特許第6790176号(P6790176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6790176
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20201116BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20201116BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01M2/10 M
   H01M2/10 S
   H01M2/10 F
   H01M2/20 A
   H01M2/34 B
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-104146(P2019-104146)
(22)【出願日】2019年6月4日
【審査請求日】2020年7月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】下舞 明誉
(72)【発明者】
【氏名】西沼 卓也
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−067558(JP,A)
【文献】 特開2019−067559(JP,A)
【文献】 特開2019−169337(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0372801(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2019−0042341(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/20
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び第2電極を有する単セルを複数個収容したケースと、前記第1電極及び第2電極が電気的に接続されるコネクタとを備えるバッテリパックにおいて、
前記単セルを複数個保持するとともに、前記ケース内で互いに対向するように収容された第1コアパック及び第2コアパックを備え、
前記第1コアパック内及び前記第2コアパック内で、第1電極が同一方向を指向する姿勢とされた複数個の前記単セルによって第1セル群が形成され、且つ第1電極が前記第1セル群の前記単セルの第1電極と逆方向を指向する姿勢とされた複数個の前記単セルによって第2セル群が形成されるとともに、前記第1セル群と前記第2セル群が交互に配置され、
さらに、前記コネクタの正極端子部と、前記第1コアパック内又は前記第2コアパック内の、前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルの正極とを電気的に接続する正極側連絡バスバーと、
前記コネクタの負極端子部と、前記第2コアパック内又は前記第1コアパック内の、前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルの負極とを電気的に接続する負極側連絡バスバーと、
前記第1コアパック内又は前記第2コアパック内で、前記第1セル群の前記単セルと、前記第2セル群の前記単セルとを電気的に接続するセル群間連絡バスバーと、
前記第1コアパック内の、電流の流れ方向最下流に位置する前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルと、前記第2コアパック内の、電流の流れ方向最上流に位置する前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルとを電気的に直列接続するコアパック間連絡バスバーと、
を備え、
前記セル群間連絡バスバーの中の、負極が前記負極側連絡バスバーを介して前記負極端子部に電気的に接続された前記単セルの正極を、隣接する前記第2セル群又は前記第1セル群の前記単セルの負極に電気的に接続するセル群間連絡バスバーと、正極が前記正極側連絡バスバーを介して前記正極端子部に電気的に接続された前記単セルの負極を、隣接する前記第2セル群又は前記第1セル群の前記単セルの正極に電気的に接続するセル群間連絡バスバーとが互いに対向し、
少なくとも、互いに対向する前記2個のセル群間連絡バスバー同士の間に絶縁体が介挿されているバッテリパック。
【請求項2】
請求項1記載のバッテリパックにおいて、前記絶縁体が不活性パテであるバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のコアパックがケースに収容されて構成されるバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機器において、バッテリパックが電源として着脱可能に設けられる。この種のバッテリパックは、特許文献1に記載されるように、複数個の単セルを有するコアパックがケースの中空内部に収容されることで構成されている。単セルは、例えば、複数列に整列されるとともに、任意のセル列(任意列)の単セルは各々の正極が同一方向を指向する姿勢とされる。また、該任意列に隣接するセル列(隣接列)の単セルは、各々の正極が、前記任意列の単セルの正極と逆方向を指向する姿勢とされる。
【0003】
このため、任意列の単セルの正極と、隣接列の単セルの負極とが同一方向を指向する。そして、正極と負極がバスバーを介して電気的に接続される。すなわち、任意列の単セルと隣接列の単セルとが電気的に直列接続された状態となる。
【0004】
ケースの、例えば、底面にはコネクタが設けられており、該コネクタは、電動車両等の外部機器に設けられたコネクタに係合される。すなわち、コネクタ同士が電気的に接続される。そして、バッテリパックからの電力が前記2個のコネクタを介して外部機器に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−216366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放電容量や電圧を大きくするべく、ケース内に複数個のコアパックを収容することが想定される。この構成を具現化するに際し、互いに対向するコアパックの、コネクタから最も離間したセル列同士を、バスバーを介して電気的に直列接続することが考えられる(図3参照)。この場合、コネクタの正極に最も近接するセル列と、この隣接列とに橋架されたバスバーは、全バスバーの中で電位が最高となる。一方、コネクタの負極に最も近接するセル列と、この隣接列とに橋架されたバスバーでは、全バスバーの中で電位が最低となる。そして、ケース内では、電位が最低であるバスバーと、電位が最高であるバスバーとが対向する。
【0007】
ここで、バッテリパック自体はシールがなされているものの、万一、バッテリパック内に雨水等が浸入した場合、電位が最低であるバスバーと、電位が最高であるバスバーとの間で短絡が起こる懸念がある。特に、これら2個のバスバーの電位差が大きいときには、短絡の可能性が大きくなると予想される。
【0008】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、バッテリパック内に水が浸入した場合等においても、バスバー同士の間の短絡電流を可及的に低減し得るバッテリパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、第1電極及び第2電極を有する単セルを複数個収容したケースと、前記第1電極及び第2電極が電気的に接続されるコネクタとを備えるバッテリパックにおいて、
前記単セルを複数個保持するとともに、前記ケース内で互いに対向するように収容された第1コアパック及び第2コアパックを備え、
前記第1コアパック内及び前記第2コアパック内で、第1電極が同一方向を指向する姿勢とされた複数個の前記単セルによって第1セル群が形成され、且つ第1電極が前記第1セル群の前記単セルの第1電極と逆方向を指向する姿勢とされた複数個の前記単セルによって第2セル群が形成されるとともに、前記第1セル群と前記第2セル群が交互に配置され、
さらに、前記コネクタの正極端子部と、前記第1コアパック内又は前記第2コアパック内の、前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルの正極とを電気的に接続する正極側連絡バスバーと、
前記コネクタの負極端子部と、前記第2コアパック内又は前記第1コアパック内の、前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルの負極とを電気的に接続する負極側連絡バスバーと、
前記第1コアパック内又は前記第2コアパック内で、前記第1セル群の前記単セルと、前記第2セル群の前記単セルとを電気的に接続するセル群間連絡バスバーと、
前記第1コアパック内の、電流の流れ方向最下流に位置する前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルと、前記第2コアパック内の、電流の流れ方向最上流に位置する前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルとを電気的に直列接続するコアパック間連絡バスバーと、
を備え、
前記セル群間連絡バスバーの中の、負極が前記負極側連絡バスバーを介して前記負極端子部に電気的に接続された前記単セルの正極を、隣接する前記第2セル群又は前記第1セル群の前記単セルの負極に電気的に接続するセル群間連絡バスバーと、正極が前記正極側連絡バスバーを介して前記正極端子部に電気的に接続された前記単セルの負極を、隣接する前記第2セル群又は前記第1セル群の前記単セルの正極に電気的に接続するセル群間連絡バスバーとが互いに対向し、
少なくとも、互いに対向する前記2個のセル群間連絡バスバー同士の間に絶縁体が介挿されているバッテリパックが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、互いに対向するセル群間連絡バスバーの中、少なくとも、負極が負極側連絡バスバーを介してコネクタの負極端子部に電気的に接続された単セルの正極を、隣接する第2セル群又は第1セル群の単セルの負極に電気的に接続するセル群間連絡バスバーと、正極が正極側連絡バスバーを介して正極端子部に電気的に接続された単セルの負極を、隣接する第2セル群又は第1セル群の単セルの正極に電気的に接続するセル群間連絡バスバーとの間に、絶縁体を介挿するようにしている。
【0011】
全セル群間連絡バスバーの中で、前記2個のセル群間連絡バスバーの一方の電位は最低であり、他方は電位が最高である。すなわち、両バスバーの電位差は、ケース内で他の互いに対向するセル群間連絡バスバー同士の電位差に比して大きい。このように電位差が大きなバスバー同士の間では、短絡が起こり易く且つ短絡電流が大きくなる傾向があるが、本発明では両バスバーの間に絶縁体が介挿されている。このため、両バスバーの間に短絡電流が流れることが回避される。
【0012】
すなわち、仮にバッテリパックのケース内に水が浸入した場合であっても、両バスバーの間で短絡が起こることは困難である。また、他の互いに対向するセル群間連絡バスバー同士の間で短絡が起こったとしても、上記したようにこれらセル群間連絡バスバー同士の電位差が小さいので、短絡電流が十分に小さい。このため、単セル、ひいてはバッテリパックの発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係るバッテリパックの概略全体斜視図である。
図2図1のバッテリパックの概略分解斜視図である。
図3図1のバッテリパックの長手方向に沿った概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るバッテリパックにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1図3は、それぞれ、本実施の形態に係るバッテリパック10の概略全体斜視図、概略分解斜視図、長手方向に沿った概略縦断面図である。このバッテリパック10は、両端が開口した中空四角柱形状のケース12と、該ケース12の中空内部に収容される第1コアパック14、第2コアパック16とを有する。この中のケース12は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる素材に対して押出成形を施すことで作製される。この場合、ケース12は、強度に優れるとともに軽量であり、且つ熱伝導度が高いために伝熱効率に優れる。しかも、安価であるので、ケース12を低コストで得ることができる。
【0016】
ケース12の底側の開口は、ボトムケース18で閉塞される。該ボトムケース18の底面には、放電時に第1コアパック14、第2コアパック16から電力を取り出す一方、充電時に第1コアパック14、第2コアパック16に電力を供給するためのコネクタ20が設けられる。コネクタ20は、正極端子部と負極端子部(いずれも図示せず)を有する。
【0017】
さらに、ボトムケース18と第1コアパック14、第2コアパック16の間には、これら第1コアパック14、第2コアパック16の温度や電圧を管理するコントロールユニットであるバッテリマネージメントユニット(BMU)24が挿入される。BMU24は、外部機器(電動車両等)や充電装置と通信を行う通信部を兼ねる。
【0018】
一方、ケース12の天井側の開口は、トップケース26で閉塞される。該トップケース26には、ユーザがバッテリパック10を持ち上げたり、搬送したりするときに把持するための取っ手28がアーチ形状に形成される。
【0019】
第1コアパック14は、複数の単セル30が第1セルホルダ32a、第2セルホルダ32bに保持されることで構成される。この場合、単セル30は円柱形状をなし、軸方向の両端部に正極端子、負極端子がそれぞれ設けられている。正極は、例えば、第1電極であり、この場合、負極は、正極とは逆の極性の第2電極である。このような単セル30の構成は周知であり、従って、正極端子及び負極端子の図示や詳細な説明は省略する。
【0020】
単セル30の好適な例としては、リチウムイオン二次電池が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。その他の好適な例としては、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等が挙げられる。
【0021】
第1セルホルダ32a、第2セルホルダ32bには、複数個の収容孔34a、34bがそれぞれ貫通形成される。これら収容孔34a、34bは、第1セルホルダ32aと第2セルホルダ32bが重ね合わせられることに伴って互いに連なる。収容孔34a、34bの直径は、単セル30の直径に対応する。また、連なった収容孔34a、34bの長さは、単セル30の高さに対応する。単セル30は、その長手方向がバッテリパック10の長手方向(上下方向)に対して直交する姿勢とされ、この状態で、収容孔34a、34bに個別に挿入されて保持される。
【0022】
収容孔34a、34b内に挿入された単セル30は、その長手方向に直交する横方向に沿って並列される。以下、横方向に並ぶ複数個の単セル30によって形成される一列を「セル群」と表記する。
【0023】
第1セルホルダ32a及び第2セルホルダ32bにおいて、コネクタ20に最近接する最下のセル群では、単セル30は、負極が第2コアパック16に臨む姿勢とされている。また、該最下の直上のセル群では、単セル30は、正極が第2コアパック16に臨む姿勢とされている。以下、負極が第2コアパック16に臨む姿勢の単セル30からなるセル群を「第1セル群」、正極が第2コアパック16に臨む姿勢の単セル30からなるセル群を「第2セル群」と指称する。
【0024】
最下の第2セル群の直上は第1セル群であり、この第1セル群の直上は第2セル群である。このように、第1セル群と第2セル群は交互に配設される。すなわち、隣接するセル群同士では、逆極性の電極端子が同一方向を臨む。
【0025】
本実施の形態では、第1コアパック14に4個の第1セル群と3個の第2セル群が設けられている。以下、区別を容易にするべく、第1セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に40a、40b、40c、40dとする。また、第2セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に42a、42b、42cとする。なお、以下において、「第1セル群の正極(又は負極)」は「第1セル群を形成する単セル30の正極(又は負極)」を意味し、同様に、「第2セル群の正極(又は負極)」は「第2セル群を形成する単セル30の正極(又は負極)」を意味する。
【0026】
最下の、換言すれば、コネクタ20に最も近接する第1セル群40aの正極は、コネクタ20の正極端子部に対し、正極側連絡バスバー44を介して電気的に接続されている。正極側連絡バスバー44は、ケース12の内壁に対向するように配置されるとともに、第1セル群40aを形成する単セル30の正極同士を電気的に並列接続する。
【0027】
第1セル群40aの負極と第2セル群42aの正極は、隣接するセル群同士に跨がるセル群間連絡バスバー46を介して電気的に直列接続される。なお、セル群間連絡バスバー46は、第1セル群40aを形成する単セル30の負極同士、第2セル群42aを形成する単セル30の正極同士を電気的に並列接続する役割も果たす。
【0028】
同様に、第2セル群42aの負極と第1セル群40bの正極、第1セル群40bの負極と第2セル群42bの正極、第2セル群42bの負極と第1セル群40cの正極、第1セル群40cの負極と第2セル群42cの正極、第2セル群42cの負極と第1セル群40dの正極が、セル群間連絡バスバー46を介して電気的に直列接続される。勿論、セル群間連絡バスバー46により、同一のセル群を形成する単セル30同士が電気的に並列接続される。
【0029】
第2コアパック16も同様に、複数の単セル30が第3セルホルダ32c、第4セルホルダ32dに保持されることで構成される。すなわち、第3セルホルダ32c、第4セルホルダ32dにそれぞれ貫通形成された複数個の収容孔34c、34dは、第3セルホルダ32cと第4セルホルダ32dが重ね合わせられることに伴って互いに連なる。単セル30は、その長手方向がバッテリパック10の長手方向(上下方向)に対して直交する姿勢とされた状態で、収容孔34c、34dに個別に挿入されて保持される。
【0030】
以下、正極が、第1コアパック14の第1セル群40a〜40dの正極と同一方向を指向するセル群を「第1セル群」と指称し、負極が第1コアパック14の第2セル群42a〜42cの負極と同一方向を指向するセル群を「第2セル群」と指称する。従って、第2コアパック16内で第1セル群を形成する単セル30の正極と、第2セル群を形成する単セル30の負極は、第1コアパック14に臨む。
【0031】
第2コアパック16において、コネクタ20に最近接する最下のセル群は第1セル群であり、その直上は、最下の第2セル群である。また、この第2セル群の直上は第1セル群である。すなわち、第2コアパック16においても、第1セル群と第2セル群が交互に配設される。本実施の形態では、第2コアパック16に4個の第1セル群と3個の第2セル群が設けられている。以下、区別を容易にするべく、第1セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に40e、40f、40g、40hとする。また、第2セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に42d、42e、42fとする。
【0032】
最下の、換言すれば、コネクタ20に最も近接する第1セル群40eの負極は、コネクタ20の負極端子部に対し、負極側連絡バスバー48を介して電気的に接続されている。負極側連絡バスバー48は、ケース12の内壁に対向するように配置されるとともに、第1セル群40eを形成する単セル30の負極同士を電気的に並列接続する。
【0033】
また、第1コアパック14と同様に、第1セル群40eの正極と第2セル群42dの負極、第2セル群42dの正極と第1セル群40fの負極、第1セル群40fの正極と第2セル群42eの負極、第2セル群42eの正極と第1セル群40gの負極、第1セル群40gの正極と第2セル群42fの負極、第2セル群42fの正極と第1セル群40hの負極が、セル群間連絡バスバー46を介して電気的に直列接続される。また、セル群間連絡バスバー46により、同一のセル群を形成する単セル30同士が電気的に並列接続される。
【0034】
さらに、第2コアパック16の最上に位置する第1セル群40hの正極は、第1コアパック14の最上に位置する第1セル群40dの負極に対し、コアパック間連絡バスバー50を介して電気的に直列接続される。すなわち、コアパック間連絡バスバー50は、第2コアパック16内の、コネクタ20から最も離間して電子の移動方向最流(電流の流れ方向最流)である第1セル群40hの正極と、第1コアパック14内の、コネクタ20から最も離間して電子の移動方向最流(電流の流れ方向最流)である第1セル群40dの負極とを電気的に接続する。
【0035】
なお、コアパック間連絡バスバー50は、第1セル群40hを形成する単セル30の正極同士、第1セル群40dを形成する単セル30の負極同士を電気的に並列接続する。
【0036】
このような構成において、全てのセル群間連絡バスバー46の電位を比較すると、後述する理由から、コネクタ20の負極端子部に最も近接する第1セル群40eと、その直上の第2セル群42dとを接続するものの電位が最低となる。その一方で、コネクタ20の正極端子部に最も近接する第1セル群40aと、その直上の第2セル群42aとを接続するセル群間連絡バスバー46が、全てのセル群間連絡バスバー46の中で電位が最高となる。以下、他のセル群間連絡バスバー46との区別を容易にするべく、電位が最低となるセル群間連絡バスバー46を「最低電位バスバー46a」、電位が最高となるセル群間連絡バスバー46を「最高電位バスバー46b」と表記する。
【0037】
図3から諒解されるように、最低電位バスバー46aは、第2コアパック16の、第1コアパック14を臨む面に配設される。一方、最高電位バスバー46bは、第1コアパック14の、第2コアパック16を臨む面に配設される。すなわち、最低電位バスバー46aと最高電位バスバー46bは互いに対向する。
【0038】
そして、本実施の形態では、最低電位バスバー46aと最高電位バスバー46bの間に、絶縁体としての不活性パテ52が介挿されている。勿論、不活性パテ52は硬化しており、最低電位バスバー46aと最高電位バスバー46bの間のクリアランスを充填している。
【0039】
第1セルホルダ32a〜第4セルホルダ32dには、枠状部54を形成するための壁部がそれぞれ突出形成される。セル群間連絡バスバー46、正極側連絡バスバー44の大部分、負極側連絡バスバー48の大部分は、枠状部54に収容される。
【0040】
ケース12の内壁と、該ケース12に臨むセル群間連絡バスバー46との間には、放熱部材としての放熱シート56が介挿される。放熱シート56は、弾性に富み且つ第1セルホルダ32a又は第4セルホルダ32dと、ケース12の内壁との間で圧縮された状態を維持し得るものが好適に選定される。この場合、放熱シート56が、第1コアパック14又は第2コアパック16と、ケース12の内壁とに対して広面積で密着するからである。
【0041】
本実施の形態に係るバッテリパック10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0042】
バッテリパック10を電動車両等の外部機器に装着する場合、ユーザは、取っ手28を把持してバッテリパック10を当該外部機器まで搬送し、コネクタ20と外部機器のコネクタとが電気的に接続されるようにしてバッテリパック10を外部機器のバッテリ装着部に収容する。コネクタ20がボトムケース18の底面に設けられている(図1参照)ので、バッテリパック10は、通常、長手方向が重力方向に沿って延在する姿勢、又は、長手方向が重力方向に対して若干傾斜した姿勢となる。そして、外部機器のスタータスイッチをONにすることにより、ケース12内の各単セル30から外部機器に電力が供給される。すなわち、各単セル30からの放電がなされる。
【0043】
ここで、上下に隣接するセル群同士はセル群間連絡バスバー46を介して電気的に直列接続されており、また、コネクタ20の負極端子部には負極側連絡バスバー48を介して第1セル群40eの負極が接続されるとともに、正極端子部には、正極側連絡バスバー44を介して第1セル群40aの正極が接続されている。さらに、第2コアパック16内の第1セル群40hの正極と、第1コアパック14内の第1セル群40dの負極とが、コアパック間連絡バスバー50を介して接続されている。従って、電子は、負極端子部→第1セル群40e→第2セル群42d→第1セル群40f→第2セル群42e→第1セル群40g→第2セル群42f→第1セル群40h→第1セル群40d→第2セル群42c→第1セル群40c→第2セル群42b→第1セル群40b→第2セル群42a→第1セル群40a→正極端子部の順に移動する。従って、全てのセル群間連絡バスバー46の中では、コネクタ20の負極端子部に最も近接する第1セル群40eと、その直上の第2セル群42dとを接続するものの電位が最低となる。すなわち、第1セル群40eと第2セル群42dを接続するセル群間連絡バスバー46は、最低電位バスバー46aである。
【0044】
その一方で、コネクタ20の正極端子部に最も近接する第1セル群40aと、その直上の第2セル群42aとを接続するセル群間連絡バスバー46が、全てのセル群間連絡バスバー46の中で電位が最高となる。すなわち、第1セル群40aと第2セル群42aを接続するセル群間連絡バスバー46は、最高電位バスバー46bである。なお、互いに対向するセル群間連絡バスバー46同士の電位差は、コネクタ20から離間するに従って小さくなる。
【0045】
このような構成では、万一、バッテリ装着部からバッテリパック10のケース12内に水が浸入した場合、最低電位バスバー46aと最高電位バスバー46bの間で短絡が起こる懸念がある。最低電位バスバー46aと最高電位バスバー46bの電位差が、互いに対向するその他のセル群間連絡バスバー46同士の電位差よりも大きく、しかも、これら最低電位バスバー46a及び最高電位バスバー46bが、セル群間連絡バスバー46の中でボトムケース18に最近接しているからである。
【0046】
しかしながら、本実施の形態に係るバッテリパック10では、最低電位バスバー46aと最高電位バスバー46bとの間に不活性パテ52(絶縁体)が介挿されている。従って、最低電位バスバー46aと最高電位バスバー46bの間で短絡電流が流れることが回避される。すなわち、最低電位バスバー46aと最高電位バスバー46bの間に絶縁体を介挿したことにより、両バスバー46a、46bの間で短絡が起こる懸念を払拭することができる。
【0047】
それよりも上方のセル群間連絡バスバー46同士の電位差は、さほど大きくはない。このため、不活性パテ52が充填されていないセル群間連絡バスバー46同士に短絡電流が流れたとしても、その電流値は小さい。すなわち、各単セル30に流れる短絡電流が十分に抑制される。このため、単セル30の発熱量が小さい。従って、該単セル30、ひいてはバッテリパック10の温度が過度に上昇することを回避することができる。
【0048】
そして、このように、大きな短絡電流が流れる懸念のある最低電位バスバー46aと最高電位バスバー46bの間に不活性パテ52を充填する一方で、電位差が十分に小さいセル群間連絡バスバー46同士の間には絶縁処理を施さないようにしたことにより、バッテリパック10の重量が増加することを回避することができる。加えて、絶縁処理に要するコストの低廉化を図ることもできる。
【0049】
さらに、不活性パテ52には、安価で入手が容易であり、しかも、シール能力が優れているので、浸入した水を堰き止める効果が期待される。その上、不活性パテ52自体、水に対して物理的・化学的に安定である。従って、短絡防止効果及びシール効果を長期間にわたって得ることができる。
【0050】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、各単セル30の負極を第1電極とし、且つ正極を第2電極とするようにしてもよい。
【0052】
また、絶縁体は、不活性パテ52に特に限定されるものではなく、樹脂等であってもよい。
【0053】
そして、電位差が最大となる最低電位バスバー46aと最高電位バスバー46bとの間のみならず、短絡が懸念される他の箇所にも絶縁体を設けるようにしてもよい。このような箇所としては、次に電位差が大きくなるセル群間連絡バスバー46、46同士、すなわち、最低電位バスバー46aの直上のセル群間連絡バスバー46と、最高電位バスバー46bの直上のセル群間連絡バスバー46との間が想定される。必要であれば、その他のセル群間連絡バスバー46、46同士の間に絶縁体を設けてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…バッテリパック 12…ケース
14、16…第1、第2コアパック 20…コネクタ
24…BMU 30…単セル
32a〜32d…第1〜第4セルホルダ 40a〜40h…第1セル群
42a〜42f…第2セル群 44…正極側連絡バスバー
46…セル群間連絡バスバー 46a…最低電位バスバー
46b…最高電位バスバー 48…負極側連絡バスバー
50…コアパック間連絡バスバー 52…不活性パテ
54…枠状部
【要約】
【課題】複数個の単セルがケース内に収容されたバッテリパックにおいて、ケース内に水が浸入したような場合であっても、バスバー同士の間の短絡電流を可及的に小さくする。
【解決手段】バッテリパック10は、複数個の単セル30を保持した第1コアパック14、第2コアパック16を有する。第1コアパック14、第2コアパック16の第1セル群(又は第2セル群)の単セル30は、それぞれ、正極側連絡バスバー44、負極側連絡バスバー48を介してコネクタ20に電気的に接続される。また、上下に隣接するセル群同士は、セル群間連絡バスバー46を介して電気的に接続される。そして、互いに対向するセル群間連絡バスバー46同士の中、電位差が最大となるもの同士の間に、絶縁体が介挿される。
【選択図】図3
図1
図2
図3