(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも熱凝固性植物タンパク素材および大豆クリームを原料とし、全原料中の卵の配合率が50重量%以下である液体生地を焼成し、熱凝固させることを特徴とする、卵様焼成凝固食品の製造法。
【背景技術】
【0002】
卵焼きやスクランブルエッグといった卵焼成凝固食品は、広く親しまれ食されており、家庭内で調理されるだけでなく、外食産業や食品小売店等において提供される調理済み加工食品としても製造されている。
一方で、動物性食品である卵はコレステロールが含まれているため、健康に関心の高い消費者にはコレステロールを低減した食品が望まれている。また、卵の価格は比較的高く価格相場が安定していないことから、卵焼成凝固食品を製造するメーカーにとっては、該食品中の卵の使用量を減らしたいという卵代替のニーズもある。これらを解決する方法として、例えば下記の方法が開示されている。
【0003】
特許文献1では、卵を用いずに大豆蛋白質のペースト、加熱処理したカボチャ等の澱粉性野菜および組織状蛋白などを混練して練り生地とし、これをほぐした後に蒸し器で加熱してスクランブルエッグ様食品を得ている。
【0004】
特許文献2では、大豆蛋白質、カルシウム塩、油脂、澱粉を含む大豆蛋白溶液に、水溶性多糖類とグルコノデルタラクトンを加えた溶液を凍結して組織化させた後に解凍し、得られた保形性を有する組織化物を焼成することにより、卵焼き様の食品を得ている。
【0005】
特許文献3では、大豆を浸漬加熱後に破砕した粒子を卵黄の代替で用いて卵白と混合した液体を、フライパンで加熱してスクランブルエッグ様の食品を得ている。
【0006】
特許文献4では、全脂大豆粉、大豆蛋白質、オリゴ糖、乳化剤、澱粉等を粉体混合したものを全卵に加えた卵液をフライパンで焼成して、卵焼き等を得ている。
【0007】
特許文献5でも、大豆蛋白質、澱粉等を全卵液に加えた卵液をフライパン等で焼成し、卵焼き等を得ている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1,2の方法は蒸し加熱や凍結等の特殊な工程が必要であり、通常の卵焼きやスクランブルエッグのように、溶き卵のような液体生地をフライパン等で加熱焼成して製造できるようなものではない。
特許文献3の方法では卵黄の代わりとなる特殊な大豆素材が必要であり、また卵白が必須の方法である。
特許文献4,5の方法で得られるものは卵焼き等の卵焼成凝固食品そのものであり、大豆粉や大豆蛋白の添加量はごく少量に過ぎない。
【0010】
このように、従来の方法では通常の卵焼きの製法とは異なる特殊な工程を要する製品であったり、卵の少量置換した卵焼成凝固食品であったり、卵への少量添加による卵焼成凝固食品の品質改良を開示しているに過ぎない。また、大豆粉や大豆蛋白の添加は卵焼成凝固食品の風味を損なっているといった欠点があると出願人は認識する。
【0011】
上記実情に鑑み、本発明では全卵と大きな割合で置換することができ、あるいは全卵を全く使用することなく、通常の卵焼きやスクランブルエッグ等の卵焼成凝固食品と同様の製法で製造することのできる卵様焼成凝固食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は鋭意研究を行った結果、熱凝固性植物タンパク素材と大豆クリームとを含む液体生地を調製し、これを通常の卵焼成凝固食品の調理工程に即して焼成することにより、前記課題を解決した卵様焼成凝固食品を製造できる知見を得た。本発明はかかる知見に基づき完成されるに到ったものである。
【0013】
即ち本発明は、下記の発明を包含するものである。
(1)少なくとも熱凝固性植物タンパク素材および大豆クリームを原料とし、全原料中の卵の配合率が50重量%以下である液体生地を焼成し、熱凝固させることを特徴とする、卵様焼成凝固食品の製造法、
(2)全原料中の卵の配合率が0重量%である、前記(1)記載の製造法、
(3)大豆クリームの固形分中のタンパク質含量が20重量%以上であり、脂質/タンパク質含量比 が重量基準で0.8以上である、前記(1)又は(2)記載の製造法、
(4)大豆クリームは、大豆と水を原料として脂質が濃縮された画分を取得したものである、前記(1)〜(3)の何れか1項記載の製造法、
(5)該植物タンパク素材が大豆タンパク素材である、前記(1)〜(4)の何れか1項記載の製造法、
(6)大豆クリームの全原料中の配合率が該植物タンパク素材に対して固形分換算で10〜300重量%である、前記(1)〜(5)の何れか1項記載の製造法、
(7)熱凝固促進剤を原料とする、前記(1)〜(6)の何れか1項記載の製造法、
(8)熱凝固促進剤が、メチルセルロース又は/及び凝固剤である、前記(7)記載の製造法、
(9)卵様焼成凝固食品中のコレステロール含量が0重量%である、前記(1)〜(8)の何れか1項記載の製造法、
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特殊な製法によらず、通常の卵焼成凝固食品の製法と同様の製造ラインで、卵の代替率の高い卵様焼成凝固食品を提供することが可能である。
また本発明によれば、卵の代替原料に起因して卵様焼成凝固食品の風味が損なわれることを防止又は抑制することができる。
また本発明により得られる卵様焼成凝固食品は、焼成後に品温が下がっても硬い食感になりにくくソフトな食感を維持することができる。
また本発明により得られる卵様焼成凝固食品は、通常の卵焼成凝固食品のように焼成の強弱や時間による硬さや焦げ付き等の品質の触れが生じにくく、品質の安定化に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の卵様焼成凝固食品の製造法は、少なくとも熱凝固性植物タンパク素材および大豆クリームを原料とし、全原料中の卵の配合率が50重量%以下である液体生地を焼成し、熱凝固させることを特徴とする。以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0017】
(卵焼成凝固食品)
本発明において卵焼成凝固食品の用語は、一般に卵を主原料とし、卵白と卵黄を均一に混合して全卵液としたものを焼成し熱凝固させて得られる食品であり、例えば卵焼き、だし巻き卵、スクランブルエッグ、オムレツ、伊達巻、炒り卵、卵そぼろ、キュッシュ等をいう。
【0018】
(卵様焼成凝固食品)
本発明における卵様焼成凝固食品は、少なくとも全原料中の卵の配合率が50重量%以下であり、上記に挙げた卵焼き等の卵焼成凝固食品と同様の製品形態を有する食品をいう。特に本発明では卵液を焼成して熱凝固させるのと同様に液体生地を焼成し熱凝固させて得られる。
全原料中の卵の配合率はさらに40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0重量%などとすることができ、当業者が目的とする製品の品質やコストに応じて適宜選択できる。特に健康上コレステロールの含量を0重量%としたい場合には、全原料中の卵の配合率は1重量%以下が好ましく、0重量%が最も好ましい。
【0019】
(熱凝固性植物タンパク素材)
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、熱凝固性植物タンパク素材を含むことが必須であり、加熱によって凝固する性質を持ち、植物由来のタンパク質を主成分とする食品素材である。該植物タンパク素材はコレステロールを該食品中に導入することなく、液体生地に卵液と同様の熱凝固性を付与する。
【0020】
植物タンパク素材の植物の起源としては、該素材が熱凝固性を有する限り特に限定されず、大豆、エンドウ、緑豆、ヒヨコ豆等の豆類や菜種等の種子類が挙げられる。
また植物タンパク素材中のタンパク質純度は高純度であるほど熱凝固性が高いので好ましく、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上又は90重量%以上などが好ましい。特に好ましい態様の一つは、タンパク質純度が80重量%以上の粉末状の大豆やエンドウ等の豆類タンパク素材であり、典型的には分離大豆タンパク素材である。
【0021】
全原料中の該植物タンパク素材の配合率は、例えば下限を1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上などとすることができ、上限を40重量%以下、30重量%以下、15重量%以下などとすることができる。かかる上限と下限の範囲内であれば、卵焼き様やスクランブルエッグ様の食感を得ることができ、より好ましい。
【0022】
(大豆クリーム)
本発明の卵様焼成凝固食品の原料としては、熱凝固性植物タンパク素材と共に、大豆クリームを含むことが重要である。該大豆クリームを用いることにより、コレステロールを該食品中に導入することなく、卵黄様のコクを付与し、また熱凝固性植物タンパク素材に起因すると考えられる後味の不快臭やエグ味をマスキングすることができる。
【0023】
ここで大豆クリームとは、大豆蛋白質が脂質と水中油型に乳化されている素材であって、豆乳や大豆よりも固形分中の脂質の含量が高いものをいう。特に豆乳や大豆よりも該脂質が濃縮されたものや、該脂質が油脂の添加により増量されたものが挙げられる。なお、日本食品標準成分表2015年版(七訂、文部科学省)によれば、豆乳の固形分中の脂質含量は約21.7重量%、大豆は産地や品種により変動があるが約20.7〜24.6重量%であり、大豆クリームの脂質含量はこれらよりも高いことが好ましく、固形分中25重量%以上が好ましく、又は35重量%以上などがより好ましい。脂質含量の上限は特に限定されないが、固形分中80重量%以下、又は99重量%以下などであってもよい。
【0024】
該大豆クリームの固形分中の蛋白質含量は下限が20重量%以上、又は25重量%以上であるのが好ましく、上限が60重量%以下、又は50重量%以下であるのが好ましい。なお、日本食品標準成分表2015年版(七訂、文部科学省)によれば、豆乳の固形分中のタンパク質含量は約39.1重量%、大豆は産地や品種により変動があるが約36.6〜38.8重量%である。
【0025】
また、該大豆クリーム中の脂質/蛋白質含量比は、重量基準で下限が0.8以上、0.9以上、1以上又は1.2以上であるのが好ましい。また上限は3.5以下又は3以下が好ましい。なお、日本食品標準成分表2015年版(七訂、文部科学省)によれば、豆乳中の脂質/蛋白質含量比は約55.6重量%、大豆は産地や品種により変動があるが約53.4〜67.3重量%である。
【0026】
全原料中の大豆クリームの配合率は、例えば下限を2重量%以上、3重量%以上、又は4重量%以上などとすることができ、上限を98重量%以下、又は95重量%以下などとすることができる。かかる上限と下限の範囲内であれば、卵黄様のコクを付与することができ、より好ましい。
【0027】
また熱凝固性植物タンパク素材に対する大豆クリームの配合率は、固形分換算で下限を10重量%以上、又は15重量%以上などとすることができ、上限を300重量%以下、又は200重量%以下などとすることができる。かかる上限と下限の範囲内であれば、卵焼き様やスクランブルエッグ様の食感と卵黄様のコクを有することができ、より好ましい。
【0028】
大豆クリームの典型的な製法としては、大豆と水を原料として脂質が濃縮された画分を取得する方法が挙げられる。例えば大豆から抽出した豆乳を遠心分離して比重が軽く脂質の多い画分を回収する方法、大豆から豆乳を抽出して分離されたオカラから再度水抽出により脂質の多い画分を取得する方法、大豆から水抽出し豆乳とオカラに分離する前のスラリー液を遠心分離して脂質の多い画分を取得する方法、大豆から抽出した豆乳を酸やミネラルで凝集させた後に凝集物から脂質の多い画分を取得する方法等が挙げられる。
また大豆クリームの別の製法として、大豆粉及び水との分散液、豆腐を磨りつぶしたペーストや豆乳等と、油脂とを必要により乳化剤と共に混合し、均一に乳化して脂質を増量する方法が挙げられる。
【0029】
なお、大豆クリームの原料である大豆は、水溶性窒素指数(NSI)が80以上の水溶性の高いものでも良いし、NSIが特定の範囲、例えば20〜77程度になるまであらかじめ変性処理を施した大豆を用いることもできる。特に風味の点で後者の大豆が好ましい。かかる原料から脂質が濃縮された画分を取得して得られる大豆クリームは、含まれる蛋白質のうち、グリシニンやβ-コングリシニン以外の脂質親和性蛋白質(あるいは別の指標としてリポキシゲナーゼ蛋白質)の割合が特に高い。このため、中性脂質および極性脂質を多く含む大豆乳化組成物となる。この大豆乳化組成物は、乾物あたりの蛋白質含量が20重量%以上、脂質含量が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値(Lipophilic Proteins Content Index)が55%以上、より好ましくは60%以上であることを主要な特徴とするものである。ここで、LCI値は、蛋白質中の脂質親和性蛋白質の割合を推定する指標である。この大豆乳化組成物の蛋白質および脂質の組成の詳細および製法については、特開2012−16348号公報の記載を援用するので、これを参考に入手することができる。
【0030】
(卵)
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、卵は必須ではなく、全原料中の配合率の50重量%以下である。コストダウンやコレステロール低減等を目的とする場合、該配合率はより低い方が好ましく、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、又は0重量%などとすることができる。0重量%の場合、コレステロールの含量を0重量%にすることができ、また卵アレルギーの症状を発する人向けの食品としても有用である。卵は典型的には鶏卵であるが、一般に食用に使用される鳥類等の卵であれば特に限定されない。また卵は全卵、卵黄、卵白のいずれを用いてもよい。
【0031】
(他の原料)
○熱凝固促進剤
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、液体生地を焼成する際の熱凝固性を促進させるために、各種熱凝固促進剤を用いることができる。例えば塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコノデルタラクトン(GDL)等の凝固剤や、カードラン、メチルセルロース、LMペクチン等の加熱ゲル化性多糖類などが挙げられる。加熱ゲル化性多糖類とは、加熱昇温によってゲル化する性質を持つ多糖類である。特にメチルセルロースが好ましく、加熱後冷却してゲル化するゼラチンなどとは性質が異なる。なお、LMペクチンの場合、ゲル化には2価陽イオンを併用する必要がある。
これらの熱凝固促進剤を単独又は併用して用いることにより、液体生地の焼成による凝固速度を促進させ、熱凝固したゲルの崩壊を防ぎ、ふわっとした食感を付与することができる。
全原料中の熱凝固促進剤の配合率は、例えば下限を0.05重量%以上、0.1重量%以上、又は0.15重量%以上などとすることができ、上限を2重量%以下、1重量%以下、又は0.6重量%以下などとすることができる。
【0032】
○油脂
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、大豆クリームとは別途に油脂を配合することができる。油脂の配合によって生地中でより多くの油脂がエマルジョン化し、生地粘度が上がることにより、焼成時にフライパンへ生地を伸展する際の保形性を向上でき、後に記載の膨張剤の気泡を保持できる効果が得られる。
全原料中の油脂の配合率は、例えば下限を1重量%以上、2重量%以上、又は4重量%以上などとすることができ、上限を20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下などとすることができる。
【0033】
○デンプン
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、大豆クリームとは別途にデンプンを配合することができる。デンプンを配合することによって焼成時の生地の火抜けが改善され、焼成時間を短縮でき、また食感のネチャつきをより改善できる。デンプンとしては、例えば馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、甘薯デンプン、タピオカデンプン等の生デンプンや、リン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプン等の各種加工デンプンを用いることができる。
全原料中のデンプンの配合率は、例えば下限を0.1重量%以上、0.2重量%以上、又は0.4重量%以上などとすることができ、上限を15重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下などとすることができる。
【0034】
○膨張剤
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、各種膨張剤を配合することができる。膨張剤を配合することによって焼成後に適度な空気を含んだふっくらとした食感が得られる。膨張剤としては、例えば重曹、重炭安、ベーキングパウダー等を使用できる。
全原料中の膨張剤の配合率は、例えば下限を0.02重量%以上、0.05重量%以上又は0.1重量%以上などとすることができ、上限を3重量%以下とすることができる。
【0035】
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、各種の呈味剤又は呈味強化剤を配合することができる。これらを配合することによって卵様の風味に近づけることができる。呈味剤としては、例えばグルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等を使用できる。また呈味強化剤としては、例えば大豆由来等のレシチン、エッグフレーバー等を使用できる。
全原料中の呈味剤又は呈味強化剤の配合率は、例えば下限を0.01重量%以上とすることができ、上限を5重量%以下とすることができる。
【0036】
(製造法)
以下、典型的な製造態様を示す。
本発明の卵様焼成凝固食品は、一般の卵焼成凝固食品と同様の工程で製造できることが特徴である。
例えば、上述した原料を選択し、水と混合して液体生地を調製する。まず、大豆クリームおよび水と熱凝固性植物タンパク素材を混合し、十分に熱凝固性植物タンパク素材を水和させた後に、その他の原料と混合することができる。混合手段は特に限定されず、ミキサーやこれに類する機器、装置を用いればよい。
次に、液体生地を焼成する。具体的には油脂を塗布したフライパン、鉄板等に液体生地を入れ、直火やオーブンで焼成し、液体生地を熱凝固させる。焼成時間は使用する原料によって変動し、適宜所望の凝固状態となるように調整すればよい。本発明の卵様焼成凝固食品は、一般の卵焼成凝固食品と比べて加熱履歴によって硬くなりすぎたり、焦げすぎたりすることが少なく、比較的加熱時間の許容幅を大きくすることができることも特徴である。
また、焼成方法は卵様焼成凝固食品の製品形態により変更すればよく、例えば卵焼きのときは静置して焼成したり、スクランブルエッグのときは攪拌しながら焼成すればよい。
熱凝固させた後は、必要により巻上げ、切断等により所望の製品形態に成形すればよい。その後、流通形態に合わせて、冷蔵や冷凍により保存することができる。本発明の卵様焼成凝固食品は、冷蔵や冷凍により食感の硬さ等の変化が少ないことも特徴である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例等により本発明の実施形態についてさらに具体的に記載する。なお、以下「%」及び「部」は特に断りのない限り「重量%」及び「重量部」を意味するものとする。
【0038】
(試験例1) 卵焼き様食品1
表1の配合表に従い、液状原料として大豆クリーム、豆乳、水をジューサーミキサーにて20秒間撹拌した後、分離大豆蛋白(熱凝固性を有する)、大豆粉を加え、さらに30秒間撹拌し、液体生地を得た。この液体生地150部を、あらかじめ菜種油2.5部(配合外)を薄く引いた卵焼き用フライパンを用いて焼成し、室温(20℃)に放冷した。焼成方法は一般的な卵焼きの製法に従いそれぞれ卵焼き様食品を調製した。
【0039】
(品質評価)
各試験区で得られた卵焼き様食品について、社内の嗜好パネラー5名(とか10名とか)に依頼して、焼成後の風味、食感を評価項目として、下記の評価基準にて5点満点で官能評価(相対評価)を行った。
【0040】
<評価基準>
○風味
10点:最も卵様のコクや風味を有し良好
1点:最もエグ味や渋味が強く風味が悪い
○食感
10点:最も卵様のしっとり感・崩壊感があり食感が良好
1点:最もボソボソ感や、ネチャつきを感じ食感が悪い
【0041】
次に5名の評点の平均を取り、4.5点未満を「A」、3.5点以上4.5点未満を「B」、2.5点以上3.5点未満を「C」、1.5点以上2.5点未満を「E」の評価とし、C評価以上を合格とした。この結果を表1にまとめた。
【0042】
(表1)配合と品質評価
【0043】
表1の結果の通り、分離大豆蛋白と大豆クリームを併用する試験例5〜8では、風味と食感の両方において良好な卵焼き様食品が得られた。
【0044】
(試験例2) 卵焼き様食品2
試験例1で得られた結果から食感をさらに改良するため、表2の配合表に従い、液状原料として大豆クリーム、菜種油、水をジューサーミキサーにて20秒撹拌した後、分離大豆蛋白(熱凝固性を有する)を加え、さらに30秒撹拌した。その後、馬鈴薯デンプン、凝固剤としてのニガリまたはGDLを添加し、30秒撹拌し、液体生地を得た。この液体生地を試験例1と同様に焼成し、それぞれ卵焼き様食品を調製した。
得られた各卵焼き様食品について、試験例1と同様に品質評価を行い、表2に結果をまとめた。なお、本試験例以降における品質評価は相対評価のため、表1の評価記号とは直接関係しない。
【0045】
(表2)配合と品質評価
【0046】
表2の結果より、試験区9に対して、馬鈴薯デンプンを加えた試験区10では、食感のネチャツキ感がより改善された。また試験区10では焼成時の生地の火抜けがより改善されて焼成時間の短縮につながった。
さらに膨張剤としてベーキングパウダーを加えた試験区11では、食感がよりふっくらとなり、良好であった。
さらに油脂として菜種油を加えた試験区12では、液体生地により多くの油脂がエマルジョン化することによって、生地粘度が上がり、焼成時にフライパンへ生地を伸展する際の保形性を向上でき、膨張剤の気泡を保持する効果が得られ、より作業上扱いやすい物性となった。
さらに凝固剤を加えた試験区13,14では、食感がより歯切れの良い食感となり、良好であった。また液体生地の焼成による凝固速度が速くなるとともに、熱凝固したゲルが壊れにくくなり、焼成後に生地を丸めていく工程において、生地強度の向上が認められた。特にGDLを用いた試験区14の食感は試験区13よりも蛋白質の変性が弱く、より滑らかな食感であったため、最も高評価であった。
なお、試験区14の卵焼き様食品を冷蔵温度(10℃)と冷凍温度(−20℃)にて1日間保管した後、それぞれ常温(20℃)に戻して食したところ、冷却前の食感と殆ど変わらず良好な食感であった。
【0047】
(試験例3) スクランブルエッグ様食品
表3の配合表に従い、メチルセルロースと水をジューサーミキサー(OSTER社製Osterizer)にて20秒撹拌した後、豆乳クリーム、菜種油を添加し20秒撹拌した。さらに、大豆たん白質を加え、30秒撹拌し、その後、デンプン、GDLを添加し、30秒撹拌し、液体生地を得た。この液体生地100部をあらかじめ菜種油7g(配合外)を薄く引いたフライパンに入れ、中火で加熱し、それぞれスクランブルエッグ様食品を調製した。
各試験区で得られたスクランブルエッグ様食品ついて、風味、食感を評価項目として、試験例1と同様にして品質評価を行い、表3に結果をまとめた。
【0048】
(表3)配合と品質評価
【0049】
表3の結果より、スクランブルエッグ様食品では、試験例2の試験区14の配合をベースに加熱ゲル化性多糖類であるメチルセルロースを加えた試験区15では、さらに食感が良好となり、また焼成時の液体生地の凝固速度が速くなると共に熱凝固した後のゲルが壊れにくくなり、ゲル同士が一つの塊に再結合することなく、ゲルがパラパラと分散してよりスクランブルエッグ状の外観になった。
【0050】
(試験例4) 全卵との併用例
試験例1の試験区1の配合に馬鈴薯デンプンを1%加えた配合で液体生地を調製した。この液体生地と全卵液とを40:60(試験区16)、および70:30(試験区17)の比率でそれぞれ混合した全卵併用液体生地を得た。
次に、試験例2の試験区15と同様にして液体生地を作成した後、該液体生地と全卵液とを容器内で40:60(試験区18)、および70:30(試験区19)の比率でそれぞれ混合した全卵併用液体生地を得た。
これらの液体生地を試験例3と同様にして焼成し、それぞれスクランブルエッグ様食品を調製した。
各試験区で得られたスクランブルエッグ様食品ついて、風味、食感を評価項目として、試験例1と同様にして品質評価を行い、表4に結果をまとめた。
【0051】
(表4)配合と品質評価
【0052】
表4の結果より、大豆クリームが配合されていない系(試験区16,17)において、全卵配合率が60%ある試験区16では風味と食感は合格レベルに入っていたが、全卵配合率が30%しかない試験区17では後味の風味に渋味やエグ味といった不快味が感じられ、また食感もネチャついた食感となって品質が悪化した。これに対して、大豆クリームが配合された系(試験区18,19)では、全卵配合率が30%しかなくとも風味、食感とも優れたものであった。