(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば22kV配電系統の場合は、同じ22kV配電系統であっても、変電所に設けられる変圧器の接地方式が、変圧器の中性点と大地とを抵抗を介して導体で接続して接地する抵抗接地方式であるものと、中性点接地を行わない非接地方式であるものと、があり、変電所に設けられる変圧器の接地方式の違いによって、地絡電流のレンジが大きく異なる。例えば、抵抗接地方式の場合は、中性点が抵抗で接地されているため、地絡電流は数百A(アンペア)程度になるが、非接地方式の場合は数十mA(ミリアンペア)程度である。
【0007】
このため、抵抗接地方式の変圧器により電力供給を受ける22kV配電系統の地絡点標定システムでは、数百A程度の電流を計測可能な変流器(CT)を配電線の各相に設置し、これら各相の電流を合成することで零相電流を検出しているが、非接地方式の変圧器により電力供給を受ける22kV配電系統の地絡点標定システムでは、配電線の各相の数十mA程度の電流をまとめて計測する零相変流器(ZCT)を用いて零相電流を検出している。
【0008】
このように、同じ電力系統でありながら、変圧器の中性点接地方式によって異なるセンサが用いられる場合があり、これらの共通化が望まれている。
【0009】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、地絡点標定システムに用いられる電流検出用のセンサの共通化を促進することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの側面に係るセンサは、
22kVの特別高圧配電系統である電力系統における地絡点を標定する地絡点標定システムに用いられる電流検出用のセンサであって、前記電力系統の電力線が貫通するように配置される環状の巻芯と、前記電力線が地絡した際に前記電力線に生ずる地絡電流を検出するべく前記巻芯に巻回されるコイルと、を有し、前記巻芯は、
変電所に設けられる変圧器が抵抗接地方式及び非接地方式のいずれであっても、前記電力線に前記地絡電流が流れる際に生ずる磁束の磁束密度が、
前記磁束密度と透磁率とが線形の関係を有する範囲になるような断面積及び長さを有して構成される。
【0011】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄の記載、及び図面の記載等により明らかにされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地絡点標定システムに用いられる電流検出用のセンサの共通化を促進することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0015】
図1に、本発明の実施形態に係る地絡点標定システム1000の全体構成を示す。
【0016】
地絡点標定システム1000は、電力系統(本実施形態では22kV配電系統)において地絡が発生した場合に、地絡が発生した箇所(地絡点P)を標定するためのシステムである。
【0017】
図1に示すように、地絡点標定システム1000は、計測装置10及び地絡点標定装置300を備えて構成される。
【0018】
計測装置10は、配電系統における複数の箇所にそれぞれ設置され、配電系統の電力の状態に応じて変動する物理量を計測する装置である。計測装置10は、配電線500の電流あるいは電圧を含む配電系統の電力の状態に応じて変動する物理量を計測するセンサ150を収容するセンサ箱100と、センサ150による計測結果を地絡点標定装置300に送信する計測端末200と、を有して構成される。
【0019】
センサ150により計測される物理量は、配電線500の電流あるいは電圧を含む配電系統の電力の状態に応じて変動する物理量であるが、力率や周波数などを含んでいても良い。本実施形態では、これらの物理量の個々の計測器を総称してセンサ150と称している。また詳細は後述するが、センサ150には、配電線500を流れる電流を計測する電流計測用のセンサ150Aも含まれている。
【0020】
地絡点標定装置300は、複数の箇所の計測装置10によってそれぞれ計測された物理量の計測値に基づいて地絡点を標定する装置である。
【0021】
なお配電線500は3相であることが多いが、
図1には、記載の簡略化のために配電線500を1本のみ記載している。そのため、
図1には、各計測端末10は、一つのセンサ箱100を有するように記載されているが、
図2に示すように、配電線500の各相にそれぞれセンサ箱100を有している。
【0022】
そしてセンサ箱100は、各相の配電線500にそれぞれ装着されて、各センサ箱100に収容されるセンサ150によって、配電系統の電力の状態に応じて変動する物理量が計測される。
【0023】
センサ箱100は、センサ150と、センサ150を覆う金属製の外箱110と、外箱110を電柱600の腕金620に固定するための装柱金具120と、を有して構成される。
【0024】
センサ箱100を電柱600に設置する場合は、先に地上で各相のセンサ箱100を腕金620に固定して全体を一体化しておき、腕金620ごと柱上の所定の装着位置に持ち上げて、腕金装着具610によって電柱600に固定するようにすればよい。このため、センサ箱100の設置工事も容易に行うことができる。
【0025】
計測端末200は、配電線500の各相のセンサ150によって計測された物理量の計測値を、通信路400を介して地絡点標定装置300に送信する装置である。
【0026】
また計測端末200は、センサ150によって直接計測された配電線500の各相の物理量の値(直接計測値)を用いて、配電系統の電力の状態に応じて変動する他の物理量の値(間接計測値)を算出して、地絡点標定装置300に送信することもできる。
【0027】
例えば計測端末200は、センサ箱100から配電線500の各相の電流値(直接計測値)を取得して、これらの電流値を合成することで零相電流(間接計測値)を算出し、地絡点標定装置300に送信するようにすることができる。あるいは計測端末200は、センサ箱100から配電線500の各相の電圧値(直接計測値)を取得して、これらの電圧値を合成することで零相電圧(間接計測値)を算出し、地絡点標定装置300に送信するようにすることができる。
【0028】
なお計測端末200は、GPS衛星2000から現在時刻を受信しており、上記直接計測値や間接計測値を時刻情報と対応付けて地絡点標定装置300に送信している。
【0029】
地絡点標定装置300は、配電系統における複数の箇所に設置されている計測装置10によって計測されたそれぞれの計測値に基づいて、地絡点Pを標定する装置である。
【0030】
地絡点Pを標定する方法としては様々な方法が開発されているが、例えば地絡点標定装置300は、各地の計測端末200から送信されてくる零相電流及び零相電圧から、各地の計測装置10におけるサージ電流及びサージ電圧の到達時刻を特定することにより、地絡点Pを標定する。
【0031】
ところで、本実施形態に係る配電系統は22kV配電系統であるため、変電所(不図示)に設けられる変圧器(不図示)の接地方式が、抵抗接地方式である場合と非接地方式である場合と、がある。抵抗接地方式は変圧器の中性点と大地とを抵抗を介して導体で接続して接地する方式であり、非接地方式は中性点接地を行わない方式である。
【0032】
そのため、配電線500に地絡が発生した場合に、変電所に設けられる変圧器の接地方式の違いによって、地絡電流のレンジが大きく異なる。例えば、抵抗接地方式の場合は、中性点が抵抗で接地されているため、地絡電流は数百A(アンペア)程度になるが、非接地方式の場合は数十mA(ミリアンペア)程度である。
【0033】
この点に関し、本実施形態に係る電流検出用のセンサ150Aは、いずれの接地方式であっても地絡電流を検出可能に構成されている。
【0034】
本実施形態に係る電流検出用のセンサ150Aを
図3に示す。
【0035】
図3に示すように、センサ150Aは、配電線500が貫通するように設けられる環状の巻芯151と、配電線500が地絡した際に配電線500に生ずる地絡電流を検出するべく巻芯151に巻回されるコイル152と、を有して構成されている。
【0036】
配電線500に地絡電流が流れると、巻芯151の磁束Φが変化し、それに伴ってコイル152を流れる電流が変化する。コイル152を流れる電流を不図示の検出器により検出することにより、配電線500に流れる地絡電流を検出することができる。
【0037】
ここで、本実施形態に係るセンサ150Aの巻芯151は、配電線500に地絡電流が流れる際に生ずる磁束の磁束密度Bが所定値以下となるように形成されている。
【0038】
以下に説明するように、巻芯151に生ずる磁束の磁束密度Bがなるべく小さくなるようにセンサ150Aを形成することにより、センサ150Aが検出可能な地絡電流のレンジを拡大することができる。これにより、22kV配電系統の変圧器の接地方式が抵抗接地方式あるいは非接地方式のいずれであっても、地絡電流を検出することが可能となる。
【0039】
つまり、巻芯151に生ずる磁束の磁束密度Bが所定値以下になるように小さくすることにより、以下に説明するように、各相の配電線500に装着されるセンサ150Aの計測値のばらつきを小さくすることができ、これにより地絡電流を広帯域に計測することが可能となる。以下に、
図4及び
図5を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
まず、巻芯151の比透磁率μrと、巻芯151に生ずる磁束の磁束密度Bと、の関係を
図4に示す。
図4には、巻芯151がパーマロイコアである場合の特性曲線を例示するが、比透磁率μrの値は、磁束密度Bによって大きく異なることがわかる。
【0041】
このため、各相のセンサ150Aの特性のばらつきを抑えるためには、できるだけ比透磁率μrの変動が小さくなるような範囲の磁束密度Bが巻芯151に発生するようにする必要がある。
【0042】
図4を参照すると、磁束密度Bが小さいほど比透磁率μrの変動が小さいことがわかる。そこで、磁束密度Bが3000ガウス以下の場合の磁束密度Bと比透磁率μrとの関係を拡大して
図5に示す。
【0043】
比透磁率μrの変化と磁束密度Bの変化が線形の関係、つまり配電線500に地絡電流が流れる際の磁束密度Bの増加率と比透磁率μrの増加率とが一致する関係にあれば、磁束密度Bの変化に対して比透磁率μrの変化が安定する。そしてこの比透磁率μrが安定する磁束密度Bの範囲が各相のセンサ150Aのばらつきが少ない領域となる。
【0044】
そして、
図5を参照すると、磁束密度Bの増加に伴って比透磁率μrがリニアに増加する範囲は、磁束密度Bが所定値以下の範囲であることが分かる。
図5に示す場合では、磁束密度Bが1000ガウス以下となる範囲が好ましい。
【0045】
もちろん、比透磁率μrの変化と磁束密度Bの変化は完全に線形の関係を有さなくても良く、それぞれの増加率あるいは変化率が所定範囲内にあれば良い。
【0046】
このように、配電線500に地絡電流が流れる際に巻芯151に生ずる磁束の磁束密度Bが、磁束密度Bの変化に対する比透磁率μrの変化の度合いに基づいて定められる所定値以下となるようにすることで、センサ150Aが検出可能な電流のレンジを拡大することができ、22kV配電系統の変圧器の接地方式が抵抗接地方式あるいは非接地方式のいずれであっても、地絡電流を検出することが可能となる。
【0047】
またこのように、磁束密度Bの変化に対する透磁率μrの変化の度合いに基づいて磁束密度Bの上限値である上述した所定値を定めることにより、巻芯151に用いる材料について
図4に示したような比透磁率μrと磁束密度Bとの特性を基に、磁束密度Bの上限値を定めることが可能となる。
【0048】
なお、巻芯151に生ずる磁束の磁束密度Bは、磁束Φに比例するが、巻芯151の断面積S及び長さ(円周長)Lに反比例する。そのため、巻芯151は、地絡電流が発生した場合に巻芯151に生ずる磁束の磁束密度Bが所定値以下に抑制されるように、断面積S及び長さLが所定値以上になるように構成される必要がある。しかしながら一方で、巻芯151の大型化にもある程度の限度があることから、巻芯151は、磁束密度Bが所定値以下に抑制されつつも、ある下限値以上になるような断面積S及び長さLを有するように構成されることになる。
【0049】
また、配電線500が地絡した際にコイル152に流れる電流は、コイル152の巻回数に反比例する。そのため、本実施形態に係るセンサ150Aは、コイル152の巻回数が所定値以下になるように定められている。コイル152の巻数を所定値以下にすることによって、微弱な地絡電流であっても2次電流のレベルが増加することで検出することが可能となるため、地絡電流の検出可能なレンジを広げることが可能となる。
【0050】
例えば、非接地方式の配電系統の地絡を検出する場合に、一つの巻芯151内に3相分の配電線500をまとめて貫通させるようなことを行わなくても、各相の配電線500にそれぞれセンサ150Aを設け、それぞれ数十mA程度の地絡電流を検出することが可能となる。
【0051】
このため、22kV配電系統の変圧器の接地方式が抵抗接地方式であっても非接地方式であっても、地絡電流を検出することが可能となる。
【0052】
以上、本実施形態に係る電流検出用のセンサ150A及び地絡点標定システム1000について説明したが、本実施形態によれば、地絡点標定システム1000に用いられる電流検出用のセンサ150Aの共通化を促進することが可能となる。
【0053】
また中性点接地の方式が複数ある22kV配電系統のような電力系統においても、共通の電流検出用のセンサ150Aを用いることが可能となるので、コスト低減を図ることも可能となる。
【0054】
なお上述した実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。