(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(発光体保護フィルム)
図1は本実施形態に係る発光体保護フィルムの概略断面図である。
図1の発光体保護フィルム10において、第一光学フィルム16aと第二光学フィルム16bとが接着層15を介して貼り合わされている。上記第一光学フィルム16aは第一基材層11aと上記第一基材層11a上に形成された第一バリア層14aとを備える光学バリアフィルムである。上記第一光学フィルム16aは第一バリア層14aを2つ以上備えていてもよい。上記第一光学フィルム16aが第一バリア層14aを2つ以上備える場合、複数の第一バリア層14aの構成は同じであってもよく、異なっていてもよい。上記第二光学フィルム16bは第二基材層11bと上記第二基材層11b上に形成された第二バリア層14bとを備える光学バリアフィルムである。上記第一光学フィルム16aと上記第二光学フィルム16bとは上記第一バリア層14aと上記第二バリア層14bとが対向するように上記接着層15を介して貼り合わされている。また、上記第二光学フィルム16bは第二バリア層14bを2つ以上備えていてもよい。上記第二光学フィルム16bが第二バリア層14bを2つ以上備える場合、複数の第二バリア層14bの構成は同じであってもよく、異なっていてもよい。上記第一バリア層14a及び上記第二バリア層14bの構成は同じであってもよく、異なっていてもよい。上記発光体保護フィルム10を発光ユニットに用いる場合、発光体保護フィルム10は第一光学フィルム16aが発光体層と接するように配置される。発光体保護フィルム10が第一光学フィルム16aと第二光学フィルム16bとを重ねた光学バリアフィルムの積層体であることにより、発光ユニットに用いた場合に、外力による発光体層の破損を抑制し、且つ、ガスバリア性を向上させることができる。
【0016】
接着層15の酸素透過率は、厚さ5μmにおいて、厚さ方向に、1000cm
3/(m
2・day・atm)以下である。上記酸素透過率は500cm
3/(m
2・day・atm)以下であることが好ましく、100cm
3/(m
2・day・atm)以下であることがより好ましく、50cm
3/(m
2・day・atm)以下であることがさらに好ましく、10cm
3/(m
2・day・atm)以下であることが特に好ましい。接着層15の酸素透過率が、1000cm
3/(m
2・day・atm)以下であることにより、発光ユニットに用いた場合に、バリア層が欠陥を有していたとしても、ダークスポットを抑制することが可能な発光体保護フィルム10を得ることができる。上記酸素透過率の下限値は特に制限されないが、例えば、0.1cm
3/(m
2・day・atm)である。
【0017】
本実施形態に係る発光体保護フィルム10のように、バリア層を備える光学フィルムとバリア層を備える別の光学フィルムとが接着層を介して貼り合わされた構成(バリアフィルム積層構成)を備える保護フィルムからは、バリア層を備える光学フィルムのみからなる(バリアフィルム積層構成を備えない)保護フィルムと比べて優れたガスバリア性が得られる。しかし、上記バリアフィルム積層構成によって保護フィルム全体としてのガスバリア性は得られるものの、バリア層(特に発光体層の近くに配置されたバリア層)に局所的な微小欠陥が生じた場合に、バリア層に生じた微小欠陥の近くの発光体層でのダークスポットの発生を十分抑制できないことがある。このような局所的な微小欠陥は、ガス透過率の測定等によって評価される保護フィルム全体としてのガスバリア性には現れにくいが、当該欠陥近傍のダークスポットの発生に影響するものである。本実施形態に係る発光体保護フィルム10は、第一光学フィルム16aと第二光学フィルム16bとを接着層15を介して貼り合わせることにより、バリア層に局所的な微小欠陥が生じていたとしても、当該欠陥近傍のダークスポットの発生を抑制することができる。また、本実施形態に係る発光体保護フィルム10によって得られる効果は上記微小欠陥が生じた場合にとどまらず、仮に保護フィルム製造の際にバリア層により大きな欠陥が生じていたとしても、当該欠陥近傍のダークスポットの発生を抑制することができる。さらに、本実施形態に係る発光体保護フィルム10によれば、仮に保護フィルム製造の際にバリア層と基材層とを貫通した欠陥が生じていたとしても、当該欠陥近傍のダークスポットの発生を抑制することができる。
【0018】
接着層15は粘着剤又は接着剤から形成される。上記接着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤等が挙げられる。上記接着剤はエポキシ樹脂を含むことが好ましい。接着剤がエポキシ樹脂を含むことにより、第一光学フィルム16aと第二光学フィルム16bとの密着性を向上させることができる。また、上記粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、でんぷん糊系接着剤等が挙げられる。接着層15の厚さは、0.5〜50μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましく、2〜6μmあることがさらに好ましい。接着層15の厚さが0.5μm以上であることにより、第一光学フィルム16aと第二光学フィルム16bとの密着性が得られやすくなり、上記厚さが50μm以下であることにより、より優れたガスバリア性が得られやすくなる。
【0019】
第一基材層11a及び第二基材層11bは加工及び流通等における破損を抑制するための層である。第一基材層11aと第二基材層11bとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリプロピレン及びシクロオレフィン等のポリオレフィン;ポリカーボネート;並びにトリアセチルセルロース等が挙げられるが、これらに限定されない。第一基材層11a及び第二基材層11bは、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム又はポリオレフィンフィルムであることが好ましく、ポリエステルフィルム又はポリアミドフィルムであることがより好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることがさらに好ましい。また、第一基材層11a及び第二基材層11bは二軸延伸されていることが好ましい。第一基材層11aと第二基材層11bは同じであっても異なっていてもよい。
【0020】
第一基材層11a及び第二基材層11bの厚さは、特に制限されないが、3μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0021】
上記第一基材層11a及び第二基材層11b上にそれぞれ第一バリア層14a及び第二バリア層14bが、必要に応じてアンカーコート層(図示しない)を介して、形成されている。アンカーコート層としてはポリエステル樹脂等が挙げられ、アンカーコート層の厚さは0.01〜1μm程度である。
【0022】
上記第一バリア層14aは第一無機薄膜層12aと第一ガスバリア性被覆層13aとを含むことが好ましく、第二バリア層14bは第二無機薄膜層12bと第二ガスバリア性被覆層13bとを含むことが好ましい。この場合、上記第二光学フィルム16bが上記第一バリア層14aと上記第二バリア層14bとが対向するように上記接着層15を介して貼り合わされている。上記第一バリア層14a及び上記第二バリア層14bが上記構成を備えることにより、より優れたガスバリア性を得ることができる。また、第二光学フィルム16bを上記のように配置することにより、第一バリア層14a及び第二バリア層14bを外力から保護することができ、より安定したガスバリア性を得ることができる。
【0023】
第一無機薄膜層12a及び第二無機薄膜層12bは無機化合物を含み、金属酸化物を含むことが好ましい。上記金属酸化物としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、イットリウム、タンタル、ケイ素、マグネシウム等の金属の酸化物が挙げられる。金属酸化物は、安価でバリア性能に優れることから、酸化ケイ素(SiOx、xは1.0〜2.0)であることが好ましい。xが1.0以上であると、良好なガスバリア性が得られやすい傾向がある。
【0024】
第一無機薄膜層12a及び第二無機薄膜層12bの形成方法は真空成膜であることが好ましい。真空成膜としては、物理気相成長法及び化学気相成長法が挙げられる。物理気相成長法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。また、化学気相成長法としては、例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等が挙げられる。製造コストの観点から、第一無機薄膜層12a又は第二無機薄膜層12bは蒸着法で形成された無機蒸着膜層であることが好ましい。例えば、第一無機薄膜層12a又は第二無機薄膜層12bが無機蒸着膜層である場合、蒸着材料の飛散(スプラッシュ)により第一光学フィルム16a又は第二光学フィルム16bに孔が生じることがある。スプラッシュが生じる頻度は少ないものの、スプラッシュによって生じる孔は比較的大きな欠陥であり、バリア層及び基材層を貫通する孔となり得る。したがって、スプラッシュによる孔が生じた保護フィルムでは、ガスバリア性が大きく低下し得る。特に、発光体層側に配置される第一バリア層14a及び第一基材層11aを貫通する孔が生じた場合、ダークスポットがより発生しやすくなる。しかしながら、本実施形態に係る発光体保護フィルム10はバリアフィルム積層構成を備えることから、仮に、第一光学フィルム16a又は第二光学フィルム16bに比較的大きな欠陥があったとしても、ガスバリア性の低下を低減することができる。本実施形態に係る発光体保護フィルム10は、さらに、接着層15を備えることから、仮に、第一光学フィルム16aにこのような比較的大きな欠陥があったとしても、欠陥がないときと同様にダークスポットの発生を抑制することができる。したがって、第一無機薄膜層12aが無機蒸着膜層であることにより、製造コストを低減しつつダークスポットの発生を抑制することができる。
【0025】
第一無機薄膜層12a及び第二無機薄膜層12bの厚さは、10〜300nmであることが好ましく、20〜100nmであることがより好ましい。第一無機薄膜層12a及び第二無機薄膜層12bの厚さが10nm以上であることにより、均一な膜が得られやすく、ガスバリア性が得られやすくなる傾向がある。一方、第一無機薄膜層12a及び第二無機薄膜層12bの厚さが300nm以下であることにより、第一無機薄膜層12a及び第二無機薄膜層12bに柔軟性を保持させることができ、成膜後に折り曲げ、引張等の外力により、亀裂等が生じにくくなる傾向がある。
【0026】
第一ガスバリア性被覆層13a及び第二ガスバリア性被覆層13bは下記式(1)で表わされる金属アルコキシド及びその加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種を含む組成物から形成されることが好ましい。
M(OR
1)
m(R
2)
n−m ・・・(1)
【0027】
上記式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に炭素数1〜8の1価の有機基であり、メチル基、エチル基等のアルキル基であることが好ましい。MはSi、Ti、Al、Zr等のn価の金属原子を示す。mは1〜nの整数である。金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC
2H
5)
4]、トリイソプロポキシアルミニウム[Al(O−iso−C
3H
7)
3]等が挙げられる。金属アルコキシドは、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であることから、テトラエトキシシラン又はトリイソプロポキシアルミニウムであることが好ましい。金属アルコキシドの加水分解物としては、例えば、テトラエトキシシランの加水分解物であるケイ酸(Si(OH)
4)、及び、トリプロポキシアルミニウムの加水分解物である水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)等が挙げられる。これらは、1種だけでなく、複数種を組み合わせて使用することもできる。上記組成物における金属アルコキシド及びその加水分解物の含有量は、例えば、10〜90質量%である。
【0028】
上記組成物はさらに水酸基含有高分子化合物を含んでいてもよい。水酸基含有高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びデンプン等の水溶性高分子が挙げられる。水酸基含有高分子化合物はバリア性の観点からポリビニルアルコールであることが好ましい。これらは、1種だけでなく、複数種を組み合わせて使用することもできる。上記組成物における水酸基含有高分子化合物の含有量は、例えば、10〜90質量%である。
【0029】
第一ガスバリア性被覆層13a及び第二ガスバリア性被覆層13bの厚さは、50〜1000nmであることが好ましく、100〜500nmであることが好ましい。第一ガスバリア性被覆層13a及び第二ガスバリア性被覆層13bの厚さが50nm以上であると、より十分なガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、十分な柔軟性を保持できる傾向がある。
【0030】
発光体保護フィルム10は、光散乱機能を発揮させるために、第二光学フィルム16b側の表面にさらにマット層(図示しない)を備えていてもよい。発光体保護フィルム10がマット層を備えることにより、光散乱機能以外にも、干渉縞(モアレ)防止機能及び反射防止機能等を得ることができる。
【0031】
発光体保護フィルム10は、酸素や水蒸気等と接触することにより劣化し得る発光体の保護フィルムとして好適に用いることができる。上記発光体としては、量子ドット等の蛍光体、エレクトロルミネッセンス発光体等が挙げられる。
【0032】
(波長変換シート)
図2は本発明の一実施形態に係る波長変換シートの概略断面図である。波長変換シートは液晶ディスプレイ用バックライトユニットの光源からの光の一部の波長を変換可能なシートである。
図2に示すように、本実施形態の波長変換シート20は、第一保護フィルムと、上記第一保護フィルム上に形成された蛍光体層21と、上記蛍光体層21上に設けられた第二保護フィルム22と、を備えて概略構成されている。波長変換シート20は、第一保護フィルム及び第二保護フィルム22の間に、蛍光体層21が包み込まれた(すなわち、封止された)構造を有する。
図2において、第一保護フィルムには、上述した発光体保護フィルム10が用いられる。一方、第二保護フィルム22には、上述した発光体保護フィルム10が用いられてもよく、別の保護フィルムが用いられてもよい。また、波長変換シート20は必ずしも第二保護フィルム22を備えていなくてもよい。すなわち、本実施形態の波長変換シート20は、発光体保護フィルム10と、上記発光体保護フィルム10の上記第一光学フィルム16a上に形成された蛍光体層21と、を備える。
【0033】
上述のとおり、保護フィルムが、バリア層を備える複数のフィルムが接着層を介して貼り合わされた構成(バリアフィルム積層構成)を備えることにより、ガスバリア性が向上する。蛍光体層におけるダークスポット発生のメカニズムは保護フィルムの蛍光体層とは反対側(外側)の面からの保護フィルムの厚さ方向へのガスの侵入が支配的であると考えられるが、発光体保護フィルム10がバリアフィルム積層構成を備えることにより、上記方向からのガスの侵入を低減することができると考えられる。しかし、保護フィルムがバリア層(特に、蛍光体層側に配置されるバリア層)に欠陥を有する場合、上記外側の面からのガスの侵入を低減できたとしても、当該欠陥近傍の蛍光体層のダークスポットの発生を抑制できなくなることがある。このようなダークスポットが発生するメカニズムは必ずしも明確ではないが、本発明者らは以下のように考えている。
図3は、蛍光体層側に配置されるバリア層に欠陥を有する波長変換シートにおいて想定される、ダークスポット発生のメカニズムを示す概念図である。
図3の波長変換シート200において、大気中の酸素や水蒸気等は、発光体保護フィルム100の接着層150の端面から侵入し、接着層150の面方向に拡散する。発光体保護フィルム100が第一バリア層140aに欠陥23を有する場合には、拡散した酸素や水蒸気等が当該欠陥23を通じて蛍光体層210に到達する。欠陥23の場所を中心に蛍光体の劣化が進行し、時間経過とともにダークスポット24となって現れる。上記欠陥23が第一バリア層140aとともに第一基材層110aを貫通している場合、蛍光体劣化の進行が顕著となり、ダークスポット24が視認されやすくなると考えられる。すなわち、酸素や水蒸気等が、接着層150の端面から、ガスバリア性を有する第一光学フィルム160aの欠陥23を通り、蛍光体の劣化が生じる。大気中の酸素や水蒸気が第二基材層110b及び第二バリア層140bを含む第二光学フィルム160bに対して蛍光体層210の反対側から発光体保護フィルム100の厚さ方向に侵入した場合の距離と比べ、接着層150の端面から侵入した場合の距離は極めて大きくなり、侵入量は極めて少なくなると考えられていたことから、
図3に示したメカニズムによるダークスポットの発生は意外なことであったと言える。本実施形態の波長変換シート20によれば、蛍光体層21上に設けられた保護フィルムとして、上記発光体保護フィルム10を用いることにより、当該発光体保護フィルム10がバリア層に欠陥を有していたとしても、ダークスポットの発生を抑制することができる。
【0034】
蛍光体層21は樹脂及び蛍光体を含む。蛍光体層21の厚さは数十〜数百μmである。上記樹脂としては、例えば、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用することができる。蛍光体層21は、量子ドットからなる2種類の蛍光体を含むことが好ましい。また、蛍光体層21は、1種類の蛍光体を含む蛍光体層と別の種類の蛍光体を含む蛍光体層が2層以上積層されたものであってもよい。2種類の蛍光体には、励起波長が同一のものが選択される。励起波長は、バックライトユニットの光源が照射する光の波長に基づいて選択される。2種類の蛍光体の蛍光色は相互に異なる。光源に青色発光ダイオード(青色LED)を用いる場合、各蛍光色は、赤色及び緑色である。各蛍光の波長、及び光源が照射する光の波長は、カラーフィルタの分光特性に基づき選択される。蛍光のピーク波長は、例えば、赤色で610nmであり、緑色で550nmである。
【0035】
次に、蛍光体の粒子構造を説明する。蛍光体としては、特に発光効率の良いコア・シェル型量子ドットが好適に用いられる。コア・シェル型量子ドットは、発光部としての半導体結晶コアが保護膜としてのシェルにより被覆されたものである。例えば、コアにはセレン化カドミウム(CdSe)、シェルには硫化亜鉛(ZnS)が使用可能である。CdSeの粒子の表面欠陥がバンドギャップの大きいZnSにより被覆されることで量子収率が向上する。また、蛍光体は、コアが第一シェル及び第二シェルにより二重に被覆されたものであってもよい。この場合、コアにはCdSe、第一シェルにはセレン化亜鉛(ZnSe)、第二シェルにはZnSが使用可能である。
【0036】
蛍光体層21は、蛍光体をすべて単一の層に分散させた単層構成を有していてもよく、各蛍光体を複数の層に別々に分散させ、これらを積層する多層構成を有していてもよい。
【0037】
次に、本実施形態の波長変換シート20の製造方法について
図2を参照しながら説明する。蛍光体層21の形成方法としては、特に限定されず、例えば、特表2013−544018号明細書に記載される方法が挙げられる。バインダー樹脂に蛍光体を分散させ、調製した蛍光体分散液を第一保護フィルム(発光体保護フィルム10)の第一光学フィルム16a側の面上に塗布した後、塗布面に第二保護フィルム22を貼り合わせ、蛍光体層21を硬化することにより、波長変換シート20を製造することができる。また反対に、第二保護フィルム22の一方の面上に上記蛍光体分散液を塗布し、塗布面に発光体保護フィルム10を第一光学フィルム16aが蛍光体層21と対向するように貼り合わせ、蛍光体層21を硬化することにより、波長変換シート20を製造することもできる。
【0038】
[バックライトユニット]
上記波長変換シート20を用いることにより、バックライトユニットが得られる。
図4は、上記波長変換シート20を用いて得られるバックライトユニットの概略断面図である。
図4において、バックライトユニット30は光源32と上記波長変換シート20とを備え、上記蛍光体層21を挟んで上記光源32と反対側に上記発光体保護フィルム10が配置される。詳細には、バックライトユニット30は、波長変換シート20の第二保護フィルム22側の表面上に導光板34及び反射板36がこの順で配置され、光源32は上記導光板34の側方(導光板34の面方向)に配置される。
【0039】
導光板34及び反射板36は、光源32から照射された光を効率的に反射し、導くものであり、公知の材料が使用される。導光板34としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、及びシクロオレフィンフィルム等が使用される。光源32には、例えば、青色発光ダイオード素子が複数個設けられている。この発光ダイオード素子は、紫色発光ダイオード、又はさらに低波長の発光ダイオードであってもよい。光源32から照射された光は、導光板34(D
1方向)に入射した後、反射及び屈折等を伴って蛍光体層21(D
2方向)に入射する。蛍光体層21を通過した光は、蛍光体層21を通過する前の光に蛍光体層21で発生した黄色光が混ざることで、白色光となる。
【0040】
[エレクトロルミネッセンス発光ユニット]
図5は本発明の一実施形態に係るエレクトロルミネッセンス発光ユニットの概略断面図である。本実施形態に係るエレクトロルミネッセンス発光ユニット50は、エレクトロルミネッセンス発光体層56と、発光体保護フィルム10とを備える。エレクトロルミネッセンス発光ユニット50は、例えば、透明電極層54と、該透明電極層54上に設けられたエレクトロルミネッセンス発光体層56と、該エレクトロルミネッセンス発光体層56上の設けられた誘電体層58と、該誘電体層58上に設けられた背面電極層60を含む電極要素を、第一保護フィルム及び第二保護フィルム62で挟持するとともに密封することにより得られる。上記エレクトロルミネッセンス発光ユニットにおいて、第一保護フィルムには、上述した発光体保護フィルム10が用いられる。エレクトロルミネッセンス発光体層56は上記発光体保護フィルム10の第一光学フィルム16a上に形成される。
【0041】
エレクトロルミネッセンス発光ユニットにおいても、波長変換シートに対して説明したメカニズムと同様のメカニズムによるダークスポット発生が考えられる。本実施形態に係るエレクトロルミネッセンス発光ユニット50によれば、エレクトロルミネッセンス発光体層56を含む電極要素上に設けられた保護フィルムとして、上記発光体保護フィルム10を用いることにより、当該発光体保護フィルム10がバリア層に欠陥を有していたとしても、ダークスポットの発生を抑制することができる。
【0042】
各電極層、エレクトロルミネッセンス発光体層及び誘電体層は、例えば、蒸着及びスパッタ法等により、公知の材料を用いて、形成することができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0044】
[発光体保護フィルムの作製]
(
参考例1)
アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートとを、アクリルポリオールのOH基の数に対してトリレンジイソシアネートのNCO基の数が等量となるように混合し、全固形分が5質量%になるよう酢酸エチルで希釈した。希釈後の混合液に、さらにβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを、全固形分に対して5質量%となるように添加し、これらを混合することでアンカーコート層組成物を作製した。
【0045】
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第一基材層、厚さ:25μm)の一方の面上に、上記アンカーコート層組成物をバーコート法により塗布し、100℃1分間乾燥硬化させることにより、厚さ50nmのアンカーコート層を形成した。
【0046】
電子ビーム加熱式の真空蒸着装置を用いて、酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン株式会社製)を1.5×10
−2Paの圧力下で電子ビーム加熱によって蒸発させ、上記アンカーコート層上に厚さ30nmのSiO
x膜(第一無機薄膜層)を形成した。なお、蒸着における加速電圧は40kVであり、エミッション電流は0.2Aであった。
【0047】
次に、テトラエトキシシラン10.4質量部と塩酸(濃度:0.1N)89.6質量部とを混合して、混合液を30分間撹拌し、テトラエトキシシランの加水分解溶液を得た。一方、ポリビニルアルコールを水/イソプロピルアルコールの混合溶媒(水/イソプロピルアルコール(質量比)=90:10)中に溶解させ、3質量%のポリビニルアルコール溶液を得た。テトラエトキシシランの加水分解溶液60質量部とポリビニルアルコール溶液40質量部とを混合し、ガスバリア性被覆層組成物を得た。
【0048】
第一無機薄膜層上に、上記ガスバリア性被覆層組成物を塗布、乾燥することにより、300nmの厚さを有する第一ガスバリア性被覆層を形成した。さらに、上記第一ガスバリア性被覆層上に、上記と同様にして、厚さ30nmの別の第一無機薄膜層を形成し、上記別の第一無機薄膜層上に、厚さ300nmの別の第一ガスバリア性被覆層を形成した。上記のようにして、第一基材層、アンカーコート層、第一無機薄膜層、第一ガスバリア性被覆層、第一無機薄膜層、及び第一ガスバリア性被覆層がこの順に積層されてなる第一光学フィルムを得た。
【0049】
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二基材層、厚さ:25μm)の一方の面上に、上記アンカーコート層組成物をバーコート法により塗布し、100℃1分間乾燥硬化させることにより、厚さ50nmのアンカーコート層を形成した。
【0050】
電子ビーム加熱式の真空蒸着装置を用いて、酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン株式会社製)を1.5×10
−2Paの圧力下で電子ビーム加熱によって蒸発させ、上記アンカーコート層上に厚さ30nmのSiO
x膜(第二無機薄膜層)を形成した。なお、蒸着における加速電圧は40kVであり、エミッション電流は0.2Aであった。
【0051】
第二無機薄膜層上に、上記ガスバリア性被覆層組成物を塗布、乾燥することにより、300nmの厚さを有する第二ガスバリア性被覆層を形成した。上記のようにして、第二基材層、アンカーコート層、第二無機薄膜層、及び第二ガスバリア性被覆層がこの順に積層されてなる第二光学フィルムを得た。
【0052】
得られた第一光学フィルムの第一ガスバリア性被覆層の表面上に、下記接着剤Aを塗布し、上記接着剤Aの塗布面に、第二光学フィルムの第二ガスバリア性被覆層を貼り合わせ、50℃2日間エージングを行った。上記のようにして、第一光学フィルムと第二光学フィルムとを5μmの厚さを有する接着層を介して貼り合せた。なお、上記接着剤Aはエポキシ樹脂からなる主剤とポリアミン樹脂からなる硬化剤とを混合して得られる接着剤組成物である。
【0053】
次に、第二光学フィルムの第一光学フィルムが貼り合わされていない側の面上に、アクリル樹脂(商品名:アカリディック、DIC社製)100質量部とシリカ粒子(商品名:トスパール120、平均粒子径:2.0μm、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社製)20質量部からなる組成物を塗布した。塗膜を加熱して、アクリル樹脂を硬化することにより、厚さ3μmのマット層を形成した。上記のようにして、第一光学フィルム、接着層、第二光学フィルム、及びマット層がこの順に積層されてなる発光体保護フィルムを得た。
【0054】
(実施例2
、参考例3及び比較例1〜3)
第一光学フィルムと第二光学フィルムとを貼り合せる際に用いた接着剤として、接着剤Aに代えて、下記表1に記載の接着剤を用いたこと以外は、
参考例1と同様にして、実施例2
、参考例3及び比較例1〜3の発光体保護フィルムを得た。なお、
参考例3では、エージングに代えて、線量15Mradで電子線を照射し、接着剤Cを硬化させた。
【0055】
[発光体保護フィルムの評価]
(接着層の酸素透過率)
実施例及び比較例で用いられた接着剤A〜Fを厚さ70μmのCPP(無延伸ポリプロピレンフィルム)上に塗布し、上記接着剤の塗布面に、厚さ70μmのCPPを貼り合せ、エージング又は電子線照射を行った。接着剤A〜B及び接着剤D〜Fに対しては50℃5日間でエージングを行った。接着剤Cに対しては線量15Mradで電子線を照射した。上記のようにして、厚さ70μmのCPP、厚さ5μmの接着層、及び厚さ70μmのCPPがこの順に積層されてなる、酸素透過率測定用サンプル(積層体)を得た。得られたサンプルを差圧式ガス透過率測定装置(GTRテック株式会社製、GTR-30X)内に配置し、JIS K7126−1(附属書1)に記載の方法に従って、温度40℃、相対湿度0%の環境下で試験ガスを酸素とし、差圧101kPa(1atm)で差圧法にて上記サンプルの酸素透過率を測定した。酸素透過率の測定結果を表1に示す。なお、接着剤にて貼り合わせられたフィルムとして、接着層より高い酸素透過率(例えば、1000cm
3/(m
2・day・atm)より高い酸素透過率)を有するフィルムを用いることにより、上記サンプルの測定結果は接着層の酸素透過率とみなすことができる。上記測定方法では、接着剤にて貼り合わせられたフィルムとして、酸素透過率2500cm
3/(m
2・day・atm)であるCPPを用いていることから、2500cm
3/(m
2・day・atm)以下のサンプルの酸素透過率の測定結果は、接着層の酸素透過率とみなすことができる。
【0056】
(密着性)
実施例及び比較例で得られた発光体保護フィルムを幅15mmの短冊状にカットし、発光体保護フィルムの第一光学フィルム側をガラス板上に固定した。固定された短冊状の発光体保護フィルムの第二光学フィルムを、テンシロン引張試験機(オリエンテック社製)を用いて、ガラス板に対して垂直な方向に、300mm/分の速度で、第一光学フィルムから剥離し、剥離に要した強度を測定した。上記強度を、作製直後の発光体保護フィルム(条件(1))、温度60℃湿度90%RH1000時間保存後の発光体保護フィルム(条件(2))に対して、温度23℃湿度65%RHの環境下で測定した。条件(1)〜(2)で測定した剥離強度の測定結果を密着性の評価結果として表1に示す。剥離強度が1N以上である場合に好適な密着性が得られ、3N以上である場合に特に好適な密着性が得られていると判断した。
【0057】
【表1】
【0058】
なお、表1中に記載した接着剤の詳細は以下のとおりである。
接着剤A:三菱ガス化学株式会社製マクシーブ、配合比(エポキシ樹脂系主剤/アミン系硬化剤/メタノール/酢酸エチル=1/3/3/6(質量比))
接着剤B:ポリアクリル酸系接着剤、配合比(水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基の5モル%を中和したポリアクリル酸水溶液/グリセリン=1/1(固形分質量比))。
接着剤C:アミン化合物溶液と不飽和カルボン酸溶液との混合物(アミン化合物溶液/不飽和カルボン酸溶液=1:1(質量比))。アミン化合物溶液は、アミン化合物(株式会社日本触媒製、商品名:エポミンSP110)の水/イソプロピルアルコール混合溶液(3質量%、水/イソプロピルアルコール=50/50(質量比))であり、不飽和カルボン酸溶液は、不飽和カルボン酸(関東化学株式会社製、イタコン酸)の水/イソプロピルアルコール混合溶液(3質量%、水/イソプロピルアルコール=50:50(質量比))である。
接着剤D:東洋モートン株式会社製、配合比(エポキシ樹脂系主剤AD−393/アミン系硬化剤CTA−5/イソプロピルアルコール=5/0.3/2.7(質量比))。
接着剤E:三井化学株式会社製、配合比(エステル系主剤タケラックA−525/イソシアネート系硬化剤タケネートA−52/酢酸エチル=90/10/100(質量比))。
接着剤F:サイデン化学株式会社製、配合比(ポリオール樹脂系主剤X−313−405S/ポリイソシアネート系硬化剤K−341/トルエン=25/0.34/31.25(質量比))。
【0059】
接着剤としてエポキシ樹脂を含む組成物を用いた
参考例1では5Nを超える十分な剥離強度が得られた。また、接着剤Eを用いた比較例2では硬化反応時に接着層で発泡が生じ、発光体保護フィルムが白濁した。
【0060】
[波長変換シートの作製]
セレン化カドミウム(CdSe)の粒子に硫化亜鉛(ZnS)を被覆したコア・シェル構造を有する蛍光体(商品名:CdSe/ZnS 530、SIGMA−ALDRICH社製)を溶媒に分散して濃度調整することで蛍光体分散液を調製した。上記蛍光体分散液をエポキシ系感光性樹脂と混合して、蛍光体組成物を得た。実施例及び比較例で得られた発光体保護フィルムの第一光学フィルム側の表面上に、上記蛍光体組成物を塗布し、100μmの厚さを有する蛍光体層を形成した。
【0061】
蛍光体層上に、さらに同じ実施例及び比較例で得られた2枚目の発光体保護フィルムを、第一光学フィルムが蛍光体層側に向くように、配置して積層した後、紫外線照射により蛍光体層(感光性樹脂)を硬化することで、実施例及び比較例で作製した発光体保護フィルムを用いた波長変換シートを得た。
【0062】
[波長変換シートの評価]
(針孔評価)
波長変換シートの製造において、一方の発光体保護フィルムの第一光学フィルムとして、第一バリア層側から針を突き刺すことにより30〜300μm程度の直径を有し第一バリア層及び第一基材層を貫通する孔を設けた第一光学フィルムを用い、実施例及び比較例それぞれに対するダークスポット評価用波長変換シートを作製した。上記孔は無機薄膜層を蒸着によって形成した場合のスプラッシュによる孔を疑似的に再現したものである。得られたダークスポット評価用波長変換シートを、温度85℃、相対湿度0%RHの環境下に、曝露した。曝露後72時間、200時間及び1000時間が経過したダークスポット評価用波長変換シートに対し、孔を設けていない発光体保護フィルム側から青色光を照射し、孔を設けた発光体保護フィルム側から透過光を目視にて確認し、下記基準に従って黒点状の欠陥(ダークスポット)の有無を評価した。第一光学フィルムに設けた孔の長径a及び短径bとともに、上記孔周辺におけるダークスポットの評価結果を表2〜表3に示す。
A:曝露後1000時間経過後も、ダークスポットの存在が確認されなかった。
B:曝露後200時間経過後には、ダークスポットの存在が確認されなかったが、曝露後1000時間経過後には、ダークスポットの存在が確認された。
C:曝露後72時間経過後には、ダークスポットの存在が確認されなかったが、曝露後200時間経過後には、ダークスポットの存在が確認された。
D:曝露後72時間経過後にダークスポットの存在が確認された。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
接着層の酸素透過率が1000cm
3/(m
2・day・atm)以下である実施例
2及び参考例1、3では高温の環境下に1000時間曝露後もダークスポットの存在が確認されなかった。これに対し、接着層の酸素透過率が2000cm
3/(m
2・day・atm)を超える比較例1〜3では比較的短時間の曝露後においてもダークスポットが確認された。
【0066】
(ダークスポット評価)
実施例及び比較例で得られた発光体保護フィルムを用いた波長変換シートを、60cm×34cm(27インチモニタに相当)に断裁し、温度85℃相対湿度0%の環境下に、1000時間曝露した。曝露後UVライトを照射し、ダークスポットの数を目視で数えた。ダークスポットの数を表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
表4から、接着層の酸素透過率が高い比較例1〜3でダークスポットが発生しているのに対し、実施例ではダークスポットは観察されなかった。