特許第6790431号(P6790431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790431
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】可撓性包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/62 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   B65D75/62 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-81343(P2016-81343)
(22)【出願日】2016年4月14日
(65)【公開番号】特開2017-190167(P2017-190167A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小沢 和美
(72)【発明者】
【氏名】石坂 公一
(72)【発明者】
【氏名】山口 円
(72)【発明者】
【氏名】武部 克紀
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−137310(JP,A)
【文献】 特開2008−254747(JP,A)
【文献】 実開昭52−064619(JP,U)
【文献】 特開2005−096778(JP,A)
【文献】 特開2002−059943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム材の外縁部に密封部を有する可撓性包装袋であって、
前記密封部を手指によって切り裂いて開封するための開封摘み部を備え、
前記開封摘み部は、並列した複数の線状溝部を前記樹脂フィルム材の表面に備え、
前記線状溝部の夫々は、両縁に一対の線状凸部を有し、
前記線状溝部は、レーザ加工溝であり
前記一対の線状凸部は、前記レーザ加工溝形成のためのレーザ光照射によって樹脂フィルム材の表面が溶融されて形成されたものであることを特徴とする可撓性包装袋。
【請求項2】
前記開封摘み部は、前記密封部の表裏両面上に設けられていることを特徴とする請求項1記載の可撓性包装袋。
【請求項3】
前記開封摘み部は、前記密封部の外縁を切り欠いたノッチの近傍に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の可撓性包装袋。
【請求項4】
前記開封摘み部は、注出口部に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の可撓性包装袋。
【請求項5】
前記線状溝部は、切り裂き予定線の外側に、当該切り裂き予定線に沿って設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の可撓性包装袋。
【請求項6】
前記線状溝部は、前記切り裂き予定線の内側に、当該切り裂き予定線と交差する方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項5記載の可撓性包装袋。
【請求項7】
前記一対の線状凸部は、その間隔が0.1mm〜0.5mmであることを特徴とする請
求項1〜6のいずれか1項記載の可撓性包装袋。
【請求項8】
前記一対の線状凸部は、その高さが10μm〜50μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の可撓性包装袋。
【請求項9】
前記複数の線状溝部は、その高さが20μm〜100μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の可撓性包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封を手指による切り裂きで行う樹脂フィルム材により構成された可撓性包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルム材の外周縁をヒートシールにより密封した可撓性包装袋は、各種の食品、飲料、日用品、洗剤、医薬品などを収容する包装袋として、広く使用されている。このような可撓性包装袋は、開封の際に、ハサミなどの工具を用いること無く、手指で簡易に開封できることが求められており、ヒートシール部分の一部にノッチを設けたり、開封予定箇所のフィルム表面に易開封加工を施したりすることが一般になされている。
【0003】
このような可撓性包装袋は、フィルム表面が平滑であることから、開封箇所(摘み部分)の表面が濡れた状態になると、ノッチが設けられ或いは易開封加工が施されている場合にも、手指が滑って円滑に開封を行うことができなくなる。特に、風呂場、台所、洗面所など、水を扱う場所で開封を行う場合には、手指自体が濡れた状態になることが多いので、このような問題がより顕在化する。これに対しては、摘み部分の表面にエンボス加工を施したり、滑り止め層を設けたりして、摘み部分の表面の滑りを抑止することを試みた従来技術が提案されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−96778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手指が滑るという現象は、摘み部分のフィルム表面が平滑で摩擦抵抗が小さく、また、手指或いは摘み部分のフィルム表面が濡れているとより摩擦抵抗が小さくなり、手指と摘み部分の滑りが増大することが主な原因である。更に、このような摩擦抵抗だけでは無く、可撓性包装袋の開封は人的行為であるが故に、手指或いは摘み部のフィルム表面が濡れていたりすると、開封時の手指の皮膚感覚から開封が困難であると察知してしまい、開封のモチベーションが低下して、手指による摘み部分の摘み方が雑になり、その結果、開封時により滑ってしまうことも考えられる。
【0006】
また、前述した従来技術によると、摘み部分のフィルム表面にエンボス加工や滑り止め層により表面に凹部が形成されるが、単純な凹部の形成だけでは摩擦抵抗はさほど大きくならず、手指の滑り止め効果は少ない。また、表面に形成した凹部に水が溜まりやすくなり、その結果、滑り止めを効果的に抑止することができなくなる。更に、摘み部分のフィルム表面へのエンボス加工や滑り止め層の形成では、包装袋の外観に影響が出るため、顕著な滑り止め効果が得られるような表面処理を行い難い問題もある。
【0007】
本発明は、このような事態に対処することを課題とするものである。すなわち、摘み部分のフィルム表面の摩擦抵抗を大きくして滑り止めを行うと共に、皮膚感覚によるモチベーションの低下を抑えること、また、可撓性包装袋の外観的な影響をコントロールできること、開封時の手指の滑りを効果的に抑止すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明による可撓性包装袋は、以下の構成を具備するものである。
【0009】
樹脂フィルム材の外縁部に密封部を有する可撓性包装袋であって、前記密封部を手指によって切り裂いて開封するための開封摘み部を備え、前記開封摘み部は、並列した複数の線状溝部を前記樹脂フィルム材の表面に備え、前記線状溝部の夫々は、両縁に一対の線状凸部を有し、前記線状溝部は、レーザ加工溝であり、一対前記の線状凸部、レーザ光照射によって樹脂フィルム材の表面が溶融されて形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を備えた本発明の可撓性包装袋は、一対の線状凸部を有する複数の線状溝部が指腹に食い込むことで、フィルム表面の摩擦抵抗を大きくして滑り止めを行うと共に、滑り止めを意識する効果的な刺激を与えることができる。これによって、フィルム表面の滑り止め効果が向上すると共に、開封のモチベーションの低下を抑えて、開封時の手指の滑りを効果的に抑止することができる。また、開封摘み部に設けられる線状溝部は、印刷層に用いる地色等と組み合わせることにより可撓性包装袋の外観的な影響をコントロールすることができる。このような本発明の可撓性包装袋は、手指や開封摘み部が濡れた場合にも、滑りを抑えて良好な開封性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る可撓性包装袋の要部を示した説明図((a)が平面図、(b)が表面部の断面図)である。
図2】本発明の実施形態に係る可撓性包装袋の具体例を示した説明図(平面図)である。
図3】本発明の実施形態に係る可撓性包装袋の注出口部を示した説明図((a)が、開封摘み部の形成例(その1)、(b)が、開封摘み部の形成例(その2))である。
図4】本発明の実施形態における線状溝部の形成例((a)〜(c)は直線状の形成例、(d),(e)は、(a)〜(c)のクロスの形成例、(f),(g)は分散状の形成例、(h),(i)はクロス及び丸形の分散状の形成例、(j)は曲線状の形成例、(k)は同心円状の丸形の形成例)を示した説明図である。
図5】線状溝部の断面構造を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る可撓性包装袋の要部を示している。可撓性包装袋1は、樹脂フィルム材10を重ねて外縁部にヒートシールによる密封部1Aを形成し、密封部1Aの内側に内容物収容部1Bを形成したものであり、内容物収容部1Bには、液体、粉体、粒体などの内容物が収容される。収容される内容物は特に限定されるものではなく、食品、飲料、日用品、洗剤、医薬品など、各種の内容物を収容することができる。可撓性包装袋1の用途は、詰め替え用包装袋、食品用レトルトパウチなどであり、特に限定されない。
【0014】
可撓性包装袋1は、図1(a)に示すように、密封部1Aを手指によって切り裂いて開封するための開封摘み部2を備えている。開封摘み部2は、並列した複数の線状溝部3が樹脂フィルム材10の表面に形成されている。線状溝部3の夫々は、図1(b)に示すように、両縁に一対の鋭角な線状凸部3Aを有する。
【0015】
可撓性包装袋1は、開封摘み部2に、両縁に一対の鋭角な線状凸部3Aを有する線状溝部3を備えることで、手指や樹脂フィルム材10が濡れた状態であっても、開封摘み部2を摘む手指の指腹に線状凸部3Aが食い込むことで摩擦抵抗が大きくなり、良好な滑り止め効果を得ることができる。
【0016】
従来技術のように、表面にエンボス加工などを施したものは、樹脂フィルム材の表面に凹部が形成されている。しかしながら、この凹部は、樹脂フィルム材の表面から緩やかなR曲線状の傾斜部を経て凹部中心部へ連なっており、樹脂フィルム材の表面の摩擦抵抗は小さい。このため、表面が濡れてしまうと良好な滑り止め効果は得られなくなる。これは、エンボス加工などで得られる凹部に水が溜まり摩擦力が低下して開封時に滑ってしまうだけでなく、凹部に溜まった水に指が触れて皮膚感覚で濡れを感じて滑りを察知し、開封のモチベーションが低下してしまい、手指による摘み部分の摘み方が雑になることが1つの要因であると考えられる。
【0017】
これに対して、本発明の実施形態に係る可撓性包装袋1は、開封摘み部2における樹脂フィルム材10の表面に一対の鋭角な線状凸部3Aを有する線状溝部3を設けているので、摩擦抵抗が大きくなって滑り止めが行われるだけでなく、手指の皮膚に食い込む線状凸部3Aが指腹の皮膚表面内側に位置する感覚受容器(マイスナー小体)を効果的に刺激して、開封をしようとして開封摘み部2を摘んだ際に、滑り止めを実感させることができる。これによって、開封を行う際に、多少濡れを感じていてもモチベーションの低下が抑えられ、手指による摘み部の摘みが雑にならず、その結果、開封時の滑りが防止されてスムースな開封を実現することができる。
【0018】
このような一対の鋭角な線状凸部3Aを有する線状溝部3を複数列設けた開封摘み部2は、密封部1Aの表裏両面上に設けることが好ましい。通常の手指による開封は、人差し指と親指で密封部1Aの表裏両面を摘むので、その両面に一対の線状凸部3Aを有する線状溝部3を複数列配備した開封摘み部2を設けることで摩擦抵抗をより大きくして滑り止めが行われると共に、効果的に刺激を与えて滑り止めを実感させることができる。
【0019】
また、このような開封摘み部2は、易開封処理が施された箇所の近傍に設けることが好ましい。図示の例では、易開封処理として、密封部1Aの外縁に切欠きによるノッチ4が設けられ、その近傍に開封摘み部2が設けられている。ノッチ4の延長が切り裂き予定線4Aであり、図示の例では、開封摘み部2の線状溝部3は、切り欠き予定線4Aの外側に、切り欠き予定線4の延長方向に沿って設けられている。図示の例では、線状溝部3を切り欠き予定線4Aの外側に設けているが、これに限らず、切り欠き予定線4Aの外側と内側の一方又は両方に設けることができる。
【0020】
このような線状溝部3は、熱加工によって形成することができ、レーザ加工によって形成することが特に好ましい。具体的には、所定のスポット径に絞ったレーザ光を樹脂フィルム材10の表面に照射するレーザマーカーを用い、レーザ光で線状の描画を行うことで、レーザ加工溝からなる線状溝部3を得ることができる。この際、レーザ光照射によって樹脂フィルム材10の表面が溶融され、両縁に一対の線状凸部3Aを有する線状溝部3が形成される。レーザ光照射の描画速度(走査速度)を適宜調整することで、線状凸部3Aを適切な刺激を与える高さに調整することができる。
【0021】
また、摩擦抵抗を大きくして滑り止めを行うと共に、図1(b)に示すように、一対の鋭角な線状凸部3Aは、その高さH1が10μm〜50μm、特に20μm〜30μmであることが好ましく、線状溝部3の凹部中心部3Cから線状凸部3Aの先端までの高さH2は、20μm〜100μm、特に40μm〜60μmであることが好ましい。一対の線状凸部3Aの高さH1が10μm未満の場合は十分な摩擦抵抗が得られず、50μmを超えるためには線状溝部3の凹部を深く溶融しなければならず、樹脂フィルム材10に十分な厚みが必要となり経済性に劣る。また、一対の線状凸部3Aにおける凸部の先端同士の間隔W1は、0.1mm〜0.5mmであることが好ましい。0.1mm未満の間隔の加工は困難であり、0.5mmを超える間隔の加工では加工エネルギーや加工時間が多く必要になり経済性や生産性に劣る。更に、複数の線状溝部3は、隣接する線状溝部3との凹部中心部3C同士の間隔W2が0.3mm〜3mm、特に0.5mm〜1.5mmであることが好ましい。0.3mm未満の間隔の加工では隣接する線状凸部3Aとの間隔が十分に取れず、3mmを超える間隔の加工では線状溝部3の配置本数が少なくなり摩擦抵抗が不十分となる。また、この複数の線状溝部3を並列した直線若しくは曲線とする場合は、3本以上設けることが摩擦抵抗を十分に生じさせるために好ましい。
【0022】
以下、可撓性包装袋として、注出口部を有するスタンディングパウチの例を示して、より具体的な構成を説明するが、本発明の実施形態は、以下の例に限定されるものではない。
【0023】
図2において、可撓性包装袋11は、ヒートシールによる密封部(サイドシール部)11Aと、同様のヒートシールによる密封部(ボトムシール部)11Bと、密封部11A,11Bの内側の内容物収容部(胴部)11Cを備えている。また、可撓性包装袋11の上方角部には、注出口部12が設けられている。図示の例では、可撓性包装袋11は、スタンディングパウチを構成するための底部13が設けられており、折り畳まれた樹脂フィルム材の底部13を介して密封部(ボトムシール部)11Bが形成されている。
【0024】
可撓性包装袋11の注出口部12は、可撓性包装袋11の角部に設けられる上方係合部14と下方係合部15によって、ノズル状に形成されている。また、内容物収容部(胴部)11Cから注出口部12に至る部分には、Y字状の谷折り線からなる開口補助線16Aと、その開口補助線16Aの両外縁部に山折り線からなる開口補助線16Bが形成され、更に、注出口部12の内側には、中央が凸になる山折り線の開口補助線17Aと、その開口補助線17Aの周囲の上方に逆U字状の谷折り線からなる開口補助線17Bが形成されている。
【0025】
注出口部12の上方外縁部には、密封部11Aの一部を切り欠いたノッチ4が設けられている。そして、ノッチ4の先端から延長される引き裂き予定線4Aが、注出口部12を横断するように形成される。この引き裂き予定線4Aには、必要に応じて各種の易開封処理を施すことができる。
【0026】
図2においては、注出口部12におけるノッチ4の外側にタブ5が設けられ、そのタブ5における密封部11A上に、開封摘み部2が設けられている。開封摘み部2は、図1(b)に示すように、両縁に一対の線状凸部3Aを有する線状溝部3が、引き裂き予定線4Aに沿って複数並列して形成されている。
【0027】
図3は、注出口部における開封摘み部の形成例を示している。(a)に示した例は、引き裂き予定線4Aの外側における密封部11A上に、引き裂き予定線4Aに沿って直線状の線状溝部3aを形成して開封摘み部2aとしており、更に、引き裂き予定線4Aの内側における注出口部12にも、開封摘み部2bを設けている。ここで、引き裂き予定線4Aの内側の開封摘み部2bには、線状溝部3bが切り裂き予定線4Aと交差する方向に沿って設けられている。(b)に示した例は、(a)に示した例と同様に、引き裂き予定線4Aの外側と内側に線状溝部3c,3bを設けているが、引き裂き予定線4Aの外側に設けた線状溝部3cは、指で摘む大きさに合わせて、密封部11A(サイドシール部)を超えて線状溝部3cが形成されている。このように、線状溝部は密封部上だけでなく、ノッチの位置、タブの大きさ、手指の力がかかる方向等にあわせて、開封に際し摘み易いような位置に適宜設ければ良い。線状溝部はノッチの近傍に設けることが好ましいが、ノッチやノッチの先端から延長される引き裂き予定線4Aに重ならない位置とすることが必要である。
【0028】
図3(a),(b)に示したように、線状溝部3を形成した開封摘み部2を引き裂き予定線4Aの外側と内側に設けた例では、注出口部12の開封に際しては、左右一方の手指(親指と人差し指)で引き裂き予定線4Aの外側の開封摘み部2a,2cを摘み、左右他方の手指(親指と人差し指)で引き裂き予定線4Aの内側の開封摘み部2bを摘んで開封を行う。この際、左右の手指共、線状溝部3(3a,3b,3c)における一対の線状凸部3Aにより、十分な摩擦抵抗が得られ、また、開封時に線状溝部3による滑り止めをより実感することができ、高いモチベーションで確りと摘んで開封することができる。
【0029】
図4は、線状溝部3の形成パターンを示している。線状溝部3は、図3に示した例のように、引き裂き線4Aに沿って、或いは引き裂き線4Aと交差する方向に、直線状に形成することができるが、このような形態に限定されるものではない。例えば、図4の(a)〜(c)に示すように、直線状の線状溝部3を形成する場合にも、様々な方向に傾斜させて形成することができる。また、線状溝部3は、図4の(d),(e)に示すように、前述した(a)〜(c)に示す例のように直線状の線状溝を組み合わせ、様々な方向にクロスさせたものであってもよい。また、図4の(f),(g)に示すように、短い長さの線状溝部3を複数本集合させたものを分散して配置したものであってもよい。更には、図4の(h)に示すように、短い長さの線状溝部3をクロスさせたもの、図4の(i)に示すように、線状溝部3で丸形を形成するもののように、線状溝部3で小さな図形を形成して複数個集合させたものを分散配置したものであってもよい。また、図4の(j)に示すように、曲線状の線状溝部3を複数並列して配置したものや、図4の(k)に示すように、線状溝部3で形成した大小の丸形を同心円状に組み合わせたものであってもよい。これらの線状溝部3の形成パターンは、単独パターンまたは異なるパターンを組み合わせたものであってもよく、線状溝部3の形成パターン、配置箇所、印刷デザイン等と組み合わせ、様々なバリエーションにしてもよい。
【0030】
ただし、線状溝部3の摩擦抵抗をより十分に感じさせるためには、線状溝部3の方向は、手指の力がかかる方向に対して垂直な方向に配置することがより好ましい。手指の力がかかる方向に対して垂直とは、図3に示した例であれば、引き裂き予定線4Aの外側の開封摘み部2a,2cは、タブ5を切り離すために可撓性包装袋11の外側に向かって力がかかるため、引き裂き予定線4Aに沿った線状溝部3a,3cとすることがより好ましい。また、引き裂き予定線4Aの内側の開封摘み部2bは、可撓性包装袋の上方外側に向かって力がかかるため、引き裂き予定線4Aと交差する方向の線状溝部3bとすることがより好ましい。
【0031】
前述した可撓性包装袋1,11に使用する樹脂フィルム材の材料は、特に制限はなく、内容物の性状に応じて選択されればよい。樹脂フィルム材の層構造は、基材層とヒートシール層からなる二層構造の積層フィルム材、基材層と中間層とヒートシール層からなる三層以上の構造の積層フィルム材などを用いることができる。一般に、内容物が洗剤などの詰め替え用包装袋では、低コストが要求されることが多く、二層構造の積層フィルム材が用いられ、また、内容物が食品や調味料などのように、保存性が要求されるものの場合は、目的にあわせた中間層を積層した三層或いはそれ以上の層を積層した積層フィルム材が用いられる。
【0032】
樹脂フィルム材を構成するのに適した樹脂材料としては、例えば、結晶性ポリプロピレン, 結晶性プロピレン−エチレン共重合体, 結晶性ポリブテン−1,結晶性ポリ4−メチルペンテン−1,低−,中−,或いは高密度ポリエチレン,エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA),エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA),イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー) 等のポリオレフィン類;ポリスチレン,スチレン−ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル,塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル−スチレン共重合体,アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6,ナイロン66,パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート,ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。また、これらの材料からなる軟包材は、未延伸、一軸延伸、あるいは二軸延伸して用いることができる。
【0033】
樹脂フィルム材の製造は、キャスト法、Tダイ法、カレンダー法、又はインフレーション法などの通常の方法により行うことができる。積層フィルム材の製造に際しては、予め形成したフィルム材のドライラミネーション、基体フィルムへのコーティング、溶融共押し出しなど、通常の方法を用いることができる。フィルムラミネートによる積層には各層間に必要に応じて接着剤、アンカー剤を介在させることができる。
【0034】
積層フィルム材の積層例としては、一般的な洗剤などに使用される詰め替え用包装袋の場合は、基材層として、二軸延伸ナイロンを用い、ヒートシール層として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることができる。
【0035】
また、食品・調味料等の保存性が必要な可撓性包装袋1,11の層構成例としては、基材層、中間層、ヒートシール層からなる積層フィルム材を用いることができる。基材層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステルフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/ナイロン6,6共重合体等のポリアミドフィルムであり、一軸又は二軸延伸したフィルムが好適である。
【0036】
中間層は、例えば、バリア性樹脂層、易引き裂き性樹脂層、耐熱性樹脂層、耐衝撃性樹脂層などがあげられ、必要に応じて単層から二層以上の構成とすることができる。バリア性樹脂層(内容物の保存性や風味の保存性を高める層)としては、ポリアミド樹脂,ポリ塩化ビニデン樹脂,ポリグリコール酸樹脂等のフィルム、ポリビニルアルコール系ポリマー,ポリカルボン酸系ポリマー等のガスバリア性樹脂からなるコーティング剤を塗布したコーティングバリア層を有するコーティングバリアフィルムを用いることができる。
【0037】
また、ガスバリア性及び水分バリア性を有する層としては、酸化アルミニウム等の金属酸化物蒸着層やケイ素酸化物蒸着層に代表される無機酸化物蒸着層,ダイヤモンドライクカーボン等の炭化水素系蒸着層に代表される無機蒸着層を有する無機蒸着フィルム,金属アルコキシドや金属ハロゲン化合物等の加水分解化合物によるポリメタロキサン結合を有する化合物からなるコーティング剤を塗布したコーティングバリア層を有するコーティングバリアフィルム,アルミニウム等の金属箔などを用いることができる。なお、無機蒸着層やコーティングバリア層を形成するフィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂脂やナイロン樹脂からなる一軸または二軸延伸フィルムを好適に使用することができる。
【0038】
易引き裂き性樹脂層(易引き裂き性が付与されたフィルム)としては、一軸または二軸延伸ポリプロピレン,高密度ポリエチレン,ポリエステル,ポリアミドを用いることができ、耐熱性樹脂層(レトルト殺菌等にも耐えうる耐熱性を付与したフィルム)としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂,ナイロン等のポリアミド樹脂であり、一軸または二軸延伸されたものが好適である。また、耐衝撃性樹脂層(耐付き刺し製や耐落下衝撃性等を向上させるためのフィルム)としては、延伸ナイロンフィルム等が好適である。
【0039】
ヒートシール層は、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー等の樹脂からなるフィルムが好適である。
【0040】
可撓性包装袋1,11の形状としては特に制限はなく、使用用途に応じて選択されればよい。例えば、一対のフィルムの2辺〜4辺がシールされた平袋パウチ、スタンディングパウチ、ガセットパウチ、ピローパウチ等、各種包装袋に適用可能である。なお、図2に示した例は、樹脂フィルムの軟包材で形成された一対の胴部(内容物収容部)11Cと底部13とで構成され、胴部11Cの側部周縁にサイドシール部である密封部11A、胴部11Cと底部13の間にはボトムシール部である密封部11Bが施された、スタンディングパウチである。また、内容物として食品を包装した可撓性包装袋1,11においては、電子レンジに適用可能な水蒸気排出機構を備えたパウチとしてもよい。さらに、開口部を繰り返し開閉できるように、開口部にジッパーを取り付けたものであってもよい。
【0041】
このような可撓性包装袋の製造方法の例を説明する。図2に示したようなスタンディングパウチの可撓性包装袋11は、具体的には、フィルムラミネートにより形成された積層フィルム材に対して、開口補助線の山折り線,谷折り線加工を行い、ボトムシール・冷却、サイドシール・冷却、ノッチ加工、開封摘み部2の成形、カット加工の手順で製造することができる。
【0042】
この際、開封摘み部2における線状溝部3の形成は、例えば、光学反射式のレーザマーカーを使用して、樹脂フィルム材の表面に溝加工を施すことにより形成することができる。光学反射式のレーザマーカーは、ミラーの光軸(角度) を操作することによってレーザの焦点を移動させることができ、ミラーの光軸(角度) 操作により複雑な模様やパターンを容易に加工することができる。レーザ媒体としては、樹脂フィルムの種類に応じた選択的な加工が可能となる炭酸ガスレーザを用いるのが好ましい。
【0043】
図5は、積層フィルム材の表面にレーザ加工によって線状溝部3を形成した状態を示している。ここで樹脂フィルム材10は、基材層10Aとヒートシール層10Bとを備えている。レーザ加工によって形成される線状溝部3は、レーザ光照射による溶融で、線状溝部3の凹部3Bと線状凸部3Aが形成される。ここでの凹部3Bの深さH3と線状凸部3Aの高さH1はほぼ等しく形成される。そして、開封摘み部2において、所望の滑り止め効果を得るためには、線状凸部3Aの高さH1は10〜50μm、特に20μm〜30μmであることが好ましく、その高さを得るためには、凹部3Bの深さH3がヒートシール層10Bに達していてもよい。
【0044】
本発明の実施形態に係る可撓性包装袋1,11は、このような一対の線状凸部3Aを有する線状溝部3を備える開封摘み部2を、ノッチ4の近傍に形成しているので、開封摘み部2を摘んで開封する際、線状凸部3Aが指腹に食い込むことで摩擦抵抗が大きくなって滑り止めが行われ、また、滑り止めが施されていることを実感することができ、手指による摘み部の摘みが雑とならず、高いモチベーションで開封摘み部2を摘んで開封を行うことができる。これにより、手指や開封摘み部2の表面に多少の濡れがあったとしても、滑りを抑えて良好な開封性を得ることができる。
【0045】
また、レーザ加工による線状溝部3は、印刷層に用いる地色等と組み合わせることで可撓性包装袋1,11の外観的な影響をコントロールすることができ、開封摘み部2を形成することができる。例えば、印刷層の地色を白、黄などの薄い色にする、または、一対の線状凸部3Aの間隔W1を狭くすることで、印刷による意匠に殆ど影響を与えることの無い線状溝部3を形成することができる。対して、開封を行う人に開封摘み部2の位置や存在をアピールしたい場合は、印刷層の地色を濃い色にする、一対の線状凸部3Aの間隔W2を広くする、アピールするための印刷デザインと組み合わせて線状溝部3を際立たせる等の方法が可能である。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1,11:可撓性包装袋,1A,11A,11B:密封部,
1B,11C:内容物収容部,
10:樹脂フィルム材,10A:基材層,10B:ヒートシール層,
2:開封摘み部,3:線状溝部,
3A:線状凸部,3B:凹部,3C:凹部中心部,
4:ノッチ,4A:引き裂き予定線,5:タブ,
12:注出口部,13:底部,14:上方係合部,15:下方係合部,
16A,16B,17A,17B:開口補助線,
H1:線状凸部3Aの高さ,H2:線状溝部3の高さ,H3:凹部3Bの深さ,
W1:線状凸部3Aの間隔,W2:凹部中心部3Cの間隔
図1
図2
図3
図4
図5