特許第6790230号(P6790230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6790230添加剤組成物およびそれを含有するポリマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790230
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】添加剤組成物およびそれを含有するポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20201116BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20201116BHJP
   C08K 5/527 20060101ALI20201116BHJP
   C08K 3/105 20180101ALI20201116BHJP
   C08L 23/00 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K5/098
   C08K5/527
   C08K3/105
   !C08L23/00
【請求項の数】29
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2019-507233(P2019-507233)
(86)(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公表番号】特表2019-532120(P2019-532120A)
(43)【公表日】2019年11月7日
(86)【国際出願番号】US2017044597
(87)【国際公開番号】WO2018031271
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2019年3月4日
(31)【優先権主張番号】62/373,703
(32)【優先日】2016年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ、チ−チュン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイブライト、シェーン・エム.
(72)【発明者】
【氏名】ケラー、キース・エー.
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−251469(JP,A)
【文献】 特開2011−246589(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0065994(US,A1)
【文献】 特開2012−057113(JP,A)
【文献】 特開2006−117776(JP,A)
【文献】 特開平05−156078(JP,A)
【文献】 米国特許第05342868(US,A)
【文献】 特開昭58−001736(JP,A)
【文献】 米国特許第04463113(US,A)
【文献】 特開平10−053673(JP,A)
【文献】 特表2008−516069(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0079613(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0171834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I)
【化1】
(式中、RおよびRは、水素およびC〜C18アルキル基からなる群から独立して選択され、Rは、アルカンジイル基である)
の構造に従うリン酸エステルアニオンと、
(b)芳香族カルボン酸アニオンと、
(c)アルミニウム(III)カチオンと、
(d)ナトリウムカチオンと、
(e)任意に、リチウムカチオンと、
(f)任意に、亜鉛(II)カチオンと
を含む添加剤組成物であって、
(i)前記リン酸エステルアニオンが、前記添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の2mol%〜90mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(ii)前記芳香族カルボン酸アニオンが、前記添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の10mol%〜98mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(iii)前記アルミニウム(III)カチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の1mol%〜35mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(iv)前記ナトリウムカチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の10mol%〜96mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(v)存在する場合、前記リチウムカチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の0mol%〜60mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(vi)存在する場合、前記亜鉛(II)カチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の0mol%〜20mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(vii)前記添加剤組成物が、5重量%以上の脂肪酸塩を含有する、
添加剤組成物。
【請求項2】
およびRが、水素およびC〜Cアルキル基からなる群から選択される、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項3】
およびRが、tert−ブチル基である、請求項2に記載の添加剤組成物。
【請求項4】
が、C〜Cアルカンジイル基である、請求項1〜3の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項5】
が、メタンジイル基である、請求項4に記載の添加剤組成物。
【請求項6】
前記芳香族カルボン酸アニオンが、安息香酸アニオンである、請求項1〜5の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項7】
前記リン酸エステルアニオンが、前記添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の15mol%〜50mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項1〜6の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項8】
前記芳香族カルボン酸アニオンが、前記添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の50mol%〜85mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項1〜7の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項9】
前記アルミニウム(III)カチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の5mol%〜15mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項1〜8の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項10】
前記ナトリウムカチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の45mol%〜95mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項1〜9の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項11】
前記添加剤組成物が、リチウムカチオンを含み、前記リチウムカチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の10mol%〜40mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項1〜10の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項12】
前記添加剤組成物が、亜鉛(II)カチオンを含み、前記亜鉛(II)カチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の0.1mol%〜5mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項1〜11の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項13】
前記添加剤組成物が、20重量%〜55重量%の脂肪酸塩を含有する、請求項1〜12の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項14】
(a)式(I)
【化2】
(式中、RおよびRは、水素およびC〜C18アルキル基からなる群から独立して選択され、Rは、アルカンジイル基である)
の構造に従うリン酸エステルアニオンと、
(b)芳香族カルボン酸アニオンと、
(c)脂環式ジカルボン酸アニオンと、
(d)アルミニウム(III)カチオンと、
(e)ナトリウムカチオンと、
(f)任意に、カルシウムカチオンと、
(g)任意に、リチウムカチオンと、
(h)任意に、亜鉛(II)カチオンと
を含む添加剤組成物であって、
(i)前記リン酸エステルアニオンが、前記添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の1.5mol%〜45mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(ii)前記芳香族カルボン酸アニオンが、前記添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の5mol%〜80mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(iii)前記脂環式ジカルボン酸アニオンが、前記添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の3mol%〜55mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(iv)前記アルミニウム(III)カチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の0.5mol%〜20mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(v)前記ナトリウムカチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の30mol%〜90mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(vi)存在する場合、前記カルシウムカチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の35mol%以下の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(vii)存在する場合、前記リチウムカチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の30mol%以下の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(viii)存在する場合、前記亜鉛(II)カチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の15mol%以下の量で、前記添加剤組成物中に存在し、
(ix)前記添加剤組成物が、5重量%以上の脂肪酸塩を含有する、
添加剤組成物。
【請求項15】
およびRが、水素およびC〜Cアルキル基からなる群から選択される、請求項14に記載の添加剤組成物。
【請求項16】
およびRが、tert−ブチル基である、請求項15に記載の添加剤組成物。
【請求項17】
が、C〜Cアルカンジイル基である、請求項14〜16の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項18】
が、メタンジイル基である、請求項17に記載の添加剤組成物。
【請求項19】
前記芳香族カルボン酸アニオンが、安息香酸アニオンである、請求項14〜18の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項20】
前記脂環式ジカルボン酸アニオンが、下の式(X)および式(XX):
【化3】
(式中、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19は、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、およびC〜Cアルキルアミン基からなる群から独立して選択される)、
【化4】
(式中、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、およびR29は、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、およびC〜Cアルキルアミン基からなる群から独立して選択される)
からなる群から選択される構造に従う、請求項14〜19の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項21】
前記リン酸エステルアニオンが、前記添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の20mol%〜40mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項14〜20の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項22】
前記芳香族カルボン酸アニオンが、前記添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の20mol%〜50mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項14〜21の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項23】
前記脂環式ジカルボン酸アニオンが、前記添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の5mol%〜50mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項14〜22の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項24】
前記アルミニウム(III)カチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の5mol%〜15mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項14〜23の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項25】
前記ナトリウムカチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の70mol%〜90mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項14〜24の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項26】
カルシウムカチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の15mol%以下の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項14〜25の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項27】
前記添加剤組成物が、リチウムカチオンを含み、前記リチウムカチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の3mol%〜15mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項14〜26の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項28】
前記添加剤組成物が、亜鉛(II)カチオンを含み、前記亜鉛(II)カチオンが、前記添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の1mol%〜15mol%の量で、前記添加剤組成物中に存在する、請求項14〜27の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項29】
前記添加剤組成物が、15重量%〜45重量%の脂肪酸塩を含有する、請求項14〜28の何れかに記載の添加剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願およびここで記載された発明は、一般に、ポリマーにおける使用に好適な添加剤組成物を対象とする。一態様では、添加剤組成物は、ポリオレフィン、たとえばポリプロピレンポリマーのための核形成剤である。
背景
[0002]熱可塑性ポリマーのためのいくつかの核形成剤が当技術分野で公知である。これらの核形成剤は、一般に、熱可塑性ポリマーが溶融状態から固化する際に、熱可塑性ポリマー中に、結晶の、形成および/または成長のための、核を形成することまたは部位を提供することによって機能する。核形成剤によって提供される、核または部位は、核形成していないバージン熱可塑性ポリマーにおいて結晶が形成するよりも、高い温度でおよび/または速い速度で、冷却中のポリマー内で結晶が形成することを可能にする。これらの効果は、ひいては、核形成した熱可塑性ポリマー組成物を、核形成していないバージン熱可塑性ポリマーよりも短いサイクル時間で加工することを可能にすることができる。
【0002】
[0003]ポリマー核形成剤は、類似の様式で機能し得るが、すべての核形成剤が等しく生成されるとは限らない。たとえば、特定の核形成剤は、熱可塑性ポリマーのピークポリマー再結晶化温度を増大させるのに非常に有効であり得るが、こうした核形成剤によって誘導される速い結晶化速度は、核形成剤を含有する熱可塑性ポリマー組成物から製造される成形部品の不均一な収縮を引き起こし得る。こうした核形成剤はまた、成形部品の剛性を望ましい程度に増大させる上で有効でない可能性がある。
【0003】
[0004]これらの特性の複雑な相互関係、および多くの核形成剤が少なくともある面において最適ではない挙動を示すという事実を考慮して、高いピークポリマー再結晶化温度、調整可能な収縮、および高い剛性のより望ましい組合せを示す熱可塑性ポリマー組成物を製造することが可能である核形成剤が依然として必要である。ここで記載される添加剤組成物およびポリマー組成物は、この必要を満たそうとするものである。
発明の概要
[0005]本発明は、一般に、ポリオレフィン、たとえばポリプロピレンポリマーの核形成のための添加剤組成物を対象とする。添加剤組成物は、特定のモル百分率の、特定のアニオンおよびカチオンを与える、塩または化合物の組合せを含む。本出願において、「アニオン」という用語は、有機酸の共役塩基を与えるまたは形成する有機酸分子の一部を指すために使用される。「カチオン」という用語は、塩または化合物の金属元素部分を指すために使用される。添加剤組成物内において、「アニオン」および「カチオン」は、別個のイオン種として存在していてもよい。しかしながら、ある特定の化合物が添加剤組成物において使用される場合、「アニオン」と「カチオン」との相互作用が、いくらかの共有結合性を示す可能性があり、これは、「アニオン」および「カチオン」が、必ずしも組成物内に別個のイオン種として存在するとは限らない可能性があることを意味する。したがって、本出願において使用される「アニオン」および「カチオン」という用語は、列挙された種が必ず組成物内に個別のイオン種として存在することを含意せず、むしろ、これらの用語は、列挙された添加剤組成物を製造するために使用される、塩および化合物内の、認識可能な一部または部分を指すために便宜上使用される。
【0004】
[0006]第1の態様では、本発明は、
(a)式(I)
【0005】
【化1】
【0006】
(式中、RおよびRは、水素およびC〜C18アルキル基からなる群から独立して選択され、Rは、アルカンジイル基である)
の構造に従うリン酸エステルアニオンと、
(b)芳香族カルボン酸アニオンと、
(c)アルミニウム(III)カチオンと、
(d)ナトリウムカチオンと、
(e)任意に、リチウムカチオンと、
(f)任意に、亜鉛(II)カチオンと
を含む添加剤組成物であって、
(i)リン酸エステルアニオンが、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の約2mol%〜約90mol%の量で、添加剤組成物中に存在し、
(ii)芳香族カルボン酸アニオンが、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の約10mol%〜約98mol%の量で、添加剤組成物中に存在し、
(iii)アルミニウム(III)カチオンが、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約1mol%〜約35mol%の量で、添加剤組成物中に存在し、
(iv)ナトリウムカチオンが、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約10mol%〜約96mol%の量で、添加剤組成物中に存在し、
(v)存在する場合、リチウムカチオンが、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約0mol%〜約60mol%の量で、添加剤組成物中に存在し、
(vi)存在する場合、亜鉛(II)カチオンが、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約0mol%〜約20mol%の量で、添加剤組成物中に存在し、
(vii)添加剤組成物が、5重量%以上の脂肪酸塩を含有する、
添加剤組成物を提供する。
【0007】
[0007]第2の態様では、本発明は、
(a)式(I)
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、RおよびRは、水素およびC〜C18アルキル基からなる群から独立して選択され、Rは、アルカンジイル基である)
の構造に従うリン酸エステルアニオンと、
(b)芳香族カルボン酸アニオンと、
(c)脂環式ジカルボン酸アニオンと、
(d)アルミニウム(III)カチオンと、
(e)ナトリウムカチオンと、
(f)任意に、カルシウムカチオンと、
(g)任意に、リチウムカチオンと、
(h)任意に、亜鉛(II)カチオンと
を含む添加剤組成物であって、
(i)リン酸エステルアニオンが、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の約1.5mol%〜約45mol%の量で、添加剤組成物中に存在し、
(ii)芳香族カルボン酸アニオンが、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の約5mol%〜約80mol%の量で、添加剤組成物中に存在し、
(iii)脂環式ジカルボン酸アニオンが、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の約3mol%〜約55mol%の量で、添加剤組成物中に存在し、
(iv)アルミニウム(III)カチオンが、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約0.5mol%〜約15mol%の量で、添加剤組成物中に存在し、
(v)ナトリウムカチオンが、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約30mol%〜約90mol%の量で、添加剤組成物中に存在し、
(vi)存在する場合、カルシウムカチオンが、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約35mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在し、
(vii)存在する場合、リチウムカチオンが、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約30mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在し、
(viii)存在する場合、亜鉛(II)カチオンが、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約15mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在し、
(ix)添加剤組成物が、5重量%以上の脂肪酸塩を含有する、
添加剤組成物を提供する。
発明の詳細な説明
[0008]第1の態様では、本発明は、リン酸エステルアニオンと、芳香族カルボン酸アニオンと、アルミニウム(III)カチオンと、ナトリウムカチオンと、少なくとも1種の脂肪酸塩とを含む添加剤組成物を提供する。第1の態様の添加剤組成物は、リチウムカチオンおよび/または亜鉛(II)カチオンを任意に含むことができる。アニオンは、特定のモル百分率で存在し、カチオンは、特定のモル百分率で存在する。添加剤組成物中に存在する特定のアニオンは、添加剤組成物中に存在する、1種以上のリン酸エステル塩および1種以上の芳香族カルボン酸塩によって与えられる。添加剤組成物中に存在する特定のカチオンもまた、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステル塩および芳香族カルボン酸塩によって与えられるが、カチオンの一部はまた、添加剤組成物中に存在する脂肪酸塩によって与えられる。
【0010】
[0009]第1の態様の添加剤組成物は、リン酸エステルアニオンを含む。好ましくは、リン酸エステルアニオンは、下の式(I)
【0011】
【化3】
【0012】
の構造に従う。式(I)の構造中、RおよびRは、水素およびC〜C18アルキル基からなる群から独立して選択され、Rは、アルカンジイル基である。好ましい態様では、RおよびRは、水素およびC〜Cアルキル基からなる群から選択される。より好ましくは、RおよびRは、tert−ブチル基である。好ましい態様では、Rは、C〜Cアルカンジイル基である。より好ましくは、Rは、メタンジイル基である。特に好ましい態様では、添加剤組成物は、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートアニオンを含む。
【0013】
[0010]リン酸エステルアニオンは、任意の好適な量で、第1の態様の添加剤組成物中に存在することができる。好ましくは、リン酸エステルアニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の約2mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。リン酸エステルアニオンは、より好ましくは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の、約5mol%以上、約10mol%以上、または約15mol%以上の量で、組成物中に存在する。好ましくは、リン酸エステルアニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の約90mol%以下の量で、組成物中に存在する。リン酸エステルアニオンは、より好ましくは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の、約85mol%以下、約80mol%以下、約75mol%以下、約70mol%以下、約65mol%以下、約60mol%以下、約55mol%以下、または約50mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、リン酸エステルアニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の、約2mol%〜約90mol%、約5mol%〜約85mol%、約10mol%〜約80mol%、約15mol%〜約75mol%、約15mol%〜約70mol%、約15mol%〜約65mol%、約15mol%〜約60mol%、約15mol%〜約55mol%、または約15mol%〜約50mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0014】
[0011]第1の態様の添加剤組成物はまた、芳香族カルボン酸アニオンを含む。好適な芳香族カルボン酸アニオンは、安息香酸アニオンを含むがこれに限定されない。芳香族カルボン酸アニオンは、任意の好適な量で、第1の態様の添加剤組成物中に存在することができる。好ましくは、芳香族カルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の約10mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、芳香族カルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の、約20mol%以上、約30mol%以上、約40mol%以上、または約50mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。好ましくは、芳香族カルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の約98mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、芳香族カルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の、約95mol%以下、約90mol%以下、または約85mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、芳香族カルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量の、約10mol%〜約98mol%、約20mol%〜約95mol%、約30mol%〜約90mol%、約40mol%〜約85mol%、または約50mol%〜約85mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0015】
[0012]上で述べたように、第1の態様の添加剤組成物は、列記されたアニオンに加えて、特定のカチオンの組合せを含む。たとえば、第1の態様の添加剤組成物は、アルミニウム(III)カチオンを含む。添加剤組成物は、任意の好適な量のアルミニウム(III)カチオンを含有することができる。好ましくは、アルミニウム(III)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約1mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、アルミニウム(III)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約5mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。別の好ましい態様では、アルミニウム(III)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約35mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、アルミニウム(III)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約30mol%以下、約25mol%以下、約20mol%以下、または約15mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、アルミニウム(III)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約1mol%〜約35mol%、約5mol%〜約30mol%、約5mol%〜約25mol%、約5mol%〜約20mol%、または約5mol%〜約15mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0016】
[0013]第1の態様の添加剤組成物は、ナトリウムカチオンを追加で含む。第1の態様の添加剤組成物は、任意の好適な量のナトリウムカチオンを含有することができる。好ましくは、ナトリウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約10mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、ナトリウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約15mol%以上、約20mol%以上、約25mol%以上、約30mol%以上、約35mol%以上、約40mol%以上、または約45mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。好ましくは、ナトリウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約96mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、ナトリウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約95mol%以下、約90mol%以下、約85mol%以下、約80mol%以下、約75mol%以下、または約70mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、ナトリウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約10mol%〜約96mol%、約15mol%〜約95mol%、約20mol%〜約95mol%、約25mol%〜約95mol%、約30mol%〜約95mol%、約35mol%〜約95mol%、約40mol%〜約95mol%、約45mol%〜約95mol%(たとえば、約45mol%〜約90mol%、約45mol%〜約85mol%、約45mol%〜約80mol%、約45mol%〜約75mol%、または約45mol%〜約70mol%)の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0017】
[0014]第1の態様の添加剤組成物は、リチウムカチオンを任意に含む。存在する場合、リチウムカチオンは、任意の好適な量で、第1の態様の添加剤組成物中に存在することができる。存在する場合、リチウムカチオンは、好ましくは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約0.1mol%以上、約1mol%以上、約5mol%以上、または約10mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。存在する場合、リチウムカチオンは、好ましくは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約60mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、存在する場合、リチウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約55mol%以下、約50mol%以下、約45mol%以下、約40mol%以下、約35mol%以下、約30mol%以下、約25mol%以下、または約20mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、存在する場合、リチウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約0.1mol%〜約60mol%(たとえば、約1mol%〜約60mol%)、約5mol%〜約55mol%、約10mol%〜約50mol%、約10mol%〜約45mol%、または約10mol%〜約40mol%(たとえば、約10mol%〜約35mol%、約10mol%〜約30mol%、約10mol%〜約25mol%、約10mol%〜約20mol%、もしくは約15mol%〜約20mol%)の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0018】
[0015]第1の態様の添加剤組成物は、亜鉛(II)カチオンを任意に含む。存在する場合、亜鉛(II)カチオンは、任意の好適な量で、第1の態様の添加剤組成物中に存在することができる。存在する場合、亜鉛(II)カチオンは、好ましくは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約0.1mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。別の好ましい態様では、存在する場合、亜鉛(II)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約20mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、存在する場合、亜鉛(II)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約15mol%以下、約10mol%以下、または約5mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、存在する場合、亜鉛(II)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約0.1mol%〜約20mol%、約0.1mol%〜約15mol%、約0.1mol%〜約10mol%、または約0.1mol%〜約5mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0019】
[0016]上で述べたように、第1の態様の添加剤組成物は、少なくとも1種の脂肪酸塩を含む。好適な脂肪酸塩は、飽和および不飽和脂肪酸(たとえば、C以上の脂肪酸)ならびにこうした飽和および不飽和脂肪酸のエステル(たとえば、乳酸またはポリ(乳酸)エステル)の、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および亜鉛(II)塩を含むがこれらに限定されない。好ましい態様では、脂肪酸塩は、飽和脂肪酸、より好ましくはC以上の飽和脂肪酸、さらに好ましくはC10以上の飽和脂肪酸の、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および亜鉛(II)塩からなる群から選択される。より具体的な好ましい態様では、第1の態様の添加剤組成物は、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩(たとえば、12−ヒドロキシステアリン酸塩)、アラキジン酸(エイコサン酸)塩、ベヘン酸塩、ラクチレート(lactylate)塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪酸塩を含む。好ましい態様では、第1の態様の添加剤組成物は、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪酸塩を含む。別の好ましい態様では、添加剤組成物は、ミリスチン酸塩、ステアリン酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸塩を含む。上記の脂肪酸塩は、典型的には、天然供給源に由来し、したがって、異なる炭素鎖長を有する脂肪酸塩の混合物を含有する。たとえば、ステアリン酸塩として販売されている製品は、感知できる量のパルミチン酸塩および/またはアラキジン酸塩を含有することができる。さらに、製品内の異なる脂肪酸塩の配分は、製品を製造するために使用される特定の供給源に応じて変動し得る。したがって、本出願において使用する場合、特定の脂肪酸塩への言及は、純粋な脂肪酸塩のみを包含することを意図したものではない。むしろ、特定の脂肪酸への言及はまた、その特定の脂肪酸塩として市販されている製品を、こうした製品が類似の炭素鎖長を有する測定可能な量の脂肪酸塩も含有する場合であっても包含する。
【0020】
[0017]脂肪酸塩は、任意の好適な量で、第1の態様の添加剤組成物中に存在することができる。好ましくは、第1の態様の添加剤組成物は、添加剤組成物の総重量を基準にして、5重量%以上の脂肪酸塩を含有する。別の態様では、第1の態様の添加剤組成物は、好ましくは、約10重量%以上、約15重量%以上、または約20重量%以上、または約25重量%以上の脂肪酸塩を含有する。第1の態様の添加剤組成物は、好ましくは、約70重量%以下、約65重量%以下、約60重量%以下、または約55重量%以下の脂肪酸塩を含む。したがって、一連の好ましい態様では、第1の態様の添加剤組成物は、5重量%〜約70重量%、約10重量%〜約65重量%、約15重量%〜約60重量%、約20重量%〜約55重量%、または約25重量%〜約55重量%の脂肪酸塩を含有する。
【0021】
[0018]第2の態様では、本発明は、リン酸エステルアニオンと、芳香族カルボン酸アニオンと、脂環式ジカルボン酸アニオンと、アルミニウム(III)カチオンと、ナトリウムカチオンと、少なくとも1種の脂肪酸塩とを含む添加剤組成物を提供する。第2の態様の添加剤組成物は、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および/または亜鉛(II)カチオンを任意に含むことができる。アニオンは、特定のモル百分率で存在し、カチオンは、特定のモル百分率で存在する。添加剤組成物中に存在する特定のアニオンは、添加剤組成物中に存在する、1種以上のリン酸エステル塩、1種以上の芳香族カルボン酸塩、および1種以上の脂環式ジカルボン酸塩によって与えられる。添加剤組成物中に存在する特定のカチオンもまた、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステル塩、芳香族カルボン酸塩、および脂環式ジカルボン酸塩によって与えられるが、カチオンの一部はまた、添加剤組成物中に存在する脂肪酸塩によって与えられる。
【0022】
[0019]第2の態様の添加剤組成物は、リン酸エステルアニオンを含む。好ましくは、リン酸エステルアニオンは、下の式(I)
【0023】
【化4】
【0024】
の構造に従う。式(I)の構造中、RおよびRは、水素およびC〜C18アルキル基からなる群から独立して選択され、Rは、アルカンジイル基である。好ましい態様では、RおよびRは、水素およびC〜Cアルキル基からなる群から選択される。より好ましくは、RおよびRは、tert−ブチル基である。好ましい態様では、Rは、C〜Cアルカンジイル基である。より好ましくは、Rは、メタンジイル基である。特に好ましい態様では、添加剤組成物は、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートアニオンを含む。
【0025】
[0020]リン酸エステルアニオンは、任意の好適な量で、第2の態様の添加剤組成物中に存在することができる。好ましくは、リン酸エステルアニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の約1.5mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。リン酸エステルアニオンは、より好ましくは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の、約5mol%以上、約10mol%以上、約15mol%以上、または約20mol%以上の量で、組成物中に存在する。好ましくは、リン酸エステルアニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の約45mol%以下の量で、組成物中に存在する。リン酸エステルアニオンは、より好ましくは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の、約40mol%以下、約35mol%以下、または約30mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、リン酸エステルアニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の、約1.5mol%〜約45mol%、約5mol%〜約40mol%、約10mol%〜約40mol%、約15mol%〜約40mol%、約20mol%〜約40mol%(たとえば、約20mol%〜約35mol%または約20mol%〜約30mol%)の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0026】
[0021]第2の態様の添加剤組成物はまた、芳香族カルボン酸アニオンを含む。好適な芳香族カルボン酸アニオンは、安息香酸アニオンを含むがこれに限定されない。芳香族カルボン酸アニオンは、任意の好適な量で、第2の態様の添加剤組成物中に存在することができる。好ましくは、芳香族カルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の約5mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、芳香族カルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の、約10mol%以上、約15mol%以上、または約20mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。好ましくは、芳香族カルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の約80mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、芳香族カルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の、約75mol%以下、約70mol%以下、約65mol%以下、約60mol%以下、約55mol%以下、約50mol%以下、約45mol%以下、または約40mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、芳香族カルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の、約5mol%〜約80mol%、約10mol%〜約75mol%、約15mol%〜約70mol%、約20mol%〜約65mol%、約20mol%〜約60mol%、約20mol%〜約55mol%、または約20mol%〜約50mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0027】
[0022]第2の態様の添加剤組成物はまた、脂環式ジカルボン酸アニオンを含む。好ましくは、脂環式ジカルボン酸アニオンは、下の式(X)および式(XX)からなる群から選択される構造に従う。式(X)の構造は、以下である:
【0028】
【化5】
【0029】
式(X)の構造中、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19は、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、およびC〜Cアルキルアミン基からなる群から独立して選択される。好ましくは、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19は、それぞれ水素である。2つのカルボキシレート部分は、cisまたはtrans立体配置の何れかに配置され得る。好ましくは、2つのカルボキシレート部分は、cis立体配置に配置されている。具体的な好ましい態様では、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19は、それぞれ水素であり、2つのカルボキシレート部分は、cis立体配置に配置されている。式(XX)の構造は、以下である:
【0030】
【化6】
【0031】
式(XX)の構造中、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、およびR29は、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、およびC〜Cアルキルアミン基からなる群から独立して選択される。好ましい態様では、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、およびR29は、それぞれ水素である。2つのカルボキシレート部分は、cisまたはtrans立体配置の何れかに配置され得る。好ましくは、2つのカルボキシレート部分は、cis立体配置に配置されている。cis立体配置に配置されている場合、2つのカルボキシレート部分は、化合物の二環式部分に対して、endoまたはexo立体配置の何れかに配置され得る。2つのカルボキシレート部分がcis立体配置に配置されている場合、それらの部分は、好ましくは、cis−endo立体配置に配置されている。好ましい態様では、第2の態様の添加剤組成物は、式(XX)の構造に従う脂環式ジカルボン酸アニオンを含む。より好ましくは、脂環式ジカルボン酸アニオンは、式(XX)の構造に従い、式中、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、およびR29は、それぞれ水素であり、2つのカルボキシレート部分は、cis−endo立体配置に配置されている。
【0032】
[0023]脂環式ジカルボン酸アニオンは、任意の好適な量で、第2の態様の添加剤組成物中に存在することができる。好ましくは、脂環式ジカルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の約3mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、脂環式ジカルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の、約5mol%以上または約10mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。好ましくは、脂環式ジカルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の約55mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、脂環式ジカルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の、約50mol%以下、または約45mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、脂環式ジカルボン酸アニオンは、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、芳香族カルボン酸アニオン、および脂環式ジカルボン酸アニオンの総量の、約3mol%〜約55mol%、約5mol%〜約50mol%、約10mol%〜約50mol%、または約10mol%〜約45mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0033】
[0024]上で述べたように、第2の態様の添加剤組成物は、列記されたアニオンに加えて、特定のカチオンの組合せを含む。たとえば、第2の態様の添加剤組成物は、アルミニウム(III)カチオンを含む。添加剤組成物は、任意の好適な量のアルミニウム(III)カチオンを含有することができる。好ましくは、アルミニウム(III)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約0.5mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、アルミニウム(III)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約1mol%以上、約2mol%以上、約3mol%以上、約4mol%以上、または約5mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。別の好ましい態様では、アルミニウム(III)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約20mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、アルミニウム(III)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約15mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、アルミニウム(III)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約0.5mol%〜約20mol%、約1mol%〜約20mol%、約5mol%〜約20mol%、または約5mol%〜約15mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0034】
[0025]第2の態様の添加剤組成物は、ナトリウムカチオンを追加で含む。第2の態様の添加剤組成物は、任意の好適な量のナトリウムカチオンを含有することができる。好ましくは、ナトリウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約30mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、ナトリウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約40mol%以上、約45mol%以上、約50mol%以上、約55mol%以上、約60mol%以上、約65mol%以上、または約70mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。好ましくは、ナトリウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約95mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、ナトリウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約90mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、ナトリウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約30mol%〜約95mol%(たとえば、約30mol%〜約90mol%)、約40mol%〜約90mol%、約45mol%〜約90mol%、約50mol%〜約90mol%、約55mol%〜約90mol%、約60mol%〜約90mol%、約65mol%〜約90mol%、約70mol%〜約90mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0035】
[0026]第2の態様の添加剤組成物は、カルシウムカチオンを任意に含む。存在する場合、カルシウムカチオンは、任意の好適な量で、第2の態様の添加剤組成物中に存在することができる。存在する場合、カルシウムカチオンは、好ましくは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約0.5mol%以上、約1mol%以上、約2mol%以上、約3mol%以上、約4mol%以上、または約5mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。存在する場合、カルシウムカチオンは、好ましくは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約35mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、存在する場合、カルシウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約30mol%以下、約25mol%以下、約20mol%以下、または約15mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、存在する場合、カルシウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約0.5mol%〜約35mol%、約1mol%〜約30mol%、約2mol%〜約25mol%、約3mol%〜約20mol%、約4mol%〜約15mol%、または約5mol%〜約15mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0036】
[0027]第2の態様の添加剤組成物は、リチウムカチオンを任意に含む。存在する場合、リチウムカチオンは、任意の好適な量で、第2の態様の添加剤組成物中に存在することができる。存在する場合、リチウムカチオンは、好ましくは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約0.5mol%以上、約1mol%以上、約2mol%以上、または約3mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。存在する場合、リチウムカチオンは、好ましくは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約30mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、存在する場合、リチウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約25mol%以下、約20mol%以下、または約15mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、存在する場合、リチウムカチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約0.5mol%〜約30mol%(たとえば、約1mol%〜約30mol%)、約1mol%〜約25mol%、約2mol%〜約20mol%、または約3mol%〜約15mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0037】
[0028]第2の態様の添加剤組成物は、亜鉛(II)カチオンを任意に含む。存在する場合、亜鉛(II)カチオンは、任意の好適な量で、第2の態様の添加剤組成物中に存在することができる。存在する場合、亜鉛(II)カチオンは、好ましくは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約0.1mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、亜鉛(II)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約1mol%以上の量で、添加剤組成物中に存在する。別の好ましい態様では、存在する場合、亜鉛(II)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約15mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。より好ましくは、存在する場合、亜鉛(II)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の約10mol%以下の量で、添加剤組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、存在する場合、亜鉛(II)カチオンは、添加剤組成物中に存在する、アルミニウム(III)カチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量の、約0.1mol%〜約15mol%、約1mol%〜約15mol%、または約1mol%〜約10mol%の量で、添加剤組成物中に存在する。
【0038】
[0029]上で述べたように、第2の態様の添加剤組成物は、少なくとも1種の脂肪酸塩を含む。好適な脂肪酸塩は、飽和および不飽和脂肪酸(たとえば、C以上の脂肪酸)ならびにこうした飽和および不飽和脂肪酸のエステル(たとえば、乳酸またはポリ(乳酸)エステル)の、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および亜鉛(II)塩を含むがこれらに限定されない。好ましい態様では、脂肪酸塩は、飽和脂肪酸、より好ましくはC以上の飽和脂肪酸、さらに好ましくはC10以上の飽和脂肪酸の、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および亜鉛(II)塩からなる群から選択される。より具体的な好ましい態様では、第2の態様の添加剤組成物は、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩(たとえば、12−ヒドロキシステアリン酸塩)、アラキジン酸(エイコサン酸)塩、ベヘン酸塩、ラクチレート塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪酸塩を含む。好ましい態様では、第2の態様の添加剤組成物は、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪酸塩を含む。より好ましくは、第2の態様の添加剤組成物は、ミリスチン酸塩、ステアリン酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪酸を含む。
【0039】
[0030]脂肪酸塩は、任意の好適な量で、第2の態様の添加剤組成物中に存在することができる。好ましくは、第2の態様の添加剤組成物は、添加剤組成物の総重量を基準にして、5重量%以上の脂肪酸塩を含有する。別の態様では、第1の態様の添加剤組成物は、好ましくは、約10重量%以上、約15重量%以上、または約20重量%以上の脂肪酸塩を含有する。第1の態様の添加剤組成物は、好ましくは、約60重量%以下、約55重量%以下、約50重量%以下、または約45重量%以下の脂肪酸塩を含む。したがって、一連の好ましい態様では、第1の態様の添加剤組成物は、5重量%〜約60重量%、約10重量%〜約55重量%、約15重量%〜約50重量%、約15重量%〜約45重量%、または約20重量%〜約45重量%の脂肪酸塩を含有する。
【0040】
[0031]上で述べたように、本発明の添加剤組成物は、ポリオレフィン、たとえばポリプロピレンポリマーの核形成において特に有用である。したがって、別の一連の態様では、本発明は、ポリマーと、ここで記載された添加剤組成物とを含むポリマー組成物を提供する。ポリマー組成物は、任意の好適なポリマーを含むことができる。好ましくは、ポリマーは、熱可塑性ポリマーである。より好ましくは、熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィンである。ポリオレフィンポリマーは、任意の好適なポリオレフィン、たとえばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、およびポリ(ビニルシクロヘキサン)であり得る。好ましい態様では、熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー(たとえば、アタクチックポリプロピレンホモポリマー、アイソタクチックポリプロピレンホモポリマー、およびシンジオタクチックポリプロピレンホモポリマー)、ポリプロピレンコポリマー(たとえば、ポリプロピレンランダムコポリマー)、ポリプロピレンインパクトコポリマー、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるポリオレフィンである。好適なポリプロピレンコポリマーは、エチレン、ブタ−1−エン(すなわち、1−ブテン)、およびヘキサ−1−エン(すなわち、1−ヘキセン)からなる群から選択されるコモノマーの存在下におけるプロピレンの重合により作製されるランダムコポリマーを含むがこれに限定されない。こうしたポリプロピレンランダムコポリマーにおいて、コモノマーは、任意の好適な量で存在することができるが、典型的には、約10重量%未満(たとえば、約1〜約7重量%)の量で存在する。好適なポリプロピレンインパクトコポリマーは、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレン−ジエンモノマー(EPDM)、ポリエチレン、およびプラストマーからなる群から選択されるコポリマーを、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンランダムコポリマーに付加することによって製造されるものを含むがこれに限定されない。こうしたポリプロピレンインパクトコポリマーにおいて、コポリマーは、任意の好適な量で存在することができるが、典型的には、約5〜約25重量%の量で存在する。上記のポリオレフィンポリマーは、分枝または架橋したものであってもよく、たとえばポリマーの溶融強度を増大させる添加剤の添加により生じる、分枝または架橋である。
【0041】
[0032]ポリマー組成物は、任意の好適な量の添加剤組成物を含むことができる。好ましくは、添加剤組成物は、ポリマー組成物の総重量を基準にして、約50ppm以上の量で、ポリマー組成物中に存在する。より好ましくは、添加剤組成物は、ポリマー組成物の総重量を基準にして、約100ppm以上、約200ppm以上、約300ppm以上、約400ppm以上、または約500ppm以上の量で、ポリマー組成物中に存在する。別の好ましい態様では、添加剤組成物は、ポリマー組成物の総重量を基準にして、約10,000ppm以下の量で、ポリマー組成物中に存在する。より好ましくは、添加剤組成物は、ポリマー組成物の総重量を基準にして、約9,000ppm以下、約8,000ppm以下、約7,000ppm以下、約6,000ppm以下、約5,000ppm以下、約4,000ppm以下、約3,000ppm以下、または約2,500ppm以下の量で、ポリマー組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、添加剤組成物は、ポリマー組成物の総重量を基準にして、約50ppm〜約10,000ppm(たとえば、約100ppm〜約10,000ppm)、約50ppm〜約5,000ppm、約100ppm〜約5,000ppm、約500ppm〜約5,000ppmの量で、ポリマー組成物中に存在する。
【0042】
[0033]別の態様では、ポリマー組成物は、比較的多量の添加剤組成物を含む、マスターバッチ組成物であり得る。こうしたマスターバッチの態様では、添加剤組成物は、任意の好適な量で、ポリマー組成物中に存在することができる。一態様では、添加剤組成物は、好ましくは、ポリマー組成物の総重量を基準にして、約1重量%以上の量で、ポリマー組成物中に存在する。より好ましくは、添加剤組成物は、ポリマー組成物の総重量を基準にして、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、または約5重量%以上の量で、ポリマー組成物中に存在する。こうしたマスターバッチ組成物において、添加剤組成物は、好ましくは、ポリマー組成物の総重量を基準にして、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、または約10重量%以下の量で、ポリマー組成物中に存在する。したがって、こうしたマスターバッチ組成物の一連の好ましい態様では、添加剤組成物は、ポリマー組成物の総重量を基準にして、約1重量%〜約50重量%(たとえば、約1重量%〜約40重量%、約1重量%〜約30重量%、約1重量%〜約20重量%、約1重量%〜約15重量%、もしくは約1重量%〜約10重量%)、2重量%〜約50重量%(たとえば、約2重量%〜約40重量%、約2重量%〜約30重量%、約2重量%〜約20重量%、約2重量%〜約15重量%、もしくは約2重量%〜約10重量%)、3重量%〜約50重量%(たとえば、約3重量%〜約40重量%、約3重量%〜約30重量%、約3重量%〜約20重量%、約3重量%〜約15重量%、もしくは約3重量%〜約10重量%)、4重量%〜約50重量%(たとえば、約4重量%〜約40重量%、約4重量%〜約30重量%、約4重量%〜約20重量%、約4重量%〜約15重量%、もしくは約4重量%〜約10重量%)、または5重量%〜約50重量%(たとえば、約5重量%〜約40重量%、約5重量%〜約30重量%、約5重量%〜約20重量%、約5重量%〜約15重量%、もしくは約5重量%〜約10重量%)の量で、ポリマー組成物中に存在する。
【0043】
[0034]上記のポリマー組成物は、添加剤組成物に含有されるポリマー添加剤に加えて、他のポリマー添加剤を含有することができる。好適な追加のポリマー添加剤は、酸化防止剤(たとえば、フェノール系酸化防止剤、ホスフィット酸化防止剤、およびそれらの組合せ)、ブロッキング防止剤(たとえば、非晶質シリカおよび珪藻土)、顔料(たとえば、有機顔料および無機顔料)および他の着色剤(たとえば、染料およびポリマー性着色剤)、充填剤および補強剤(たとえば、ガラス、ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、およびオキシ硫酸マグネシウムウィスカー)、核形成剤、透明化剤、酸捕捉剤(たとえば、ハイドロタルサイト様酸捕捉剤[たとえば、Kisuma Chemicals製のDHT−4A(登録商標)]、脂肪酸の金属塩[たとえば、ステアリン酸の金属塩]、および脂肪酸エステルの金属塩[たとえば、ラクチレート塩])、ポリマー加工添加剤(たとえば、フルオロポリマーポリマー加工添加剤)、ポリマー架橋剤、スリップ剤(たとえば、脂肪酸と、アンモニアまたはアミン含有化合物との反応から得られる脂肪酸アミド化合物)、脂肪酸エステル化合物(たとえば、脂肪酸と、ヒドロキシル含有化合物、たとえばグリセロール、ジグリセロール、およびそれらの組合せとの反応から得られる脂肪酸エステル化合物)、ならびに前述のものの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0044】
[0035]ここで記載されたポリマー組成物は、望ましい物理的特性の組合せを示すことが観察された。たとえば、本発明によるポリマー組成物(たとえば、ポリプロピレンホモポリマー組成物)は、130℃を超える結晶化温度を示すことができ、これは、成形作業におけるサイクル時間を大幅に短縮するのに十分に高い。これらのポリマー組成物はまた、代替の核形成剤で核形成したポリマー組成物に対して比較的高い剛性を示す。加えて、本発明によるポリプロピレンインパクトコポリマー組成物は、代替の核形成剤で核形成したポリマー組成物に対して顕著に増大した、剛性および熱安定性を示す。たとえば、本発明のこうしたポリマー組成物は、加熱たわみ温度の顕著な増大を示し、これは、ポリマー組成物が、高温に曝露されてその剛性を保持しなければならない用途における使用により適していることを意味する。
【0045】
[0036]ここで記載されたポリマー組成物は、熱可塑性物品の製造において有用であると考えられる。ポリマー組成物は、任意の好適な技法、たとえば射出成形、射出回転成形、ブロー成形(たとえば、射出ブロー成形または射出延伸ブロー成形)、押出(たとえば、シート押出、フィルム押出、キャストフィルム押出、または発泡押出)、押出ブロー成形、熱成形、回転成形、フィルムブローイング(ブローフィルム)、フィルムキャスティング(キャストフィルム)などによって、所望の熱可塑性物品に形成することができる。
【0046】
[0037]ここで記載されたポリマー組成物は、任意の好適な物品または製品を製造するために使用することができる。好適な製品は、医療機器(たとえば、レトルト用途のための予め充填されたシリンジ、静脈内供給容器、および採血装置)、食品包装、液体容器(たとえば、飲料、薬物、パーソナルケア組成物、シャンプーなどの容器)、衣装ケース、電子レンジ対応物品、棚、キャビネット扉、機械部品、自動車部品、シート、パイプ、チューブ、回転成形部品、ブロー成形部品、フィルム、繊維などを含むがこれらに限定されない。
【0047】
[0038]以下の例は、上記の主題をさらに例示するが、当然ながら、その範囲をいかなる形でも限定すると解釈されるべきではない。
【0048】
例1
[0039]以下の例は、本発明によるポリマー組成物の製造の実例を示す。この例ではさらに、ポリマー組成物が示すある特定の物理的特性を記載する。
【0049】
[0040]下の表1に記載された添加剤組成を有する14種のポリマー組成物(サンプル1A〜1N)を製造した。ポリマー組成物は、必要な塩をポリマーに個々に添加することによって製造した。表中、「PE」は、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートアニオンを表し、「AC」は、安息香酸アニオンを表すが、サンプル1Jではこのアニオンが4−tert−ブチルベンゾエートアニオンであることを除く。表に報告されたアニオンのモル百分率(mol%)は、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量に対するモル百分率である。表に報告されたカチオンのモル百分率(mol%)は、添加剤組成物中に存在する、ナトリウムカチオン、アルミニウム(III)カチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量に対するモル百分率である。サンプル1Eは、100%ステアリン酸カルシウムであった。各ポリマー組成物は、26MFRポリプロピレンインパクトコポリマー(Prime Polymer J707P)、500ppm Irganox(登録商標)1010(一次酸化防止剤)、および1000ppm Irgafos(登録商標)168(二次酸化防止剤)を含有していた。ポリマー組成物を、Leistritz二軸押出機でコンパウンド化した。押出機のバレル温度は、160から190℃に上昇させ、スクリュースピードは、およそ450rpmに設定した。各ポリマー組成物から、Arburg 40トン射出成形機での射出成形によって、サンプルバーを形成した。成形機は、190〜260℃の範囲の温度に設定した。射出スピードは、14cc/秒であった。サンプルバーの寸法は、80mm×10mm×4mmであった。
【0050】
【表1】
【0051】
[0041]ポリマー組成物の曲げ特性を、ISO178標準方法を使用して測定した。測定は、64mmの支持スパン、および支持スパン対試料奥行の比16:1で、2mm/分のスピードで実施した。報告された値は、サンプルバーを室温で4日間アニーリングした後に行われた5回の測定の平均である。ポリマー組成物の加熱たわみ温度を、ISO75標準方法を使用して測定した。報告された値は、サンプルバーを室温で4日間アニーリングした後に行われた5回の測定の平均である。表2は、曲げおよび加熱たわみ温度試験の結果を記載している。
【0052】
【表2】
【0053】
[0042]表2に記載されたデータから分かるように、サンプル1A〜1Dは、サンプル1E〜1Nよりも大幅に高い曲げ弾性率(70〜400MPa高い)を示した。さらに、サンプル1A〜1Dは、サンプル1E〜1Nが示す加熱たわみ温度よりも少なくとも3℃高い加熱たわみ温度を示した。
【0054】
例2
[0043]以下の例は、本発明によるポリマー組成物の製造の実例を示す。この例ではさらに、ポリマー組成物が示すある特定の物理的特性を記載する。
【0055】
[0044]下の表3に記載された添加剤組成を有する10種のポリマー組成物(サンプル2A〜2J)を製造した。ポリマー組成物は、必要な塩をポリマーに個々に添加することによって製造した。表中、「PE」は、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートアニオンを表し、「AC」は、安息香酸アニオンを表すが、サンプル2Jではこのアニオンが4−tert−ブチルベンゾエートアニオンであることを除く。表に報告されたアニオンのモル百分率(mol%)は、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオンおよび芳香族カルボン酸アニオンの総量に対するモル百分率である。表に報告されたカチオンのモル百分率(mol%)は、添加剤組成物中に存在する、ナトリウムカチオン、アルミニウム(III)カチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量に対するモル百分率である。サンプル2Eは、100%ステアリン酸カルシウムであった。各ポリマー組成物は、ポリプロピレンホモポリマー(Profax 6301、12MFR)、500ppm Irganox(登録商標)1010(一次酸化防止剤)、および1000ppm Irgafos(登録商標)168(二次酸化防止剤)を含有していた。ポリプロピレンホモポリマー組成物を、DeltaPlast単軸押出機でコンパウンド化した。押出機のバレル温度は、200から230℃に上昇させ、スクリュースピードは、およそ130rpmに設定した。Arburg 40トン射出成形機での射出成形によって、サンプルバーを形成した。成形機は、190〜260℃程度の温度に設定した。射出スピードは、14cc/秒であった。バーの寸法は、約80mm×10mm×4mmであった。バーを上の例1に記載したように試験して、曲げ特性およびHDTを決定した。これらの試験の結果を下の表4に記載する。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
[0045]表4に記載されたデータから分かるように、サンプル2A〜2Dは、サンプル2E〜2Jよりも大幅に高い曲げ弾性率(80〜521MPa高い)を示す。さらに、サンプル2A〜2Dは、サンプル2E〜2Jが示す加熱たわみ温度よりも少なくとも8.6℃高い加熱たわみ温度を示した。
【0059】
例3
[0046]以下の例は、本発明によるポリマー組成物の製造の実例を示す。この例ではさらに、ポリマー組成物が示すある特定の物理的特性を記載する。
【0060】
[0047]下の表5に記載された添加剤組成を有する12種のポリマー組成物(サンプル3A〜3L)を製造した。ポリマー組成物は、必要な塩をポリマーに個々に添加することによって製造した。表中、「PE」は、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートアニオンを表し、「CD」は、サンプル3Aおよび3Bについてはcis−endo−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレートアニオン、サンプル3Cについてはcis−ヘキサヒドロフタレートアニオンを表し、「AC」は、安息香酸アニオンを表すが、サンプル3Iではこのアニオンが4−tert−ブチルベンゾエートアニオンであることを除く。表に報告されたアニオンのモル百分率(mol%)は、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、脂環式ジカルボン酸アニオン、および芳香族カルボン酸アニオンの総量に対するモル百分率である。表に報告されたカチオンのモル百分率(mol%)は、添加剤組成物中に存在する、ナトリウムカチオン、アルミニウム(III)カチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量に対するモル百分率である。サンプル3Dは、100%ステアリン酸カルシウムであった。各ポリマー組成物は、26MFRポリプロピレンインパクトコポリマー(Prime Polymer J707P)、500ppm Irganox(登録商標)1010(一次酸化防止剤)、および1000ppm Irgafos(登録商標)168(二次酸化防止剤)を含有していた。ポリマー組成物を、Leistritz二軸押出機でコンパウンド化した。押出機のバレル温度は、160から190℃に上昇させ、スクリュースピードは、およそ450rpmに設定した。各ポリマー組成物から、Arburg 40トン射出成形機での射出成形によって、サンプルバーを形成した。成形機は、190〜260℃の範囲の温度に設定した。射出スピードは、14cc/秒であった。サンプルバーの寸法は、80mm×10mm×4mmであった。
【0061】
【表5】
【0062】
[0048]ピークポリマー結晶化温度(T)を、示差走査熱量計(Mettler−Toledo DSC822示差走査熱量計)を使用して測定した。ポリマー組成物のおよそ5ミリグラムのサンプルを、およそ20℃/分の速度で50℃から220℃に加熱し、220℃の温度で2分間保持して熱履歴を除去し、次いで、20℃/分の速度で50℃に冷却した。次いで、結晶化発熱のピーク(これは、ピークポリマー結晶形成が起こる温度である)を、ピークポリマー結晶化温度(T)として記録した。各サンプルの曲げ弾性率を、例1に記載したように測定した。表6は、曲げ弾性率およびピークポリマー結晶化温度試験の結果を記載している。
【0063】
【表6】
【0064】
[0049]表6に記載されたデータから分かるように、サンプル3A〜3Cは、サンプル3D〜3Lよりも高い曲げ弾性率を示した。さらに、サンプル3A〜3Cは、130℃よりも感知できるほどに高いピークポリマー結晶化温度を示した。
【0065】
例4
[0050]以下の例は、本発明によるポリマー組成物の製造の実例を示す。この例ではさらに、ポリマー組成物が示すある特定の物理的特性を記載する。
【0066】
[0051]下の表7に記載された添加剤組成を有する12種のポリマー組成物(サンプル4A〜4L)を製造した。ポリマー組成物は、必要な塩をポリマーに個々に添加することによって製造した。表中、「PE」は、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートアニオンを表し、「CD」は、サンプル4Aおよび4Bについてはcis−endo−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレートアニオン、サンプル4Cについてはcis−ヘキサヒドロフタレートアニオンを表し、「AC」は、安息香酸アニオンを表すが、サンプル4Iではこのアニオンが4−tert−ブチルベンゾエートアニオンであることを除く。表に報告されたアニオンのモル百分率(mol%)は、添加剤組成物中に存在する、リン酸エステルアニオン、脂環式ジカルボン酸アニオン、および芳香族カルボン酸アニオンの総量に対するモル百分率である。表に報告されたカチオンのモル百分率(mol%)は、添加剤組成物中に存在する、ナトリウムカチオン、アルミニウム(III)カチオン、カルシウムカチオン、リチウムカチオン、および亜鉛(II)カチオンの総量に対するモル百分率である。サンプル4Dは、100%ステアリン酸カルシウムであった。各ポリマー組成物は、ポリプロピレンホモポリマー(Profax 6301、12MFR)、500ppm Irganox(登録商標)1010(一次酸化防止剤)、および1000ppm Irgafos(登録商標)168(二次酸化防止剤)を含有していた。ポリプロピレンホモポリマー組成物を、DeltaPlast単軸押出機でコンパウンド化した。押出機のバレル温度は、200から230℃に上昇させ、スクリュースピードは、およそ130rpmに設定した。Arburg 40トン射出成形機での射出成形によって、サンプルバーを形成した。成形機は、190〜260℃程度の温度に設定した。射出スピードは、14cc/秒であった。バーの寸法は、約80mm×10mm×4mmであった。
【0067】
【表7】
【0068】
[0052]ピークポリマー結晶化温度(T)を、例3に記載したように測定した。各サンプルの曲げ弾性率を、例1に記載したように測定した。表8は、曲げ弾性率およびピークポリマー結晶化温度試験の結果を記載している。
【0069】
【表8】
【0070】
[0053]表8に記載されたデータから分かるように、サンプル4A〜4Cは、サンプル4D〜4Lよりも大幅に高い曲げ弾性率(45〜446MPa高い)を示した。さらに、サンプル4A〜4Cは、130℃よりも高いピークポリマー結晶化温度を示した。
【0071】
[0054]ここで引用された、刊行物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれると個々にかつ具体的に示されており、その全体がここで記載されている場合と同じ程度に、参照によりここに組み込まれる。
【0072】
[0055]本出願の主題の記載に関連する(とりわけ以下の特許請求の範囲に関連する)「ある1つの(a)」および「ある1つの(an)」および「その(the)」という用語ならびに類似の指示対象の使用は、ここで別段の指示がない限り、または明らかな文脈との矛盾がない限り、単数と複数の両方を網羅すると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、および「含有する」という用語は、別段の注記がない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むがこれに限定されない」ことを意味する)と解釈されるべきである。ここでの値の範囲の列挙は、ここで別段の指示がない限り、その範囲に該当する各個別の値に個々に言及する略記方法としての役割を果たすことを意図したものにすぎず、各個別の値は、ここで個々に列挙されている場合と同様に、本明細書に組み込まれる。ここで記載されたすべての方法は、ここで別段の指示がない限り、または別段の明らかな文脈との矛盾がない限り、任意の好適な順序で実施することができる。ここで提供される、あらゆる例、または例示的文言(たとえば、「たとえば(such as)」)の使用は、本出願の主題をより十分に明らかにすることを意図したものにすぎず、別段の特許請求がない限り、主題の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、何らかの特許請求されていない要素が、ここで記載された主題の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0073】
[0056]特許請求された主題を実施するための本発明者らが知る最良の形態を含む、本出願の主題の好ましい態様がここで記載されている。それらの好ましい態様の変形物は、前述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がこうした変形物を必要に応じて利用することを期待し、また、本発明者らは、ここで記載された主題が、ここで具体的に記載された以外の方式で実施されることを意図している。よって、本開示は、準拠法によって認められるように、ここに添付された特許請求の範囲に列挙された主題のすべての改変物および均等物を含む。さらに、ここで別段の指示がない限り、または別段の明らかな文脈との矛盾がない限り、そのすべての可能な変形物における上記の要素の任意の組合せが、本開示に包含される。