(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1間隔をP1、前記第2間隔をP2、前記第1液滴の液滴量をV1、前記第2液滴の液滴量をV2としたときに、V2/V1が、P1及びP2を変数とする所定の関数で定められることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
前記境界位置では、前記重なり範囲内のその他の位置と比べて、前記第1ノズルと前記第2ノズルの前記第1方向の位置が最も近く、前記制御部は、前記境界位置では、前記第1ノズルと前記第2ノズルの何れか一方から前記第1液滴を吐出させ、
さらに、前記制御部は、
前記第1間隔をP1、前記第2間隔をP2としたときに、前記境界位置から前記第1方向の前記第2ヘッドユニット側にN番目に位置する前記第1ノズルについて、
X=P2/(P2−P1)としたときに、
N≦X/2の場合は、Nが大きくなるに従って、前記第1ノズルから吐出させる前記第2液滴の液滴量を増加させ、
X/2<N≦Xの場合は、Nが大きくなるに従って、前記第1ノズルから吐出させる前記第2液滴の液滴量を減少させることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について説明する。尚、
図1において記録用紙100が搬送される方向を、プリンタ1の前後方向と定義する。また、記録用紙100の搬送方向と直交する幅方向をプリンタ1の左右方向と定義する。さらに、前後方向及び左右方向と直交する、
図1の紙面垂直方向をプリンタ1の上下方向と定義する。
【0015】
<プリンタの概略構成>
図1に示すように、プリンタ1は、筐体2内に収容されたプラテン3、4つのインクジェットヘッド4、2つの搬送ローラ5,6、及び、制御部7等を備えている。
【0016】
プラテン3の上面には、記録用紙100が載置される。4つのインクジェットヘッド4は、プラテン3の上方において、搬送方向に並べて配置されている。各インクジェットヘッド4には、図示しないインクタンクからインクが供給される。インクジェットヘッド4は、用紙幅方向に配列された複数のノズル12(
図3参照)を有し、プラテン3の上で搬送される記録用紙100に対してノズル12からインクを吐出させる、いわゆるラインタイプのヘッドである。尚、4つのインクジェットヘッド4には、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクの何れかが供給される。つまり、4つのインクジェットヘッド4は、互いに異なる色のインクを吐出するものである。
【0017】
図1に示すように、2つの搬送ローラ5,6は、プラテン3に対して後側と前側にそれぞれ配置されている。2つの搬送ローラ5,6は、搬送モータ8(
図2参照)によってそれぞれ駆動され、プラテン3上の記録用紙100を前方へ搬送する。
【0018】
図2の制御部7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)を備える。また、制御部7は、PC等の外部装置9とデータ通信可能に接続されており、外部装置9から送られた画像データに基づいて、4つのインクジェットヘッド4や搬送モータ8等の、プリンタ1の各部を制御する。
【0019】
より具体的には、制御部7は、搬送ローラ5,6を駆動する搬送モータ8を制御して、2つの搬送ローラ5,6に記録用紙100を搬送方向に搬送させる。また、この用紙搬送とともに、制御部7は、4つのインクジェットヘッド4を制御して記録用紙100に向けてインクを吐出させる。これにより、記録用紙100に画像が印刷される。
【0020】
<インクジェットヘッドの詳細構成>
次に、インクジェットヘッド4について詳細に説明する。
図3に示すように、各インクジェットヘッド4は、左右方向に並んで配置された4つのヘッドユニット11(11a〜11d)を備えている。4つのヘッドユニット11は、ユニット保持板10に取り付けられている。
【0021】
図2、
図3に示すように、各ヘッドユニット11(11a〜11d)は、左右方向に配列された複数のノズル12(12a〜12d)と、複数のノズル12からそれぞれインクを吐出させるアクチュエータ13と、アクチュエータ13を駆動する駆動装置14とを備えている。
【0022】
4つのヘッドユニット11は、搬送方向において前側と後側に分かれて配置されている。また、後側のヘッドユニット11と前側のヘッドユニット11は、一方が他方に対して、左右方向に一部ずれるように配置されており、前後2つのヘッドユニット11の間で、前後方向においてノズル12の配置領域が部分的に重なっている。
【0023】
左右方向に隣接する2つのヘッドユニット11の繋ぎ目部分においては、2つのヘッドユニット11間でのインクの着弾位置ズレに起因して、スジ(白スジ又は黒スジ)が生じやすい。そこで、このようなスジを抑制するために、以下のような構成が採用されている。
【0024】
先にも触れたが、
図3、
図4に示すように、左右に隣接する2つのヘッドユニット11間では、ノズル12の配置領域が部分的に重なっている。尚、2つのヘッドユニット11の、ノズル12の配置領域が重なった範囲を「重なり範囲A」と称する。
【0025】
また、4つのヘッドユニット11のうち、左端に位置するヘッドユニット11aにおいては、全てのノズル12が第1間隔P1で等間隔に配置されている。これに対して、他の3つのヘッドユニット11(11b〜11d)の各々においては、その左端部を除く部分で、ノズル12が前記第1間隔P1で等間隔に配置されている。一方、左端部においては、ノズル12が、第1間隔P1よりも大きい第2間隔P2で配置されている。例えば、P1=42μm、P2=44μmである。
【0026】
左右方向に隣接する2つのヘッドユニット11の重なり範囲Aでは、一方のヘッドユニット11の、ノズル12が第1間隔P1で配列された部分と、他方のヘッドユニットの、ノズル12が第2間隔P2で配列された部分とが、前後方向に重なっている。例えば、左側2つのヘッドユニット11a,11bであれば、ヘッドユニット11aの、ノズル12aが第1間隔P1で配列された右端部と、ヘッドユニット11bの、ノズル12bが第2間隔P2で配列された左端部とが重なっている。
【0027】
上記の構成において、重なり範囲Aにおいて2つのヘッドユニット11間でノズル12の配列間隔が異なっているため、一方のヘッドユニット11の複数のノズル12の間で、他方のヘッドユニット11のノズル12との位置関係が異なってくる。逆に言えば、重なり範囲A内に、2つのヘッドユニット11の間で、左右方向におけるノズル12の位置が最も小さい箇所が存在する。そこで、上記の位置を境界位置Bとし、この境界位置Bよりも左側では左側のヘッドユニット11のノズル12からインクを吐出させ、境界位置Bよりも右側では右側のヘッドユニット11のノズル12からインクを吐出させる。これにより、2つのヘッドユニット11間の繋ぎ目部分によって形成される画像にスジが生じるのを防止できる。重なり範囲Aにおける吐出制御については、後でさらに詳しく説明する。
【0028】
尚、重なり範囲A内における1つのヘッドユニット11のノズル数が少なすぎると、2つのヘッドユニット11の間でノズル12の位置を一致させることが難しくなる。この観点からは、重なり範囲A内において第1間隔P1で配列されるノズル12の数をnとしたときに、n≧P2/(P2−P1)であることが好ましい。
【0029】
アクチュエータ13は、複数のノズル12にそれぞれ対応した複数の圧電素子15を有する、圧電式アクチュエータである。圧電素子15は、インクジェットの分野で一般的に用いられているものであり詳細な説明は省略するが、一般に、圧電層と、圧電層を挟むように配置された2つの電極を有する。そして、圧電素子15は、上記2つの電極間に所定の電圧が印加されたときに、圧電層に生じる逆圧電効果による変形を利用してインクを加圧する。
【0030】
駆動装置14は、アクチュエータ13の複数の圧電素子15のそれぞれに対して、電圧を印加するための駆動信号を生成し、アクチュエータ13へ出力する。
図5に示すように、制御部7は、波形が異なる4種類の波形データ(WAVE)と、4種類の波形から1つを選択して圧電素子15を駆動するための選択データ(SIN)を生成し、駆動装置14へ出力する。
【0031】
図6に示すように、駆動装置14は、制御部7から入力された波形データに基づき、波形が異なる4種類の駆動信号を生成可能である。
図6に示される4種類の駆動信号のうち、(a)小玉、(b)中玉、(c)大玉の駆動信号は、記録用紙100に画像を形成するための3種類の第1液滴に対応する駆動信号である。
【0032】
図6(a)の信号は、パルス高さがV0の1つのパルスを含むパルス信号、(b)の信号は2つのパルスを含むパルス信号、(c)の信号は3つのパルスを含むパルス信号である。圧電素子15に印加されるパルスの数が多いほど、インク流路内に発生するエネルギーが重なり合って大きくなり、ノズル12から大きな液滴が吐出される。即ち、パルス数が1つの(a)では、最も小さな第1液滴(小玉)が吐出される。パルス数が2つの(b)では小玉よりも大きな第1液滴(中玉)が吐出される。パルス数が3つの(c)では中玉よりもさらに大きな第1液滴(大玉)が吐出される。例えば、小玉の液滴量は、3pl、中玉の液滴量は5pl、大玉の液滴量は15plである。
【0033】
図6(d)の第2液滴用の駆動信号は、画像データに基づいてドットを形成するための(a)〜(c)の信号とは、異なる目的で用いられるものである。後でも説明するが、2つのヘッドユニット11の間の重なり範囲Aのうち、大きな間隔(第2間隔P2)で配列されたノズル12によって画像が形成される領域では、画像の濃度が薄くなる。そこで、この第2液滴の信号は、上記領域に対して微小な液滴を着弾させて画像の濃度を高めるために使用される。
【0034】
図6(d)の駆動信号では、ピーク電圧Vpが、上記パルス高さ(電圧V0)よりも低い電圧までしか上がらない波形となっている。この場合、(a)〜(c)のパルスを含む信号と比べて、インクに与えられるエネルギーはかなり小さく、ノズル12から吐出される液滴量も少なくなる。即ち、(d)の駆動信号が圧電素子15に印加されたときには、(a)〜(c)の画像印刷用の駆動信号の印加時よりも小さい第2液滴がノズル12から吐出される。
【0035】
選択データは、複数の圧電素子15の各々について、インクの吐出/不吐出の選択、及び、吐出させる場合の駆動信号の選択を行わせるためのデータであり、外部装置9から入力された画像データに基づいて生成される。より具体的には、選択データは、ノズル12から吐出させない不吐出態様と、
図6の4つの駆動信号に対応する4つの吐出態様の、5つの態様を区別するための3ビットのデータである。
【0036】
3ビットの選択データと、上記5つの態様は、例えば、次のように対応付けられる。
(000)→不吐出
(001)→第1液滴(小玉)吐出
(010)→第1液滴(中玉)吐出
(011)→第1液滴(大玉)吐出
(100)→第2液滴吐出
【0037】
駆動装置14は、制御部7から入力された選択データに基づき、各圧電素子15に対して駆動信号を生成して出力する。例えば、ある圧電素子15に対して、制御部7から(010)の選択データが入力された場合は、駆動信号は、制御部7から送信される波形データを参照して
図6(b)の中玉の駆動信号を生成し、駆動対象の圧電素子15へ駆動信号を出力する。
【0038】
(重なり範囲における吐出制御)
次に、2つのヘッドユニット11の重なり範囲Aにおける吐出制御について説明する。尚、以下では、
図7、
図8を参照し、4つのヘッドユニット11a〜11dのうちの、2つのヘッドユニット11a,11bの重なり範囲Aについて説明するが、他の重なり範囲Aにおいても制御内容は同じである。
【0039】
上述したように、重なり範囲Aにおいては、ヘッドユニット11aのノズル12aの配列間隔がP1、ヘッドユニット11bのノズル12bの配列間隔がP2(>P1)であり、2つのヘッドユニット11a,11bの間でノズル12の配列間隔が異なっている。この場合に、
図7に示すように、重なり範囲A内に、2つのヘッドユニット11a,11bの間で、用紙幅方向におけるノズル12の位置がほぼ一致する箇所が存在する。この位置を、2つのヘッドユニット11a,11bの間で使用するノズル12を切り換えるための境界位置Bとする。尚、
図3に示すように、1つのインクジェットヘッド4には3つの重なり範囲Aが存在するが、それぞれにおいてヘッドユニット11の組付誤差等の条件が異なるために、3つの重なり範囲Aのそれぞれについて境界位置Bが設定される。
【0040】
重なり範囲A内の境界位置Bは、例えば、次のようにして特定する(特開2014−188979号公報参照)。工場出荷前の段階で、重なり範囲A内のノズル12aとノズル12bの両方からインクを吐出させて検査パターンを印刷する。次に、検査パターンをスキャナで読み取って濃度分布(輝度分布)の情報を取得する。ここで、ヘッドユニット11aのノズル12aとヘッドユニットの11bのノズル12bの位置が最も一致する部分において、濃度分布は極値を取る。そこで、この濃度が極値となるノズル11の位置を「境界位置B」に決定する。決定された境界位置Bの情報は、制御部7のROMなどのメモリに記憶される。
【0041】
制御部7は、重なり範囲A内の境界位置Bよりも左側では、左側のヘッドユニット11aのノズル12aから、画像を形成するための第1液滴D1を吐出させる。また、境界位置Bよりも右側では、右側のヘッドユニット11bのノズル12bから、第1液滴D1を吐出させる。
図7では、第1液滴D1を吐出させるノズル12を黒く塗りつぶしている。
【0042】
より詳細には、制御部7は、境界位置Bよりも左側では、左側のヘッドユニット11aのノズル12aに対して、(a)〜(c)の何れかに対応した選択データを駆動装置14へ出力する。また、境界位置Bよりも右側では、右側のヘッドユニット11bのノズル12bに対して、(a)〜(c)の何れかに対応した選択データを駆動装置14へ出力する。尚、境界位置Bでは、左側のヘッドユニット11aのノズル12aと右側のヘッドユニット11bのノズル12bの位置が一致していることから、何れのノズル12からインクを吐出させてもよい。本実施形態では、
図7に示すように、境界位置Bにおいては、左側のヘッドユニット11aのノズル12aからインクを吐出させている。
【0043】
上記の制御を行うことで、
図7(a)に示すように、2つのヘッドユニット11の繋ぎ目において、画像にスジが生じることを防止できる。但し、境界位置Bよりも右側においては、左側よりもノズル12bの配列間隔が大きいため、この部分のノズル12bによって形成された画像部分A2ではインクの着弾量が少なく、ノズル12aによって形成された画像部分A1よりも濃度が低くなる。
【0044】
上記の問題を解決するために、本実施形態では、
図7(b)のように、本来、画像形成の目的では吐出させる必要のない、ヘッドユニット11aの境界位置Bよりも右側のノズル12aからも液滴を吐出させる。尚、これらのノズル12aからも、第1液滴D1と同じ大きさの液滴を吐出させると、境界位置Bよりも右側のノズル12から吐出されるインクの総量が多くなりすぎ、画像部分A2の濃度が逆に高くなる。そこで、境界位置Bよりも右側のノズル12aからは、第1液滴D1よりも小さい第2液滴D2を吐出させる。第2液滴D2は、第1液滴D1中の最小液滴である小玉よりも小さい液滴である。境界位置Bの右側のノズル12からも小さな第2液滴D2を吐出させることにより、画像部分A1,A2間の濃度差を小さくすることができる。
【0045】
尚、境界位置Bよりも右側の、第2間隔P2で配列されているノズル12bについて、各ノズル12bから第1液滴D1よりも大きな液滴を吐出させることによって、画像部分A1,A2間の濃度差を小さくするということも可能である。しかし、この場合、第1液滴D1の中の最大液滴(大玉)よりも、さらに大きな液滴を吐出可能な構成とする必要がある。
図6において、(c)の大玉よりもパルス数を増やした駆動信号を別に準備することで対応は可能であるが、パルス数が増えることによって吐出周期が長くなり、印刷速度低下に繋がる。また、電圧を高くすることによる対応も可能であるが、その場合は、より高い駆動電圧を準備する必要がある。また、一部の圧電素子15に高い電圧が印加され続けることにより、素子の劣化が進む要因ともなる。以上より、配列間隔の大きいノズル12bから吐出させる液滴をさらに大きくすることは、あまり好ましいことではない。
【0046】
また、本実施形態では、搬送ローラ5,6による記録用紙100の搬送量が変動することによる画質低下に対しても効果がある。搬送方向上流側のヘッドユニット11aからインクを吐出した後、下流側のヘッドユニット11bからインクを吐出するまでの、記録用紙100の搬送量が所定量からずれると、
図8(a)に示すよう、2つのヘッドユニット11a,11bでそれぞれ形成された2つの画像部分A1,A2が搬送方向にずれてしまう。2つの画像部分A1,A2の間の段付状のズレは、画質低下の大きな要因となる。
【0047】
この点、本実施形態では、ヘッドユニット11aの、境界位置Bの右側に位置するノズル12aからも第2液滴D2を吐出させる。これにより、
図8(b)に示すように、2つの画像部分A1,A2の間の段付き部の周辺に、小さな第2液滴D2が着弾することにより、上記2つの画像部分A1,A2間のズレが目立ちにくくなる。
【0048】
尚、制御部7は、重なり範囲Aの境界位置Bよりも左側において、右側のヘッドユニット11bのノズル12bから第2液滴D2を吐出させることはない。境界位置Bよりも左側では、ヘッドユニット11aの、第1間隔P1で配列されたノズル12aから第1液滴D1が吐出され、これらのノズル12によって形成される画像部分A1の濃度は低くならないためである。
【0049】
重なり範囲Aにおいて、右側のヘッドユニット11bのノズル配列間隔である第2間隔P2が大きいほど、境界位置Bの右側のノズル12で形成された画像部分A2の濃度が低くなるため、濃度を補うための第2液滴D2の大きさを大きくすることが好ましい。即ち、第2液滴D2の大きさは、ノズル配列間隔P1,P2に応じて決定されるのがよい。具体的には、第1液滴D1の液滴量をV1、第2液滴D2の液滴量をV2としたときに、
V2/V1=F(P1,P2)・・・・・(1)
で定められてもよい。尚、Fは、P1,P2を変数とする関数である。
【0050】
上記関数の例を以下に挙げる。まず、配列間隔P1で配列されたノズル12aによって記録用紙100を埋めるには、各ノズル12aによって直径P1のドットを形成すればよい。ここで、直径P1の半球状の液滴を各ノズル12aから吐出すると仮定すると、各ノズル12aから吐出すべき液滴量は、2π(P1/2)
3/3となる。同様に、配列間隔P2で配列されたノズル12bによって記録用紙100を埋めるには、各ノズル12bによって直径P2のドットを形成すればよい。この場合は、各ノズル12bから吐出すべき液滴量は、2π(P2/2)
3/3となる。
【0051】
実際には、配列間隔P2で配列されたノズル12bからは、配列間隔P1で配列されたノズル12aと同じく第1液滴D1が吐出される。そこで、足りないインク量を、ノズル12aからの第2液滴D2の吐出で補うことになる。この考えに従えば、第2液滴D2の液滴量V2は、直径P2のドットを形成するために必要な液滴量から、直径P1のドットを形成するために必要な液滴量V1の差となる。つまり、V2=(2π(P2/2)
3/3)−(2π(P1/2)
3/3)である。
従って、
V1:V2=(2π(P1/2)
3/3):[(2π(P2/2)
3/3)−(2π(P1/2)
3/3)]
であり、
V2/V1=(P2
3/P1
3)−1・・・・・(2)
となる。
例えば、P1=42μm、P2=44μmの場合は、V2/V1=0.15となる。
【0052】
尚、左側のヘッドユニット11aのノズル12aから吐出されるインクと、右側のヘッドユニット11bのノズル12bから吐出されるインクは、記録用紙100への着弾のタイミングが異なる。また、液滴の着弾タイミングの時間差が大きくなるほど、記録用紙100上に形成される画像の濃度が高くなることが一般に知られている。つまり、2つのヘッドユニット11a,11bからそれぞれインクを吐出させた場合では、一方のヘッドユニット11のみからインクを吐出させた場合と比べて、画像が濃くなる傾向にある。そこで、第1液滴D1と第2液滴D2の両方が着弾する領域において画像が濃くなりすぎることを防止するため、第2液滴D2の液滴量を小さめにしてもよい。
即ち、上記(2)の式において、
V2/V1≦(P2
3/P1
3)−1・・・・・(3)
としてもよい。
【0053】
また、上では、第1液滴D1の液滴量V1を一定として説明しているが、実際には、画像データに基づいて、制御部7は、各ノズル12に対して小玉、中玉、及び、大玉の何れかを選択することから、ノズル12毎に、吐出される第1液滴D1の液滴量は異なる。
【0054】
この場合に、第1液滴D1の実際の液滴量(小玉、中玉、大玉)に応じて、第2液滴D2の液滴量を変化させてもよいのだが、その場合は、第2液滴D2を吐出させるために複数種類の駆動信号を準備する必要がある。そこで、制御の簡素化という観点では、第2液滴D2の吐出は1種類の駆動信号で行い、第2液滴D2の液滴量を固定とするのがよい。この場合、上記(1)式において、第1液滴D1の液滴量V1としては、小玉、中玉、大玉のうちの最も使用頻度の高い液滴の液滴量とするとよい。例えば、中玉の使用頻度が最も高い場合は、(1)式のV1に、中玉の液滴量を代入してV2を求める。
【0055】
以上説明した実施形態において、プリンタ1が、本発明の「画像形成装置」に相当する。用紙幅方向が本発明の「第1方向」に相当し、搬送方向が本発明の「第2方向」に相当する。
【0056】
図7,
図8において、第1間隔P1でノズル12aが配列されているヘッドユニット11aが、本発明の「第1ヘッドユニット」に相当し、そのノズル12aが本発明の「第1ノズル」に相当する。このヘッドユニット11のアクチュエータ13の圧電素子15が本発明の「第1駆動素子」に相当する。一方、重なり範囲Aにおいて第2間隔P2でノズル12bが配列されているヘッドユニット11bが、本発明の「第2ヘッドユニット」に相当し、そのノズル12bが本発明の「第2ノズル」に相当する。このヘッドユニット11のアクチュエータ13の圧電素子15が本発明の「第2駆動素子」に相当する。
【0057】
また、制御部7から駆動装置14へ送られる3ビットの選択データのうち、3種類の第1液滴を吐出させるための(001)(010)(011)の選択データが、本発明の「第1選択データ」に相当し、第2液滴を吐出させるための(100)の選択データが、本発明の「第2選択データ」に相当する。
【0058】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0059】
1]先にも少し触れたが、第2液滴の液滴量V2は固定である必要はなく、様々な条件に応じて制御部7が第2液滴の液滴量を変更する構成であってもよい。例えば、3種類の第2液滴を選択的に吐出させる構成とするのであれば、
図9(a)〜(c)に示すように、制御部7は、ピーク電圧(Va,Vb、Vc)が互いに異なる第2液滴用の3種類の駆動波形を生成する。その上で、制御部7は、境界位置Bよりも右側に位置するノズル12の各々に対して、
図9の駆動波形の何れか1つを選択させるための選択データを生成し、駆動装置14に送信する。第2液滴の液滴量を異ならせる例として、次の(a)、(b)の2つを挙げる。
【0060】
(a)前記実施形態では、3種類の第1液滴が使い分けられているが、これら3種類の第1液滴に対して第2液滴が1種類のみであると、2つのヘッドユニット11の繋ぎ目における濃度ムラを抑制する効果が低くなる場合がある。
【0061】
例えば、
図10において、境界位置Bよりも右側で、右側のヘッドユニット11bのノズル12bから大玉が吐出される場合に、ヘッドユニット11aのノズル12aから吐出される第2液滴D2が小さいと、画像部分A2における、大玉の密度が低いことによる濃度の低さを十分に補うことができない。逆に、右側のヘッドユニット11bのノズル12bから小玉が吐出される場合に、ヘッドユニット11aのノズル12aから吐出される第2液滴が大きいと、第2液滴が吐出されることによって、逆に画像部分A2の濃度が高くなりすぎる。
【0062】
そこで、境界位置Bよりも右側のノズル12から吐出される第1液滴D1の液滴量の大きさに応じて、第2液滴D2の大きさを変化させてもよい。
図10では、重なり範囲A内の各ノズル12から、第1液滴として、小玉(D1S)、中玉(D1M)、及び、大玉(D1L)の何れかが吐出される。この場合に、制御部7は、境界位置Bよりも右側において、ヘッドユニット11bのノズル12bから小玉(D1S)を吐出させる場合には、このノズル12bに最も近い位置にあるヘッドユニット11aのノズル12aについては、3種類の第2液滴のうち最も小さな第2液滴(D2S)を吐出させる。ノズル12bから中玉(D1M)を吐出させる場合には、対応するノズル12aから中間の第2液滴(D2M)を吐出させる。ノズル12bから大玉(D1L)を吐出させる場合には、対応するノズル12aから最も大きな第2液滴(D2L)を吐出させる。例えば、小玉D1Sの液滴量が3pl、中玉D1Mの液滴量が5pl、大玉D1Lの液滴量が15plの場合には、小玉:中玉:大玉の液滴量の比(3:5:15)に応じて、3種類の第2液滴(D2S,D2M,D2L)の液滴量を異ならせる。具体的には、D2Sの液滴量を0.45pl、D2Mの液滴量を0.75pl、D2Lの液滴量を2.25plとする。
【0063】
(b)
図11に示すように、重なり範囲Aにおいては、ヘッドユニット11aのノズル12aの配列間隔P1と、ヘッドユニット11bのノズル12bの配列間隔P2とが異なるため、境界位置Bからの位置によってノズル12a,12b間の距離が変わってくる。そこで、境界位置Bからの位置に応じて、ノズル12aから吐出させる第2液滴D2の大きさを異ならせてもよい。
【0064】
上記ノズル間距離が小さい場所では、記録用紙100に着弾した第1液滴D1と第2液滴D2とが大きく重なることから、第2液滴D2は小さくてよい。一方、ノズル間距離が大きい場所では、第1液滴D1と第2液滴D2の着弾位置が離れることから、濃度を補うために第2液滴D2は大きくてよい。そこで、境界位置Bよりも右側のノズル12aから吐出させる第2液滴D2の液滴量を、最も近い位置にあるノズル12bとの左右方向における離間距離に応じて変化させればよい。尚、上記の離間距離は、ノズル12aとノズル12bの中心間距離である。
【0065】
図11を参照して具体的に説明する。まず、境界位置Bにおいては、左側のヘッドユニット11aのノズル12aと右側のヘッドユニット11bのノズル12bの、用紙幅方向の位置が一致している。また、説明の便宜上、境界位置Bから右側に並ぶノズル12aの各々に対して、境界位置Bからの順番を示す番号Nを付与する。
【0066】
Nが増えるにつれて、ノズル12a,12b間の距離は大きくなっていく。例えば、N=1の場合には、上記ノズル間距離はP2−P1であるが、N=2の場合は、ノズル間距離は2×(P2−P1)となる。但し、Nがある値を超えると、ノズル12aは左側のノズル12bに近づいていくため、逆に、ノズル間距離は小さくなっていく。例えば、N=6の場合のノズル間距離は、N=1のときと同程度である。
【0067】
このノズル間距離の変動を、Nを用いて一般化する。ノズル間距離の増減の変動周期はX=P2/(P2−P1)と表すことができ、NがX/2となる地点でノズル間距離が極大値をとる。言い換えれば、NがX/2よりも小さい間は、Nが増えるにつれてノズル間距離が増加し、NがX/2を超えるとノズル間距離は減少に転じる。そこで、制御部7は、N≦X/2のノズル12aについては、Nが大きくなるに従って第2液滴D2の液滴量を増加させる。一方、X/2<N≦Xのノズル12aについては、Nが大きくなるに従って第2液滴D2の液滴量を減少させる。例えば、P1=42μm、P2=44μmの場合は、X=22であり、第2液滴D2の液滴量の増減境界となるN(=X/2)は11となる。
【0068】
また、Nが上記の変動周期Xを超えると、N≦Xと同じように、ノズル間距離が変動する。従って、制御部7は、N>Xのノズル12aについては、NがXの整数倍を超えるごとに、N≦Xにおける第2液滴の液滴量の増加と減少を繰り返す。
【0069】
2]第2液滴D2の液滴量は、第1液滴D1の液滴量よりも小さければよく、前記実施形態で説明したように、第1間隔P1、第2間隔P2の関数である必要は必ずしもない。
【0070】
3]前記実施形態では、本発明を、ラインタイプのインクジェットヘッドに適用した例であるが、
図12に示すように、用紙幅方向に移動しながら、各ノズル12からインクを吐出させる、シリアルタイプのインクジェットヘッド24に適用することも可能である。
【0071】
4]前記実施形態では、
図2に示すように、インクジェットヘッド4の各ヘッドユニット11が、個々に、アクチュエータ13を駆動する駆動装置14を備えている。これに対して、インクジェットヘッドが、複数のヘッドユニットのアクチュエータをそれぞれ駆動する、共通の駆動装置を備えてもよい。