(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、本発明のピストンリングを往復動圧縮機に適用した場合を例にとり、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
<第一の実施形態>
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係るガス圧縮装置1Aは、シリンダ内のガス圧縮部(ガス圧縮室ともいう)2に導入されたガス(例えば、メタン、エタン等)を、シリンダ内においてピストン20をシリンダ軸線方向に移動(往復動)させることによって圧縮し、圧縮されたガスを外部へ排出する。ガス圧縮装置1Aは、ピストン20の一側面21側のみにガス圧縮部2が構成された、いわゆる単動型の往復動圧縮機である。単動型の往復動圧縮機は、多段往復動圧縮機内の後段に設けられる場合が多い。ガス圧縮装置1Aは、シリンダライナ10と、ピストン20と、複数のピストンリング3Aと、を備える。なお、
図1において、ピストンリング3Aは、端面のみが描かれている(
図5〜
図8についても同様)。
【0013】
<シリンダライナ>
シリンダライナ10は、円筒形状を呈する金属製部材である。シリンダライナ10は、ガス圧縮装置1Aのシリンダの胴部を構成する。
【0014】
<ピストン>
ピストン20は、円柱形状を呈する金属製部材である。シリンダすなわちシリンダライナ10内において、ピストン20の軸線方向の一側面21側には、ガス圧縮部2が構成されている。ピストン20は、シリンダライナ10内においてシリンダ軸線方向のガス圧縮部2側に移動することによって、ガス圧縮部2内のガスを圧縮する。
【0015】
ピストン20の外周面22には、複数の環状溝部23が形成されている。環状溝部23は、ピストン20と同軸の環状を呈しており、ピストン20の軸線及び径方向に延びる直線を含む平面内において、矩形断面形状を呈する。すなわち、環状溝部23は、底面23aと、底面23aの一縁部(ガス圧縮部2側縁部)から外周面22へ延設される側面23bと、底面23aの他縁部から外周面22へ延設される側面23cと、によって構成されている。環状溝部23には、ピストンリング3Aが収容される。
【0016】
≪シリンダライナ及びピストンの寸法≫
ピストン20の外径は、シリンダライナ10の内径よりも若干小さく設定されている。すなわち、ピストン20の外周面22とシリンダライナ10の内周面11との間には、若干の隙間が構成されている。
【0017】
<ピストンリング>
ピストンリング3Aは、ガス圧縮部2内のガスがピストン20の外周面22とシリンダライナ10の内周面11との間の隙間から漏れることを抑制する部材である。ピストンリング3Aは、ピストン20の環状溝部23に収容され、ピストン20の往復動の際にシリンダライナ10の内周面11に対して摺動する部材である。すなわち、ピストンリング3Aの径方向外側端部は、環状溝部23から突出してシリンダライナ10の内周面11と当接する。ピストンリング3Aは、径方向外側のシールリング30Aと、径方向内側のテンションリング40Aと、を備える。
【0018】
<シールリング>
図2及び
図3に示すように、シールリング30Aは、環状を呈する樹脂製部材又は金属製部材である。シールリング30Aは、ピストンリング3Aの径方向外部を構成しており、テンションリング40Aの径方向外側に設けられている。シールリング30Aは、シリンダライナ10の内周面11(
図1参照)に対して摺動する、ピストンリング3Aの主部品である。
【0019】
シールリング30Aは、ピストンリング3Aの軸線及び径方向に延びる直線を含む平面内において、矩形断面形状を呈する。シールリング30Aは、周方向の1箇所以上(本実施形態では、2箇所)X1,X2において分割されている。シールリング30Aの分割部位X1,X2は、回転方向に等間隔(本実施形態では、180度間隔)で形成されている。すなわち、本実施形態におけるシールリング30Aは、180度の円弧形状を呈する2個の部材によって構成されている。
【0020】
<テンションリング>
テンションリング40Aは、環状を呈する樹脂製部材(例えば、テフロン(登録商標))又は金属製部材(例えば、ステンレス材、炭素鋼材、銅材)である。テンションリング40Aは、ピストンリング3Aの径方向内部を構成しており、シールリング30Aの径方向内側に設けられている。テンションリング40Aは、シールリング30Aを径方向外方に付勢する、ピストンリング3Aの副部品である。
【0021】
テンションリング40Aは、ピストンリング3Aの軸線及び径方向に延びる直線を含む平面内において、矩形断面形状を呈する。テンションリング40Aは、周方向の一箇所X3において分割されている。
【0022】
テンションリング40Aは、径方向(拡径方向及び縮径方向)に弾性変形可能である。テンションリング40Aの外径r
1は、シールリング30Aの内径r
2よりも若干大きく設定されている。
【0023】
≪分割部位の形状≫
本実施形態において、分割部位X1,X2,X3における互いに対向する分割面は、分割面同士は平行であるとともに、シリンダ軸線方向に対して傾斜面となるように形成されている。なお、分割部位X1,X2,X3における分割面の形状は、前記したものに限定されず、シリンダ軸線方向に対して平行面となるように形成されていたり、段付き形状に形成されていてもよい。また、
図3に示すように、シールリング30A及びテンションリング40Aは、テンションリング40Aの分割部位X3がシールリング30Aの分割部位(及びガス流通部4A)を避けた位置となるように設けられる。
【0024】
≪ピストンリングの寸法≫
図1に示すように、ピストンリング3Aのシールリング30Aの軸線方向の厚みd
1は、環状溝部23のシリンダ軸線方向の幅d
2よりも小さく設定されている。また、テンションリング40Aの軸線方向の厚みは、シールリング30Aの軸線方向の厚みd
1よりも若干小さく設定されている。また、ピストンリング3Aの径方向の厚み(シールリング30A及びテンションリング40Aの径方向の厚みの合計)w
1は、環状溝部23の底面23aとシリンダライナ10の内周面11との間の距離w
2よりも小さく設定されている。
【0025】
ピストンリング3Aは、ガスの圧力によってガス圧縮部2から離間する方向に押圧されている。したがって、ピストンリング3Aのシールシング30Aの他側面32は、環状溝部23の他側面23cと当接しており、ピストンリング3Aのシールシング30Aの一側面31と環状溝部23の一側面23bとの間には、隙間が構成されている。
【0026】
≪ガス流通部≫
ガス圧縮装置1Aにおいて、ガス圧縮部2内のガスは、ピストン20のガス圧縮部2側への移動(矢印Y1参照)によって高圧に圧縮される。かかるガスは、環状溝部23内に流入し、ピストンリング3Aのシールリング30Aの一側面31と環状溝部23の一側面23bとの間の隙間からテンションリング40の内周面43と環状溝部23の底面23aとの間の隙間に回り込み、ピストンリング3Aを径方向外側へ押圧する。そのため、ピストンリング3Aのシールリング30Aの外周面34がシリンダライナ10の内周面11に押し付けられて磨耗してしまう。かかる磨耗を抑制するために、ガス圧縮装置1Aのピストンリング3Aは、複数のガス流通部4Aを備える。
【0027】
図2及び
図3に示すように、複数(本実施形態では6個)のガス流通部4Aは、分割部位X1,X2を避けた部位に形成されている。また、複数のガス流通部4Aは、回転方向に等間隔(本実施形態では、60度間隔)で形成されている。すなわち、n個(nは2以上の自然数)のガス流通部4Aの周方向中心は、周方向に360/nごとに設けられている。ガス流通部4Aは、軸方向穴4aと、径方向穴4bと、によって構成されている。
【0028】
軸方向穴4aは、ピストンリング3Aの軸方向に延びる穴である。軸方向穴4aの一端部(ガス圧縮部2側端部)は、シールリング30Aの一側面31に開口している。かかる開口は、ガスの入口である。軸方向穴4aの他端部は、シールリング30Aの他側面32まで達しておらず、塞がれている。
【0029】
主に
図2に示すように、本実施形態において、軸方向穴4aは、シールリング30Aの内周面33に形成されている溝部35Aと、テンションリング40Aの外周面44と、によって構成されている。溝部35Aの一端部(ガス圧縮部2側端部)は、シールリング30Aの一側面31に開口している。溝部35Aの他端部は、シールリング30Aの他側面32まで達しておらず、塞がれている。溝部35Aの周方向の寸法は、径方向穴4bの直径と等しいか直径よりも大きく設定されている。かかる溝部35Aの径方向内側の開口は、テンションリング40Aの外周面44によって塞がれている。
【0030】
径方向穴4bは、ピストンリング3Aの径方向に延びる穴である。径方向穴4bの一端部(径方向外側端部)は、シールリング30Aの外周面に開口している。かかる開口は、ガスの出口である。径方向穴4bの他端部(径方向内側端部)は、軸方向穴4aの他端部(溝部35)に開口している。
【0031】
図1に示すように、ガス圧縮部2から1番目のピストンリング3Aにおいて、ガス圧縮部2からのガスの一部は、ガス流通部4A、及び、シールリング30Aの外周面34とシリンダライナ10の内周面11との接触面間の面粗さによる隙間を順次介して、1番目のピストンリング3Aと2番目のピストンリング3Aとの間に移動する。また、ガス圧縮部2からのガスの一部は、シールリング30Aの他側面32とピストン20の環状溝部23の側面23cとの接触面間の面粗さによる隙間を介して、1番目のピストンリング3Aと2番目のピストンリング3Aとの間に移動する。ここで、1番目のピストンリング3Aと2番目のピストンリング3Aとの間に移動したガスの圧力は、接触面間を移動する際に接触面間の抵抗によって圧力低下するため、ガス圧縮部2内のガスの圧力よりも減圧されている。
【0032】
本発明の第一の実施形態に係るピストンリング3A及びガス圧縮装置1Aは、ガス流通部4A及びシリンダライナ10の内周面11とシールリング3Aの内周面34との間を介してガスをガス圧縮部2とは反対側へ逃がすことによって、ガス流通部4Aを流通するガスの流量に応じてピストンリング3Aの摩耗量を低減することができる。したがって、ピストンリング3A及びガス圧縮装置1Aは、テンションリング40Aによってシール性を確保しつつピストンリング3A(シールリング30Aの外周面34)の磨耗を抑制することができる。すなわち、ピストンリング3A及びガス圧縮装置1Aは、ピストンリング3Aのシール性及び耐摩耗性を両立することができる。
また、ピストンリング3A及びガス圧縮装置1Aは、ガス流通部4Aがテンションリング40Aではなくシールリング30Aのみに形成されているので、テンションリング40Aの性能を維持しつつガスを逃がすことができる。
また、ピストンリング3A及びガス圧縮装置1Aは、ガス流通部4Aの軸方向穴4aがシールリング30Aの溝部35Aとテンションリング40Aの外周面44とによって構成されているので、軸方向穴4aの加工が容易であり、軸方向穴4aと径方向穴4bとが連通していることを容易に視認することが可能である。
【0033】
<第二の実施形態>
続いて、本発明の第二の実施形態に係るガス圧縮装置について、第一の実施形態に係るガス圧縮装置1Aとの相違点を中心に説明する。
図4及び
図5に示すように、本発明の第二の実施形態に係るガス圧縮装置1Bは、ピストンリング3A(
図3参照)に代えて、ピストンリング3Bを備える。
【0034】
ピストンリング3Bは、シールリング30A(
図3参照)に代えて、シールリング30Bを備える。シールリング30Bは、ガス流通部4A(
図3参照)に代えて、ガス流通部4Bを備える。ガス流通部4Bは、軸方向穴4aに代えて、軸方向穴4cを備える。軸方向穴4cは、シールリング30Bの径方向中央よりも径方向中心寄りに形成されている。
【0035】
本発明の第二の実施形態に係るピストンリング3B及びガス圧縮装置1Bは、ガス流通部4B及びシリンダライナ10の内周面とシールリング3Bの内周面34との間を介してガスをガス圧縮部2とは反対側へを介してガスを逃がすことによって、ガス流通部4Bを流通するガスの流量に応じてピストンリング3Bの摩耗量を低減することができる。したがって、ピストンリング3B及びガス圧縮装置1Bは、テンションリング40Aによってシール性を確保しつつピストンリング3B(シールリング30Bの外周面34)の磨耗を抑制することができる。すなわち、ピストンリング3B及びガス圧縮装置1Bは、ピストンリング3Bのシール性及び耐摩耗性を両立することができる。
また、ピストンリング3B及びガス圧縮装置1Bは、ガス流通部4Bがテンションリング40Aではなくシールリング30Bのみに形成されているので、テンションリング40Aの性能を維持しつつガスを逃がすことができる。
【0036】
<第三の実施形態>
続いて、本発明の第三の実施形態に係るガス圧縮装置について、第一の実施形態に係るガス圧縮装置1Aとの相違点を中心に説明する。
図6に示すように、本発明の第三の実施形態に係るガス圧縮装置1Cは、ピストンリング3Aに代えて、ピストンリング3Cを備える。ピストンリング3Cは、テンションリング40Aに代えて、テンションリング40Cを備える。
【0037】
<テンションリング>
テンションリング40Cは、ピストンリング3Cの軸線及び径方向に延びる直線を含む平面内において、円形断面形状を呈する。
【0038】
本実施形態に係るガス圧縮装置1Cにおいて、シールリング30Aの内周面33には、テンションリング40Cの径方向外端部が収容される環状溝部が形成されている。かかる環状溝部は、径方向穴部4bに対応する位置に形成されている。
【0039】
本実施形態に係るガス圧縮装置1Cにおいて、ピストンリング3Cは、ガス流通部4Aに代えてガス流通部4Cを備える。ガス流通部4Cは、軸方向穴4aに代えて軸方向穴4dを備える。軸方向穴4dは、シールリング30Aの内周面33に形成されている溝部35Aと、テンションリング40Cの周面の一部と、によって構成されている。
【0040】
本発明の第三の実施形態に係るピストンリング3C及びガス圧縮装置1Cは、第一の実施形態に係るピストンリング3A及びガス圧縮装置1Aと同様の効果を奏する。
【0041】
なお、第二の実施形態に係るピストンリング3B及びガス圧縮装置1Bにおいて、テンションリング40Aに代えてテンションリング40Cを採用することも可能である。この場合には、シールリング30Bの内周面33に前記した環状溝部が形成される。
【0042】
<第四の実施形態>
続いて、本発明の第四の実施形態に係るガス圧縮装置について、第一の実施形態に係るガス圧縮装置1Aとの相違点を中心に説明する。
図7に示すように、本発明の第四の実施形態に係るガス圧縮装置1Dは、ピストン20の一側面21側及び他側面24側の両方にガス圧縮部2が構成された、いわゆる複動型のガス圧縮装置である。なお、ピストン20及びピストンリング3Dの大きさ及び配置の関係は、
図7に示すものに限定されない。
【0043】
ガス圧縮装置1Dは、ピストンリング3Aに代えてピストンリング3Dを備える。ピストンリング3Dは、シールリング30Aに代えてシールリング30Dを備える。シールリング30Dは、ガス流通部4Aに代えてガス流通部4Dを備える。ガス流通部4Dは、軸方向穴4eと、径方向穴4bと、によって構成されている。
【0044】
軸方向穴4eは、ピストンリング3Dの軸方向に延びる穴である。軸方向穴4eの一端部は、シールリング30Aの一側面31に開口している。軸方向穴4eの他端部は、シールリング30dの他側面32に開口している。
【0045】
本実施形態において、軸方向穴4eは、シールリング30Dの内周面33に形成されている溝部35Dと、テンションリング40Aの外周面44と、によって構成されている。溝部35Dの一端部は、シールリング30Dの一側面31に開口している。溝部35Dの他端部は、シールリング30Dの他側面32に開口している。
【0046】
ガス圧縮装置1Dにおいて、一側面21側のガス圧縮部2でガスを圧縮するためにピストン20が矢印Y1方向に移動する場合には、ピストンリング3Dは、ガス圧縮部2で圧縮されたガスの圧力によって環状溝部23の側面23cに当接する。かかる状態において、圧縮されたガスの一部は、軸方向穴4eの一側面31側開口から軸方向穴4eに導入され、ガス流通部4D、及び、シールリング30Dの外周面34とシリンダライナ10の内周面11との接触面間の面粗さによる隙間を順次介して、ピストンリング3Dの他側面24側の方向へ移動する。また、圧縮されたガスの一部は、軸方向穴4eの他側面32側開口から、シールリング30Dの他側面32とピストン20の環状溝部23の側面23cとの接触面間の面粗さによる隙間を介して、ピストンリング3Dの他側面24側の方向へ移動する。また、圧縮されたガスの一部は、環状溝部23から、シールリング30Aの他側面32とピストン20の環状溝部23の側面23cとの接触面間の面粗さによる隙間を介して、ピストンリング3Dの他側面24側の方向へ移動する。
【0047】
一方、
図8に示すように、シリンダ20の他側面24側のガス圧縮部2でガスを圧縮するためにピストン20が矢印Y2方向に移動する場合には、ピストンリング3Dは、ガス圧縮部2で圧縮されたガスの圧力によって環状溝部23の側面23bに当接する。かかる状態において、圧縮されたガスの一部は、軸方向穴4eの他側面32側開口から軸方向穴4eに導入され、ガス流通部4D、及び、シールリング30Dの外周面34とシリンダライナ10の内周面11との接触面間の面粗さによる隙間を順次介して、ピストンリング3Dの一側面21側の方向へ移動する。また、圧縮されたガスの一部は、軸方向穴4eの一側面31側開口から、シールリング30Dの一側面31とピストン20の環状溝部23の側面23bとの接触面間の面粗さによる隙間を介して、ピストンリング3Dの一側面21側の方向へ移動する。また、圧縮されたガスの一部は、環状溝部23から、シールリング30Aの一側面31とピストン20の環状溝部23の側面23bとの接触面間の面粗さによる隙間を介して、ピストンリング3Dの一側面21側の方向へ移動する。
【0048】
本発明の第四の実施形態に係るピストンリング1D及びガス圧縮装置1Dは、複動型のガス圧縮装置において、第一の実施形態に係るピストンリング3A及びガス圧縮装置1Aと同様の効果を奏する。
【0049】
なお、第二の実施形態に係るピストンリング3B及びガス圧縮装置1B、並びに、第三の実施形態に係るピストンリング3C及びガス圧縮装置1Cにおいて、ガス流通部4B,4Cの軸方向穴4c,4dをピストンリング3B,3Cの他側面にも連通(開口)する構成とすることによって、複動型のガス圧縮装置に適用することも可能である。また、第二の実施形態に係るピストンリング3B及びガス圧縮装置1Bにおいて、ガス流通部4Bの軸方向穴4cをピストンリング3Bの他側面にも連通(開口)する構成とするとともに、テンションリング40Aに代えてテンションリング40Cを採用することも可能である。この場合には、シールリング30Bの内周面33に前記した環状溝部が形成される。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明は、往復動圧縮機以外の圧縮機、内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)等、ピストンリングによって圧縮ガスをシールする装置全般に適用可能である。また、前記したように、第一ないし第四の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
また、ガス流通部4A,4B,4C,4Dの個数及び径(ガス流通方向断面積)は、シール性及び耐摩耗性に鑑みて適宜設定可能である。
【0051】
参考形態として、ガス流通部は、シールリング及びテンションリングの両方にわたって形成されていてもよい。
例えば、ガス流通部は、テンションリングの外周面に形成された溝部とシールリングの内周面とによって構成された軸方向穴部と、シールリングの内周面と外周面とを連通する径方向穴部と、を互いに接続することよって構成されていてもよい。
また、参考形態として、ガス流通部は、テンションリングの内周面と外周面とを連通する第一の径方向穴部と、シールリングの内周面と外周面とを連通する第二の径方向穴部と、を互いに接続することよって構成されていてもよい。
これらの場合には、各穴部の接続を確実にするために、テンションリング及びシールリングの一方に形成された凸部を他方に形成された凹部に挿入して係止することによって、テンションリング及びシールリングの回転方向のズレを防止する構成であってもよい。
【0052】
また、本発明のピストンリング3A,3B,3C,3D及びガス圧縮装置1A,1B,1C,1Dは、ガスを高圧に圧縮するものに限定されず、低圧に圧縮するものから高圧に圧縮するものまで広範囲に適用可能である。