特許第6790412号(P6790412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790412
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】生体情報測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   A61B5/026 120
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-64461(P2016-64461)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-176266(P2017-176266A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 秀明
(72)【発明者】
【氏名】梅川 英之
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 友暁
(72)【発明者】
【氏名】逆井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】赤松 学
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0293767(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0317941(US,A1)
【文献】 特開平11−318840(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/094169(WO,A1)
【文献】 特開平05−076504(JP,A)
【文献】 特開平11−128184(JP,A)
【文献】 特開2008−229239(JP,A)
【文献】 特開2012−061232(JP,A)
【文献】 実開平05−024006(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/065699(WO,A1)
【文献】 特開2004−135854(JP,A)
【文献】 特開2013−243329(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103784150(CN,A)
【文献】 特開2000−237195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子と、
前記複数の発光素子の各々との距離が異なる位置に配置され、前記複数の発光素子の各々から生体に照射された光の反射光を各々受光する受光素子と、
前記複数の発光素子が順次点灯されるように前記複数の発光素子を制御する制御手段と、
前記受光素子で順次受光した前記反射光の各々から、前記生体の複数の深さの生体情報を測定する測定手段と、
を備え、
前記複数の発光素子の各々における光の出力側に設けられた上部電極により規定される開口の面積は、前記受光素子からの距離が短いほど小さく、前記受光素子からの距離が長いほど大きい、
生体情報測定装置。
【請求項2】
複数の発光素子と、
前記複数の発光素子の各々との距離が異なる位置に配置され、前記複数の発光素子の各々から生体に照射された光の反射光を各々受光する受光素子と、
前記複数の発光素子が順次点灯されるように前記複数の発光素子を制御する制御手段と、
前記受光素子で順次受光した前記反射光の各々から、前記生体の複数の深さの生体情報を測定する測定手段と、
を備え、
前記複数の発光素子の各々における光の出力側に設けられた酸化領域の内側に位置する非酸化領域の直径であるメササイズは、前記メササイズが大きいほど前記光の光量が小さくなる大きさの同一の駆動電流を前記制御手段から前記複数の発光素子へ供給される下で、前記受光素子からの距離が短いほど大きく、前記受光素子からの距離が長いほど小さい、
生体情報測定装置。
【請求項3】
複数の発光素子と、
前記複数の発光素子の各々との距離が異なる位置に配置され、前記複数の発光素子の各々から生体に照射された光の反射光を各々受光する受光素子と、
前記複数の発光素子が順次点灯されるように前記複数の発光素子を制御する制御手段と、
前記受光素子で順次受光した前記反射光の各々から、前記生体の複数の深さの生体情報を測定する測定手段と、
を備え、
前記複数の発光素子の各々における光の出力側に設けられた酸化領域の内側に位置する非酸化領域の直径であるメササイズは、前記メササイズが大きいほど前記光の光量が大きくなる大きさの同一の駆動電流を前記制御手段から前記複数の発光素子へ供給される下で、前記受光素子からの距離が短いほど小さく、前記受光素子からの距離が長いほど大きい、
生体情報測定装置。
【請求項4】
前記複数の発光素子は、複数の面発光レーザ又は1つの基板上に複数の発光点を有する面発光レーザアレイである
請求項1〜3の何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記生体情報は、前記生体の血流量、血流速度、血液量、脈拍数、光電脈、血液成分、及び血圧の少なくとも1つを含む
請求項1〜4の何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上に形成された複数の発光素子と、前記発光素子の光で照射された外部検出体からの反射光を受光し、当該反射光を電気的な検出信号に変換する受光素子と、前記複数の発光素子の各々を独立して駆動可能な駆動手段と、前記複数の発光素子をそれぞれ独立して駆動したとき、各々の発光素子に対応して得られた複数の検出信号を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された複数の検出信号に基づき前記複数の発光素子の中から1つの発光素子を光源に決定する決定手段と、を有する光学検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−212258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ光を生体へ照射し、その反射光から皮下血管における成分量、血流量等を測定する生体センサとして、毛細血管の血流量を測定する血流センサがある。血流センサが測定する皮下深度は、発光素子と受光素子との距離に依存することが分かっている。すなわち、発光素子と受光素子との距離が長いほど測定される皮下深度は深くなることが分かっている。病状診断、健康管理に必要な生体情報の情報量を増やすためには、1つの深度だけでなく、複数の深度の生体情報を取得することが好ましい。
【0005】
本発明は、1つの発光素子から生体に照射された光の反射光を受光して生体情報を測定する場合と比較して、生体の複数の深さの生体情報を取得することができる生体情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各々との距離が異なる位置に配置され、前記複数の発光素子の各々から生体に照射された光の反射光を各々受光する受光素子と、前記複数の発光素子が順次点灯されるように前記複数の発光素子を制御する制御手段と、前記受光素子で順次受光した前記反射光の各々から、前記生体の複数の深さの生体情報を測定する測定手段と、を備え、前記複数の発光素子の各々における光の出力側に設けられた上部電極により規定される開口の面積は、前記受光素子からの距離が短いほど小さく、前記受光素子からの距離が長いほど大きい。
【0007】
請求項2記載の発明は、複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各々との距離が異なる位置に配置され、前記複数の発光素子の各々から生体に照射された光の反射光を各々受光する受光素子と、前記複数の発光素子が順次点灯されるように前記複数の発光素子を制御する制御手段と、前記受光素子で順次受光した前記反射光の各々から、前記生体の複数の深さの生体情報を測定する測定手段と、を備え、前記複数の発光素子の各々における光の出力側に設けられた酸化領域の内側に位置する非酸化領域の直径であるメササイズは、前記メササイズが大きいほど前記光の光量が小さくなる大きさの同一の駆動電流を前記制御手段から前記複数の発光素子へ供給される下で、前記受光素子からの距離が短いほど大きく、前記受光素子からの距離が長いほど小さい。
【0008】
請求項3記載の発明は、複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各々との距離が異なる位置に配置され、前記複数の発光素子の各々から生体に照射された光の反射光を各々受光する受光素子と、前記複数の発光素子が順次点灯されるように前記複数の発光素子を制御する制御手段と、前記受光素子で順次受光した前記反射光の各々から、前記生体の複数の深さの生体情報を測定する測定手段と、を備え、前記複数の発光素子の各々における光の出力側に設けられた酸化領域の内側に位置する非酸化領域の直径であるメササイズは、前記メササイズが大きいほど前記光の光量が大きくなる大きさの同一の駆動電流を前記制御手段から前記複数の発光素子へ供給される下で、前記受光素子からの距離が短いほど小さく、前記受光素子からの距離が長いほど大きい。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記複数の発光素子は、複数の面発光レーザ又は1つの基板上に複数の発光点を有する面発光レーザアレイである。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記生体情報は、前記生体の血流量、血流速度、血液量、脈拍数、光電脈、血液成分、及び血圧の少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、受光素子からの距離に関係なく発光素子の上部電極の開口面積を同一にした場合と比較して、受光素子による受光量のばらつきを抑制することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、受光素子からの距離に関係なく発光素子のメササイズを同一にした場合と比較して、受光素子による受光量のばらつきを抑制することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、受光素子からの距離に関係なく発光素子のメササイズを同一にした場合と比較して、受光素子による受光量のばらつきを抑制することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、複数の発光素子を面発光レーザ以外の発光素子とした場合と比較して、受光素子による受光量のばらつきを抑制することができる。
【0017】
請求項記載の発明によれば、生体情報として血液に関する情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】血流量の測定例を示す模式図である。
図2】生体からの反射光による受光量の変化の一例を示すグラフである。
図3】血管にレーザ光を照射した場合に生じるドップラーシフトの説明に供する模式図である。
図4】血管にレーザ光を照射した場合に生じるスペックルの説明に供する模式図である。
図5】受光量の変化に対するスペクトル分布の一例を示すグラフである。
図6】血流量の変化の一例を示すグラフである。
図7】第1実施形態に係る複数の発光素子及び受光素子の平面図である。
図8】手の指先を生体情報測定装置に載せた状態を示す図である。
図9】面発光レーザアレイの平面図である。
図10】生体情報測定装置の構成例を示す図である。
図11】発光のタイミングチャートである。
図12】複数の深さの血流量を表すグラフである。
図13】第2実施形態に係る面発光レーザアレイの側面図である。
図14】第3実施形態に係る面発光レーザアレイの側面図である。
図15】第4実施形態に係る面発光レーザアレイの側面図である。
図16】第5実施形態に係る面発光レーザアレイの側面図である。
図17】第5実施形態の変形例に係る面発光レーザアレイの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。なお、作用又は機能が同じ働きを担う構成要素には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する。
【0022】
(第1実施形態)
【0023】
まず、図1を参照して、生体情報のうち、特に血液に関する生体情報の一例である血流情報の測定方法について説明する。
【0024】
図1に示すように、血流情報は、患者の体(生体8)に向けて発光素子1から光を照射し、受光素子3で受光した、患者の体内に張り巡らされている動脈4、静脈5、及び毛細血管6等で反射又は透過した光の強さ、すなわち反射光又は透過光の受光量を用いて測定される。
【0025】
(血流情報の測定)
図2は、受光素子3で受光した反射光の受光量を示すグラフ80の一例である。なお、図2のグラフ80の横軸は時間の経過を表し、縦軸は受光素子3の出力、すなわち受光素子3の受光量を表している。
【0026】
図2に示すように、受光素子3の受光量は時間の経過に伴って変化するが、これは血管を含む生体8への光の照射に対して現われる3つの光学現象の影響を受けるためであると考えられる。
【0027】
1つ目の光学現象として、脈動によって、測定している血管内に存在する血液量が変化することによる光の吸収の変化が考えられる。血液には、例えば赤血球等の血球細胞が含まれ、毛細血管6等の血管内を移動するため、血液量が変化することによって血管内を移動する血球細胞の数も変化し、受光素子3での受光量に影響を与えることがある。
【0028】
2つ目の光学現象として、ドップラーシフトによる影響が考えられる。
【0029】
図3に示すように、例えばレーザ光のような周波数ω0のコヒーレント光40を発光素子1から血管の一例である毛細血管6を含む領域に照射した場合、毛細血管6を移動する血球細胞で散乱した散乱光42は、血球細胞の移動速度により決まる差周波Δω0を有するドップラーシフトを生じることになる。一方、血球細胞等の移動体を含まない皮膚等の組織(静止組織)で散乱した散乱光42の周波数は、照射したレーザ光の周波数と同じ周波数ω0を維持する。したがって、毛細血管6等の血管で散乱したレーザ光の周波数ω0+Δω0と、静止組織で散乱したレーザ光の周波数ω0とが互いに干渉し、差周波Δω0を有するビート信号が受光素子3で観測され、受光素子3の受光量が時間の経過に伴って変化する。なお、受光素子3で観測されるビート信号の差周波Δω0は血球細胞の移動速度に依存するが、約数十kHzを上限とした範囲に含まれる。
【0030】
また、3つ目の光学現象として、スペックルによる影響が考えられる。
【0031】
図4に示すように、レーザ光のようなコヒーレント光40を、発光素子1から血管中を矢印44の方向に移動する赤血球等の血球細胞7に照射した場合、血球細胞7にぶつかったレーザ光は様々な方向に散乱する。散乱光は位相が異なるためにランダムに干渉し合う。これによりランダムな斑点模様の光強度分布を生じる。このようにして形成される光強度の分布パターンは「スペックルパターン」と呼ばれる。
【0032】
既に説明したように、血球細胞7は血管中を移動するため、血球細胞7における光の散乱状態が変化し、スペックルパターンが時間の経過と共に変動する。したがって、受光素子3の受光量が時間の経過に伴って変化する。
【0033】
次に、血流情報の求め方の一例について説明する。図2に示す時間経過に伴う受光素子3の受光量が得られた場合、予め定めた単位時間T0の範囲に含まれるデータを切り出し、当該データに対して、例えば高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)を実行することで、周波数ω毎のスペクトル分布が得られる。図5に、単位時間T0における周波数ω毎のスペクトル分布を示すグラフ82の一例を示す。なお、図5のグラフ82の横軸は周波数ωを表し、縦軸はスペクトル強度を表す。
【0034】
ここで、血液量はグラフ82の横軸と縦軸とで囲まれた斜線領域84で表されるパワースペクトルの面積を全光量で規格化した値に比例する。また、血流速度はグラフ82で表されるパワースペクトルの周波数平均値に比例するため、周波数ωと周波数ωにおけるパワースペクトルの積を周波数ωについて積分した値を斜線領域84の面積で除算した値に比例する。
【0035】
なお、血流量は血液量と血流速度の積で表わされるため、上記血液量と血流速度の算出式より求める事が可能である。血流量、血流速度、血液量は血流情報の一例であり、血流情報はこれに限定されない。
【0036】
図6は、算出した単位時間T0あたりの血流量の変化を示すグラフ86の一例である。なお、図6のグラフ86の横軸は時間を表し、縦軸は血流量を表す。
【0037】
図6に示すように、血流量は時間と共に変動するが、その変動の傾向は2つの種類に分類される。例えば図6の区間Tにおける血流量の変動幅88に比べて、区間Tにおける血流量の変動幅90は大きい。これは、区間Tにおける血流量の変化が、主に脈の動きに伴う血流量の変化であるのに対して、区間Tにおける血流量の変化は、例えばうっ血等の原因に伴う血流量の変化を示しているためであると考えられる。
【0038】
前述したように、発光素子と受光素子との距離が長いほど測定される皮下深度は深くなることが分かっており、病状診断、健康管理に必要な生体情報の情報量を増やすためには、1つの深度だけでなく複数の深度の生体情報を取得することが好ましい。
【0039】
そこで、本実施形態では、複数の発光素子の各々との距離が異なる位置に受光素子を配置し、複数の発光素子が順次点灯されるように複数の発光素子を制御する。そして、受光素子で順次受光した反射光の各々から、生体の複数の深さの血流量を測定する。
【0040】
図7には、本実施形態に係る複数の発光素子と受光素子との配置例を表す平面図を示した。図7では、4個の発光素子1A〜1Dの場合を示した。発光素子1A〜1Dは、特性が同一の発光素子である。なお、発光素子の数は4個に限られるものではなく、取得したい生体情報の深さの数に応じて適宜設ければよい。また、発光素子1A〜1Dは、本実施形態では一例として面発光レーザで構成されるが、端面発光レーザを用いてもよい。血流量を測定する場合、既に説明したように、ビート信号による受光量のスペクトル分布を利用するため、発光素子1A〜1Dには他の光に比べてビート信号が発生しやすいレーザ素子を用いることが好ましい。
【0041】
図7に示すように、発光素子1A〜1D、及び受光素子3は、1直線上に配置されており、発光素子1A〜1Dと受光素子3との距離d1〜d4は各々異なっている。すなわち、d1<d2<d3<d4の関係となっている。なお、図7では発光素子1A〜1D、及び受光素子3が1直線上に配置されている場合について示したが、発光素子1A〜1Dと受光素子3との距離d1〜d4が各々異なっていれば、一直線上に配置されていなくてもよい。
【0042】
図8に示すように、発光素子1A〜1D、受光素子3は、筐体50内に一列に配置され、発光素子1A〜1Dの光出射面側には透明板52が設けられている。ユーザーは、透明板52上に手の指先54を載せて測定する。図8に示すように、発光素子1Aから発光された光56A、発光素子1Bから発光された光56B、発光素子1Cから発光された光56C、発光素子1Dから発光された光56Dの指先54内における経路を比較すると、受光素子3からの距離が長くなるほど、光が到達する深度が深くなる。
【0043】
なお、図9に示すように、1つの基板2上に複数の発光点1a〜1dを有する面発光レーザアレイ11を用いてもよい。
【0044】
図10は、本実施の形態に係る生体情報測定装置10の構成例を示す図である。
【0045】
図10に示すように、生体情報測定装置10は、制御部12、駆動回路14、増幅回路16、A/D(Analog/Digital)変換回路18、測定部20、発光素子1A〜1D、及び受光素子3を備える。
【0046】
制御部12は、発光素子1A〜1Dに駆動電力を供給する電力供給回路を含む駆動回路14に、発光素子1A〜1Dの発光周期及び発光期間を制御する制御信号を出力する。
【0047】
駆動回路14は、制御部12からの制御信号を受け付けると、制御信号で指示された発光周期及び発光期間に従って、発光素子1A〜1Dに駆動電力を供給し、発光素子1A〜1Dを駆動する。
【0048】
例えば図11に示すように、発光素子1A(Ch1)、1B(Ch2)、1C(Ch3)、1D(Ch4)の順に点灯時期をずらしつつt1期間発光させ、その後t2期間発光を停止させることを繰り返す。
【0049】
増幅回路16は、受光素子3で受光した光の強さに応じた電圧を、A/D変換回路18の入力電圧範囲として規定される電圧レベルまで増幅する。なお、ここでは一例として、受光素子3は受光した光の強さに応じた電圧を出力する素子とするが、受光素子3は受光した光の強さに応じた電流を出力してもよく、この場合、増幅回路16は、A/D変換回路18の入力電流範囲として規定される電流レベルまで、受光素子3が出力する電流を増幅する。
【0050】
A/D変換回路18は、増幅回路16で増幅した電圧を入力として、当該電圧の大きさで表される受光素子3の受光量を数値化して出力する。
【0051】
測定部20は、A/D変換回路18で数値化された受光量を入力として、発光素子1A〜1Dによって照射された光の受光量の各々に対してFFT処理を行って周波数ω毎のスペクトル分布を算出し、当該スペクトル分布を全周波数ωについて積分することで、生体の血流量を測定する。図11に示すようなタイミングで発光素子1A〜1Dが順次発光されると、測定部20には発光素子1A〜1Dによって照射された光の受光量が順次入力される。測定部20は、受光量が入力される毎に上記の処理を実行して血流量を測定する。これにより、図12に示すように、複数の深さの血流量が得られる。
【0052】
このように、本実施形態では、発光素子1A〜1Dの各々との距離が異なる位置に受光素子3が配置され、受光素子3で順次受光した生体からの反射光の各々から、生体の複数の深さの血流量を測定する。このため、1つの発光素子から生体に照射された光の反射光を受光して血流量を測定する場合と比較して、生体の複数の深さの血流量が取得され、病状診断、健康管理に有用な生体情報が得られる。
【0053】
(第2実施形態)
【0054】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0055】
図13には、本実施形態に係る面発光レーザアレイ11の側面図を示した。前述したように、面発光レーザアレイ11は、1つの基板2上に複数の発光点1a〜1dを有する。なお、その他の装置構成は第1実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0056】
本実施形態では、受光素子3からの距離が短い発光点ほど駆動電流値が小さく、受光素子3からの距離が長い発光点ほど駆動電流値が大きくなるように、発光点1a〜1dが制御される。
【0057】
すなわち、図13に示すように、発光点1a〜1dには、駆動回路14から電流A〜Dが供給されるが、受光素子3からの距離が最も短い発光点1aに供給される電流Aの駆動電流値が最も小さく、受光素子3からの距離が最も長い発光点1dに供給される電流Dの駆動電流値が最も大きくなる。
【0058】
これにより、発光点1a〜1dから出力される光出力A〜Dの光量の大きさは、受光素子3からの距離が最も短い発光点1aからの光出力Aが最も小さく、受光素子3からの距離が最も長い発光点1dからの光出力Dが最も大きくなる。受光素子3からの距離が長くなるほど、生体内の伝搬距離が長くなり、光の減衰も大きくなるため、受光素子3からの距離が長くなるほど駆動電流値を大きくすることにより、受光素子3による発光点1a〜1dからの光の受光量のばらつきが抑制される。
【0059】
なお、受光素子3による発光点1a〜1dからの光の受光量が、全て受光素子3のダイナミックレンジの範囲内となるように、発光素子1a〜1dに供給する駆動電流値を設定することが好ましい。これにより、精度良く複数の深さの生体情報が取得される。
【0060】
また、電流A〜Dの駆動電流値の大きさを、測定する生体情報の種類に応じて変えても良い。これにより、測定する生体情報の種類に適した光出力が実現される。
【0061】
(第3実施形態)
【0062】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0063】
本実施形態では、図14に示すように、面発光レーザアレイ11の光出力側に減衰フィルター13が設けられている。なお、その他の装置構成は第2実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0064】
減衰フィルター13は、受光素子3からの距離が短い発光点から照射された光ほど減衰率が高く、受光素子3からの距離が長い発光点から照射された光ほど減衰率が低くなるように、発光点1a〜1dからの光を各々減衰させる。すなわち、減衰フィルター13は、発光点1aからの光が通過する領域13a、発光点1bからの光が通過する領域13b、発光点1cからの光が通過する領域13c、発光点1dからの光が通過する領域13dの順に光の減衰率が徐々に低くなるフィルターである。
【0065】
また、駆動回路14から発光点1a〜1dには駆動電流値が同一の電流Aが供給される。これにより、発光点1a〜1dから出力される光出力A〜Dの光量の大きさは、受光素子3からの距離が最も短い発光点1aからの光出力Aが最も小さく、受光素子3からの距離が最も長い発光点1dからの光出力Dが最も大きくなる。受光素子3からの距離が長くなるほど光出力の減衰率も高くなるため、受光素子3からの距離が長くなるほど光の減衰率を低くした減衰フィルター13を面発光レーザアレイ11の光出力側に設けることにより、受光素子3による発光点1a〜1dからの光の受光量のばらつきが抑制される。
【0066】
なお、受光素子3による発光点1a〜1dからの光の受光量が、全て受光素子3のダイナミックレンジの範囲内となるように、減衰フィルター13の各領域の減衰率を設定することが好ましい。これにより、精度良く複数の深さの生体情報が取得される。
【0067】
(第4実施形態)
【0068】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0069】
図15には、本実施形態に係る面発光レーザアレイ11Aを示した。なお、その他の装置構成は第2実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0070】
図15に示すように、発光点1a〜1dは、上部電極15a〜15dを各々備えている。面発光レーザアレイ11Aは、受光素子3からの距離が短い発光点ほど上部電極の開口面積が小さく、受光素子3からの距離が長い発光点ほど上部電極の開口面積が大きくなっている。本実施形態では、発光点1a〜1dを平面視した場合は図9に示すように円の形状となっている。そして、上部電極15a〜15d及びその開口部の形状も同様に平面視した場合に円の形状となっている。従って、受光素子3からの距離が短い発光点ほど上部電極の開口部の直径が小さく、受光素子3からの距離が長い発光点ほど上部電極の開口部の直径が大きくなっている。
【0071】
すなわち、図15に示すように、受光素子3からの距離が最も短い発光点1aの上部電極15aの開口部の直径r1が最も小さく、受光素子3からの距離が最も長い発光点1dの上部電極15dの開口部の直径r4が最も大きくなっている。
【0072】
また、駆動回路14から発光点1a〜1dには駆動電流値が同一の電流Aが供給される。これにより、発光点1a〜1dから出力される光出力A〜Dの光量の大きさは、受光素子3からの距離が最も短い発光点1aからの光出力Aが最も小さく、受光素子3からの距離が最も長い発光点1dからの光出力Dが最も大きくなる。受光素子3からの距離が長くなるほど光出力の減衰率も高くなるため、受光素子3からの距離が長くなるほど上部電極の開口部の面積を大きくすることにより、受光素子3による発光点1a〜1dからの光の受光量のばらつきが抑制される。
【0073】
なお、受光素子3による発光点1a〜1dからの光の受光量が、全て受光素子3のダイナミックレンジの範囲内となるように、各上部電極の開口部の面積(開口部の直径)を設定することが好ましい。これにより、精度良く複数の深さの生体情報が取得される。
【0074】
(第5実施形態)
【0075】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0076】
図16には、本実施形態に係る面発光レーザアレイ11Bを示した。なお、その他の装置構成は第2実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0077】
本実施形態に係る面発光レーザアレイ11Bの発光点1a〜1dの形状は、平面視した場合に円の形状となっている。また、酸化領域17a〜17dは、平面視した場合に中心を非酸化領域としたドーナツ状となっている。そして、受光素子3からの距離が短い発光点ほど直径が大きく、受光素子3からの距離が長い発光点ほど直径が小さくなっている。すなわち、図16に示すように、受光素子3からの距離が最も短い発光点1aの直径S1が最も大きく、受光素子3からの距離が最も長い発光点1dの直径S4が最も小さくなっている。
【0078】
また、発光点1a〜1dに酸化領域17a〜17dを形成するための酸化時間は、発光点1a〜1dで同一であるため、酸化領域17a〜17dの酸化距離もほぼ同一になる。従って、発光点1a〜1dの直径が異なる分、酸化領域17a〜17dの中心に存在する非酸化領域の各々の直径、すなわちメササイズも異なる。
【0079】
すなわち、図16に示すように、受光素子3からの距離が最も短い発光点1aの非酸化領域サイズM1が最も大きく、受光素子3からの距離が最も長い発光点1dの非酸化領域サイズM4が最も小さくなっている。
【0080】
また、駆動回路14から発光点1a〜1dには駆動電流値が同一の電流Aが供給される。これにより、発光点1a〜1dから出力される光出力A〜Dの光量の大きさは、受光素子3からの距離が最も短い発光点1aからの光出力Aが最も小さく、受光素子3からの距離が最も長い発光点1dからの光出力Dが最も大きくなる。受光素子3からの距離が長くなるほど光出力の減衰率も高くなるため、受光素子3からの距離が長くなるほどメササイズを大きくすることにより、受光素子3による発光点1a〜1dからの光の受光量のばらつきが抑制される。
【0081】
なお、メササイズが大きい方が、発光光量が小さくなるケースが多いが、駆動電流を上昇させていくと、メササイズが大きい方が、発光光量が大きくなることがある。そのため、駆動条件によっては、図17に示すように、上記で述べたメササイズの大小関係が、逆転することがある。また、受光素子3による発光点1a〜1dからの光の受光量が、全て受光素子3のダイナミックレンジの範囲内となるように、各発光点のメササイズ(非酸化領域の直径)を設定することが好ましい。これにより、精度良く複数の深さの生体情報が取得される。
【0082】
以上のように、上記各実施形態では、生体情報測定装置10が生体情報として血流量を測定する場合について説明したが、既に説明したように血流量の他、血流速度の測定にも適用される。また、動脈の脈動に応じて受光素子3で受光される受光量が変化するため、受光素子3での受光量の変化から、脈拍数が測定される。また、脈拍数の変化を時系列順に測定して得られる波形を2回微分することで、光電脈波が測定される。光電脈波は、血管年齢の推定又は動脈硬化の診断等に用いられる。また、生体情報測定装置10を、血液成分(血糖値等)、血圧等の測定に適用してもよい。
【0083】
以上、実施の形態を用いて本発明について説明したが、本発明は実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で処理の順序を変更してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1A〜1D・・・発光素子
2・・・基板
1a〜1d・・・発光点
3・・・受光素子
4・・・動脈
5・・・静脈
6・・・毛細血管
7・・・血球細胞
8・・・生体
10・・・生体情報測定装置
11・・・面発光レーザアレイ
12・・・制御部
14・・・駆動回路
16・・・増幅回路
18・・・A/D変換回路
20・・・測定部
図1
図2
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