特許第6790229号(P6790229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6790229水素取扱装置の運転方法および水素取扱装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790229
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】水素取扱装置の運転方法および水素取扱装置
(51)【国際特許分類】
   C23F 15/00 20060101AFI20201116BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20201116BHJP
   C25B 15/00 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   C23F15/00
   C01B3/00 Z
   C01B3/00 A
   !C25B15/00 303
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-506797(P2019-506797)
(86)(22)【出願日】2017年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2017011462
(87)【国際公開番号】WO2018173155
(87)【国際公開日】20180927
【審査請求日】2019年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮代 聡
(72)【発明者】
【氏名】久保 達也
(72)【発明者】
【氏名】小川 琢矢
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 文寿
(72)【発明者】
【氏名】本田 裕規
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−097417(JP,A)
【文献】 特開平08−083774(JP,A)
【文献】 特開2004−181412(JP,A)
【文献】 特開2005−179083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00
C23F 15/00
C25B 9/00,15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転中に金属製の容器または配管に吸蔵される水素原子の吸蔵量を、解析するステップと、
前記運転中に水素ガスを含むプロセスガスが前記容器または前記配管の内面に接するとともに、前記容器または前記配管の温度を180℃以上に上げるステップと、
前記運転を終了するときに前記容器または前記配管の内部空間を前記運転中よりも水素分圧が低い状態にするとともに、前記容器または前記配管の温度を180℃以上に維持するステップと、
前記容器または前記配管の温度を180℃以上に維持した後に前記容器または前記配管の温度を180℃未満に下げるステップと、
を含む水素取扱装置の運転方法。
【請求項2】
前記解析された吸蔵量に基づいて、前記運転を終了するときの前記容器または前記配管の特定温度を設定するステップを含む請求項に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項3】
前記解析された吸蔵量に基づいて、前記運転を終了するときに前記水素分圧が低い状態および前記180℃以上の温度を維持する特定時間を設定するステップを含む請求項1または請求項2に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項4】
前記容器または前記配管の水素原子の固溶度と拡散係数とを示す特定情報を前記運転前に取得するステップを含み、
前記取得した特定情報に基づいて、前記吸蔵量を解析する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項5】
前記運転中の前記水素ガスの濃度を示す運転情報と、
前記運転中の前記容器または前記配管の温度を示す運転情報と、
前記運転中に前記水素ガスが前記容器または前記配管の内面に接する時間を示す運転情報の
少なくともいずれか1つの運転情報を前記運転前に取得するステップを含み、
前記取得した運転情報に基づいて、前記吸蔵量を解析する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項6】
前記運転を終了するときに前記容器または前記配管の内部空間を前記プロセスガスよりも水素分圧が低い水素放出用ガスで満たす請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項7】
前記水素放出用ガスの温度が180℃以上であり、この水素放出用ガスにより前記容器または前記配管を加熱し、前記容器または前記配管の温度を180℃以上に維持する請求項に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項8】
前記水素放出用ガスが、酸素含有率が空気よりも低い不活性ガスである請求項6または請求項7に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項9】
前記水素放出用ガスが、ヘリウムガスと窒素ガスとアルゴンガスの少なくともいずれか1つのガスを含む請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項10】
前記水素放出用ガスが、空気である請求項6または請求項7に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項11】
前記運転を終了するときに前記容器または前記配管をヒータにより加熱し、前記容器または前記配管の温度を180℃以上に維持する請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項12】
前記運転を終了するときに前記容器または前記配管の内部気圧を10-1Pa以上、大気圧未満にする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項13】
前記プロセスガスは、4体積%以上、100体積%以下の水素ガスを含む請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の水素取扱装置の運転方法。
【請求項14】
運転中に金属製の容器または配管に吸蔵される水素原子の吸蔵量を、解析する吸蔵量解析部と、
前記運転中に水素ガスを含むプロセスガスが前記容器または前記配管の内面に接するとともに、前記容器または前記配管の温度を180℃以上に上げる制御を行う運転制御部と、
前記運転を終了するときに前記容器または前記配管の内部空間を前記運転中よりも水素分圧が低い状態にするとともに、前記容器または前記配管の温度を180℃以上に維持する制御を行う脱水素制御部と、
前記容器または前記配管の温度を180℃以上に維持した後に前記容器または前記配管の温度を180℃未満に下げる制御を行う降温制御部と、
を備える水素取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水素ガスを取り扱う水素取扱装置の運転技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材で構成される軸受、歯車などの機械部品の製造工程において、機械部品が水素ガスに曝されると、機械部品中に水素が吸蔵される。この水素が機械部品中に残存すると脆化が生じる。そこで、機械部品を真空中で所定時間に亘って加熱することで、機械部品中から水素を放出させる脱水素処理が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−204612号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】武藤ら、“SOEC 水蒸気電解システムのサイクル計算とエクセルギー解析”、日本機械学会論文集(B編)、79巻808号(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、水素製造装置、水素電力貯蔵機器、燃料電池、および水素燃焼タービンなどの水素ガスを取り扱う水素取扱装置が普及し始めている。このような水素取扱装置を構成する容器または配管は、定格運転中に内面が高濃度の水素ガスに曝される。そして、容器または配管が水素を吸蔵してしまうので、運転停止後に温度が低下する過程で、容器または配管の水素脆化が生じるという課題がある。
【0006】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、容器または配管の水素脆化を低減することができる水素取扱装置の運転技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る水素取扱装置の運転方法は、運転中に金属製の容器または配管に吸蔵される水素原子の吸蔵量を、解析するステップと、前記運転中に水素ガスを含むプロセスガスが前記容器または前記配管の内面に接するとともに、前記容器または前記配管の温度を180℃以上に上げるステップと、前記運転を終了するときに前記容器または前記配管の内部空間を前記運転中よりも水素分圧が低い状態にするとともに、前記容器または前記配管の温度を180℃以上に維持するステップと、前記容器または前記配管の温度を180℃以上に維持した後に前記容器または前記配管の温度を180℃未満に下げるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、容器または配管の水素脆化を低減することができる水素取扱装置の運転技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の水素取扱装置を示す構成図。
図2】第1実施形態の制御装置を示すブロック図。
図3】第1実施形態の運転処理を示すフローチャート。
図4】第1実施形態の脱水素処理を示すフローチャート。
図5】第2実施形態の水素取扱装置を示す構成図。
図6】第2実施形態の脱水素処理を示すフローチャート。
図7】第3実施形態の水素取扱装置を示す構成図。
図8】第3実施形態の脱水素処理を示すフローチャート。
図9】第4実施形態の水素取扱装置を示す構成図。
図10】第4実施形態の脱水素処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態の水素取扱装置について図1から図4を用いて説明する。図1の符号1は、運転中に水素ガスを取り扱う水素取扱装置である。
【0011】
水素取扱装置1の例としては、水の電解を行うことで水素を製造する水素製造装置、水を電気分解して製造した水素を貯蔵することで電力を水素の形態で貯蔵する水素電力貯蔵機器、水素と酸素を反応させることで発電を行う燃料電池、および水素を燃焼して生じるガスによりタービンを駆動する水素燃焼タービンなどがある。いずれの水素取扱装置1であっても本実施形態を適用することができる。
【0012】
図1に示すように、水素取扱装置1は、金属製の容器2および配管3を備える。本実施形態では、1つの容器2の入口端部と出口端部のそれぞれに配管3が接続される。一方の配管3の入口側コネクタ部4には、上流側のガス流通ライン5が接続される。他方の配管3の出口側コネクタ部6には、下流側のガス流通ライン7が接続される。なお、入口側コネクタ部4から導入されたプロセスガスPが、一方の配管3を介して容器2に導入され、この容器2から他方の配管3を介して出口側コネクタ部6に流れる。
【0013】
上流側のガス流通ライン5は、図示しない水素貯蔵タンクおよび水素製造部などのプロセスガスPの供給源に接続されている。この供給源から供給されるプロセスガスPを加熱するガス加熱部8が、上流側のガス流通ライン5に設けられる。このガス加熱部8で加熱されたプロセスガスPの温度は、180℃以上に昇温される。なお、プロセスガスPの温度は、水素取扱装置1の処理目的に応じて180℃以上の適切な温度に制御される。
【0014】
容器2および配管3は、定格運転中にプロセスガスPが流通する部品となっている。なお、水素ガスの可燃限界は、4体積%である。一般に水素を積極的に利用しない装置において、部品内部を流通するプロセスガスは、その水素濃度が4体積%を超えないように設計される。本実施形態の水素取扱装置1は、水素を積極的に利用する装置を対象としている。また、水素取扱装置1で利用するプロセスガスPが純水素であっても良い。つまり、本実施形態のプロセスガスPは、4体積%以上、100体積%以下の水素ガスを含むガスを対象としている。
【0015】
本実施形態の容器2および配管3の内部空間Nは、定格運転中にプロセスガスPで満たされる。そして、容器2および配管3の内面は、定格運転中に高温および高濃度の水素ガスに長時間に亘って曝される。なお、プロセスガスPには、水素ガス以外のガスが含まれていても良い。
【0016】
高温のプロセスガスPが流通されることで、容器2または配管3の温度が180℃以上に昇温される。なお、プロセスガスPの温度の上限は、容器2または配管3を構成する金属材により定まる。例えば、金属材のうちで最も高融点であるタングステンは、その融点が3400℃となっている。そのため、本実施形態のプロセスガスPの温度は、3400℃以下の温度を対象としている。
【0017】
一般に、金属材中に水素原子が吸蔵(吸収)されると、その金属材の強度(延性またはじん性)が低下する水素脆化と呼ばれる事象が生じることが知られている。水素原子の吸蔵に基づく破壊は、水素原子の拡散に伴う時間遅れを伴うことから「遅れ破壊」とも呼ばれる。この遅れ破壊は、高温で使用中には起こりにくく、温度が下がった際に発生する場合が多いとされている。
【0018】
水素取扱装置1は、定格運転中に高温のプロセスガスPを用いる。例えば、燃料電池の場合には、電解セルの温度が650℃以上になる。このような高温環境であるため、耐熱性および耐食性の観点から、容器2および配管3には、ステンレス鋼、Ni基合金、ハステロイ(登録商標)、または低合金鋼などの金属材が用いられる。そのため、プロセスガスPに含まれる水素原子が金属材中に容易に侵入および拡散される。
【0019】
このように、高温状態でプロセスガスPから金属材中に取り込まれた水素原子は、水素取扱装置1の運転を停止する際に、金属材の温度低下に連れて拡散係数が低下し、金属材中にトラップされることが懸念される。この状態で金属材の温度が低下すると水素脆化を生じるリスクが高まる。また、金属材において熱収縮に伴う引張応力の発生が伴うと、切欠きなどの応力集中部において水素脆化割れが生じることが懸念される。
【0020】
そこで、本実施形態では、定格運転を終了するときに、容器2または配管3の内部空間Nを運転中よりも水素分圧が低い状態にするとともに、容器2または配管3の温度を180℃以上(より好ましくは190℃以上)に維持する脱水素処理を実行する。このようにすれば、容器2または配管3に吸蔵された水素原子の放出を促すことができる。そして、脱水素処理の実行後に容器2または配管3の温度を180℃未満に下げる。このようにすれば、容器2または配管3の水素脆化を防止または低減させることができる。
【0021】
脱水素処理を実行するために、本実施形態の水素取扱装置1は、容器2および配管3の温度をそれぞれ検出する複数の温度センサ9と、容器2および配管3の内部空間Nの気圧を検出する圧力センサ10と、容器2および配管3の内部空間Nの水素濃度を検出する水素センサ11と、上流側のガス流通ライン5に設けられる第1入口弁12と、下流側のガス流通ライン7に設けられる第1出口弁13と、一方の配管3の入口側コネクタ部4に接続されて水素放出用ガスRを導入する導入ライン14と、他方の配管3の出口側コネクタ部6に接続されて水素放出用ガスRを排出する排出ライン15と、導入ライン14に設けられる第2入口弁16と、排出ライン15に設けられる第2出口弁17と、水素取扱装置1の各部品を制御する制御装置18とを備える。
【0022】
第1実施形態の水素放出用ガスRとして空気を例示する。この空気は、水素ガスを含まないことで、プロセスガスPよりも水素分圧が低いガスとなっている。ここで、導入ライン14は、水素取扱装置1の外部から空気を取り入れる吸気口19を備える。また、排出ライン15は、水素取扱装置1の外部に空気を排出する排気口20を備える。
【0023】
理解を助けるために図示を省略しているが、容器2が水素取扱装置1の所定のプロセスを実行する機器(例えば、電解セルまたはタービン)を収容する部品であっても良い。また、配管3が複数の容器2を接続するガス流通ラインの一部を構成しても良い。さらに、本実施形態の脱水素処理の対象となる部品は、容器2または配管3の内部に収容される部品を含むものであっても良い。
【0024】
定格運転中において、第1入口弁12および第1出口弁13が開放されるとともに、第2入口弁16および第2出口弁17が閉鎖される。そして、容器2または配管3の内部空間NにプロセスガスPが導入されることで、容器2または配管3の内部空間Nの気圧が大気圧よりも高い気圧に昇圧される。なお、定格運転中の容器2または配管3の内部空間Nの気圧のことを運転気圧と称する。
【0025】
定格運転中において、ガス加熱部8で加熱されて180℃以上に昇温されたプロセスガスPが第1入口弁12を通過して容器2および配管3の内部空間Nに入る。なお、ガス加熱部8は、上流側のガス流通ライン5において、第1入口弁12よりも上流側に設けられる。容器2および配管3の内部空間NがプロセスガスPで満たされることにより、容器2および配管3の温度が180℃以上に昇温される。
【0026】
脱水素処理の実行中において、第1入口弁12および第1出口弁13が閉鎖されるとともに、第2入口弁16および第2出口弁17が開放される。そして、容器2または配管3の内部空間Nに水素放出用ガスR(空気)が導入されることで、容器2または配管3の内部空間Nの気圧が大気圧に降圧される。
【0027】
このように、容器2および配管3の内部空間NにあるプロセスガスPを水素放出用ガスR(空気)に置換することで、内部空間Nを定格運転中よりも水素分圧が低い状態にすることができる。なお、脱水素処理の実行中の容器2または配管3の内部空間Nの気圧のことを特定気圧と称する。この特定気圧は、少なくとも運転気圧よりも低い気圧であれば良い。
【0028】
また、水素放出用ガスRには、水素ガスが含まれていない。つまり、脱水素処理の実行中において、水素放出用ガスRが容器2または配管3の内部空間Nに入り、かつ特定気圧となることで、この内部空間Nの状態が定格運転中よりも水素分圧が低い状態になる。
【0029】
脱水素処理の実行中において、容器2および配管3の内部空間NからプロセスガスPが排出されても、容器2および配管3の温度は、余熱により180℃以上に維持される。なお、脱水素処理の実行中の容器2または配管3の温度を特定温度と称する。さらに、脱水素処理の実行中において、容器2または配管3の内部空間Nを水素分圧が低い状態にするとともに、容器2または配管3の温度を特定温度に維持する時間を特定時間と称する。
【0030】
脱水素処理で用いる特定気圧、特定温度、および特定時間の値は、容器2および配管3の水素原子の吸蔵量(金属材中の水素濃度)に応じて適宜変更される値である。本実施形態では、定格運転を行う前に、定格運転中に容器2および配管3に吸蔵される水素原子の吸蔵量を解析する。
【0031】
この吸蔵量は、容器2および配管3の構造、材質、水素原子の固溶度、水素原子の拡散係数、定格運転中のプロセスガスPの水素ガスの濃度、定格運転中の内部空間Nの気圧、定格運転中の容器2および配管3の温度、および定格運転時間に基づいて解析される。
【0032】
なお、水素原子の固溶度とは、金属材に対する水素原子の吸蔵されやすさを示す度数である。また、水素原子の拡散係数とは、金属材に吸蔵されている水素原子が温度を上げてゆくに連れて拡散する時間に関する係数である。また、定格運転時間とは、水素取扱装置1の運転時間であって、その運転中に水素ガスが容器2および配管3の内面に接する時間を示す。
【0033】
また、水素取扱装置1の周辺環境(気圧または気温)または他の情報(水素取扱装置1の使用年数、使用履歴、使用目的、費用対効果または安全性)を、前述の解析に用いても良い。
【0034】
この解析結果に基づいて、特定気圧、特定温度、および特定時間の値が設定される。例えば、運転時間が長い場合は、特定時間も長くなることが想定される。なお、容器2および配管3の水素原子の吸蔵量は、その構造または材質に応じた最大値(限界値)がある。そのため、特定時間の長さにも最大値がある。つまり、水素取扱装置1の運転時間が一定時間以上である場合には、その最大値まで水素原子が吸蔵されるので、いずれの運転時間であっても特定時間が一定の値となる。
【0035】
本実施形態では、容器2および配管3の水素吸蔵量を予め解析しているので、脱水素処理を過剰な時間に亘って継続したり、脱水素処理の時間が足りなくなったりすることがない。
【0036】
なお、特定気圧、特定温度、および特定時間の値は、事前の解析結果に基づいて固定的に定まる値であっても良い。また、定格運転の条件が複数存在する場合に、各条件に対応する特定気圧、特定温度、および特定時間の値を別個に設定し、これらの値を所定のデータベースに保持しておいても良い。そして、実際に実行される定格運転の条件に応じて、特定気圧、特定温度、および特定時間の値を適宜設定しても良い。
【0037】
第1実施形態では、脱水素処理の実行中に、容器2および配管3の温度が余熱により180℃以上に維持される。ここで、容器2および配管3の内部空間Nに水素放出用ガスR(空気)が導入されることにより、その温度が下がってゆく。
【0038】
例えば、容器2および配管3の温度が300℃で定格運転を行っている場合に、脱水素処理が開始されて、その温度が180℃まで下がるまでの余熱時間が30分であるとする。容器2および配管3の吸蔵量が少ない場合には、この30分の余熱時間を特定時間として設定しても、充分に水素原子を容器2または配管3から放出させることができる。
【0039】
しかし、容器2および配管3の吸蔵量が多い場合には、特定時間を60分として設定する必要がある。その場合には、余熱時間を延長する制御を行う。例えば、脱水素処理の開始時に、ガス加熱部8の出力を一時的に上げることにより、プロセスガスPを昇温させる。そして、容器2および配管3の温度を400℃まで昇温させる。この昇温により余熱時間を60分まで延長する。この延長により、60分の特定時間に亘って容器2および配管3の温度を180℃以上に維持することができる。
【0040】
第1実施形態において余熱時間を確保するために、容器2および配管3の外面に保温材を設けても良い。水素取扱装置1の製造時において、特定温度および特定時間の値を固定的に設定する場合には、設定された特定温度および特定時間基づいて、保温材の量を変更しても良い。
【0041】
次に、制御装置18のシステム構成を図2に示すブロック図を参照して説明する。なお、容器2および配管3の構造・材質を示すデータと、容器2および配管3の水素原子の固溶度・拡散係数を示すデータとを特定情報と称する。また、定格運転中のプロセスガスPの水素ガスの濃度と、定格運転中の内部空間Nの気圧と、定格運転中の容器2および配管3の温度と、定格運転時間とを運転情報と称する。
【0042】
図2に示すように、制御装置18は、特定情報が外部から入力され、この特定情報を記憶する特定情報記憶部21と、運転情報が外部から入力され、この運転情報を記憶する運転情報記憶部22とを備える。これらの情報は、定格運転の開始前に、特定情報記憶部21と運転情報記憶部22に入力される。特定情報は、安全裕度等を考慮して設定されたデータによって代替されても良い。また、水素取扱装置1の製造時に入力されても良い。
【0043】
なお、容器2および配管3の水素原子の固溶度・拡散係数を示すデータは、関係式または数表の形式で入力される。また、特定情報記憶部21は、予め様々な種類の構造・材質に対応する金属材の水素原子の固溶度・拡散係数を示すデータを、関係式または数表の形式で記憶しておいても良い。そして、入力された構造・材質を示すデータに応じて、容器2および配管3の水素原子の固溶度・拡散係数を特定しても良い。
【0044】
制御装置18は、特定情報記憶部21に記憶された特定情報および運転情報記憶部22に記憶された運転情報に基づいて、定格運転中に、容器2および配管3に吸蔵される水素原子の吸蔵量を解析する解析部23を備える。この解析部23は、容器2および配管3の水素原子の吸蔵量を解析する吸蔵量解析部24と、容器2および配管3の水素原子の吸蔵量の最大値を解析する吸蔵最大値解析部25と、容器2および配管3の水素原子の濃度分布を解析する水素分布解析部26とから成る。
【0045】
この解析部23において解析された結果に基づいて、特定気圧、特定温度、および特定時間の値が決定される。なお、脱水素処理後に容器2および配管3の水素吸蔵量がゼロになる必要は無く、所定の目標値まで低下すれば良い。この目標値は、水素脆化を防ぐことができる値である。また、容器2および配管3の構造、材質、応力状態、安全率などを考慮して、目標値の設定がなされる。
【0046】
一般的に使用可能な目標値の目安として、限界水素量が挙げられる。限界水素量は、金属材が遅れ破壊を起こさない上限の拡散性水素量である。この限界水素量は、予め金属材の試験片を用いて実験を行うことで取得される。例えば、試験片に加える荷重(応力)を一定とし、拡散性水素量を変えた場合の破断時間の変化に基づいて、限界水素量を定義することができる。
【0047】
解析部23では、脱水素処理後の容器2および配管3の水素吸蔵量の低下の目標値が設定される。そして、脱水素処理の実行によって、容器2および配管3の水素吸蔵量が目標値になるように、特定気圧、特定温度、および特定時間の値が決定される。
【0048】
第1実施形態では、特定時間が運転計画において許容される範囲内となるように特定温度が決定される。なお、第1実施形態では、容器2および配管3の温度が余熱により維持されるので、特定温度の値は、脱水素処理開始時に最も高く、特定時間の経過に応じて下がってゆく値となっている。また、特定時間を短くすることで、水素取扱装置1の効率的な運用を測ることができる。
【0049】
また、解析部23では、拡散方程式の解を求める方法、拡散方程式の数値解析解を求める方法、または有限要素解析解を用いて予測する方法などが用いられて、特定時間が算出される。また、前述の解析を予め実施し、これを基に導いた関係式、数表、または固定値によって代替しても良い。これらの方法を、適宜選択して用いることにより、必要となる精度の水素濃度分布予測を最小の時間で得ることができる。その結果、特定時間の決定を効率的に実施できる。
【0050】
また、制御装置18は、解析部23にて解析された結果を記憶するとともに、決定された特定気圧、特定温度、および特定時間の値が記憶される脱水素処理データベース27を備える。
【0051】
さらに、制御装置18は、水素取扱装置1の使用者が操作して定格運転に係る指示を行う操作部28と、この操作部28に入力された指示に基づいて、定格運転を行う運転制御部29と、定格運転を終了するときに脱水素処理を実行する脱水素制御部30と、脱水素処理後に容器2および配管3の降温を行う降温制御部31とを備える。
【0052】
脱水素制御部30には、脱水素処理データベース27に記憶された特定気圧、特定温度、および特定時間の値(パラメータ)が入力される。つまり、脱水素制御部30は、特定気圧が設定される特定気圧設定部32と、特定温度が設定される特定温度設定部33と、特定時間が設定される特定時間設定部34とを備える。これらの設定に基づいて、脱水素処理が実行される。
【0053】
また、脱水素制御部30には、脱水素処理中に温度センサ9と圧力センサ10と水素センサ11とから出力される各種検出信号が入力される。また、脱水素制御部30は、脱水素処理中に特定時間をカウントする時計部35を備える。
【0054】
本実施形態の制御装置18は、プロセッサおよびメモリなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、本実施形態の水素取扱装置1の運転方法は、プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
【0055】
次に、制御装置18が実行する運転処理について図3のフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示すブロック図を適宜参照する。以下のフローチャートの各ステップの説明にて、例えば「ステップS11」と記載する箇所を「S11」と略記する。
【0056】
図3に示すように、まず、定格運転前において、容器2および配管3の構造・材質を示すデータと、容器2および配管3の水素原子の固溶度・拡散係数を示すデータとを含む特定情報が制御装置18に入力される(S11)。次に、入力された特定情報が特定情報記憶部21に記憶される(S12)。
【0057】
次に、定格運転前において、想定される定格運転中のプロセスガスPの水素ガスの濃度と、想定される定格運転中の内部空間Nの気圧と、想定される定格運転中の容器2および配管3の温度と、想定される定格運転時間とを含む運転情報が制御装置18に入力される(S13)。次に、入力された運転情報が運転情報記憶部22に記憶される(S14)。
【0058】
次に、解析部23の吸蔵量解析部24は、定格運転中に容器2および配管3に吸蔵される水素原子の吸蔵量を解析する(S15)。次に、解析部23の吸蔵最大値解析部25は、定格運転中に容器2および配管3に吸蔵される水素原子の吸蔵量の最大値を解析する(S16)。水素原子の吸蔵量の最大値は、水素原子の固溶度、または固溶度から安全裕度等を考慮して設定された数値によって代替しても良い。次に、解析部23の水素分布解析部26は、定格運転中に容器2および配管3に吸蔵される水素原子の濃度分布を解析する(S17)。
【0059】
なお、解析部23は、吸蔵量解析部24、吸蔵最大値解析部25、水素分布解析部26の全部を備える必要は無く、一部、もしくは全部を選定して用いれば良い。これに対応し、吸蔵される水素原子の吸蔵量の解析(S15)、吸蔵される水素原子の吸蔵量の最大値の解析(S16)、吸蔵される水素原子の濃度分布の解析(S17)の全部の処理を実施する必要は無く、一部、もしくは全部を選定して実施すれば良い。
【0060】
定格運転前において、解析部23が、特定情報を取得することで、容器2および配管3に吸蔵される水素原子の吸蔵量の解析を容易に行うことができる。また、解析部23が、運転情報を取得することで、運転中の状態に応じて吸蔵量が解析され、この解析に基づいて、運転を終了するときの脱水素処理を行うことができる。この解析部23では、特定気圧、特定温度、および特定時間の値が決定される。
【0061】
次に、解析部23にて解析された結果、および、決定された特定気圧、特定温度、および特定時間の値が脱水素処理データベース27に記憶される(S18)。本実施形態では、容器2および配管3に吸蔵される水素原子の吸蔵量を予め解析し、この解析に基づいて、容器2または配管3に吸蔵された水素原子を放出するための脱水素処理を設定することができる。
【0062】
次に、脱水素処理データベース27に記憶された特定気圧が脱水素制御部30の特定気圧設定部32に設定される(S19)。次に、脱水素処理データベース27に記憶された特定温度が脱水素制御部30の特定温度設定部33に設定される(S20)。次に、脱水素処理データベース27に記憶された特定時間が脱水素制御部30の特定時間設定部34に設定される(S21)。
【0063】
次に、使用者が操作部28を操作して定格運転に係る指示を行うことで、運転制御部29が定格運転を開始する(S22)。次に、運転制御部29は、ガス加熱部8の駆動を開始する(S23)。次に、運転制御部29は、上流側のガス流通ライン5にプロセスガスPを導入する(S24)。このプロセスガスPがガス加熱部8で180℃以上に昇温される。
【0064】
次に、運転制御部29が第1入口弁12および第1出口弁13を開放することで、容器2および配管3に高温のプロセスガスPが導入される。これにより内部空間Nの気圧が上昇される(S25)。なお、プロセスガスPは、上流側のガス流通ライン5から容器2および配管3を通過して、下流側のガス流通ライン7に流れる。
【0065】
次に、容器2および配管3の内面に高温のプロセスガスPが接することで、容器2および配管3の温度が180℃以上に昇温される(S26)。この状態で定格運転が継続される。
【0066】
所定時間に亘って定格運転が継続され、その後、定格運転を終了するときに、脱水素制御部30は、後述する脱水素処理を実行する(S27)。次に、降温制御部31は、所定の制御を行い、容器2および配管3の温度を180℃未満に下げる(S28)。そして、定格運転を終了する(S29)。
【0067】
なお、第1実施形態では、容器2および配管3の内部空間Nに空気が導入されるので、脱水素処理後に、空気の温度(常温)まで容器2および配管3の温度が下がる。また、降温制御部31は、脱水素処理後に、図示しない空冷ファンを駆動させて容器2および配管3を降温させても良い。または、導入ライン14から多量の冷えた空気を送り込んで容器2および配管3を降温させても良い。
【0068】
次に、制御装置18が実行する脱水素処理について図4のフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示すブロック図を適宜参照する。
【0069】
図4に示すように、定格運転を終了するときに、脱水素制御部30は、温度センサ9が検出した容器2および配管3の温度と前述の特定情報とに基づいて、プロセスガスPの導入を停止したときに容器2および配管3の温度を180℃以上に保てる余熱時間を予測する。そして、この予測される余熱時間が特定時間設定部34に設定された特定時間よりも長いか否かを判定する(S31)。
【0070】
ここで、予測される余熱時間が特定時間よりも長い場合(S31がYES)は、後述のS33に進む。一方、予測される余熱時間が特定時間よりも短い場合(S31がNO)は、S32に進む。
【0071】
S32にて脱水素制御部30は、ガス加熱部8の出力を一時的に上げることにより、プロセスガスPを昇温させる。そして、容器2および配管3の温度を昇温させる。この昇温により余熱時間が延長される。なお、昇温させるときの温度は、特定温度設定部33に設定された特定温度に基づいて決定される。
【0072】
次に、脱水素制御部30は、ガス加熱部8を停止する(S33)。次に、脱水素制御部30は、第1入口弁12および第1出口弁13を閉鎖する(S34)。これにより内部空間Nに対するプロセスガスPの供給が停止される。次に、脱水素制御部30は、第2入口弁16および第2出口弁17を開放する(S35)。
【0073】
次に、導入ライン14を通じて水素放出用ガスR(空気)が容器2および配管3の内部空間Nに継続的に供給される(S36)。なお、この水素放出用ガスRは、排出ライン15を通って継続的に排出される。次に、内部空間Nの気圧が大気圧まで低下する(S37)。
【0074】
なお、内部空間Nの気圧が大気圧まで下げる必要はなく、少なくとも運転気圧よりも低い気圧になれば良い。例えば、第2出口弁17の開度を調整することで、内部空間Nの気圧を所定の気圧に維持しても良い。この内部空間Nの気圧は、特定気圧設定部32に設定された特定気圧に基づいて決定される。
【0075】
次に、脱水素制御部30は、時計部35を用いて特定時間のカウントを開始する(S38)。次に、容器2および配管3の温度が余熱により180℃以上に維持される(S39)。この余熱時間中に、容器2および配管3から水素原子が放出される。そして、放出された水素原子(水素ガス)が水素放出用ガスRとともに排出ライン15から外部に排出される。
【0076】
次に、脱水素制御部30は、圧力センサ10を用いて内部空間Nの気圧を検出する(S40)。次に、脱水素制御部30は、温度センサ9を用いて容器2および配管3の温度を検出する(S41)。このように脱水素処理中の内部空間Nの気圧、および容器2および配管3の温度を監視することで、適切に脱水素処理が実行されたことを把握することができる。
【0077】
次に、脱水素制御部30は、水素センサ11を用いて内部空間Nの水素濃度を検出する(S42)。このように脱水素処理中の内部空間Nの水素濃度を監視することで、内部空間Nの水素濃度の変化により、容器2および配管3から充分に水素原子が放出されたか否かを把握することができる。
【0078】
なお、脱水素処理中の内部空間Nの気圧、容器2および配管3の温度、および内部空間Nの水素濃度の変化を、脱水素処理の処理結果として記憶しても良い。そして、脱水素処理の処理結果の履歴に基づいて、容器2および配管3の劣化度を予測しても良い。
【0079】
次に、脱水素制御部30は、特定時間が経過したか否かを判定する(S43)。ここで、特定時間が経過していない場合(S43がNO)は、前述のS39に戻る。一方、特定時間が経過した場合(S43がYES)は、脱水素処理を終了する。
【0080】
なお、実際の脱水素処理の処理結果を解析部23にフィードバックしても良い。例えば、容器2および配管3から放出された水素の量を、水素センサ11を用いて測定し、この水素の放出状態に関する情報を解析部23にフィードバックするようにしても良い。そして、次に実行される脱水素処理にフィードバックの結果を反映させても良い。
【0081】
また、排出ライン15に吸気ポンプを設けるようにし、内部空間NのプロセスガスPまたは水素放出用ガスRを吸い出すようにしても良い。
【0082】
また、現在実行中の脱水素処理において取得された処理結果を解析部23にリアルタイムでフィードバックし、この現在実行中の脱水素処理において用いられている特定気圧、特定温度、および特定時間の値を適宜変更しても良い。例えば、容器2および配管3から放出された水素の量を、水素センサ11を用いて測定し、この水素の放出量が既に目標としている量になった場合に、現在実行中の脱水素処理を終了しても良い。また、水素の放出量の変化に応じて、水素の放出量が目標としている量に到達する時刻を予測し、この時刻を脱水素処理の終了時刻として設定しても良い。
【0083】
本実施形態では、解析された吸蔵量に基づいて、定格運転を終了するときの容器2および配管3の特定温度を設定することで、水素原子の吸蔵量に応じた特定温度を設定することができ、容器2および配管3から充分に水素原子を放出させることができる。
【0084】
本実施形態では、解析された吸蔵量に基づいて、定格運転を終了するときに水素分圧が低い状態および180℃以上の温度を維持する特定時間を設定することで、水素原子の吸蔵量に応じた特定時間を設定することができ、容器2および配管3から充分に水素原子を放出させることができる。
【0085】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の水素取扱装置1Aの運転方法について図5から図6を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0086】
図5に示すように、第2実施形態の水素取扱装置1Aは、水素放出用ガスRを収容するガスボンベ36を備える。このガスボンベ36は、導入ライン14に接続される。なお、ガスボンベ36には、脱水素処理中に容器2および配管3の内部空間Nに継続的に供給できる量の水素放出用ガスRが充填される。
【0087】
また、上流側のガス流通ライン5において、第1入口弁12の下流側にコネクタ部37が設けられる。このコネクタ部37に導入ライン14が接続される。さらに、このコネクタ部37の下流側にガス加熱部8が設けられる。つまり、ガス加熱部8は、上流側のガス流通ライン5において、第1入口弁12よりも下流側に設けられる。
【0088】
第2実施形態では、脱水素処理中に、ガス加熱部8を用いて水素放出用ガスRの温度を180℃以上に昇温する。そして、高温の水素放出用ガスRが容器2および配管3の内部空間Nに供給される。つまり、脱水素処理中に、水素放出用ガスRにより容器2および配管3を加熱し、容器2および配管3の温度を180℃以上に維持する。
【0089】
なお、容器2および配管3の温度を180℃以上に維持するために、水素放出用ガスRの温度を容器2および配管3の温度よりも高くして供給しても良い。例えば、200℃以上の水素放出用ガスRを供給しても良い。
【0090】
第2実施形態の水素放出用ガスRは、酸素含有率が空気よりも低い不活性ガスである。なお、水素放出用ガスRは、酸素濃度が0体積%以上、20体積%以下であれば良い。このようにすれば、水素放出用ガスRにより容器2および配管3が酸化することがない。そのため、大気を用いるときよりも少ない酸化ダメージで脱水素処理を実施できる。容器2および配管3の短寿命化を防止することができる。また、容器2および配管3の内部空間Nに残った水素ガスと水素放出用ガスRが反応することがない。
【0091】
また、水素放出用ガスRが、ヘリウムガスと窒素ガスとアルゴンガスの少なくともいずれか1つのガスを含む。また、これらのガスを混合したガスを用いても良い。このようにすれば、水素放出用ガスRにより容器2および配管3を劣化させることがない。また、容器2および配管3の内部空間Nに残った水素ガスと水素放出用ガスRが反応することがない。
【0092】
次に、制御装置18が実行する脱水素処理について図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示すブロック図を適宜参照する。
【0093】
図6に示すように、定格運転を終了するときに、脱水素制御部30は、第1入口弁12および第1出口弁13を閉鎖する(S51)。これにより内部空間Nに対するプロセスガスPの供給が停止される。次に、脱水素制御部30は、第2入口弁16および第2出口弁17を開放する(S52)。
【0094】
次に、ガスボンベ36に収容された水素放出用ガスR(不活性ガス)が、導入ライン14を通じて上流側のガス流通ライン5に供給される。そして、この水素放出用ガスRが容器2および配管3の内部空間Nに継続的に供給される(S53)。なお、この水素放出用ガスRは、排出ライン15を通って継続的に排出される。また、水素放出用ガスRは、運転気圧よりも低い気圧で供給される。
【0095】
次に、内部空間Nの気圧が運転気圧よりも低い気圧に低下する(S54)。このようにすれば、容器2および配管3の内部空間Nを運転中よりも水素分圧が低い状態にすることができる。そのため、容器2および配管3からの水素原子の放出を促進することができる。
【0096】
この内部空間Nの気圧は、ガスボンベ36から供給される水素放出用ガスRの圧力により決定される。また、第2入口弁16の開度を調整することで、内部空間Nの気圧を所定の気圧に維持しても良い。この内部空間Nの気圧は、特定気圧設定部32に設定された特定気圧に基づいて決定される。
【0097】
次に、脱水素制御部30は、時計部35を用いて特定時間のカウントを開始する(S55)。次に、高温の水素放出用ガスR(不活性ガス)が内部空間Nに導入されることで、容器2および配管3の温度が180℃以上に維持される(S56)。
【0098】
なお、維持される温度は、特定温度設定部33に設定された特定温度に基づいて決定される。この温度の維持中に、容器2および配管3から水素原子が放出される。そして、放出された水素原子(水素ガス)が水素放出用ガスRとともに排出ライン15から外部に排出される。
【0099】
次に、脱水素制御部30は、圧力センサ10を用いて内部空間Nの気圧を検出する(S57)。次に、脱水素制御部30は、温度センサ9を用いて容器2および配管3の温度を検出する(S58)。次に、脱水素制御部30は、水素センサ11を用いて内部空間Nの水素濃度を検出する(S59)。
【0100】
次に、脱水素制御部30は、特定時間が経過したか否かを判定する(S60)。ここで、特定時間が経過していない場合(S60がNO)は、前述のS56に戻る。一方、特定時間が経過した場合(S60がYES)は、S61に進む。
【0101】
S61にて脱水素制御部30は、脱水素条件を満たすか否かを判定する。この脱水素制御部30は、脱水素処理中の内部空間Nの気圧、容器2および配管3の温度、および内部空間Nの水素濃度を監視することで得られた情報を解析し、これらの情報の値が、正常に脱水素を完了したことを示す脱水素条件を満たすものであるか否かを判定する。ここで、脱水素条件を満たさない場合(S61がNO)は、前述のS56に戻る。一方、脱水素条件を満たす場合(S61がYES)は、S62に進む。
【0102】
S62にて脱水素制御部30は、ガス加熱部8を停止する。次に、脱水素制御部30は、第2入口弁16を閉鎖する(S63)。これにより水素放出用ガスRの内部空間Nへの供給が停止される。そして、脱水素処理を終了する。
【0103】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の水素取扱装置1Bの運転方法について図7から図8を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0104】
図7に示すように、第3実施形態の水素取扱装置1Bは、容器2および配管3の外面にそれぞれ取り付けられたヒータ38を備える。第3実施形態では、脱水素処理中に、これらのヒータ38を用いて容器2および配管3を加熱して180℃以上に維持することができる。
【0105】
なお、第3実施形態の水素取扱装置1Bには、前述の導入ライン14(図1)が設けられておらず、脱水素処理中に水素放出用ガスRが容器2および配管3の内部空間Nに供給されない。
【0106】
第3実施形態の水素取扱装置1Bは、排出ライン15において、第2出口弁17の下流側に設けられたガス流量計39と、このガス流量計39の下流側に設けられた真空ポンプ40と、この真空ポンプ40の下流側に設けられた水素除外装置41とを備える。
【0107】
ガス流量計39は、脱水素処理中に排出ライン15を通過するガスの流量を検出する。このガス流量計39を用いて、脱水素処理中に内部空間Nに存在するガスが適切に排出されたか否かを把握することができる。なお、このガス流量計39の値を、脱水素条件を満たすものであるか否かの判定条件として用いる。
【0108】
また、脱水素処理中に真空ポンプ40が駆動されることで、容器2および配管3の内部空間Nに残ったプロセスガスPが排出される。また、脱水素処理中に容器2および配管3から放出された水素ガス(水素原子)も真空ポンプ40によって排出される。つまり、脱水素処理中に継続的に真空ポンプ40が駆動される。
【0109】
さらに、水素除外装置41は、排出ライン15を通じて排出されるガス中から水素を除外する。この水素除外装置41は、水素ガスが排出ライン15を通じて排出されてきた場合に、水素ガスを酸素ガスと結合させて水として排水する。そのため、濃度の高い水素ガスが排出ライン15を通じて排出されても、水素ガスが水素除外装置41で除害されるので、水素取扱装置1Bの周囲に水素ガスが拡散されることがない。
【0110】
なお、ヒータ38と真空ポンプ40と水素除外装置41は、脱水素制御部30(図2)により制御される。また、ヒータ38は、自動制御されるが、その他の制御方法を用いても良い。例えば、手動制御でも良い。また、入/切を含む離散値制御、連続値制御のいずれでも良い。
【0111】
さらに、脱水素処理中に、ヒータ38の出力が容器2および配管3の温度に応じて制御されることで、容器2および配管3を加熱して180℃以上に維持することができる。なお、ヒータ38の出力を、容器2および配管3の温度と無関係に制御しても良い。つまり、シーケンス制御によりヒータ38を制御しても良い。
【0112】
次に、制御装置18が実行する脱水素処理について図8のフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示すブロック図を適宜参照する。
【0113】
図8に示すように、定格運転を終了するときに、脱水素制御部30は、ヒータ38の駆動を開始する(S71)。次に、脱水素制御部30は、ガス加熱部8を停止する(S72)。次に、脱水素制御部30は、第1入口弁12および第1出口弁13を閉鎖する(S73)。これにより内部空間Nに対するプロセスガスPの供給が停止される。次に、脱水素制御部30は、第2出口弁17を開放する(S74)。
【0114】
次に、脱水素制御部30は、真空ポンプ40の駆動を開始する(S75)。この真空ポンプ40を駆動させることによって、容器2および配管3の内部空間Nに残ったプロセスガスPが排出される。そして、容器2および配管3の内部空間Nの気圧が低下する(S76)。なお、脱水素処理中の内部空間Nの気圧は、10−1Pa以上、大気圧未満であれば良い。
【0115】
この内部空間Nの気圧は、真空ポンプ40の駆動力により決定される。また、第2入口弁16または第2出口弁17の開度を調整することで、内部空間Nの気圧を所定の気圧に維持しても良い。この内部空間Nの気圧は、特定気圧設定部32に設定された特定気圧に基づいて決定される。
【0116】
次に、脱水素制御部30は、時計部35を用いて特定時間のカウントを開始する(S77)。次に、ヒータ38の加熱により容器2および配管3の温度が180℃以上に維持される(S78)。
【0117】
なお、ヒータ38の温度は、特定温度設定部33に設定された特定温度に基づいて決定される。このヒータ38を用いた温度の維持中に、容器2および配管3から水素原子が放出される。そして、放出された水素原子(水素ガス)が真空ポンプ40を用いて水素除外装置41に送られる。なお、水素除外装置41で水素ガスが酸素ガスと結合されて水として排水される。また、真空ポンプ40で内部空間Nから吸い出された他のガスは、空気中に排気される。
【0118】
次に、脱水素制御部30は、圧力センサ10を用いて内部空間Nの気圧を検出する(S79)。次に、脱水素制御部30は、温度センサ9を用いて容器2および配管3の温度を検出する(S80)。次に、脱水素制御部30は、水素センサ11を用いて内部空間Nの水素濃度を検出する(S81)。次に、脱水素制御部30は、ガス流量計39を用いて排出ライン15のガスの流量を検出する(S82)。
【0119】
次に、脱水素制御部30は、特定時間が経過したか否かを判定する(S83)。ここで、特定時間が経過していない場合(S83がNO)は、前述のS78に戻る。一方、特定時間が経過した場合(S83がYES)は、S84に進む。
【0120】
S84にて脱水素制御部30は、脱水素条件を満たすか否かを判定する。この脱水素制御部30は、脱水素処理中の内部空間Nの気圧、容器2および配管3の温度、内部空間Nの水素濃度、および排出ライン15のガスの流量を監視することで得られた情報を解析し、これらの情報の値が、正常に脱水素を完了したことを示す脱水素条件を満たすものであるか否かを判定する。ここで、脱水素条件を満たさない場合(S84がNO)は、前述のS78に戻る。一方、脱水素条件を満たす場合(S84がYES)は、S85に進む。
【0121】
S85にて脱水素制御部30は、ヒータ38を停止する。次に、脱水素制御部30は、真空ポンプ40を停止する(S86)。そして、脱水素処理を終了する。
【0122】
なお、第3実施形態では、定格運転中にガス加熱部8を用いてプロセスガスPを加熱するようにしているが、定格運転中にヒータ38を用いてプロセスガスPを加熱しても良い。つまり、脱水素処理中に容器2および配管3の温度を維持する部品と、定格運転中にプロセスガスPを加熱する部品とを兼用させても良い。
【0123】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の水素取扱装置1Cの運転方法について図9から図10を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0124】
図9に示すように、第4実施形態の水素取扱装置1Cは、容器2および配管3の外面にそれぞれ取り付けられたヒータ38を備える。第4実施形態では、脱水素処理中に、これらのヒータ38を用いて容器2および配管3を加熱して180℃以上に維持することができる。
【0125】
第4実施形態の水素取扱装置1Cは、水素放出用ガスRを収容するガスボンベ36を備える。このガスボンベ36は、導入ライン14に接続される。なお、導入ライン14は、入口側コネクタ部4に接続されている。
【0126】
また、ガスボンベ36には、脱水素処理中に容器2および配管3の内部空間Nに継続的に供給できる量の水素放出用ガスRが充填される。この水素放出用ガスRは、酸素濃度が0体積%以上、20体積%以下の酸素含有率が空気よりも低い不活性ガスである。また、水素放出用ガスRが、ヘリウムガスと窒素ガスとアルゴンガスの少なくともいずれか1つのガスを含む。また、これらのガスを混合したガスを用いても良い。また、この水素放出用ガスRが、脱水素処理の開始時に内部空間Nに残っているプロセスガスPを排出させるパージ用ガスとなっている。
【0127】
第4実施形態の水素取扱装置1Cは、排出ライン15において、第2出口弁17の下流側に設けられたガス流量計39と、このガス流量計39の下流側に設けられた真空ポンプ40と、この真空ポンプ40の下流側に設けられた水素除外装置41とを備える。
【0128】
次に、制御装置18が実行する脱水素処理について図10のフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示すブロック図を適宜参照する。
【0129】
図10に示すように、定格運転を終了するときに、脱水素制御部30は、ヒータ38の駆動を開始する(S91)。次に、脱水素制御部30は、ガス加熱部8を停止する(S92)。次に、脱水素制御部30は、第1入口弁12および第1出口弁13を閉鎖する(S93)。これにより内部空間Nに対するプロセスガスPの供給が停止される。次に、脱水素制御部30は、第2入口弁16および第2出口弁17を開放する(S94)。
【0130】
次に、ガスボンベ36に収容された水素放出用ガスR(不活性ガス)が、導入ライン14を通じて容器2および配管3に供給される。そして、この水素放出用ガスRが容器2および配管3の内部空間Nに継続的に供給される(S95)。
【0131】
次に、脱水素制御部30は、真空ポンプ40の駆動を開始する(S96)。この真空ポンプ40を駆動させることによって、容器2および配管3の内部空間Nに残ったプロセスガスPが水素放出用ガスRとともに排出される。そして、容器2および配管3の内部空間Nの気圧が低下する(S97)。なお、脱水素処理中の内部空間Nの気圧は、10−1Pa以上、大気圧未満であれば良い。
【0132】
この内部空間Nの気圧は、真空ポンプ40の駆動力により決定される。また、第2入口弁16または第2出口弁17の開度を調整することで、内部空間Nの気圧を所定の気圧に維持しても良い。この内部空間Nの気圧は、特定気圧設定部32に設定された特定気圧に基づいて決定される。
【0133】
次に、脱水素制御部30は、時計部35を用いて特定時間のカウントを開始する(S98)。次に、脱水素制御部30は、第2入口弁16を閉鎖する(S99)。これにより容器2および配管3の内部空間Nへの水素放出用ガスRの供給が停止される。そのため、内部空間Nを高真空の状態にすることができる。
【0134】
次に、ヒータ38の加熱により容器2および配管3の温度が180℃以上に維持される(S100)。
【0135】
なお、ヒータ38の温度は、特定温度設定部33に設定された特定温度に基づいて決定される。このヒータ38を用いた温度の維持中に、容器2および配管3から水素原子が放出される。そして、放出された水素原子(水素ガス)が真空ポンプ40を用いて水素除外装置41に送られる。なお、水素除外装置41で水素ガスが酸素ガスと結合されて水として排水される。また、真空ポンプ40で内部空間Nから吸い出された他のガスは、空気中に排気される。
【0136】
次に、脱水素制御部30は、圧力センサ10を用いて内部空間Nの気圧を検出する(S101)。次に、脱水素制御部30は、温度センサ9を用いて容器2および配管3の温度を検出する(S102)。次に、脱水素制御部30は、水素センサ11を用いて内部空間Nの水素濃度を検出する(S103)。次に、脱水素制御部30は、ガス流量計39を用いて排出ライン15のガスの流量を検出する(S104)。
【0137】
次に、脱水素制御部30は、特定時間が経過したか否かを判定する(S105)。ここで、特定時間が経過していない場合(S105がNO)は、前述のS100に戻る。一方、特定時間が経過した場合(S105がYES)は、S106に進む。
【0138】
S106にて脱水素制御部30は、脱水素条件を満たすか否かを判定する。この脱水素制御部30は、脱水素処理中の内部空間Nの気圧、容器2および配管3の温度、内部空間Nの水素濃度、および排出ライン15のガスの流量を監視することで得られた情報を解析し、これらの情報の値が、正常に脱水素を完了したことを示す脱水素条件を満たすものであるか否かを判定する。ここで、脱水素条件を満たさない場合(S106がNO)は、前述のS100に戻る。一方、脱水素条件を満たす場合(S106がYES)は、S107に進む。
【0139】
S107にて脱水素制御部30は、ヒータ38を停止する。次に、脱水素制御部30は、真空ポンプ40を停止する(S108)。そして、脱水素処理を終了する。
【0140】
なお、第4実施形態では、脱水素処理中に容器2および配管3に供給される水素放出用ガスRの温度は、180℃未満であっても良い。例えば、ヒータ38の加熱により容器2および配管3の温度が300℃に維持される場合に、水素放出用ガスRの温度が50℃であっても良い。つまり、容器2および配管3の温度が180℃以上に維持されれば、水素放出用ガスRの温度が低くても良い。
【0141】
本実施形態に係る水素取扱装置の運転方法を第1実施形態から第4実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。例えば、第1実施形態において、脱水素処理中に活性ガスを内部空間Nに導入しても良い。また、第2および第4実施形態において、脱水素処理中に空気を内部空間Nに導入しても良い。
【0142】
なお、本実施形態の所定の値と判定値(特定時間)との判定は、「判定値以上か否か」の判定でも良いし、「判定値を超えているか否か」の判定でも良いし、「判定値以下か否か」の判定でも良いし、「判定値未満か否か」の判定でも良い。また、判定値に幅を持たせても良く、一定の範囲に収まる数値を判定値としても良い。
【0143】
なお、本実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
【0144】
本実施形態の制御装置18は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0145】
なお、本実施形態の制御装置18で実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、CD−R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
【0146】
また、制御装置18で実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、この制御装置18は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【0147】
なお、本実施形態では、容器2および配管3の両方の部品を脱水素処理の対象としているが、容器2または配管3のいずれか一方の部品の水素原子の吸蔵量を解析し、この一方の部品のみを脱水素処理の対象としても良い。
【0148】
なお、本実施形態では、制御装置18が脱水素処理を実行しているが、使用者が手動で各入口弁および各出口弁を操作することで脱水素処理を実行しても良い。なお、特定時間の解析結果を制御装置18が出力し、この出力された特定時間に基づいて、使用者が手動で各入口弁および各出口弁を操作しても良い。また、制御装置18は、水素取扱装置1の本体と一体的に設けられた装置でなくても良く、解析のみを行う装置であっても良い。つまり、制御装置18は、水素取扱装置1の本体とは別に設けられたコンピュータで構成されても良い。
【0149】
なお、本実施形態では、容器2および配管3の外面に温度センサ9が取り付けられている。また、容器2および配管3の内面に温度センサ9を取り付けるようにしても良い。この内面が水素原子を最も吸蔵し易い部分となっているので、その温度を温度センサ9で検出することで、吸蔵量の解析または放出量の予測を正確に行うことができる。
【0150】
なお、本実施形態では、脱水素処理中の容器2および配管3の温度を180℃以上に維持するようにしているが、その他の温度以上であっても良い。例えば、200℃以上であっても良いし、400℃以上でもあっても良いし、600℃以上であっても良い。
【0151】
なお、本実施形態では、ガスボンベ36に不活性ガスを収容して脱水素処理中に内部空間Nに供給するようにしているが、その他の態様で不活性ガスを供給しても良い。例えば、空気中から酸素を取り除く酸素除去装置を設けるようにし、この酸素除去装置で酸素を除去された空気(不活性ガス)を脱水素処理中に内部空間Nに供給するようにしても良い。
【0152】
以上説明した実施形態によれば、運転を終了するときに容器または配管の内部空間を運転中よりも水素分圧が低い状態にするとともに、容器または配管の温度を180℃以上に維持することにより、容器または配管の水素脆化を防止または抑制することができる。
【0153】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0154】
1(1A,1B,1C)…水素取扱装置、2…容器、3…配管、4…入口側コネクタ部、5…ガス流通ライン、6…出口側コネクタ部、7…ガス流通ライン、8…ガス加熱部、9…温度センサ、10…圧力センサ、11…水素センサ、12…第1入口弁、13…第1出口弁、14…導入ライン、15…排出ライン、16…第2入口弁、17…第2出口弁、18…制御装置、19…吸気口、20…排気口、21…特定情報記憶部、22…運転情報記憶部、23…解析部、24…吸蔵量解析部、25…吸蔵最大値解析部、26…水素分布解析部、27…脱水素処理データベース、28…操作部、29…運転制御部、30…脱水素制御部、31…降温制御部、32…特定気圧設定部、33…特定温度設定部、34…特定時間設定部、35…時計部、36…ガスボンベ、37…コネクタ部、38…ヒータ、39…ガス流量計、40…真空ポンプ、41…水素除外装置、N…内部空間、P…プロセスガス、R…水素放出用ガス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10