(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記の常温揮散性ピレスロイド系殺虫成分がトランスフルトリン、メトフルトリン、エンペントリン及びプロフルトリンから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の立体型薬剤揮散体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明に係る立体型薬剤揮散体は、揮散性薬剤を含有した樹脂組成物からなる平面状薬剤揮散体を複数重ね合わせて形成した立体型の薬剤揮散体である。
【0012】
[揮散性薬剤]
前記揮散性薬剤は、常温で揮散性を有するピレスロイド系殺虫成分をいう。この例としては、トランスフルトリン、メトフルトリン、エムペントリン、プロフルトリン、アレスリン、フラメトリン、プラレトリン、レスメトリン、フタルスリン、フェノトリン、天然ピレトリン等があげられる。
【0013】
この発明においては、前記常温揮散性ピレスロイド系殺虫成分に加えて、他の防虫剤、忌避剤、芳香剤、消臭剤、防黴剤、抗菌剤等を併用してもよい。
【0014】
前記他の防虫剤としては、ジクロルボス、フェニトロチオン、マラソン等の有機リン系殺虫成分、メトプレン、ハイドロプレン等の昆虫成長制御剤等があげられる。前記忌避剤としては、N,N−ジエチルトルアミド(ディート)、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、2−エチル−ヘキサンジオール、ジブチルサクシネート、p−メンタン−3,8−ジオール等があげられる。
【0015】
前記芳香剤としては、シトロネラ油、オレンジ油、レモン油、ライム油、ユズ油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、リモネン、α―ピネン、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、アミルシンナミックアルデヒド、ベンジルアセテートなどがあげられる。前記消臭剤としては、揮発性のものではヒバ油、ヒノキ油、竹エキス、ヨモギエキス、キリ油やピルビン酸エチル、ピルビン酸フェニルエチル等のピルビン酸エステルなどがあげられる。
【0016】
前記防黴剤としては、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、イソプロピルメチルフェノール、オルソフェニールフェノールなどがあげられる。前記抗菌剤としては、ヒノキチオール、テトラヒドロリナロール、オイゲノール、シトロネラール、アリルイソチオシアネートなどがあげられる。
【0017】
なお、前記の化合物のなかには、不斉炭素や不飽和結合に基づく光学異性体または幾何異性体が存在する場合があるが、それらの各々単独もしくは任意の混合物も本発明に包含されることはもちろんである。
【0018】
[樹脂組成物]
前記樹脂組成物は、平面状薬剤揮散体を形成するための組成物であり、樹脂に前記揮散性薬剤等を含有させた組成物である。
【0019】
前記樹脂としては、そのままで、又は後述する担体を使用したとき、含有させた前記揮散性薬剤を徐々に表面から揮散させることが可能であれば特に限定されるものではない。
例えば、分岐低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂や、あるいは、これらとカルボン酸エステル(酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等)とのポリオレフィン系共重合体等があげられる。かかるカルボン酸エステルは、樹脂表面からの揮散性薬剤の揮散をコントロールするのに効果的で、一般にカルボン酸エステルのポリオレフィン系樹脂に対する配合比率が高くなるほど揮散性薬剤のブリードの速度を遅らせる傾向を有する。本発明では、カルボン酸エステルがポリオレフィン系樹脂に対して1〜35重量%配合された、エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)やエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)等が好適に使用される。
また、ポリオレフィン系共重合体とオレフィンの単独重合体との含有比率を調整して混合したポリマーブレンドを用いることもできるし、必要に応じてスチレン系エラストマー等の他の高分子化合物を含有させることもできる。
なお、前記カルボン酸エステルとは、不飽和カルボン酸エステル又はカルボン酸ビニルエステルを意味する。
【0020】
前記樹脂組成物には、前記揮散性薬剤以外に、必要に応じて、タルク、アルミナ、シリカ、ホワイトカーボン等の担体を併用してもよく、更に着色剤、安定剤、帯電防止剤等を適宜配合しても構わない。担体を使用すると、第一段階で樹脂に揮散性薬剤を高濃度に含有させたマスターバッチを調製し、第二段階で更に樹脂を用いて所定濃度に希釈する製造工程を採用することができ便利である。また、樹脂組成物内部から表面部にかけての連通気泡を生じ、内部の揮散性薬剤が表面にブリードしやすくなる場合もある。
【0021】
前記樹脂組成物中における揮散性薬剤の含有量は、使用する揮散性薬剤の種類、樹脂の種類、使用環境、使用期間等によって適宜決定される。使用期間が長くなるほど揮散性薬剤の含有量を高くする必要があるが、1〜20重量%の範囲に設定するのが適当である。1重量%未満であると効果を奏するのに必要な薬量を確保することが難かしく、一方、20重量%を超えると、揮散性薬剤を練り込んだ後の成形が困難となり、更に樹脂表面に揮散性薬剤が過剰にブリードしてベタツキを起こしやすいという支障を生じる場合がある。
【0022】
前記担体を使用する場合、前記樹脂組成物中の担体の使用量は、使用する揮散性薬剤100重量部に対し、5重量部以上がよく、10重量部以上が好ましい。5重量部より少ないと、揮散性薬剤を保持する性能が劣りマスターバッチによる製造が困難となる。一方、担体使用量の上限は、揮散性薬剤100重量部に対して50重量部までがよく、35〜40重量部程度が好ましい。50重量部より多いと、立体型薬剤揮散体の強度や揮散性薬剤のブリード性に影響を及ぼす場合がある。
【0023】
[平面状薬剤揮散体]
前記平面状薬剤揮散体は、前記樹脂組成物を射出成形等することによって、成形することができる。この射出成形条件は、使用する樹脂の種類、各成分の配合割合等を勘案して、周知の条件で行うことができる。
【0024】
前記平面状薬剤揮散体11は、
図1(a)、
図2(a)、
図3(a)に示すように、外縁部材12と、その外縁部材12の内側に配される内部部材13とから構成される。この外縁部材12と内部部材13とは、一体に成形されてもよく、別々に成形された後に接合されたものであってもよい。
前記外縁部材12は、平面状薬剤揮散体11の外縁を構成する部材であり、平面状の形状であれば、任意の形状をとることができる。例えば、
図1(a)や
図2(a)に示すような四角形状や、三角形状、五角形状、六角形状等の方形形状、
図3(a)に示すような真円形状や、楕円形状等の円形状、その他、星形形状等があげられる。
【0025】
前記内部部材13は、この発明に係る立体型薬剤揮散体の表面積を増大させ、前記揮散性薬剤の揮散量を増加させるための部材である。この内部部材13としては、
図1(a)、
図2(a)、
図3(a)に示すような、格子状の部材や、図示しないが、桟の形状を有する部材、平板に任意の模様の穴を開けた部材等、任意のものを用いることができる。
【0026】
このような平面状薬剤揮散体11の具体例としては、
図1(a)に示すような、外縁部材12として長方形状部材、内部部材13として格子状部材を用いた平面状薬剤揮散体11a、
図2(a)に示すような、後述する連結部材15で複数の平面状薬剤揮散体11aを連結した平面状薬剤揮散体11b、
図3(a)に示すような、外部部材12として真円形状部材、内部部材13として格子状部材を用いた平面状薬剤揮散体11c等をあげることができる。
【0027】
[立体型薬剤揮散体]
この発明にかかる立体型薬剤揮散体10は、
図1(b)、
図2(b)、
図3(b)に示すように、前記平面状薬剤揮散体11を複数重ね合わせた揮散体である。このとき、前記平面状薬剤揮散体11と重ねられる他の平面状薬剤揮散体11とは、両者の間に設けられたリブ材14を介して結合される。具体的には、2つの平面状薬剤揮散体11の間にリブ材14を配し、リブ材14の一方の端部で1つの平面状薬剤揮散体11と結合させ、リブ材14の他方の端部でもう1つの平面状薬剤揮散体11と結合させることにより、2つの平面状薬剤揮散体11をリブ材14を介して結合する。このリブ材14により、隣り合う前記平面状薬剤揮散体11同士が直接接触するのを防止できる。このリブ材14が配される平面状薬剤揮散体11の部材は、外縁部材12であってもよく、内部部材13であってもよい。
なお、この発明にかかる立体型薬剤揮散体10を構成する複数の前記平面状薬剤揮散体11に含有される揮散性薬剤の種類は、平面状薬剤揮散体11毎に、同じ揮散性薬剤であってもよく、異なった揮散性薬剤であってもよい。
【0028】
このリブ材14は、前記樹脂組成物から成形されたものを用いると、この発明にかかる立体型薬剤揮散体10の表面積を増やすことができ、前記揮散性薬剤の揮散量の増加につながるので、好ましい。
このリブ材14の形状は、
図1(b)、
図2(a)(b)に示すような、四角柱に限られず、三角柱、五角柱、六角柱等の多角柱や、円柱等であってもよい。
【0029】
また、リブ材14としては、
図1(b)等に示すような、平面状薬剤揮散体11の外縁部材12(又は内部部材13)とのなす角度をほぼ直角とした直線状のリブ材14の他、
図1(c)に示すような、平面状薬剤揮散体11の外縁部材12(又は内部部材13)とのなす角度を鋭角とした直線状リブ材14a、
図1(d)に示すような、波状のリブ材14b、
図1(e)に示すような、直線状であって、途中に円環状の部位を設けたリブ材14c、
図1(f)に示すような、直線状であって、途中に突起部を設けたリブ材14d、
図1(g)に示すような、Y字状であって、連結対象の一方の外縁部材12(又は内部部材13)を二叉の部分で挟み込む形状のリブ材14e、図示しないが、
図1(g)の二叉部分と同様の効果を有する、H状のリブ材やX状のリブ材であってもよい。このような各種リブ材を用いると、リブ材自体の表面積を増加させることができ、揮散性薬剤の揮散量を増加させることが可能となる。
【0030】
このリブ材14の使用数は、特に限定されるものではなく、隣り合う前記平面状薬剤揮散体11同士が直接接触するのを防止できれば、特に限定されるものではなく、2つ以上がよく、3つ以上が好ましい。また、その数の上限は、前記揮散性薬剤の揮散量の増加につながるので、特に限定されるものではない。
【0031】
前記リブ材14と平面状薬剤揮散体11との結合(
図1(g)のリブ材14eにおいては、二叉部分と反対側のリブ材の部分)の形成は、特に限定されないが、例えば、平面状薬剤揮散体11を構成する外縁部材12や内部部材13であって、リブ材14が配される箇所に凹部を設け、この凹部にリブ材14を組み込むことによって結合を形成したり、
図1(g)のリブ材14eのような二叉部分を有する場合は、この二叉部分で平面状薬剤揮散体11を構成する外縁部材12や内部部材13を挟み込むことによって結合を形成したり、平面状薬剤揮散体11の成形時に、リブ材14を一体成形によって結合を形成したりする場合があげられる。
これらの結合を形成させることにより、リブ材14と外縁部材12や内部部材13とをより強固に結合することが可能となる。
【0032】
なお、平面状薬剤揮散体11の成形時に、リブ材14を一体成形によって結合を形成する場合、そのリブ材14の先端部は、
図1(g)のリブ材14eのように二叉で外縁部材12や内部部材13を挟み込む場合を除き、前記したとおり、平面状薬剤揮散体11を構成する外縁部材12や内部部材13であって、リブ材14が配される箇所に凹部を設け、この凹部にリブ材14を組み込むことによる結合の形成を行うことが好ましい。
【0033】
立体型薬剤揮散体10の具体的として、
図1(a)に示す平面状薬剤揮散体11aを用いた
図1(b)に示す立体型薬剤揮散体10aをあげることができる。この立体型薬剤揮散体10aは、複数の平面状薬剤揮散体11aを重ね合わせ、隣り合う前記平面状薬剤揮散体11同士を、これの間に配した前記リブ材14を介して結合したものである。
【0034】
また、
図2(a)に示す平面状薬剤揮散体11bを用いた
図2(b)に示す立体型薬剤揮散体10bをあげることができる。この平面状薬剤揮散体11bは、
図2(a)に示すように、複数の平面状薬剤揮散体11aのうち、少なくとも2つを連結部材15で連結したものである。なお、
図2(a)においては、3つの平面状薬剤揮散体11aを2つの連結部材15を用いて連結する。このようにすることにより、1セットとして用いる平面状薬剤揮散体11の群を明確に把握することができる。この平面状薬剤揮散体11bを用いて、立体型薬剤揮散体10bとするには、前記連結部材15を折り曲げることにより、具体的には、前記連結部材15と外縁部材12の接合部又はその付近の少なくとも2箇所を折り曲げることにより、当該連結された2つの平面状薬剤揮散体を互いに対向するように配して、重ね合わせることができる。そして、この間に前記リブ材14を配することによって、この対向する2つの平面状薬剤揮散体11をリブ材14を介して結合することができる。
【0035】
さらに、
図3(a)に示す平面状薬剤揮散体11cを用いた
図3(b)に示す立体型薬剤揮散体10cをあげることができる。この立体型薬剤揮散体10cは内径の異なる複数の真円状の平面状薬剤揮散体11(
図3(b)の11ca〜11cc)を用い、これを、
図3(b)に示すように、最も径の大きな平面状薬剤揮散体11caの上面側及び下面側に次の大きな平面状薬剤揮散体11cbを配し、この平面状薬剤揮散体11cbの外側に、その次に小さい平面状薬剤揮散体11ccを配する。そして、対向する平面状薬剤揮散体の間に前記リブ材14を配することによって、対向する平面状薬剤揮散体を前記リブ材14を介して結合することができる。これにより、
図3(a)〜(d)においては、円錐台を径の大きい面で2つを重ね合わせた形状の立体型薬剤揮散体10cが得られる。この場合は、用いる平面状薬剤揮散体11の外縁部材12の形状、用いる平面状薬剤揮散体11の大きさや数や形状、複数の大きさの平面状薬剤揮散体11の配置の順番の変更等を工夫することにより、他の形状、例えば、円錐台を径の小さい面で2つを重ね合わせた形状や、円錐台を2つ重ね合わせた形状の高さや扁平さを変えた形状、中央部に穴を設けたドーナツ状等の形状の立体型薬剤揮散体を得ることができる。
【0036】
ところで、立体型薬剤揮散体10の形状としては、
図2(b)に示すように、対向する2つの平面状薬剤揮散体11の形状が同一で、これらを重ね合わせたとき、ぴったりと重なり合う形状や、
図3(b)に示すように、大きさが異なる相似形の形状の平面状薬剤揮散体11を用い、これらを重ね合わせたとき、ぴったりと重なり合わない形状以外に、
図2(c)に示すように、対向する2つの平面状薬剤揮散体11の形状は同一であるが、これらを重ね合わせたとき、ぴったりと重なり合わない形状や、図示しないが、対向する2つの平面状薬剤揮散体11の形状が、三角形と四角形のように、形状そのものが異なり、これらを重ね合わせたとき、ぴったりと重なり合わない形状等もあげることができる。
【0037】
[収納容器]
前記樹脂組成物は、前記揮散性薬剤が平面状薬剤揮散体の表面にブリードし、その表面から揮散していくため、この平面状薬剤揮散体に手が触れると揮散性薬剤が手に付着する恐れがある。このため、この平面状薬剤揮散体を後述の方法で組み立てた立体型薬剤揮散体は、収納容器に収納して使用することが好ましい。
【0038】
この薬剤揮散体を収納するプラスチック容器としては、内部の立体型薬剤揮散体に手が触れにくく、前記の立体型薬剤揮散体を収納でき、かつ、常温揮散性ピレスロイド系殺虫成分を安定的に揮散できるものであれば、特に形状や大きさには限定されないが、揮散効率の点から、開口部の容器に占める比率(開口率)が、容器の全表面積に対し10〜50%の範囲となるようにすることが好ましい。
【0039】
なお、開口部の面積が前記の範囲であれば、開口部が収納容器の正面、背面にあるものだけでなく側面や上面、下面に開口するものでもよく、また、開口部の形状についても特に限定されるものではない。
【0040】
前記収納容器の形状についても特に限定されないが、直方体状の立体型薬剤揮散体10aや10bを用いる場合、これに対応させて、
図4(a)に示す直方体状の収納容器21aを用い、また、円錐台を2つ重ね合わせた形状の立体型薬剤揮散体10cを用いる場合、これに対応させて、
図4(b)に示す球状の収納容器21bを用いたりすると、立体型薬剤揮散体10が収納容器内での遊びが減り、ガタガタするのを防止できる。なお、前記の球状には、真球状や楕円球状が含まれる。
【0041】
前記プラスチック容器の構造としては、例えば、平面シート状のプラスチック部材を折り曲げたものや、プラスチックの一体成形品等があげられる。
前記の平面シート状のプラスチック部材を折り曲げたものは、容器は前記折り曲げた部材の2つを一組として用い、それぞれの部材の折り曲げ面が重なり合うように組み立てられる。
【0042】
さらに、前記折り曲げた部材の折り曲げ面の端部には切り目を入れた舌片部を設けて、折り返し立上げが可能なようにフック部を延設することもできる。なお、この場合には、背面上方には前記フック部が折り込まれるための収納窓を設けていてもよい。これによって、各種の使用方法に応じた使い方が可能となる。
すなわち、ここで示したフック部の先端部分を前記の容器の、例えば上面部分に係止すると、屋外で使用の場合には容器が風などで飛ばされたり、屋内で吊るした場合には使用時に誤って落下するなどの問題がなくなり、使用したい場所で確実な効果を期待することができるのである。
【0043】
次に、前記のプラスチックの一体成形品とは、通常の射出成形または真空成形で成形したもの等であれば成形方法は問わないが、上面と下面、正面と背面をヒンジを用いて一体としたり、嵌合したりすることによって一体とすれば、製造工程をより簡略化することが
できる。また、この場合、容器の上面部分には立上げ可能にフック部が設けられているとより効果的に使用することができる。
【0044】
すなわち、前述と同様に、ここで示したフック部の先端部分を使用時に前記の容器の一部、例えば上面に設けた開口部や凹部に係止できる構成にすると、屋外で使用の場合には容器が風などで飛ばされたり、屋内で吊るした場合には使用時に誤って落下するなどの問題がなくなり、使用したい場所で確実な効果を期待することができる。
【0045】
また、容器のどの部分に係止するかは、製造する際に適宜選択する事項ではあるが、フック部が設けられている面と同一面上に係止すれば、使用時に容器が設置位置から移動してしまうことを防止することができるので好ましい。
【0046】
これら平面シート状のプラスチック部材やプラスチックの一体成型品に用いられるプラスチックの材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド等、種々のプラスチック材料が使用可能であるが、強度やその性質を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いた方が好ましい。
【0047】
また、これらのプラスチックの厚みは、種々のものが使用可能であるが、樹脂担体の形状やその揮散性能との関係、経済性などの点から、0.05〜2mmのものを使用することが好ましい。
【0048】
[収納袋]
本発明の薬剤揮散体は、一般的に収納容器に収納後、薬剤非透過性フィルム袋に収容されて市販され、使用時に開袋して用いられる。もちろん、薬剤揮散体のみを薬剤非透過性フィルム袋に収容して市販し、使用時に袋から取り出された薬剤揮散体を収納容器に装填するようにしてもよい。ここで、薬剤非透過性フィルム袋の材質としては、ポリエステル(PET、PBTなど)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリアクリルニトリルなどがあげられ、その肉厚は可撓性を損なわない範囲で決定される。なお、ヒートシール性を付与するために、これら薬剤非透過性フィルムの内面をポリエチレンやポリプロピレンフィルム等でラミネートすることもできる。
【0049】
[用途]
本発明によって調製される立体型薬剤揮散体は、使用直後からその設計仕様に応じた所定期間にわたり、リビングや和室、玄関などの室内、倉庫、飲食店、工場や作業場内部やその出入り口、鶏舎、豚舎等の畜舎、犬小屋、ウサギ小屋等のペット小屋やその周辺、浄化槽やマンホールの内部、キャンプなどにおけるテント内部やその出入り口、バーベキュー、釣り、ガーデニング等の野外活動場所やその周辺などで、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類、ブユ、ユスリカ類、ハエ類、チョウバエ類、イガ類等に対して優れた防虫効果を奏する。また、室内と室外を隔てる窓やベランダ等の場所で、例えばそのフック部をカーテンレール等に引っ掛けたり、物干し竿に吊るして使用すれば、屋外から屋内へのこれら害虫の侵入を効果的に防ぐこともでき、極めて実用的である。
【0050】
[薬剤揮散体の特徴]
本発明の薬剤揮散体は、前記の構成を有することにより、品質上安定して製造することができる。また、本発明の立体型薬剤揮散体は、ネット形状と較べて強固であり、製造工程において容器への収納をスムーズに行えるというメリットも有する。
【実施例】
【0051】
以下、この発明を、実施例を用いてより具体的に示す。なお、この発明はその要旨を超
えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
図1(b)に示す立体型薬剤揮散体を用いて実験を行った。
まず、揮散性薬剤としてトランスフルトリン(住友化学(株)製)50重量部、ホワイトカーボン(EVONIK社製:カープレックス#80、平均粒子径:15μm)18重量部、エチレン−ビニルアセテート共重合体(東ソー(株)製:ウルトラセン710、共重合体中のビニルアセテートの含有率:28%)20重量部、及びLDPE(旭化成(株)製:サンテックLDM6520)12重量部を120〜140℃で混練し、ペレット状マスターバッチを製造した。
次いで、得られたペレット100重量部と前記LDPE300重量部を120〜140℃で混練後、得られた樹脂組成物を射出成形し、
図1(a)に示す、外形が長方形の、表1に示す外形を有する格子状の平面状薬剤揮散体を、表1に示す枚数作製した。この際、各平面状薬剤揮散体には、表1に示す大きさを有する直方体状のリブ材を、一体成形によって同時に形成した。形成されたリブ材の数は、下記の通りとした。さらに、得られた平面状薬剤揮散体を用いて立体型薬剤揮散体を作製するとき、各リブ材の先端部が対向する平面状薬剤揮散体の外縁部材や内部部材の箇所に、表1に示す大きさのリブ材組込部(凹
部)を、前記の平面状薬剤揮散体の成形時に、同時に形成した。
そして、実施例1〜3においては、
図1(b)に示すように、平面状薬剤揮散体を重ね合わせ、リブ材の先端部を対向する平面状薬剤揮散体の凹部に組み込み、
図1(b)に示す立体型薬剤揮散体を作製した。
【0053】
なお、平面状薬剤揮散体との一体成形により形成したリブ材の数は、実施例1においては、1段目の平面状薬剤揮散体に2個、2段目の平面状薬剤揮散体に3個、3段目の平面状薬剤揮散体に2個、4段目の平面状薬剤揮散体に0個とした。また、実施例2においては、1段目の平面状薬剤揮散体に4個、2段目の平面状薬剤揮散体に4個、3段目の平面状薬剤揮散体に0個とした。さらにまた、実施例3においては、1段目の平面状薬剤揮散体に8個、2段目の平面状薬剤揮散体に0個とした。
一方、比較例1〜3においては、リブ材を使用しないので、全ての平面状薬剤揮散体の成形時にリブ材及び凹部を形成しなかった。そして、使用する平面状薬剤揮散体を直に重ね合わせて立体型薬剤揮散体とした。なお、比較例4は、使用する平面状薬剤揮散体が1枚なので、これをそのまま立体型薬剤揮散体として扱った。
得られたそれぞれの立体型薬剤揮散体を室内に吊るし、25℃、風速0.5mの条件下で、揮散性薬剤の揮散量ならびに揮散時間を測定した。揮散量ならびに揮散時間の測定方法は、立体型薬剤揮散体の重量を経時的に測定することによって行った。
その結果、薬剤の揮散の時間及び全期間を通じての平均の揮散量は、表1に示す通りとなった。
【0054】
【表1】