(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガイド部は、前記回転軸の軸心方向から見て、前記ローラが前記第2方向に公転させられるにしたがって、前記回転軸に対して前記径方向の距離が大きくなる螺旋状の溝であり、前記回転軸の回転方向に沿って延びる溝形状を有し、前記回転方向における一方の端部と、前記一方の端部よりも前記径方向において前記回転軸から離れて配置される他方の端部と、を有し、
前記ローラは、前記ローラ本体の前記軸心方向における一端面に設けられ、前記ガイド部に嵌合する嵌合部を有し、前記嵌合部が前記ガイド部の前記他方の端部に位置するときに前記ローラが前記押圧位置に位置し、前記嵌合部が前記ガイド部の前記一方の端部に位置するときに前記ローラが前記解放位置に位置し、
前記ローラが前記押圧位置で前記第2方向に公転させられるときに、前記ローラ本体と前記チューブの接触により前記ローラが前記回転体と連れ回らず、前記回転体の回転に伴って前記嵌合部が前記他方の端部から前記一方の端部へ移動させられて前記解放位置に位置づけられるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のチューブポンプ。
前記チューブは、第1部分と、前記軸心方向に前記第1部分と並ぶ第2部分と、を有するように、前記円筒室の内周面に沿って前記回転軸を中心に1周して配置され、前記第1部分と前記第2部分は、前記第2領域に対応する位置に配設されている、請求項4に記載のチューブポンプ。
前記ガイド部は、前記回転軸の軸心方向から見て、前記ローラが前記第2方向に公転させられるにしたがって、前記回転軸に対して前記径方向の距離が大きくなる螺旋状の溝であり、前記回転軸の回転方向に沿って延びる溝形状を有し、前記回転方向における一方の端部と、前記一方の端部よりも前記径方向において前記回転軸から離れて配置される他方の端部と、を有し、
前記ローラは、前記ローラ本体の前記軸心方向における一端面に設けられ、前記ガイド部に嵌合する嵌合部を有し、前記嵌合部が前記ガイド部の前記他方の端部に位置するときに前記ローラが前記押圧位置に位置し、前記嵌合部が前記ガイド部の前記一方の端部に位置するときに前記ローラが前記解放位置に位置し、
前記ローラが前記押圧位置で前記第2方向に公転させられるときに、前記ローラ本体と前記チューブの接触により前記ローラが前記回転体と連れ回らず、前記回転体の回転に伴って前記嵌合部が前記他方の端部から前記一方の端部へ移動させられて前記解放位置に位置づけられるように構成されることを特徴とする、請求項7に記載のチューブポンプ。
前記ガイド部は、前記回転軸の軸心方向から見て、前記ローラが前記第2方向に公転させられるにしたがって、前記回転軸に対して前記径方向の距離が大きくなる螺旋状の溝であり、前記回転軸の回転方向に沿って延びる溝形状を有し、前記回転方向における一方の端部と、前記一方の端部よりも前記径方向において前記回転軸から離れて配置される他方の端部と、を有し、
前記ローラは、前記ローラ本体の前記軸心方向における一端面に設けられ、前記ガイド部に嵌合する嵌合部を有し、前記嵌合部が前記ガイド部の前記他方の端部に位置するときに前記ローラが前記押圧位置に位置し、前記嵌合部が前記ガイド部の前記一方の端部に位置するときに前記ローラが前記解放位置に位置し、
前記ローラが前記押圧位置で前記第2方向に公転させられるときに、前記ローラ本体と前記チューブの接触により前記ローラが前記回転体と連れ回らず、前記回転体の回転に伴って前記嵌合部が前記他方の端部から前記一方の端部へ移動させられて前記解放位置に位置づけられるように構成されることを特徴とする、請求項9に記載のチューブポンプ。
前記チューブは、第1部分と、前記軸心方向に前記第1部分と並ぶ第2部分と、を有するように、前記円筒室の内周面に沿って前記回転軸を中心に1周して配置され、前記第1部分と前記第2部分は、前記第2領域に対応する位置に配設されている、請求項9に記載のチューブポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態の具体例について図面を参照して説明する。なお、全ての図面において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するために必要となる構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0016】
(実施の形態1)
[チューブポンプの構成]
図1は、本実施の形態1に係るチューブポンプの概略構成を示す模式図である。
図2は、
図1に示すチューブポンプを上方から見た模式図である。
図3及び
図4は、
図1に示すチューブポンプを上方から見た透視図であり、
図3は、ローラが押圧位置に位置するときを示し、
図4は、ローラが解放位置に位置するときを示している。
図5は、
図3に示すC−C断面図である。
図6A及び
図6Bは、
図1に示すチューブポンプの回転体の概略構成を示す模式図であり、
図6Aは、回転体を下方から見た斜視図であり、
図6Bは、回転体を上方から見た斜視図である。
【0017】
なお、
図1においては、チューブポンプにおける上下方向を図における上下方向として表している。また、
図3及び
図4においては、回転体の記載を省略し、チューブが重なっている部分にハッチングを付している。さらに、
図5においては、回転体及びロータの記載を省略し、内周面の第1領域と第2領域のそれぞれに異なるハッチングを付している。
【0018】
図1〜
図6Bに示すように、本実施の形態1に係るチューブポンプ1は、内部に流体が流れるチューブ2と、円筒室30を有するハウジング部材3と、回転軸40を有する回転体4と、ローラ本体50、第1ローラ軸51、及び第2ローラ軸52を有するローラ5と、当接部材6と、を備えていて、チューブ2、回転体4、ローラ5、及び当接部材6が円筒室30内に配置されている。
【0019】
そして、チューブポンプ1は、ローラ5が回転体4の回転に伴って、チューブ2を押圧しながら公転することにより、チューブ2内の流体が搬送されるように構成されている。
【0020】
ハウジング部材3の円筒室30は、凹状に形成されていて、回転軸40の軸心方向における一方の端部(一端部;上端部)側が開口されている。回転軸40の軸心方向(上方)から見て、円筒室30の底面の中心部には、凹部(貫通孔)31が設けられていて、該凹部31には、回転軸40の軸心方向における他方の端部(他端部;下端部)が回動自在に配置されている。
【0021】
回転体4は、例えば、印刷装置の用紙を搬送するためのモータ(図示せず)等によって、回転軸40の軸心を中心にして、回転するように構成されている。また、回転体4は、回転軸40の上部に設けられている第1部材41と、回転軸40の下部に設けられている第2部材42と、第1部材41に設けられているガイド部43と、をさらに有している。
【0022】
ここで、
図6A及び
図6Bを参照しながら、回転体4の構成について、詳細に説明する。
【0023】
第1部材41は円板状に形成されていて、第1部材41の主面には、軸心方向から見て、ローラ5が矢印B方向に公転させられるにしたがって、回転軸40に対して径方向の距離が大きくなる螺旋状の溝が設けられており、当該螺旋状(円弧状)の溝が、ガイド部43を構成する。なお、ガイド部43の回転軸40の軸心に近い側の端部(一方の端部)が解放位置43Rを構成し、ガイド部43の回転軸40の軸心から遠い側の端部(他方の端部)が押圧位置43Pを構成する。
【0024】
また、回転軸40の軸心方向から見て、第1部材41の下面外周部におけるガイド部43の解放位置43Rと重なる部分近傍には、第1部材41の下面の一部が上方に凹んだ第1凹部が形成されている。当該第1凹部が、後述するローラ5のローラ本体50との接触しないようにする第1逃げ部44を構成する。
【0025】
第1逃げ部44は、回転軸40の軸心方向から見て、略矩形状(台形状)に形成されていて、第1部材41の径方向の長さ寸法及び第1部材41の周方向の長さ寸法が、それぞれ、ローラ本体50の直径よりも大きくなるように形成されている。
【0026】
第2部材42は、円板状に形成されていて、回転軸40の軸心方向から見て、第2部材42の外周部におけるガイド部43と重なる部分が扇状に切り欠かれている。また、回転軸40の軸心方向から見て、第2部材42の上面における解放位置43Rに近い側の端部には、第2部材42の上面部分が下方に凹んだ第2凹部が形成されている。当該第2凹部が、ローラ5のローラ本体50との接触しないようにする第2逃げ部45を構成する。
【0027】
第2逃げ部45は、回転軸40の軸心方向から見て、略L字状に形成されていて、第2部材42の外周部から径方向に延びる第1部分45Aと、第2部材42の切り欠かれた内側の円弧状部分に沿って延びる第2部分45Bと、を有している。第1部分45Aは、第2部材42の周方向の長さ寸法が、ローラ本体50外周面と第2ローラ軸52の外周面との間の長さよりも大きくなるように形成されている。
【0028】
また、
図2に示すように、ガイド部43には、ローラ5の第1ローラ軸51が回転自在、かつ、揺動自在に嵌挿されている。上述したように、ローラ5は、円柱状のローラ本体50と、ローラ本体50の上面に設けられている第1ローラ軸51と、ローラ本体50の下面に設けられている第2ローラ軸(軸部材)52と、を有している。
【0029】
ローラ5は、ローラ本体50、第1ローラ軸51、及び第2ローラ軸52の中心(軸心)が、それぞれ、一致するように形成されている。また、ローラ5は、後述するように、第2ローラ軸52が当接部材6の第2当接部62と当接して、その姿勢が変位されない限り、その中心が、回転軸40の軸心と略平行となるように配置されている。
【0030】
ローラ本体50は、該ローラ本体50の軸心方向における長さ寸法(高さ寸法)が、回転軸40の軸心方向における回転体4の第1部材41と第2部材42の間の長さ寸法よりも小さくなるように形成されている。そして、ローラ5は、ローラ本体50が、回転軸40の軸心方向において、第1部材41と第2部材42の間に位置するように、配置されている。
【0031】
また、ハウジング部材3の円筒室30の底面には、回転軸40の軸心方向から見て、凹部31の開口部周辺に当接部材6が配置されている。当接部材6は、ローラ5の回転方向に連続して繋がり、第2ローラ軸52と当接可能な周壁面を有しており、周壁面は、第1壁面と、第2壁面と、第1壁面と第2壁面とを接続し、回転軸40からの径方向の距離が等しく、ローラ5が解放位置43Rで公転させられるときに、径方向において第2ローラ軸52に対向する(第2ローラ軸52と当接する)第3壁面63と、を有している。
【0032】
詳細には、当接部材6は、円環状の第1当接部材6Aと、当該第1当接部材6Aの外周面から外方に突出するように形成された第2当接部材6Bを有している。第1当接部材6Aの内周面は、凹部31の開口と一致するように形成されている。第1当接部材6Aの外周面が第3壁面63を構成し、当該第3壁面63は、ローラ5が解放位置に位置するときの第2ローラ軸52(正確には、回転軸40に最も近い位置にある部分)の公転軌道と一致するように形成されている。
【0033】
なお、本実施の形態1においては、当接部材6は、円筒室30の底面と一体形成されている形態を採用したが、これに限定されず、当接部材6が、円筒室30の底面とは別部材で構成されている形態を採用してもよい。
【0034】
第2当接部材6Bは、第1当接部61と第2当接部62を有している。第1当接部61は、ローラ5が
図2に示す矢印A方向(第1方向)に公転させられるときに、解放位置43Rにあるローラ5の第2ローラ軸52の下端部(ローラ5の他端部)と当接して、ローラ5をガイド部43に沿って、押圧位置43Pに移動させるように構成されている。なお、本実施の形態1においては、ローラ5の他端部は、回転軸40の軸心方向において、中央より下方の部分を含む概念であり、第2ローラ軸52の下端部に限定されない。
【0035】
具体的には、第1当接部61は、解放位置43Rでのローラ5(ここでは、第2ローラ軸52の回転軸40に最も近い位置にある部分)の公転軌道から押圧位置43Pでのローラ5(ここでは、第2ローラ軸52の回転軸40に最も近い位置にある部分)の公転軌道に延びるように形成されている、平面状の第1壁面で構成されている。なお、本実施の形態1においては、第1当接部61が平面で構成されている形態を採用したが、これに限定されない。第1当接部61は、回転体4が矢印A方向に回転したときに、解放位置43Rにあるローラ5をガイド部43に沿って、押圧位置43Pに移動させることができれば、どのような形態であってもよく、例えば、曲面状に形成されていてもよい。
【0036】
また、第2当接部62は、ローラ5が、矢印A方向とは反対の方向である、矢印B方向(第2方向)に公転させられるときに、ローラ5が解放位置43Rで公転するように、第2ローラ軸52の下端部と当接することにより、ローラ5の姿勢を変位させて、第1当接部61を通過させるように構成されている。
【0037】
具体的には、第2当接部62は、ローラ5が矢印B方向に公転させられるにしたがって、第2ローラ軸52の下端部が第1ローラ軸51の上端部(ローラ5の一端部)よりも、ローラ5の径方向において回転軸40から徐々に離れるように、ローラ5を傾斜させる曲面状の第2壁面で構成されている。より詳細には、第2当接部62は、その始端部が第1当接部材6Aの外周面に接続されており、その終端部は、第1当接部61の外側端部と接続されていて、回転軸40の軸心方向から見て、円弧状(対数螺旋状)に形成されている。
【0038】
なお、本実施の形態1においては、ローラ5の一端部は、回転軸40の軸心方向において、中央より上方の部分を含む概念であり、第1ローラ軸51の上端部に限定されない。また、本実施の形態1においては、第2当接部62が曲面で構成されている形態を採用したが、これに限定されない。第2当接部62は、ローラ5が矢印B方向に公転させられるにしたがって、ローラ5の姿勢を変位させることができれば、どのような形態であってもよく、多角形状に形成されていてもよい。
【0039】
また、
図2〜
図4に示すように、ハウジング部材3の側面には、2つの貫通孔33、34が設けられていて、これらの貫通孔33、34を挿通して、円筒室30の内周面に沿って周回するように(回転軸40を中心に1周するように)、チューブ2が配置されている。
【0040】
ここで、
図2〜
図5を参照しながら、円筒室30の内周面とチューブ2の配置関係について、詳細に説明する。
【0041】
まず、円筒室30の内周面について、説明する。
【0042】
図3〜
図5に示すように、円筒室30の内周面は、第1領域131と第2領域132を有している。
第2領域132は、円筒室30の径方向において、当接部材6の第2当接部62に対応する領域である。また、
第1領域131は、ローラ5の回転方向(
図2に示す矢印B方向)に向かって
第2領域132の一端から他端に延びる領域である。
【0043】
換言すれば、
第2領域132は、円筒室30の径方向から見て、円筒室30の内周面のうち、第2当接部62と対向する領域である。また、
第1領域131は、円筒室30の内周面のうち、
第2領域132以外の領域である。
【0044】
なお、本実施の形態1においては、円筒室30の内周面が、第1領域131と第2領域132を有する形態を採用したが、これに限定されず、これらの領域以外の領域を有する形態を採用してもよい。
【0045】
次に、円筒室30の内周面とチューブ2の配置関係について、説明する。
【0046】
チューブ2は、回転体4の軸心方向から見て、円筒室30内でα字状に交差するように配置されている(
図3及び
図4参照)。そして、チューブ2は、その交差部分である第1部分21と第2部分22が、円筒室30の径方向から見て、円筒室30の内周面における第2領域132に対応する(対向する)位置に配置されている。第1部分21と第2部分22は、軸心方向に並ぶ(重なる)ように配置されている。すなわち、回転軸40の軸心方向から見て、第1部分21と第2部分22が、重なるように配置されている。
【0047】
また、チューブ2は、円筒室30の径方向から見て、円筒室30の内周面における第1領域131に対応する(対向する)部分23が、円筒室30の底面よりも該円筒室30の開口近くに位置するように配置されている。
【0048】
なお、本実施の形態1においては、チューブ2が円筒室30内でα字状に交差するように配置されている形態を採用したが、これに限定されない。例えば、チューブ2が、円筒室30内でU字状に配置されている形態を採用してもよい。
【0049】
[チューブポンプの動作]
次に、本実施の形態1に係るチューブポンプの動作について、
図1〜
図6Bを参照しながら説明する。
【0050】
[チューブポンプの吸引動作]
まず、チューブポンプ1の吸引動作について、説明する。
【0051】
図2及び
図3に示すように、ローラ5が、ガイド部43の押圧位置43Pの位置に位置しており、矢印A方向に回転体4が図示されないモータにより、回転したとする。すると、ローラ5は、第1ローラ軸51の上端部が、ガイド部43の押圧位置43Pを構成する他方の端部と接触しているので、回転体4の回転に伴って、矢印A方向に公転する。
【0052】
これにより、ローラ5がチューブ2を順次、押圧しながら好転するため、チューブ2は、ローラ5(ローラ本体50)と円筒室30の内周面との間で加圧され、インク等の流体がチューブ2の一方の端部から吸引される。そして、ローラ5の公転に伴い、チューブ2内の流体が押し出されて搬送され、チューブ2の他方の端部から排出される。
【0053】
[ローラの押圧位置から解放位置への移動動作]
次に、ローラ5が、押圧位置43Pから解放位置43Rへ移動するときの動作について、説明する。
【0054】
まず、ローラ5が、ガイド部43の押圧位置43Pの位置に位置しているときに、回転体4が矢印B方向に回転したとする。すると、第1ローラ軸51の上端部は、ガイド部43の他方の端部との接触が解放されるため、回転体4の回転に伴って公転できなくなり、回転体4のみが回転する。
【0055】
このとき、第1ローラ軸51の上端部が、ガイド部43を構成する溝の側面とは接触し、かつ、ローラ本体50がチューブ2と接触しているので、回転体4の回転に伴って、ローラ5(第1ローラ軸51)は、ガイド部43に沿って、解放位置43Rに移動させられる。このようにして、ローラ5は、押圧位置43Pから解放位置43Rへ移動する。
【0056】
[ローラの解放位置での公転動作]
次に、ローラ5が解放位置43Rに位置するときの公転動作について、説明する。
【0057】
上述したように、ローラ5(第1ローラ軸51)が、解放位置43Rにまで到達すると、第1ローラ軸51の上端部がガイド部43の一方の端部と接触することにより、回転体4の回転に伴って、矢印B方向に公転する。これにより、ローラ5は、チューブ2と接触しない位置である解放位置43Rで公転するので、チューブ2の押圧が解放される。
【0058】
そして、ローラ5が、解放位置43Rの位置で公転しているときに、当接部材6の第2当接部62の始端部に至ると、第2ローラ軸52の下端部と第2当接部62の始端部とが当接して、第2ローラ軸52の下端部は、第2当接部62に沿って公転する。一方、ローラ5の第1ローラ軸51は、解放位置43Rの位置で公転する。このため、ローラ5は、その姿勢を変位させながら、公転する。具体的には、ローラ5の下端部が上端部に比して、ローラ5の径方向において回転軸40から離れるように、傾斜しながら公転する。
【0059】
ここで、
図6Aに示すように、第1部材41の下面には、上方に凹むように形成された第1逃げ部44が設けられている。このため、ローラ5が傾斜するときに、ローラ本体50の上部と第1部材41の下面との接触が抑制され、ローラ5を容易に傾斜させることができる。
【0060】
また、
図1の破線で示すように、チューブ2が、円筒室30の下部に配置されていると、ローラ5の傾斜により、ローラ本体50と接触し、押圧される。しかしながら、本実施の形態1においては、
図5に示すように、チューブ2は、部分23が円筒室30の上部に配置されている。このため、ローラ5が傾斜しても、チューブ2とローラ本体50との接触を抑制することができる。これにより、チューブ2内の流体の逆流を抑制することができる。
【0061】
そして、ローラ5(第2ローラ軸52)が、第2当接部62の終端部に至ると、第2ローラ軸52の下端部は、第2当接部62との当接から解放され、第1当接部61を通過する。
【0062】
ここで、
図6Bに示すように、第2部材42の上面には、下方に凹むように形成された第2逃げ部45が設けられている。このため、ローラ5が、第1当接部61を通過したときに、ローラ本体50の下部と第2部材42との接触が抑制される。また、第2部材42における第2ローラ軸52との接触する部分を小さくすることができる。これにより、ローラ5と第2部材42とが接触するときに発生する衝撃音を小さくすることができる。
【0063】
ローラ5が第1当接部61を通過すると、第2ローラ軸52は、解放位置43Rの位置に戻り、ローラ5は、回転軸40の軸心方向と平行な姿勢に戻り、公転する。
【0064】
[ローラの解放位置から押圧位置への移動動作]
まず、ローラ5が、ガイド部43の解放位置43Rの位置に位置しているときに、回転体4が矢印A方向に回転したとする。ローラ5は、第1ローラ軸51の上端部が、ガイド部43を構成する溝の側面とは接触しており、かつ、ローラ本体50がチューブ2と接触していないので、第2ローラ軸52の下端部が当接部材6の第1当接部61に当接するまで、回転体4の回転に伴って、矢印A方向に公転する。
【0065】
そして、第2ローラ軸52の下端部が当接部材6の第1当接部61に当接すると、ローラ5は、第1当接部61により、矢印A方向への移動(公転)が妨げられる。一方、回転体4は、矢印A方向に回転しているため、第1ローラ軸51が、ガイド部43に沿って、押圧位置43Pへ移動させられる。これにより、ローラ5は、第1当接部61の外方側端部に向かって、移動させられる。
【0066】
ローラ5(第1ローラ軸51)が、押圧位置43Pにまで到達すると、第2ローラ軸52は、第1当接部61との接触が解放され、第1ローラ軸51の上端部がガイド部43の他方の端部と接触し、ローラ本体50がチューブ2と接触する。これにより、ローラ5は、回転体4の回転に伴って、矢印A方向に公転する。
【0067】
このように構成された、本実施の形態1に係るチューブポンプ1では、ローラ5が第1方向に公転させられるときに、解放位置43Rにあるローラ5の他端部と当接して、ローラ5をガイド部43に沿って、押圧位置43Pに移動させるように構成されている第1当接部61と、ローラ5が第2方向に公転させられるときに、ローラ5が解放位置43Rで公転するように、ローラ5の他端部と当接することにより、ローラ5の姿勢を変位させて、第1当接部61を通過させるように構成されている第2当接部62と、を有する当接部材6を備えている。
【0068】
具体的には、第1当接部61は、ローラ5の第1方向への公転を妨げるように、解放位置43Rでのローラ5の公転軌道から押圧位置43Pでのローラ5の公転軌道に延びるように形成されている第1壁面で構成され、第2当接部62は、ローラ5が第2方向に公転させられるにしたがって、ローラ5の他端部がローラ5の一端部よりも、径方向において回転軸40から離れるように、ローラ5を傾斜させる第2壁面で構成されている。
【0069】
このため、ローラ5の他端部が当接部材6と当接することで、ローラ5の姿勢が変位するので、当接部材6が変形することがない。したがって、上記従来のチューブポンプにおけるガイド部材に比して、当接部材6の劣化が充分に抑制され、ポンプ性能の低下を抑制することができる。
【0070】
また、ローラ5の他端部が当接部材6と当接することにより、ローラ5が押圧位置43Pと解放位置43Rとの間を移動できるため、ローラ5が常時チューブ2と接触する必要がなくなる。このため、チューブ2を完全解放することができ、ローラ5が常時チューブ2と接触する必要のある従来技術に比して、チューブ2の劣化を抑制することができる。
【0071】
さらに、ローラ5が常時チューブ2と接触する必要がないため、ローラ5とチューブ2の間に、グリースを塗布することができ、トルクの低減及びチューブの耐久性を向上させることができる。
【0072】
また、本実施の形態1に係るチューブポンプ1では、円筒室30は、ハウジング部材3に対して凹形状に形成され、円筒室30の内周面は、径方向において第2当接部62に対応する第1領域131を有し、チューブ2は、第1領域131に対応する部分23を有し、当接部材6は、円筒室30の底面に配置されていて、軸心方向において、チューブ2の第1領域131に対応する部分23が、底面よりも円筒室30の開口の近くに配置されている。
【0073】
これにより、ローラ5が傾斜したときに、ローラ5の一端部が円筒室30の内周面のうち第1領域131に位置するチューブ2(チューブ2の部分23)と接触することを抑制できる。このため、チューブ2内の流体の逆流を抑制することができる。
【0074】
また、本実施の形態1に係るチューブポンプ1では、円筒室30の内周面は、ローラ5の回転方向において第1領域131の一端から他端に延びる第2領域132を更に有し、チューブ2は、第1部分21と、軸心方向に第1部分21と並ぶ第2部分22と、を有し、第1部分21と第2部分22は、第2領域132に対応する位置に配設されている。
【0075】
これにより、ローラ5が傾斜したときに、ローラ5の一端部がチューブ2の第1部分21及び第2部分22と接触することが抑制される。このため、チューブ2内の流体の逆流を抑制することができる。
【0076】
また、本実施の形態1に係るチューブポンプ1では、回転体4は、回転軸40の他端部に配設されている第2部材42をさらに有し、ローラ5は、ローラ本体50が第1部材41と第2部材42の間に位置するように配設されており、第1部材41には、第1部材41と第2部材42間の軸心方向における距離を他の部分よりも大きくする第1逃げ部44が設けられている。
【0077】
これにより、ローラ5が傾斜するときに、ローラ本体50の上部と第1部材41の下面との接触が抑制され、ローラ5を容易に傾斜させることができる。
【0078】
さらに、本実施の形態1に係るチューブポンプ1では、回転体4は、回転軸40の他端部に配設されている第2部材42をさらに有し、ローラ5は、ローラ本体50が第1部材41と第2部材42の間に位置するように配設されており、第2部材42には、第1部材41と第2部材42間の軸心方向における距離を他の部分よりも大きくする第2逃げ部45が設けられている。
【0079】
これにより、ローラ5が、第1当接部61を通過したときに、ローラ本体50の下部と第2部材42との接触が抑制される。また、第2部材42における第2ローラ軸52との接触する部分を小さくすることができる。このため、ローラ5と第2部材42とが接触するときに発生する衝撃音を小さくすることができる。
【0080】
また、チューブポンプ1が吸引動作を行うために、ローラ5が押圧位置43Pに位置する状態で回転体4が第1方向(
図2に示す矢印A方向)に回転し続けたとしても、第2ローラ軸52は回転体4が1回転する度に第1当接部61に当接することはない。従来のチューブポンプでは、吸引動作のときに回転体が1回転する度に、ローラと当接部が衝突し、この衝突によって異音が発生していた。しかし、チューブポンプ1は、回転体4が第1方向に回転し続けたとしても、第2ローラ軸52が第1当接部61に当接することがない。その為、チューブポンプ1を使って吸引動作等を行っているときには、従来のチューブポンプに比べて静かである。
【0081】
尚、本実施の形態の回転軸40は、本発明の「回転軸」の一例である。また、本実施の形態のガイド部43の解放位置43Rと回転軸40の中心とを距離が、本発明の「第1距離」の一例である。また、本実施の形態のガイド部43の押圧位置43Pと回転軸40の中心とを距離が、本発明の「第2距離」の一例である。
【0082】
(実施の形態2)
[チューブポンプの構成]
図7は、本実施の形態2に係るチューブポンプの概略構成を示す模式図である。なお、
図7においては、回転体及びローラの記載を省略している。
【0083】
図7に示すように、本実施の形態2に係るチューブポンプ1は、実施の形態1に係るチューブポンプ1と基本的構成は同じであるが、当接部材6の第2当接部62の構成が異なる。具体的には、第2当接部62は、ローラ5が第2方向(
図2に示す矢印B方向)に公転させられるにしたがって、ローラ5の他端部からローラ5の一端部へ向かう方向に移動するように形成されている傾斜面で構成されている。
【0084】
より詳細には、第2当接部62は、回転軸40の軸心方向から見て、扇状に形成されており、始端部が第1当接部材6Aの外周面に接続されており、終端部が第1当接部61に接続されている。また、第2当接部62は、その上面が第2方向に向かうにしたがって、上方に位置するように傾斜する傾斜面で構成されている。
【0085】
[チューブポンプの動作]
次に、本実施の形態2に係るチューブポンプ1の動作について、説明する。なお、ローラ5の解放位置43Rに位置するときの公転動作以外の動作は、実施の形態1に係るチューブポンプ1と同様の動作であるため、その詳細な説明を省略する。
【0086】
ローラ5が、解放位置43Rの位置で公転しているときに、当接部材6の第2当接部62の始端部に至ると、第2ローラ軸52の下端は、第2当接部62を構成する傾斜面を登るように移動する。一方、第1ローラ軸51の上端部がガイド部43の一方の端部と接触していることにより、回転体4の回転に伴って(回転体4の回転と同期して)、矢印B方向に公転する。
【0087】
このため、ローラ5は、公転方向(矢印B方向)に対して、前後方向(ローラ5の上端部が前方、ローラ5の下端部が後方)に傾斜するように、その姿勢を変位させながら公転する。
【0088】
そして、ローラ5(第2ローラ軸52)が、第2当接部62の終端部に至ると、第2ローラ軸52の下端は、第2当接部62との当接から解放され、第1当接部61を通過する。ローラ5が、第1当接部61を通過すると、ローラ5は、回転軸40の軸心方向と平行な姿勢に戻り、公転する。
【0089】
このように構成された、本実施の形態2に係るチューブポンプ1では、第1当接部61が、ローラ5の第1方向への公転を妨げるように、解放位置43Rでのローラ5の公転軌道から押圧位置43Pでのローラ5の公転軌道に延びるように形成されている第1壁面で構成され、第2当接部62が、ローラ5が第2方向に公転させられるにしたがって、ローラ5の他端部からローラ5の一端部へ向かう方向に移動するように形成されている傾斜面で構成されている。
【0090】
このため、ローラ5の他端部が当接部材6と当接することで、ローラ5の姿勢が変位するので、当接部材6が変形することがない。このため、上記従来のチューブポンプにおけるガイド部材に比して、当接部材6の劣化が充分に抑制され、ポンプ性能の低下を抑制することができる。
【0091】
また、ローラ5の他端部が当接部材6と当接することにより、ローラ5が押圧位置43Pと解放位置43Rとの間を移動できるため、ローラ5が常時チューブ2と接触する必要がなくなる。このため、チューブ2を完全解放することができ、ローラ5が常時チューブ2と接触する必要のある従来技術に比して、チューブ2の劣化を抑制することができる。
【0092】
さらに、ローラ5が常時チューブ2と接触する必要がないため、ローラ5とチューブ2の間に、グリースを塗布することができ、トルクの低減及びチューブの耐久性を向上させることができる。
【0093】
(実施の形態3)
[チューブポンプの構成]
図8は、本実施の形態3に係るチューブポンプの概略構成を示す模式図である。なお、
図8においては、回転体及びローラの記載を省略している。
【0094】
図8に示すように、本実施の形態3に係るチューブポンプ1は、実施の形態1に係るチューブポンプ1と基本的構成は同じであるが、当接部材6の構成が異なる。具体的には、当接部材6は、ローラ5の公転方向に対して、交差する2つの面を備え、第1当接部61は、当接部材6の一方の面で構成されており、第2当接部62は、当接部材6の他方の面で構成されている。
【0095】
より詳細には、当接部材6は、解放位置43Rでのローラ5(ここでは、第2ローラ軸52の内側の端面)の公転軌道から押圧位置43Pでのローラ5(ここでは、第2ローラ軸52の内側の端面)の公転軌道に延びるように形成されている板部材で構成されている。そして、第1当接部61は、板部材の一方の主面で構成されていて、第2当接部62は、他方の主面で構成されている。
【0096】
[チューブポンプの動作]
次に、本実施の形態3に係るチューブポンプ1の動作について、説明する。なお、ローラ5の解放位置43Rに位置するときの公転動作以外の動作は、実施の形態1に係るチューブポンプ1と同様の動作であるため、その詳細な説明を省略する。
【0097】
ローラ5が、解放位置43Rの位置で、
図2に示す矢印B方向に公転しているときに、当接部材6の第2当接部62に至ると、第2ローラ軸52の下端部は、第2当接部62を構成する主面と当接し、ローラ5の他端部の矢印B方向への移動が妨げられる。一方、第1ローラ軸51の上端部がガイド部43の一方の端部と接触していることにより、回転体4の回転に伴って(回転体4の回転と同期して)、矢印B方向に公転する。
【0098】
このため、ローラ5は、公転方向(矢印B方向)に対して、前後方向(ローラ5の上端部が前方、ローラ5の下端部が後方)に傾斜するように、その姿勢が変位させられる。
【0099】
そして、ローラ5の前後方向への傾斜が大きくなると、第1ローラ軸51の上端と第2ローラ軸52の下端との距離が大きくなり、第2ローラ軸52の下端が第2当接部62を乗り越えて、第1当接部61を通過する。ローラ5が、第1当接部61を通過すると、ローラ5は、回転軸40の軸心方向と平行な姿勢に戻り、公転する。
【0100】
このように構成された、本実施の形態3に係るチューブポンプ1では、当接部材6が、ローラ5の公転方向に対して、交差する2つの面を備え、第1当接部61は、当接部材6の一方の面で構成されており、第2当接部62は、当接部材6の他方の面で構成されている。
【0101】
このため、ローラ5の他端部が当接部材6と当接することで、ローラ5の姿勢が変位するので、当接部材6が変形することがない。このため、上記従来のチューブポンプにおけるガイド部材に比して、当接部材6の劣化が充分に抑制され、ポンプ性能の低下を抑制することができる。
【0102】
また、ローラ5の他端部が当接部材6と当接することにより、ローラ5が押圧位置43Pと解放位置43Rとの間を移動できるため、ローラ5が常時チューブ2と接触する必要がなくなる。このため、チューブ2を完全解放することができ、ローラ5が常時チューブ2と接触する必要のある従来技術に比して、チューブ2の劣化を抑制することができる。
【0103】
さらに、ローラ5が常時チューブ2と接触する必要がないため、ローラ5とチューブ2の間に、グリースを塗布することができ、トルクの低減及びチューブの耐久性を向上させることができる。
【0104】
(実施の形態4)
[印刷装置の構成]
図9は、本実施の形態4に係る印刷装置の概略構成を示す模式図である。
図10は、
図9に示す印刷装置の機能的構成を示すブロック図である。
【0105】
図9及び
図10に示すように、本実施の形態4に係る印刷装置100は、実施の形態1のチューブポンプ1と、駆動器の一例である搬送モータ210と、制御器200と、を備えていて、制御器200は、ローラ5を押圧位置43Pから解放位置43Rに移動させるときに、ローラ5が回転軸40を中心に少なくとも1周公転するよう回転体4を回転させるように、搬送モータ210を制御する。
【0106】
また、本実施の形態4に係る印刷装置100は、記録ヘッド71、キャップ72、キャリッジ73、メンテナンスユニット180、及び搬送機構190を備えていて、図示されない給紙トレイから搬送機構190により、搬送(給紙)された用紙195に画像を印刷し、画像が印刷された用紙195を、搬送機構190により排出トレイ(図示せず)へ排出するように構成されている。
【0107】
キャリッジ73は、キャリッジモータ211により、駆動させられ、記録ヘッド71を走査方向に往復移動させるように構成されている。具体的には、キャリッジ73は、走査方向に延びるように配置されている一対のガイドレール173によって支持されていて、当該ガイドレール173に沿って、走査方向に往復移動する。
【0108】
記録ヘッド71は、図示されないメインタンク(カードリッジ)から供給されるインクをノズル71aのノズル孔から吐出して、用紙195に画像を記録するように構成されている。なお、記録ヘッド71の具体的構成については、公知のインクジェット方式のプリンタに搭載されている記録ヘッドと同様に構成されており、その詳細な説明は省略する。
【0109】
搬送機構190は、給紙ローラ192、搬送ローラ193、排出ローラ194、及びチューブポンプ1を駆動するための搬送モータ210と、キャリッジ73を駆動させるためのキャリッジモータ211を有している。搬送モータ210及びキャリッジモータ211は、制御器200により制御される。
【0110】
メンテナンスユニット180は、記録ヘッド71のインク吐出性能を維持及び回復する各種のメンテナンス作業を行うユニットである。メンテナンスユニット180は、キャップ72、チューブポンプ1、廃液タンク181、切換器182、及びチューブ2を有している。
【0111】
キャップ72は、キャッピング機構(図示せず)により、印刷装置100が印刷処理を実行していないときに、記録ヘッド71のインク吐出面と接触して、当該インク吐出面(ノズル)をキャッピングしている。また、キャップ72は、キャッピング機構により、印刷装置1が印刷処理を実行するときには、記録ヘッド71から解離される。
【0112】
チューブ2の一方の端部は、キャップ72の吸引孔(図示せず)に接続されていて、チューブ2の他方の端部は、廃液タンク181に接続されている。また、チューブ2の途中には、チューブポンプ1が配置されていて、チューブ2の一方の端部とチューブポンプ1との間には、切換器182が配置されている。
【0113】
切換器182は、キャップ72の内部空間を大気に開放、又は閉止するように構成されていて、例えば、開閉弁で構成されていてもよい。キャップ72が記録ヘッド71をキャッピングした状態で、かつ、切換器182により、キャップ72の内部空間が大気との連通が閉止されている状態で、チューブポンプ1のローラ5が、回転体4の回転に伴って、押圧位置43Pで公転することにより、キャップ72内に負圧が発生する。これにより、記録ヘッド71のノズル及び/又はキャップ72内に残存しているインクが、チューブ2に排出され、チューブ2内を通流して、廃液タンク80に排出される。
【0114】
図10に示すように、制御器200は、第1基板及び第2基板を備えていて、第1基板にはCPU201、ROM202、RAM203、及びEEPROM204が実装され、第2基板にはASIC205が実装されている。ASIC205には、各ドライバ(図示せず)を介して、搬送モータ210、キャリッジモータ211、及び記録ヘッド71等が接続されている。
【0115】
CPU201は、PC等の外部装置から印刷ジョブの入力を受け付けると、ROM202に記憶されたプログラムに基づいて印刷ジョブ実行の指令をASIC205へ出力する。ASIC205は、この指令に基づいて各ドライバを駆動する。RAM203は、各種のデータを一時的に記憶するためのメモリである。
[印刷装置の動作]
【0116】
次に、本実施の形態4に係る印刷装置100の動作について、
図1〜
図6B、
図9、及び
図10を参照しながら説明する。
【0117】
まず、ユーザーが、図示されない印刷装置100の操作器等を操作することにより、記録ヘッド71のクリーニング処理(メンテナンス処理)の実行を入力したとする。このとき、チューブポンプ1のローラ5は、チューブ2の劣化を抑制するため、チューブ2と接触しない位置である、解放位置43Rに位置している。また、キャップ72は、記録ヘッド71をキャップした状態にある。
【0118】
制御器200は、ユーザーによるクリーニング処理の実行の入力に伴い、ROM202に記録されているプログラムを実行し、以下の動作が実行される。
【0119】
制御器200は、チューブ2を閉止させるように切換器182を制御し、回転体4を
図2に示す矢印A方向に回転するよう、搬送モータ210を制御する。これにより、ローラ5は、回転体34の回転に伴って、矢印A方向に公転する。そして、ローラ5の下端部が、第1当接部61に当接すると、ローラ5は、第1当接部61の外方側端部に向かって、移動させられる。
【0120】
ローラ5が、押圧位置43Pにまで到達すると、ローラ5の下端部は、第1当接部61との接触が解放され、第1ローラ軸51の上端部がガイド部43の他方の端部と接触し、ローラ本体50がチューブ2と接触する。これにより、ローラ5は、回転体4の回転に伴って、チューブ2を押圧しながら、矢印A方向に公転する。このため、キャップ72内に負圧が発生し、記録ヘッド71のノズル及び/又はキャップ72内に残存しているインクが、チューブ2に排出され、チューブ2内を通流して、廃液タンク80に排出される。
【0121】
制御器200は、所定の時間、回転体4を
図2に示す矢印A方向に回転するよう、搬送モータ210を制御した後に、キャップ72の内部空間を大気に連通するように切換器182を制御し、回転体4を
図2に示す矢印B方向に回転するよう搬送モータ210を制御する。
【0122】
このとき、制御器200は、ローラ5が回転軸40を中心に少なくとも1周公転するように、搬送モータ210を制御する。これにより、ローラ5が、押圧位置43Pの公転軌道上のどの部分に位置していても、ローラ5は、押圧位置43Pから解放位置43Rに移動することができる。
【0123】
このため、本実施の形態4に係る印刷装置100では、回転体4の回転角度を検知するセンサを設ける必要がなくなり、印刷装置100の製造コストを低減することができる。
【0124】
また、ローラ5が、押圧位置43Pから解放位置43Rに移動し、解放位置43Rで公転するときに、ローラ5がチューブ2との接触を抑制される。このため、チューブ2内の流体の逆流を抑制することができる。
【0125】
さらに、ローラ5が解放位置43Rで公転するときに、チューブ2内の流体の逆流を抑制することができるため、従来の印刷装置のように、ローラ5が解放位置43Rに移動したことを検知する検知器を設ける必要がなくなる。また、ローラ5が解放位置43Rに移動すると、回転体4の回転を停止させるように、搬送モータ210を制御する必要がなくなる。
【0126】
このため、本実施の形態4に係る印刷装置100では、ローラ5の位置を検知する位置センサ及び回転体4の回転角度を検知するセンサを設けなくてもよいため、印刷装置100の製造コストを低減することができる。また、ローラ5の位置と回転体4の回転角度の制御という複雑な制御をする必要がないため、制御プログラムの開発等にかかるコストを低減することができる。
【0127】
また、ローラ5が、解放位置43Rで少なくとも1周公転するときに、第1当接部61を通過する場合がある。このような場合、ローラ5と回転体4とが接触し、衝撃音が発生する。
【0128】
しかしながら、本実施の形態4に係る印刷装置100では、回転体4の第2部材42には、第2逃げ部45が設けられているため、ローラ5が、第1当接部61を通過したときに、ローラ本体50の下部と第2部材42との接触が抑制される。また、第2部材42における第2ローラ軸52との接触する部分を小さくすることができる。このため、ローラ5と第2部材42とが接触するときに発生する衝撃音を小さくすることができる。
【0129】
このように、本実施の形態4に係る印刷装置100は、実施の形態1に係るチューブポンプ1を備えているため、上記実施の形態1のチューブポンプ1の作用効果を奏する。
【0130】
なお、本実施の形態4に係る印刷装置100では、チューブポンプ1を駆動する駆動器として、搬送モータ210を例示したが、これに限定されず、キャリッジモータ211により、チューブポンプ1が駆動されてもよい。
【0131】
本実施の形態4に係る印刷装置100では、実施の形態1に係るチューブポンプ1を備える形態を採用したが、これに限定されず、実施の形態2又は3に係るチューブポンプ1を備える形態を採用してもよい。
【0132】
(実施の形態5)
図11,12は、本実施の形態5に係るチューブポンプの概略構成を示す模式図である。
【0133】
図11,12に示すように、チューブポンプ201は、本実施の形態1のチューブポンプ1とは異なり、ガイド部243が形成された回転体234を備えている。ガイド部243は、矢印A方向において、本実施の形態1のガイド部43よりも長い。また、
図12に示すように、圧力角αは、ローラ205の第1ガイド軸251が移動させられる矢印a方向に対して、ガイド部243のガイド壁243Aが第1ガイド軸251を推し進める矢印b方向との間の角度とする。また、チューブ202の表面の延在方向を示す矢印c方向に対して、回転体234の径方向と直交する方向を示す矢印d方向の角度をβとする。また、ローラ205とチューブ202の間に生じる転がり摩擦をμとする。ガイド部243の形状は、以下の数式1を満たすように設定される。
【0135】
本実施の形態1と同様に、回転体234は、第2部材242が扇状に切り欠かれており、第2ローラ軸252は、回転体234の径方向の外側へ移動できる。また、第1当接部261と第2当接部262の境界部分は、第2ガイド軸252が滑らかに移動できるように曲面形状である。回転体234が矢印B方向に回転して第1ガイド軸251が押圧位置243Pへ移動している途中で、第2ガイド軸252が第1当接部261と第2当接部262の境界部分に接触すると、第2ガイド軸252が境界部分を乗り越えるように移動させられる。その為、ローラ205が第1当接部261により移動が規制されず、第1ガイド軸251が押圧位置243Pに到達できない。ローラ205はチューブ202に接触しているが、ローラ205とチューブ202の間の摩擦が小さく、回転体234が回転しているときにローラ205が回転体234と一緒に移動しないように、ローラ205を停止させることができない。
【0136】
第1ガイド軸251に対するガイド壁243Aの圧力角αが小さければ、回転体234の回転により、第1ガイド軸251はガイド壁243Aに沿って移動させることができる。しかし、第1ガイド軸251に対するガイド壁243Aの圧力角αが小さいと、ガイド壁243Aの回転方向における径方向の傾斜が小さく、ガイド壁243Aの長さが回転方向に長くなる。逆に、第1ガイド軸251に対するガイド壁243Aの圧力角αが大きくなれば、ガイド壁243の長さは圧力角αが小さい場合に比べて短くなる。しかし、第1ガイド軸251に対するガイド壁243Aの圧力角αが大きいと、第1ガイド軸251がガイド壁243Aに沿って移動し難い。
【0137】
ところで、チューブ202がハウジング部材3の外側に引き出されるために、チューブ202の第2部分222は、矢印d方向に延在している。ローラ205がチューブ202の第2部分222に接触するときに、ローラ205が矢印d方向にチューブ202から反力を受ける。特に、チューブ202の第2部分222での反力が、ローラ205がチューブ202の他の部分に接触している場合に比べて大きく、ローラ205が回転体234と一緒に移動し難くなる。この反力を利用して、ローラ205を停止させ、第1ガイド軸251がガイド部234に沿って移動させることができる。ローラ205が第2部分222に接触したときに、ローラ205が回転体234の回転により停止させることができる為、ローラ205を確実に押圧位置243Pに到達させることができる。また、実施の形態5の第1ガイド軸251に対するガイド壁243Aの圧力角αは、ローラ205がチューブ202の他の部分と接触した状態でもローラ205が停止するように圧力角αが設定される場合に比べ、角度が大きい。その為、ガイド壁243Aの回転方向の長さを短くすることができる。その為、ガイド部243が無駄に長くならず、ガイド部243の形状を適切に設定できる。
【0138】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の要旨を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。