(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、緑色を高温下でも長期間保持することが可能な容器詰青汁飲料等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、所定の濃度の銅イオンと亜鉛イオンを配合した容器詰青汁飲料を調製したところ、緑色の保持が高温下で長期間実現可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]容器詰青汁飲料であって、
銅イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、
亜鉛イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、
銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)が0.25〜9.0の範囲内である、容器詰青汁飲料。
[2]銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)が2.0〜9.0の範囲内である、[1]に記載の容器詰青汁飲料。
[3]糖度が0.1〜0.5である、[1]又は[2]に記載の容器詰青汁飲料。
[4]クロロフィルを0.1〜10mg/100g含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の容器詰青汁飲料。
[5]ポリフェノールを1〜100mg/100g含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の容器詰青汁飲料。
[6]カルシウムイオンを20〜400ppm含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の容器詰青汁飲料。
[7]青汁の原料が大麦若葉及び/又はケールである、[1]〜[6]のいずれかに記載の容器詰青汁飲料。
[8]容器詰青汁飲料を製造する方法であって、
銅イオンの含有量を0.5ppm以上、5ppm未満に、亜鉛イオンの含有量を0.5ppm以上、5ppm未満に調節するとともに、銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)を0.25〜9.0の範囲内に調節する工程を含む、方法。
[9]高温下で容器詰青汁飲料の緑色を保持する方法であって、
銅イオンの含有量を0.5ppm以上、5ppm未満に、亜鉛イオンの含有量を0.5ppm以上、5ppm未満に調節するとともに、銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)を0.25〜9.0の範囲内に調節する工程を含む、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定の濃度の銅イオンと亜鉛イオンを配合することで、容器詰青汁飲料に特有の緑色を高温下で長期間保持することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
(容器詰青汁飲料)
第一の実施形態に係る容器詰青汁飲料は、銅イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、亜鉛イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、
銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)が0.25〜9.0の範囲内のものである。銅イオンと亜鉛の含有量は1ppm未満であることが好ましい。
【0012】
本明細書で使用する場合、青汁飲料とは、青汁などの原料として一般的に使用される緑色野菜を主要な原料として調製される飲料を意味する。
【0013】
緑色野菜の例としては、大麦若葉、小麦若葉、ケール、モリンガ、明日葉、よもぎ、ゴーヤ、クワ若葉、ホウレンソウ、モロヘイヤ、メキャベツなどが挙げられる。これらの中でも、大麦若葉、ホウレンソウ、モロヘイヤ、メキャベツ、ケールが好ましく、大麦若葉、ケールがより好ましく、大麦若葉がさらにより好ましい。大麦の種類は限定されず、六条大麦、二条大麦、裸麦、皮麦等を使用することができる。緑色野菜には抹茶や緑茶等の茶も含まれる。また、緑色野菜と同様にクロロフィルを豊富に含むユーグレナ、スピルリナ、及びクロレラも原料として使用可能である。
【0014】
青汁の原料として一般的に用いられる大麦を例に、その茎葉の粉砕物から粉末を得て、最終的に青汁飲料を製造する方法を例示する。例えば、大麦の茎葉から粉末を得る場合、まず茎葉を乾燥処理及び粉砕処理にかけることにより粉砕物が得られる。乾燥処理又は粉砕処理のいずれかの処理が他の処理に先行して行われるが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。粉砕処理を行う回数は1回でも複数回でもよい。2回以上の粉砕処理を行う場合、最初に粗粉砕処理を行い、その後、より細かく粉砕する微粉砕処理を組合せることが好ましい。
【0015】
乾燥粉末は、植物体全部又はその一部、例えば、茎や葉などの可食部を乾燥し、それをミル及び臼等の機械的手法によって粉砕するか、あるいは植物体全部又はその一部を粉砕してから得られた粉砕物を乾燥することにより得ることができる。また、植物体全部又はその一部の搾汁液を乾燥することなどにより乾燥粉末を得てもよい。
【0016】
得られた粉砕物は、更に必要に応じブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理にかけられる。これにより粉末状の物質が得られる。ブランチング処理は野菜等を加熱してその変質や変色を防ぐ工程であり、その条件は当業者が適宜決定することができる。また、ブランチングを経ることで、得られる搾汁液などの呈味がより向上する傾向にある。
【0017】
乾燥粉末の重量は、最終製品によって変動する。通常の青汁飲料の場合、例えば、飲料の重量あたり好ましくは0.2〜3.0質量%、より好ましくは0.4〜2質量%程度の乾燥粉末が配合される。
【0018】
乾燥粉末は、分散性の観点から、好ましくは粒径70μm以下が90%以上のもの、より好ましくは粒径50μm以下が90%以上のもの、より更に好ましくは粒径35μm以下が90%以上のものが使用される。このような乾燥粉末は、例えば、原料をジェットミル等で破砕して得ることができる。また、ここでいう粒径とは、例えばレーザ回折・散乱法にて水およびエタノールなどを溶媒として測定することができる。
【0019】
青汁飲料に含まれる銅イオンと亜鉛イオンの含有量は、銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)が0.25〜9.0の範囲内、好ましくは2.0〜9.0の範囲内で適宜調節される。
【0020】
各イオンを上記範囲に調節するために、飲食品に配合可能な無機塩類を添加することができる。無機塩類として、例えば、グルコン酸塩、硫酸塩等の銅塩類が挙げられる。無機塩類の代わりに、飲食品に配合可能な微生物、乳酸菌や酵母などの中から、銅や亜鉛を豊富に含むものを選んで青汁飲料に添加するのが好ましい。
【0021】
青汁飲料は、緑色保持効果に影響を及ぼさない範囲で、大麦若葉などの青汁飲料の原料に由来するか、別途添加した無機塩類に由来するカルシウムイオンを好ましくは20〜400ppm含有していてもよい。この範囲であれば冷却後の青汁飲料の苦味も抑制することができる。苦味を抑制する観点からは、カルシウムイオンの濃度は50〜300ppmであることがより好ましい。
【0022】
カルシウムイオンの無機塩類として、例えば、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム及び塩化カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム製剤が例示される。乳酸カルシウムが特に好ましい。
【0023】
青汁飲料は、大麦若葉等などの緑色野菜に含まれる葉緑素の主成分に由来するクロロフィルを好ましくは0.1〜10mg/100g含有していもよい。この範囲内であれば、銅イオンと亜鉛イオンによる高温下での緑色保持効果が保持される。なお、本明細書において、クロロフィルの含有量はクロロフィルαとクロロフィルβの総量で表される。
【0024】
青汁飲料は、主に、原料である大麦若葉等などの緑色野菜に由来するポリフェノールを好ましくは1〜100mg/100g含有していてもよい。本明細書で使用する場合、ポリフェノールとは、植物に由来する物質(フィトケミカル:phytochemical)の1種であり、1分子中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物の総称である。ポリフェノールには、大別して分子量が1,000以下の単量体ポリフェノールと、単量体ポリフェノールが2つ以上結合した重合ポリフェノールが存在する。青汁飲料に呈味を付与する観点から、ポリフェノールの濃度は5〜75mg/100gがより好ましく、10〜50mg/100gが特に好ましい。
【0025】
重合ポリフェノールは一般にタンニンとも称される。代表的な単量体ポリフェノールとしては、フラボノイド類(フラボノイド類には、フラボン、フラバノール、アントシアニジン、イソフラボノイド、ネオフラボノイド等を基本骨格とする化合物が含まれる)、クロロゲン酸、没食子酸、エラグ酸などがある。一方、重合ポリフェノールは単量体ポリフェノールが2個以上結合した化合物であり、ポリフェノール同士が炭素−炭素結合により重合した縮合型タンニンと、糖等由来の水酸基とのエステル結合により重合した加水分解型タンニンとに大別され、それぞれ代表的なポリフェノールとして縮合型タンニンとしてはプロアントシアニジン類、加水分解型タンニンとしてはガロタンニン、エラグタンニンが挙げられる。各ポリフェノールは単体以外にも、当該ポリフェノールの生理活性機能を失わない範囲であれば、例えば、重合体、配糖体等の所定の化合物状態であっても良い。ポリフェノールは重合度や結合位置で様々な種類のものが存在するが、極めて強い抗酸化作用を示す。
【0026】
本実施形態に係る青汁飲料の色調は、鮮やかではあるが、自然な緑色であることが好ましい。ここで、本実施形態に係る青汁飲料において、ハンターLab表色系のa値とb値を用いて液色の緑色度を−a/bで表すことができ、L、a、bの値は市販の一般的な分光色差計を用いて青汁飲料を測定することができる。−a/bは1に近いほど鮮やかな緑色であることを示す。しかしながら、−a/bと、製品として好ましい青汁飲料の緑色とは必ずしも相関しないため、本実施形態に係る青汁飲料においては、緑色を−a/bとパネラーによる目視で評価するものとした。本実施形態に係る青汁飲料の−a/bは、0.6〜1.3であることが好ましい。−a/bがかかる範囲にあれば、青汁飲料の緑色が鮮やかではあるが「自然な緑色」ということができる。
【0027】
本実施形態に係る青汁飲料は、容器に充填された形、すなわち容器詰飲料で提供される。この場合において、使用される容器は特に限定されず、PETボトル、プラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常用いられる飲料用容器であればよい。なお、本実施形態に係る青汁飲料は、沈殿が生じ難く外観が良好であるため、透明の飲料用容器(例えば、PETボトル等)を用いてもよい。なお、本実施形態に係る青汁飲料が容器に充填された容器詰飲料として提供される場合、通常は希釈せずにそのまま飲用できるものであるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本実施形態にあっては、前述した成分の他、本実施形態の効果を損なわない範囲において、ビタミン類、ミネラル分、甘味付与剤、香料、酸味料、糊料、機能性成分等を含有してもよい。例えば、銅イオンや亜鉛イオンに由来する金属味をマスキングするために、甘味付与剤や香料などが使用され得る。
【0029】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK及びビタミンB群等が挙げられる。
【0030】
ミネラル分としては、例えば、マグネシウム、カリウム、クロム、フッ素、ヨウ素、鉄、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン等が挙げられる。これらは、無機塩として配合されてもよく、他の原料(例えば、前述した緑系植物由来物)の含有成分として配合されてもよい。
【0031】
甘味付与剤としては、例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元麦芽糖等の糖類;砂糖、グラニュー糖、異性化糖、キシリトール、パラチノース、エリスリトール等の甘味料;アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物、サッカリン、スクラロース等の高甘味度甘味料;ソルビトール等の糖アルコールなどが挙げられ、さらにシュガーレスバルク甘味料、バルク砂糖甘味料等を含んでいてもよい。
【0032】
香料としては、例えば、柑橘その他果実から抽出した香料、植物の種実、根茎、木皮、葉等またはこれらの抽出物、乳または乳製品から得られる香料、合成香料等が挙げられる。
【0033】
酸味料としては、例えば、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0034】
糊料としては、例えば、ペクチン、セルロース、ゼラチン、コラーゲン、寒天、アルギン酸ナトリウム、大豆多糖類、ガラクトマンナン類、アラビアガム、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドシードガム等が挙げられるが、一部の食物繊維については本発明の沈殿防止効果を阻害しないように配合されるべきである。
【0035】
機能性成分としては、例えば、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、ヒアルロン酸、プラセンタ、牡蠣エキス、キトサン、プロポリス、ローヤルゼリー、トコフェロール、ポリフェノール、梅エキス、アロエ、霊芝、アガリクス、イミダゾールジペプチド(アンセリン)等が挙げられる。これらの添加物は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る青汁飲料は、その他、各種エステル類、乳化剤、保存料、調味料、着色料(色素)、油、pH調整剤、品質安定剤、増粘剤等を含有してもよい。更に、亜鉛イオンと銅イオン以外の緑色保持に有効な成分を青汁飲料に添加することができる。
【0037】
青汁飲料の糖度(Brix)は、本発明の効果を損なわない限り、目的とする最終製品に応じて当業者が適宜調節できる。例えば、青汁飲料中のBrixを、好ましくは約0.1〜8.0、より好ましくは約0.2〜7.0、より更に好ましくは約0.3〜5.0の範囲に調節してもよい。本明細書で使用するBrixは特に断らない限り屈折糖度計を用いて測定した値を意味する。
【0038】
なお、本実施形態に係る青汁飲料は、本発明の効果を損なわない限り、果汁を10質量%未満、又は2質量%未満含有してもよい。
【0039】
本実施形態に係る青汁飲料のpHは、長期間にわたって自然な緑色を保持する観点から、好ましくは6〜8、より好ましくは6〜7.7、より更に好ましくは6.2〜7.5である。青汁飲料のpHがこの範囲にあると、調合時から流通時までクロロフィルの分解が生じにくくなるため、長期間にわたって自然な緑色を保持することができる。なお、青汁飲料のpHは、常法に従ってpHメーターにて測定することができる。
【0040】
本実施形態に係る青汁飲料の粘度は特に限定されないが、すっきりとした飲み心地を得る観点からは、20℃における粘度が1〜10mPa・sであることが好ましく、1.2〜8mPa・sであることがより好ましく、1.3〜6mPa・sであることがより更に好ましい。なお、青汁飲料の粘度は、常法に従って、TVB−10型粘度計(東機産業社製)等の粘度計を用いて測定することができる。
【0041】
(製造方法)
第二の実施形態において、容器詰青汁飲料を製造する方法は、銅イオンの含有量を0.5ppm以上、5ppm未満に、亜鉛イオンの含有量を0.5ppm以上、5ppm未満に調節するとともに、銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)を0.25〜9.0の範囲内に調節する工程を含む。
【0042】
限定することを意図するものではないが、配合工程以外の青汁飲料の製造に必要な工程、例えば大麦若葉等の原料などの調製工程については上述した工程や公知の工程を使用することができる。
【0043】
(緑色保持方法)
第三の実施形態において、高温下で容器詰青汁飲料の緑色を保持する方法は、銅銅イオンの含有量を0.5ppm以上、5ppm未満に、亜鉛イオンの含有量を0.5ppm以上、5ppm未満に調節するとともに、銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)を0.25〜9.0の範囲内に調節する工程を含む。
【0044】
本明細書で使用する場合、高温とは通常室温か、あるいは冷却した状態で流通する容器詰青汁飲料にとって高い温度であって、青汁特有の緑色が褐色へと変化しやすい温度を意味し、例えば、50〜70℃、好ましくは60℃程度である。
【0045】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
(試験1)
大麦若葉(乾燥粉末、佐々木食品社製、クロロフィル含有量4500ppm、カルシウム3500ppm)0.5質量%及びケール(乾燥粉末、佐々木食品社製、クロロフィル含有量3100ppm)0.1質量%に、銅(オリエンタル酵母社製、イーストミネラル銅、銅含有量1.1質量%)及び亜鉛(オリエンタル酵母社製、イーストミネラル亜鉛、亜鉛含有量5.9質量%)を下記表に記載の配合割合となるようにそれぞれ配合し、純水でメスアップし、各1000gの青汁飲料液を作成した。pHは、炭酸水素ナトリウムを用いて6.0に調整した。
【0047】
得られた青汁飲料液をそれぞれ超高温加熱(UHT)殺菌機で殺菌し、200mL PETボトルに充填し、青汁飲料を得た(参考例1、実施例1及び2、比較例1及び2)。殺菌は、F0値30以上(139.0℃±2.0℃、60秒以上)で出口品温が136.0℃以上となるように行った。
【0048】
(銅含有量、亜鉛含有量)
各青汁飲料中の銅含有量及び亜鉛含有量は、ICP発光分析法(原子吸光光度法)によって測定した。測定にはAgilent社製バリアンVISTA−PRO(Ax)型を使用した。
【0049】
(カルシウム含有量)
カルシウム含有量についても銅含有量及び亜鉛含有量と同様に測定した。
【0050】
(Brix)
各青汁飲料中のBrix(可溶性固形分)は、光学屈折率計によって測定した。測定にはアタゴ社製Digital Refractometers(RX5000α−Bev)を使用し、品温20℃にて測定した。
【0051】
(クロロフィル含有量)
各青汁飲料中のクロロフィル含有量は、分光光度計(島津社製UV1650PC)を用いた吸光光度法によって以下の波長で測定した。
Chl a=13.43×A663.8−3.47×A646.8
Chl b=22.90×A646.8−5.38×A663.8
Chls a+b=19.43×A646.8+8.05×A663.8nm
なお、クロロフィル含有量は、クロロフィルa及びクロロフィルbの合計値を示す。
【0052】
(ポリフェノール含有量)
タンニン酸を標準物質として酒石酸鉄による比色法を用いて求められる量をポリフェノール量とした。
【0053】
(官能評価試験)
下記表の記載に基づき調製した青汁飲料サンプルを、60℃の恒温機にそれぞれ3時間保管した後、各青汁飲料サンプルを野菜飲料の開発業務に従事する、官能試験の専門パネラー7人によって、下記の評価項目に従って官能評価を実施し、最も多かった評価を採用した。
【0054】
なお、コントロールには事前に銅、亜鉛を添加していない従来品相当サンプル(参考例1)を採用し、パネラー間で事前にコントロールの5℃保管サンプルと60℃保管サンプルの変化を確認し、官能評価基準を共有化した。
【0055】
<官能評価項目>
目視 5:褐色に変化していなかった(参考例1冷蔵保管サンプルと同等の緑色であった)
4:わずかに褐色に変化している(参考例1冷蔵保管サンプルよりは変化していた)
3:やや褐色に変化しているが、許容範囲
2:褐色に変化している(参考例1加温保管サンプルよりは変化が少なかった)
1:非常に褐色に変化している(参考例1加温保管サンプルと同等、もしくはそれ以上)
【0056】
【表1】
【0057】
なお、各サンプル中のクロロフィル含有量、カルシウム含有量、ポリフェノール含有量は同じである。糖度はいずれも0.15であった。
【0058】
表1に示すとおり、亜鉛イオンが0.5ppm含まれている場合、単独では金属イオン不在の場合と同様に緑色が褐色へと変化したが(比較例1)、これに銅イオンを0.5ppm程度配合することで(実施例1)、緑色が顕著に維持された。また、銅イオンの濃度を増大させると緑色保持効果も増大した(実施例2)。銅イオンと亜鉛イオンの濃度をともに0.4ppmとした場合には緑色保持効果は確認されなかった。
【0059】
(試験2)
続いて、銅イオンの濃度を表1中で最も効果のあった0.5ppmに固定し、亜鉛イオン濃度の影響について検討した。
【0060】
試験1と同様に、大麦若葉0.5質量%及びケール0.1質量%に、銅及び亜鉛を下記表に記載の配合割合となるようにそれぞれ配合し、pHを6.0に調整した各1000gの青汁飲料液を作成した。作成した青汁飲料液をそれぞれ殺菌し、200mL PETボトルに充填することで青汁飲料を得た(実施例3、比較例4〜6)。
【0061】
得られた実施例サンプル及び比較例サンプルの銅含有量、亜鉛含有量及び加温時の緑色の変化については、試験1と同様に確認した。
【0062】
【表2】
【0063】
なお、各サンプル中のクロロフィル含有量、カルシウム含有量、ポリフェノール含有量は同じである。糖度はいずれも0.15であった。
【0064】
表2に示すとおり、銅イオンが0.5ppm含まれている場合、亜鉛イオンの濃度が増大するにつれ緑色保持効果も増大し、ピークの後はその濃度が少なくとも4ppm程度ぐらいまでであれば緑色保持効果が維持されることが明らかとなった。
【0065】
(試験3)
試験例1と同じ大麦若葉及びケールと、銅及び亜鉛とが下記表に記載のような配合割合となるように配合し、pHを6.0に調整した各1000gの青汁飲料液を作成した。作成した青汁飲料液をそれぞれ殺菌し、200mL PETボトルに充填することで青汁飲料を得た(実施例4A〜4C)。
【0066】
得られた実施例サンプルの銅含有量、亜鉛含有量、Brix及び加温時の緑色の変化については、試験1〜3と同様に実施した。
【0067】
【表3】
【0068】
銅イオン濃度を3.0ppm、亜鉛イオン濃度を1.0ppmに固定した状態で、緑色植物原料の配合量を増減させた結果、各サンプル間の緑色保持効果に目立った違いは確認されなかった。
【0069】
(試験4)
大麦若葉0.5質量%及びケール0.1質量%に、銅及び亜鉛を下記表に記載の配合割合となるようにそれぞれ配合し、下記表に記載の数値となるように乳酸カルシウム(扶桑化学工業社製)を添加してカルシウム含有量を調整した。その後pHを6.0に調整した各1000gの青汁飲料液を作成し、作成した青汁飲料液をそれぞれ殺菌し、200mL PETボトルに充填することで青汁飲料を得た(実施例5A〜5D)。
【0070】
得られた実施例サンプルの銅含有量、亜鉛含有量及び加温時の緑色の変化については、試験1〜3と同様に実施した。
【0071】
【表4】
【0072】
なお、各サンプル中のクロロフィル含有量、ポリフェノール含有量は同じである。糖度はいずれも0.15であった。
【0073】
銅イオン濃度を3.0ppm、亜鉛イオン濃度を1.0ppmに固定した状態で、カルシウム濃度を増減させた結果、各サンプル間の緑色保持効果に目立った違いは確認されなかった。また、いずれのサンプルも60℃から室温に冷めた後の苦味もほとんど見られなかった。特に、実施例5B及び5Cについては苦味が全く感じられず、味が良好であった。