(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
撮影用光学系の光路上に位置して被写体光を観察用光学系に反射する第1の位置と、上記被写体光を反射せずに撮影用受光部に通過させる第2の位置とに移動可能な可動ミラーと、
上記観察用光学系を構成するピント板と、
上記ピント板を支持するピント板支持部材と、
上記可動ミラーが上記第1の位置から上記第2の位置へ移動するときに該可動ミラーが当接して衝撃を吸収するミラー衝撃吸収部材と、
を備え、
上記ミラー衝撃吸収部材は、上記撮影用光学系の光軸に沿う方向で上記ピント板の中心部より被写体側に位置し、上記ピント板の板厚方向へ移動可能に上記ピント板支持部材により支持され、
上記ピント板支持部材に対して上記ミラー衝撃吸収部材を上記ピント板の板厚方向へ移動可能に支持する移動支持機構が、上記撮影用光学系の光軸に沿う方向で上記ピント板に対して被写体側に位置することを特徴とする撮像装置。
上記ミラー衝撃吸収部材を、上記可動ミラーが上記第1の位置から上記第2の位置へ移動するときの該可動ミラーによる押圧方向と反対方向に付勢する付勢部材を有する請求項1又は2記載の撮像装置。
上記観察用光学系は、上記固定部材に対して固定的に支持されて、上記可動ミラーが上記第1の位置にあるときに上記被写体光を透過させると共に観察される画像上に情報表示を行う透過表示器を備え、
上記ピント板支持部材による上記ピント板の支持状態で、上記透過表示器との当接によって上記ピント板の位置を決める請求項4ないし7のいずれか1項記載の撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1と
図2に、本発明を適用した撮像装置の一実施形態である一眼レフカメラ10の内部構造を示す。一眼レフカメラ10は、
図1に示すミラーダウン状態(第1の位置)と
図2ないし
図4に示すミラーアップ状態(第2の位置)に動作可能なクイックリターンミラー11(可動ミラー)を有している。クイックリターンミラー11はメインミラーM1とサブミラーM2を有する。
【0018】
クイックリターンミラー11が
図1のミラーダウン状態にあるときには、レンズ鏡筒12の撮影レンズ系13を通った被写体光束が、メインミラーM1によって反射されてファインダ光学系14(観察用光学系)に導かれ、被写体光束の一部はメインミラーM1を透過してサブミラーM2によって反射されて焦点検出装置15に導かれる。クイックリターンミラー11が
図2のミラーアップ状態にあるときには、レンズ鏡筒12の撮影レンズ系13を通った被写体光束がメインミラーM1及びサブミラーM2により反射されずにイメージセンサ16(撮影用受光部)へ向けて進む。なお、
図1及び
図2では、レンズ鏡筒12は後端付近の一部のみを示しており、撮影レンズ系13を構成する複数のレンズ(群)のうち最も後方のレンズのみを示している。焦点検出装置15は位相差方式によって合焦状態を検出する周知のものであり、
図1及び
図2では模式的に示している。
【0019】
以下の一眼レフカメラ10の説明における前後方向は、撮影レンズ系13の光軸OA(
図1、
図2)に沿う方向を意味し、レンズ鏡筒12が位置する被写体側(
図1及び
図2の左方)を前方とし、イメージセンサ16側(
図1及び
図2の右方)を後方とする。
図1及び
図2において光軸OAに垂直な方向を上下方向とし、ファインダ光学系14側を上方とし、焦点検出装置15側を下方とする。また、
図1及び
図2の紙面に対して垂直な方向を方向を左右方向とする。なお、ここでの上下方向や左右方向は便宜的なものであり、一眼レフカメラ10の構え方によって向きが変わるため、上下方向が鉛直方向に一致し、左右方向が水平方向に一致するとは限らない。
【0020】
ファインダ光学系14は、クイックリターンミラー11に近い下方から順に、ピント板(フォーカシングスクリーン)20、透過液晶21(透過表示器)、ディストーション補正レンズ22、ペンタゴナルダハプリズム23を有しており、さらにペンタゴナルダハプリズム23の後方に位置する接眼レンズ(図示略)を有している。ペンタゴナルダハプリズム23の後方には、接眼レンズの上方の位置に測光センサ24が設けられている。
【0021】
前後方向におけるクイックリターンミラー11とイメージセンサ16の間にシャッタユニット25が設けられる。シャッタユニット25は、先幕と後幕を所定の時間差で動作させて露光時間を制御するフォーカルプレーンシャッタを有しており、通常時はシャッタを閉じてイメージセンサ16側への被写体光束の進行を遮り、露光時に先幕と後幕を動作させてイメージセンサ16へ被写体光束を到達させる。
【0022】
クイックリターンミラー11は、メインミラーシート30上にメインミラーM1を支持し、サブミラーシート35上にサブミラーM2を支持している。メインミラーシート30は、凹部31内にメインミラーM1を載置し、凹部31の前縁にメインミラーM1よりもわずかに突出する当接部32を有している。また、凹部31の中央にはメインミラーシート30の表裏を貫通する開口部33が形成されている。メインミラーM1は、少なくとも開口部33と重なる部分がハーフミラーとなっており、メインミラーM1を透過した光は開口部33を通してメインミラーシート30の裏面側に進むことができる。
【0023】
メインミラーシート30は、ヒンジピン34により軸支されると共に、図示を省略するリンク機構を介して支持されている。メインミラーシート30及びメインミラーM1は、ヒンジピン34を中心とする回動とリンク機構による位置変化とによって、
図1に示すファインダ導光位置と、
図2ないし
図4に示す退避位置とに移動することができる。
図1ないし
図3に示すように、ファインダ導光位置ではヒンジピン34が光軸OAに近づき、退避位置ではヒンジピン34が光軸OAから離れて上方に移動する。
【0024】
サブミラーシート35は、メインミラーシート30に対して図示を省略する支持軸を介して軸支されている。サブミラーシート35はメインミラーシート30に連動して動作する。メインミラーシート30が
図1のファインダ導光位置にあるときには、サブミラーシート35及びサブミラーM2は、メインミラーシート30に対して斜め後方に突出する突出位置に保持される。メインミラーシート30が
図2ないし
図4の退避位置にあるときには、サブミラーシート35及びサブミラーM2は、メインミラーシート30の背面に沿う格納位置に保持される。格納位置では、サブミラーシート35とサブミラーM2の一部が、メインミラーシート30の開口部33に進入する。
【0025】
クイックリターンミラー11のミラーダウン状態(
図1)では、メインミラーシート30がファインダ導光位置にあり、サブミラーシート35が突出位置にある。クイックリターンミラー11のミラーアップ状態(
図2ないし
図4)では、メインミラーシート30が退避位置にあり、サブミラーシート35が格納位置にある。前述したリンク機構を含むミラー駆動機構(図示略)によってクイックリターンミラー11を駆動して、ミラーダウン状態とミラーアップ状態にさせることができる。
【0026】
図1のミラーダウン状態では、メインミラーM1が撮影レンズ系13とシャッタユニット25の間の撮影光路上に斜設され、撮影レンズ系13を通った被写体光束がメインミラーM1によって上方に反射される。メインミラーM1の上方にはイメージセンサ16の受光面と光学的に等価な位置にピント板20が設けられており、メインミラーM1で反射された被写体光束がピント板20に結像し、透過液晶21を通過してディストーション補正レンズ22とペンタゴナルダハプリズム23と接眼レンズを経て(すなわちファインダ光学系14を介して)被写体像を観察することができる。この状態では、ペンタゴナルダハプリズム23の後方に設けた測光センサ24による測光が可能である。また、ミラーダウン状態では、ハーフミラーであるメインミラーM1を透過した所定の割合の被写体光束が、開口部33を通って後方に進み、開口部33の後方に位置するサブミラーM2によって焦点検出装置15に向けて反射される。焦点検出装置15は、サブミラーM2を経由して導かれた被写体光束を受光して位相差方式によって合焦状態を検出する。焦点検出装置15によって得られる被写体の合焦情報(合焦状態や合焦エリアなど)が透過液晶21にスーパーインポーズ表示され、接眼レンズを通して被写体像と共に合焦情報を観察できる。
【0027】
図2ないし
図4のミラーアップ状態では、クイックリターンミラー11がピント板20に接近し、メインミラーM1とサブミラーM2がそれぞれピント板20と平行に近い状態になる。この状態では、レンズ鏡筒12の撮影レンズ系13からシャッタユニット25及びイメージセンサ16に向けて進む露光用の被写体光束をメインミラーシート30(メインミラーM1)とサブミラーシート35(サブミラーM2)が遮らず、シャッタユニット25でフォーカルプレーンシャッタを駆動してイメージセンサ16へ被写体光束を到達させることができる。
【0028】
クイックリターンミラー11やファインダ光学系14は、
図9に示す固定部材40を介して支持されている。固定部材40は箱型のミラーボックス41を有している。図示を省略するが、クイックリターンミラー11を前述のミラーダウン状態とミラーアップ状態に動作させるミラー駆動機構の構成要素が、ミラーボックス41の両側の側壁42(
図9)に沿って配置される。また、シャッタユニット25のシャッタチャージを行うシャッタチャージ機構や、レンズ鏡筒12内の絞りを動作させる絞り駆動機構も、ミラーボックス41の両側の側壁42に沿って配置される。
【0029】
ミラーボックス41の前面側には、レンズ鏡筒12を着脱させる環状のレンズマウント36(
図1ないし
図3)が設けられている。ミラーボックス41には前後と上下に開口が形成されている。ミラーダウン状態(
図1)とミラーアップ状態(
図2ないし
図4)のいずれにおいても、レンズマウント36に取り付けたレンズ鏡筒12の撮影レンズ系13を通った被写体光束は、前方の開口からミラーボックス41内に入る。ミラーボックス41の後方の開口に臨む位置にシャッタユニット25とイメージセンサ16が設けられ、ミラーボックス41の下方の開口に臨む位置に焦点検出装置15が設けられている。ファインダ光学系14の構成要素は、ミラーボックス41の上方の開口とその近傍に支持される。このファインダ光学系14の構成要素の支持構造を説明する。
【0030】
固定部材40はミラーボックス41の上部に支持枠43(
図3)を有し、支持枠43によって透過液晶21を支持する。透過液晶21は略矩形の外形形状を持つ板状体であり、一対の短辺を前後方向に、一対の長辺を左右方向にして支持枠43に支持される。支持枠43は、ミラーボックス41の上方の開口を囲む縦壁44と、縦壁44から突出してミラーボックス41の上方の開口を狭くするフランジ45を有しており、縦壁44とフランジ45はそれぞれ、透過液晶21の4つの辺に対応する前後位置及び左右位置に設けられている。透過液晶21は、縦壁44によって4つの辺が囲まれることによって前後方向及び左右方向の位置が決まり、下方を向く面の周縁がフランジ45に当接することによって上下方向の位置が決まる。
【0031】
図9に示すように、固定部材40は、ファインダ光学系14のうちピント板20と透過液晶21とディストーション補正レンズ22の前方を覆う前板46を有し、前板46の左右方向の中央付近を一部切り欠いて切欠部47が形成されている。切欠部47はピント板20と透過液晶21に対応する上下方向位置に設けられており、切欠部47の上方には前板46の上縁部を構成する橋絡部48を備える。
図3に示すように、切欠部47の形成位置では支持枠43が存在していない。切欠部47の左右の部分では前板46に支持枠43が設けられていて、透過液晶21の前方の縁部も支持枠43によって確実に支持される。
【0032】
固定部材40の支持枠43の上部に、固定部材40とは別部材からなるプリズム支持枠50が固定される。
図3に示すように、プリズム支持枠50は、ディストーション補正レンズ22の周縁部を嵌合保持するレンズ保持部51と、レンズ保持部51の上部に位置してペンタゴナルダハプリズム23の下面(入射面)の周縁部を支持するプリズム支持面52を有している。ディストーション補正レンズ22とペンタゴナルダハプリズム23は、プリズム支持枠50に支持される状態で、互いの間に防塵クッション53と遮光枠54を挟んでいる。防塵クッション53と遮光枠54はそれぞれ、ディストーション補正レンズ22の周縁に沿う枠形状を有している。防塵クッション53は、ディストーション補正レンズ22とペンタゴナルダハプリズム23の間に圧縮状態で挟まれることによって防塵空間を形成する。遮光枠54は、ディストーション補正レンズ22からペンタゴナルダハプリズム23へ向かう有害な周辺光を遮断する。
【0033】
図3に示すように、プリズム支持枠50の下面と透過液晶21の間に防塵クッション55が挟まれる。防塵クッション55は透過液晶21の周縁に沿う矩形の枠形状を有しており、圧縮状態で挟まれることによって、透過液晶21とディストーション補正レンズ22の間に防塵空間を形成する。また、圧縮された防塵クッション55から透過液晶21に対して支持枠43のフランジ45に向けて押圧する力が働き、透過液晶21が安定して支持される。透過液晶21とフランジ45の間には視野枠56が挟まれる。視野枠56は、透過液晶21の周縁に沿う矩形の枠形状を有しており、ファインダ光学系14における観察範囲(視野)を決める。
【0034】
ピント板20は、透過液晶21と同様に略矩形の外形形状を持つ板状体であり、
図3や
図7に示すようにピント板支持枠60(ピント板支持部材)を介してピント板20が支持される。ピント板支持枠60は、ピント板20の前後と左右を囲む縦壁61を有し、縦壁61の下端にはピント板20の下面の周縁に対向する曲げ部62が設けられている。ピント板20は縦壁61によってピント板支持枠60に対する前後方向及び左右方向の移動が規制される。ピント板20は縦壁61の上端部に当接するフランジ57(
図3)を有しており、フランジ57と縦壁61の当接によって、ピント板支持枠60に対するピント板20の下方への移動が規制される。また、ピント板20の下面と曲げ部62の間に、板バネからなるピント板支持バネ63(
図8)が挿入される。
図7に示すように、ピント板支持枠60の左右の縦壁61の後端付近に、左右方向に向けて突出する一対の支持軸64が設けられている。
図9に示すように、各支持軸64は、固定部材40に形成した軸支部49によって軸支され、ピント板支持枠60は支持軸64を中心とする回動(揺動)が可能である。
【0035】
ピント板支持枠60の回動を規制するロック部材65が、固定部材40の前板46に支持される。ロック部材65は金属の板材からなり、前板46の一部である橋絡部48の上面に支持される支持板部66と、支持板部66から片持ち状の突出部として突出する係脱部67とを有している。係脱部67は、支持板部66に対して上方に突出してから下方に向けて湾曲され、支持板部66よりも下方まで延びている。
図8に示すように、係脱部67は前後方向に貫通する貫通孔67aを有し、この貫通孔67aの下縁に係合片68が設けられている。支持板部66は3本の固定ビス69によって前板46の橋絡部48に固定され、先端を自由端とした係脱部67が、支持板部66を基部として前後方向に弾性変形可能である。
【0036】
図8に示すように、ピント板支持枠60の前部の左右方向の略中央にはロック突起70が設けられている。ロック部材65は、係脱部67を前後方向に弾性変形させることによって係合片68をロック突起70に係脱させることが可能である。係脱部67は、外力を加えないときには係合片68とロック突起70が係合するロック状態を維持する。このロック状態では、ロック突起70の下方への移動が係合片68によって規制されるため、ピント板支持枠60は支持軸64を中心として回動せずに一定の保持位置(
図1ないし
図5、
図7ないし
図9に示す位置)に保持される。
図3に示すように、ロック部材65によってピント板支持枠60が保持位置に保持されているときに、ピント板20と透過液晶21の間にピント板ワッシャ71を挟持し、ピント板20は透過液晶21との当接(ピント板ワッシャ71を挟んだ間接的な当接関係)によって上下方向の位置が決まる。ピント板ワッシャ71は、ピント板20と透過液晶21の周縁に沿う矩形の枠形状を有している。ピント板20の下面に当接するピント板支持バネ63(
図8)は、ピント板支持枠60が保持位置にある状態で弾性変形して、ピント板20をピント板ワッシャ71に押し付ける付勢力を生じる。
図3に示すように、保持位置にあるピント板支持枠60によって支持されるピント板20は、透過液晶21と略平行な関係になり、イメージセンサ16と光学的に等価な結像位置に保持される。
【0037】
このように、固定部材40を介さずに透過液晶21によってピント板20の上下方向の位置を定める構造にすることで、ピント板20と透過液晶21の間隔を小さくすることができる。ファインダ光学系14では、透過液晶21に表示される合焦情報などの情報表示が被写体像と共に接眼レンズを通して観察されるため、ピント板20と透過液晶21の間隔を小さくすることで、ピント板20上に結像する被写体像に対する透過液晶21上の情報表示の視度のずれが小さくなり、ファインダ光学系14の観察品質を向上させることができる。
【0038】
図9に示すように、ロック部材65の係脱部67は、固定部材40の切欠部47を通してミラーボックス41の前方の開口内に露出しており、レンズマウント36からレンズ鏡筒12を取り外した状態で係脱部67を操作可能である。そして、ロック部材65の係脱部67を前方に引いて弾性変形させることで、係合片68がロック突起70と重なる位置から離脱し、ロック部材65によるロック状態が解除される。ロック状態を解除することで、ピント板支持枠60は支持軸64を中心とする回動が可能になる。前端を下方に下げる開放位置(図示略)にピント板支持枠60を回動させることにより、ピント板20は透過液晶21から離れて上下方向の位置決めが解除され、ピント板20の取り外し(交換)や、ピント板20と透過液晶21周りのメンテナンスを行うことが可能になる。
【0039】
ロック部材65の係脱部67には、係合片68の下方にテーパ部67bが設けられている。ピント板支持枠60を開放位置から保持位置に向けて回動すると、ロック突起70がテーパ部67bに当接する。すると、テーパ部67bの傾斜形状によって、ピント板支持枠60の回動方向の力から係脱部67を前方に押圧する分力が生じて、係脱部67が弾性変形しながらロック突起70を乗り越える。ピント板支持枠60が保持位置まで達すると、ロック突起70によるテーパ部67bへの押し込みが解除されて、係合片68がロック突起70に係合するロック状態になる。つまり、ピント板支持枠60の開放位置から保持位置への復帰は、ピント板支持枠60の回動操作のみで簡単に行うことができる。
【0040】
一眼レフカメラ10は、クイックリターンミラー11がミラーアップ状態になるときの衝撃吸収を行って振動(バウンド)を抑制するミラー衝撃吸収機構を備える。ミラー衝撃吸収機構は、ピント板支持枠60に対して可動に支持された衝撃吸収部材72(ミラー衝撃吸収部材)を備える。
図7や
図8に示すように、衝撃吸収部材72は左右方向に長い部材であり、長手方向の略全体に亘って縦板部73(移動支持機構、第2の壁部)と下板部74が設けられている。また、長手方向の両端から所定の範囲で上板部75が形成されている。縦板部73は上下方向に延びる壁部を形成し、下板部74は縦板部73の下端から後方に向けて突出し、上板部75は縦板部73の上端から後方に向けて突出し、縦板部73と下板部74と上板部75によって、後方に向けて開かれたコ字状の断面構造が形成される。
【0041】
図7や
図8に示すように、衝撃吸収部材72の縦板部73は、上板部75が形成されている長手方向(左右方向)の両側部分よりも中央部分の方が上方への高さが大きくなっており、この縦板部73の中央部分の上端から前方に向けて突出するバネ受け座76が設けられる。また、縦板部73のうち上方への高さが大きくなっている中央部分には、左右方向に位置を異ならせて一対のガイド孔77(移動支持機構、長孔)が形成され、一対のガイド孔77の間にアクセス孔78が形成されている。各ガイド孔77は上下方向に長い長孔である。アクセス孔78は、一対のガイド孔77の間の左右方向の所定範囲で縦板部73を切り欠いたものであり、前述したロック部材65によるピント板支持枠60のロック状態の解除操作を行う際に、アクセス孔78を通して係脱部67の操作を行うことができる。
【0042】
図4に示すように、ピント板支持枠60は、ピント板20に対して前方へ離間する支持壁79(移動支持機構、第1の壁部)を有している。支持壁79は、上下方向に延びる(ピント板20の板面に略垂直な)壁部を形成しており、ピント板20の周縁部を保持する縦壁61のうちピント板20の前縁を保持する部分よりも前方に位置している。支持壁79には、左右方向に位置を異ならせて一対のガイドピン80(移動支持機構、突起)が取り付けられる。各ガイドピン80は、支持壁79に形成した挿通孔に挿入されてスナップリング81によって抜け止めされている。各ガイドピン80は、支持壁79から前方に突出してガイド孔77に挿入されるガイド部80aと、ガイド部80aの前方に位置する抜け止め部80bを有する。ガイド部80aと抜け止め部80bはいずれも円形断面を有する突出部であり、ガイド部80aの直径は、ガイド孔77の左右方向(短手方向)の幅と略同じで、ガイド孔77の上下方向(長手方向)の長さよりも小さい。抜け止め部80bの直径はガイド部80aの直径よりも大きい。各ガイド孔77に各ガイドピン80を挿入した状態で、衝撃吸収部材72の縦板部73はピント板支持枠60の支持壁79と略平行になり、縦板部73と支持壁79は互いの間にがたつきの無い程度のわずかなクリアランスをもった状態で対向する。
【0043】
従って、衝撃吸収部材72は、縦板部73と支持壁79の当接関係と、各ガイド孔77と各ガイドピン80(特にガイド部80a)の摺動関係によって、ピント板支持枠60に対して、ピント板20の板厚方向(ピント板20の板面と略直交する方向)に移動可能に支持される。ピント板支持枠60が各図に示す保持位置にあるとき(ピント板20が結像位置に保持されるとき)には、ピント板支持枠60に対する衝撃吸収部材72の移動方向は上下方向となる。ピント板支持枠60に対する衝撃吸収部材72の左右方向の移動は、各ガイド孔77の側面と各ガイドピン80のガイド部80aの当接によって制限される。また、
図4に示すように、各ガイドピン80の抜け止め部80bとピント板支持枠60の支持壁79の間に縦板部73が挟まれることで、ピント板支持枠60に対する衝撃吸収部材72の前後方向の移動が規制される。
【0044】
衝撃吸収部材72は、変形による傾きや歪みを生じずにピント板支持枠60に対してスムーズに移動可能に支持されるように、所要の剛性(強度)や硬さを有する材質で構成される。一例としてステンレス鋼材などの金属製の板材にすることで、衝撃吸収部材72をコンパクト(薄型)にしながら強度を確保することができ、衝撃吸収部材72周りの省スペース性の向上に寄与する。但し、衝撃吸収部材72の材質はこれに限られるものではなく任意に選択可能であり、合成樹脂の成形品とすることなども可能である。
【0045】
ロック部材65の支持板部66と衝撃吸収部材72のバネ受け座76の間にコイルバネ82が挿入される。コイルバネ82は左右方向に位置を異ならせて2本配されている。
図4ないし
図6に示すように、固定部材40の橋絡部48には上下方向に貫通するバネ挿入孔83が形成されており、橋絡部48上に固定されるロック部材65の支持板部66がバネ挿入孔83の上端側の開口を塞いでいる。各コイルバネ82はバネ挿入孔83に挿入され、コイルバネ82の上端がロック部材65の支持板部66に当接し、バネ挿入孔83の下方に突出するコイルバネ82の下端が衝撃吸収部材72のバネ受け座76に当接する。
図3と
図6はコイルバネ82の自由状態での長さを示しており、各コイルバネ82が自由状態よりも圧縮された状態で挿入されることにより(
図4、
図5)、衝撃吸収部材72を下方に移動付勢する力が働く。下方に向けて移動付勢された衝撃吸収部材72は、外力が加わらない状態では、各ガイド孔77の上端にガイドピン80のガイド部80aが当接する下方移動端(
図5を除く各図に示す位置)に保持される。バネ挿入孔83は円筒状の内周面を有し、コイルバネ82はバネ挿入孔83の内周面に対してわずかなクリアランスを空けて挿入されており、バネ挿入孔83の内周面によってコイルバネ82の座屈が防がれる。
【0046】
なお、
図6に示すように、固定部材40の橋絡部48には左右方向に並ぶ4つのバネ挿入孔83が形成されており、ロック部材65の支持板部66と衝撃吸収部材72のバネ受け座76の間に最大で4本のコイルバネ82を挿入することができる。本実施形態では、左右方向の両端に位置する2つのバネ挿入孔83にコイルバネ82を配しているが、衝撃吸収部材72に付与する付勢力の大きさや付勢力のバランスに応じて、コイルバネ82の個数や配置を任意に選択することができる。
【0047】
衝撃吸収部材72の下板部75の下面に弾性緩衝体84(ミラー衝撃吸収部材)が取り付けられる。
図7や
図8に示すように、下板部75は、ピント板支持枠60の左右方向の長さに概ね対応する左右方向の長さを有しており、これに対応して弾性緩衝体84も左右方向に長い形状になっている。弾性緩衝体84は柔軟性のある材質で構成されている。具体的には、連続気泡構造や独立気泡構造のフォーム材やゴムのように振動減衰性の高い材質で弾性緩衝体84を構成するとよい。
【0048】
図9に示すように、衝撃吸収部材72の一部は、固定部材40の切欠部47内に位置している。具体的には、衝撃吸収部材72の縦板部73よりも前方に突出しているバネ受け座76とガイドピン80が、切欠部47の内側に収容されている。これにより、固定部材40の前板46に対するバネ受け座76とガイドピン80の干渉を防ぐことができる。特に、バネ受け座76は衝撃吸収部材72の移動に伴って上下方向に位置を変化させるため、切欠部47の左右方向の幅はバネ受け座76の左右方向の長さよりも大きく設定され、かつ切欠部47の上下方向の幅はバネ受け座76の上下方向の移動範囲よりも大きく設定されている。また、切欠部47は衝撃吸収部材72のアクセス孔78をミラーボックス41の前方の開口内に露出させており、前述のように切欠部47を通してロック部材65の係脱部67のロック解除操作を行うことができる。なお、本実施形態の切欠部47は、上方のみに橋絡部48を有し下方が開放された構造であるが、下方を開放しない前後方向への貫通部として切欠部を構成することも可能である。
【0049】
図1に示すミラーダウン状態では、クイックリターンミラー11が衝撃吸収部材72から離れており、衝撃吸収部材72はコイルバネ82の付勢力により下方移動端に保持される。クイックリターンミラー11がミラーダウン状態から
図2ないし
図4に示すミラーアップ状態になるとき、当接部32が設けられているメインミラーシート30の前端付近(及びメインミラーM1の前端付近)が衝撃吸収部材72の弾性緩衝体84に当接する。このとき、
図5のように、コイルバネ82の負荷に抗して衝撃吸収部材72を下方移動端から上方へ押し上げながら衝撃を吸収して、クイックリターンミラー11のバウンドを抑制することができる。この衝撃吸収時には、ガイド孔77の上端にガイドピン80のガイド部80aが当接する前に衝撃吸収部材72の上方への移動が停まるようにコイルバネ82の付勢力が設定されている。従って、衝撃吸収部材72からピント板支持枠60に対して強い衝撃が作用せず、ピント板支持枠60によって衝撃吸収部材72を移動可能に支持した構造でありながら、ピント板20への悪影響を防ぐことができる。なお、
図5ではバネ受け座76が橋絡部48の下面に接近した状態を示しているが、コイルバネ82の付勢力は、バネ受け座76が橋絡部48の下面に当接する前に衝撃吸収部材72の上方への移動を停める大きさに設定されている。
【0050】
以上のように衝撃吸収部材72は、ピント板支持枠60を介してピント板20の前方空間に支持されており、ピント板支持枠60の支持壁79に沿って上下方向に移動可能である。また、ピント板支持枠60を介して衝撃吸収部材72を移動可能に支持する構造(移動支持機構)は、ガイド孔77とガイドピン80による簡単かつコンパクトなものであってピント板20の前方空間に収められているため、衝撃吸収部材72の動作に必要なスペースが小さくて済む。従って、ファインダ光学系14の構成要素が大型である場合や、ミラーボックス41の側壁42に沿う部分にスペース的な余裕がない場合でも、固定部材40の成約を受けずに衝撃吸収部材72をスペース効率良く配置することができ、省スペースでありながら衝撃吸収性に優れたミラー衝撃吸収機構が得られる。
【0051】
図1や
図2に示すように、メインミラーシート30を軸支するヒンジピン34は、光軸OAに沿う方向(前後方向)においてピント板20の中心部よりも後方に位置している。一方、衝撃吸収部材72は光軸OAに沿う方向(前後方向)においてピント板20の前方に位置しており、メインミラーシート30のうちヒンジピン34から最も離れた先端(前端)にある当接部32の移動軌跡上に衝撃吸収部材72(弾性緩衝体84)が位置している。メインミラーシート30が動作するときには、ヒンジピン34から離れて先端側(当接部32側)に進むにつれて移動量と加速度が増大するため、ピント板20の前方に衝撃吸収部材72を配して当接部32への当接で衝撃吸収を行う構成は、衝撃吸収の効率という点でも優れている。
【0052】
なお、衝撃吸収部材72のうち下板部74の後端部付近は、光軸OAに沿う方向(前後方向)でピント板20と重なる位置関係にある。すなわち、本発明は衝撃吸収部材72の全体がピント板20の前方に位置することを要するものではなく、少なくとも光軸OAに沿う方向におけるピント板20の中心部よりも前方に衝撃吸収部材72が位置する(かつ衝撃吸収部材72によってピント板20を通る観察用の光束を遮らない)という要件を満たしていれば成立する。
図3から分かるように、衝撃吸収部材72の下板部74がピント板20と重なる位置関係にある領域は、視野枠56の前縁よりも前方に位置しており、下板部74がファインダ光学系14による観察範囲を遮ることはない。
【0053】
また、衝撃吸収部材72を付勢するコイルバネ82を、固定部材40の一部である橋絡部48の内部に収め、橋絡部48の下方に位置する切欠部47内に衝撃吸収部材72のバネ受け座76を収めているため、衝撃吸収部材72とその支持構造は、固定部材40との関係においてもスペース効率に優れている。加えて、橋絡部48内のバネ挿入孔83によるコイルバネ82の座屈防止効果も得ることができる。また、ピント板支持枠60を保持するためのロック部材65の支持板部66をコイルバネ82の上端の支持に用いているので、部品点数を少なくして組立性を向上させる効果も得られる。
【0054】
図10ないし
図12に第2の実施形態のミラー衝撃吸収機構を示す。このミラー衝撃吸収機構は、衝撃吸収部材72を下方に向けて付勢する板バネ85(付勢部材)を備えている。板バネ85は、衝撃吸収部材72の左右方向の端部付近に一つずつ設けられている。
図11に示すように、各板バネ85は金属の板材からなり、衝撃吸収部材72の縦板部73の前面にリベット89で固定される固定部86と、固定部86から後方に向けて突出して衝撃吸収部材72の上板部75に支持される基部87と、基部87から斜め上方に向けて延設される片持ち状の弾性当接部88を有している。弾性当接部88は基部87を支点として上下方向に弾性変形可能である。2つの板バネ85は、衝撃吸収部材72の左右方向の端部から中央に向けて、互いの先端(自由端)を接近させる方向にそれぞれの弾性当接部88を突出させている。
【0055】
図12に示すように、各板バネ85の弾性当接部88の上方には、固定部材40の支持枠43が位置している。自由状態の弾性当接部88(
図12に実線で示している)の上方への突出量は、衝撃吸収部材72の上板部75と支持枠43の下面の上下方向間隔よりも大きいため、弾性当接部88は下方に向けて弾性変形した状態(
図12に一点鎖線で示している)で支持枠43の下面に当接する。そして、弾性当接部88が弾性変形から復元しようとする力によって弾性当接部88が下方に向けて付勢される。
【0056】
第1の実施形態は、コイルバネ82の数や長さなどの設定により衝撃吸収部材72への付勢力を調整(変更)しやすいという利点がある。第2の実施形態は、ピント板支持枠60とガイドピン80による案内を受ける縦板部73の板面に近い前後方向位置で、衝撃吸収部材72が板バネ85からの付勢力を受けるため、衝撃吸収部材72に対して回転方向のモーメント(前後方向に倒れさせようとする力)が作用しにくいという利点がある。
【0057】
以上、図示実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は図示実施形態に限定されるものではない。例えば、衝撃吸収部材72を上下方向に移動可能に支持する構成として、実施形態では衝撃吸収部材72にガイド孔77を形成し、ピント板支持枠60にガイドピン80を設けているが、長孔(ガイド孔77)と突起(ガイドピン80)を形成する部材を逆にすることもできる。また、実施形態の衝撃吸収部材72の縦板部73とピント板支持枠60の支持壁79はそれぞれ前後方向に薄い板状であるため、長孔(ガイド孔77)と突起(ガイドピン80)を設けることが好適であるが、衝撃吸収部材の形状などの条件が異なる場合には、衝撃吸収部材を可動に支持する構造として、ガイドシャフトとガイド孔、凹状断面の溝と凸状部など、長孔と突起以外の他の様々な構造を採用することが可能である。
【0058】
実施形態のミラー衝撃吸収部材は、複数箇所で折り曲げた板状の衝撃吸収部材72の下部に弾性緩衝体84を取り付けた構造であり、弾性緩衝体84によってミラー当接時の静音性を高めることができるが、本発明を適用するミラー衝撃吸収部材はこれに限定されるものではない。例えば、弾性緩衝体84に相当する部位を備えない形態のミラー衝撃吸収部材を採用することも可能である。
【0059】
ミラー衝撃吸収部材を付勢する付勢部材として、各実施形態ではコイルバネ82と板バネ85を択一的に用いているが、コイルバネ82と板バネ85を併用することも可能である。さらに、コイルバネ82や板バネ85バネ以外にも、任意の付勢部材を用いることが可能である。例えば、バネとしては、コイルバネ82のような圧縮バネに代えて引張バネなどを用いることができる。また、バネ以外の構成として、フォーム材やゴムのような材質からなる付勢部材を用いてもよい。
【0060】
実施形態のクイックリターンミラー11はメインミラーM1とサブミラーM2を備えているが、本発明はメインミラーM1のみを備えるタイプの可動ミラーに対しても適用が可能である。
【0061】
実施形態の一眼レフカメラ10は、撮影用の受光部としてイメージセンサ22を用いるいわゆるデジタルカメラであるが、本発明は撮影用の受光部として銀塩フィルムを用いる撮像装置にも適用が可能である。