特許第6790175号(P6790175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6790175ケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具及びそれを利用するケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6790175
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具及びそれを利用するケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/08 20060101AFI20201116BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20201116BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   B63B25/08 B
   B63B25/16 M
   F16L1/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-99980(P2019-99980)
(22)【出願日】2019年5月29日
【審査請求日】2019年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146814
【氏名又は名称】株式会社新来島どっく
(74)【代理人】
【識別番号】100090044
【弁理士】
【氏名又は名称】大滝 均
(72)【発明者】
【氏名】村上 透
【審査官】 田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−146985(JP,A)
【文献】 特開2007−091133(JP,A)
【文献】 実開平05−056787(JP,U)
【文献】 実開昭60−131492(JP,U)
【文献】 特公昭51−047239(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/08
B63B 25/16
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケミカルタンカーのマニホールドの縦方向三段分の三つの横方向バー部材と、
これらの横方向バー部材を縦方向に所定間隔で固定連結する二以上の縦ステー部材とを有し、
横方向バー部材の個数と縦方向に配列されるマニホールドの段数が同一で、一つの横方向バー部材と縦方向に配列されるマニホールドの一段分とが対応し、マニホールドフランジ接続面側が面一で、かつ、接続される各マニホールドフランジ間の横方向及び上下斜め方向の隣接距離が所定のAの位置に各マニホールドフランジ取付用ボルト穴を有し、ケミカルタンカーのマニホールドの3次元位置決めを可能とすることを特徴とするケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具。
【請求項2】
横方向バー部材の横向及び上下斜め方向の隣接して接続する各マニホールドフランジ位置が正三角形に配置される請求項1に記載のケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具。
【請求項3】
(1)ケミカルタンカーの舷側にフランジが付いていないパイプを縦方向に三段又はそれ以上、横方向に複数本並べ、
(2)パイプ長さを調整の上、各パイプにフランジを差込み、フランジが差込パイプ間で摺動可能な状態で請求項1に記載のケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具をそれぞれのフランジにあわせ、
(3)冶具の横方向バー部材の端部に位置するフランジを請求項1に記載のケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具のボルト穴にボルト締めし、
(4)当該フランジとパイプ(配管)との間を溶接して治具の横方向バー部材の端部のマニホールド位置を決め、
(5)しかる後、順次、各フランジの接合位置に残りのフランジを同冶具にボルト・ナットで接合し、これらのフランジの位置決めをし、
(6)同様に差し込まれたパイプとフランジとを溶接固定してなる請求項1に記載のケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具を利用するケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具及びそれを利用するケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケミカルタンカーは、一度の多種多様のケミカル貨物を積み込むタンカーであり、その上甲板には、各タンク及びポンプに対し独立した配管に対応した多岐管(マニホールド)が両舷に設けられる。すなわち、この種のケミカルタンカーにおいては、数千〔立方メートル〕にもわたるケミカル貨物を一度に積載し、共通荷役管(コモンライン:CommonLine)を用いて荷役したり、500〔立方メートル〕、1,000〔立方メートル〕または2,000〔立方メートル〕のような一生産単位(ロット:lot)で各タンクに複数分散積載し、例えば、あるバースに、6,000〔立方メートル〕のケミカル貨物の荷役する場合、2000〔立方メートル〕のタンクを2つと、1000〔立方メートル〕のタンクを2つ、合計4つのタンクを同時に荷役しなければならない場合などもあり、この場合には、各タンクに各々連通する独立管を用い多岐管・共通荷役管を経由させて1つの共通多岐管に集合させ、陸上の荷揚げ口(Shore Connection)に接続して荷役したり、また、多種類のケミカル貨物の積載、荷役に対しては、積載するケミカル貨物の対応して、同じケミカル貨物のタンク及び配管をその都度組みなおして荷役を行わなければならないという必要が生じる。このため、このような事情に即するため、ケミカルタンカーにおいては、上甲板のマニホールドを繋ぎ変えるL字管やU字管が準備される。
【0003】
本願出願人は、この種のケミカルタンカーの荷役配管構造について、特開2007−91133号(特許第4162679号)を提案している。
特開2007−91133号(特許第4162679号)に係る提案は、発明名称「ケミカルタンカーの荷役配管配置構造」に係り、「・・簡潔な配管で、洗浄を容易とする安全なケミカルタンカーの荷役配管配置構造を提供する」発明解決課題において(同公報明細書段落番号0011参照)、「複数の貯蔵タンクに各々連通する複数の独立配管にそれぞれ連通し、船体中心線に対して略直角方向に甲板から所定の高さに配置され、かつ、船側側に接続口を設けてなる複数の独立多岐管と、前記複数の独立多岐管より下側に配置されるとともに、船体中心線に対して略平行に配置され、かつ、船側側に複数の接続口を一定の距離間隔で突設してなる共通荷役管と、前記共通荷役管に連通され船体中心線に対して略直角方向に前記共通荷役管より上側に配置され、かつ、船側側に接続口を備えた共通多岐管とを備え、前記複数の独立多岐管の接続口と、前記共通多岐管の接続口と、前記共通荷役管の複数の接続口との接続面を垂直面でほぼ同一面内に位置させるとともに、各接続口の中心線がそれぞれ同一距離となる位置に前記各接続口を配置してなる」構成とすることにより(同特許請求の範囲請求項1の記載等参照)、「・・1独立多岐管の接続口、共通荷役管の接続口の中心線を同一(一律)の距離に決め、使用の状況に応じてルーズフランジ付のU字管をこれら接続口に接続することにより荷役をおこなうことができるので、ルーズフランジ付のU字管の数も少なくて済、かつ、ルーズフランジ付のU宇管をどこの接続口にでも使うことができる。・・また、・・独立多岐管の接続口、共通荷役管の接続口を船側側に揃って設け、それらの接続口間にU字管を接続することにより、洗浄時に全ての管内が洗浄でき、管の内面の拭き取りなどを行わなくてよい」等の効果を奏するものである(同公報明細書段落番号0013、0014等参照)。
【0004】
図9は、特開2007−91133号(特許第4162679号)に図1として添付される開示発明の第1の実施形態に係るケミカルタンカーの荷役配管配置構造の一部を示す斜視図である。図9において、符号101は、実施例1に係るケミカルタンカーの荷役配管配置構造、103a、103dは、貯蔵タンク、105a、105b、105c、105dは、独立配管、107は、甲板、109a、109b、109c、109d、111a、111b、111c、111d、115、115a、115b、115c、115d、119、121は、接続口(以下、「マニホールド」ともいう)、113a、113b、113c、113dは、独立多岐管、117は、共通荷役管、123は、共通多岐管、130a、130bは、U字管、131a、131b、131c、131d、133a、133b、133c、133d、137は、バルブである(なお、符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)
【0005】
図9に示すように、この種のケミカルタンカーにおいては、例えば、2つの貯蔵タンク103a、103dに同時にケミカル荷物を荷役しようとする場合には、接続口119から荷物を張り込み、共通荷役管117を通し、接続口(マニホールド)115a、115bからのU字管130a,130bを通って、接続口109a、109bから独立配管105a,105bを通って2つのタンク103a、103dに同時に積込むようにする。このため、この種のケミカルタンカーにおいて、ケミカル荷役に関わる共通荷役管117と各独立配管113a、113b、113c、113dを繋ぐ配管については、全てU字管130a、130bの取り付け可能とする位置に配置される構造となっている。
【0006】
図10は、同特開2007−91133号(特許第4162679号)に図6(a)として添付される特開2007−91133号公報に開示発明の第2の実施形態に係るケミカルタンカーの荷役配管配置構造の概略を説明するための図である。図10において、符号109a,109b,109c,109dは、接続口、113a,113b,113c,113dは、独立多岐管、115Ra,115Rb,115Rc,115Rdは、接続口、117Rは、右舷共通荷役管、123Lは、左舷共通多岐管、123Rは、右舷共通多岐管、171Ra,171Rb,171Rc,171Rdは、接続口、173Rは、右舷特殊共通荷役管、175Rは、バルブ、177Rは、荷役用接続口、「A」は、隣接する接続口171bと接続口171c及び接続口109aとの間の距離である(符号は、前述したと同様に先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)。
【0007】
図10に示すように、隣接する接続口(マニホールド)位置は、予め準備されたU字管(例えば、U字管130a,130b)による接続が可能なように、隣接する接続口(マニホールド)は、「A」で示す距離間隔で配置されている(接続口171Rbと接続口171Rc、接続口171Rbと接続口109a等、図9の例でいえば、接続口109aと115a、109bと115b (場合によっては109bと115aa))。しかしながら、それぞれのマニホールドフランジ間ピッチ・フランジ面の3次元的寸法の精度が悪いとU字管では接続ができないこととなる。
【0008】
従来、この隣接するマニホールドフランジ間ピッチ・フランジ面の3次元位置決めについては、配管施工の現場において、マニホールドの配管と配管の距離をメジャーで計測し、配管取付け位置を決定していた。しかしながら、この現場でのメジャーで計測し配管取付け位置決定は、測定誤差や歪みや取付け位置のずれなどが生じ、現場でのマニホールド配管取付け作業に時間が掛かるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−91133号(特許第4162679号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本願発明は、横方向及び上下斜め方向に隣接するマニホールドの3次元位置が定まっているケミカルタンカーにおいて、マニホールドの3次元位置を決定することができるケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具を案出するとともに、同冶具を用いるケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願請求項1に係る発明は、ケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具において、
ケミカルタンカーのマニホールドの縦方向三段分の三つの横方向バー部材と、
これらの横方向バー部材を縦方向に所定間隔で固定連結する二以上の縦ステー部材とを有し、
横方向バー部材の個数と縦方向に配列されるマニホールドの段数が同一で、一つの横方向バー部材と縦方向に配列されるマニホールドの一段分とが対応し、マニホールドフランジ接続面側が面一で、かつ、接続される各マニホールドフランジ間の横方向及び上下斜め方向の隣接距離が所定のAの位置に各マニホールドフランジ取付用ボルト穴を有し、ケミカルタンカーのマニホールドの3次元位置決めを可能とすることを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、請求項1に記載のケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具において、各横方向バー部材の横方向及び上下斜め方向の隣接して接続する各マニホールドフランジ位置が正三角形に配置される。
そして、本願請求項3に係る発明は、請求項1に記載のケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具を利用するケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法において、(1)ケミカルタンカーの舷側にフランジが付いていないパイプを縦方向に三段又はそれ以上、横方向に複数本並べ、(2)パイプ長さを調整の上、各パイプにフランジを差込み、フランジが差込パイプ間で摺動可能な状態で請求項1に記載のケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具をそれぞれのフランジにあわせ、(3)冶具の横方向バー部材の端部に位置するフランジを請求項1に記載のケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具のボルト穴にボルト締めし、(4)当該フランジとパイプ(配管)との間を溶接して治具の横方向バー部材の端部のマニホールドの位置を決め、(5)しかる後、順次、各フランジの接合位置に残りのフランジを同冶具にボルト・ナットで接合し、これらのフランジの位置決めをし、(6)同様に差し込まれたパイプとフランジとを溶接固定してなる。
【発明の効果】
【0012】
時間と手間の掛かるタンカーのマニホールド配管作業工事を、容易にすることにより、現場の配管取り付け作業の短縮ができ、作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1の斜視図である。
図2図2は、同正面図である。
図3図3は、同側断面図である。
図4図4は、同背面図である
図5図5は、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1の端部に位置する前記上段バー部材3のフランジ2a、2b及び中段バー部材3のフランジ3aのマニホールドフランジ開口面に同冶具1を仮止めした状態を示す位置決め方法のステップ1の概略図である。
図6図6は、上段バー部材2に残りの各フランジ2c〜2gが接合されるが、中段バー部材3の残りの各フランジ3b〜3fの接合がいまだの状態を示す位置決め方法の途中のステップ2の概略図である。
図7図7は、接合すべき全てのフランジが同冶具1に接合されて、各フランジが3次元的に位置決めされた状態を示すステップ3の概略を示す図である。
図8図8は、ケミカルタンカーのマニホールドの3次元位置が決定され、隣接するマニホールド間にU字管を接続することによって、配管接続を柔軟にできることを示す概略図である。
図9図9は、特開2007−91133号(特許第4162679号)に図1として添付される開示発明の第1の実施形態に係るケミカルタンカーの荷役配管配置構造の一部を示す斜視図である。
図10図10は、特開2007−91133号(特許第4162679号)に図6(a)として添付される開示発明の第2の実施形態に係るケミカルタンカーの荷役配管配置構造の概略を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具を実施するための形態として一実施例を示す図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1図4は、本発明に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具の実施例1を示す図であり、そのうち、図1は、実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1の斜視図、図2は、同正面図、図3は、同側断面図、図4は、同背面図である。
【0016】
図1図4において、符号1は、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具、2は、同冶具1の横方向に延びる上段バー部材、3は、同中段バー部材、4は、同下段バー部材、5、6は、縦方向に所定間隔でこれらの上段バー部材2、中段バー部材3、下段バー部材4を固定する縦ステー部材であり、2a〜2gは、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1により位置決め対象たる上段に位置するフランジであり、3a〜3fは、同中段に位置するフランジ、4a〜4gは、同下段に位置するフランジ、21a〜21d・・・47a〜47dは、前記フランジ2a・・・4gを接合するボルト穴であり、7a〜7fは、ボルト、8a〜8bはナット、9a〜9g、10a〜10fは、配管である。
【0017】
図1図4に示すように、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具は、前記上段バー部材2、中段バー部材3、下段バー部材4のマニホールドフランジ接続面(背面)側が面一に構成され、かつ、図2に示すように、各バー部材2、3、4に接続される各マニホールドフランジ間の隣接距離が距離「A」となる位置に位置するように、各マニホールフランジド取付用ボルト穴21a〜21d・・・47a〜47dが設けられる。すなわち、前記ボルト穴は、取り付けられる各フランジについて4か所、接続されるフランジ口径に対応して開口し、かつ、それらのボルト穴の中心位置(例えば、対角上の中心)が隣接するフランジの中心位置との間で距離「A」となる位置に穿孔され、また、隣接するフランジはそれぞれ正三角形を形成するように配置される。
【0018】
換言すれば、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1においては、接続されるマニホールド開口面が、3次元的に面一で、かつ、隣接するマニホールド間が距離「A」の間隔、すなわち、各マニホールドフランジ取付位置が、前記上段バー部材2、中段バー部材3及び下段バー部材4との上下に渡り正三角形位置となるように各フランジのボルト穴が配置されることに特徴があり、図2に示す符号「A」は、隣接するフランジ中心間の距離を示し、また、一点鎖線は前記正三角形の配置を示している。
【0019】
なお、距離「A」は、使用されるマニホールド配管口径やフランジ口径の大きさにより変わりうる距離であるが、本願出願人会社では、便宜上500mmとして、これに対応する前記U字管を使用している。
また、図1図4に示す前記フランジ2a〜2g、3a〜3f、4a〜4gは、予めタンカー船体側に配列される複数の所定の配管に対し、所定の深さに差し込まれるフランジであり、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1を使用することによって、各フランジの3次元位置が決められる後に、各フランジと配管を溶接して、ケミカルタンカーのマニホールド位置がU字管等で接続されるようにしたものである。
【0020】
なお、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1においては、取り付けフランジとして、前記上段バー部材2に7つのフランジ2a〜2g、中段バー部材3に6つのフランジ3a〜3f、下段バー部材4に7つのフランジ4a〜4gの配置を想定したが、これは、横方向に配置されるフランジ数が限られるものではない。もちろん、一列に2,3のフランジ数では十分ではないが、数多くのフランジ数を想定し、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1を長大にすることは、かえって位置決め作業にマイナスとなる。ケミカルタンカーの大きさ、マニホールド数等を考慮したマニホールド開口面のの3次元位置決め作業の作業性(位置決め数や冶具吊り下げの容易性等)を考慮して適宜定められるものである。
【0021】
つぎに、これらの作業性等の考慮のため、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1を用いたケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法について説明する。
図5図7は、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1を用いたケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法の各方法ステップの概略を示す図であり、図5は、同冶具1の端部に位置する前記上段バー部材2のフランジ2a、2b及び中段バー部材3のフランジ3aのマニホールドフランジ開口面に同冶具1を仮止めした状態を示す位置決め方法のステップ1の概略図であり、図6は、上段バー部材2に残りの各フランジ2c〜2gが接合されるが、中段バー部材3の残りの各フランジ3b〜3fの接合がいまだの状態を示す途中のステップ2の概略図、図7は、接合すべき全てのフランジが同冶具1に接合されて、各フランジが3次元的に位置決めされた状態を示すステップ3の概略を示す図である。
【0022】
図5図7において、符号は、図1図4に用いた符号と同じ部材は同じ符号で示した。なお、図5図7は、前記上段バー部材2及び中段バー部材3のみのフランジ取り付け状態を示す概略図であり、下段バー部材4については省略して描いている。
また、各フランジについて、同冶具1に取り付け後のフランジについては実線で示し(例えば、フランジ2a、2b、3a)、取り付け前の各フランジについては(例えば、図5中のフランジ3b・・・3f等)は仮想線で示す。
【0023】
すなわち、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1を用いたケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法は、まず、(1)タンカー側にフランジが付いていないパイプ9a〜9g、10a〜10f(配管)を並べる。(2)製作・取付の誤差でパイプ9a〜9g、10a〜10fの長さにもズレが出るため、その場で切り合せ等で調整する。(3)次に、各パイプ(配管)9a〜9g、10a〜10fにフランジを差込み、フランジが差込パイプ間で摺動可能な状態にしておき、治具をそれぞれのパイプ9a〜9g、10a〜10fの先端のフランジにあわせる。(4)端のフランジ(3箇所程度)を治具1にボルト締め(仮止め)し、フランジとパイプ(配管)との間を溶接してマニホールド位置を決める(図5に示すように、上段バー部材2の端部に位置するフランジ2a、2b及び中段バー部材3の同端部に位置するフランジ3a等)を同冶具1のマニホールドフランジ開口面側に接合し、ボルト穴21a〜21d、22a〜22d、31a〜31dにボルト7a〜7f等を通しナット8a〜8f等で位置決めし、差し込んだパイプ(図5では図示外)と各フランジ2a、2、3aを溶接固定する(図5)。
【0024】
しかる後、残りのフランジについて、順次、各フランジの接合位置(例えば、図6における上段バー部材2の接合位置にフランジ2c〜2gの接合位置)にフランジ2c〜2gを同冶具1にボルト・ナットで接合し、これらのフランジ2c〜3gの位置決めをし、同様に差し込まれたパイプ(図示外)と溶接固定する(図6)。
そのうえで、最終的に、残りのフランジ3b〜3fも同冶具1の中段バー部材3の接合位置に接合し、フランジ3b〜3fの位置決めをし、差し込まれたすべてのパイプ(図示外)と各フランジとを溶接固定して、全てのマニホールドについて3次元位置決めを完了する(図6)。
【0025】
この結果、タンカー船体側に配置された複数のパイプ(配管)に溶接接合される各フランジ2a〜4fで構成されるケミカルタンカーのマニホールド開口面の3次元位置が精度よく決めることができ、各マニホールドにU字管で任意に接合することが可能となり、積載するケミカル貨物の種類や積載量等に従って柔軟な荷役が可能となる。
【0026】
図8は、ケミカルタンカーのマニホールドの3次元位置が決定され、隣接するマニホールド間にU字管を接続することによって、配管接続を柔軟にできることを示す概略図である。
このように、本実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具1を用いるケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法を採用することによって、これまで現場で一つ一つの各マニホールドについて、その3次元位置を決めなければならない時間と手間の掛かるタンカーのマニホールド配管作業工事が極めて容易となり、現場の配管取り付け作業の短縮ができ、作業の効率化を図ることができることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、ケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具及びそれを利用するケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法に利用される。
【符号の説明】
【0028】
1 実施例1に係るケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具
2 上段バー部材
2a〜2g 上段バー部材2に取り付けられるフランジ
3 中段バー部材
3a〜3f 中段バー部材3に取り付けられるフランジ
4 下段バー部材
4a〜4g 下段バー部材4に取り付けられるフランジ
7a〜7f ボルト
8a〜8f ナット
9a〜9g、10a〜10f パイプ(配管)
21a〜47d 各マニホールフランジド取付用ボルト穴
101 開示発明の実施例1に係るケミカルタンカーの荷役配管配置構造
103a、103d 貯蔵タンク
105a、105b、105c、105d 独立配管
107 甲板
109a、109b、109c、109d、111a、111b、111c、111d、115、115a、115b、115c、115d、115Ra,115Rb,115Rc,115Rd、119、121 接続口、
113a、113b、113c、113d 独立多岐管
117 共通荷役管
117R 右舷共通荷役管
123 共通多岐管
123L 左舷共通多岐管
123R 右舷共通多岐管
130a、130b U字管
131a、131b、131c、131d、133a、133b、133c、133d、137 バルブ
171Ra,171Rb,171Rc,171Rd 接続口
173R 右舷特殊共通荷役管
175R バルブ
177R 荷役用接続口
A 隣接する接続口の間の距離
【要約】
【課題】
横方向及び上下斜め方向に隣接するマニホールドの3次元位置が定まっているケミカルタンカーにおいて、マニホールドの3次元位置を決定することができるケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具を案出するとともに、同冶具を用いるケミカルタンカーのマニホールド位置決め方法を提供する。
【解決手段】
二又はそれ以上の複数配置される横方向バー部材と、これらの横方向バー部材を縦方向に所定間隔で固定連結する縦ステー部材と、複数配置される横方向バー部材は、マニホールドフランジ接続面側が面一であり、かつ、接続される各マニホールドフランジ間の横向及び上下斜め方向の隣接距離が所定のAの位置に各マニホールフランジド取付用ボルト穴を有するケミカルタンカーのマニホールド位置決め冶具。
【選択図】図1
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図10