特許第6790422号(P6790422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790422
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】膜電極接合体の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20201116BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20201116BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20201116BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20201116BHJP
【FI】
   G01N21/88 H
   H01M4/86 Z
   H01M8/10
   H01M8/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-72441(P2016-72441)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181421(P2017-181421A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】小澤 まどか
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−214150(JP,A)
【文献】 特開2011−141119(JP,A)
【文献】 特開2014−225340(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0014542(US,A1)
【文献】 特開昭52−138183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 − G01N 21/958
H01M 4/86
H01M 8/00 − H01M 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体を構成する被検査体に対して、入射角がブリュースター角である検査光を、偏光させることなく出射する検査光出射工程と、
前記被検査体によって反射された検査光のP偏光成分のみを通過させる偏光子を通過した検査光を検査光受光部によって受光した光量Lp、および前記検査光のS偏光成分のみを通過させる偏光子を通過した検査光を前記検査光受光部によって受光した光量Lsの少なくとも何れか一方を検出する偏光検出工程と、
光量Lpおよび光量Lsの少なくとも何れか一方に基づいて検査画像を作成する検査画像作成工程と、
を含み、
前記偏光検出工程において光量Lpおよび光量Lsを検出し、
前記検査画像作成工程において、光量Lpおよび光量Lsの比Lp/Lsに基づいて検査画像を作成することを特徴とする膜電極接合体の検査方法。
【請求項2】
前記偏光検出工程において、前記検査光受光部の主走査方向と直交する方向に前記被検査体を移動させる請求項1に記載の膜電極接合体の検査方法。
【請求項3】
前記被検査体が高分子電解質膜又は電極触媒層である請求項1又は2に記載の膜電極接合体の検査方法。
【請求項4】
前記検査光は、発光ダイオード、ハロゲンランプ、又はキセノンランプからの光である請求項1〜の何れか一項に記載の膜電極接合体の検査方法。
【請求項5】
前記入射角と、前記被検査体によって反射された前記検査光の角度である反射角とは、同じ角度である請求項1〜の何れか一項に記載の膜電極接合体の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形燃料電池に用いられる膜電極接合体の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素の化学反応から電気を生み出す発電システムである。従来の発電方式と比較して高効率、低環境負荷、低騒音といった特徴を持ち、将来のクリーンなエネルギー源として注目されている。特に、室温付近で使用可能な固体高分子形燃料電池は、車載用電源や家庭用定置電源などへの使用が有望視されており、近年、固体高分子形燃料電池に関する様々な研究開発が行われている。その実用化に向けての課題には、発電特性や耐久性などの電池性能向上、インフラ整備、製造コストの低減、等が挙げられる。
【0003】
固体高分子形燃料電池は、一般的に、多数の単セルが積層されて構成されている。単セルは、燃料ガスを供給する燃料極(アノード)と酸化剤を供給する酸素極(カソード)の二つの電極で高分子電解質膜を挟んで接合した膜電極接合体を、ガス流路および冷却水流路を有するセパレーターで挟んだ構造をしている。これらの電極は、白金系の貴金属などの触媒物質、導電性担体および高分子電解質を少なくとも含む電極触媒層と、ガス通気性と導電性とを兼ね備えたガス拡散層とで主に構成されている。
【0004】
固体高分子形燃料電池では、以下のような電気化学反応を経て電気を取り出すことが出来る。まず、燃料極側電極触媒層において、燃料ガスに含まれる水素が触媒物質により酸化され、プロトンおよび電子となる。生成したプロトンは、電極触媒層内の高分子電解質および電極触媒層に接している高分子電解質膜を通り、酸素極側電極触媒層に達する。また、同時に生成した電子は、電極触媒層内の導電性担体、電極触媒層の高分子電解質膜と異なる側に接しているガス拡散層、セパレーターおよび外部回路を通って酸素極側電極触媒層に達する。そして、酸素極側電極触媒層において、プロトンおよび電子が酸化剤ガスに含まれる酸素と反応し、水を生成する。
【0005】
膜電極接合体を構成している電極触媒層には、製造工程で発生するピンホール(針穴)やクラック(亀裂)等の電極触媒層が欠損している部分(欠損部)が存在することがある。これらの欠損部のある電極触媒層を有する膜電極接合体では、電極触媒層の欠損部から露出している高分子電解質膜が直接燃料ガスに晒されるため劣化しやすく、長期的には破膜等を生じる可能性が高い。
【0006】
また、膜電極接合体を構成している電極触媒層には、触媒担体や高分子電解質の凝集物や製造工程で混入したり付着したりした異物が存在することがある。電極触媒層に異物が混入したり付着したりしていると、周辺部材と積層してセル化した際に高分子電解質膜にダメージを与えてしまい、膜電極接合体のピンホールとなったり、高分子電解質膜の一部が薄膜化したり、高分子電解質膜またはガス拡散層と電極触媒層の密着性が低下したりするおそれがある。
【0007】
上述のような電極触媒層の欠損部や異物(欠陥部)のある膜電極接合体が燃料電池に用いられた場合、電池性能や耐久性の著しい低下を生じるため、膜電極接合体の製造工程において、問題となる欠陥部を高精度で検出し、不良品を除外する必要がある。
膜電極接合体やガス拡散層の欠陥部の検出には、欠陥部における照射光の透過光や反射光を撮像し、画像処理する方法がある。例えば、特許文献1に記載されている方法は、シート部材の片側から検査光を照射して、欠損部で透過した光を反対側に設けた検出器で検出するものである。
【0008】
また、特許文献2に記載されている方法は、膜電極接合体の片側から検査光を照射して、欠陥部で反射した光を検出器で検出するものである。
また、特許文献3に記載されている方法は、多孔質電極基材の表面に検査光を照射し、その透過光、正反射光および散乱光を撮像し、それらの撮像データを画像処理部にて解析し、その欠陥の種類、存在位置および大きさを知るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−190706号公報
【特許文献2】特開2014−225340号公報
【特許文献3】特許第5306053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1による方法では、検査に透過光を用いるため、検査したい層以外は光透過性である必要があり、高分子電解質膜の両面に光を透過しない電極触媒層が接合された膜電極接合体を構成している電極触媒層の欠陥検査には適用できないという問題があった。
また、特許文献2および特許文献3による方法では、検査に反射光を用いるため、高分子電解質膜の両面に電極触媒層が接合された膜電極接合体の検査に適用可能である。しかし、検査光および検出光が限られており、異なる形態や色彩、寸法をもつ多種類の欠陥部を高精度に検査することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、膜電極接合体を構成している被検査体の検査に適用可能で、異なる形態や色彩、寸法をもつ多種類の欠陥部を高精度に検査する検査方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、膜電極接合体の製造工程において問題となる欠陥部を高精度で検出し、不良品を除外することのできる検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための膜電極接合体の検査方法の一態様は、膜電極接合体を構成する被検査体に対して、入射角がブリュースター角である検査光を出射し、
上記被検査体によって反射された検査光のP偏光成分のみを通過させる偏光子を通過した検査光を検査光受光部によって受光した光量Lp、および上記検査光のS偏光成分のみを通過させる偏光子を通過した検査光を上記検査光受光部によって受光した光量Lsの少なくとも何れか一方を検出する偏光検出工程と、
光量Lpおよび光量Lsの少なくとも何れかに基づいて検査画像を作成する検査画像作成工程と、
を含む。
【0013】
また、上記課題を解決するための膜電極接合体の検査装置の一態様は、膜電極接合体を構成する被検査体を載置する検査ステージと、
上記被検査体に照射する検査光の入射角がブリュースター角となるように設置された検査光照射部と、
上記被検査体によって反射された検査光を受光する検査光受光部と、
上記被検査体と上記検査光受光部との間に配置され、P偏光成分のみを通過させる偏光子とS偏光成分のみを通過させる偏光子とを備え、光路に配置される偏光子を切り替え可能な偏光子切替部と、
上記偏光子切替部によって上記検査光受光部が検出したP偏光成分のみの光量LpおよびS偏光成分のみの光量Lsの少なくとも何れかに基づいて検査画像を作成する検査画像作成部と、
を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、異なる形態や色彩、寸法をもつ多種類の欠陥部を高精度に検査する膜電極接合体の検査方法を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、膜電極接合体の製造工程において問題となる欠陥部を高精度で検出し、不良品を除外することのできる膜電極接合体の検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】膜電極接合体の検査方法の第1実施形態に用いられる膜電極接合体の構成を示す断面図である。
図2】膜電極接合体の検査方法の第1実施形態を説明する断面図である。
図3】膜電極接合体の検査方法の他の実施形態を説明する断面図である。
図4】膜電極接合体の検査方法の第2実施形態に用いられる膜電極接合体の構成を示す断面図である。
図5】膜電極接合体の検査方法の第2実施形態を説明する断面図である。
図6】実施例1の検査画像であり、(A)はP偏光の検査画像、(B)はS偏光の検査画像である。
図7】実施例2の検査画像である。
図8】実施例3の検査画像であり、(A)はP偏光の検査画像、(B)はS偏光の検査画像である。
図9】実施例4の検査画像である。
図10】比較例1の検査画像である。
図11】比較例2の検査画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、膜電極接合体の検査方法および膜電極接合体の検査装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態は、以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づく設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本実施形態の範囲に含まれるものである。また、各図面は理解を容易にするため適宜誇張して表現している。
【0017】
(第1実施形態)
<膜電極接合体の構成>
以下、図1を参照しつつ、本実施形態に係る膜電極接合体の具体的な構成を説明する。
図1に示すように、膜電極接合体1は、一対の電極触媒層12A、12Cが高分子電解質膜11を挟んで対向配置され、接合しているものである。
電極触媒層12Aは燃料極を構成するアノード側電極触媒層であり、電極触媒層12Cは酸素極を構成するカソード側電極触媒層である。以下、一対の電極触媒層12A、12Cは、区別する必要が無い場合に、「電極触媒層12」と略記する場合がある。また、本実施形態では、被検査体として電極触媒層を採用した態様について説明する。
【0018】
ここで、電極触媒層12は、欠陥部13P、13Dのような欠陥部を有していることがある。図1に示すように、欠陥部13Pは突起状の欠陥部であり、13Dは電極触媒層12の一部が欠損している欠陥部である。以下、欠陥部13P、13Dは、区別する必要が無い場合に、「欠陥部13」と略記する場合がある。
なお、電極触媒層12の外周部は、ガスケット等(図示せず)によりシールされていてもよい。
【0019】
電極触媒層12は、少なくとも触媒物質と導電性担体と高分子電解質とを有する。
上記触媒物質としては、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、およびこれらの合金、酸化物、複酸化物、炭化物等を用いることが可能である。
【0020】
また、これらの触媒を担持する導電性担体は、微粉末状で導電性を有し、触媒に侵されないものであればどのようなものでも構わないが、一般的にカーボン粒子が使用される。上記カーボン粒子としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレンを好ましく用いることが可能である。上記カーボン粒子の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると電極触媒層のガス拡散性が低下したり、触媒の利用率が低下したりするので、10nm〜1000nm程度が好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
【0021】
本実施形態において用いられる高分子電解質膜11や電極触媒層12に含まれる高分子電解質は、プロトン伝導性を有するものであれば良く、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質を用いることが可能である。
上記フッ素系高分子電解質としては、例えば、デュポン社製の「Nafion(登録商標)」、旭硝子社製の「Flemion(登録商標)」、旭化成社製の「Aciplex(登録商標)」、ゴア社製の「Gore Select(登録商標)」等を用いることが可能である。
また、上記炭化水素系高分子電解質としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等を用いることが可能である。
【0022】
また、電極触媒層12に含まれる高分子電解質としては、様々なものを用いることが可能である。高分子電解質膜11と電極触媒層12との界面抵抗や、湿度変化時の高分子電解質膜11と電極触媒層12とにおける寸法変化率の点から考慮すると、高分子電解質膜11に含まれる高分子電解質と、電極触媒層12に含まれる高分子電解質とは同じ成分であることが好適であるが、異なっていても良い。
電極触媒層12に存在する欠陥部13としては、例えば、繊維片、金属片、樹脂片、高分子電解質樹脂の凝集体、担体カーボンの凝集体、気泡、クラック、ピンホール、(電極触媒層12の)剥離、色ムラ等がある。
【0023】
<膜電極接合体の検査装置>
本実施形態の膜電極接合体の検査装置は、図2および図3に示すように、検査ステージ21と、検査光照射部22と、検査光受光部24と、偏光子切替部23と、検査画像作成部25とを有する。
検査ステージ21は、被検査体を載置する部材である。本実施形態において上記被検査体は電極触媒層12であり、実際には、図2に示すように高分子電解質膜11の少なくとも一方の面に電極触媒層12が形成された膜電極接合体1が検査ステージ21に載置される。また、図3に示すように、基材14の少なくとも一方の面に電極触媒層12が形成された電極触媒層付基材2を検査ステージ21に載置してもよい。電極触媒層付基材2は、基材14の少なくとも一方の表面に電極触媒層12が接合しているものである。
【0024】
なお、この検査ステージ21は、検査光受光部24の主走査方向と直交する方向に移動することが好ましい。すなわち、この検査ステージ21の移動に伴って、被検査体も検査光受光部24の主走査方向と直交する方向に移動する。
また、検査光照射部22は、電極触媒層12に照射する検査光の入射角がブリュースター角となるように設置された部材である。
【0025】
また、検査光受光部24は、電極触媒層12によって反射された検査光を受光する部材である。
また、偏光子切替部23は、電極触媒層12と検査光受光部24との間に配置され、P偏光成分のみを通過させる偏光子とS偏光成分のみを通過させる偏光子とを備え、光路に配置される偏光子を切り替え可能な部材である。
【0026】
また、検査画像作成部25は、偏光子切替部23によって検査光受光部24が検出したP偏光成分のみの光量LpおよびS偏光成分のみの光量Lsの少なくとも何れかに基づいて検査画像を作成する部材である。検査画像作成部25は、検査光受光部24にデータ通信可能に接続されており、検査光受光部24で得られた光量データを演算し、その結果を図示しない表示装置等に送信し、検査画像を表示させる。
【0027】
<膜電極接合体の検査方法>
本実施形態の膜電極接合体の検査方法は、検査光出射工程と、偏光検出工程と、検査画像作成工程とを含む。
[検査光出射工程]
検査光出射工程は、被検査体の電極触媒層12に対して、入射角がブリュースター角である検査光を検査光照射部22によって出射する工程である。なお、本実施形態において上記被検査体は電極触媒層12であり、実際には、図2に示すように高分子電解質膜11の少なくとも一方の面に電極触媒層12が形成された膜電極接合体1が検査ステージ21に載置される。また、図3に示すように、基材14の少なくとも一方の面に電極触媒層12が形成された電極触媒層付基材2を検査ステージ21に載置してもよい。電極触媒層付基材2は、基材14の少なくとも一方の表面に電極触媒層12が接合しているものである。
なお、この検査ステージ21は、検査光受光部24の主走査方向と直交する方向に移動し、これに伴って被検査体も移動することが好ましい。
【0028】
基材14としては、例えばエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの転写性に優れたフッ素系樹脂を用いることができる。また、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレートなどの高分子フィルムも用いることができる。
【0029】
また、基材14として、高分子電解質膜やガス拡散層を用いることもできる。
図2および図3に示すように、被検査体は、検査ステージ21に載置されている。なお、皺やたるみが生じたり検査中にずれが生じたりしないように、真空吸着、静電吸着、メカクランプ等の方法により被検査体を検査ステージに固定することが望ましい。
【0030】
[偏光検出工程]
偏光検出工程は、電極触媒層12によって反射された検査光のP偏光成分のみを通過させる偏光子を通過した検査光を検査光受光部24によって受光した光量Lp、および上記検査光のS偏光成分のみを通過させる偏光子を通過した検査光を検査光受光部24によって受光した光量Lsの少なくとも何れか一方を検査光受光部24によって検出する工程である。
【0031】
[検査画像作成工程]
検査画像作成工程は、光量Lpおよび光量Lsの少なくとも何れか一方に基づいて検査画像を作成する工程である。具体的には、光量Lpおよび光量Lsの少なくとも何れか一方を電極触媒層12に対応させた座標上にマッピングして検査画像を作成する工程である。
【0032】
ここで、偏光検出工程において検査光受光部24がLpおよび光量Lsを検出し、検査画像作成工程において、検査画像作成25が、光量Lpおよび光量Lsの比Lp/Lsを算出するコントラスト計算を行い、その比に基づいて検査画像を作成してもよい。これにより、欠陥部をより際立たせ、確実に検出する膜電極接合体の検査装置およびその検査方法を提供することができる。
【0033】
また、偏光検出工程において、検査光受光部24の主走査方向と直交する方向に電極触媒層12を移動させてもよい。
以下、このように構成された膜電極接合体の検査装置を用いた検査方法について図面を参照して詳述する。
検査光照射部22より出射された検査光は、被検査体の電極触媒層12にブリュースター角で入射し、電極触媒層12の表面で反射する。電極触媒層12の表面で反射した検査光は、偏光子切替部23に備えられた偏光子を通過して検査光受光部24に入射する。
【0034】
偏光子切替部23において、P偏光成分のみを通過させる偏光子が選択されている場合には、検査光受光部24は、P偏光成分のみを受光する。また、偏光子切替部23において、S偏光成分のみを通過させる偏光子が選択されている場合には、検査光受光部24は、S偏光成分のみを受光する。
一般的に、被検査体の電極触媒層12にブリュースター角で光が入射した場合、P偏光の反射率は0であり、S偏光のみが反射する。つまり、偏光子切替部23においてP偏光成分のみを通過させる偏光子が選択されている場合には、検査光受光部24には、検査光が入射しない。
【0035】
しかし、被検査体である膜電極接合体1の電極触媒層12の表面に凹凸が存在する箇所では、凹凸面で光が散乱するためP偏光成分のみを通過させる偏光子が選択されている場合でも検査光受光部24に検査光が入射する。
また、偏光子切替部23においてS偏光成分のみを通過させる偏光子が選択されている場合には、検査光受光部24に検査光が入射するが、被検査体である膜電極接合体1の電極触媒層12に欠損部がある場合等には、一部の検査光が被検査体を透過するため、検査光受光部24に入射する検査光量は減少する。
【0036】
このようにして検査光受光部24に入射した光量データを例えば256階調のデジタルデータに変換し、座標毎にマッピングすることで、目視では確認しづらい欠陥部13も強調して可視化することが可能である。また、設定された閾値で2値化して、欠陥部13の座標および画素数を抽出することが可能である。
検査光照射部22を構成する検査光源としては、例えば、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)やハロゲンランプやキセノンランプ等が用いられる。なお、検査光は、被検査体の全幅に対して均一な照射を行えるよう平行光もしくは高指向性であるのが望ましく、均一照明レンズやテレセントリックレンズを併用してもよい。
【0037】
検査光受光部24としては、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーを用いたエリアカメラやラインスキャンカメラが用いられる。特に、被検査体の全幅に対してラインスキャンカメラを設置し、検査光受光部24と垂直の方向に被検査体を移動させながら順次検査を行った場合、検査精度と検査効率に優れるとともに、様々な被検査体のサイズに対応することが可能であり、好適である。
【0038】
<電極触媒層付基材および膜電極接合体の製造方法>
以下、電極触媒層付基材2および膜電極接合体1の製造方法について説明する。
基材14の表面に電極触媒層12を形成する方法としては、基材14の表面に触媒インクを塗布し、触媒インクの塗膜から溶媒成分を除去する方法を用いることができる。
上記触媒インクは、少なくとも溶媒と導電性担体に担持された触媒物質と高分子電解質とを混合し、分散処理を加えることにより得られる。分散処理には、例えば、遊星ボールミル、ビーズミル、超音波ホモジナイザー等の様々な手法を用いることが可能である。
【0039】
上記触媒インクの分散媒として使用される溶媒は、触媒物質や導電性担体や高分子電解質を浸食することがなく、流動性の高い状態で高分子電解質を溶解または微細ゲルとして分散できるものあれば特に制限はない。なお、溶媒には高分子電解質となじみがよい水が含まれていてもよい。触媒インク中には揮発性の液体有機溶媒が少なくとも含まれることが望ましいが、溶剤として低級アルコールを用いたものは発火の危険性が高く、このような溶媒を用いる際は水との混合溶媒にするのが好ましい。水の添加量は、高分子電解質が分離して白濁を生じたり、ゲル化したりしない程度であれば特に制限はない。
【0040】
上記触媒インクを塗布する方法としては、例えば、ダイコート、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、スキージーなど様々な塗工方法を用いることが可能であるが、塗布中間部分の膜厚が安定しており間欠塗工にも対応可能であるダイコートを、特に好適に用いることが可能である。
また、塗布した触媒インクの乾燥には、例えば、温風オーブン、IR乾燥、減圧乾燥等を用いることが可能である。
【0041】
高分子電解質膜11の両面に電極触媒層12を形成する方法としては、基材14として高分子電解質膜を用い、高分子電解質膜の表面に直接触媒インクを塗布し、触媒インクの塗膜から溶媒成分を除去して電極触媒層を形成する方法や、転写用基材等を基材14として用いた電極触媒層付基材2を使用し、高分子電解質膜11と電極触媒層12の表面を接触させて加熱・加圧することで接合および転写を行う方法を用いることができる。
【0042】
電極触媒層付基材2を使用し、高分子電解質膜11と電極触媒層12を接触させて加熱・加圧することで接合および転写を行う場合には、電極触媒層12にかかる圧力が膜電極接合体1の発電性能に影響する。そのため、発電性能の良い膜電極接合体1を得るには、積層体にかかる圧力は、0.5MPa以上20MPa以下の範囲内であることが望ましく、2MPa以上15MPa以下の範囲内であることがより望ましい。20MPaより大きい圧力では電極触媒層12が圧縮されすぎ、また0.5MPより小さい圧力では電極触媒層12と高分子電解質膜11の接合性が低下して、発電性能が低下する。
【0043】
また、接合時の温度は、電極触媒層12の高分子電解質のガラス転移点付近に設定するのが、高分子電解質膜11と電極触媒層12の界面の接合性が向上し、界面抵抗を抑えられる点で効果的であり、望ましい。
以上説明したように、本実施形態によれば、偏光検出工程で得られたP偏光およびS偏光の少なくとも一方の光量データを元に、電極触媒層に存在する多様な形態の欠陥部を高精度で検出することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、膜電極接合体の検査方法および検査装置の第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態は、上述した第1実施形態と同様の部材および部位には、同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。すなわち、本実施形態は、上記実施形態と同様の検査装置を用いて、膜電極接合体を構成する部材である高分子電解質膜を被検査体としたものである。
【0045】
<膜電極接合体の構成>
本実施形態の膜電極接合体は、電極触媒層12A、12Cの少なくとも一方が高分子電解質膜11に配置され、接合しているものである。その他、膜電極接合体の構成、高分子電解質膜11、電極触媒層12A、12Cの構成や材料は第1実施形態と同様である。
ここで、図4に示すように、高分子電解質膜11は、欠陥部15P、15Dのような欠陥部を有していることがある。欠陥部15Pは突起状の欠陥部であり、15Dは高分子電解質膜11の一部が欠損している欠陥部である。以下、欠陥部15P、15Dは、区別する必要が無い場合に、「欠陥部15」と略記する場合がある。
高分子電解質膜11に存在する欠陥部15としては、例えば、繊維片、金属片、樹脂片、高分子電解質樹脂の凝集体、担体カーボンの凝集体、気泡、クラック、ピンホール、(高分子電解質膜11)剥離、色ムラ等がある。
【0046】
<膜電極接合体の検査装置>
本実施形態の膜電極接合体の検査装置は、図5に示すように、検査ステージ21と、検査光照射部22と、検査光受光部24と、偏光子切替部23と、検査画像作成部25とを有する。
検査ステージ21は、被検査体を載置する部材である。本実施形態において上記被検査体は高分子電解質膜11であり、図5に示すように少なくとも一方の面に電極触媒層12が積層された高分子電解質膜11が検査ステージ21上に載置されるが、高分子電解質膜11のみを検査ステージ21上に載置してもよい。
【0047】
なお、この検査ステージ21は、検査光受光部24の主走査方向と直交する方向に移動することが好ましい。すなわち、この検査ステージ21の移動に伴って、被検査体も検査光受光部24の主走査方向と直交する方向に移動する。
また、検査光照射部22は、高分子電解質膜11に照射する検査光の入射角がブリュースター角となるように設置された部材である。
【0048】
また、検査光受光部24は、高分子電解質膜11によって反射された検査光を受光する部材である。
また、偏光子切替部23は、高分子電解質膜11と検査光受光部24との間に配置され、P偏光成分のみを通過させる偏光子とS偏光成分のみを通過させる偏光子とを備え、光路に配置される偏光子を切り替え可能な部材である。
【0049】
また、検査画像作成部25は、偏光子切替部23によって検査光受光部24が検出したP偏光成分のみの光量LpおよびS偏光成分のみの光量Lsの少なくとも何れかに基づいて検査画像を作成する部材である。検査画像作成部25は、検査光受光部24にデータ通信可能に接続されており、検査光受光部24で得られた光量データを演算し、その結果を図示しない表示装置等に送信し、検査画像を表示させる。
【0050】
<膜電極接合体の検査方法>
本実施形態の膜電極接合体の検査方法は、第1実施形態と同様に、検査光出射工程と、偏光検出工程と、検査画像作成工程とを含む。
[検査光出射工程]
検査光出射工程は、被検査体である高分子電解質膜11に対して、入射角がブリュースター角である検査光を検査光照射部22によって出射する工程である。なお、本実施形態において上記被検査体は高分子電解質膜11であり、実際には、図5に示すように、少なくとも一方の面に電極触媒層12が形成された高分子電解質膜11の状態で検査ステージ21に載置される。上記被検査体としての高分子電解質膜11は膜電極接合体1を作製する前の状態である高分子電解質膜11のみで検査ステージ21に載置されてもよい。
【0051】
なお、この検査ステージ21は、検査光受光部24の主走査方向と直交する方向に移動し、これに伴って被検査体も移動することが好ましい。
被検査体に皺やたるみが生じたり検査中にずれが生じたりしないように、真空吸着、静電吸着、メカクランプ等の方法により被検査体を検査ステージに固定することが望ましい。
【0052】
[偏光検出工程]
偏光検出工程は、高分子電解質膜11によって反射された検査光のP偏光成分のみを通過させる偏光子を通過した検査光を検査光受光部24によって受光した光量Lp、および上記検査光のS偏光成分のみを通過させる偏光子を通過した検査光を検査光受光部24によって受光した光量Lsの少なくとも何れか一方を検査光受光部24によって検出する工程である。
【0053】
[検査画像作成工程]
検査画像作成工程は、光量Lpおよび光量Lsの少なくとも何れか一方に基づいて検査画像を作成する工程である。具体的には、光量Lpおよび光量Lsの少なくとも何れか一方を高分子電解質膜11に対応させた座標上にマッピングして検査画像を作成する工程である。
【0054】
ここで、偏光検出工程において検査光受光部24がLpおよび光量Lsを検出し、検査画像作成工程において、検査画像作成25が、光量Lpおよび光量Lsの比Lp/Lsを算出するコントラスト計算を行い、その比に基づいて検査画像を作成してもよい。これにより、欠陥部をより際立たせ、確実に検出する膜電極接合体の検査装置およびその検査方法を提供することができる。
【0055】
また、偏光検出工程において、検査光受光部24の主走査方向と直交する方向に高分子電解質膜11を移動させてもよい。
以下、このように構成された膜電極接合体の検査装置を用いた検査方法について図面を参照して詳述する。
図5に示すように、検査光照射部22より出射された検査光は、被検査体である高分子電解質膜11にブリュースター角で入射し、高分子電解質膜11の表面で反射する。高分子電解質膜11の表面で反射した検査光は、偏光子切替部23に備えられた偏光子を通過して検査光受光部24に入射する。
【0056】
偏光子切替部23において、P偏光成分のみを通過させる偏光子が選択されている場合には、検査光受光部24は、P偏光成分のみを受光する。また、偏光子切替部23において、S偏光成分のみを通過させる偏光子が選択されている場合には、検査光受光部24は、S偏光成分のみを受光する。
一般的に、被検査体の高分子電解質膜11にブリュースター角で光が入射した場合、P偏光の反射率は0であり、S偏光のみが反射する。つまり、偏光子切替部23においてP偏光成分のみを通過させる偏光子が選択されている場合には、検査光受光部24には、検査光が入射しない。
【0057】
しかし、被検査体である膜電極接合体1の高分子電解質膜11の表面に凹凸が存在する箇所では、凹凸面で光が散乱するためP偏光成分のみを通過させる偏光子が選択されている場合でも検査光受光部24に検査光が入射する。
また、偏光子切替部23においてS偏光成分のみを通過させる偏光子が選択されている場合には、検査光受光部24に検査光が入射するが、被検査体である膜電極接合体1の高分子電解質膜11に欠損部がある場合等には、一部の検査光が被検査体を透過するため、検査光受光部24に入射する検査光量は減少する。
【0058】
このようにして検査光受光部24に入射した光量データを例えば256階調のデジタルデータに変換し、座標毎にマッピングすることで、目視では確認しづらい欠陥部15も強調して可視化することが可能である。また、設定された閾値で2値化して、欠陥部15の座標および画素数を抽出することが可能である。
検査光照射部22を構成する検査光源としては、例えば、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)やハロゲンランプやキセノンランプ等が用いられる。なお、検査光は、被検査体の全幅に対して均一な照射を行えるよう平行光もしくは高指向性であるのが望ましく、均一照明レンズやテレセントリックレンズを併用してもよい。
【0059】
検査光受光部24としては、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーを用いたエリアカメラやラインスキャンカメラが用いられる。特に、被検査体の全幅に対してラインスキャンカメラを設置し、検査光受光部24と垂直の方向に被検査体を移動させながら順次検査を行った場合、検査精度と検査効率に優れるとともに、様々な被検査体のサイズに対応することが可能であり、好適である。
【0060】
<電極触媒層付基材および膜電極接合体の製造方法>
本実施形態で検査した高分子電解質膜11を用いて膜電極接合体1を製造する方法は、第1実施形態と同様である。
以上説明したように、本実施形態によれば、偏光検出工程で得られたP偏光およびS偏光の少なくとも一方の光量データを元に、高分子電解質膜11に存在する多様な形態の欠陥部を高精度で検出することができる。
【実施例】
【0061】
以下、膜電極接合体の検査装置およびそれを用いた検査方法の実施例を、比較例とともに説明する。なお、以下に、実施例および比較例を示すが、実際には、以下の例に限定されるものではない。
(実施例1)
<膜電極接合体の作製>
白金担持カーボン触媒と水、エタノールの混合溶媒と高分子電解質溶液を混合し、遊星型ボールミルで分散処理を行い、触媒インクを調製した。ここでは、白金担持カーボン触媒として、田中貴金属工業社製の「TEC10E50E」を使用した。そして、調整した触媒インクを、PTFEフィルムの表面にスリットダイコーターを用いて矩形に塗布した。続いて、触媒インクが塗布されたPTFEフィルムを80℃の温風オーブンに入れて乾燥させ、カソード側電極触媒層シートを作製した。また、同様の方法により、アノード側電極触媒層シートを作製した。
【0062】
次に、カソード用電極触媒層シートとアノード用電極触媒層シートを、高分子電解質膜を挟むように電極触媒層を積層し、積層体を得た。その後、この積層体を120℃、10MPaの条件でホットプレスした後にPTFEフィルムを剥離することで、膜電極接合体1を得た。ここでは、高分子電解質膜として、デュポン社製の「Nafion(登録商標)211」を使用した。
【0063】
<膜電極接合体の検査>
得られた膜電極接合体1を、多孔質真空吸着板を用いた検査ステージにシワやたるみがないようして載置し、真空ポンプを用いて固定した。入射角がブリュースター角である50度となるように設置した高指向性直線照明を検査光源として用い、多孔質真空吸着板に固定された膜電極接合体の電極触媒層部分で検査光を反射させた。
【0064】
反射した検査光は、まず、P偏光のみ透過させるように設置された偏光子を通してラインCCDカメラで検出した。その際、検査光源、偏光子およびラインCCDカメラの有効幅は電極触媒層の幅以上とし、検査光源およびラインCCDカメラの主走査方向と直交する方向に検査ステージを移動させながら順次検査光量データを取得した。
次に、反射した検査光を、S偏光のみ透過させるように設置された偏光子を通してラインCCDカメラで検出した。その際、検査光源、偏光子およびラインCCDカメラの有効幅は電極触媒層の幅以上とし、検査光源およびラインCCDカメラの主走査方向と直交する方向に検査ステージを移動させながら順次検査光量データを取得した。取得した検査光量データを256階調のデジタルデータに変換し、座標毎にマッピングして図6(A),(B)に示す検査画像を得た。
【0065】
(実施例2)
実施例1と同様にしてP偏光とS偏光の検査光量データを取得し、取得したP偏光とS偏光の各検査光量データを用いて、P偏光の検査光量をS偏光の検査光量で除するコントラスト計算を行った。算出したコントラストデータを256階調のデジタルデータに変換し、座標毎にマッピングして図7に示す検査画像を得た。
【0066】
(実施例3)
アノード用電極触媒層のみを高分子電解質膜の片面に接合し、検査光源を電極触媒層ではなく高分子電解質膜に対して出射した以外は、実施例1と同様にしてP偏光とS偏光の検査光量データを取得し、取得した検査光量データを256階調のデジタルデータに変換し、座標毎にマッピングして図8(A),(B)に示す検査画像を得た。
【0067】
(実施例4)
アノード用電極触媒層のみを高分子電解質膜の片面に接合し、検査光源を電極触媒層ではなく高分子電解質膜に対して出射した以外は、実施例1と同様にしてP偏光とS偏光の検査光量データを取得し、取得したP偏光とS偏光の各検査光量データを用いて、P偏光の検査光量をS偏光の検査光量で除するコントラスト計算を行った。算出したコントラストデータを256階調のデジタルデータに変換し、座標毎にマッピングして図9に示す検査画像を得た。
【0068】
(比較例1)
偏光子を通さずに検査光を検出したこと以外は実施例1と同様にして、図10に示す検査画像を得た。
(比較例2)
偏光子を通さずに検査光を検出したこと以外は実施例3と同様にして、図11に示す検査画像を得た。
【0069】
(評価)
図6(A),(B)および図8(A),(B)に示すように、P偏光とS偏光で異なるモードではあるが、いずれも欠陥が明瞭に確認できている。
図7図9に示すように、実施例2,4によれば、コントラスト計算を行うことにより、実施例1,3のP偏光とS偏光の各検査画像で確認された欠陥に加えて、より詳細かつ明瞭に、ムラや異物等の欠陥が確認できている。
図10,11に示すように、比較例1,2では、欠陥と予測される点やムラが薄く見えているが、実施例と比較して数が少なく、明瞭でないため、十分に欠陥を確認できていない。
【0070】
よって、図6図7に示した検査画像と、図10に示した検査画像とを比較することで、比較例1で用いた方法と比べて実施例1,2で用いた方法が欠陥の検出において優れていることが示された。また、図8図9に示した検査画像と、図11に示した検査画像とを比較することで、比較例2で用いた方法と比べて実施例3,4で用いた方法が欠陥の検出において優れていることが示された。
以上説明したように、本発明によれば、膜電極接合体を構成している被検査体の検査に適用可能で、異なる形態や色彩、寸法をもつ多種類の欠陥を高精度に検査することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、固体高分子形燃料電池を利用した定置型コジェネレーションシステムや燃料電池自動車などに好適に用いることのできる膜電極接合体を、安定した品質で提供するものであり、産業上の利用価値が大きい。
【符号の説明】
【0072】
1…膜電極接合体
2…電極触媒層付基材
11…高分子電解質膜
12(12A,12C)…電極触媒層
13(13P,13D)…欠陥部
14…基材
15(15P,15D)…欠陥部
21…検査ステージ
22…検査光照射部
23…偏光子切替部
24…検査光受光部
25…検査画像作成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11