特許第6790429号(P6790429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790429
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20201116BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20201116BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20201116BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C08L9/06
   C08K3/36
   C08L101/00
   B60C1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-79008(P2016-79008)
(22)【出願日】2016年4月11日
(65)【公開番号】特開2017-190364(P2017-190364A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出雲 優
(72)【発明者】
【氏名】児島 良治
【審査官】 阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0090475(US,A1)
【文献】 特開2011−132412(JP,A)
【文献】 特開2014−201637(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/077020(WO,A1)
【文献】 特表2011−508815(JP,A)
【文献】 特開2011−057892(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0050039(KR,A)
【文献】 特開2007−177209(JP,A)
【文献】 特開2016−170138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/、57/
C08K 3/
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
40〜100質量%のスチレンブタジエンゴムおよび0〜60質量%のブタジエンゴムを含むゴム成分100質量部に対し、
シリカを0.5質量部以上、
樹脂を5質量部以上
オイルを含有するゴム組成物により構成されたトレッドを備えた空気入りタイヤであり、
前記ゴム組成物の下記粘着力試験方法により測定される粘着力が、前記樹脂全量を前記オイルに置き換えたこと以外は同じ基準ゴム組成物の粘着力を100とした場合に300以上であり、
前記ゴム組成物の70℃での正接損失tanδ70℃が、前記基準ゴム組成物の正接損失tanδ70℃を100とした場合に125以下であり、
前記ゴム組成物の70℃での正接損失tanδ70℃に対する0℃での正接損失tanδ0℃の比(tanδ0℃/tanδ70℃)が3.0〜10である空気入りタイヤ。
<粘着力試験方法>
試験ゴムが準備される準備工程と、
ウェット摩擦試験がされて、試験ゴムの表面に粘着物質が生成される摩擦試験工程と、
前記粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とが測定される粘着物質測定工程と、
前記粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とに基づいて試験ゴムの粘着力が評価される評価工程とを備える粘着力試験方法。
【請求項2】
前記樹脂の含有量が50質量部以下である、請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記オイルの含有量が2質量部以上60質量部以下である、請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記シリカの含有量が200質量部以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記樹脂の軟化点が80℃以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ブタジエンゴムの含有量が15質量%以上40質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ブタジエンゴムが、シス含有量が90%以上のハイシスブタジエンゴムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のゴム組成物からなるトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤの転がり抵抗を低減し、発熱を抑えることによる車の低燃費化が行われている。車の低燃費化への要求は強くなってきており、特に、タイヤ部材のなかでもタイヤにおける占有比率の高いトレッドに対して、優れた低発熱性(低燃費性)が要求されている。また、車の走行における安全性の面から、トレッドに対しては、ウェットグリップ性能も要求されている。
【0003】
一般的に、低燃費性を向上させるためにはゴム組成物のヒステリシスロス(tanδ)を低下させることが有効である。また、ウェットグリップ性能を向上させるためには、ヒステリシスロス摩擦、粘着摩擦、掘り起こし摩擦などの摩擦力を大きくする方法などが考えられている。
【0004】
しかし、ヒステリシスロスを低下させて低燃費性を向上させると、ヒステリシスロス摩擦が小さくなり、ウェットグリップ性能が悪化してしまうという問題がある。つまり、粘弾性特性(tanδ)だけでは低燃費性とウェットグリップとを両立させることは困難である。
【0005】
粘着摩擦を大きくすることにより、ウェットグリップ性能の向上を図ることが考えられる。例えば、オイル等の軟化剤を増量し、ゴム組成物への粘着物質の発生量を多くして粘着摩擦力を向上させる方法などが提案されている。しかし、粘着物質の発生量が多いと、耐摩耗性が低下してしまうという問題がある。
【0006】
特許文献1には、ゴム組成物に特定の固体樹脂と特定の軟化剤との溶融混合物を含有することにより、低燃費性、グリップ性能、耐摩耗性を改善する方法が記載されている。しかし、ゴム組成物の粘着力については記載されておらず、ウェットグリップ性能および低燃費性をバランス良く改善することについてもまだ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−36370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、トレッド用ゴム組成物に所定の樹脂を配合することで、ゴム組成物に該樹脂を含む粘着層を発生させ、ゴム組成物の粘着力を向上できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成することに成功した。
【0009】
本発明は、ウェットグリップ性能および低燃費性がバランス良く改善された空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、40〜100質量%のスチレンブタジエンゴムおよび0〜60質量%のブタジエンゴムを含むゴム成分100質量部に対し、シリカを0.5質量部以上、樹脂を5質量部以上含有するゴム組成物により構成されたトレッドを備えた空気入りタイヤであり、前記ゴム組成物の下記粘着力試験方法により測定される粘着力が、樹脂全量をオイルに置き換えたこと以外は同じ基準ゴム組成物の粘着力を100とした場合に300以上であり、前記ゴム組成物の70℃での正接損失tanδ70℃が、前記基準ゴム組成物の正接損失tanδ70℃を100とした場合に125以下であり、前記ゴム組成物の70℃での正接損失tanδ70℃に対する0℃での正接損失tanδ0℃の比(tanδ0℃/tanδ70℃)が3.0〜10である空気入りタイヤに関する。
<粘着力試験方法>
試験ゴムが準備される準備工程と、
ウェット摩擦試験がされて、試験ゴムの表面に粘着物質が生成される摩擦試験工程と、
前記粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とが測定される粘着物質測定工程と、
前記粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とに基づいて試験ゴムの粘着力が評価される評価工程とを備える粘着力試験方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウェットグリップ性能および低燃費性がバランス良く優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】粘着力試験方法に使用される試験装置の前面図である。
図2図1の試験装置の底面図である。
図3】(a)は図1の試験装置に取り付けられて粘着力が評価される試験前の試験ゴムが示された正面図であり、(b)はその底面図である。
図4】(a)は図3の試験ゴムの試験後の状態が示された正面図であり、(b)はその底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤは、所定のゴム成分、シリカ、および所定の樹脂を所定量含有するゴム組成物により構成されたトレッドを有することを特徴とする。
【0014】
前記ゴム成分は、所定量のスチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)を含む。
【0015】
前記SBRとしては特に限定されず、乳化重合スチレンブタジエンゴム(未変性E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(未変性S−SBR)、これらのSBRの末端を変性した変性SBR(変性E−SBR、変性S−SBR)など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0016】
ゴム成分中のSBRの含有量は、40質量%以上であり、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。SBRの含有量が40質量%未満の場合は、ウェットグリップ性能および耐摩耗性が得られない傾向がある。また、SBRの含有量は、100質量%とすることもできるが、低燃費性能の観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0017】
前記BRとしては、特に限定されず、シス含有量が90%以上のハイシスBR、末端および/または主鎖が変性された変性BR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされた変性BR(縮合物、分岐構造を有するものなど)などタイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0018】
BRを含有する場合のゴム成分中のBRの含有量は、耐摩耗性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、BRの含有量は、60質量%以下であり、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。BRの含有量が60質量%を超える場合は、グリップ性能が劣る傾向がある。
【0019】
また、前記ゴム成分は、前記SBRおよびBR以外のゴム成分として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)およびスチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)などのその他のゴム成分を必要に応じて含むことができるが、ウェットグリップ性能の観点からは、SBRおよびBRのみからなるゴム成分とすることが好ましい。
【0020】
前記シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0021】
シリカのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、耐久性や破断時伸びの観点から、80m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましい。また、シリカのN2SAは、低燃費性および加工性の観点から、250m2/g以下が好ましく、220m2/g以下がより好ましい。なお、本明細書におけるシリカのN2SAとは、ASTM D3037−93に準じて測定された値である。
【0022】
シリカのゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上であり、30質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましい。シリカの含有量が、0.5質量部未満の場合は、耐久性および破断時伸びが低下する傾向がある。また、シリカの含有量は、混練時の分散性および加工性の観点から、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、120質量部以下がさらに好ましい。
【0023】
前記樹脂の軟化点は、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。樹脂の軟化点が40℃未満の場合は、ヒステリシスロス摩擦、操縦安定性、保管中にブロッキングするなどの取扱い性が低下する傾向がある。また、樹脂の軟化点は、混練中の樹脂の分散性の観点から、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。なお、本発明における樹脂の軟化点は、フローテスター((株)島津製作所製のCFT−500Dなど)を用い、試料として1gの樹脂を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出し、温度に対するフローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度とした。
【0024】
前記樹脂は特に限定されず、タイヤ工業で慣用される樹脂が挙げられる。例えば、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、α−メチルスチレン樹脂、α−メチルスチレン/スチレン樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)などの芳香族炭化水素系樹脂や、C5樹脂、C8樹脂、C9樹脂、C5/C9樹脂などの脂肪族炭化水素系樹脂などが挙げられ、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、これらの樹脂は、水素添加処理を行ったものであっても良い。
【0025】
前記樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部以上であり、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましい。樹脂の含有量が5質量部未満の場合は、粘着層に含まれる樹脂が少なくなり、ゴム組成物の粘着力が十分に得られない傾向がある。また、樹脂の含有量は、ブルームが抑制され耐摩耗性に優れるという理由から、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
【0026】
本発明に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業に一般的に使用されるその他の配合剤、例えば、カーボンブラックなどの補強充填剤、オイル、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0027】
前記カーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、例えば、SAF、ISAF、HAF、FF、FEF、GPFグレードのもの等が挙げられ、これらのカーボンブラックを単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、補強性および耐摩耗性の観点から、80m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのN2SAは、分散性および低燃費性の観点から、280m2/g以下が好ましく、250m2/g以下がより好ましい。なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0029】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、補強性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、加工性、低燃費性および耐摩耗性の観点から、150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましい。
【0030】
本発明のゴム組成物には、オイルを配合してもよい。オイルを配合することにより、加工性を改善するとともに、ゴムの強度を高めることができる。オイルとしては、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂などが挙げられる。
【0031】
前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどが挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルがあげられる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、オイル芳香族系プロセスオイルを再抽出したTreated Distillate Aromatic Extract(TDAE)、アスファルトとナフテン油の混合油であるアロマ代替オイル、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvates)(MES)、および重ナフテン系オイル等が挙げられる。
【0032】
前記植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油などが挙げられる。
【0033】
前記動物油脂としては、オレイルアルコール、魚油、牛脂などが挙げられる。
【0034】
なかでも、加工性に有利であるという理由からプロセスオイルが好ましく、環境対策の面では、上記低PCA含量プロセスオイルを使用することが好ましい。
【0035】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、オイルの含有量は、耐摩耗性および加工性の観点から、60質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
【0036】
本発明に係るゴム組成物は、一般的な方法で製造できる。例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどの一般的なゴム工業で使用される公知の混練機で、前記各成分のうち、加硫剤および加硫促進剤以外の成分を混練りした後、これに、加硫剤および加硫促進剤を加えてさらに混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0037】
本発明に係るゴム組成物は、下記粘着力試験方法により測定される粘着力が、樹脂全量をオイルに置き換えたこと以外は同じ基準ゴム組成物の粘着力を100とした場合に300以上であることを特徴とする。
【0038】
<粘着力試験方法>
試験ゴムが準備される準備工程と、
ウェット摩擦試験がされて、試験ゴムの表面に粘着物質が生成される摩擦試験工程と、
前記粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とが測定される粘着物質測定工程と、
前記粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とに基づいて試験ゴムの粘着力が評価される評価工程とを備える粘着力試験方法。
【0039】
本発明に係るゴム組成物の所定の粘着力試験方法により測定される粘着力は、前記基準ゴム組成物の粘着力を100とした場合に、300以上であり、400以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。粘着力が300未満の場合は、ウェットグリップ性能に劣る傾向がある。また、ゴム組成物の粘着力の上限は特に限定されないが、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましい。
【0040】
所定の粘着力試験方法について、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0041】
図1および図2には、前記粘着力試験方法に用いられる摩擦試験装置2が示されている。図2は、この試験装置2の底面図である。図1は、図2の線分I−Iで示された断面図である。ここでは、説明の便宜上、図1の上下方向を上下方向として、図1の左右方向を左右方向として、図1の紙面に垂直方向を前後方向として説明がされる。
【0042】
この試験装置2は、本体4および測定手段6を備えている。本体4は、図示されないが、支持部および駆動部を備えている。本体4は、路面8に接地する据付座10を備えている。測定手段6は、駆動軸12、駆動円盤14、測定軸16、測定円盤18および測定子20を備えている。
【0043】
この測定手段6は、本体4の支持部に支持されている。本体4の支持部は、測定手段6を上下方向に移動可能に支持している。本体4の支持部は、測定手段6を回転可能に支持している。本体4の駆動部は、測定手段6の駆動軸12を回転させうる。本体4の駆動部により、測定手段6は、駆動軸12の軸線を回転軸に回転可能されている。
【0044】
測定手段6の駆動円盤14は、駆動軸12の下端に一体に固定されている。駆動円盤14の中心線は、駆動軸12の軸線と一致している。測定軸16は、駆動軸12に回転可能に支持されている。測定軸16は、駆動軸12に対して、上下方向の移動が規制されている。測定円盤18は、測定軸16の下端に一体に固定されている。測定軸16の軸線と測定円盤18の中心線とは一致している。駆動軸12の軸線と測定軸16の軸線とは、一致している。
【0045】
図示されないが、測定手段6は、駆動円盤14と測定円盤18とを連結する弾性手段と、駆動円盤14と測定円盤18との位置ずれを測定する位置センサーとを備えている。弾性手段は、駆動円盤14と測定円盤18とを連結している。弾性手段は、駆動円盤14と測定円盤18との回転方向の位置ずれを可能にして連結している。位置センサーは、この弾性手段の変位を測定しうる。
【0046】
測定円盤18は、底面22を備えている。この底面22は、路面8に対向している。底面22に、3つの測定子20が固定されている。3つの測定子30は、測定円盤18の円周方向に等間隔で並べられている。測定子20の固定端20aは、底面22に固定されている。測定子20は、固定端20aから固定されない自由端20bまで延びている。測定子20は、測定円盤18の円周方向に対する接線方向に延びている、この測定子20は、固定端20aから自由端20bまで、測定手段6の回転向きに対して逆向きに延びている。この測定子20は、固定端20aから自由端20bに向かって、底面22から路面に近付く向きに延びている。測定子20の自由端20bは、底面22から離れて位置している。
【0047】
図3(a)および図3(b)には、試験ゴムとしてのゴム試験片24と、測定子20の自由端20bの近傍が示されている。図3(a)の上下方向、左右方向および前後方向は、図1のそれと同様にされている。図3(b)は、図2と同様に、ゴム試験片24の底面図を表している。このゴム試験片24は、測定子20の自由端24b側に固定されている。このゴム試験片24は、路面8に対向する表面24aを備えている。この表面24aは、略平面からなっている。表面24aは、左右端が曲面で面取りされている。
【0048】
図4(a)および図4(b)には、摩擦試験後のゴム試験片24が示されている。図4(a)の右方向はゴム試験24が路面8に擦られるときの回転方向前方であり、その左方向は回転方向後方である。図4(a)の一点鎖線は、摩擦試験前の図3(a)の表面24aの形状を示している。
【0049】
図4(b)に示されるように、摩擦試験後のゴム試験片24の表面24aは、非接触部28、擦り部30および堆積部32からなっている。非接触部28は、ゴム試験24が路面8に擦られるときの回転方向前方に位置している。この非接触部28は、摩擦試験において、路面8に接触しなかった部分である。堆積部32は、この回転方向後方に位置している。堆積部30は、粘着物質26が生成された部分である。擦り部30は、この回転方向において、非接触部28と堆積部32との間に位置している。擦り部30は、路面8に擦られた部分である。
【0050】
図4(a)および図4(b)に示されるように、ゴム試験片24と路面8とが擦られることで、表面24aに擦り傷が生じる。表面24aのうちで、擦り傷が生じた部分が擦り部30である。路面8が湿潤路面であるとき、擦り部30の形成に伴って、表面24aには粘着物質26が生成される。本発明では、表面24aに粘着物質26が生成されるように、湿潤路面である路面8とゴム試験片24とが擦られることを、ウェット摩擦という。この粘着物質26は、表面24aの回転方向後方に堆積している。表面24aのうちで、粘着物質26が堆積した部分が堆積部32である。この堆積部32は、表面24aから下方に向かって、突出している。この堆積部32は、回転方向に垂直な表面24aの幅方向一方から他方まで堆積している。
【0051】
このウェット摩擦は、温度1℃以上60℃以下の水を用いて、摩擦の測定値10BPN以上100BPN以下の湿潤路面でされる。例えば、20℃の水を用いて、50BPNのアスファルト路面でされる。この湿潤路面の摩擦の測定値を測定する方法では、ASTM(米国試験および材料規格)のE1337に規定された路面摩擦係数測定方法が用いられる。ASTMのE303に規定されたBPN試験機(英国式振り子型滑り試験機)が用いられる。
【0052】
前記粘着力試験方法は、準備工程、摩擦試験工程、粘着物質測定工程および評価工程を備えている。図1および図2の試験装置2と図3のゴム試験片24とを用いた試験方法が説明される。
【0053】
準備工程では、試験装置2とゴム試験片24とが準備される。ゴム試験片24は加硫ゴム組成物である。測定子20にゴム試験片24が固定される。ゴム試験片24の表面24aが路面8に対向させられる。この試験装置2では、3つの測定子20にそれぞれゴム試験片24が固定される。この測定子20とゴム試験片24は、1つであってもよいし、2つ、3つ更には4つ以上の複数であってもよい。
【0054】
摩擦試験工程では、この試験装置2が湿潤路面である路面8に載置される。据付座10が路面8に接地する。試験装置2の支持部が測定手段6を上方に移動させる。これにより、ゴム試験片24が路面8から離れた状態にされる。
【0055】
ゴム試験片24が路面8から離れた状態で、試験装置2の駆動部は、測定手段6を回転させる。駆動円盤14および測定円盤18とが回転させられる。このとき、駆動円盤14および測定円盤18とが一緒に回転する。この駆動部は、駆動円盤14および測定円盤18とを所定の回転速度で回転させる。駆動部は、この所定速度に達すると駆動を停止する。この駆動部が駆動を停止した後、駆動円盤14および測定円盤18とは、慣性力で回転し続ける。この所定の回転速度するとき、ゴム試験片24は所定の速度で回転している。この所定の速度は、後述する慣性摩擦の初速である。この初速は、例えば、15km/hである。
【0056】
試験装置2の支持部が測定手段6の支持位置を徐々に下げていく。測定手段6は徐々に下方に移動する。この支持部は、測定手段6を下向きに付勢しない。この測定手段6は、その自重で下方に移動する。やがて、ゴム試験片24の表面24aが路面8に接地する。ゴム試験片24は、測定手段6の自重により路面8に押しつけられる。
【0057】
ゴム試験片24の表面24aと路面8との間に摩擦抵抗が生じる。この摩擦抵抗により、測定円盤18の回転速度は減速される。駆動円盤14と測定円盤18との間に回転方向の位置ずれが生じる。言い換えると、駆動円盤14と測定円盤18との間に回転角の相対変位が生じる。やがて、この摩擦抵抗により、駆動円盤14の回転と測定円盤18の回転とが停止する。この発明では、慣性力で回転するゴム試験片24が路面8に接地されて摩擦抵抗を生じる状態を慣性摩擦と称する。
【0058】
位置センサーは、駆動円盤14と測定円盤18とを連結する弾性手段の変位を測定する。位置センサーは、ゴム試験片24の表面24aが路面8に接地してから、駆動円盤14の回転と測定円盤18の回転とが停止するまで、弾性手段の変位を測定する。この弾性手段の変位から、駆動円盤14と測定円盤18との回転角の相対変位が測定される。駆動円盤14の回転と測定円盤18の回転とが停止すると、変位センサーは弾性手段の変位の測定を終了する。
【0059】
駆動円盤14と測定円盤18との回転角の相対変位から、測定円盤18が受ける摩擦抵抗が計算される。この摩擦抵抗と測定手段6の自重とから、動摩擦係数が計算される。
【0060】
この試験装置2は、図示されない出力装置、例えばX−Yレコーダーを備えている。この出力装置に、この駆動円盤14と測定円盤18との相対変位および回転速度が出力される。更に、この試験装置2は、演算部を備えていてもよい。この演算部が、摩擦抵抗や動摩擦係数等を計算してもよい。これらの計算結果が、出力装置に出力されてもよい。
【0061】
この方法では、ゴム試験片24が路面8に接地して路面8を滑り始めたときから路面8に停止するときまでを、慣性摩擦の1サイクルと称する。この摩擦試験工程では、この粘着物質26が生成されるまで、慣性摩擦が複数サイクル繰り返される。この摩擦試験工程では、試験装置2の支持部により、ゴム試験片24が路面8から離れた状態にされてから、ゴム試験片24が路面に接地されて、慣性力で回転する駆動円盤14と測定円盤18との回転が停止するまでの一連の工程がされればよい。この摩擦試験工程では、弾性手段の変位の測定、摩擦抵抗力の計算および動摩擦係数の計算は、必ずしもされなくてもよい。
【0062】
粘着物質測定工程では、粘着物質26の体積と粘着物質26の単位面積当たりの粘着力が測定される。粘着物質26の体積は、ゴム試験片24の表面24aにおいて、摩擦試験前の形状から摩擦試験後の形状のうちで突出している部分の体積が求められる。例えば、非接触型表面粗さ計が準備される。この表面粗さ計で、摩擦試験後のゴム試験片24の表面24aの表面形状が測定される。摩擦試験後の試験片24の表面24aの表面形状について、摩擦試験前のゴム試験片24の表面24aの表面形状から突出している体積が計算される。この体積が、粘着物質26の体積とされる。この非接触型表面粗さ計としては、例えば、(株)キーエンス製の形状測定システム(KS−1100)とレーザ測定器測定部(LT−9010M)およびレーザ測定器コントローラ(LT−9500)とを組み合わせた表面粗さ計設備が用いられる。
【0063】
粘着物質26はゴム試験片24から生成されており、軟らかく変形し易い。この粘着物質26の体積の測定には、非接触型表面粗さ計が好適である。また、この粘着物質26の厚さは小さい。この粘着物質26の体積を高精度に測定する観点から、前述の非接触型表面粗さ計は好適である。
【0064】
粘着物質26の単位面積当たりの粘着力は、例えば、以下のようにして求められる。押し込み硬さ試験機が準備される。硬さ試験機の圧子が微小な荷重で粘着物質26に押し込まれる。この圧子が粘着物質26に圧接される。この圧接された圧子が粘着物質26から離される。この離されるときに働く圧子と粘着物質26との間の最大引力Fが測定される。この圧子の最大引力Fを単位面積当たりに換算して、粘着物質26の単位面積当たりの粘着力が算出される。この押し込み硬さ試験機として、例えば、(株)エリオニクス製の超微小押し込み硬さ試験機ENT−2100が用いられる。この硬さ試験機では、球状の圧子がゴム試験片24の延着物質26に押し込まれる。この押し込み深さは、変形計で測定されている。この圧子が粘着物質26から離れ始めるときから離れるまでの間に、連続的に圧子とゴム試験片24との引力が測定される。この引力の最大値が最大引力Fとされる。
【0065】
粘着物質26の厚さはゴム試験片24の厚さに比べて非常に小さい。粘着物質26の表面積はゴム試験片24の表面24aの面積に比べて非常に小さい。この粘着物質26の粘着力の測定には、この超微小押し込み硬さ試験機が好適である。
【0066】
評価工程では、本発明に係るゴム組成物の粘着摩擦力指数が算出される。この粘着摩擦力指数は、粘着物質測定工程で得られた粘着物質26の体積と単位面積当たりの粘着力とに基づいて、算出される指数を意味する。この粘着摩擦力指数は、粘着物質26の体積が大きいほど大きくなり、単位面積当たりの粘着力が大きくなるほど大きくなる指数である。例えば、この粘着摩擦力指数は、この粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力との積算値として求められる。この粘着摩擦力指数が大きいほど、ゴム試験片24の粘着力は大きい。
【0067】
発明者らの種々の試験で、摩擦試験で生成される粘着物質26の体積が大きいゴム試験片24は粘着力が大きいことが確認されている。この試験方法では、ゴム試験片24の表面24aに粘着物質26が生成されている。この粘着物質26の体積と単位面積当たりの粘着力とに基づいて、ゴム試験片24の粘着力が評価される。これにより、容易に且つ高精度にゴム試験片24の粘着力を評価しうる。
【0068】
粘着物質26の粘着力は、摩擦試験の後経時的に低下する。この方法で、ゴム試験片24の単位面積当たりの粘着力の測定は、好ましくは、摩擦試験の終了後5時間以内にされ、更に好ましくは3時間以下にされ、特に好ましくは1時間以内にされる。この摩擦試験の終了後の時間は、摩擦試験工程において路面8を滑るゴム試験片24が路面8に停止した時からの経過時間として測定される。前述の慣性摩擦が複数サイクル繰り返される場合には、最後のサイクルでゴム試験片24が路面8に停止した時からの経過時間として測定される。
【0069】
複数の異なる試験ゴムについて比較評価される場合には、摩擦試験の終了後の経過時間の差が小さいことが好ましい。好ましくは、摩擦試験の終了後の経過時間の差は、1時間以内にされる。
【0070】
この試験装置2では、測定手段6の自重により、ゴム試験片24が路面8に接地している。この測定手段6の自重の他に、ゴム試験片24に付勢力が加えられない。ゴム試験片24が測定手段の自重で接地させられることで、粘着物質26が生成され易い。この観点から、ゴム試験片24を路面8に付勢する圧力は、好ましくは0を越え0.3MPa以下である。同様に、粘着物質26の生成の観点から、慣性摩擦の初速は、好ましくは7km/h以上である。安定的にゴム試験片24を路面8に接地させて滑らせる観点から、この初速は好ましくは15km/h以下である。
【0071】
この試験装置2では、ゴム試験片24と路面8とは、前述の慣性摩擦されている。この慣性摩擦により、粘着物質26が生成され易くされている。このように、粘着物質26を生成し易くする観点から、試験装置2としては、日邦産業(株)製D.F.テスター(ダイナミックフリクションテスター)が好適である。
【0072】
摩擦試験工程で生成される粘着物質26の量が少な過ぎると粘着力の評価制度が低下する。高精度に粘着力を評価する観点から、慣性摩擦が複数サイクル繰り返されることが好ましい。この観点から、この慣性摩擦が2サイクル以上繰り返されることが好ましい。一方で、前述の押し込み硬さ試験機で粘着力の測定では、測定面が平坦であるほど高精度に測定しうる。この粘着物質26の量が多すぎると、押し込み硬さ試験機での粘着力の測定精度が低下する。この観点から、この慣性摩擦が7サイクル以下で繰り返されることが好ましい。
【0073】
本発明に係るゴム組成物は、70℃での正接損失tanδ70℃が、樹脂全量をオイルに置き換えたこと以外は同じ基準ゴム組成物の正接損失tanδ70℃を100とした場合に125以下であることを特徴とする。tanδ70℃は、低燃費性の指標となる。
【0074】
本発明に係るゴム組成物の70℃での正接損失tanδ70℃は、前記基準ゴム組成物の粘着力を100とした場合に、125以下であり、120以下が好ましい。tanδ70℃が120を超える場合は、低燃費性能に劣る傾向がある。また、tanδ70℃の下限は特に限定されない。
【0075】
また、本発明に係るゴム組成物は、70℃での正接損失tanδ70℃に対する0℃での正接損失tanδ0℃の比(tanδ0℃/tanδ70℃)が3.0〜10であることを特徴とする。tanδ0℃は、ヒステリシスロス摩擦の大きさを示し、ウェットグリップ性能の指標となる。また、前記のようにtanδ70℃は、低燃費性の指標となる。これらのtanδの比(tanδ0℃/tanδ70℃)が所定の範囲内であれば、ウェットグリップ性能と低燃費性能とがバランスよく優れる。
【0076】
本発明に係るゴム組成物の70℃での正接損失tanδ70℃に対する0℃での正接損失tanδ0℃の比(tanδ0℃/tanδ70℃)は、3.0以上であり、3.5以上が好ましく、4.0以上がより好ましい。(tanδ0℃/tanδ70℃)が3未満の場合は、ウェットグリップ性能に劣り、低燃費性との両立が困難となる傾向がある。また、(tanδ0℃/tanδ70℃)は、10以下であり、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。(tanδ0℃/tanδ70℃)が10を超える場合は、低燃費性に劣り、ウェットグリップ性能との両立が困難となる傾向がある。
【0077】
本発明のタイヤは、本発明に係るゴム組成物を用いてトレッドを製造し、このトレッドを用いて通常の方法により製造される。すなわち、本発明に係るゴム組成物を未加硫の段階でタイヤのトレッドの形状に押出し加工し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを成形し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより製造することができる。
【実施例】
【0078】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
【0079】
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol NS616(未変性S−SBR)
BR:宇部興産(株)製のBR150B(ハイシスBR、シス含量:98質量%)
オイル:ジャパンエナジー(株)製のTDAEオイル(プロセスオイル)
樹脂1:ExxonMobil社製のOppera PR−100(水添DCPD樹脂、軟化点:140℃)
樹脂2:ExxonMobil社製のOppera PR−120(水添DCPD樹脂、軟化点:120℃)
樹脂3:ExxonMobil社製のOppera PR−140(水添DCPD樹脂、軟化点:100℃)
樹脂4:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1150(テルペン樹脂、軟化点:115℃)
樹脂5:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1000(テルペン樹脂、軟化点:100℃)
樹脂6:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1150N(テルペン樹脂、ピネン重合体、軟化点:115℃)
樹脂7:ヤスハラケミカル(株)製のクリアロンP85(水添テルペン樹脂、軟化点:85℃)
樹脂8:ヤスハラケミカル(株)製のクリアロンP125(水添テルペン樹脂、軟化点:125℃)
樹脂9:アリゾナケミカル社製のSylvares SA85(α−メチルスチレン/スチレン樹脂、軟化点:85℃)
樹脂10:ExxonMobil社製のOppera PR−395(C9/水添DCPD樹脂、軟化点:120℃)
樹脂11:ExxonMobil社製のOppera PR−373(C5/C9樹脂、軟化点:90℃)
樹脂12:ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターT80(テルペンフェノール樹脂、軟化点:80℃)
樹脂13:ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターT145(テルペンフェノール樹脂、軟化点:145℃)
カーボンブラック:新日化カーボン(株)製のニテロン#55S(N2SA:28m2/g)
シリカ:エボニックデグサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤:エボニックデグサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0080】
表1〜3に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度150℃で5分間混練りし、混練物を得た。得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、5分間、80℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃、20分間で加硫成型することで、試験用ゴム組成物を作製した。得られた試験用ゴム組成物について下記粘着力試験および粘弾性試験を行った。結果を表1〜3に示す。
【0081】
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤを製造した。得られた試験用タイヤについて下記ウェットグリップ性能試験および低燃費性試験を行った。結果を表1〜3に示す。
【0082】
<粘着力試験>
前記粘着力試験方法により、各試験用ゴム組成物の粘着力を、樹脂全量をオイルに置き換えたこと以外は同じ比較例のゴム組成物(基準ゴム組成物)の粘着力を100とし、下記計算式により指数表示した。この指数は、数値が大きいほど粘着力が高い。試験装置として、日邦産業(株)製D.F.テスターが用いられた。この方法では、粘着物質が適当な大きさになる慣性摩擦のサイクル数が決定された。このサイクル数は5回であった。このサイクル数で、各試験用ゴム組成物について、前記粘着力試験方法がされた。表面粗さ計設備として、(株)キーエンス製の形状測定システム(KS−1100)とレーザ測定器測定部(LT−9010M)およびレーザ測定器コントローラ(LT−9500)とが用いられた。押し込み硬さ試験機として、(株)エリオニクス製の超微小押し込み硬さ試験機ENT−2100が用いられた。
(粘着力指数) = (各配合の粘着力)/(基準ゴム組成物の粘着力) ×100
【0083】
<粘弾性試験>
岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、動歪み0.1%、周波数10Hzの条件下で、試験用ゴム組成物の0℃での損失正接(tanδ0℃)および70℃での損失正接(tanδ70℃)を測定し、(tanδ0℃/tanδ70℃)の比を算出した。また、樹脂全量をオイルに置き換えたこと以外は同じ比較例のゴム組成物(基準ゴム組成物)の各tanδを100とし、下記計算式により各tanδを指数表示した。tanδ70℃の指数が小さいほど、転がり抵抗が低く、低燃費性に優れることを示す。また、tanδ0℃の指数が大きいほど、ヒステリシスロス摩擦が大きく、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
(tanδ70℃の指数) = (各配合のtanδ70℃)/(基準ゴム組成物のtanδ70℃) ×100
(tanδ0℃の指数) = (各配合のtanδ0℃)/(基準ゴム組成物のtanδ0℃) ×100
【0084】
<ウェットグリップ性能試験>
試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して湿潤アスファルト路面において、速度100km/hでブレーキをかけた地点からの制動距離を測定した。そして、樹脂全量をオイルに置き換えたこと以外は同じ比較例(基準例)の試験用タイヤの制動距離を100とし、下記計算式により、各配合のウェットグリップ性能を指数表示した。ウェットグリップ性能指数が大きいほどウェットグリップ性能が優れることを示し、160以上を性能目標値とする。
(ウェットグリップ性能指数) = (基準例の制動距離)/(各配合の制動距離) ×100
【0085】
<低燃費性試験>
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、樹脂全量をオイルに置き換えたこと以外は同じ比較例(基準例)の試験用タイヤの転がり抵抗を100とし、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど低燃費性に優れていることを示し、90以上を性能目標値とする。
(低燃費指数) = (基準例の転がり抵抗)/(各配合の転がり抵抗) ×100
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
表1〜3の結果より、所定のゴム成分、シリカ、および所定の樹脂を所定量含有するゴム組成物であり、粘着力および粘弾性特性が所定の範囲であるゴム組成物からなるトレッドを備える本願発明の空気入りタイヤは、ウェットグリップ性能および低燃費性がバランス良く優れることがわかる。
【符号の説明】
【0090】
2 試験装置
4 本体
6 測定手段
8 路面
12 駆動軸
14 駆動円盤
16 測定軸
18 測定円盤
20 測定子
22 底面
24 ゴム試験片
26 粘着物質
28 非接触部
30 擦り部
32 堆積部
図1
図2
図3
図4