特許第6790382号(P6790382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790382
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】電気集塵装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/36 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   B03C3/36 Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-41824(P2016-41824)
(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-154112(P2017-154112A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】横谷 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】矢野 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】泉 浩一郎
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−244423(JP,A)
【文献】 実開昭63−098737(JP,U)
【文献】 特開2015−044172(JP,A)
【文献】 特許第110845(JP,C2)
【文献】 実開昭61−029854(JP,U)
【文献】 特開2000−167433(JP,A)
【文献】 実開平05−040870(JP,U)
【文献】 特開平09−276734(JP,A)
【文献】 特開昭58−193748(JP,A)
【文献】 特開昭60−054747(JP,A)
【文献】 実開昭61−018447(JP,U)
【文献】 特開昭63−171622(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0224081(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00 − 11/00
G01N 15/00 − 15/14
B01D 53/34 − 53/73
53/74 − 53/85
53/92
53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の集塵ユニットと、前記集塵ユニットの各々に排出ガスを供給するダクトと、前記ダクトの分岐部を通過する前記排出ガスの向きを変えて前記集塵ユニットのそれぞれに対する前記排出ガスの流量を調整する整流装置とを有する電気集塵装置の調整方法であって、
前記集塵ユニットの入口および出口を通過した前記排出ガスのダスト濃度を検出することで、集塵性能が低下した前記集塵ユニットを判別し、
前記集塵性能が低下した前記集塵ユニットについて、当該集塵ユニットへの前記排出ガスが減るように前記整流装置が前記排出ガスの向きを変える角度を変更する動作を前記ダスト濃度が集塵性能の低下を示さなくなるまで繰り返すことを特徴とする電気集塵装置の調整方法。
【請求項2】
請求項に記載した電気集塵装置の調整方法において、
前記集塵ユニットのいずれかで電極異常が検知された際に、異常が検知された前記集塵ユニットに向かう前記排出ガスの流れを減らすことを特徴とする電気集塵装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気集塵装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所あるいは製鉄所など、石炭を燃料とする熱供給システムを用いる事業所では、排出ガスに含まれるダストを除去するために、電気集塵装置を有する排出ガス処理システムが用いられる。
電気集塵装置では、排出ガスが通される容器内に電極を配置し、電極で静電吸着したダストを下方のホッパに排出する構成が用いられる。
大規模な事業所では、前述した容器、電極およびホッパを有する集塵ユニットを、複数並列に設置し、ダクトで各集塵ユニットに排気ガスを分配し、大流量の排出ガスを処理している(特許文献1参照)。
【0003】
電気集塵装置においては、稼働の継続により、電極や流路にダストが付着・堆積し、集塵性能が低下することがある。
その対策として、集塵ユニットの内部を複数の経路に分割し、一部の経路をダンパで閉鎖して経路中の堆積ダスト等の清掃を行うとともに、他の経路ではダンパを全開にして集塵動作を継続している。なお、清掃を行わない状況では、全てのダンパを全開にして各経路で集塵動作を行う(特許文献2参照)。
【0004】
電気集塵装置において、集塵ユニットに接続される排出ガスのダクトには、設置状況に応じて折れ曲がり等が避けられない。そして、折れ曲がったコーナー部で乱流を生じ、処理効率の低下や排出ガスの偏りを生じる可能性がある。
その対策として、ダクトのコーナー部に複数の整流板を配列し、通過する排出ガスを誘導することで、各ユニットへの排出ガスの流れを調整している(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013−522033号公報
【特許文献2】特開2010−22907号公報
【特許文献3】特開2001−232235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献3の整流板は、ダクトの形状やユニットの並び等に拘わらず、各ユニットへのガス供給量が均一になるように、その配置や数、向きが調整される。しかし、従来の整流板は、ダクト内に固定的に設けられているため、稼働に伴う気流の変動には対応できない。
【0007】
すなわち、いずれかの集塵ユニットでダストの堆積が大きくなった場合、流抵抗が増大してそのユニットでの排出ガス処理量が減少する。そして、一部のユニットでの処理量減少は、電気集塵装置全体としての処理量減少につながり、その事業所でのボイラの稼働が制約される原因になりかねない。つまり、複数の集塵ユニットの処理量が均一な状態がくずれ、その結果、全体の効率を低下させるという問題がある。
なお、前述した特許文献2のような清掃により、堆積ダストを除去できる。しかし、清掃作業の実施は定期的であり、次の清掃までの間、集塵ユニットの一部での処理量低下が避けられない。
【0008】
本発明の目的は、複数の集塵ユニットの一部で流抵抗が増大しても、各集塵ユニットの処理量を低下させることなく、各集塵ユニットへの排出ガスを均一化できる電気集塵装置の調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
気集塵装置は、複数の集塵ユニットと、前記集塵ユニットの各々に排出ガスを供給するダクトとを有し、前記ダクトは、前記排出ガスの供給源に接続される集合部と、前記集塵ユニットの各々に至る個別部と、前記集合部から分岐して前記個別部に接続される分岐部とを有し、前記分岐部に、通過する前記排出ガスの向きを変えて前記集塵ユニットに対する前記排出ガスの流量を調整する整流装置を有することを特徴とする。
【0010】
このような電気集塵装置では、整流装置により通過する排出ガスの向きを変えて集塵ユニットに対する排出ガスの流量を調整することができる。すなわち、特定の集塵ユニットの入口に向かう排出ガスを減らすことで、この集塵ユニットの排出ガス流量を減らすことができる。逆に、特定の集塵ユニットの入口に向かう排出ガスを増すことで、この集塵ユニットの排出ガス流量を増やすことができる。
このような整流装置により、集塵ユニットごとの排出ガスの増減調整を行うことができ、複数の集塵ユニットの一部で流抵抗が増大しても、複数の集塵ユニット間での流量の均一化を図ることができる。
この際、整流装置は排出ガスの流れの向きを変えるものであり、例えばダクトで流量を絞る場合のような流抵抗の増大を招くことが避けられる。従って、各集塵ユニットの処理量を低下させることなく、複数の集塵ユニット間での流量の均一化を図ることができる。
【0011】
気集塵装置において、前記整流装置は、通過する前記排出ガスと交差方向に配列されかつ向きを変更可能な複数の可動ベーンであることが好ましい。
このような電気集塵装置では、整流装置として複数の可動ベーンを用いることで、装置構成が簡単にでき、かつ流抵抗も抑制することができる。
【0012】
気集塵装置において、前記整流装置は、前記ダクトの外部に、前記排出ガスの向きを調節する操作ハンドルを有することが好ましい。
このような電気集塵装置では、作業者が操作ハンドルを用いて整流装置の向きを調整することができる。本発明による排出ガスの向きの調整は、常時行われる必要はなく、定期的な実施で十分である。つまり、制御装置による自動化までは必要がなく、作業者による調整であればよい。従って、整流装置の調整を作業者が行うようにすることで、必要十分な機能を確保しつつ、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0013】
気集塵装置において、前記整流装置は、前記集塵ユニットの入口および出口に、それぞれ通過する前記排出ガスのダスト濃度を検出するための検出部を有することが好ましい。
このような電気集塵装置では、集塵ユニットの入口および出口で、それぞれ通過する排出ガスのダスト濃度を検出することで、その濃度差から各々の集塵ユニットにおける現在の集塵性能を評価することができる。
【0014】
気集塵装置において、前記検出部は、前記集塵ユニットに設置されて外部からダスト濃度センサを導入可能な検出ホールであることが好ましい。
このような本発明では、ダスト濃度の検出間隔が数ヶ月と長い場合など、着脱式とすることで下記の効果が得られる。
通常時は検出ホールに蓋をしておき、検出時のみダスト濃度センサを導入してダスト濃度の検出を行うことができる。通常時は検出ホールに蓋をしておくことで、通常時の排出ガスの漏れ出しを防止できる。
検出時のみダスト濃度センサを導入するため、複数の検出部に同じダスト濃度センサを使い回しできる。検出部として、多数のダスト濃度センサを固定的に設ける場合には、ダスト濃度センサが多数必要になるが、使い回すことで設備コストを低減できる。
通常時はダスト濃度センサを外しておくため、ダストによるセンサの損傷などを防止できる。
【0015】
本発明の電気集塵装置の調整方法は、複数の集塵ユニットと、前記集塵ユニットの各々に排出ガスを供給するダクトと、前記ダクトの分岐部を通過する前記排出ガスの向きを変えて前記集塵ユニットのそれぞれに対する前記排出ガスの流量を調整する整流装置とを有する電気集塵装置の調整方法であって、前記集塵ユニットの入口および出口を通過した前記排出ガスのダスト濃度を検出することで、集塵性能が低下した前記集塵ユニットを判別し、前記集塵性能が低下した前記集塵ユニットについて、当該集塵ユニットへの前記排出ガスが減るように前記整流装置が前記排出ガスの向きを変える角度を変更する動作を前記ダスト濃度が集塵性能の低下を示さなくなるまで繰り返すことを特徴とする。
【0016】
このような本発明の調整方法によれば、集塵ユニットを通過した排出ガスのダスト濃度を検出することで、集塵性能が低下した集塵ユニットを判別することができ、この集塵ユニットへの排出ガスの供給量を減少させることができる。
集塵ユニットに対する排出ガス供給量の調整にあたっては、前述した電気集塵装置で説明した通りの効果を得ることができる。
【0017】
本発明の電気集塵装置の調整方法において、前記集塵ユニットのいずれかで電極異常が検知された際に、異常が検知された前記集塵ユニットに向かう前記排出ガスの流れを減らすことが好ましい。
このような本発明の調整方法では、集塵ユニットの電極異常に基づいて、この集塵ユニットの排出ガスの流量を減らすことができる。集塵ユニットに電極異常があった場合、電極での吸着不良により集塵されずに通過してしまうダスト量も増加するが、電極異常を検出した時点で対応すれば、通過した排出ガスのダスト濃度を検出するよりも早期に対応を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の集塵ユニットの一部で流抵抗が増大しても、各集塵ユニットの処理量を低下させることなく、各集塵ユニットへの排出ガスを均一化できる電気集塵装置の調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の電気集塵装置の一実施形態が設置された排出ガス処理システムを示すブロック図。
図2】前記実施形態の電気集塵装置を示す平面図。
図3】前記実施形態の整流装置を示す側面図。
図4】前記実施形態の集塵ユニットを示す平面図。
図5】前記実施形態の集塵ユニットを示す側面図。
図6】前記実施形態の検出ホールを示す側面図(A)、平面図(B)およびダスト濃度センサを設置した状態を示す側面図(C)。
図7】前記実施形態の電気集塵装置の調整方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔排出ガス処理システム1の全体構成〕
図1において、排出ガス処理システム1は、火力発電所あるいは製鉄所などに設置され、石炭を燃料として高温高圧の水蒸気を供給するボイラの排出ガスを処理するシステムである。
排出ガス処理システム1は、高温高圧の水蒸気を発生するボイラ2を有する。
ボイラ2の吸気側には、押込通風機3および空気予熱器4が接続されている。押込通風機3は、外気を吸入して空気予熱器4へ送る。空気予熱器4は、送られた外気を予熱してボイラ2へ送る。
【0021】
ボイラ2の排気側には、脱硝装置5、前述した空気予熱器4、電気集塵装置10、誘引通風機6、脱硫装置7および煙突8が接続されている。ボイラ2からの排出ガスは、脱硝装置5で脱硝処理されて空気予熱器4へ送られる。空気予熱器4は、ボイラ2からの排出ガスの熱を回収し、この熱を利用して前述した予熱を行う。空気予熱器4からの排出ガスは、電気集塵装置10で集塵され、誘引通風機6で更に駆動される。誘引通風機6からの排出ガスは、脱硫装置7で脱硫処理され、煙突8から外気に排出される。
【0022】
〔電気集塵装置10の構成〕
図2において、電気集塵装置10は、複数の集塵ユニット20と、集塵ユニット20の各々に排出ガスを供給するダクト30とを有する。
集塵ユニット20については、後に図4および図5を用いて詳述する。
【0023】
〔ダクト30の構成〕
ダクト30は、排出ガスの供給源(図1のボイラ2)に接続される集合部31と、集塵ユニット20の各々に至る個別部32と、集合部31から分岐して個別部32に接続される分岐部33とを有する。
分岐部33は、集合部31および個別部32に対して必ずしも明確な境界で区画されるものではないが、集合部31から拡開して複数の個別部32に接続される部分である。
【0024】
集合部31および個別部32は、それぞれ途中にコーナー部を有する。これらのコーナー部には、それぞれ流通する排出ガスの流通方向を調整するための整流板34が固定されている。
整流板34は、排出ガスの流れに交差する方向に配列された多数の固定ベーンで構成され、各固定ベーンはコーナー部の屈曲方向に倣って湾曲した断面形状とされている。これらの固定ベーンにより、コーナー部を通過する排出ガスの流れが、コーナー部に沿った流れとなるように誘導される。
【0025】
〔整流装置40の構成〕
ダクト30の分岐部33には、通過する排出ガスの向きを変えて集塵ユニット20に対する排出ガスの流量を調整する整流装置40が設置されている。
整流装置40は、分岐部33に、排出ガスの流れに交差する方向(分岐部33を横断する方向)に配列された複数の可動ベーン41を有する。
また、整流装置40は、集塵ユニット20の入口および出口に、当該部分を通過する排出ガスのダスト濃度を検出する検出部として、複数の検出ホール42を有する。
【0026】
図3において、可動ベーン41は、ダクト30内部を上下に延びるシャフト411と、シャフト411から下流側(個別部32および集塵ユニット20側)に延びるベーン本体412と、シャフト411を回動させてベーン本体412の向きを調整する操作ハンドル413とを有する。
操作ハンドル413はダクト30の外部に設置され、作業者が操作することで、シャフト411を回動させ、ベーン本体412の向きを変更し、ダクト30内を流れる排出ガスの向きを調整することができる。
【0027】
〔集塵ユニット20の構成〕
図2に戻って、集塵ユニット20は、複数が並列に設置され、各々はダクト30の個別部32の出口に接続され、それぞれ排出ガスを供給される。
図4および図5に、集塵ユニット20の詳細を示す。
集塵ユニット20は、それぞれ排出ガスを流通可能な容器を有し、この容器の内部は複数のセル21に仕切られている。各セル21の内部には、静電吸着用の電極22が設置されている。各セル21の下面側には、ダストを捕集用のホッパ23が設置されている。
従って、集塵ユニット20の入口側(図4および図5の左側)から排出ガスを導入し、電極22に通電することで、排出ガス中のダストが電極22に静電吸着され、下方のホッパで捕集される。これにより、通過する排出ガスに対する集塵が行われる。
【0028】
なお、集塵ユニット20の入口側には、各セル21に対応した複数のダンパ24および操作ハンドル25が設置されている。
操作ハンドル25を作業者が操作することで、ダンパ24を作動させ、ダクト30からセル21に流入する排出ガスを遮断することができる。各セル21においては、ダンパ24により排出ガスを遮断した状態で、セル21内部や電極22ないしホッパ23の清掃や保守等を行うことができる。
【0029】
前述の通り、整流装置40は、集塵ユニット20の入口および出口に複数の検出ホール42を有する。
図6(A)及び図6(B)において、検出ホール42は、集塵ユニット20の容器の上面側に固定された筒部421を有する。筒部421の下端は、容器の開口422を通して集塵ユニット20の各セル21の入口側あるいは出口側に連通されている。一方、筒部421の上端開口423は、着脱可能な円板状の蓋部424により、覆われている。
図6(C)に示すように、検出ホール42は、蓋部424を外してダスト濃度センサ43を導入し、その先端を集塵ユニット20の内部まで到達させることで、各セル21の入口側あるいは出口側を通過する排出ガスのダスト濃度を検出することができる。
【0030】
〔電気集塵装置10の動作〕
このような本実施形態の電気集塵装置10においては、通常の稼働時、排出ガス処理システム1の一部として、ボイラ2の排出ガスの集塵を行う。
一方、定期的な電気集塵装置10の調整時期になったら、本発明に基づく調整方法で、整流装置40の調整を行う。
【0031】
通常の稼働時においては、ボイラ2からの排出ガスは、脱硝装置5で脱硝され、空気予熱器4で排熱回収されたうえで、電気集塵装置10で除塵される。除塵済の排出ガスは、誘引通風機6から脱硫装置7を経て煙突8から排出される。
電気集塵装置10においては、ダクト30の集合部31に供給された排出ガスが、分岐部33から個別部32を経て集塵ユニット20に導入される。この際、各個別部32ないし集塵ユニット20へ分配される排出ガスは、分岐部33に設置された整流装置40により調整される。
【0032】
すなわち、整流装置40においては、可動ベーン41の向きにより、特定の個別部32に向けられる排出ガスが多ければ、その個別部32に続く集塵ユニット20では多量の排出ガスが処理される。逆に、分配される排出ガスが少なければ、その個別部32に続く集塵ユニット20では排出ガスの処理量が減少する。
このような整流装置40における可動ベーン41の向きの調整は、図7に示す手順で定期的に行われる。
【0033】
〔整流装置40の調整方法〕
図7において、整流装置40の調整にあたっては、先ず作業者が煙突8(図1参照)の排気におけるダスト濃度を検査する(処理S1)。
煙突8の排気ダスト濃度が所定値以上でなければ、電気集塵装置10は適切な稼働状態であり、整流装置40の調整は必要ないので、これで処理を終了する。
【0034】
煙突8の排気ダスト濃度が所定値以上であれば、複数の集塵ユニット20のそれぞれに対して、整流装置40の調整を行う。
先ず、対象とする集塵ユニット20を選択する(処理S2)。
次に、選択した集塵ユニット20について、電装系統の点検により、電極22に異常がないか検査する(処理S3)。
【0035】
処理S3で電極22に異常があったら、選択している集塵ユニット20に対する排出ガスの分配が最小になるように、整流装置40の可動ベーン41を調整する。すなわち、可動ベーン41を調整し、該当する集塵ユニット20に行くはずだった排出ガスを、隣の集塵ユニット20に向かうように振り分ける(処理S8)。
処理S8のあと、全ての集塵ユニット20に対する調整が終了したかを判定する(処理S9)。
【0036】
処理S9で全ての集塵ユニット20に対する調整が終了と判定されれば、整流装置40の調整を終了する。
処理S9で未対応の集塵ユニット20があると判定されれば、処理S2に戻り、次の集塵ユニット20を選択して処理S3以降の調整を行う。
【0037】
処理S3で電極22に異常がなければ、集塵ユニット20の入口側および出口側のダスト濃度をそれぞれ測定する(処理S4)。これらの測定は、図6(C)に示す検出ホール42およびダスト濃度センサ43を用いる。
次に、集塵ユニット20の入口側および出口側のダスト濃度差を計算し(処理S5)、基準となる所定値と比較する(処理S6)。
【0038】
処理S6で濃度差が所定値以下であれば(集塵機能が十分でないなら)、選択している集塵ユニット20への排出ガスが減るように整流装置40を調整する(処理S7)。具体的には、選択している集塵ユニット20に至るダクト30の個別部32の入口にある可動ベーン41および隣接する可動ベーン41の向きを変更し、この個別部32に流入する排出ガスを減少させる。その後、処理S4に戻る。
処理S7での変更は、僅かな角度ずつ行う。そして、処理S4〜S6で再度判定しつつ、角度の変更を繰り返す。これにより、選択中の集塵ユニット20で、現在の集塵能力に応じた排出ガス流量となるように調整することができる。
【0039】
処理S6で濃度差が所定値より大きければ(集塵機能が十分であれば)、選択している集塵ユニット20に対する調整を終了する。そして、前述した処理S9で全ユニット終了か否かを判定し、次の集塵ユニット20の選択(処理S2)に戻るか、または、整流装置40の調整を終了する。
【0040】
〔実施形態の効果〕
本実施形態では、整流装置40により通過する排出ガスの向きを変えて集塵ユニット20に対する排出ガスの流量を調整することができる。すなわち、特定の集塵ユニット20の入口に向かう排出ガスを減らすことで、この集塵ユニット20の排出ガス流量を減らすことができる。逆に、特定の集塵ユニット20の入口に向かう排出ガスを増すことで、この集塵ユニット20の排出ガス流量を増やすことができる。
【0041】
このような整流装置40により、集塵ユニット20ごとの排出ガスの増減調整を行うことができ、複数の集塵ユニット20の一部で流抵抗が増大しても、複数の集塵ユニット20間での流量の均一化を図ることができる。
この際、整流装置40は排出ガスの流れの向きを変えるものであり、例えば集塵ユニット20のダンパ24で流量を絞る場合のような流抵抗の増大を招くことが避けられる。従って、各集塵ユニット20の処理量を低下させることなく、複数の集塵ユニット20間での流量の均一化を図ることができる。
【0042】
本実施形態では、整流装置40として複数の可動ベーン41を用いることで、装置構成が簡単にでき、かつ流抵抗も抑制することができる。
さらに、本実施形態では、作業者が操作ハンドル413を用いて可動ベーン41の向きを調整することができる。
整流装置40における排出ガスの向きの調整は、常時行われる必要はなく、定期的な実施で十分である。つまり、制御装置による自動化までは必要がなく、作業者による調整であればよい。従って、整流装置40の調整を作業者が行うようにすることで、必要十分な機能を確保しつつ、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0043】
本実施形態では、集塵ユニット20の入口および出口に検出ホール42を設け、そこにダスト濃度センサ43を導入することで、当該部分を通過する排出ガスのダスト濃度を検出することができる。そして、その濃度差から各々の集塵ユニットにおける現在の集塵性能を評価することができる。
本実施形態においては、通常時には、検出ホール42に蓋部424で蓋をしておくことで、通常時の排出ガスの漏れ出しを防止できる。一方、検出時には、ダスト濃度センサ43を導入してダスト濃度の検出を行うことができる。
そして、検出時のみダスト濃度センサ43を導入するため、複数の検出ホール42で同じダスト濃度センサ43を使い回しできる。すなわち、多数のダスト濃度センサ43を固定的に設ける場合には、ダスト濃度センサ43が多数必要になるが、使い回すことで設備コストを低減できる。
さらに、通常時はダスト濃度センサ43を外しておくため、ダストによるセンサの損傷などを防止できる。
【0044】
本実施形態では、図7に示す調整方法により、集塵ユニットを通過した排出ガスのダスト濃度を検出することで、集塵性能が低下した集塵ユニットを判別することができ、この集塵ユニットへの排出ガスの供給量を減少させることができる。
さらに、本実施形態の調整方法では、処理S3により、集塵ユニット20のいずれかで電極異常が検知された際に、処理S8により、異常が検知された集塵ユニット20に向かう排出ガスの流れを減らすことができる。集塵ユニット20に電極異常があった場合、電極22での吸着不良により集塵されずに通過してしまうダスト量も増加するが、電極異常を検出した時点で対応すれば、通過した排出ガスのダスト濃度を検出するよりも早期に対応を行うことができる。
【0045】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変更などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、電気集塵装置10に4基の集塵ユニット20を設置したが、集塵ユニット20は2基または3基あるいは5基以上であってもよく、複数であればよい。
【0046】
集塵ユニット20には、電極22を収容したセル21が並列に4系統で設置されていたが、5系統以上であってもよく、3系統以下であってもよく、複数に限らず1系統だけでもよい。各セル21に対応するダンパ24は、操作ハンドル25による開閉に限らず、モータ等で開閉してもよい。あるいは、セル21の閉鎖が必要ない場合、ダンパ24は省略してもよい。
【0047】
ダクト30において、整流板34の配置および形状は適宜変更すればよく、屈曲がない場合など省略してもよい。
整流装置40において、排出ガスの流れの向きを変更する手段としては、可動ベーン41に限らず、筒状のダクトの向きを可変としたもの、多数のベーンを配置したフレームの向きを可変としたものなど、他の形状構造であってもよい。
また、可動ベーン41は、操作ハンドル413による回動に限らず、モータ等で回動させてもよい。ただし、調整作業の頻度を考慮すると、作業員が操作する操作ハンドル413で十分であり、構造も簡略にできる。
【0048】
整流装置40の調整の基準となるダスト濃度を検出するダスト濃度センサ43としては、形式など限定されるものではなく、既存の各種センサを適宜利用することができる。
ダスト濃度センサ43は、検出ホール42に必要時に導入されるものに限らず、固定的に設置してもよい。
ダスト濃度センサ43は、集塵ユニット20の入口および出口のダスト濃度を検出するものに限らず、出口側のみ検出し、所定の基準値との比較により集塵ユニット20の集塵機能を判定してもよい。
【0049】
電気集塵装置10が設置される排出ガス処理システム1は、前記実施形態のような構成に限らず、他の構成によるものであってもよい。また、その用途も火力発電所あるいは製鉄所などに設置され、石炭を燃料として高温高圧の水蒸気を供給するボイラシステムに限らず、排出ガス中のダストの除塵が必要なシステムの一部として設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、石炭を燃料とする熱供給システムの排出ガス処理システムにおける排出ガスの電気集塵装置およびその調整方法に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1…排出ガス処理システム、2…ボイラ、3…押込通風機、4…空気予熱器、5…脱硝装置、6…誘引通風機、7…脱硫装置、8…煙突、10…電気集塵装置、20…集塵ユニット、21…セル、22…電極、23…ホッパ、24…ダンパ、25…操作ハンドル、30…ダクト、31…集合部、32…個別部、33…分岐部、34…整流板、40…整流装置、41…可動ベーン、411…シャフト、412…ベーン本体、413…操作ハンドル、42…検出ホール、421…筒部、422…開口、423…上端開口、424…蓋部、43…ダスト濃度センサ、S1〜S9…処理。
図1
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図5
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図7