(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電線の中途に設けられたスイッチをオン又はオフに切替えるスイッチ制御部を備え、該スイッチ制御部が行う切替えによって前記電線を介した給電を制御する給電制御装置において、
該電線を流れる電流に応じた電流を出力する電流出力回路と、
該電流出力回路が出力した電流が流れる抵抗回路と、
該抵抗回路の両端間の電圧を平滑する平滑回路と、
該平滑回路が平滑した電圧値に基づいて前記電線の電線温度を算出する温度算出部と
を備え、
前記抵抗回路は、
第1抵抗と、
該第1抵抗に並列に接続される第2抵抗及びキャパシタの直列回路と
を有し、
前記スイッチ制御部は、前記抵抗回路の両端間の両端電圧値が予め設定されている電圧値以上である場合に前記スイッチをオフに切替え、
前記スイッチ制御部は、前記温度算出部が算出した電線温度が所定温度以上である場合に前記スイッチをオフに切替え、
前記平滑回路は、前記抵抗回路の両端間の電圧が入力され、入力された電圧をそのまま出力するボルテージフォロワー回路を有し、該ボルテージフォロワー回路が出力した電圧を平滑すること
を特徴とする給電制御装置。
電線の中途に設けられたスイッチをオン又はオフに切替えるスイッチ制御部を備え、該スイッチ制御部が行う切替えによって前記電線を介した給電を制御する給電制御装置において、
該電線を流れる電流に応じた電流を出力する電流出力回路と、
該電流出力回路が出力した電流が流れる抵抗回路と、
該抵抗回路の両端間の電圧を平滑する平滑回路と、
該平滑回路が平滑した電圧値に基づいて前記電線の電線温度を算出する温度算出部と、
該電線の周囲温度を検出する温度検出部と
を備え、
前記抵抗回路は、
第1抵抗と、
該第1抵抗に並列に接続される第2抵抗及びキャパシタの直列回路と
を有し、
前記スイッチ制御部は、前記抵抗回路の両端間の両端電圧値が予め設定されている電圧値以上である場合に前記スイッチをオフに切替え、
前記スイッチ制御部は、前記温度算出部が算出した電線温度が所定温度以上である場合に前記スイッチをオフに切替え、
前記温度算出部は、前記電線温度と、前記温度検出部が検出した周囲温度との温度差を時系列的に算出する温度差算出部を有し、該温度差算出部が算出した温度差に、前記温度検出部が検出した周囲温度を加算することによって前記電線温度を算出し、
前記スイッチ制御部は、前記スイッチのオン及びオフへの切替えを交互に繰り返し、
前記温度差算出部は、前記平滑回路が平滑した電圧値Vsと、前記温度検出部が検出した周囲温度Taと、前記スイッチのオン及びオフへの切替えに係るデューティDと、前回算出した先行温度差ΔTpとを下記式に代入することによって、温度差ΔTwを算出することを特徴とする給電制御装置。
ΔTw=ΔTp×exp(−Δt/τr)
+A×Rw×Vs2 ×(1−exp(−Δt/τr))/D
Rw=Ro×(1+κ×(Ta+ΔTp−To))
但し、Δt:前記温度差算出部が行う算出の時間間隔
Ro:所定温度Toにおける電線抵抗値
τr:前記電線の電線放熱時定数
κ:前記電線の電線抵抗温度係数
A:定数
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抵抗値が電流の通流が開始される時点において非常に小さく、通流時間が長くなるにつれて上昇する負荷に給電する構成においては、制御回路がスイッチをオフからオンに切替えた場合に電線に一時的に大きな電流が流れる。この電流は、所謂、突入電流である。
【0006】
前述した電流閾値が突入電流の電流値以下に設定されている場合、スイッチはオンになった直後にオフに戻されるので、負荷が作動することはない。負荷を作動させるためには、電流閾値を、突入電流の電流値を超える値に設定しておく必要がある。
【0007】
スイッチをオフからオンに切替えた時点では電線温度は低い。このため、電線に突入電流が流れた場合であっても電線の発煙又は発火が生じることはない。従って、スイッチをオフからオンに切替えた直後において、電流閾値は突入電流の電流値を超えていてもよい。
【0008】
しかしながら、突入電流が流れた後においては、電線に電流が一定期間以上流れ、電線温度は一定温度を超えている。このため、突入電流が電線を流れた後においては、電流値が突入電流の電流値と同じである電流が電線を流れた場合、電線の発煙又は発火が生じる可能性がある。従って、突入電流が電線を流れた後においては、電流閾値は突入電流値以下の値に設定する必要がある。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スイッチをオフからオンに切替えた直後において突入電流が電線を流れることを許容しつつ、過電流による電線の発煙及び発火を確実に防止することができる給電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る給電制御装置は、電線の中途に設けられたスイッチをオン又はオフに切替えるスイッチ制御部を備え、該スイッチ制御部が行う切替えによって前記電線を介した給電を制御する給電制御装置において、該電線を流れる電流に応じた電流を出力する電流出力回路と、該電流出力回路が出力した電流が流れる抵抗回路と
、該抵抗回路の両端間の電圧を平滑する平滑回路と、該平滑回路が平滑した電圧値に基づいて前記電線の電線温度を算出する温度算出部とを備え、
前記抵抗回路は、第1抵抗と、該第1抵抗に並列に接続される第2抵抗及びキャパシタの直列回路とを有し、前記スイッチ制御部は、前記抵抗回路の両端間の両端電圧値が
予め設定されている電圧値以上である場合に前記スイッチをオフに切替え
、前記スイッチ制御部は、前記温度算出部が算出した電線温度が所定温度以上である場合に前記スイッチをオフに切替え、前記平滑回路は、前記抵抗回路の両端間の電圧が入力され、入力された電圧をそのまま出力するボルテージフォロワー回路を有し、該ボルテージフォロワー回路が出力した電圧を平滑することを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、例えば、電線を流れる電流値の上昇と共に電流値が上昇する電流が、電流出力回路から抵抗回路に出力される。抵抗回路では、第1抵抗に、第2抵抗及びキャパシタの直列回路が並列に接続されている。抵抗回路の両端間の両端電圧値が
、予め設定されている電圧値以上である場合、スイッチをオフに切替え、電線を介した給電を停止する。
【0012】
抵抗回路の両端電圧値が
、予め設定されている電圧値である場合に電線を流れている電流値、即ち、電流閾値は、キャパシタに蓄えられている電力に依存する。キャパシタに電力が蓄えられていない場合、抵抗回路の抵抗値は、並列に接続された第1抵抗及び第2抵抗の合成抵抗値である。そして、キャパシタに蓄えられている電力が上昇するにつれて、抵抗回路の抵抗値は上昇する。抵抗回路の抵抗値の最大値は第1抵抗の抵抗値である。キャパシタに蓄えられている電力が小さい場合、抵抗回路の抵抗値が小さいため、
予め設定されている電圧値を抵抗回路の抵抗値で除算することによって算出される電流値は大きく、電流閾値も大きい。キャパシタに蓄えられている電力が大きい場合、抵抗回路の抵抗値が大きいため、
予め設定されている電圧値を抵抗回路の抵抗値で除算することによって算出される電流値は小さく、電流閾値も小さい。
【0013】
スイッチがオフからオンに切替わった場合、キャパシタに蓄えられている電力が小さく、電流閾値は大きい。このため、スイッチをオフからオンに切替えた直後において突入電流が電線を流れることが許容される。更に、突入電流が電線を流れた後においては、キャパシタに電力が蓄えられており、電流閾値は小さい。このため、過電流による電線の発煙及び発火が確実に防止される。
【0017】
また、例えば、スイッチのオン及びオフへの切替えを交互に繰り返すことによって、電線を介して負荷に出力される電圧値が一定値に維持されている場合、抵抗回路の両端電圧値はスイッチのオン及びオフに応じて変動する。平滑回路は抵抗回路の両端間の電圧を平滑する。平滑回路が平滑した電圧値に基づいて算出した電線温度が所定温度以上である場合にスイッチをオフに切替える。
【0018】
従って、電線を流れる電流値が前述した電流閾値未満であっても、電線温度が所定温度以上となった場合にスイッチがオンからオフに切替わるので、電線の発煙及び発火がより確実に防止される。更に、スイッチのオン及びオフへの切替えが交互に繰り返されている場合であっても、適切な電線温度が算出される。
更に、平滑回路のボルテージフォロワー回路には、抵抗回路の両端間の電圧が入力される。ボルテージフォロワー回路は、入力された電圧をそのまま出力する。平滑回路では、ボルテージフォロワー回路が出力した電圧が平滑される。
【0019】
本発明に係る給電制御装置は、前記電線の周囲温度を検出する温度検出部を備え、前記温度算出部は、前記電線温度と、該温度検出部が検出した周囲温度との温度差を時系列的に算出する温度差算出部を有し、該温度差算出部が算出した温度差に、前記温度検出部が検出した周囲温度を加算することによって前記電線温度を算出し、前記スイッチ制御部は、前記スイッチのオン及びオフへの切替えを交互に繰り返し、前記温度差算出部は、前記平滑回路が平滑した電圧値Vsと、前記温度検出部が検出した周囲温度Taと、前記スイッチのオン及びオフへの切替えに係るデューティDと、前回算出した先行温度差ΔTpとを下記式に代入することによって、温度差ΔTwを算出することを特徴とする。
ΔTw=ΔTp×exp(−Δt/τr)
+A×Rw×Vs
2 ×(1−exp(−Δt/τr))/D
Rw=Ro×(1+κ×(Ta+ΔTp−To))
但し、Δt:前記温度差算出部が行う算出の時間間隔
Ro:所定温度Toにおける電線抵抗値
τr:前記電線の電線放熱時定数
κ:前記電線の電線抵抗温度係数
A:定数
【0020】
本発明にあっては、電線温度と電線の周囲温度との温度差を時系列的に算出し、算出した温度差に電線の周囲温度を加算することによって電線温度を算出する。スイッチのオン及びオフへの切替えが交互に繰り返される。平滑回路が平滑した電圧値Vsと、温度検出部が検出した電線の周囲温度Taと、スイッチのオン及びオフへの切替えに係るデューティDと、前回算出した先行温度差ΔTpとを上述した式に代入することによって温度差ΔTwを算出する。
本発明に係る給電制御装置は、電線の中途に設けられたスイッチをオン又はオフに切替えるスイッチ制御部を備え、該スイッチ制御部が行う切替えによって前記電線を介した給電を制御する給電制御装置において、該電線を流れる電流に応じた電流を出力する電流出力回路と、該電流出力回路が出力した電流が流れる抵抗回路と、該抵抗回路の両端間の電圧を平滑する平滑回路と、該平滑回路が平滑した電圧値に基づいて前記電線の電線温度を算出する温度算出部と、該電線の周囲温度を検出する温度検出部とを備え、前記抵抗回路は、第1抵抗と、該第1抵抗に並列に接続される第2抵抗及びキャパシタの直列回路とを有し、前記スイッチ制御部は、前記抵抗回路の両端間の両端電圧値が予め設定されている電圧値以上である場合に前記スイッチをオフに切替え、前記スイッチ制御部は、前記温度算出部が算出した電線温度が所定温度以上である場合に前記スイッチをオフに切替え、前記温度算出部は、前記電線温度と、前記温度検出部が検出した周囲温度との温度差を時系列的に算出する温度差算出部を有し、該温度差算出部が算出した温度差に、前記温度検出部が検出した周囲温度を加算することによって前記電線温度を算出し、前記スイッチ制御部は、前記スイッチのオン及びオフへの切替えを交互に繰り返し、前記温度差算出部は、前記平滑回路が平滑した電圧値Vsと、前記温度検出部が検出した周囲温度Taと、前記スイッチのオン及びオフへの切替えに係るデューティDと、前回算出した先行温度差ΔTpとを下記式に代入することによって、温度差ΔTwを算出することを特徴とする。
ΔTw=ΔTp×exp(
−Δt/τr)
+A×Rw×Vs
2 ×(1
−exp(
−Δt/τr))/D
Rw=Ro×(1+κ×(Ta+ΔTp
−To))
但し、Δt:前記温度差算出部が行う算出の時間間隔
Ro:所定温度Toにおける電線抵抗値
τr:前記電線の電線放熱時定数
κ:前記電線の電線抵抗温度係数
A:定数
本発明にあっては、例えば、電線を流れる電流値の上昇と共に電流値が上昇する電流が、電流出力回路から抵抗回路に出力される。抵抗回路では、第1抵抗に、第2抵抗及びキャパシタの直列回路が並列に接続されている。抵抗回路の両端間の両端電圧値が、予め設定されている電圧値以上である場合、スイッチをオフに切替え、電線を介した給電を停止する。
抵抗回路の両端電圧値が、予め設定されている電圧値である場合に電線を流れている電流値、即ち、電流閾値は、キャパシタに蓄えられている電力に依存する。キャパシタに電力が蓄えられていない場合、抵抗回路の抵抗値は、並列に接続された第1抵抗及び第2抵抗の合成抵抗値である。そして、キャパシタに蓄えられている電力が上昇するにつれて、抵抗回路の抵抗値は上昇する。抵抗回路の抵抗値の最大値は第1抵抗の抵抗値である。キャパシタに蓄えられている電力が小さい場合、抵抗回路の抵抗値が小さいため、予め設定されている電圧値を抵抗回路の抵抗値で除算することによって算出される電流値は大きく、電流閾値も大きい。キャパシタに蓄えられている電力が大きい場合、抵抗回路の抵抗値が大きいため、予め設定されている電圧値を抵抗回路の抵抗値で除算することによって算出される電流値は小さく、電流閾値も小さい。
スイッチがオフからオンに切替わった場合、キャパシタに蓄えられている電力が小さく、電流閾値は大きい。このため、スイッチをオフからオンに切替えた直後において突入電流が電線を流れることが許容される。更に、突入電流が電線を流れた後においては、キャパシタに電力が蓄えられており、電流閾値は小さい。このため、過電流による電線の発煙及び発火が確実に防止される。
また、例えば、スイッチのオン及びオフへの切替えを交互に繰り返すことによって、電線を介して負荷に出力される電圧値が一定値に維持されている場合、抵抗回路の両端電圧値はスイッチのオン及びオフに応じて変動する。平滑回路は抵抗回路の両端間の電圧を平滑する。平滑回路が平滑した電圧値に基づいて算出した電線温度が所定温度以上である場合にスイッチをオフに切替える。
従って、電線を流れる電流値が前述した電流閾値未満であっても、電線温度が所定温度以上となった場合にスイッチがオンからオフに切替わるので、電線の発煙及び発火がより確実に防止される。更に、スイッチのオン及びオフへの切替えが交互に繰り返されている場合であっても、適切な電線温度が算出される。
また、電線温度と電線の周囲温度との温度差を時系列的に算出し、算出した温度差に電線の周囲温度を加算することによって電線温度を算出する。スイッチのオン及びオフへの切替えが交互に繰り返される。平滑回路が平滑した電圧値Vsと、温度検出部が検出した電線の周囲温度Taと、スイッチのオン及びオフへの切替えに係るデューティDと、前回算出した先行温度差ΔTpとを上述した式に代入することによって温度差ΔTwを算出する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スイッチをオフからオンに切替えた直後において突入電流が電線を流れることを許容しつつ、過電流による電線の発煙及び発火を確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。電源システム1は、好適に車両に搭載され、バッテリ10、負荷11、電線12を備える。バッテリ10の正極と、負荷11の一端とは電線12によって接続されている。バッテリ10の負極と、負荷11の他端は接地されている。
【0024】
電線12を介してバッテリ10から負荷11に給電される。負荷11は、車両に搭載された電気機器、例えばランプであり、負荷11の抵抗値は、電流の通流が開始される時点において非常に小さく、通流時間が長くなるにつれて上昇する。バッテリ10から負荷11に給電されている場合、負荷11は作動し、バッテリ10から負荷11への給電が停止した場合、負荷11は動作を停止する。
【0025】
電源システム1は給電制御装置13を更に備える。給電制御装置13は電線12の中途に設けられている。給電制御装置13には、負荷11の作動を指示する作動信号と、負荷11の動作の停止を指示する停止信号とが入力される。給電制御装置13は、給電制御装置13に入力された信号と、電線12を流れる電線電流値と、電線12の電線温度とに基づいて、負荷11への給電を制御する。
【0026】
給電制御装置13は、スイッチ20、制御回路21、電流出力回路22、抵抗回路23、温度検出部24及びマイクロコンピュータ(以下ではマイコンという)25を有する。抵抗回路23はキャパシタC1及び抵抗R1,R2を有する。
【0027】
スイッチ20は電線12の中途に設けられている。スイッチ20はNチャネル型のFET(Field Effect Transistor)である。スイッチ20のドレインは、電線12を介してバッテリ10の正極に接続されている。スイッチ20のソースは電線12を介して負荷11の一端に接続されている。スイッチ20のゲートは制御回路21に接続されている。制御回路21は、更に、電流出力回路22の出力端とマイコン25とに接続されている。
【0028】
電流出力回路22の出力端は、更に、抵抗回路23の抵抗R1,R2夫々の一端と、マイコン25とに接続されている。抵抗R2の他端は、抵抗回路23のキャパシタC1の一端に接続されている。キャパシタC1及び抵抗R1夫々の他端は接地されている。このように、抵抗回路23では、抵抗R1には、キャパシタC1及び抵抗R2の直列回路が並列に接続されている。抵抗R1,R2夫々は第1抵抗及び第2抵抗として機能する。温度検出部24もマイコン25に接続されている。
【0029】
スイッチ20において、ゲートの電圧値が一定値以上である場合、ドレイン及びソース間を電流が流れることが可能である。このとき、スイッチ20はオンである。スイッチ20において、ゲートの電圧値が一定値未満である場合、ドレイン及びソース間を電流が流れることはない。このとき、スイッチ20はオフである。制御回路21は、スイッチ20におけるゲートの電圧値を調整することによって、スイッチ20をオン又はオフに切替える。
【0030】
制御回路21には、スイッチ20のオンへの切替えを指示するオン信号と、スイッチ20のオフへの切替えを指示するオフ信号とがマイコン25から入力される。更に、制御回路21には、接地電位を基準とした電流出力回路22の出力端の電圧値、即ち、抵抗回路23の両端間の両端電圧値が入力される。
【0031】
制御回路21は、抵抗回路23の両端電圧値が、予め設定されている基準電圧値未満である場合において、マイコン25からオン信号が入力されたとき、スイッチ20をオンに切替える。これにより、電線12を介してバッテリ10から負荷11に給電され、負荷11は作動する。
制御回路21は、同様の場合において、マイコン25からオフ信号が入力されたとき、スイッチ20をオフに切替える。これにより、バッテリ10から負荷11への給電が遮断され、負荷11は動作を停止する。
【0032】
制御回路21は、抵抗回路23の両端電圧値が基準電圧値以上である場合、マイコン25から制御回路21に入力されている信号とは無関係にスイッチ20をオフに切替える。これにより、バッテリ10から負荷11への給電が遮断され、負荷11は動作を停止する。
【0033】
以上のように、給電制御装置13では、制御回路21が行うスイッチ20の切替えによって、電線12を介したバッテリ10から負荷11への給電が制御される。制御回路21はスイッチ制御部として機能する。
【0034】
電流出力回路22は出力端から電流を抵抗回路23に出力し、抵抗回路23には電流出力回路22が出力端から出力した電流が流れる。電流出力回路22が出力する電流値は電線電流値に比例する。具体的には、電流出力回路22が出力する電流値は、電線電流値を所定数、例えば1000で除算した値である。従って、電線12を流れる電流値の上昇と共に、電流出力回路22が出力する電流値も上昇する。
【0035】
電流出力回路22が出力端から電流を出力している場合、即ち、電線12に電流が流れている場合、抵抗回路23において、電流は抵抗R1を流れる。同様の場合において、キャパシタC1の両端間の電圧値が抵抗R1の両端間の電圧値未満であるとき、電流は、抵抗R2及びキャパシタC1の順に流れる。これにより、キャパシタC1に電力が蓄えられ、キャパシタC1の両端間の電圧値が上昇する。同様の場合において、キャパシタC1の両端間の電圧値が抵抗R1の両端間の電圧値と一致しているとき、電流はキャパシタC1及び抵抗R2の直列回路に流れることはない。
【0036】
電流出力回路22が出力端から電流を出力していない場合、即ち、電線12に電流が流れていない場合、抵抗回路23のキャパシタC1は放電し、キャパシタC1の両端間の電圧値は低下する。このとき、電流は、キャパシタC1の一端から抵抗R1,R2の順に流れ、キャパシタC1の他端に戻る。
抵抗回路23の両端電圧値は、制御回路21だけではなく、マイコン25にも入力される。
【0037】
抵抗回路23の抵抗値は、キャパシタC1に蓄えられている電力に依存する。キャパシタC1に電力が蓄えられていない場合、キャパシタC1は導線のように作用するため、抵抗回路23の抵抗値は、並列に接続された抵抗R1,R2の合成抵抗値である。並列に接続された抵抗R1,R2の合成抵抗値は、抵抗回路23の抵抗値の最小値である。
【0038】
キャパシタC1に蓄えられている電力の上昇と共に、抵抗回路23の抵抗値は上昇する。キャパシタC1の両端間の電圧値が抵抗R1の両端間の電圧値が一致している場合、キャパシタC1に電力が更に蓄えられることはなく、電流出力回路22が出力した全ての電流は抵抗R1を流れる。このとき、抵抗回路23の抵抗値は抵抗R1の抵抗値である。抵抗回路23の抵抗値の最大値は抵抗R1の抵抗値である。
【0039】
図2は抵抗回路23の作用の説明図である。
図2には、スイッチ20のオン及びオフの推移と、電線電流値の推移と、電線電流値の電流閾値の推移とが示されている。
図2において横軸は時間を表す。電流閾値は、抵抗回路23の両端電圧値が基準電圧値である場合において電線12を流れている電流値である。従って、電線電流値が電流閾値未満である場合、抵抗回路23の両端電圧値は基準電圧値未満であり、電線電流値が電流閾値以上である場合、抵抗回路23の両端電圧値は基準電圧値以上である。
【0040】
前述したように、抵抗回路23の両端電圧値が基準電圧値以上となった場合、制御回路21はスイッチ20をオフに切替える。電流出力回路22が出力する電流値は、電線電流値を所定数で除算した値である。従って、電線電流値の電流閾値は、(基準電圧値)×(所定数)/(抵抗回路23の抵抗値)で表される。このため、抵抗回路23の抵抗値が小さい程、電流閾値は高い。
【0041】
制御回路21がスイッチ20をオフに維持しており、かつ、キャパシタC1に電力が蓄えられていない場合、抵抗回路23の抵抗値は、前述したように、並列に接続された抵抗R1,R2の合成抵抗値であり、最小値である。このため、電流閾値は最も大きい。
【0042】
制御回路21がスイッチ20をオフからオンに切替えた場合、電流が、電線12を介してバッテリ10から負荷11に流れ、電流出力回路22から電流が抵抗回路23に出力される。これにより、抵抗回路23のキャパシタC1に電力が蓄えられ、抵抗回路23の抵抗値が上昇し、電流閾値が低下する。
【0043】
負荷11の抵抗値は、前述したように、電流の通流が開始される時点において非常に小さく、通流時間が長くなるにつれて上昇するので、制御回路21がスイッチ20をオフからオンに切替えた直後において、電線12を突入電流が流れ、電線12を流れる電流値が一時的に上昇する。制御回路21がスイッチ20をオフからオンに切替えた直後においては、電流閾値は十分に大きい。このため、電線12を突入電流が流れた場合であっても、抵抗回路23の両端電圧値が基準電圧値以上となることはなく、制御回路21はスイッチ20をオフに切替えることはない。このように、制御回路21がスイッチ20をオフからオンに切替えた直後において突入電流が流れることが許容される。
【0044】
前述したように、抵抗回路23において、抵抗R1の両端間の電圧値がキャパシタC1の電圧値と一致している場合、電流は抵抗R1のみを流れる。このとき、抵抗回路23の抵抗値は、抵抗R1の抵抗値と一致しており、最大値である。抵抗回路23の抵抗値が抵抗R1の抵抗値と一致している場合、電流閾値は、最も小さく、突入電流の電流値未満である。電線電流値が電流閾値以上となった場合に制御回路21はスイッチ20をオフに切替える。
【0045】
例えば、抵抗R1,R2夫々の抵抗値が4kΩであり、基準電圧値及び所定数が5V及び1000であると仮定する。キャパシタC1に電力が蓄えられていない場合、抵抗回路23の抵抗値は、並列に接続された抵抗R1,R2の合成抵抗値であるので、2kΩである。このとき、電流閾値は2.5A(=5×1000/2000)である。抵抗R1の両端間の電圧値がキャパシタC1の両端間の電圧値と一致している場合、抵抗回路23の抵抗値は、抵抗R1の抵抗値であるので、4kΩである。このとき、電流閾値は1.25A(=5×1000/4000)である。
【0046】
従って、キャパシタC1に電力が蓄えられていない状態でスイッチ20がオフからオンに切替わった場合、時間の経過と共に、電流閾値が2.5Aから1.25Aに徐々に低下する。電流閾値が1.25Aとなった後においては、スイッチ20がオフに切替わらない限り、電流閾値は低下することなく、1.25Aに維持される。
【0047】
このように、電線12に突入電流が流れた後においては、スイッチ20がオンからオフに切替わらない限り、電流閾値は最小値に維持されている。突入電流が電線12を流れた後において電流閾値が低下するので、過電流による電線の発煙及び発火が確実に防止される。
スイッチ20がオンからオフに切替わった後、電線電流値はゼロAとなり、キャパシタC1は放電する。キャパシタC1に蓄えられている電力が低下するにつれて、電流閾値が上昇する。
【0048】
以下に、キャパシタC1の静電容量u1、及び、抵抗R1,R2夫々の抵抗値r1,r2の設定について説明する。
t秒間の電線12への通流によって発煙する電流値Ifは下記式で算出される。
【0050】
定数について説明する。括弧内に定数の単位が示されている。Tfは電線12が発煙する発煙温度(℃)であり、Taは、電線12の周囲温度(℃)である。Rwは電線12の電線抵抗(Ω)であり、Rthは電線12の電線熱抵抗(℃/W)である。τuは電線12の温度上昇に係る時定数(s)である。
【0051】
また、t秒間の電線12への通流によって、抵抗回路23の両端電圧値が基準電圧値Vrとなる電流値Ithは、キルヒホッフの法則に基づいて算出され、下記式で表される。Nは前述した所定数である。
【0053】
電流値Ithが電流値If未満である範囲内において、ゼロから所定時間までの時間tについて、電流値Ithが電流値Ifにできるだけ近くなるように、静電容量u1及び抵抗値r1,r2を設定すればよい。所定時間は、例えば、スイッチ20がオフからオンに切替わってから電線電流値が安定するまでの時間である。
【0054】
図1に示す温度検出部24は、温度検出部24はサーミスタを用いて構成される。温度検出部24は電線12の周囲温度を検出し、検出した周囲温度を示す温度情報をマイコン25に出力する。電線12の周囲温度は、スイッチ20近傍の温度、又は、給電制御装置13内の温度等である。
【0055】
前述したように、マイコン25には、抵抗回路23の両端電圧値と、温度情報とが入力される。更に、マイコン25には、作動信号及び停止信号が入力される。マイコン25は、マイコン25に入力されている信号と、抵抗回路23の両端電圧値と、温度検出部24から入力された温度情報とに基づいて、制御回路21にオン信号又はオフ信号を出力する。
前述したように、制御回路21は、抵抗回路23の両端電圧値が基準電圧値未満である場合において、マイコン25からオン信号が入力されたとき、スイッチ20をオンに切替え、マイコン25からオフ信号が入力されたとき、スイッチ20をオフに切替える。
【0056】
マイコン25は、入力部30,31,32、出力部33、A(Analog)/D(Digital)変換部34、記憶部35及び制御部36を有する。入力部30,32、出力部33、A/D変換部34、記憶部35及び制御部36はバス37に接続されている。A/D変換部34は、バス37の他に、入力部31に接続されている。入力部31は、更に、電流出力回路22の出力端に接続されている。入力部32は、更に、温度検出部24に接続されている。出力部33は、更に、制御回路21に接続されている。
【0057】
入力部30には作動信号及び停止信号のいずれかが入力されている。入力部30は、入力されている信号を制御部36に通知する。
入力部31には、抵抗回路23におけるアナログの両端電圧値が入力される。入力部31は、入力されたアナログの両端電圧値をA/D変換部34に出力する。A/D変換部34は、入力部31から入力されたアナログの両端電圧値をデジタルの両端電圧値に変換する。A/D変換部34が変換したデジタルの両端電圧値は、A/D変換部34から制御部36によって取得される。
【0058】
入力部32には温度検出部24から温度情報が入力される。温度検出部24から入力部32に入力された温度情報は、入力部32から制御部36によって取得される。
出力部33は、制御部36の指示に従って、オン信号又はオフ信号を制御回路21に出力する。
【0059】
記憶部35は不揮発性メモリである。記憶部35には制御プログラムが記憶されている。制御部36は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を有し、記憶部35に記憶されている制御プログラムを実行することによって制御処理を実行する。
【0060】
制御部36は、抵抗回路23の両端電圧値と、温度検出部24から入力された温度情報が示す電線12の周囲温度とに基づいて電線温度を算出する。電線温度の算出では、制御部36は、電線温度と、温度検出部24から入力された温度情報が示す電線12の周囲温度Taとの温度差ΔTwを周期的に算出する。
【0061】
具体的には、制御部36は、(抵抗回路23の両端電圧値)×(所定数)/(抵抗R1の抵抗値)を算出することによって電線電流値Iwを算出する。抵抗回路23の抵抗値が抵抗R1
の抵抗値未満である期間は、スイッチ20がオフからオンとなった直後の短い期間であり、電線温度の算出期間よりも十分に短い。このため、電線温度の算出では、抵抗回路23の抵抗値を抵抗R1の抵抗値に近似してもよい。制御部36は、前回算出した先行温度差ΔTpと、電線電流値Iwと、電線12の周囲温度Taとを以下に示す演算式(1),(2)に代入することによって、温度差ΔTwを算出する。
ΔTw=ΔTp×exp(−Δt/τr)+Rth×Rw
×Iw
2 ×(1−exp(−Δt/τr))・・・(1)
Rw=Ro×(1+κ×(Ta+ΔTp−To))・・・(2)
【0062】
演算式(1),(2)で用いられている変数及び定数を説明する。変数及び定数の説明では、変数又は定数の単位も併せて示している。ΔTw、ΔTp、Ta、Iw、Rw及びRth夫々は、前述したように、算出した温度差(℃)、先行温度差(℃)、電線12の周囲温度(℃)、算出した電線電流値(A)、電線12の電線
抵抗(Ω)及び電線12の電線熱抵抗(℃/W)である。Δtは温度差ΔTwを算出する周期(s)である。τrは電線12の電線放熱時定数(s)である。
【0063】
Toは所定の温度(℃)であり、Roは温度Toにおける電線抵抗(Ω)である。κは電線12の電線抵抗温度係数(/℃)である。温度差ΔTw、先行温度差ΔTp、電線電流値Iw及び周囲温度Taは変数であり、周期Δt、電線放熱時定数τr、電線熱抵抗Rth、電線抵抗Ro、電線抵抗温度係数κ及び温度Toは、予め設定されている定数である。
【0064】
演算式(1)の第1項の値は、周期Δtが長い程、低下するので、演算式(1)の第1項は電線12の放熱を表す。また、演算式(1)の第2項の値は、周期Δtが長い程、上昇するので、演算式(1)の第2項は電線12の発熱を表す。
【0065】
制御部36は、算出した温度差ΔTwに、温度検出部24から入力された温度情報が示す電線12の周囲温度Taを加算することによって、電線温度を算出する。制御部36は温度算出部として機能する。
先行温度差ΔTpは記憶部35に記憶されており、制御部36によって記憶部35から読み出される。また、記憶部35に記憶されている先行温度差ΔTpは制御部36によって書き換えられる。
【0066】
図3は、制御部36が実行する制御処理の手順を示すフローチャートである。制御処理には、温度差ΔTwに電線12の周囲温度Taを加算することによって行う電線温度の算出が含まれる。制御部36は、算出した電線温度が温度閾値以上とならない限り、制御処理を周期的に実行する。
【0067】
制御部36は、まず、A/D変換部34から抵抗回路23の両端電圧値を取得する(ステップS1)。ステップS1で取得した両端電圧値は、ステップS1が実行された時点における抵抗回路23の両端電圧値に略一致する。次に、制御部36は、(ステップS1で取得した両端電圧値)×(所定数)/(抵抗R1の抵抗値)を算出することによって電線電流値を算出する(ステップS2)。
【0068】
制御部36は、ステップS2を実行した後、記憶部35から前回算出した先行温度差ΔTpを読み出し(ステップS3)、温度検出部24から入力部32に入力された温度情報を入力部32から取得する(ステップS4)。制御部36が温度検出部24から取得した温度情報が示す電線12の周囲温度Taは、制御部36が温度情報を取得した時点に温度検出部24が検出した電線12の周囲温度Taと略一致する。
【0069】
次に、制御部36は、ステップS2で算出した電線電流値Iwと、ステップS3で読み出した先行温度差ΔTpと、ステップS4で取得した温度情報が示す電線12の周囲温度Taとを前述した演算式(1),(2)に代入することによって、電線温度、及び、電線12の周囲温度Taの温度差ΔTwを算出する(ステップS5)。ここで、周期Δtは、繰り返し実行される制御処理の周期である。前述したように、制御処理は周期的に実行されるので、温度差ΔTwは、制御部36によって時系列的に算出される。
【0070】
次に、制御部36は、ステップS5で算出した温度差ΔTwを先行温度差ΔTpとして記憶部35に記憶する(ステップS6)。ステップS6で記憶された先行温度差ΔTpは、次に実行されるステップS5で用いられる。
【0071】
制御部36は、ステップS6を実行した後、ステップS5で算出した温度差に、ステップS4で取得した温度情報が示す電線12の周囲温度を加算することによって電線温度を算出する(ステップS7)。次に、制御部36は、ステップS7で算出した電線温度が温度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS8)。温度閾値は、一定値であり、記憶部35に予め記憶されている。
【0072】
制御部36は、電線温度が温度閾値以上であると判定した場合(S8:YES)、出力部33に指示して、オフ信号を制御回路21に出力させる(ステップS9)。これにより、制御回路21は、スイッチ20をオフに切替え、バッテリ10から負荷11への給電が遮断される。
【0073】
以上のように、制御回路21は、制御部36が算出した電線温度が温度閾値以上となった場合にスイッチ20をオフに切替える。このため、電線12を流れる電線電流値が電流閾値未満であっても、電線温度が温度閾値以上となった場合にスイッチ20がオンからオフに切替わるので、電線12の発煙及び発火がより確実に防止される。
【0074】
制御部36は、ステップS9を実行した後、制御処理を終了する。その後、所定の条件が満たされるまで、例えば、入力部30に停止信号が入力されて再び作動信号が入力されるまで、制御部36は制御処理を再び実行することはない。
【0075】
制御部36は、電線温度が温度閾値未満であると判定した場合(S8:NO)、入力部30に作動信号が入力されているか否かを判定する(ステップS10)。制御部36は、入力部30に作動信号が入力されていると判定した場合(S10:YES)、出力部33に指示して、制御回路21にオン信号を出力させる(ステップS11)。これにより、制御回路21はスイッチ20をオンに切替え、バッテリ10から負荷11への給電が開始される。
【0076】
制御部36は、入力部30に作動信号が入力されていない、即ち、入力部30に停止信号が入力されていると判定した場合(S10:NO)、出力部33に指示して、制御回路21にオフ信号を出力させる(ステップS12)。これにより、制御回路21はスイッチ20をオフに切替え、バッテリ10から負荷11への給電が遮断される。
制御部36は、ステップS11又はステップS12を実行した後、制御処理を終了する。制御部36は、次の周期が到来した場合、再び制御処理を実行する。
【0077】
(実施の形態2)
図4は実施の形態2における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。
以下では、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1と共通しているため、実施の形態1と共通する構成部には実施の形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0078】
実施の形態2における電源システム1も車両に好適に搭載されている。バッテリ10、負荷11、電線12及び給電制御装置13は実施の形態
1と同様に接続されている。
【0079】
実施の形態2における給電制御装置13は、実施の形態1における給電制御装置13が備える構成部に加えて、平滑回路26を有する。バッテリ10、負荷11、電線12、スイッチ20、制御回路21、電流出力回路22及び抵抗回路23は実施の形態1と同様に接続されている。マイコン25は、制御回路21及び温度検出部24に各別に接続されると共に、スイッチ20のドレインに接続されている。電流出力回路22の出力端は、更に、平滑回路26に接続されている。平滑回路26は、電流出力回路22の出力端の他に、マイコン25に接続されている。
【0080】
制御回路21、電流出力回路22及び抵抗回路23夫々は実施の形態1と同様に作用するので、制御回路21がスイッチ20をオフからオンに切替えた直後において突入電流が流れることが許容される。また、突入電流が電線12を流れた後においては電流閾値が低下するので、過電流による電線の発煙及び発火が確実に防止される。
【0081】
平滑回路26は、抵抗回路23の両端間の電圧を平滑する。平滑回路26が平滑した平滑電圧値はマイコン25の入力部31に入力される。
【0082】
図5は平滑回路26の回路図である。平滑回路26は、オペアンプ50、キャパシタC3及び抵抗R4を有する。オペアンプ50は、プラス端子、マイナス端子及び出力端子を有する。オペアンプ50のプラス端子は電流出力回路22の出力端に接続されている。オペアンプ50の出力端子は、オペアンプ50のマイナス端子と、抵抗R4の一端とに接続されている。抵抗R4の他端は、マイコン25と、キャパシタC3の一端とに接続されている。キャパシタC3の他端は接地されている。
【0083】
オペアンプ50は、所謂ボルテージフォロワー回路として機能する。オペアンプ50は、プラス端子に入力された抵抗回路23の両端間の電圧を、出力端子からそのまま出力する。オペアンプ50のプラス端子における入力インピーダンスは非常に高いため、オペアンプ50の出力端子に接続されている回路の作用が、オペアンプ50のプラス端子に接続されている回路に影響することはない。
【0084】
キャパシタC3及び抵抗R4によって構成されるCRフィルタは、オペアンプ50の出力端子から出力された電圧、即ち、抵抗回路23の両端間の電圧を平滑する。キャパシタC3及び抵抗R4によって構成されるCRフィルタは、平滑した平滑電圧値をマイコン25に出力する。
キャパシタC3及び抵抗R4によって構成されるCRフィルタのCR時定数は、抵抗回路23のキャパシタC1及び抵抗R2のCR時定数よりも大きい。負荷
11が作動している場合において、平滑電圧値は、スイッチ20のオン及びオフへの切替えによって大きく変動することはなく、略一定である。負荷
11が動作を停止している場合、即ち、スイッチ20のオフが維持されている場合、平滑電圧値はゼロVである。
【0085】
図4に示すマイコン25には、スイッチ20のドレインから、バッテリ10の出力電圧値(以下、バッテリ電圧値という)が入力される。マイコン25は、外部から入力されている信号、バッテリ電圧値、負荷電圧値、平滑電圧値及び温度情報に基づいて、制御回路21にオン信号又はオフ信号を出力する。
【0086】
実施の形態2におけるマイコン25は、実施の形態1におけるマイコン25が有する構成部に加えて、入力部38及びA/D変換部39を有する。入力部30,31,32、出力部33、A/D変換部34、記憶部35、制御部36及びバス37は実施の形態1と同様に接続されている。入力部31,32及び出力部33夫々は、更に、平滑回路26、温度検出部24及び制御回路21に接続されている。
【0087】
バス37には、更に、A/D変換部39が接続されている。A/D変換部39は、バス37の他に、入力部38に接続されている。入力部38は、更に、スイッチ20のドレインに接続されている。
【0088】
入力部31には、平滑回路26からアナログの平滑電圧値が入力される。入力部31は、入力されたアナログの平滑電圧値をA/D変換部34に出力する。A/D変換部34は、入力部31から入力されたアナログの平滑電圧値をデジタルの平滑電圧値に変換する。A/D変換部34が変換したデジタルの平滑電圧値は、A/D変換部34から制御部36によって取得される。
【0089】
入力部38には、スイッチ20のドレインからアナログのバッテリ電圧値が入力される。入力部38は、入力されたアナログのバッテリ電圧値をA/D変換部39に出力する。A/D変換部39は、入力部38から入力されたアナログのバッテリ電圧値をデジタルのバッテリ電圧値に変換する。A/D変換部39が変換したデジタルのバッテリ電圧値は、A/D変換部39から制御部36によって取得される。
【0090】
制御部36は、実施の形態1と同様に、記憶部35に記憶されている制御プログラムを実行することによって、制御処理と、スイッチ20のオン及びオフに関するPWM(Pulse Width Modulation)制御を制御回路21に行わせることによって負荷11に給電する給電処理とを実行する。
【0091】
給電処理では、制御部36は、出力部33に指示して、オン信号及びオフ信号を交互に制御回路21に出力させる。これにより、抵抗回路23の両端電圧値が基準電圧未満である場合においては、制御回路21はスイッチ20のオン及びオフへの切替えを交互に行う。給電処理では、制御部36は、出力部33に出力させている信号に関して、オン信号からオフ信号への切替え、又は、オフ信号からオン信号への切替えを周期的に行う。
【0092】
制御部36はA/D変換部39からバッテリ電圧値を取得する。制御部36がA/D変換部39から取得したバッテリ電圧値は、制御部36がバッテリ電圧値を取得した時点におけるバッテリ電圧値と略一致する。制御部59は、A/D変換部39から取得したバッテリ電圧値から、スイッチ20がオンに維持されているオン期間が1周期中に占める割合、即ち、デューティを算出する。デューティはゼロ以上1以下である。デューティが高い程、スイッチ20のオン期間が長いため、負荷11に印加される電圧値の平均値は高い。デューティは、負荷11に印加される電圧値の平均値をバッテリ電圧値で除算することによって算出される。
【0093】
記憶部
35には、負荷11に印加されるべき電圧値の平均値が目標電圧値として予め記憶されている。制御部36は、目標電圧値を、A/D変換部39から取得したバッテリ電圧値で除算することによってデューティを算出する。制御部36は、算出したデューティを記憶部
35に記憶する。制御部36は、記憶部
35に記憶されているデューティに従って、オン信号及びオフ信号を出力部33に出力させる。これにより、抵抗回路23の両端電圧値が基準電圧未満である場合においては、制御回路21は、スイッチ20のオン及びオフへの切替えを交互に繰り返す。制御回路21がこの切替えを行うことによって、バッテリ10から負荷11へ給電される。
【0094】
給電処理では、制御部36は、スイッチ20のオン及びオフの切替えに係るデューティの算出を定期的に実行し、記憶部
35に記憶されているデューティを定期的に更新している。制御部36は、制御処理及び給電処理を並行して実行する。
【0095】
実施の形態2における制御処理においても、実施の形態1と同様に、制御部36は電線温度を算出する。実施の形態2における制御処理において、制御部36は、記憶部
35に記憶されているデューティと、A/D変換部34から取得した平滑電圧値と、温度検出部24から入力部32に入力された温度情報が示す電線12の周囲温度と、前回算出した先行温度差とに基づいて、
電線温度と、温度検出部24が検出した電線12の周囲温度との温度差を周期的に算出する。
【0096】
以下では、
電線温度と、電線12の周囲温度との温度差の算出に用いられる式について説明する。
図6は、負荷11を作動させている場合における電線電流値Iwの波形図である。
図6において横軸は時間を表す。
図6には実際の電線電流値Iwが示されている。
給電処理が実行されて負荷11が作動している場合、スイッチ20のオン及びオフの切替えが周期的に行われているため、電線電流値Iwの波形はパルス状をなす。各パルスは矩形状をなし、各パルスの電流値は同じであり、この電流値を以下では電流値Imと表す。
【0097】
なお、スイッチ20がオフからオンに切替わった場合、突入電流が電線12に流れるが、スイッチ20のオン期間に対して突入電流が流れている期間は十分に短く、突入電流の電流値を電流値Imと近似することが可能である。このため、突入電流の図示を省略している。電流値Imは、突入電流が電線12を流れた後に収束する電流値である。
【0098】
前述した演算式(1)におけるIw
2 は、電流値Imと、スイッチ20のオン及びオフの切替えに係るデューティDとを用いて以下のように表される。
Iw
2 =Im
2 ×D・・・(3)
【0099】
電線電流値Iwの平均値はIm×Dで表される。平滑回路26は抵抗回路23の両端間の電圧を平滑するので、平滑電圧値Vsは電線電流値Iwの平均値に比例する。このため、以下の式(4)が成り立つ。
Im×D=α×Vs・・・(4)
ここで、αは定数である。
【0100】
式(3),(4)から電流値Imを消去すると以下の式(5)が導かれる。
Iw
2 =α
2 ×Vs
2 /D・・・(5)
演算式(1)及び式(5)から電線電流値Iwを消去すると、以下の演算式(6)が導出される。
ΔTw=ΔTp×exp(−Δt/τr)+α
2 ×Rth
×Rw×Vs
2 ×(1−exp(−Δt/τr))/D・・・(6)
【0101】
α
2 ×Rthは定数であるため、演算式(6)においてα
2 ×Rthを定数Aに置き換えると以下の演算式(7)が導出される。
ΔTw=ΔTp×exp(−Δt/τr)+A×Rw
×Vs
2 ×(1−exp(−Δt/τr))/D・・・(7)
実施の形態2における電線温度の算出では、演算式(2),(7)が用いられる。平滑電圧値Vsの単位はボルト(V)である。デューティDは比であるため、デューティDの単位はない。また、負荷11が動作を停止している場合、前述したように平滑電圧値VsはゼロVであるので、周期Δtが経過する都度、温度差ΔTwは低下する。
【0102】
図7は、制御部36が実行する制御処理の手順を示すフローチャートである。制御部36は、実施の形態1と同様に、算出した電線温度が温度閾値以上とならない限り、制御処理を周期的に実行する。
【0103】
まず、制御部36は、A/D変換部34から平滑電圧値を取得する(ステップS21)。制御部36が取得した平滑電圧値は、制御部36が平滑電圧値を取得した時点で平滑回路から出力された平滑電圧値に略一致する。次に、制御部36は、記憶部35から、スイッチ20のオン及びオフの切替えに係るデューティD、及び、前回算出した先行温度差ΔTpを読み出し(ステップS22)、温度検出部24から入力部32に入力された温度情報を入力部32から取得する(ステップS23)。
【0104】
次に、制御部36は、ステップS21で取得した平滑電圧値Vsと、ステップS22で読出したデューティD及び先行温度差ΔTpと、ステップS23で取得した温度情報が示す電線12の周囲温度Taとを演算式(2),(7)に代入することによって、電線温度、及び、電線12の周囲温度Taの温度差ΔTwを算出する(ステップS24)。ここで、周期Δtは、繰り返し実行される制御処理の周期である。前述したように、制御処理は周期的に実行されるので、温度差ΔTwは、制御部36によって時系列的に算出される。制御部36は温度差算出部としても機能する。
【0105】
次に、制御部36は、ステップS24で算出した温度差ΔTwを先行温度差ΔTpとして記憶部35に記憶する(ステップS25)。ステップS25で記憶された先行温度差ΔTpは、次に実行されるステップS24で用いられる。制御部36は、ステップS25を実行した後、ステップS24で算出した温度差に、ステップS23で取得した温度情報が示す電線12の周囲温度を加算することによって電線温度を算出する(ステップS26)。
【0106】
次に、制御部36は、ステップS26で算出した電線温度が温度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS27)。制御部36は、電線温度が温度閾値以上であると判定した場合(S27:YES)、給電処理を終了する(ステップS28)。給電処理は、後述するように、入力部30に作動信号が入力された場合に制御部36によって開始される。制御部36は、ステップS28を実行した後、出力部33に指示して、オフ信号を制御回路21に出力させる(ステップS29)。これにより、制御回路21はスイッチ20をオフに切替え、バッテリ10から負荷11への給電が遮断される。
なお、制御部36は、ステップS28を実行する時点で給電処理が実行されていなかった場合、ステップS28を実行することなく、ステップS29を実行する。
【0107】
制御部36は、ステップS29を実行した後、制御処理を終了する。制御部36はステップS29を実行して制御処理を終了した場合、所定の条件が満たされるまで、制御部36は制御処理を再び実行することはない。
【0108】
制御部36は、電線温度が温度閾値未満であると判定した場合(S27:NO)、入力部30に作動信号が入力されているか否かを判定する(ステップS30)。制御部36は、入力部30に作動信号が入力されていると判定した場合(S30:YES)、給電処理を開始する(ステップS31)。給電処理では、前述したように、制御回路21はスイッチ20のオン及びオフへの切替えを交互に繰り返し、バッテリ10から負荷11に給電される。制御部36は、ステップS31を実行した後、制御処理を終了する。制御部36は、ステップS31を実行して制御処理を終了した場合においては、次の周期が到来したとき、再び制御処理を実行する。
なお、制御部36は、ステップS28を実行する時点で給電処理が実行されている場合、ステップS31を実行することなく、制御処理を終了する。
【0109】
制御部36は、入力部30に作動信号が入力されていない、即ち、入力部30に停止信号が入力されていると判定した場合(S30:NO)、給電処理を終了し(ステップS32)、出力部33に指示して、オフ信号を制御回路21に出力させる(ステップS33)。これにより、制御回路21はスイッチ20をオフに切替え、バッテリ10から負荷11への給電が遮断される。
なお、制御部36は、ステップS32を実行する時点で給電処理が実行されていなかった場合、ステップS32を実行することなく、ステップS33を実行する。
【0110】
制御部36は、ステップS33を実行した後、制御処理を終了する。制御部36は、ステップS33を実行して制御処理を終了した場合においては、次の周期が到来したとき、再び制御処理を実行する。
【0111】
以上のように構成された実施の形態2における給電制御装置
13においては、電線電流値が電流閾値未満であっても、電線温度が温度閾値以上となった場合にスイッチ20がオンからオフに切替わるので、電線12の発煙及び発火をより確実に防止することができる。
前述したように、制御部36は、平滑回路26が平滑した平滑電圧値を演算式(2),(7)に代入することによって、電線温度と、電線12の周囲温度との温度差を算出する。このため、スイッチ20のオン及びオフへの切替えが交互に繰り返されている場合であっても制御部36は適切な電線温度を算出することができる。
【0112】
なお、実施の形態2において、スイッチ20のオン及びオフの切替えに係るデューティを調整する構成は、バッテリ電圧値に基づいて調整する構成に限定されず、例えば、スイッチ20から負荷11に出力される電圧値に基づいて調整する構成であってもよい。更に、スイッチ20のオン及びオフの切替えに係るデューティは一定値であってもよい。
【0113】
また、電線温度を算出する構成は、電線温度と電線12の周囲温度との温度差を算出し、算出した温度差に電線12の周囲温度を
加算する構成に限定されず、平滑回路26が平滑した平滑電圧値に基づいて電線温度を算出する構成であればよい。
更に、スイッチ20は、Nチャネル型のFETに限定されず、Pチャネル型のFET、又は、バイポーラトランジスタ等であってもよい。
【0114】
開示された実施の形態1,2は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。