(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、印刷装置の実施形態について、図を参照して説明する。印刷装置は、ロール状に巻かれたロール状媒体を保持するとともに、そのロール状媒体を回転させて、巻かれたロール状媒体を巻き解くことができるものである。また、印刷装置は、巻き解かれた媒体に印刷を行うラージフォーマットプリンターである。
【0016】
図1に示すように、印刷装置11は、箱状をなす筐体20と、筐体20を支持する筐体支持部30とを備えている。また、
図2に示すように、印刷装置11は、媒体Mの搬送方向に沿って、ロール状に巻かれた媒体Mを繰り出す繰出部40と、媒体Mを支持する支持部50と、媒体Mを搬送する搬送部60と、媒体Mに印刷を行う印刷部70と、媒体Mをロール状に巻き取る巻取部80と、を備えている。さらに、印刷装置11は、ユーザーによって操作される操作部180と、装置を統括的に制御する制御部190と、を備えている。
【0017】
なお、以降の説明では、繰出部40に支持されるロール状に巻かれた媒体Mをロール状媒体RAとする。また、巻取部80により巻き取られてロール状となった媒体Mをロール状媒体RBとする。ロール状媒体RA,RBは、円筒状の芯材(図示略)に媒体Mを巻き重ねることで構成される。なお、芯材は必ずしも媒体Mと別体とする必要はなく、例えば媒体Mを円筒状に巻き重ね、その内周側の媒体Mを接着剤等により硬化させることで芯材としてもよい。
【0018】
また、印刷装置11の幅方向を「幅方向X」とし、印刷装置11の前後方向を「前後方向Y」とし、印刷装置11の上下方向を「上下方向Z」とし、媒体Mの搬送方向を「搬送方向F」とする。ここで、幅方向X、前後方向Y及び上下方向Zは、互いに交差(直交)する方向であり、幅方向Xは搬送方向Fと交差(直交)する方向である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、筐体支持部30は、前後方向Yを長手方向とする第1の脚部31と、第1の脚部31から上方に延設された第2の脚部32と、第2の脚部32を幅方向Xにおいて連結する連結軸33と、第2の脚部32から後方に延設された延設部34と、を有している。第1の脚部31及び第2の脚部32は、幅方向Xにおいて対をなすように設けられている。また、第2の脚部32は、第1の脚部31と連結される下端部とは反対側の上端部が筐体20と連結されている。
【0020】
繰出部40は、筐体20の後方下側において、筐体支持部30の延設部34に支持されている。
図2及び
図3に示すように、繰出部40は、幅方向Xを長手方向として延設部34に架設される案内軸41と、ロール状媒体RAを回転可能に保持する繰出ユニット42とを備えている。案内軸41は、前後方向Yに対をなすように設けられている。
【0021】
図3に示すように、繰出ユニット42は、案内軸41の幅方向Xにおける一方の端部に設けられる第1の繰出ユニット42aと、他方の端部に設けられる第2の繰出ユニット42bと、を有している。繰出ユニット42a,42bは、案内軸41に対して摺動可能に支持されている。
【0022】
図5に示すように、第1の繰出ユニット42aは、案内軸41(
図3参照)に嵌め込まれる取付部43aを備える載置部43と、載置部43から上下方向Zの上方に立設される立設部44と、立設部44から幅方向Xの内側に向って突出する媒体支持部45と、を有している。
図4及び
図5に示すように繰出ユニット42aは、さらに立設部44を覆う筐体46と、案内軸41(
図3参照)に対する第1の繰出ユニット42aの幅方向Xへの移動を許容したり制限したりする固定ねじ47とを備えている。なお、
図3に示すように、第2の繰出ユニット42bも、第1の繰出ユニット42aと同様の載置部43、媒体支持部45、筐体46、及び、固定ねじ47を備えている。また、図示しないが、第2の繰出ユニット42bの筐体46の内部には立設部44が収容されている。第1の繰出ユニット42a及び第2の繰出ユニット42bは、それぞれの媒体支持部45が対向するように案内軸41に架設されている。
【0023】
媒体支持部45は、ロール状媒体RAの芯材(例えば紙管)の端部に挿入されることで、当該ロール状媒体RAと一体回転するものである。このため、媒体支持部45は、基端から先端に向かうに連れて先細りするように、略円錐台状をなしている。2つの繰出ユニット42a,42bの媒体支持部45は、それぞれロール状媒体RAの両端に係合する。そして、繰出部40は、ロール状媒体RAを回転させることで、1つのロール状媒体RAに巻き重ねられた媒体Mを繰り出す。
【0024】
図5に示すように、第1の繰出ユニット42aは、筐体46の内部において立設部44に支持されて媒体支持部45を回転させる繰出モーター48と、繰出モーター48の駆動力を媒体支持部45に伝達する伝達部100と、繰出モーター48及び伝達部100を立設部44に取り付ける取付部150とを備えている。こうした点で、本実施形態では、繰出モーター48が「媒体支持部を回転させる駆動部」の一例に相当する。
【0025】
取付部150は、伝達部100の駆動力の伝達経路における下流側を支持する下流側支持部151と、伝達部100の駆動力の伝達経路における上流側を支持する上流側支持部154と、を有している。下流側支持部151は、幅方向Xと直交する方向に延びる第1の支持板152と、幅方向Xと直交する方向に延び、第1の支持板152よりも載置部43側に配置される第2の支持板153(
図8参照)とを備えている。第1の支持板152及び第2の支持板153は、立設部44に移動不能に取り付けられている。
【0026】
図5及び
図7に示すように、上流側支持部154は、幅方向Xと直交する方向に延びる背面支持板155と、幅方向Xと直交する方向に延び、背面支持板155よりも幅方向Xの外側に配置されるモーター支持板156とを備えている。背面支持板155とモーター支持板156とは幅方向Xに平行するように立設部44に取り付けられている。モーター支持板156は、前後方向Yの両端部が背面支持板155に向かって曲げ加工されており、該両端部において背面支持板155に固定されている。
【0027】
図8に示されるように、背面支持板155は、第2の支持板153に取り付けられている。具体的には、第2の支持板153に上下方向Zに延びるように形成される長孔153aと背面支持板155に形成される孔(図示略)とにねじ157がねじ込まれることにより、背面支持板155が第2の支持板153に取り付けられる。
【0028】
図6及び
図7に示されるように、伝達部100は、繰出モーター48の出力軸48aの回転を減速して伝達する第1の伝達機構101、第1の伝達機構101の回転を減速して伝達する第2の伝達機構102、及び、第2の伝達機構102の回転を減速して第1の回転体110に伝達する第3の伝達機構103を備える。すなわち、伝達部100は、複数の伝達機構101,102,103を備える。
【0029】
詳しくは、伝達部100は、モーター支持板156に回転可能に支持される繰出モーター48の出力軸48aと、モーター支持板156及び背面支持板155に回転可能に支持される第1の回転体110及び第2の回転体120と、下流側支持部151に回転可能に支持される第3の回転体130と、ベルト140とを備えている。
【0030】
繰出モーター48の出力軸48aの外周には、第1の回転体110の外周に形成される歯車111と噛み合わせられる歯車48bが形成されている。繰出モーター48の出力軸48aの歯車48bと、第1の回転体110の歯車111とは、第1の伝達機構101を構成する。すなわち、複数の伝達機構101,102,103のうちの1つである第1の伝達機構101は、歯車48b,111により駆動力が伝達される。こうした点で、本実施形態では、第1の伝達機構101が「歯車伝達機構」の一例に相当する。歯車111の歯数は、歯車48bの歯数よりも多い。このため、第1の伝達機構101は、繰出モーター48の回転を減速して第1の回転体110に伝達する。
【0031】
第1の回転体110のうちの歯車111とは異なる部分には、第2の回転体120の外周に形成される歯車121と噛み合わせられる歯車112が形成されている。第1の回転体110の歯車112と、第2の回転体120の歯車121とは、第2の伝達機構102を構成する。すなわち、複数の伝達機構101,102,103のうちの1つである第2の伝達機構102は、歯車112,121により駆動力が伝達される。こうした点で、本実施形態では、第2の伝達機構102が「歯車伝達機構」の一例に相当する。歯車121の歯数は、歯車112の歯数よりも多い。このため、第2の伝達機構102は、第1の回転体110の回転を減速して第2の回転体120に伝達する。また、歯車111の歯数と歯車48bの歯数との差よりも、歯車121の歯数と歯車112の歯数との差の方が大きい。このため、第2の伝達機構102の減速比は第1の伝達機構101の減速比よりも大きい。
【0032】
第2の回転体120のうちの歯車121とは異なる部分には、第1のプーリー122が設けられている。また、繰出部40の媒体支持部45と一体的に回転する第3の回転体130には、第2のプーリー131が設けられている。第1のプーリー122及び第2のプーリー131には外歯が形成されている。第1のプーリー122及び第2のプーリー131には、歯付きのベルト140が巻き掛けられて、第2の回転体120の回転を第3の回転体130に伝達する。第1のプーリー122、第2のプーリー131、及び、ベルト140は、第3の伝達機構103を構成する。すなわち、複数の伝達機構101,102,103のうちの1つである第3の伝達機構103は、ベルト140により駆動力を伝達する。こうした点で、本実施形態では、第3の伝達機構103が「ベルト伝達機構」の一例に相当する。第2のプーリー131の外径は第1のプーリー122の外径よりも大きい。このため、第3の伝達機構103は、第2の回転体120の回転を減速して第3の回転体130に伝達する。第3の伝達機構103の減速比は、第1の伝達機構101の減速比及び第2の伝達機構102の減速比よりも大きい。すなわち、複数の伝達機構101,102,103のうちの最も減速比が大きい第3の伝達機構103は、ベルト伝達機構である。
【0033】
第3の回転体130の幅方向Xにおいて第2のプーリー131とは反対側の端部には、媒体支持部45が設けられている。このため、繰出モーター48の駆動力は、上流側である繰出モーター48から第1の伝達機構101、第2の伝達機構102、及び、第3の伝達機構103を介して下流側の媒体支持部45に伝達される。すなわち、複数の伝達機構101,102,103のうちの駆動力の伝達経路における最も下流側の伝達機構103は、ベルト伝達機構である。
【0034】
第1の繰出ユニット42aは、ベルト140の張力を調整するための張力調整機構160をさらに備えている。張力調整機構160は、上流側支持部154と、上流側支持部154の下流側支持部151に対する位置を調整するための移動機構170とを備えている。移動機構170は、載置部43とモーター支持板156とを接続する脚部171及びねじ172を備えている。脚部171は、U字状に形成され、両端部が載置部43のモーター支持板156側の頂面に取り付けられている。ねじ172は、脚部171のU字状の底部(
図6においては上側)及びモーター支持板156に頭が下方に向くようにねじ込まれている。
【0035】
図9に示すように、載置部43の脚部171の間には、ドライバー(図示略)を差し込んでねじ172を回すことができる孔43bが形成されている。移動機構170は、ねじ172のモーター支持板156へのねじこみ量を調整することにより、上流側支持部154を第2のプーリー131(
図6参照)に対して移動させることができる。
【0036】
図8及び
図9を参照して、ベルト140の張力の調整方法について説明する。
ユーザーは、筐体46(
図4参照)を取り外し、第1の繰出ユニット42aの内部を露出させる。次に、ユーザーは、長孔153aに嵌まり込む全てのねじ157を緩める、または、取り外す。次に、ユーザーは、孔43bにドライバー(図示略)を挿入し、ねじ172を回すことにより、脚部171とモーター支持板156との距離を調整する。繰出モーター48、第1の回転体110、及び、第2の回転体120は、モーター支持板156及びモーター支持板156に固定される背面支持板155に支持されている。このため、脚部171とモーター支持板156及び背面支持板155との相対位置の変化に応じて繰出モーター48、第1の回転体110、及び、第2の回転体120は一体的に移動する。このため、モーター支持板156及び背面支持板155を脚部171から離す方向にねじ172が回されたときベルト140の張力は
小さくなる。モーター支持板156及び背面支持板155を脚部171に近付ける方向にねじ172を回したときベルト140の張力は
大きくなる。
【0037】
図2に示すように、支持部50は、筐体20の後方下側から筐体20に向かうように形成される第1の支持部51と、筐体20の内部において前方に向かうように形成される第2の支持部52と、筐体20から当該筐体20の前方下側に向かうように形成される第3の支持部53と、を有している。こうして、支持部50は、繰出部40から繰り出された媒体Mを巻取部80に向かって案内するとともに、当該媒体Mを支持する。なお、印刷装置11の印刷方法に応じて、印刷前後に媒体Mを加熱する必要がある場合には、支持部50の内部に媒体Mを加熱するためのヒーターを内蔵させてもよい。
【0038】
搬送部60は、媒体Mの裏面に接触しつつ回転する駆動ローラー61と、媒体Mの表面に接触しつつ回転する従動ローラー62とを備えている。そして、搬送部60は、駆動ローラー61及び従動ローラー62に媒体Mを挟持させた状態で、駆動ローラー61を駆動させることで、繰出部40から繰り出された媒体Mを搬送方向Fに向かって搬送する搬送動作を行う。また、搬送動作が行われる際には、繰出部40による媒体Mの繰り出しと、巻取部80による媒体Mの巻き取りとが同時に行われる。
【0039】
印刷部70は、インクを吐出する吐出部71と、吐出部71を保持するキャリッジ72と、キャリッジ72を支持する幅方向Xを長手方向とするガイド軸73と、を備えている。そして、印刷部70は、キャリッジ72の走査方向(幅方向X)に沿う移動時に、支持部50に支持された媒体Mに吐出部71からインクを噴射することで、媒体Mに文字や画像を形成する印刷動作を行う。
【0040】
図1及び
図2に示すように、巻取部80は、筐体支持部30の第1の脚部31の前方に支持されている。
図2及び
図3に示すように、巻取部80は、幅方向Xを長手方向として第1の脚部31に架設される案内軸81と、媒体Mを円筒状に巻き重ねたロール状媒体RBを回転可能に保持する巻取ユニット82と、ロール状媒体RBを着脱する際に当該ロール状媒体RBが仮置きされる載置部83とを備えている。案内軸81は、前後方向Yに対をなすように設けられ、載置部83は、幅方向Xに対をなすように設けられている。
【0041】
巻取ユニット82は、幅方向Xにおける両端に設けられる2つの巻取ユニット82a,82bを有している。巻取ユニット82a,82bは、案内軸81に対して摺動可能に支持されている。巻取ユニット82a,82bは、ロール状媒体RBの幅方向の端部に係合することで当該ロール状媒体RBと一体回転可能な媒体支持部84と、案内軸81に対する巻取ユニット82a,82bの幅方向Xへの移動を許容したり制限したりする固定ねじ86とを備えている。また、巻取ユニット82aには、媒体支持部84を回転駆動する巻取モーター85が内蔵されている。
【0042】
なお、巻取ユニット82a,82bの媒体支持部84は、ロール状媒体RBの芯材(例えば紙管)の端部に挿入されることで、当該ロール状媒体RBと一体回転するものである。このため、巻取ユニット82の媒体支持部84は、基端から先端に向かうに連れて先細りするように、略円錐台状をなしている。
【0043】
2つの巻取ユニット82a,82bは、それぞれの媒体支持部84が対向するように案内軸81に架設されている。2つの巻取ユニット82の媒体支持部84がロール状媒体RBの両端に係合する。そして、巻取部80は、巻取モーター85を駆動させてロール状媒体RBを回転させることで、ロール状媒体RBに媒体Mを巻き取ることとなる。
【0044】
また、
図1に示すように、巻取部80は、ロール状媒体RBに媒体Mを巻き取る際に当該媒体Mに張力を付与する張力付与機構87を備えている。張力付与機構87は、幅方向Xにおける両端部に設けられている。
【0045】
図2及び
図3に示すように、張力付与機構87は、幅方向Xを軸方向とする円柱状をなす押圧部88と、押圧部88を先端に支持する対をなすアーム部材89と、を備えている。また、アーム部材89は、その基端部に、筐体支持部30の第2の脚部32を幅方向Xに連結する連結軸33が挿通されている。
【0046】
こうして、張力付与機構87は、連結軸33を揺動中心として、揺動することが可能とされる。張力付与機構87は、媒体Mに張力を付与する際に、重心が揺動中心よりも前方に位置するため、その自重により、連結軸33を揺動中心として前方下側に倒れ込もうとする。これにより、張力付与機構87が幅方向X及び搬送方向Fと交差する方向に媒体Mを押圧し、当該媒体Mに搬送方向Fに張力を付与する。
【0047】
また、張力付与機構87によって媒体Mに張力を付与することができるため、搬送動作が行われる際に、繰出部40による媒体Mの繰り出しと、巻取部80による媒体Mの巻き取りとを同期して行わなくても、媒体Mを緩ませることなく搬送することが可能となる。
【0048】
図1及び
図2に示すように、操作部180は、印刷装置11の上面に設けられている。操作部180は、印刷装置11の各種の設定を行う場合や、印刷装置11に対して印刷の実行を支持する場合に、ユーザーによって操作される。このため、操作部180は、例えば、複数のボタンや液晶ディスプレイなどを有していることが望ましい。
【0049】
制御部190は、CPU、ROM及びRAMなどを有するいわゆるマイクロコンピューターである。制御部190は、例えば、印刷装置11に対して投入された印刷ジョブに基づいて、各構成の駆動を制御することで、搬送動作と吐出動作とを交互に行わせ、媒体Mに印刷を行う。
【0050】
さらに、本実施形態では、媒体Mの搬送が継続されることで、繰出部40に保持されるロール状媒体RAの外径が小さくなると、当該ロール状媒体RAを1回転させたときの媒体Mの繰出量が少なくなる。一方、媒体Mの搬送が継続されることで、巻取部80に保持されるロール状媒体RBの外径が大きくなると、当該ロール状媒体RBを1回転させたときの媒体Mの巻取量が多くなる。したがって、制御部190は、媒体Mの搬送が継続されることに伴って、繰出部40の繰出モーター48の回転数を高くするとともに、巻取部80の巻取モーター85の回転数を低くする。すなわち、制御部190は、繰出モーター48を制御することにより媒体支持部45と搬送部60との間における媒体Mの張力を調整する。また、繰出モーター48には、図示しない回転角度センサが設けられている。制御部190は、回転角度センサの出力に基づいて繰出モーター48の回転数を制御する。
【0051】
次に、以上のように構成された印刷装置11の作用について説明する。
図10は、伝達部200を備える比較例の繰出ユニット240を示している。
伝達部200は、歯車により駆動力を伝達する第3の伝達機構203を含む。第2の回転体220の外周に形成される歯車222と、第3の回転体230の外周に形成される歯車231とが噛み合うことにより第3の伝達機構203が構成されている。
【0052】
伝達部200においては、第1の伝達機構101、第2の伝達機構102、及び、第3の伝達機構203の全てが歯車伝達機構として構成されているため、それぞれに生じるバックラッシを含んで駆動力が媒体支持部45に伝達される。
【0053】
他方、
図6に示す本実施形態の伝達部100においては、第3の伝達機構103がベルト伝達機構として構成されているため、第1の伝達機構101及び第2の伝達機構102に生じるバックラッシのみが媒体支持部45に伝達される。しかも、第3の伝達機構103は、駆動力の伝達経路において最も下流側、すなわち、媒体支持部45に近い側に配置されているため、第1の伝達機構101及び第2の伝達機構102に生じたバックラッシの媒体Mへの影響を小さくすることができる。
【0054】
さらに、
図10に示す比較例の第3の伝達機構203は、複数の伝達機構101,102,203のうちで最も減速比が大きい。このため、第3の伝達機構203のバックラッシは、第1の伝達機構101及び第2の伝達機構102よりも大きい。本実施形態では、最も減速比が大きい第3の伝達機構103がベルト伝達機構として構成されているため、伝達部100の全体のバックラッシを効果的に小さくすることができる。
【0055】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)印刷装置11において、伝達部100にベルト伝達機構である第3の伝達機構103が含まれるため、伝達部100に含まれる伝達機構が全て歯車により構成される場合と比較して媒体Mの振動が小さい。このため、媒体Mの張力の変動を低減できる。また、バックラッシによって生じる異音を低減できる。また、伝達機構として歯車の噛み合いをずらすことによりバックラッシを低減したいわゆるバックラッシレスギアを用いる場合、歯車の噛み合いのずれによって媒体Mの張力の制御性が悪化するおそれ、及び、異音が大きくなるおそれがある。本実施形態の印刷装置11は、伝達部100にベルト伝達機構を備えているため、バックラッシを低減しつつ、制御性の悪化を抑制することができる。
【0056】
(2)印刷装置11において、媒体支持部45に近く媒体Mに影響を与えやすい最も下流側の第3の伝達機構103がベルト伝達機構であるため、最も下流側の伝達機構が歯車により構成される場合と比較して媒体Mの振動を小さくできる。
【0057】
(3)印刷装置11において、最も減速比が大きい第3の伝達機構103がベルト伝達機構であるため、最も減速比が大きい伝達機構が歯車により構成される場合と比較して媒体の振動を小さくできる。
【0058】
(4)印刷装置11において、複数の伝達機構101,102,103のうちベルト伝達機構である第3の伝達機構103以外の少なくとも1つが歯車伝達機構であるため、印刷装置11の小型化に貢献できる。また、歯車伝達機構においては、ベルト伝達機構よりも部品点数を少なくすることができるため、複数の伝達部100の伝達機構101,102,103の全てをベルト伝達機構にする場合と比較して、部品点数の削減に貢献できる。
【0059】
(5)印刷装置11において、繰出部40は、ベルト140の張力を調整する張力調整機構160を備えるため、印刷装置11の組み立て後においても、印刷装置11ごとにベルト140の張力を簡便に調整することができる。
【0060】
(6)印刷装置11において、移動機構により繰出モーター48と第1のプーリー122を一体的に移動させることができるため、繰出モーター48と第1のプーリー122とを各別に移動させてベルト140の張力を調整する場合と比較して、簡便にベルト140の張力を調整することができる。
【0061】
(7)印刷装置11において、伝達部100のうちの第1のプーリー122よりも上流側の部品は全て上流側支持部154に支持されている。このため、移動機構を用いてベルト140の張力を調整する際に、繰出モーター48以外の第2のプーリー131よりも下流側の部品の位置を各別に調整する手間も省くことができる。
【0062】
(8)本実施形態の制御部190は、繰出モーター48の回転角度に基づいて繰出モーター48を制御しているため、繰出モーター48よりも駆動力の伝達経路の下流側である伝達部100のバックラッシによる媒体Mの張力の変動を検出し難い。したがって、制御部190(
図2参照)による媒体Mの張力の調整の制御性が低下するおそれがある。本実施形態の伝達部100は、比較例の伝達部200よりもバックラッシを低減できるため、繰出モーター48の回転角度に基づいて繰出モーター48を制御する構成であっても媒体Mの張力の調整の制御性が低下することを抑制できる。
【0063】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・実施形態の印刷装置11において、第1の伝達機構101及び第2の伝達機構102の少なくとも一方をベルトにより駆動力を伝達するベルト伝達機構にすることもできる。この場合、第3の伝達機構103を歯車により駆動力を伝達する歯車伝達機構にすることもできる。要するに、複数の伝達機構101,102,103のうちの少なくとも1つがベルト伝達機構を含む構成であれば、全ての伝達機構101,102,103が歯車伝達機構により構成される比較例の印刷装置と比較して媒体Mの張力の変動を低減できる。
【0064】
・実施形態の印刷装置11において、第2の伝達機構102を省略することもできる。この場合、第1の回転体110を省略し、かつ、出力軸48aの歯車48bと第2の回転体120の歯車121とを噛み合わせることができる。また、伝達部100に4つ以上の伝達機構を備えることもできる。
【0065】
・実施形態の伝達部100において、複数の伝達機構101,102,103のうちの少なくとも1つを入力される回転数よりも出力する回転数が高い増速機構、または、入力される回転数と出力する回転数が変化しない等速の機構とすることもできる。
【0066】
・実施形態の伝達部100において、第1の伝達機構101の減速比及び第2の伝達機構102の少なくとも一方の減速比を第3の伝達機構103の減速比よりも大きくすることもできる。この場合、最も大きな減速比を有する伝達機構をベルト伝達機構とすることが好ましい。
【0067】
・実施形態の第3の伝達機構103において、ベルト140を平ベルトにすることもできる。この場合も、例えばベルト140と第1のプーリー122及び第2のプーリー131との間の摩擦を大きくし、ベルト140が第1のプーリー122及び第2のプーリー131に対して滑らないようにすることにより、媒体Mの張力の変動を好適に抑制することができる。
【0068】
・実施形態の第3の伝達機構103において、ベルト140をチェーンベルトとし、第1のプーリー122及び第2のプーリー131をスプロケットとすることもできる。
・実施形態の張力調整機構160において、長孔153aを上下方向Zに対して傾斜させることもできる。
【0069】
・実施形態の繰出部40において、テンションローラーを備える張力調整機構を備えることもできる。テンションローラーは、ベルト140の内側に配置され、ベルト140と接触する。ユーザーは、テンションローラーを移動させることによりベルト140の張力を調整する。
【0070】
・実施形態の繰出部40において、媒体支持部45の回転角度を検出するロータリーエンコーダーを備え、該ロータリーエンコーダーの出力に応じて制御部190が繰出モーター48を制御するようにしてもよい。この場合も、全ての伝達機構が歯車伝達機構である伝達部を備える繰出部と比較して、伝達部100のバックラッシを小さくできるため、媒体Mの張力の制御性の低下を抑制できる。
【0071】
・実施形態の印刷装置11において、印刷部70がキャリッジ72を備えず、媒体Mの幅全体と対応した長尺状の固定された印刷ヘッドを備える、いわゆるフルラインタイプの印刷装置に変更してもよい。この場合の印刷ヘッドは、ノズルが形成された複数の単位ヘッド部を並列配置することによって印刷範囲が媒体Mの幅全体に亘るようにしてもよいし、単一の長尺ヘッドに媒体Mの幅全体に亘るように多数のノズルを配置することによって、印刷範囲が媒体Mの幅全体に亘るようにしてもよい。
【0072】
・実施形態の印刷装置11において、印刷に用いられる記録材は、インク以外の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して噴射できる固体を含む)ものであってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射して記録を行う構成にしてもよい。
【0073】
また、印刷装置は、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体(粉粒体)を例とする固体を噴射する粉粒体噴射装置(例えばトナージェット式記録装置)であってもよい。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体、粉粒体(粒体、粉体を含む)などが含まれる。
【0074】
・印刷装置11は、インクなどの流体を噴射することで記録を行うプリンターに限らず、例えばレーザープリンター、LEDプリンター、熱転写プリンター(昇華型プリンターを含む)などのノンインパクトプリンターでもよいし、ドットインパクトプリンターなどのインパクトプリンターでもよい。また、媒体Mは用紙に限らず、プラスチックフィルムや捺染装置などに用いられる布帛であってもよい。