047】
埋め込みの評価
レジストパターン形成例で得られた、8インチのパターンウエハ上に実施例1〜4および比較例1〜8で得られた組成物を、それぞれスピンコーターを用いて、回転速度1500rpm、滴下量10ccの条件で塗布した。これを85℃、90秒間ホットプレートにてベークを行った。得られたパターンの断面を、走査電子顕微鏡(断面SEM)で観察し、評価した。この結果、全ての組成物において、ボイドがなくパターンは緻密に充填されていることがわかった。
【0048】
パターン形状の評価
レジストパターン形成例で得られた8インチのパターンウエハ上に、実施例1〜4および比較例1〜8の組成物のいずれか1つをスピンコーターを用いて、回転速度1500rpm滴下量10ccの条件で塗布した。これを130℃90秒間ホットプレートにてミキシングベークを行った。そして、60秒間純水の流水に接触させるにより、レジストパターン表面にシュリンク層を形成させた。このシュリンク層形成後のパターンのトップの線幅とボトムの線幅を断面SEMにより測定し、トップの線幅/ボトムの線幅の比率(以下、トップ/ボトム比率と略記する)により評価した。評価基準は以下の通りである。
A:トップ/ボトム比率が0.8より大きい
B:トップ/ボトム比率が0.6より大きく、0.8以下
C:トップ/ボトム比率が0.6以下
得られた結果は表3に示す通りであった。
なお、レジストパターンのみの場合と、実施例1、比較例2を用いた場合の断面SEMは、図2の通りである。表中の膜減率は、レジストパターンのみの場合のレジスト膜厚から、シュリンク層形成後の膜厚を引いた値を、レジストパターンのみの場合のレジスト膜厚で割ったものを示す。
【表2】
【0049】
寸法縮小率の評価
上述と同様に、シュリンク層を形成させた。シュリンク層形成前のレジストパターンと、シュリンク層形成後のパターンを断面SEMにより観察し、シュリンク層形成の前後におけるレジストパターンのスペース幅を測定した。なお、スペース幅はボトムにおける値である。以下の式の寸法縮小率により評価し、評価基準は以下である。
寸法縮小率=[(シュリンク層形成前のスペース幅)−(シュリンク層形成後のスペース幅)]/(シュリンク層形成前のスペース幅)
A:寸法縮小率が15.0より大きい
B:寸法縮小率が10.0より大きく、15.0以下
C:寸法縮小率が10.0以下
得られた評価は、表3の通りであった。
【0050】
欠陥評価
上述と同様に、シュリンク層を形成させた後、表面欠陥検査計(KLAテンコール社製、KLA−2360)で、欠陥数を測定した。パターン間にブリッジが形成、パターン崩壊、パターンが形状不良である、等の場合を欠陥とした。評価基準は以下である。
A:欠陥数が0個以上50個未満
B:欠陥数が50個以上100個未満
C:欠陥数が100個以上
得られた結果は表3の通りであった。
【0051】
【表3】
【符号の説明】
【0052】
1.基板
2.レジストパターン
3.組成物層
4.不溶化層
5.シュリンク層
6.レジスト中の分子
7.本発明による組成物の分子
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図2